説明

現像装置、およびこれを備えた画像形成装置

【課題】滞留部の現像剤の減少に伴って、トナーコンテナからトナーが補給される現像装置において、トナーコンテナ内のトナー量が変化しても、トナー補給量が変化しにくい現像装置を提供することを目的とする。
【解決手段】第1搬送能力抑制部26は、トナー補給口25に対向する位置に滞留部27を形成する。滞留部27のトナー量に応じて、トナーコンテナ30から現像ハウジング210に流入するトナー量が調整される。補給トナーの流入量は、トナーコンテナ30内の補給トナー残量に応じて変化しやすい。トナーコンテナ30が交換され、多量のトナーが現像ハウジング210内に流入しやすい場合であっても、抑制パドル28が形成する上流側滞留部29によって、トナー補給口25の搬送方向上流側が封止され、過剰な補給トナーの流入が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンター等の画像形成装置に好適に搭載される現像装置、およびそれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1 に記載されているような現像装置が知られている。この現像装置は、現像ローラーと攪拌スクリューとを備える現像ハウジングと、この現像ハウジングに着脱自在に装着されるトナー補給用のトナーコンテナとを備えて構成されている。トナーコンテナの底部には、開閉可能なトナー排出口が設けられ、現像ハウジングには、トナー排出口に対応した位置にトナー補給口が設けられている。トナーコンテナが現像ハウジングに装着され、トナー排出口とトナー補給口とが開放されると、トナーコンテナ内のトナーが現像ハウジング内に形成された所定の循環搬送路に供給される。
【0003】
前記循環搬送路は、トナー補給口に対応した往路搬送路と、現像ローラーに対応した復路搬送路とからなる。各循環搬送路には、回転軸周りに螺旋羽根が配設された攪拌スクリューがそれぞれ装着される。トナーは、これら攪拌スクリューによって往路搬送路と復路搬送路との間を循環搬送される。
【0004】
このような構成を有する特許文献1の現像装置においては、往路搬送路に設けられた攪拌スクリューのトナー補給口より下流側に、搬送能力が局部的に低下するように構成された搬送能力抑制部が設けられている。かかる搬送能力抑制部によって、当該搬送能力抑制部の上流側のトナー補給口付近では、トナーの滞留部が形成される。滞留部のトナー量が多い場合、該滞留部のトナーがトナー補給口を塞ぐ。また、滞留部のトナー量が少ない場合、トナー補給口とトナーの滞留部との間に隙間が生じ、トナーコンテナ側から現像ハウジングにトナーが流入する。このように、滞留部で滞留するトナー量に応じて、トナーコンテナから現像ハウジングに補給されるトナー補給量が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−346116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の現像装置において、トナー残量が少ないトナーコンテナから、多くの補給トナーを収容する新しいトナーコンテナに交換されると、新しいトナーコンテナ内の多量の補給トナーによって、滞留部のトナーが上方から押圧されることとなる。この結果、滞留部のトナーは、トナー補給口を塞ぐことができず、多量の補給トナーが現像ハウジング内に流入する。この場合、現像装置内に先に貯留されていた旧トナーに、トナーコンテナから新たに補給された多量の新トナーが一気に混合されることになり、トナーの帯電性が不安定になる不具合が生じる。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、滞留部の現像剤の減少に伴って、補給現像剤収容部から補給現像剤が補給される現像装置において、補給現像剤収容部内の現像剤量が急激に変化しても、筐体側への現像剤補給量が変化しにくい現像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に係る現像装置は、現像剤を収容する筐体と、前記筐体に着脱可能とされ、前記筐体に補給される補給現像剤を収容する補給現像剤収容部と、前記筐体内に配設され、前記現像剤が搬送される現像剤搬送路と、前記筐体に、前記現像剤搬送路に対向して配設され、前記補給現像剤収容部から前記補給現像剤を前記現像剤搬送路に受け入れる現像剤受入口と、前記現像剤搬送路内に配設され、前記現像剤受入口が前記現像剤搬送路に対向する位置を通過するように一の搬送方向に前記現像剤を搬送する現像剤搬送部と、前記現像剤搬送部の前記現像剤受入口よりも前記搬送方向下流側に配置され、前記現像剤搬送部の前記現像剤の搬送能力を部分的に抑制することによって、前記現像剤受入口が対向する位置に前記補給現像剤の受入量を調整する現像剤滞留部を形成する第1搬送能力抑制部と、前記現像剤搬送部の前記現像剤受入口よりも前記搬送方向上流側に配置され、前記現像剤搬送部の前記現像剤の搬送能力を部分的に抑制することによって、前記現像剤受入口よりも前記搬送方向上流側に、上流側現像剤滞留部を形成する第2搬送能力抑制部と、を有することを特徴とする。
【0009】
本構成によれば、第1搬送能力抑制部は、現像剤搬送路内であって、現像剤受入口に対向する位置に現像剤滞留部を形成する。現像剤搬送路内の現像剤が多い場合は、現像剤滞留部が、対向する現像剤受入口を封止する。このため、補給現像剤収容部から筐体側に補給現像剤が流入しにくい。一方、現像剤搬送路内の現像剤が少ない場合は、現像剤滞留部と現像剤受入口との間に隙間が形成され、補給現像剤収容部から筐体側に補給現像剤が流入する。該補給現像剤の流入量は、補給現像剤収容部内の現像剤量に応じて変化しやすい。上記の構成によれば、補給現像剤収容部が交換され、多量の補給現像剤が現像剤搬送路側に流入しやすい場合であっても、第2搬送能力抑制部が、現像剤受入口の搬送方向上流側に上流側現像剤滞留部を形成する。上流側現像剤滞留部は、現像剤搬送路における現像剤受入口の搬送方向上流側を部分的に封止する。このため、筐体側への過剰な補給現像剤の流入が抑制される。
【0010】
上記の構成において、前記現像剤搬送部は、回転軸と、前記回転軸回りに形成されたスクリュー羽根とを有し、該スクリュー羽根の回転によって前記現像剤が搬送されることが好ましい。
【0011】
本構成によれば、回転軸回りに形成されたスクリュー羽根によって、現像剤搬送路内を現像剤が搬送される。スクリュー羽根は搬送方向に加え、回転半径方向に現像剤を押し出す力を備える。このため、第1搬送能力抑制部によって形成された現像剤滞留部では、スクリュー羽根の回転力によって、現像剤が現像剤受入口を封止しやすくなる。
【0012】
上記の構成において、前記第1搬送能力抑制部は、前記スクリュー羽根を欠落させることによって形成されることが好ましい。
【0013】
本構成によれば、現像剤滞留部は、スクリュー羽根を欠落させた部分によって形成される。このため、第1搬送能力抑制部にスクリュー羽根が配設されている場合と比べて、現像剤滞留部の形成が、現像剤搬送部材の回転速度に依存しにくい。したがって、現像剤搬送部材が複数の回転速度で回転駆動される場合であっても、現像剤滞留部が形成され、補給現像剤の補給が安定して調整される。
【0014】
上記の構成において、前記第2搬送能力抑制部は、前記回転軸の回転半径方向に延伸する板状部材が、前記回転軸または前記スクリュー羽根に付設されることによって形成されることが好ましい。
【0015】
本構成によれば、板状部材の回転によって、現像剤受入口の上流側に、上流側現像剤滞留部が形成される。これによって、現像剤搬送路における現像剤受入口の上流側が現像剤によって封止されやすく、過剰な補給現像剤の流入が抑制される。また、回転する板状部材が、補給現像剤の現像剤搬送路上流側への進入を機械的に抑制することができる。
【0016】
上記の構成において、前記第2搬送能力抑制部は、前記スクリュー羽根の外径が小さく設定されることによって形成されることが好ましい。
【0017】
本構成によれば、スクリュー羽根の外径が小さい部分に対応して、現像剤の搬送性能が低下する。このため、現像剤受入口の上流側に、上流側現像剤滞留部が形成される。これによって、現像剤搬送路における現像剤受入口の上流側が現像剤によって封止されやすく、過剰な補給現像剤の流入が抑制される。
【0018】
上記の構成において、前記第2搬送能力抑制部は、前記スクリュー羽根を欠落させることによって形成されることが好ましい。
【0019】
本構成によれば、スクリュー羽根が欠落している部分に対応して、現像剤受入口の上流側に、上流側現像剤滞留部が形成される。これによって、スクリュー羽根を有している場合に比べて、現像剤搬送路における現像剤受入口の上流側が現像剤によって封止されやすく、過剰な補給現像剤の流入が抑制される。
【0020】
また、本発明の他の局面に係る画像形成装置は、表面に静電潜像が形成され、当該静電潜像が前記現像剤によって、現像剤像に顕在化される像担持体と、上記の何れかに記載の現像装置と、を備えたことを特徴とする。
【0021】
本構成によれば、補給現像剤収容部が交換され、多量の補給現像剤が現像剤搬送路に流入しやすい場合であっても、第2搬送能力抑制部によって形成される上流側現像剤滞留部が、現像剤搬送路における現像剤受入口の搬送方向上流側が部分的に封止する。このため、現像剤搬送路への過剰な補給現像剤の流入が抑制される。この結果、多量の補給現像剤が現像装置内の現像剤に、急激に混入することが抑制される。したがって、現像剤の攪拌不良によって生じる現像剤かぶりが防止される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、現像剤滞留部の現像剤の減少に伴って、補給現像剤収容部から補給現像剤が補給される現像装置において、補給現像剤収容部内の現像剤量が急激に変化しても、筐体側への現像剤補給量が変化しにくい現像装置を提供することが可能となる。特に、補給現像剤収容部内の現像剤量が急激に増加する条件下でも、筐体側に多量の補給現像剤が流入することがなく、現像剤かぶりなどの画質欠陥が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の内部構造を表す概要図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る現像装置の平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るトナー補給部の断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る攪拌スクリューの斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るトナー補給の模式図である。
【図6】従来の体積補給型のトナー補給の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係る現像装置について図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る現像装置20を含む画像形成装置1の構成を概略的に示した断面図である。画像形成装置1は、光走査装置11、現像装置20、トナーコンテナ30(補給現像剤収容部)、帯電器13、感光体ドラム14(像担持体)、転写ローラー15、定着器16及び給紙カセット17を備える。
【0025】
感光体ドラム14は、円筒状の部材であり、その周面に静電潜像及びトナー像が形成される。感光体ドラム14は、図略のモータからの駆動力を受けて、図1における時計回りの方向に回転される。帯電器13は、感光体ドラム14の表面を略一様に帯電する。
【0026】
光走査装置11は、レーザーダイオード等の光源、偏向体、走査レンズ及び光学素子等を備える。光走査装置11は、帯電器13によって略一様に帯電された感光体ドラム14の周面(被走査面)に対して、画像データに応じたレーザー光を照射して、画像データの静電潜像を形成する。
【0027】
現像装置20は、静電潜像が形成された感光体ドラム14の周面にトナーを供給してトナー像を形成する。現像装置20は、トナーを担持する現像ローラーやトナーを攪拌搬送する攪拌スクリューを含む。感光体ドラム14に形成されたトナー像は、給紙カセット17から繰り出され搬送路Pを搬送されるシートに転写される。この現像装置20には、トナーコンテナ30からトナーが補給される。現像装置20ついては後記で詳述する。
【0028】
トナーコンテナ30は、箱型の部材であり、内部にトナーを収容する。トナーコンテナ30は、現像装置20内にトナーを供給する。トナーコンテナ30は、現像装置20に対して着脱自在に配設されている。
【0029】
感光体ドラム14の下方には転写ローラー15が対向して配設され、両者によって転写ニップ部が形成されている。転写ローラー15は、導電性を有するゴム材料等で構成される。また、転写ローラー15は、不図示のバイアス印加手段によって転写バイアスが印加される。また、転写ローラー15は、感光体ドラム14に形成されたトナー像を前記記録紙に転写させる。
【0030】
定着器16は、ヒーターを内蔵する定着ローラー160と、定着ローラー160と対向する位置に設けられた加圧ローラー161とを備える。また、定着器16は、トナー像が形成された記録紙を加熱搬送することにより、記録紙に形成されたトナー像を定着させる。
【0031】
<現像装置の説明>
図2は、現像装置20の内部構造を示す平面図である。現像装置20は、一方向(現像ローラー21の軸方向)に長尺の箱形形状を有する現像ハウジング210(筐体)を備える。該現像ハウジング210は、内部空間220を有する。内部空間220には、現像ローラー21と、第1攪拌スクリュー23(現像剤搬送部)および第2攪拌スクリュー24と、トナー補給口25とが配設されている。一成分現像方式の場合、この内部空間220には、トナーが現像剤として充填される。また、二成分現像方式の場合、トナーと磁性体からなるキャリアとが混合されたものが、現像剤として充填される。トナーは、内部空間220内において攪拌搬送され、静電潜像を現像するために、逐次現像ローラー21から感光体ドラム14に供給される。
【0032】
現像ローラー21は、現像ハウジング210の長尺方向に延設される円筒形状を有し、外周に回転駆動されるスリーブ部分を有する。一成分現像方式の場合には、摩擦帯電により電荷をもったトナーが第2搬送スクリュー24からスリーブ部分に付着する。また、二成分現像方式の場合は、スリーブ内部に固定配置された磁極が形成する磁界によって、磁性体であるキャリアが、静電気力によって付着するトナーを伴って、第2攪拌スクリュー24からスリーブ表面に付着する。スリーブ表面に担持されたトナー(現像剤)は、現像ハウジング210に配設された開口部(不図示)まで搬送され、対向する感光体ドラム14に供給される。
【0033】
現像ハウジング210の内部空間220は、不図示の天板によって覆われるとともに、左右方向に延びる仕切り板22によって、左右方向に長尺の第1通路221と第2通路222とに区画されている。仕切り板22は、現像ハウジング210の左右方向の幅よりも短く、仕切り板22の左端及び右端には、第1通路221と第2通路222とをそれぞれ連通させる上流連通部223及び下流連通部224が備えられている。これにより、内部空間220には、第1通路221、上流連通部223、第2通路222及び下流連通部224に至る循環経路(現像剤搬送路)が形成される。トナーは、該循環経路内を図2において時計回りに搬送される。
【0034】
トナー補給口25(現像剤受入口)は、前記天板に穿孔された開口部であり、第1通路221の左端付近の上方に配置されている(図2)。トナー補給口25は、上記の循環経路に対向して配置され、トナーコンテナ30から補給される補給トナー(補給現像剤)を内部空間220に受け入れる機能を備える。
【0035】
第1攪拌スクリュー23は、第1通路221に配設されている。第1攪拌スクリュー23は、第1回転軸23a(回転軸)と、この第1回転軸23aの周上にスパイラル状に突設された第1螺旋羽根23b(スクリュー羽根)とを含む。第1攪拌スクリュー23は、第1回転軸23a回り(矢印R2)に回転駆動されることで、図2の矢印D1方向にトナーを搬送する。第1攪拌スクリュー23は、トナー補給口25が第1通路221に対向する位置を通過するように現像剤を搬送する。これにより、第1攪拌スクリュー23は、トナー補給口25から流入する新しいトナーと、第1通路221を搬送されるトナーとを混合し、混合されたトナーを第2通路222側に受け渡す機能を有する。第1攪拌スクリュー23のトナー搬送方向(D1方向)下流側には、第1パドル23cが配設されている。第1パドル23cは、第1回転軸23a上に配設された板状部材である。第1パドル23cは、第1回転軸23aと共に回転され、第1通路221から第2通路222に、トナーを受け渡す。
【0036】
第2攪拌スクリュー24は、第1通路222に配設されている。第2攪拌スクリュー24は、第2回転軸24aと、この第2回転軸24aの周上にスパイラル状に突設された第2螺旋羽根24bとを含む。第2攪拌スクリュー24は、第2回転軸24a回り(矢印R1)に回転駆動されることで、図2の矢印D2方向にトナーを搬送する。第2攪拌スクリュー24は、第2通路222内で、トナーを搬送するとともに、現像ローラー21にトナーを供給する。第2攪拌スクリュー24のトナー搬送方向(D2方向)下流側には、第2パドル24cが配設されている。第2パドル24cは、第2回転軸24a上に配設された板状部材である。第2パドル24cは、第2回転軸24aと共に回転され、第2通路222から第1通路221に、トナーを受け渡す。
【0037】
トナーコンテナ30は、現像ハウジング210のトナー補給口25の上方に、配置されている。トナーコンテナ30は、内部にトナーが搬送されるトナー搬送路30aと、トナー搬送部材321と、トナー排出口33と、を備える。トナーコンテナ30は、トナーコンテナ30の長手方向(トナー搬送路30aが形成されている方向)が、現像装置20の長手方向(第1攪拌スクリュー23の現像剤搬送方向。矢印D1方向)に直交する方向に位置するように、現像装置20に組みつけられている。
【0038】
トナー排出口33は、現像装置20のトナー補給口25に対応して、トナーコンテナ30の底部に配設されている。トナー搬送部材321は、軸部と該軸部回りに回転される羽根部とを有し(図3参照)、トナー搬送路30a内の補給トナーをトナー排出口33に向かって搬送する。トナー排出口33から落下したトナーは、トナー補給口25を介して、現像装置20に補給される。
【0039】
<滞留部について>
次に、トナー補給口25から新たに補給されるトナーの流れについて説明する。図3は、現像装置20に配設されたトナー補給口25およびトナーコンテナ30に配設されたトナー排出口33付近の断面図である。なお、図3では、説明のために、トナーコンテナ30の配置を水平方向において90度回転させて示している。実際には、トナーコンテナ30内のトナー搬送部材321は、紙面手前に向かって延設され、第1攪拌スクリュー23と、トナーコンテナ30内のトナー搬送部材321とは、互いに直交する位置関係となっている。
【0040】
トナーコンテナ30のトナー排出口33から供給された補給トナーT2は、第1通路221に落下して既存のトナーT1と混合され、第1攪拌スクリュー23により矢印D1方向に搬送される。この際、トナーT1、T2は攪拌され、帯電される。
【0041】
第1攪拌スクリュー23は、トナー補給口25よりトナー搬送方向下流側に、部分的に現像剤の搬送性能が抑制される第1搬送能力抑制部26を備える。本実施形態では、第1搬送能力抑制部26は、第1攪拌スクリュー23の攪拌羽根を欠落させることによって形成される(図4参照)。したがって、第1搬送能力抑制部は、部分的に第1回転軸23aのみが配設されている部分に相当する。この場合、第1搬送能力抑制部26は、第1回転軸23a方向の現像剤搬送性能を有さない。従って、第1通路221内において、第1搬送能力抑制部26よりも上流側から搬送されるトナーは、該第1搬送能力抑制部26において、滞留し始める。そして、これらのトナーの滞留は、第1搬送能力抑制部26の直ぐ上流側であって、トナー補給口25が第1通路221に対向する位置まで累積していく。この結果、トナー補給口25の入口付近には、現像剤の滞留部27(現像剤滞留部)が形成される。
【0042】
なお、画像形成装置1の動作条件に応じて、現像装置20の第1攪拌スクリュー23が異なる回転速度で制御される場合には、本実施形態のように、第1搬送能力抑制部26は、攪拌羽根23bを有さず第1回転軸23aのみの領域で構成されることが好ましい。この場合、第1攪拌スクリュー23の回転速度に依存せずに、トナーの搬送性能が抑制されるため、安定して滞留部27が形成される。
【0043】
トナー補給口25から補給トナーT2が補給され、内部空間220内のトナー量が増えると、この滞留部27で滞留するトナーが、トナー補給口25を塞ぎ(封止し)、それ以上のトナーの補給を抑制する。その後、内部空間220内のトナーが現像ローラー21から消費され、滞留部27で滞留するトナーが減少すると、トナー補給口25を塞いでいたトナーが減り、滞留部27とトナー補給口25との間に隙間が生じる。この結果、再び補給トナーT2がトナー補給口25から内部空間220に流入する。このように、本実施形態では、滞留部27に滞留するトナーの減少に伴って、補給トナー量の受入量が調整される体積補給型のトナー補給形式が採用される。
【0044】
このような体積補給型のトナー補給形式において、トナーコンテナ30内に収容される補給トナーT2のトナー量が急激に変化した場合、該補給トナーT2が、現像ハウジング210の内部空間220に急激に流入することがある。特に、この現象は、現像装置20に装着されているトナーコンテナ30内のトナー残量が少なくなり、該トナーコンテナ30が、ユーザーによって、新しいトナーコンテナ30に交換された場合に顕著に発生する。以下、図5を参照して、この現象について説明する。
【0045】
図5(a)、(b)は、現像ハウジング220内の第1通路221を、水平方向から見た断面図である。いずれも、図の第1通路221の右端において、下流連通部224からトナーが流入される。第1通路221内を第1攪拌スクリュー23によって搬送されるトナーは、図の第1通路221の左端において、第1パドル23cによって第2通路222側に送られる。また、図5(a)、(b)いずれも、第1通路221の下流側に配設されたトナー補給口25の上方に、不図示のトナーコンテナ30が配置されている。図5(a)(b)は、トナーコンテナ30内のトナー量の違いによって、第1通路221内のトナー分布が変化する様子を示している。
【0046】
図5(a)は、トナーコンテナ30内のトナー量が少ない状態の第1通路221の様子を示している。また、図5(b)は、図5(a)の状態から、トナーコンテナ30が新しいものに交換された後の様子を示している。図5(a)の場合、トナー排出口33から落下可能な補給トナーT2の量が少ないため、該補給トナーT2が滞留部27に対して下方に付与する圧力は小さい(矢印Y21)。このため、滞留部27がトナー補給口25を下方から封止するために必要な圧力も小さい。従って、補給トナーT2と滞留部27のトナーとは、互いに小さな圧力で押圧しあった状態で均衡が保たれ、トナー補給口25が封止される。この際、第1通路221内のトナーT1の分布は、トナー補給口25を覆う滞留部27と、トナー補給口25の直上流側で、傾斜面を有して分布する第1上流部100bと、更に上流側で略水平に安定した喫水面を有する第2上流部100cとに分類される。
【0047】
ここで、トナーコンテナ30内のトナー量が少なくなり、画像形成装置1に備えられた不図示の表示手段によって、その旨がユーザーに警告される。ユーザーは、適時に、古いトナーコンテナ30を取り外し、新しいトナーコンテナ30を現像装置20に装着する。この新しいトナーコンテナ30は、内部に多くのトナーを収容しているため、トナー排出口33からトナー補給口25に向かって落下しようとする補給トナーT2が、トナーコンテナ30の交換によって急激に増大する。このため、トナー補給口25において、補給トナーT2が滞留部27に対して下方に付与する圧力が大きくなる(矢印Y22)。そして、トナー補給口25では、補給トナーT2が滞留部27に対して下方に付与する圧力が、滞留部27が補給トナーT2に対して上方に付与する圧力を、上回る。この結果、補給トナーT2は、第1通路221の中で、トナー補給口25に対する圧力(封止する力)が弱い第1上流部100b側に進入する(矢印100d)。このトナーの進入は、調整範囲外の突発的なトナーの流入であり、現像ローラー21から消費されたトナーに対応して、滞留部27の現像剤が減少し、トナー補給口25から流入する補給トナーの流れとは異なる。
【0048】
上記のトナーコンテナ30の交換後、現像装置20が制御され、第1攪拌スクリュー23及び第2攪拌スクリュー24が回転すると、上記の補給トナーT2の流入によって、内部空間220内のトナー分布が変化する。すなわち、図5(b)に示すように、内部空間220内のトナー量が急激に増加すると、第1搬送能力抑制部26によって滞留するトナー量も増加する。このため、滞留部27がトナー補給口25の上流側にまで拡がり、第2滞留部27bが形成される。そして、第1上流部100bおよび第2上流部100cも、それぞれトナー搬送方向(矢印D1方向)上流側に移動し、第3上流部100eおよび第4上流部100fが形成される。第2滞留部27bは、滞留部27よりも多くのトナーで上流側と下流側からトナー補給口25を塞ぐため、ようやく、トナーコンテナ30の交換直後から流入していた補給トナーT2の進入が抑えられる。
【0049】
このように、トナーコンテナ30が、内部に収容されるトナー量が少ないものからトナー量の多い新しいものに交換された場合、補給トナーT2がトナー補給口25において作用する圧力が変化し、大量の補給トナーT2が急激に第1通路221に流入する。この場合、補給トナーT2と第1通路221に収容されていたトナーT1とは、短時間で互いに攪拌、混合されることができないため、トナー帯電量のむらが生じる。そして、帯電量にむらを生じたトナーは、現像後、感光体ドラム14上でトナーかぶりをもたらす。
【0050】
<上流側滞留部について>
上記のように、トナーコンテナ30内のトナー量が変化することによって、急激に多量のトナーが現像装置20側に流入する課題を解決するために、本実施形態では、第1通路221のトナー補給口25よりもトナー搬送方向(矢印D1方向)上流側の位置において、第1攪拌スクリュー23が、抑制パドル28(第2搬送能力抑制部)を備える(図2、図4)。
【0051】
抑制パドル28は、矢印D1方向で隣り合った2つの第1螺旋羽根23bの間に掛け渡された、第1回転軸23aの回転半径方向に延伸する板状のリブ部材である。抑制パドル28は、第1攪拌スクリュー23の回転に伴って、矢印R2方向に回転され、第1通路221内で搬送されるトナーT1を該R2方向に搬送する。このため、該抑制パドル28周辺では、矢印D1方向へのトナーT1の搬送性能が抑制され、トナーT1が、滞留する。この滞留したトナーT1によって、第1通路221内には、トナー補給口25の直上流側に、上流側滞留部29が形成される。
【0052】
図6を参照して、本実施形態の抑制パドル28を備えた現像装置20のトナー分布の様子を説明する。図6は、図5と同様に、現像ハウジング220内の第1通路221を、水平方向から見た断面図である。図6(a)は、トナーコンテナ30内のトナー量が少ない場合の内部空間220の様子を示している。また、図6(b)は、図6(a)の状態から、トナーコンテナ30が新しいものに交換された後の様子を示している。図6(a)において、第1通路221内では、トナー補給口25に対向する位置に、第1搬送能力抑制部26によって滞留部27が形成される。また、トナー補給口25の直上流には、抑制パドル28によって、上流側滞留部29が形成される。
【0053】
上流側滞留部29は、トナー補給口25の上流側で第1通路221内を塞ぐように滞留する。トナーコンテナ30内のトナー量が少ない場合、トナー補給口25において、補給トナーT2が滞留部27に対して下方に付与する圧力は小さい(矢印Y23)。この場合、第1通路221側では、滞留部27と上流側滞留部29とが、トナー補給口25周辺を塞ぎ、補給トナーT2に対して上方に圧力を付与する。このため、補給トナーT2は内部空間220内に流入することなくトナー補給口25付近で静止する。
【0054】
一方、トナーコンテナ30が新しいものに交換されると、内部に収容されているトナー量が多いため、トナー補給口25において、補給トナーT2が滞留部27に対して下方に付与する圧力は大きくなる。この場合であっても、本実施形態では、滞留部27と上流側滞留部29とが、トナー補給口25において、補給トナーT2に対して上方に圧力を付与しているため、補給トナーT2が急激に第1通路221に流入することがない(図6(b))。特に、抑制パドル28を備えない場合に補給トナーT2が進入しやすい、トナー補給口25の上流側が、上流側滞留部29で封止されるため、急激に第1通路221内に補給トナーT2が流入することが抑制される。
【0055】
このように、抑制パドル28は、上流側滞留部29を形成し、該上流側滞留部29は、トナー補給口25の上流側を封止する機能を有する。更に、抑制パドル28は、第1螺旋羽根23bにおいて、半径方向の最も外側の位置に配設されている。このため、トナー補給口25の直上流側には、第1回転軸23aに直交する断面上であって、現像ハウジング210の内周面に近い領域に、回転する抑制パドル28が、防壁を形成する。このため、トナーコンテナ30の交換後に、補給トナーT2がトナー補給口25の上流側に流れ込むことが更に抑制される。
【0056】
そして、内部空間220内のトナーが、現像ローラー21から感光体ドラム14側に消費され、滞留部27と上流側滞留部29との現像剤が減少すると、補給トナーT2が、内部空間220(第1通路221)に流入する。
【0057】
上記のように、本実施形態に係る現像装置20では、トナーコンテナ30の交換後に生じやすい、現像ハウジング210への急激なトナーの流入が抑制される。このため、急激に流入するトナーと現像ハウジング210内のトナーとの間で、攪拌不足が生じにくく、感光体ドラム14上でのトナーかぶりが抑制される。
【0058】
以上、本発明の実施形態に係る現像装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を採用することができる。
【0059】
(1)上記の実施形態では、第1攪拌スクリュー23の攪拌羽根を欠落させた部分を第1搬送能力抑制部26としたが、この他に、第1攪拌スクリュー23の第1螺旋羽根23bの周縁部に回転軸と並行して棒部材を配設し、この棒部材が付設された部分が第1搬送能力抑制部26であってもよい。攪拌羽根に付設された棒部材によって、トナーの搬送能力が抑制され、第1通路221内でトナーが滞留する。
【0060】
(2)上記の実施形態では、第2搬送能力抑制部として抑制パドル28が上流側滞留部29を形成する態様で説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。たとえば、第2搬送能力抑制部は、部分的に第1回転軸23aのみが配設されたもの、すなわち、第1螺旋羽根23bを欠落させたことによって形成されるものでもよい。この場合、第1回転軸23a方向(矢印D1方向)のトナーの搬送能力が低下し、同様に上流側滞留部29が形成される。また、第2搬送能力抑制部は、部分的に、第1螺旋羽根23bの外径が小さく設定されることによって形成されるものでもよい。
【符号の説明】
【0061】
20 現像装置
210 現像ハウジング(筐体)
23 第1攪拌スクリュー(現像剤搬送部)
23a 第1回転軸(回転軸)
23b 第1螺旋羽根(スクリュー羽根)
23c 第1パドル
24 第2攪拌スクリュー
24a 第2回転軸
24b 第2螺旋羽根
24c 第2パドル
25 トナー補給口(現像剤受入口)
26 第1搬送能力抑制部
27 滞留部(現像剤滞留部)
28 抑制パドル(第2搬送能力抑制部)
29 上流側滞留部
30 トナーコンテナ(補給現像剤収容部)
33 トナー排出口





【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を収容する筐体と、
前記筐体に着脱可能とされ、前記筐体に補給される補給現像剤を収容する補給現像剤収容部と、
前記筐体内に配設され、前記現像剤が搬送される現像剤搬送路と、
前記筐体に、前記現像剤搬送路に対向して配設され、前記補給現像剤収容部から前記補給現像剤を前記現像剤搬送路に受け入れる現像剤受入口と、
前記現像剤搬送路内に配設され、前記現像剤受入口が前記現像剤搬送路に対向する位置を通過するように一の搬送方向に前記現像剤を搬送する現像剤搬送部と、
前記現像剤搬送部の前記現像剤受入口よりも前記搬送方向下流側に配置され、前記現像剤搬送部の前記現像剤の搬送能力を部分的に抑制することによって、前記現像剤受入口が対向する位置に前記補給現像剤の受入量を調整する現像剤滞留部を形成する第1搬送能力抑制部と、
前記現像剤搬送部の前記現像剤受入口よりも前記搬送方向上流側に配置され、前記現像剤搬送部の前記現像剤の搬送能力を部分的に抑制することによって、前記現像剤受入口よりも前記搬送方向上流側に、上流側現像剤滞留部を形成する第2搬送能力抑制部と、
を有することを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記現像剤搬送部は、回転軸と、前記回転軸回りに形成されたスクリュー羽根とを有し、該スクリュー羽根の回転によって前記現像剤が搬送されることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記第1搬送能力抑制部は、前記スクリュー羽根を欠落させることによって形成されることを特徴とする請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記第2搬送能力抑制部は、前記回転軸の回転半径方向に延伸する板状部材が、前記回転軸または前記スクリュー羽根に付設されることによって形成されることを特徴とする請求項2または3に記載の現像装置。
【請求項5】
前記第2搬送能力抑制部は、前記スクリュー羽根の外径が小さく設定されることによって形成されることを特徴とする請求項2または3に記載の現像装置。
【請求項6】
前記第2搬送能力抑制部は、前記スクリュー羽根を欠落させることによって形成されることを特徴とする請求項2または3に記載の現像装置。
【請求項7】
表面に静電潜像が形成され、当該静電潜像が前記現像剤によって現像剤像に可視化される像担持体と、
請求項1乃至6の何れか1項に記載の現像装置と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−113894(P2013−113894A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257524(P2011−257524)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】