説明

現像装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置

【課題】現像剤規制部材と、それを保持するケース部材と、を異なる材料で形成した場合であっても、使用環境温度や機内温度が変動したときに、現像剤規制部材がケース部材とともに長手方向に撓む不具合が生じにくい、現像装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像剤規制部材23cを保持するケース部材23jに密着して保持されるとともに、ケース部材23jを形成する材料の線膨張係数よりも低い線膨張係数を有する材料からなりケース部材23jの熱変形を規制する規制部材23rを設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の電子写真方式を用いた画像形成装置とそこに設置される現像装置及びプロセスカートリッジとに関し、特に、現像剤担持体上の現像剤量を規制する現像剤規制部材が設置された現像装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ等の画像形成装置において、トナーとキャリアとからなる2成分現像剤(添加剤等を添加する場合も含むものとする。)を収容した現像装置に、現像剤担持体(現像ローラ)上に担持された現像剤の量を規制する現像剤規制部材を設置する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
2成分現像剤を用いた現像装置は、現像装置内におけるトナー消費に応じて、現像装置の一部に設けられたトナー補給口から現像装置内に適宜にトナーが補給される。補給されたトナーは、現像装置内の現像剤とともに、搬送スクリュ等の搬送部材(撹拌部材)によって撹拌・混合される。撹拌・混合された現像剤は、その一部が現像ローラ(現像剤担持体)に供給される。現像ローラに担持された現像剤は、ドクターブレード(現像剤規制部材、現像ドクタ)によって適量に規制された後に、その2成分現像剤中のトナーが感光体ドラム(像担持体)との対向位置で感光体ドラム上の潜像に付着する。
このような現像装置において、ドクターブレード(現像剤規制部材)は、ケース部材(現像ケーシング)上に、ドクターギャップ(現像ローラとドクターブレードとのギャップである。)を調整可能に保持されている。
【0004】
一方、特許文献1等には、現像ローラ上に担持された現像剤がドクターギャップの位置を通過する際に生じる圧力によって現像ドクタ(現像剤規制部材、ドクターブレード)の長手方向中央部が撓んでしまう不具合を防止するために、現像ドクタに形成した透孔を貫通して現像ドクタと現像ケーシング(ケース部材)とを跨いで現像ドクタを現像ケーシング上に保持する変形抑制部材を設置する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の現像装置は、ドクターブレード(現像剤規制部材)と、それを保持するケース部材と、の線膨張係数の違いから、使用環境温度や機内温度が変動したときに、ドクターブレードがケース部材とともに長手方向に撓んでしまい、ドクターギャップが変化してしまうことがあった。
【0006】
詳しくは、ドクターブレードは、ドクターギャップを通過する現像剤によって磨耗劣化しないようにある程度硬度の高いステンレス鋼等の高硬度材料で形成される必要があるのに対して、ケース部材は、現像装置内やドクターブレードの熱を外部に放出しやすいようにアルミニウム等の高熱伝導性材料で形成されることが多い。このように、材料が異なるケース部材によってドクターブレードが保持されているために、使用環境温度や機内温度が変動したときに、互いの部材の線膨張係数の違いからドクターブレードがケース部材とともに長手方向に撓んでしまい、ドクターギャップが長手方向にわたって不均一になってしまうことがあった。そして、そのような場合には、ドクターギャップの位置を通過する現像剤量も変化してしまい、出力画像における画像濃度が過不足してしまう不具合や、現像装置からトナーが飛散してしまう不具合等が生じてしまっていた。
【0007】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、使用環境温度や機内温度が変動したときに、現像剤規制部材がケース部材とともに長手方向に撓む不具合が生じにくい、現像装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の請求項1記載の発明にかかる現像装置は、現像剤を収容するとともに、像担持体上に形成される潜像を現像する現像装置であって、前記像担持体に対向するとともに、現像剤を担持する現像剤担持体と、前記現像剤担持体に対向するとともに、前記現像剤担持体上に担持された現像剤の量を規制する現像剤規制部材と、前記現像剤規制部材を保持するとともに、装置の内部と外部とを隔絶するためのケース部材と、前記ケース部材に密着して保持されるとともに、前記ケース部材を形成する材料の線膨張係数よりも低い線膨張係数を有する材料からなり前記ケース部材の熱変形を規制する規制部材と、を備えたものである。
【0009】
また、請求項2記載の発明にかかる現像装置は、前記請求項1に記載の発明において、前記規制部材を、長手方向に対して平行になるように曲げ部が少なくとも1つ形成された板状部材としたものである。
【0010】
また、請求項3記載の発明にかかる現像装置は、前記請求項2に記載の発明において、前記規制部材は、前記曲げ部が1つ形成されて、当該曲げ部が前記ケース部材の短手方向中心近傍に位置するように設置されたものである。
【0011】
また、請求項4記載の発明にかかる現像装置は、前記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の発明において、前記規制部材は、長手方向に延在する複数の面のうち少なくとも2つの面が、前記ケース部材に面接触するように設置されたものである。
【0012】
また、請求項5記載の発明にかかる現像装置は、前記請求項4に記載の発明において、前記規制部材は、前記ケース部材に面接触する前記少なくとも2つの面のうち1つの面が、長手方向の複数箇所でのネジ締結によって前記ケース部材に固定されたものである。
【0013】
また、請求項6記載の発明にかかる現像装置は、前記請求項4に記載の発明において、前記規制部材は、前記ケース部材に面接触する前記少なくとも2つの面のうち複数の面が、長手方向の複数箇所でのネジ締結によって前記ケース部材に固定されたものである。
【0014】
また、請求項7記載の発明にかかる現像装置は、前記請求項5又は請求項6に記載の発明において、前記規制部材は、長手方向に対して平行になるように曲げ部が少なくとも1つ形成された板状部材であって、前記ケース部材にネジ締結される前記複数箇所の長手方向の範囲が、前記曲げ部が形成された長手方向の範囲内に位置するように形成されたものである。
【0015】
また、請求項8記載の発明にかかる現像装置は、前記請求項1〜請求項7のいずれかに記載の発明において、前記規制部材は、装置の外部の側で前記ケース部材に保持されたものである。
【0016】
また、請求項9記載の発明にかかる現像装置は、前記請求項1〜請求項8のいずれかに記載の発明において、前記規制部材は、非磁性金属材料で形成されたものである。
【0017】
また、請求項10記載の発明にかかる現像装置は、前記請求項1〜請求項9のいずれかに記載の発明において、前記現像剤規制部材は、長手方向に対して平行になるように曲げ部が少なくとも1つ形成された板状部材であって、前記ケース部材に密着して保持されたものである。
【0018】
また、請求項11記載の発明にかかる現像装置は、前記請求項1〜請求項10のいずれかに記載の発明において、前記現像剤規制部材は、前記ケース部材を形成する材料の線膨張係数よりも低い線膨張係数を有する材料で形成されたものである。
【0019】
また、請求項12記載の発明にかかる現像装置は、前記請求項1〜請求項10のいずれかに記載の発明において、前記現像剤規制部材は、前記ケース部材を形成する材料の線膨張係数に対して同等の線膨張係数を有する材料で形成されたものである。
【0020】
また、この発明の請求項13記載の発明にかかるプロセスカートリッジは、画像形成装置の装置本体に対して着脱自在に設置されるプロセスカートリッジであって、請求項1〜請求項12のいずれかに記載の現像装置と前記像担持体とが一体化されたものである。
【0021】
また、この発明の請求項14記載の発明にかかる画像形成装置は、請求項1〜請求項12のいずれかに記載の現像装置と前記像担持体とを備えたものである。
【0022】
なお、本願において、「プロセスカートリッジ」とは、像担持体を帯電する帯電部と、像担持体上に形成された潜像を現像する現像部(現像装置)と、像担持体上をクリーニングするクリーニング部とのうち、少なくとも1つと、像担持体とが、一体化されて、画像形成装置本体に対して着脱自在に設置されるユニットと定義する。
【0023】
また、本願において、「長手方向」とは、現像剤担持体や像担持体の回転軸方向と一致する方向であるものと定義する。また、「短手方向」とは、「長手方向」に直交する方向であるものと定義する。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、ケース部材よりも低い線膨張係数を有する材料からなる規制部材が、ケース部材に密着して保持されているため、使用環境温度や機内温度が変動したときに、現像剤規制部材がケース部材とともに長手方向に撓む不具合が生じにくい、現像装置、プロセスカートリッジ、及び、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
【図2】図1の画像形成装置に設置されたプロセスカートリッジを示す拡大図である。
【図3】現像装置を示す拡大図である。
【図4】現像装置における循環経路を長手方向にみた断面図である。
【図5】図4の循環経路におけるY1−Y1断面を示す概略断面図である。
【図6】図4の循環経路におけるY2−Y2断面を示す概略断面図である。
【図7】図4の循環経路において現像剤に波状の偏りが生じた状態を示す図である。
【図8】上ケースの近傍を示す上面図である。
【図9】実験結果を示すグラフである。
【図10】別の形態の現像装置を示す拡大図である。
【図11】別の実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施の形態.
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0027】
まず、図1にて、実施の形態における画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
書込み部2A〜2Dは、画像情報に基いて帯電工程後の感光体ドラム21(像担持体)に静電潜像を書き込むための装置である。書込み部2A〜2Dは、ポリゴンミラー3A〜3Dや光学素子4A〜4D等を用いた光走査装置である。なお、書込み部として、光走査装置の替わりにLEDアレイを用いることもできる。
給紙部61は、記録紙、OHP等の被転写材Pを格納して、画像形成時には被転写材Pを転写ベルト30に向けて給送する。
【0028】
転写ベルト30は、被転写材Pをその表面に静電的に吸着させて搬送して感光体ドラム21上に形成されたトナー像を被転写材P上に転写するための無端状ベルトであって、その外周面上に吸着ローラ64とベルトクリーナ65とを設けている。
転写ベルト30を介して感光体ドラム21に対向する転写ローラ24は、芯金と芯金を被覆する導電性弾性層とを有する。転写ローラ24の導電性弾性層は、ポリウレタンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンポリエチレン(EPDM)等の弾性材料に、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化スズ等の導電性付与剤を配合分散して電気抵抗値(体積抵抗率)を中抵抗に調整した弾性体である。
【0029】
定着部66は、加熱ローラ68および加圧ローラ67を有し、被転写材P上のトナー像を圧力と熱とによって被転写材Pに定着させる。
転写ベルト30に沿って縦方向に配設された4つのプロセスカートリッジ20Y、20C、20M、20BKは、それぞれ、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックのトナー像を形成するためのものである。
【0030】
各プロセスカートリッジ20Y、20C、20M、20BK上には、キャリア(磁性キャリア)と各色(イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック)のトナー(トナー粒子)とを現像装置23に供給する供給手段としての剤カートリッジ28Y、28C、28M、28BKが設置されている。
プロセスカートリッジ20Y、20C、20M、20BK、及び、剤カートリッジ28Y、28C、28M、28BKは、転写ベルト30を回転支軸を中心に開放して装置本体1から着脱することができる。
【0031】
本実施の形態の画像形成装置は、複写機及びプリンタとして機能する複合型の画像形成装置である。複写機として機能する場合には、スキャナから読み込まれた画像情報に対してA/D変換、MTF補正、階調処理等の種々の画像処理が施されて書込みデータに変換される。プリンタとして機能する場合には、コンピュータ等から送信されるページ記述言語やビットマップ等の形式の画像情報に対して画像処理が施されて書込みデータに変換される。
【0032】
画像形成時には、書込み部2A〜2Dからプロセスカートリッジ20BK、20M、20C、20Yに対して、ブラック、マゼンタ、シアン、イエローの画像情報に応じた露光光がそれぞれ照射される。すなわち、各光源から発せられた露光光(レーザ光)がポリゴンミラー3A〜3D、光学素子4A〜4D等を通過して、各感光体ドラム21上に照射される。これによって、各プロセスカートリッジ20BK、20M、20C、20Yの感光体ドラム21(像担持体)上に、露光光に応じたトナー像が形成される。そして、このトナー像が、被転写材Pに転写されることになる。
【0033】
給紙部61から給送された被転写材Pは、レジストローラ63の位置で一旦タイミングを合わせて、転写ベルト30の位置に搬送される。転写ベルト30の送入位置に配設された吸着ローラ64は、電圧の印加によって送入された被転写材Pを転写ベルト30に吸着させる。転写ベルト30の矢印方向の走行にともない移動する被転写材Pは、各プロセスカートリッジ20Y、20C、20M、20BKの位置を順次通過して各色のトナー像が重ねて転写される。
【0034】
カラーのトナー像が転写された被転写材Pは、転写ベルト30から分離して定着部66に達する。被転写材P上のトナー像は、加熱ローラ68及び加圧ローラ67に挟まれつつ加熱されることで被転写材P上に定着される。一方、被転写材Pが分離した後の転写ベルト30表面は、その後にベルトクリーナ65の位置に達して、その表面に付着したトナー等の汚れがクリーニングされる。
【0035】
次に、画像形成装置におけるプロセスカートリッジ及び剤カートリッジについて詳述する。
なお、各プロセスカートリッジ20Y、20C、20M、20BKはほぼ同一構造であって、各剤カートリッジ28Y、28C、28M、28BKもほぼ同一構造であるために、図2にてプロセスカートリッジ及び剤カートリッジは符号のアルファベット(Y、C、M、BK)を除して図示する。また、書込み部は符号のアルファベット(A〜D)を除して図示する。
【0036】
図2は、装置本体1に設置されたプロセスカートリッジ20及び剤カートリッジ28を示す拡大図である。図3は、プロセスカートリッジ20に設置された現像装置23を示す拡大図である。図4は、現像装置23における循環経路を図3に示す矢印X方向から長手方向にみた断面図である。図5は、図4の現像装置23における循環経路のY1−Y1断面を示す断面図である。図6は、図4の現像装置23における循環経路のY2−Y2断面を示す断面図である。
【0037】
図2に示すように、プロセスカートリッジ20は、像担持体としての感光体ドラム21、帯電部22、現像装置23(現像部)、クリーニング部25が一体化されたものであって、プレミックス現像方式(キャリアの補給・排出を適宜におこなう現像方式である。)が採用されている。
像担持体としての感光体ドラム21は、負帯電の有機感光体であって、不図示の回転駆動機構によって反時計方向に回転駆動される。
【0038】
帯電部22は、芯金上に、ウレタン樹脂、導電性粒子としてのカーボンブラック、硫化剤、発泡剤等を処方した中抵抗の発泡ウレタン層をローラ状に形成した弾性を有する帯電ローラである。帯電部22の中抵抗層の材質としては、ウレタン、エチレン−プロピレン−ジエンポリエチレン(EPDM)、ブタジエンアクリロニトリルゴム(NBR)、シリコーンゴムや、イソプレンゴム等に抵抗調整のためにカーボンブラックや金属酸化物等の導電性物質を分散したゴム材や、またこれらを発泡させたものを用いることもできる。
クリーニング部25は、感光体ドラム21に摺接するクリーニングブラシ(又は、クリーニングブレード)が設置されていて、感光体ドラム21上の未転写トナーを機械的に除去・回収する。
【0039】
現像装置23は、現像剤担持体としての2つの現像ローラ23a1、23a2が感光体ドラム21に近接するように配置されていて、双方の対向部分には感光体ドラム21と磁気ブラシとが接触する現像領域が形成される。現像装置23内には、トナーTとキャリアCとからなる現像剤G(2成分現像剤)が収容されている。そして、現像装置23は、感光体ドラム21上に形成される静電潜像を現像する(トナー像を形成する。)。なお、現像装置23の構成・動作については、後で詳しく説明する。
【0040】
ここで、本実施の形態における現像装置23は、プレミックス現像方式のものであって、現像装置23内に適宜に新品のキャリアC(現像剤G)が剤カートリッジ28から供給されるとともに、劣化した現像剤Gが現像装置23の外部に設置された剤貯留容器70に向けて排出される。
図2を参照して、剤カートリッジ28は、その内部に現像装置23内に供給するための現像剤G(トナーT及びキャリアC)を収容している。そして、剤カートリッジ28は、現像装置23に新品のトナーTを供給するトナーカートリッジとして機能するとともに、現像装置23に新品のキャリアCを供給する供給手段として機能する。具体的に、現像装置23に設置された磁気センサ26(図4を参照できる。)によって検知されるトナー濃度(現像剤G中のトナーの割合である。)の情報に基いて、シャッタ機構80の開閉動作をおこなって、供給手段としての剤カートリッジ28から現像装置23内に向けて現像剤Gを適宜に供給する。
なお、本実施の形態では、剤カートリッジ28の現像剤Gにおける、キャリアCに対するトナーTの混合率(トナー濃度)が比較的高く設定されている。
【0041】
供給手段としての供給管29は、剤カートリッジ28から供給される現像剤G(トナーT及びキャリアC)を現像装置23内に確実に導くためのものである。すなわち、剤カートリッジ28から排出された現像剤Gは、供給管29を介して、現像装置23内に供給される。
【0042】
次に、感光体ドラム21上でおこなわれる作像プロセスについて説明する。
図2を参照して、感光体ドラム21が反時計方向に回転駆動されると、まず、帯電部22の位置で感光体ドラム21の表面が一様に帯電される。その後、帯電された感光体ドラム21表面は、露光光Lの照射位置に達して、書込み部2による露光工程がおこなわれる。すなわち、露光光Lの照射によって感光体ドラム21上を画像情報に応じて選択的に除電することで、照射されなかった非画像部の電位との差(電位コントラスト)を発生させて静電潜像を形成する。なお、この露光工程は、感光体ドラム21の感光層中で電荷発生物質が光を受けて電荷を発生して、このうち正孔が感光体ドラム21表面の帯電電荷と打ち消しあうものである。
【0043】
その後、潜像が形成された感光体ドラム21表面は、現像装置23との対向位置に達する。感光体ドラム21上の静電潜像は、現像ローラ23a1、23a2上の磁気ブラシと接触して、磁気ブラシ中の負帯電されたトナーTが付着されて可視化される。
詳しくは、上方の現像ローラ23a1の磁極による磁力で汲み上げられた現像剤Gは、現像剤規制部材としてのドクターブレード23cによって適量化された後に、感光体ドラム21との対向部である現像領域(2つの現像ローラ23a1、23a2と感光体ドラム21との対向領域である。)に搬送される。現像領域において穂立ちされたキャリアCが感光体ドラム21を摺擦する。このとき、キャリアCに混合されているトナーTは、キャリアCとの摩擦によって負帯電されている。これに対して、キャリアCは正帯電されている。不図示の電源部から現像ローラ23a1、23a2に対して、所定の現像バイアスが印加される。これによって、現像ローラ23a1、23a2と感光体ドラム21との間に電界が形成されて、負帯電されたトナーTが電界によって感光体ドラム21上の画像部にのみ選択的に付着してトナー像を形成する。
【0044】
その後、トナー像が形成された感光体ドラム21表面は、転写ベルト30及び転写ローラ24との対向位置に達する。そして、このタイミングに合わせてその対向位置に搬送された被転写材P上に、感光体ドラム21上のトナー像が転写される。このとき、転写ローラ24には、所定の電圧が印加されている。
その後、トナー像が転写された被転写材Pは、定着部66を通過して、排出ローラ69から装置外部に排出される。
【0045】
一方、転写工程時に被転写材Pに転写されずに感光体ドラム21上に残留したトナーT(未転写トナー)は、感光体ドラム21上に付着したままクリーニング部25との対向部に達する。そして、感光体ドラム21上の未転写トナーは、クリーニング部25で除去・回収される。
その後、感光体ドラム21表面は、不図示の除電部を通過して、感光体ドラム21における一連の作像プロセスが終了する。
【0046】
以下、現像装置23の構成・動作について詳述する。
図3を参照して、現像装置23は、現像剤担持体としての現像ローラ23a1、23a2、搬送部材としての搬送スクリュ23b1〜23b3(オーガスクリュ)、現像剤規制部材としてのドクターブレード23c、キャリア捕集ローラ23k、スクレーパ23m、排出スクリュ23n、ケース部材としての上ケース23j、規制部材としての規制板23r、等で構成されている。また、現像装置23内には、現像剤Gを搬送して循環経路を形成する3つの現像剤搬送部B1〜B3が形成されている。
【0047】
現像ローラ23a1、23a2は、アルミニウム、真鍮、ステンレス、導電性樹脂等の非磁性体を円筒形に形成してなるスリーブが不図示の回転駆動機構によって時計方向に回転されるように構成されている。現像ローラ23a1、23a2のスリーブ内には、スリーブの周面に現像剤Gの穂立ちを生じるように磁界を形成するマグネットが固設されている。マグネットから発せられる法線方向磁力線に沿うように、現像剤G中のキャリアCがスリーブ上にチェーン状に穂立ちする。このチェーン状に穂立ちしたキャリアCに帯電したトナーTが付着されて、磁気ブラシが形成される。磁気ブラシは、スリーブの回転によってスリーブと同方向(時計方向)に移送される。
【0048】
現像剤規制部材としてのドクターブレード23cは、現像領域の上流側に設置されていて、第1の現像ローラ23a1上の現像剤を適量に規制する。
ドクターブレード23c(現像剤規制部材)は、板厚が2mm程度のSUS316やSUSXM7等の非磁性金属材料で形成された板状部材であって、複数のネジ81によって上ケース23j(ケース部材)上にネジ締結(保持)されている(図8をも参照できる。)。
詳しくは、ドクターブレード23cは、長手方向(図3の紙面垂直方向である。)に対して平行になるように曲げ部が形成されている。すなわち、ドクターブレード23cは、図3に示すように、曲げ加工によってブーメラン状(くの字状)に形成されている。そして、図3に示すようにドクターブレード23cの平板部を上ケース23jの平面部に密着させた状態で、図8に示すように長手方向の4箇所でネジ81によってドクターブレード23cが上ケース23j上にネジ締結されている。具体的に、図示は省略するが、ネジ締結箇所に相当する位置に、ドクターブレード23cには長穴(図8の上下方向が長径方向となる長穴である。)が形成されていて、上ケース23jには雌ネジ部が形成されている。そして、それぞれのネジ締結箇所に、ドクターブレード23cの長穴を介してネジ81が上ケース23jの雌ネジ部に螺合されることで、ドクターブレード23cが上ケース23j上に保持(固定)されることになる。なお、ドクターブレード23cに長穴を形成することで、ドクターギャップ(ドクターブレード23cと第1現像ローラ23a1とのギャップである。)を調整しながら、ドクターブレード23cを上ケース23jにネジ締結することができる。また、ドクターブレード23cに曲げ部を設けることで、曲げ部を設けない場合に比べて、ドクターブレード23cの曲げ強度が向上して、ドクターギャップを通過する現像剤の圧力によってドクターブレード23cが撓んでしまう不具合が生じにくくなるとともに、上ケース23jとドクターブレード23cとの線膨張係数の差によってドクターブレード23cが上ケース23jとともに熱変形によって撓んでしまう不具合も生じにくくなる。
【0049】
ここで、ケース部材としての上ケース23jは、現像ケースを構成する他のケース部材(下ケース)とともに、現像装置23の内部と外部とを隔絶するものであって、下ケースに対して分割可能(着脱可能)に構成されている。
詳しくは、上ケース23jは、ドクターブレード23cを保持するとともに、第1現像剤搬送部B1の上方を覆うように構成されている。本実施の形態において、上ケース23jは、現像装置23内やドクターブレード23cの熱を外部に放出しやすくする必要があるとともに、ドクターブレード23cを保持する平面形状や第1現像剤搬送部B1に対向する曲面形状等が共存する比較的複雑な形状を形成する必要があるため、熱伝導性が高く加工性の高いアルミニウム(線膨張係数:23.6×10-6/℃程度である。)によって形成されている。
一方、ドクターブレード23cは、ドクターギャップを通過する現像剤によって磨耗劣化しないようにある程度硬度の高いSUS316、SUSXM7等の高硬度材料で形成する必要がある。そのため、本実施の形態では、ドクターブレード23cが、アルミニウムからなる上ケース23jの線膨張係数よりも低い線膨張係数を有する材料で形成されることになり、線膨張係数の差異が比較的大きな部材23c、23j同士がネジ締結されることになる。したがって、双方の部材23c、23jに熱変形が生じたときには、双方の部材23c、23jの線膨張の違いから締結状態にある双方の部材23c、23jが長手方向に撓みやすい状態になっている。このような不具合を抑止するために、本実施の形態では、上ケース23jの上面に、上ケース23j(及び、ドクターブレード23c)の熱変形を規制する規制部材としての規制板23rを設置しているが、これについては後で詳しく説明する。
【0050】
なお、本実施の形態において、ドクターブレード23cとして、第1現像剤搬送部B1に対向する面に板厚が0.3mm程度のSUS430等の磁性金属板を貼着したものを用いることもできる。
また、本実施の形態では、ケース部材としての上ケース23jを、他のケース部材(下ケース)に対して、分割可能(着脱可能)に構成した。これに対して、ケース部材としての上ケース23jを、他のケース部材(下ケース)と一体的に構成することもできる。
【0051】
図3を参照して、3つの搬送スクリュ23b1〜23b3は、軸部上に螺旋状にスクリュ部が形成されたものであって、現像装置23内に収容された現像剤Gを長手方向(図2の紙面垂直方向である。)に循環しながら撹拌・混合する。
第1搬送部材(1つの搬送部材)としての第1搬送スクリュ23b1は、第1現像剤搬送部B1であって現像ローラ23a1に対向する位置に配設されていて、現像剤Gを水平方向に搬送する(図4の白矢印に示す左方向の搬送である。)とともに、現像ローラ23a1上に現像剤23aを供給する。換言すると、第1現像剤搬送部B1は、現像ローラ23a1に対向するとともに、現像ローラ23a1に現像剤Gを長手方向(現像ローラ23a1の回転軸方向である。)に搬送しながら供給する。
【0052】
第2搬送部材としての第2搬送スクリュ23b2は、第2現像剤搬送部B2に設置されている。第2搬送スクリュ23b2は、第1搬送スクリュ23b1の下方であって現像ローラ23a2に対向する位置に配設されている。そして、現像ローラ23a2から離脱した現像剤G(現像工程後に剤離れ極によって現像ローラ23a2上から強制的に離脱された現像剤Gある。)を水平方向に搬送する(図4の白矢印に示す左方向の搬送である。)。換言すると、第2現像剤搬送部B2は、第1現像剤搬送部B1の下方であって現像ローラ23a2に対向する位置に配設されるとともに、現像ローラ23a2から離脱された現像剤Gを長手方向に搬送する。
第1搬送スクリュ23b1及び第2搬送スクリュ23b2は、現像ローラ23a1、23a2や感光体ドラム21と同様に、回転軸がほぼ水平になるように配設されている。
【0053】
第3搬送部材としての第3搬送スクリュ23b3は、第3現像剤搬送部B3に設置されている。第3搬送スクリュ23b3は、第2搬送スクリュ23b2による搬送経路の下流側と、第1搬送部材23b1による搬送経路の上流側と、を直線的に結ぶように、水平方向に対して斜めに配設されている(図4を参照できる。)。そして、第3搬送スクリュ23b3は、第2搬送スクリュ23b2によって搬送された現像剤Gを第1搬送部材23b1による搬送経路の上流側に搬送するとともに、第1搬送スクリュ23b1による搬送経路の下流側から落下経路23fを介して循環される現像剤Gを第1搬送部材23b1による搬送経路の上流側に搬送する(図4の白矢印に示す右斜め上方への搬送である。)。換言すると、第3現像剤搬送部B3は、第2現像剤搬送部B2によって搬送された現像剤Gを第1現像剤搬送部B1の上流側に搬送するとともに、第1現像剤搬送部B1の下流側に達した現像剤Gを第1現像剤搬送部B1の上流側に搬送する。
【0054】
なお、第1搬送スクリュ23b1による搬送経路(第1現像剤搬送部B1)と、第2搬送スクリュ23b2による搬送経路(第2現像剤搬送部B2)と、第3搬送スクリュ23b3による搬送経路(第3現像剤搬送部B3)と、は壁部によって隔絶されている。
図4を参照して、第2現像剤搬送部B2の下流側と、第3現像剤搬送部B3の上流側と、は第1中継部23gを介して連通している。また、第3現像剤搬送部B3の下流側と、第1現像剤搬送部B1の上流側と、は第2中継部23hを介して連通している。また、第1現像剤搬送部B1の下流側と、第3現像剤搬送部B3の上流側と、は落下経路23fを介して連通している。
【0055】
このような構成により、3つの現像剤搬送部B1〜B3(搬送スクリュ23b1〜23b3)によって、現像装置23において現像剤Gを長手方向に循環させる循環経路が形成されることになる。ここで、現像装置23が稼動されると、装置内に収容された現像剤は図4中の斜線で示すような状態で流動する。図4を参照して、第1現像剤搬送部B1において、下流側における現像剤の剤面が上流側の剤面に比べて低くなっているのは、搬送中の現像剤の一部が現像ローラ23a1に供給されているためである。すなわち、現像ローラ23a1に供給されなかった現像剤は、落下経路23fを介して第3現像剤搬送部B3の上流側に移動することになる。
なお、第3現像剤搬送部B3にはトナー濃度センサとしての磁気センサ26が設置されている。そして、磁気センサ26によって検知されるトナー濃度の情報に基いて、供給手段としての剤カートリッジ28から現像装置23内に向けて所定のトナー濃度の現像剤Gが供給される。本実施の形態では、現像装置23内の現像剤Gのトナー濃度が4〜7重量%になるように制御されている。
【0056】
ここで、図4及び図5を参照して、第1現像剤搬送部B1の壁部には、現像装置23内に収容された現像剤Gの一部を外部(剤貯溜容器70)に排出するための排出口23d(排出手段)が設けられている。詳しくは、排出口23dは、供給手段28、29によって現像装置23内に現像剤Gが供給されて装置内の現像剤量が増加してその位置に搬送される現像剤の剤面(上面)が所定高さを超えたときに、その余剰分の現像剤Gを剤貯留容器70に向けて排出するためのものである。すなわち、余剰分の現像剤Gは、排出口23dの下部の高さを超えて、排出口23dから排出されて排出経路71を経由して剤貯留容器70に向けて重力落下していく。このように、トナーTの母体樹脂や外添剤によって汚染されて劣化したキャリアが自動的に現像部の外部に排出されるので、経時においても画像品質の劣化を抑止することができる。
なお、図2、図4、図5等では図示を省略しているが、排出経路71中には、排出口23dから排出された現像剤を水平方向に搬送するための排出スクリュ23nが設置されている(図3を参照できる。)。この排出スクリュ23nは、図3の時計方向に回転する。
【0057】
また、現像装置23における現像剤の循環経路において、上述した排出口23d(排出手段)が配設された位置を通過せずに現像剤Gの一部を循環経路の上流側に戻すためのバイパス経路が形成されている。具体的には、図4及び図6を参照して、第1現像剤搬送部B1であって、排出口23dの上流側(排出口23dに比較的近接した位置である。)に、開口23eが設けられている。そして、この開口23eがバイパス経路の入口となって、バイパス経路の出口が第3搬送スクリュ23b3による搬送経路中(長手方向中央近傍である。)に配設されている。
【0058】
このように、現像装置23における現像剤の循環経路にバイパス経路を設けることで、現像装置内の現像剤に波状の偏り等が生じても、排出口23dから排出される現像剤量にバラツキが生じて、必要量を超えた現像剤が現像装置23から排出される不具合を抑止することができる。
【0059】
図7は、現像装置23における現像剤の循環経路において、現像剤に波状の偏りが生じた状態を示す図である。このように、現像剤の循環経路では、高低差の大きな波状の偏りが生じる場合がある。このような波状の偏りは、現像装置23の稼動を開始した直後(再起動直後)に顕著にあらわれる。そして、このような波状の偏りが生じた場合には、従来は、排出口23dの下部よりも高い位置にある現像剤(図7中の高さH2の現像剤である。)のすべてが排出口23dから排出されてしまっていた。このようにして排出されてしまう現像剤は本来的に排出を予定していないものであるために、このような現象が繰り返し生じると現像装置23内の現像剤量が不足してしまい、現像剤の劣化状態が不安定になったりトナーの帯電量が低下したりして、出力画像上に画像濃度低下等の不具合が生じてしまうことになる。
【0060】
これに対して、本実施の形態では、排出口23dの上流側にバイパス経路に通じる開口23eを設けているために、排出口23dの下部よりも高い位置にある現像剤の一部が排出口23dから排出されることなく、開口23eを通じて第3搬送スクリュ23b3における搬送経路に戻されることになる。これにより、排出口23dから過剰に現像剤が排出される不具合を抑止することができる。
【0061】
ここで、バイパス経路における開口23eの下部の高さが、排出口23dの下部の高さよりも高さH1だけ高くなるように構成されている。
これにより、排出口23dの下部よりも高い位置にある現像剤のうち、高さ(H2−H1)分の現像剤は排出口23dから排出されることなく、開口23eを通じて第3搬送スクリュ23b3における搬送経路に戻されることになる。これにより、排出手段の本来の機能を維持しつつ、排出口23dから過剰に現像剤が排出される不具合を確実に抑止することができる。ここで、排出口23dと開口23eとの長手方向の距離Wは、なるべく短い方が好ましい。
【0062】
ここで、図3を参照して(図2、図4〜図6等では図示を省略している。)、本実施の形態では、第2の現像ローラ23a2の下方(回転方向下流側)であって、感光体ドラム21に対向する位置に、キャリア捕集ローラ23kが設置されている。さらに、キャリア捕集ローラ23kに当接する位置に、スクレーパ23mが設置されている。
キャリア捕集ローラ23kは、ステンレス等からなる円筒体内に所定の磁界を形成するマグネットが固設されたものであって、現像装置23内から移動(飛翔)して感光体ドラム21に付着したキャリアを捕集するためのものである。キャリア捕集ローラ23kは、図3の反時計方向に回転駆動される。キャリア捕集ローラ23kによって捕集されて担持されたキャリアは、そのほとんどが第2の現像ローラ23a2との対向位置で現像ローラ23a2上に移行して、現像ローラ23a2の剤離れ極の位置で現像ローラ23a2から離脱して第2現像剤搬送部B2内に回収される。一方、現像ローラ23a2上に移行せずにキャリア捕集ローラ23k上に残留・担持されたキャリアは、スクレーパ23mによって機械的に掻き取られて、第2現像剤搬送部B2内に回収される。このように、キャリア捕集ローラ23kを設置することで、感光体ドラム21上に付着したキャリアを現像装置23内に回収できるために、異常画像(ホタル画像、白抜け画像)の発生が抑止されるとともに、現像装置23内のキャリアが不足する不具合が抑止される。
【0063】
なお、本実施の形態では、現像ローラ23a1、23a2の外径が30mm、現像ローラ23a1、23a2の外周面上の線速が748mm/秒、キャリア捕集ローラ23kの外径が16mm、キャリア捕集ローラ23kの外周面上の線速が10.6mm/秒、プロセス線速(感光体ドラム21の外周面上の線速、及び、被転写材Pの搬送速度である。)が440mm/秒、程度に設定されている。
また、本実施の形態において用いられるキャリアCは、粒径が55μm、飽和磁化が96emu/g、程度のものである。さらに、本実施の形態において用いられるトナーTは、粒径が6.8μm程度のものである。
【0064】
以下、図3及び図8にて、本実施の形態において特徴的な、現像装置23の構成・動作について詳述する。
図3を参照して、ドクターブレード23c(現像剤規制部材)を保持する上ケース23j(ケース部材)には、上ケース23jに密着して保持される規制部材としての規制板23rが設置されている。この規制部材としての規制板23rは、上ケース23jを形成する材料(本実施の形態では、アルミニウムである。)の線膨張係数よりも低い線膨張係数を有する材料からなっていて、上ケース23jの熱変形を規制するものである。
【0065】
本実施の形態において、規制板23r(規制部材)は、板厚が1.5mm程度のSUS304(線膨張係数:17.3×10-6/℃程度である。)等の非磁性金属材料で形成された板状部材であって、複数のネジ82によって上ケース23j(ケース部材)上にネジ締結(保持)されている(図8をも参照できる。)。
詳しくは、規制板23rは、長手方向(図3の紙面垂直方向である。)に対して平行になるように曲げ部23r1が1つ形成されている。すなわち、規制板23rは、図3に示すように、曲げ加工によってブーメラン状(くの字状)に形成されている。そして、図3に示すように規制板23rの平板部を上ケース23jの平面部に密着させるとともに、規制板23rの端面(板厚分に相当する端面である。)を上ケース23jの起立部の側面に密着させた状態で、図8に示すように長手方向の4箇所でネジ82によって規制板23rが上ケース23j上にネジ締結されている。具体的に、図示は省略するが、ネジ締結箇所に相当する位置に、規制板23rには長穴(図8の上下方向が長径方向となる長穴である。)が形成されていて、上ケース23jには雌ネジ部が形成されている。そして、それぞれのネジ締結箇所に、規制板23rの長穴を介してネジ82が上ケース23jの雌ネジ部に螺合されることで、規制板23rが上ケース23j上に保持(固定)されることになる。なお、規制板23rに長穴を形成することで、規制板23rにおいて長手方向に延在する2つの面(上述した平板部と端面とである。)を上ケース23jに確実に面接触させた状態で、規制板23rを上ケース23jにネジ締結することができる。なお、図8を参照して、規制板23rの長手方向(図8の左右方向である。)の長さは、上ケース23jのそれとほぼ同等に(又は、それより僅かに短くなるように)形成されている。
【0066】
このように、本実施の形態では、上ケース23jよりも低い線膨張係数を有する材料からなる規制板23rが、上ケース23jに密着して保持されているため、ドクターブレード23cと、それを保持する上ケース23jと、を異なる材料(線膨張係数が異なる材料)で形成した場合であっても、使用環境温度や機内温度が変動したときに、ドクターブレード23cが上ケース23jとともに長手方向に撓む不具合が生じにくくなる。すなわち、上ケース23jに熱変形が生じにくい材料で形成された規制板23rが設置されることで、ドクターブレード23cが保持された状態の上ケース23j自体も熱変形しにくくなって、上ケース23jとドクターブレード23cとの線膨張係数の差によってドクターブレード23cが上ケース23jとともに熱変形によって撓んでしまう不具合が生じにくくなる。これにより、使用環境温度や機内温度が変動しても、ドクターブレード23cが撓んでドクターギャップが長手方向にわたって不均一になる現象が生じにくくなって、出力画像における画像濃度が過不足してしまう不具合や、現像装置からトナーが飛散してしまう不具合等が発生しにくくなる。
【0067】
なお、本実施の形態では、規制板23rに曲げ部23r1が設けられているため、曲げ部23r1を設けない場合に比べて、規制板23r自体の機械的強度が高まって、上述した上ケース23jとドクターブレード23cとの熱変形による撓みを軽減する効果が高まることになる。
また、本実施の形態では、図3に示すように、曲げ部23r1が上ケース23jの短手方向(図3の左右方向である。)の中心近傍に位置するように、規制板23rが設置されている。このような構成により、規制板23rが、上ケース23jの中心部分を通る大黒柱のように機能することになり、上述した上ケース23jとドクターブレード23cとの熱変形による撓みを軽減する効果が高まることになる。
【0068】
また、本実施の形態では、規制板23rにおいて長手方向に延在する複数の面のうち2つの面(上述した平板部と端面とである。)を上ケース23jに面接触させた状態で、規制板23rを上ケース23jに固定しているため、1つの面(例えば、上述した平板部のみである。)を上ケース23jに面接触させた場合に比べて、上述した上ケース23jとドクターブレード23cとの熱変形による撓みを軽減する効果が高まることになる。
【0069】
また、本実施の形態では、図8を参照して、上ケース23jにネジ締結される複数箇所(4箇所)の長手方向の範囲が、曲げ部23r1が形成された長手方向の範囲内に位置するように、規制板23rが形成されている。
すなわち、規制板23rをネジ締結する4つのネジ82のうち長手方向両端に配設されたネジ82の位置は、いずれも、曲げ部23r1の長手方向両端の位置に対して、長手方向の外側ではなくて、長手方向の内側になるように構成されている。具体的に、上ケース23jの長手方向両端の位置を基準にすると、図8に示すように、D2<D4、D3<D5なる関係が成立する。
このように、長手方向に延在した規制板23rを長手方向の複数個所でネジ締結により上ケース23jに固定するとともに、それらのネジ締結の長手方向の範囲を曲げ部23r1の長手方向範囲内とすることで、曲げ部23r1を設けることによって上ケース23jとドクターブレード23cとの熱変形による撓みがさらに軽減される効果が確実に発揮されることになる。
なお、本実施の形態では、上ケース23jの長手方向の長さをD1としたときに、(D1−(D4+D5))/D1≒0.9なる関係が成立するように設定されている。
【0070】
また、本実施の形態では、図3に示すように、規制板23rが、現像装置23の内部の側ではなくて、現像装置23の外部の側で上ケース23jに保持されている。これにより、規制板23rが現像装置23内で流動する現像剤Gに接触することがないため、規制板23rの形状の自由度が高められることになる。すなわち、規制板23rが現像装置23の内部の側で上ケース23jに保持される場合には、第1現像剤搬送部B1における現像剤の搬送を妨げないように、第1搬送スクリュ23b1との対向面を曲面状に形成する等、規制板23rの形状に対する制約が生じてしまうことになる。
また、本実施の形態では、規制板23rが非磁性金属材料で形成されている。これにより、現像ローラ23a1、23a2の磁極によって規制板23rの周囲に磁界が形成されて、現像装置23内を流動する現像剤Gに影響を及ぼすような不具合を抑止することができる。
【0071】
図9は、上述した規制板23r(規制部材)を設置することによる効果を証明するために、本願発明者がおこなった実験の結果を示すグラフである。
図9において、横軸は実施例1〜3と比較例との4条件を示し、縦軸は比較例におけるドクターギャップの変動量を100%としたときのそれぞれの条件におけるドクターギャップの変動量の比を示す。すなわち、縦軸のドクターギャップ変動量比が小さいほど、温度変動によるドクターブレード23cの撓み量が小さくてドクターギャップの変動量が小さいことになる。なお、実験は、すべての条件について、環境温度を10℃から27℃に変化させたときのドクターギャップ変動を測定したものである。
また、比較例は従来の現像装置(本実施の形態における現像装置において規制板23rを除去したものである。)を用いて、実施例1は本実施の形態における現像装置23を用いて、実施例2は本実施の形態における現像装置において規制板23rの1面のみを上ケース23jに面接触させたものを用い、実施例3は本実施の形態における現像装置において規制板23rの曲げ部23r1を除去したもの(平板状の規制板である。)であって1面のみを上ケース23jに面接触させたものを用いている。
図9の実験結果からも、規制板23rを設けることによって温度変動によるドクターブレード23cの撓み量が小さくなってドクターギャップの変動量が小さくなることがわかる。特に、規制板23rの形状や設置条件を本実施の形態のものにすることで、上述した効果がさらに大きく発揮されることがわかる。
【0072】
なお、本実施の形態では、規制板23rの曲げ部23r1を1つとしたが、図10に示すように、規制板23rの曲げ部23r1を2つ設けることもできる。その場合には、規制板23r自体の機械的強度がさらに高まって、上述した上ケース23jとドクターブレード23cとの熱変形による撓みを軽減する効果がさらに高まることになる。
また、本実施の形態では、上ケース23jに面接触する1つの面のみを、長手方向の複数箇所でのネジ締結によって上ケース23jに固定した。これに対して、図10を参照して、規制板23rの曲げ部23r1を2つ設けた場合等には、上ケース23jに面接触する2つの面(平板部と、破線で囲んだ一方の曲げ部23r1と、である。)を、それぞれ、長手方向の複数箇所でのネジ締結によって上ケース23jに固定することができる。その場合には、規制板23rと上ケース23jとの密着度がさらに高まって、上述した上ケース23jとドクターブレード23cとの熱変形による撓みを軽減する効果がさらに高まることになる。
【0073】
以上説明したように、本実施の形態では、上ケース23j(ケース部材)よりも低い線膨張係数を有する材料からなる規制板23r(規制部材)が、上ケース23jに密着して保持されているため、ドクターブレード23c(現像剤規制部材)と、それを保持する上ケース23jと、を異なる材料で形成した場合であっても、使用環境温度や機内温度が変動したときに、ドクターブレード23cが上ケース23jとともに長手方向に撓む不具合を生じにくくすることができる。
【0074】
なお、本実施の形態では、現像剤搬送部B1〜B3が3つ設置された現像装置23に対して本発明を適用したが、現像剤搬送部が2つ以下又は4つ以上設置された現像装置に対しても本発明を適用することができる。その場合も、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施の形態では、第3搬送スクリュ23b3を水平方向に対して斜めに配設したが、第3搬送スクリュ23b3を水平に配設することもできる。
さらに、本実施の形態では、排出口23dを第1現像剤搬送部B1の壁部に設けたが、排出口23dをその他の現像剤搬送部B2、B3の壁部に設けることもできる。
【0075】
また、本実施の形態では、供給手段としての剤カートリッジ28から現像装置23に向けて現像剤G(トナーT及びキャリアC)を供給したが、供給手段からキャリアCのみを現像装置23に向けて供給することもできる。その場合、トナーのみが収容されたトナーカートリッジを剤カートリッジ(キャリアカートリッジ)とは別に設置して、磁気センサ26の検知結果に基いてトナーカートリッジに収容されたトナーを現像装置23に向けて適宜に補給することになる。
さらに、本実施の形態では、プレミックス現像方式の現像装置23に対して本発明を適用したが、それ以外の現像方式の現像装置であっても、ドクターブレード23c(現像剤規制部材)が設置された現像装置であれば、それらに対しても当然に本発明を適用することができる。
そして、それらの場合であっても、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
また、本実施の形態においては、作像部の一部がプロセスカートリッジ20で構成される画像形成装置に対して、本発明を適用した。しかし、本発明の適用はこれに限定されることなく、作像部がプロセスカートリッジ化されていない画像形成装置に対しても、当然に本発明を適用することができる。具体的に、現像装置23が単体で画像形成装置本体に着脱されるユニットして構成されている場合であっても、当然に本発明を適用することができる。
さらに、本実施の形態では、現像ローラ23a1、23a2が2つ設置された現像装置23に対して本発明を適用したが、現像ローラが1つ又は3つ以上設置された現像装置に対しても当然に本発明を適用することができる。その場合にも、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0077】
また、本実施の形態では、規制部材として板状部材の規制板23rを用いたが、規制部材の形態はこれに限定されることなく、例えば、規制部材として角柱状部材を用いることもできる。そして、その場合にも、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
また、本実施の形態では、ドクターブレード23c(現像剤規制部材)を、上ケース23j(ケース部材)を形成する材料の線膨張係数よりも低い線膨張係数を有する材料で形成した。
これに対して、ドクターブレード23c(現像剤規制部材)を、上ケース23j(ケース部材)を形成する材料の線膨張係数に対して同等の線膨張係数を有する材料で形成することもできる。詳しくは、ドクターブレード23cと上ケース23jとを同じ材料で形成した場合(例えば、ドクターブレード23cの材料に合わせて上ケース23jをSUS316で形成した場合や、上ケース23jの材料に合わせてドクターブレード23cをアルミニウムで形成した場合等である。)や、ドクターブレード23cと上ケース23jとを線膨張係数が近い異材料で形成した場合には、上ケース23jの放熱性、又は、ドクターブレード23cの機械的耐久性が低下してしまう可能性は生じるものの、使用環境温度や機内温度が変動したときに、ドクターブレード23cが上ケース23jとともに長手方向に撓む不具合がさらに生じにくくなる。
図11は、ドクターブレード23cと上ケース23jとが同等の線膨張係数を有する材料で形成されることによる効果を証明するために、本願発明者がおこなった実験の結果を示すグラフである。図11において、横軸は実施例4、5と比較例との3条件を示し、縦軸は比較例におけるドクターギャップの変動量を100%としたときのそれぞれの条件におけるドクターギャップの変動量の比を示す(図9に対応する図である。)。なお、実験は、すべての条件について、環境温度を10℃から27℃に変化させたときのドクターギャップ変動を測定したものである。
また、比較例は従来の現像装置(本実施の形態における現像装置において規制板23rを除去したものであって、図9における比較例と同条件のものである。)を用いて、実施例4は本実施の形態における現像装置においてドクターブレード23cと上ケース23jとをSUS316で形成したもの(但し、曲げ部のない平板状のドクターブレードを用いている。)を用いて、実施例5は本実施の形態における現像装置においてドクターブレード23cと上ケース23jとをSUS316で形成したものを用いている。
図11の実験結果からも、ドクターブレード23cと上ケース23jとを同等の線膨張係数を有する材料で形成することによって、温度変動によるドクターブレード23cの撓み量が小さくなってドクターギャップの変動量が小さくなることがわかる。特に、ドクターブレード23cの形状や設置条件を本実施の形態のものにすることで、上述した効果がさらに大きく発揮されることがわかる。
【0079】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【符号の説明】
【0080】
1 画像形成装置本体(装置本体)、
20、20Y、20C、20M、20BK プロセスカートリッジ、
21 感光体ドラム(像担持体)、
23 現像装置(現像部)、
23a1、23a2 現像ローラ(現像剤担持体)、
23c ドクターブレード(現像剤規制部材)、
23j 上ケース(ケース部材)、
23r 規制板(規制部材)、
23r1 曲げ部、
81、82 ネジ、
G 現像剤(2成分現像剤)、 T トナー、 C キャリア。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0081】
【特許文献1】特開2009−175360号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を収容するとともに、像担持体上に形成される潜像を現像する現像装置であって、
前記像担持体に対向するとともに、現像剤を担持する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に対向するとともに、前記現像剤担持体上に担持された現像剤の量を規制する現像剤規制部材と、
前記現像剤規制部材を保持するとともに、装置の内部と外部とを隔絶するためのケース部材と、
前記ケース部材に密着して保持されるとともに、前記ケース部材を形成する材料の線膨張係数よりも低い線膨張係数を有する材料からなり前記ケース部材の熱変形を規制する規制部材と、
を備えたことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記規制部材は、長手方向に対して平行になるように曲げ部が少なくとも1つ形成された板状部材であることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記規制部材は、前記曲げ部が1つ形成されて、当該曲げ部が前記ケース部材の短手方向中心近傍に位置するように設置されたことを特徴とする請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記規制部材は、長手方向に延在する複数の面のうち少なくとも2つの面が、前記ケース部材に面接触するように設置されたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の現像装置。
【請求項5】
前記規制部材は、前記ケース部材に面接触する前記少なくとも2つの面のうち1つの面が、長手方向の複数箇所でのネジ締結によって前記ケース部材に固定されたことを特徴とする請求項4に記載の現像装置。
【請求項6】
前記規制部材は、前記ケース部材に面接触する前記少なくとも2つの面のうち複数の面が、長手方向の複数箇所でのネジ締結によって前記ケース部材に固定されたことを特徴とする請求項4に記載の現像装置。
【請求項7】
前記規制部材は、
長手方向に対して平行になるように曲げ部が少なくとも1つ形成された板状部材であって、
前記ケース部材にネジ締結される前記複数箇所の長手方向の範囲が、前記曲げ部が形成された長手方向の範囲内に位置するように形成されたことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の現像装置。
【請求項8】
前記規制部材は、装置の外部の側で前記ケース部材に保持されたことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の現像装置。
【請求項9】
前記規制部材は、非磁性金属材料で形成されたことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の現像装置。
【請求項10】
前記現像剤規制部材は、長手方向に対して平行になるように曲げ部が少なくとも1つ形成された板状部材であって、前記ケース部材に密着して保持されたことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の現像装置。
【請求項11】
前記現像剤規制部材は、前記ケース部材を形成する材料の線膨張係数よりも低い線膨張係数を有する材料で形成されたことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載の現像装置。
【請求項12】
前記現像剤規制部材は、前記ケース部材を形成する材料の線膨張係数に対して同等の線膨張係数を有する材料で形成されたことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載の現像装置。
【請求項13】
画像形成装置の装置本体に対して着脱自在に設置されるプロセスカートリッジであって、
請求項1〜請求項12のいずれかに記載の現像装置と前記像担持体とが一体化されたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項14】
請求項1〜請求項12のいずれかに記載の現像装置と前記像担持体とを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−68606(P2012−68606A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279150(P2010−279150)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】