現像装置、現像方法及び記憶媒体
【課題】高いスループットが得られる現像装置を提供すること。
【解決手段】処理雰囲気を形成する気密な処理容器と、この処理容器内に搬入された基板の表面に現像液を結露させて液膜を形成するために、当該処理容器内に現像液のミストを供給する雰囲気ガス供給部と、前記液膜による現像を停止するために基板を乾燥する乾燥部と、を備えるように現像装置を構成する。現像液とレジストとの反応を停止させることができるので、洗浄モジュールによる洗浄処理と並行して現像処理を行うことができ、高いスループットが得られる。
【解決手段】処理雰囲気を形成する気密な処理容器と、この処理容器内に搬入された基板の表面に現像液を結露させて液膜を形成するために、当該処理容器内に現像液のミストを供給する雰囲気ガス供給部と、前記液膜による現像を停止するために基板を乾燥する乾燥部と、を備えるように現像装置を構成する。現像液とレジストとの反応を停止させることができるので、洗浄モジュールによる洗浄処理と並行して現像処理を行うことができ、高いスループットが得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その表面にレジストが塗布され、更に露光された基板を現像する現像装置、現像方法及び当該方法を実施するコンピュータプログラムを含む記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフォトレジスト(以下レジストという)の現像処理では、レジストが塗布され、所定のパターンに沿って露光された半導体ウエハ(以下、ウエハという)の表面にノズルから現像液を供給している。ウエハ面内の処理の均一性を得るために、前記現像液はウエハ表面全体に均一に液膜が形成されるように供給され、当該液膜によりレジストが溶解される。
【0003】
このように現像液の液膜を形成する手法としては、長尺の吐出口を備えたノズルを移動させながら静止状態にあるウエハに現像液を吐出して、ウエハ表面全体に液盛りを行う手法(パドル現像)や、ウエハを鉛直軸回りに回転させながら例えば当該ウエハの径方向に沿って現像液を供給し、遠心力により現像液を塗り広げる手法(パドルレス現像)が知られている。
【0004】
レジストを構成する材料の組成から考えて、現像液とレジストとの反応は比較的短時間で進行する。しかし、上記の各手法においては均一な液膜を形成するために多量の現像液を使用すると共に、時間をかけてこの現像液をウエハに供給している。このように現像液を供給する工程で多くの時間が費やされているために、現像液の供給を開始してからレジストとの反応を終了するまでにある程度の時間、例えばおおよそ30秒〜60秒を要している。
【0005】
ところで、ウエハの露光処理として液浸露光処理が行われる場合があり、この液浸露光に用いられる液がウエハへ与える影響を抑えるために、レジストの撥水性が高くなる傾向にある。しかし、撥水性が高いレジストを用いた場合、上記の各手法で現像を行うと、現像液に濡れない箇所が発生しやすくなってしまう。また、ウエハの径は大きくなる傾向にあり、ウエハの径が大きくなるほど、高撥水性のレジスト表面において現像液に濡れない箇所が現れる傾向が顕著になる。従って、このような高撥水性のレジストに対して現像液の液膜を均一に形成するために、より多くの現像液が必要になってしまい、コスト高になること及び現像液の供給時間が更に長くなってしまい、現像装置の高スループット化が妨げられることが懸念されている。
【0006】
そこで、現像液をミスト化してウエハに供給し、ウエハ表面全体に液膜を形成することを本発明者は検討している。ところで、従来の現像装置においては、同一の装置内にノズルから現像液を供給する機構と、ウエハを洗浄する洗浄機構とが設けられている。この洗浄機構は、上記の現像液の液膜が形成されたウエハに洗浄液を供給して洗浄処理を行う機構である。
【0007】
上述の現像液のミストをウエハに供給する現像装置においても、従来の現像装置と同様に現像液のミストを供給する現像機構と、前記洗浄機構とを同じ装置内に設けることが考えられる。しかし、そうなるとウエハに現像液のミストを供給している間及び形成された現像液の液膜とレジストとを反応させている間、洗浄機構はウエハに対して処理を行うことができず、処理を停止し、待機していなければならない。逆に、洗浄機構により洗浄処理が行われている間、現像液のミストを供給する機構はウエハに対して処理を行うことができず、処理を停止し、待機していなければならない。このような結果として、十分なスループットの向上が図れないおそれがある。
【0008】
特許文献1には霧状にした現像液を基板が収納されたチャンバ内に供給することが記載されている。しかし、この特許文献1には液膜を除去して現像処理を止めることについては記載されていない。従って、このような現像装置で処理を行った後、基板を洗浄装置に搬送する場合、現像液とレジストとの反応時間が長くなり、パターンの形状が劣化してしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−2777268(段落0139、141、178)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、高いスループットが得られる現像装置、現像方法及びこの現像方法を実施するコンピュータプログラムを備えた記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の現像装置は、露光された基板を現像する現像装置において、
処理雰囲気を形成する気密な処理容器と、
この処理容器内に搬入された基板の表面に現像液の液膜を形成するために、当該処理容器内に現像液のミストを供給する雰囲気ガス供給部と、
前記液膜による現像を停止するために基板を乾燥する乾燥部と、
を備えていることを特徴とする。
ここで、基板の表面を乾燥することは、前記液膜を構成する液分を除去することであり、現像液を構成する液分以外の他の成分は基板に付着していてよい。
【0012】
前記現像成分供給部は、基板の表面に現像液を結露させて液膜を形成するために当該処理容器内に現像液の蒸気を含む気体を供給するものであることに代えて、基板の表面に現像液の液膜を形成するために現像液のミストを供給するものであってもよい。前記乾燥部は、例えば処理容器内の処理雰囲気を外部雰囲気に開放するための容器開閉機構であり、例えば前記乾燥部は、前記処理容器内に設けられ、基板を載置する載置プレートと、この載置プレートを加熱する加熱部と、を含む。また、乾燥部は、処理容器内に載置された基板を受け取って当該処理容器の外に搬送するための移動プレートと、この移動プレートに設けられ、当該移動プレートを加熱するための加熱部と、を含んでいてもよく、前記乾燥部は、前記処理容器内の基板に乾燥用のガスを供給する乾燥用ガス供給部であってもよい。
【0013】
前記雰囲気ガス供給部は、例えば基板の表面に現像液の液膜を形成するために現像液のミストを供給するものであることに代えて、基板の表面に現像液を結露させて液膜を形成するために当該処理容器内に現像液の蒸気を含む気体を供給するものであり、基板が載置され、基板表面に前記蒸気が結露するように基板の温度を制御する温調プレートが設けられてもよい。前記雰囲気ガス供給部は、例えば雰囲気ガスを加熱する加熱手段を備え、例えば雰囲気ガスは、加熱雰囲気における現像液の飽和温度よりも高い温度に加熱される。
【0014】
本発明の現像方法は、露光された基板を現像する現像方法において、
処理雰囲気を形成する気密な処理容器内に基板を搬入する工程と、
次いで処理容器内に現像液のミストを供給し、基板の表面に現像液の液膜を形成する液膜形成工程と、
前記液膜による現像を停止するために基板を乾燥する乾燥工程と、
を含むことを特徴とする。
【0015】
前記液膜形成工程は、例えば処理容器内に現像液の蒸気を含む気体を供給する代わりに、基板の表面に現像液の液膜を形成するために現像液のミストを供給する工程である。前記乾燥工程は、例えば処理容器内の処理雰囲気を外部雰囲気に開放する工程であり、また、例えば前記処理容器内の載置プレート上に基板が載置された状態で載置プレートを介して当該基板を加熱する工程である。さらに、前記乾燥工程は、処理容器内に載置されている基板を、処理容器内と外との間で移動する移動プレートに受け渡し、この移動プレートを介して当該基板を加熱する工程であってもよい。さらに、前記乾燥工程は、前記処理容器内の基板に乾燥用のガスを供給する工程であってもよい。
【0016】
また、基板の表面に現像液の液膜を形成するために現像液のミストを供給する工程に代えて、基板の表面に現像液を結露させて液膜を形成するために当該処理容器内に現像液の蒸気を含む気体を供給する工程を含み、さらに、基板表面に前記蒸気が結露するように基板の温度を制御する工程を含んでいてもよい。例えば前記雰囲気ガスを加熱手段により加熱する工程を含み、雰囲気ガスは、加熱雰囲気における現像液の飽和温度よりも高い温度に加熱されてもよい。
【0017】
本発明の記憶媒体は、露光された基板を処理容器内にて現像する現像装置に用いられるプログラムを格納する記憶媒体において、
前記プログラムは、上述の現像方法を実行するようにステップ群が組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の現像装置は、基板の表面に形成された液膜による現像を停止するために基板を乾燥する乾燥部を備えているので、レジストと現像液との反応を停止させ、基板を洗浄装置へ搬送することができる。従って、現像装置と洗浄装置とで夫々並行して処理を行うことができるのでスループットの低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る現像装置の縦断側面図である。
【図2】前記現像装置の平面図である。
【図3】前記現像装置の斜視図である。
【図4】前記現像装置により処理が行われる手順を示した工程図である。
【図5】前記現像装置により処理が行われる手順を示した工程図である。
【図6】前記現像装置により処理が行われる手順を示した工程図である。
【図7】前記現像装置により処理が行われる手順を示した工程図である。
【図8】ウエハ表面が変化する様子を示した説明図である。
【図9】第2の実施形態に係る現像装置の縦断側面図である。
【図10】前記現像装置により処理が行われる手順を示した工程図である。
【図11】第1の実施形態の現像装置による他の現像手法を示した工程図である。
【図12】評価試験により得られたウエハの縦断面図である。
【図13】評価試験により得られたウエハの縦断面図である。
【図14】評価試験により得られたパターンのCDの平均と3σを示すグラフ図である。
【図15】評価試験により得られたパターンのCDの平均と3σを示すグラフ図である。
【図16】評価試験により得られたパターンのCDの平均と3σを示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
本発明の実施形態に係る現像装置1について、その縦断側面図、横断平面図である図1、図2を夫々参照しながら説明する。この現像装置1は筐体11を備えており、筺体11の側壁にはウエハWの搬送口12が開口している。この搬送口12を介して図2に示す搬送手段21によりウエハWが筐体11内に搬送される。
【0021】
例えばこのウエハWの表面には撥水性のレジスト膜が形成されており、このレジスト膜はポジレジストにより構成され、露光装置にて、所定のパターンに沿って露光されている。ただし、本発明の現像装置及び現像手法は、有機現像であっても適用することができ、ポジレジスト同様にネガレジストについても適用できる。有機現像とは有機物を主薬とする現像液を用いた現像である。また、ウエハWは、前記露光後この現像装置1に搬送するまでに加熱(ポストエクスポージャベーク:PEB)処理を受けている。搬送手段21は、ウエハWの側周を囲むアーム体22と、このアーム体22の側周に複数、この例では4つ設けられ、ウエハWの裏面を支持する支持部23とを備えている。
【0022】
筺体11内には、当該筐体11内を上下に仕切る仕切り板13が設けられている。仕切り板13の上側はウエハWを後述の処理容器5へ搬入するための搬入領域14aとして構成されている。搬入領域14aには冷却プレート15が設けられている。冷却プレート15は概ね円形に形成されており、前記搬送手段21との間でウエハWの受け渡しを行う際に、当該搬送手段21の支持部23と干渉しないように側周から中央に向かう切り欠き16が設けられている。冷却プレート15は、その裏面側に例えば温度調整された水を流すための図示しない流路を備えており、現像装置1の前段の加熱装置で加熱処理されたウエハWが冷却プレート15に載置されると、当該ウエハWが冷却される。
【0023】
冷却プレート15にはスリット17a,17bが設けられ、後述の昇降ピン42がこのスリット17a、17bを介して冷却プレート15の表面上に突出する。仕切り板13の下側の下方領域14bには駆動部18が設けられており、搬送口12側から後述の温調プレート3側へ向けて形成されたガイド15aに沿って、冷却プレート15を水平方向に移動させる。
【0024】
現像装置1の斜視図である図3も参照しながら説明する。現像装置1の奥側にはウエハWを載置する円形の温調プレート3が設けられており、温調プレート3の内部には温調された流体、例えば水の流路31が形成されている。温調プレート3には温調水供給管32、温調水回収管33の各々の一端が接続されており、温調水供給管32、温調水回収管33の各々の他端はポンプ34に接続されている。温調水供給管32には温調部35が介設されており、当該温調部35に供給された水を加熱するためのヒータと、熱交換により前記水を冷却する冷媒の流路とを備えている。前記ヒータの出力及び前記冷媒の流通量が制御されることにより、ユーザが設定する温度に前記水が温調される。
【0025】
温調水供給管32、温調水回収管33及び流路31は温調水の循環路をなしており、ポンプ34により温調水供給管32に供給された水は、前記温調部35にて温調されて流路31に供給される。そして、ポンプ34により流路31から温調水回収管33を介して回収され、繰り返し温調水供給管32に供給されて温調される。このように温調水が流通することで、温調プレート3の表面全体の温度が均一に、且つ温調部35にて温調される水の温度と同じ温度に制御される。そして、温調プレート3に載置されたウエハWは、この温調プレート3表面と同じ温度に温調される。
【0026】
温調プレート3の表面の中央部に吸引口36が開口しており、温調プレート3の表面の周縁部には温調プレート3の周方向に沿って複数の吸引口37が開口している。これら吸引口36,37には排気管38の一端が各々接続されている。各排気管38の他端は合流し、流量制御部39を介して真空ポンプなどにより構成される排気手段40に接続されている。流量制御部39は、バルブやマスフローコントローラを備え、排気量を制御する。
【0027】
温調プレート3の表面には、当該温調プレート3の周方向に3つの孔41が配列されており、この孔41には、温調プレート3の厚さ方向に3本の昇降ピン42が挿通されている(図1では便宜上2本のみ図示している)。昇降ピン42は、昇降機構43により温調プレート3の表面にて突没し、冷却プレート15と温調プレート3との間でウエハWの受け渡しを行う。温調プレート3内において、昇降ピン42の周囲には既述の温調水の漏れを防ぐためのシール部材44が設けられている。
【0028】
仕切り板13において、温調プレート3を囲うように複数の排気口45が開口しており、排気口45には排気管46の一端が接続されている。排気管46の他端は合流し、流量制御部47を介して排気手段40に接続されている。流量制御部47は、流量制御部39と同様に構成されている。また、仕切り板13上には排気口45を囲うようにOリング48が設けられている。
【0029】
温調プレート3上には処理容器5が設けられており、この処理容器5は、下方が開口した扁平な円形状の容器として構成されている。処理容器5は、支持部51を介して容器開閉機構をなす昇降機構52に接続され、当該昇降機構52により昇降自在に構成されている。図1に示すように処理容器5の下降時にはこの処理容器5の下端がOリング48に密着し、処理容器5内に気密な処理空間(処理雰囲気)Sが形成される。処理容器5の壁部には処理容器5の内壁を温調するヒータ59が設けられている。処理容器5の天井部の中央下面には霧状にした現像液を処理空間Sに供給するためのノズル53が設けられている。ノズル53は、処理容器5の天井中央部に設けられた開口部54を介して現像雰囲気ガス供給管55の一端に接続されている。
【0030】
現像雰囲気ガス供給管55の他端は、現像雰囲気ガス加熱部56、流量制御部57をこの順に介して現像液が貯留された現像液供給源58に接続されている。現像液供給源58は不図示の圧送手段を備え、現像雰囲気ガス供給管55の下流側に現像液を供給する。流量制御部57は流量制御部39、47と同様にバルブやマスフローコントローラを備え、下流側への現像液の供給流量を制御する。現像雰囲気ガス加熱部56は、現像雰囲気ガス供給管55から供給された現像液と、後述の不活性ガス供給管61から供給されたN2ガスとを混合し、現像液のミスト(以下、現像ミストという)を含んだ現像雰囲気ガスを生成することができる。生成した現像雰囲気ガスは、現像雰囲気ガス供給管55を介して処理空間Sに供給される。さらに、現像雰囲気ガス加熱部56は例えばヒータなどの加熱手段を備えており、この現像雰囲気ガスを加熱し、所定の温度に調整することができる。
【0031】
例えば現像処理時に流量制御部57により現像雰囲気ガス加熱部56に供給される現像液の供給流量及び現像雰囲気ガスの温度はウエハWの処理ごとに一定となるように制御される。また、処理空間Sへの現像雰囲気ガスの供給時間もウエハW毎に一定になるように制御され、排気口45及び吸引口36、37からの排気量も例えばウエハWの処理ごとに一定となるように制御される。これによって、各ウエハWに一定の量の現像ミストが付着し、所定の厚さの現像液膜50が形成される。現像雰囲気ガス供給管55及び現像雰囲気ガス加熱部56は、雰囲気ガス供給部を構成する。
【0032】
この現像装置1では、処理空間Sへ現像雰囲気ガスの供給が開始されてから、予め設定された時間が経過したときに、現像液膜50を構成する液分が除去されてウエハW表面は乾燥した状態にされ、現像液とレジストとの反応が停止する。その後、ウエハWは現像装置1の外部に設けられた洗浄装置に搬送され、洗浄処理を受けて、レジストパターンが解像される。
【0033】
現像雰囲気ガス加熱部56には不活性ガス供給管61の一端が接続されている。不活性ガス供給管61の他端は、流量制御部63を介して不活性ガス例えばN2ガスが貯留されたN2ガス供給源64に接続されている。N2ガスは、上記のように現像雰囲気ガスに含まれた状態で、処理空間Sに供給することもできるし、パージガスとして、現像雰囲気ガス供給管55を介して単独で処理空間Sに供給することもできる。また、N2ガスはこのように単独で処理空間Sに供給される場合でも、現像雰囲気ガス加熱部56にて、例えば所定の温度に加熱されて供給される。
【0034】
この現像装置1は制御部100により、各部の動作が制御される。制御部100は、例えばコンピュータからなり、不図示のプログラム格納部を有している。このプログラム格納部には、後述の作用で説明する現像処理が行われるように命令が組まれた例えばソフトウエアからなるプログラムが格納されている。このプログラムが制御部100に読み出されることで、制御部100は現像装置1の各部へ制御信号を送信する。それによって、処理容器5及び昇降ピン42の昇降、温調部35による水の温調、温調プレート3の流路31への温調水の供給、処理容器5のヒータ59の出力、N2ガスや現像雰囲気ガスの処理空間Sへの供給などが制御される。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスクまたはメモリーカードなどの記憶媒体に収納された状態でプログラム格納部に格納される。
【0035】
続いて、現像装置1の作用について図4〜図7を参照しながら説明する。また、図8には現像装置1及び前記洗浄装置による処理を受けて変化するウエハWの表面状態を示しており、この図8も適宜参照しながら説明する。温調プレート3の流路31には温調水が供給され、例えば温調プレート3表面が、予め設定された温度例えば20℃に温調される。また、排気口45及び吸引口36、37から所定の排気量で排気が行われると共にヒータ59により処理容器5の内壁の温度が、例えばウエハWに供給される現像雰囲気ガスの温度と同じ温度に温調される。
【0036】
続いて、搬送手段21が、現像装置1の前段の加熱装置にて加熱処理されたウエハWを保持した状態で、搬送口12を介して筐体11内に進入し(図4(a))、下降してウエハWを冷却プレート15に受け渡した後に後退する(図4(b))。図8(a)はこのときのウエハWの表面を示しており、その表面のレジスト膜71は、露光部72と非露光部73とからなる。
【0037】
冷却プレート15はウエハWを冷却しながら温調プレート3上へ前進する。冷却プレート15によりウエハWが温調プレート3上に搬送されると、昇降ピン42が上昇し、ウエハWを保持する(図4(c))。冷却プレート15が搬送口12側へ後退し(図5(a))、昇降ピン42が下降して、ウエハWが温調プレート3に載置される。ウエハWの中央部、周縁部が吸引口36、37に夫々吸引されて、ウエハWの裏面全体が温調プレート3表面に密着し、ウエハW全体が温調プレート3の表面温度と同じ温度になるように温調されると共に、処理容器5が下降して処理空間Sが形成される(図5(b))。
【0038】
現像雰囲気ガス加熱部56により現像ミストを含んだ現像雰囲気ガスが生成し、処理空間Sに供給され、前記現像ミストがウエハWに付着して、所定の膜厚の現像液膜50が形成されると(図5(c))、前記現像雰囲気ガスの供給と、排気口45からの排気とが停止し、現像液膜50とレジストとの反応が進行する(図6(a)、図8(b))。後に現像液膜50の除去を行うこと及び現像液の省液化の観点から、現像液膜の50膜厚H1が例えば1μm〜100μmになるように現像ミストの付着量が制御される。
【0039】
処理空間Sへ前記現像雰囲気ガスの供給を開始してから予め設定された時間が経過したときに、排気口45からの排気が再び開始されると共に処理空間Sに所定の温度に加熱されたN2ガスが供給され(図6(b))、処理空間Sの現像雰囲気ガスがパージされて除去されると共にウエハWの表面がN2ガスにより乾燥された状態となる(図6(c)、図8(c))。その後、N2ガスの供給が停止し、昇降ピン42がウエハWを温調プレート3から浮かせると共に処理容器5が上昇して処理空間Sが外部雰囲気に開放される(図7(a))。
【0040】
然る後、冷却プレート15が温調プレート3上に移動し、当該ウエハWが冷却プレート15に載置され、冷却プレート15は搬送口12へと移動する(図7(b))。そして、冷却プレート15にウエハWを受け渡す時とは逆の動作で搬送手段21がウエハWを受け取り、ウエハWは洗浄装置に搬送される。この洗浄装置において、ウエハWに洗浄液70が供給され、図8(d)に示すように露光部72が、この洗浄液に押し流され、ウエハW表面から除去されて、レジストパターンが解像される。その後、洗浄液70が除去され、ウエハWが乾燥される(図8(e))。
【0041】
このように、この現像装置1では、ウエハWを温調プレート3に載置して、その表面に現像ミストを含む現像雰囲気ガスを供給して現像液膜50を形成し、現像雰囲気ガスの供給を開始してから予め設定された時間が経過したときに、N2ガスを処理空間Sに供給し、ウエハW表面を乾燥させている。これによって、現像液とレジストとの反応を停止させることができるので、前記反応が進行し過ぎることによるレジストパターンの劣化が抑えられる。従って、現像装置1の外部に設けられた洗浄装置にウエハWを搬送し、当該洗浄装置にて洗浄処理を行うことができるので、現像装置1にて一のウエハWを、洗浄装置にて他のウエハWを夫々並行して処理することができる。その結果として、スループットの向上を図ることができる。
【0042】
また、現像装置1は従来のように現像液を供給する装置ではないため、現像液を供給するためのノズルの移動機構や、ウエハWを保持した状態で回転させる回転機構などが不要である。従って、この実施形態のように現像液を供給する装置と洗浄液を供給する装置とを分けても、これらの装置を設置するスペースの大型化を抑えることができる。
【0043】
上記の第1の実施形態で、現像雰囲気ガスの供給を開始してから予め設定された時間が経過したときに、N2ガスを供給する代わりに、処理容器5を上昇させ、処理空間Sを外部雰囲気に開放してウエハWの乾燥を行ってもよい。処理空間Sが開放されると、処理容器5の外部の空気がウエハWの周囲に流れ、ウエハWの周囲の雰囲気に含まれる現像液の分圧が低下し、現像液膜50の蒸気圧が低下する。その結果、現像液膜50を構成する液分が蒸発して、ウエハW表面が乾燥した状態となる。また、ウエハWが乾燥された状態とは、現像液を構成する液分が除去された状態であり、現像液を構成する他の成分はウエハWに付着していてよい。前記液分を除去すれば現像液とレジストとの反応が停止することが、後述の評価試験で確認されている。
【0044】
(第2の実施形態)
ウエハW表面を乾燥した状態にする工程としては上記の例に限られない。以下、そのようにウエハW表面を乾燥状態にする各実施形態について説明する。図9には第2の実施形態の現像装置101の縦断側面図を示している。この現像装置101の現像装置1との差異点として、現像装置101では加熱部としてヒータ102を備えた載置プレートである冷却プレート103が設けられている。ヒータ102が設けられることを除いて、冷却プレート103は冷却プレート15と同様に構成される。この現像装置101では、処理空間Sが開放されてウエハWが乾燥された後、さらに冷却プレート103で加熱されることにより当該ウエハWの乾燥が行われ、現像液膜50の液分が除去される。
【0045】
この現像装置101による処理手順について説明する。先ず、第1の実施形態と同様に冷却プレート103により、ウエハWが処理容器5に向けて搬送される。この処理容器5への搬送時において、例えばヒータ102の出力は低下しており、ウエハWは第1の実施形態と同様に冷却されながら、温調プレート3上へと搬送される。第1の実施形態と同様に現像液膜50の形成が行われると共に、ヒータ102の出力が上昇し、冷却プレート103の温度が上昇する(図10(a))。
【0046】
そして、温調プレート3にウエハWが載置されてから予め設定された時間が経過したときに、既述のように処理空間Sの外部雰囲気への開放が行われ、ウエハWの乾燥が進行する(図10(b))。そして、ウエハWが冷却プレート103に載置され、加熱されながら搬送口12へと搬送され、現像液膜50の液分が除去される(図10(c))。このような第2の実施形態においても第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0047】
また、第2の実施形態において、冷却プレート103の代わりに移動加熱プレートを設けてもよい。この移動加熱プレートは、例えばウエハWを冷却するための水の流路が設けられない他は、冷却プレート103と同様に構成される。そして、ウエハWを処理容器5へと搬送するときには当該ウエハWの冷却を行わず、ウエハWを温調プレート3から搬送口12へと搬送するときには、冷却プレート103と同様にウエハWを加熱する。
【0048】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では第1の実施形態の現像装置1が用いられる。第1の実施形態と同様にウエハWを温調プレート3に載置して、現像液膜50を形成する。そして、処理空間Sに現像雰囲気ガスを供給してから予め設定された時間が経過したときに、温調部35により温調プレート3の温度が、現像液の露点よりも高い温度、例えば沸点以上の温度に上昇する。それによって現像液膜50中の液分が蒸発して、ウエハWが乾燥状態とされる。その後は第1及び第2の実施形態と同様にウエハWが処理容器5から搬出される。
【0049】
上記の各実施形態で、現像ミストの最大粒子径は例えば50μm以下であり、平均粒子径は例えば10μm以下である。このように粒子径を制御し、現像ミストをいわゆるドライフォグとすることで、現像処理を行う際にウエハW以外の箇所が現像液に濡れてしまうことを抑えることができる。それによって、現像欠陥やパーティクルの発生を抑えることができる。また、上記の現像雰囲気ガスの形成方法としては、現像液を加熱することに限られず、現像液に超音波を印加してもよい。
【0050】
ところで、現像液膜50の形成手法としては、上記の例に限られない。例えば現像雰囲気ガス加熱部56において現像雰囲気ガスを、現像液の飽和温度よりも高い温度、例えば50℃に加熱し、現像液の蒸気(以下、現像蒸気と記載する)を生成する。そのように温度制御した現像雰囲気ガスを処理空間Sに供給すると共に温調プレート3によりウエハWを冷却して、前記現像蒸気をウエハW表面に結露させてもよい。この場合の現像装置1での処理工程について説明する。
【0051】
先ず、ヒータ59は処理容器5の内壁を、現像雰囲気ガスが結露しにくい温度に維持する。現像雰囲気ガスが結露しにくい温度とは、現像雰囲気ガスが結露しない温度も含み、処理空間Sに供給される現像雰囲気ガスに含まれる、現像液の蒸気の露点よりも高い温度のことを言う。そして、ウエハWが温調プレート3に載置されて、現像雰囲気ガスに含まれる現像蒸気の露点以下の温度に温調されると共に処理空間Sが形成される(図11(a))。処理空間Sに現像雰囲気ガスが供給され、前記現像蒸気がウエハW表面に結露し(図11(b))、所定の膜厚の現像液膜50が形成されると、現像雰囲気ガスの供給及び排気口45からの排気が停止する。その後、既述の第1の実施形態と同様にN2ガスが供給され、処理空間Sの現像雰囲気ガスが除去されると共にウエハWが乾燥される。
【0052】
このように現像ミストを含まない現像雰囲気ガスをウエハWに供給する場合でも、既述の各実施形態と同様の効果が得られる。前記現像雰囲気ガスを供給する場合、処理空間S形成時には昇降ピン42がウエハWを浮いた状態で保持し、処理空間Sへ現像雰囲気ガスを供給した後にウエハWを温調プレート3に載置して現像液膜50を形成してもよい。処理中に温調プレート3に結露した現像液は吸引口36、37から吸引される。また、現像雰囲気ガスは、現像ミスト及び現像蒸気の両方を含んでいてもよく、その場合は現像ミストの付着分と現像蒸気の結露分とにより、現像液膜50が形成される。
【0053】
また、上記のように現像液を結露させて現像液膜50を形成する場合でもウエハWの乾燥は、他の実施形態の乾燥手法が適用でき、例えば処理空間Sを開放することにより行ってもよい。その他に例えば、昇降ピン42を介してウエハWを温調プレート3から浮き上がらせ、処理空間Sに残留している現像蒸気の熱により、ウエハWを乾燥させてもよい。各乾燥工程を開始するタイミングとしては、例えば現像液とレジストとの反応が終了した時点であり、つまり洗浄処理を行ったとした場合に不要なレジストを除去できる時点である。
【0054】
各実施形態において、処理容器5のヒータ59を設けることで、処理容器5へ現像液が付着してパーティクルとなることをより確実に防いでいるが、このようなヒータ59を設けなくてもよい。例えば現像雰囲気ガス加熱部56で加熱されたN2ガスを単独で処理空間Sに供給し、処理容器5の内壁を加熱する。それによって、前記内壁を、現像蒸気が結露する温度よりも高い温度に制御し、その後、上記の現像雰囲気ガスを供給してもよい。
【0055】
各実施形態に示したウエハWの乾燥手法は互いに組み合わせることができる。例えば第1の実施形態に第2の実施形態の冷却プレート103を適用し、N2ガス供給後、さらに冷却プレート103によりウエハWを加熱し、現像液膜50を除去してもよい。このように冷却プレートによる現像液膜50の除去を行わない場合、搬送手段21と昇降ピン42との間で直接ウエハWの受け渡しが行われてもよい。
【0056】
(評価試験)
評価試験1
レジストが塗布され、所定のパターンに沿って露光されたウエハW1〜ウエハW3に夫々ノズルにより現像液を供給した。ウエハW1については現像液供給後のレジストの断面を撮像した。ウエハW2については現像液供給後に洗浄液を2秒供給した後、レジストの断面を撮像した。ウエハW3については現像液供給後に洗浄液を13秒供給した後、レジストの断面を撮像した。また、各ウエハW1〜W3に塗布するレジストの種類を変更して、同様の実験を行った。
【0057】
図12はこの評価試験1の結果を示している。図12(a)〜(c)が互いに同じレジストを用いたウエハW1〜W3の撮像結果であり、図12(d)〜(f)が互いに同じレジストを用いたウエハW1〜W3の撮像結果である。いずれのレジストを用いた場合であっても、洗浄液が供給されていないウエハW1についてはパターンの解像が進行していなかった。それに対して、洗浄液が供給されたウエハW2、W3についてはパターンが解像されていた。この実験の結果から露光されたレジストは、現像液が供給された段階ではなく、洗浄液が供給された段階で溶出を開始する。つまり、現像液により溶解された残渣を掻き出しているのではないことが分かる。従って、現像処理を行うにあたり、レジストに供給する現像液は少量であってもよいことが考えられる。この実験により本発明者は、上記の各実施形態のように、ウエハW表面に現像ミストを供給することで現像液の薄膜を形成することに思い至った。
【0058】
評価試験2
評価試験1と同様に露光されたウエハW1、W2を用意した。ウエハW1についてはスピンチャックに載置し、そのスピンチャックにより鉛直軸回りに回転させながら、ノズルより現像液を供給した。現像液を供給しながら当該現像液の供給位置を、ウエハW1の周縁部から中心部に向けて径方向に移動させ、その後は中心部に向けて所定の時間現像液の供給を続けた。現像液供給後、ウエハW1に洗浄液を供給して現像液を除去し、レジストの断面を撮像した。
【0059】
また、ウエハW2については容器本体と上蓋とからなる処理容器内に搬送した。上蓋を閉じて、処理容器内に気密な処理空間を形成した後、当該処理空間を排気しながら、第6の実施形態と同様に現像ミストを処理空間に供給して、処理雰囲気を形成した。現像ミスト供給後、ウエハW1に洗浄液を供給して現像液を除去し、レジストの断面を撮像した。
【0060】
図13(a)(b)はウエハW1の撮像結果を、図13(c)(d)はウエハW2の撮像結果を、夫々示している。このようにウエハW1とW2とで形成されたパターンの形状に殆ど差が見られなかった。この実験からミスト状にした現像液を用いてもノズルから現像液を供給する場合と同様に現像を行うことができることが示された。
【0061】
評価試験3
評価試験1、2と同様に露光されたウエハWを複数枚用意した。容器本体と上蓋とからなる処理容器に順次ウエハWを搬送し、上蓋を閉じて気密な処理空間を形成した後、処理空間を排気しながら、当該処理空間に前記現像ミストを供給して処理雰囲気を形成した。現像ミストの供給時間は45秒、60秒、90秒と夫々ウエハW毎に変更した。現像ミスト供給後は、上蓋を開いて処理空間を外部雰囲気に開放した後、ウエハWを取り出し、当該ウエハWに洗浄処理を行った。そして、各ウエハW面内の各所におけるレジストパターンのCDの平均を算出すると共にCDについて、ばらつきの指標である3σを算出した。現像ミストの供給時間が45秒、60秒、90秒である実験を、夫々評価試験3−1、3−2、3−3とする。
【0062】
評価試験4
評価試験2と同様にノズルから現像液を供給し、洗浄処理を行ったウエハWについても評価試験4と同様にCDの平均及び3σを算出した。ノズルからの現像液の供給時間は、ウエハWごとに変更した。この供給時間が短い順に夫々評価試験4−1、4−2、4−3とする。
【0063】
評価試験5
ウエハWの径方向に伸びる吐出口を備えたノズルをウエハWの一端側から他端側へ、現像液を吐出しながら移動させてウエハWに液盛りを行った後、洗浄処理を行った。現像液の供給時間はウエハW毎に変更しており、この供給時間が30秒、60秒であるものを夫々評価試験5−1、5−2とする。
【0064】
図14は評価試験3〜5の結果を示している。図中の棒グラフが各評価試験のCD平均を、図中の点が各評価試験の3σを夫々示している。この結果から、現像ミストとして現像液を供給する場合も、ノズルにより現像液を供給する場合と同様に現像液の供給時間が長くなるとCD平均が小さくなっていくことが分かる。また、3σについては、現像ミストとして現像液を供給する場合と、ノズルにより現像液を供給する場合との間で大きな差はない。これらの評価試験の結果から現像ミストによる現像は、ノズルにより現像液を供給する現像に比べてパターン形状に大きな影響を与えないことが示された。
【0065】
評価試験6
評価試験3と同様に、露光されたウエハWが搬入された処理空間を排気しながら、当該処理空間に現像ミストを供給した。現像ミストの供給時間は30秒とした。現像ミストの供給停止後、処理空間を外部雰囲気に開放してウエハW表面を乾燥させ、その後にウエハWの洗浄処理を行った。そして、評価試験3と同様にレジストパターンのCDの平均とCDの3σを算出した。現像ミストの供給停止から処理空間の開放までの時間はウエハW毎に設定し、夫々30秒、180秒とした。この開放までの時間が30秒であるものを評価試験6−1とし、180秒であるものを6−2とする。
【0066】
また、現像ミストの供給時間を60秒にして評価試験6−1、6−2と同様の実験を行った。現像ミストの供給停止から前記処理空間の開放までの時間はウエハW毎に変更し、夫々0秒、30秒、180秒とした。この開放までの時間が0秒、30秒、180秒であるものを夫々6−3、6−4、6−5とする。
【0067】
図15は評価試験6の結果を示している。図中の棒グラフがCDの平均を、図中の点がCDの3σを夫々示している。評価試験6−5では評価試験6−1〜6−4に比べて3σが若干大きくなっている。つまり、評価試験6−5ではパターンのCDのばらつきが若干大きくなっている。また、処理空間を開放するまでの時間が長くなるにつれて、CDの平均が小さくなっている。これは現像ミストの供給を停止しても、処理空間に残った現像ミストによりウエハW表面が乾燥せず、現像が進んだためであると考えられる。この評価試験6の結果から、パターン形状は、ウエハW表面が乾燥するまでの時間により影響されることが分かる。
【0068】
評価試験7
評価試験3と同様に、露光されたウエハWが搬入された処理空間を排気しながら、当該処理空間に現像ミストを供給した。現像ミストの供給時間は60秒とした。現像ミストの供給停止後、処理空間を開放してウエハW表面を乾燥させ、その後にウエハWの洗浄処理を行った。処理空間を開放してから洗浄処理を行うまでの時間はウエハW毎に設定し、夫々10秒、45秒、90秒、180秒、600秒とした。洗浄処理後は、評価試験3と同様にレジストパターンのCDの平均とCDの3σを算出した。洗浄処理を行うまでの時間が10秒、45秒、90秒、180秒、600秒であるものを夫々評価試験7−1、7−2、7−3、7−4、7−5とする。
【0069】
図16は評価試験7の結果を示している。図中の棒グラフがCDの平均を、図中の点がCDの3σを夫々示している。各評価試験間でCDの平均及び3σは大きく変動していない。従って、ウエハWの乾燥を行ってから洗浄処理を行うまでの時間はパターンの形状に大きく影響しないことが分かる。従って、上記のようにウエハW表面を乾燥させた後、洗浄装置までウエハWを搬送して洗浄処理を行うことが可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0070】
W ウエハ
S 処理空間
1 現像装置
11 筐体
12 搬送口
15 冷却プレート
21 搬送手段
3 温調プレート
35 温調部
36、37 吸引口
42 昇降ピン
43 昇降機構
45 排気口
5 処理容器
56 現像雰囲気ガス加熱部
100 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、その表面にレジストが塗布され、更に露光された基板を現像する現像装置、現像方法及び当該方法を実施するコンピュータプログラムを含む記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフォトレジスト(以下レジストという)の現像処理では、レジストが塗布され、所定のパターンに沿って露光された半導体ウエハ(以下、ウエハという)の表面にノズルから現像液を供給している。ウエハ面内の処理の均一性を得るために、前記現像液はウエハ表面全体に均一に液膜が形成されるように供給され、当該液膜によりレジストが溶解される。
【0003】
このように現像液の液膜を形成する手法としては、長尺の吐出口を備えたノズルを移動させながら静止状態にあるウエハに現像液を吐出して、ウエハ表面全体に液盛りを行う手法(パドル現像)や、ウエハを鉛直軸回りに回転させながら例えば当該ウエハの径方向に沿って現像液を供給し、遠心力により現像液を塗り広げる手法(パドルレス現像)が知られている。
【0004】
レジストを構成する材料の組成から考えて、現像液とレジストとの反応は比較的短時間で進行する。しかし、上記の各手法においては均一な液膜を形成するために多量の現像液を使用すると共に、時間をかけてこの現像液をウエハに供給している。このように現像液を供給する工程で多くの時間が費やされているために、現像液の供給を開始してからレジストとの反応を終了するまでにある程度の時間、例えばおおよそ30秒〜60秒を要している。
【0005】
ところで、ウエハの露光処理として液浸露光処理が行われる場合があり、この液浸露光に用いられる液がウエハへ与える影響を抑えるために、レジストの撥水性が高くなる傾向にある。しかし、撥水性が高いレジストを用いた場合、上記の各手法で現像を行うと、現像液に濡れない箇所が発生しやすくなってしまう。また、ウエハの径は大きくなる傾向にあり、ウエハの径が大きくなるほど、高撥水性のレジスト表面において現像液に濡れない箇所が現れる傾向が顕著になる。従って、このような高撥水性のレジストに対して現像液の液膜を均一に形成するために、より多くの現像液が必要になってしまい、コスト高になること及び現像液の供給時間が更に長くなってしまい、現像装置の高スループット化が妨げられることが懸念されている。
【0006】
そこで、現像液をミスト化してウエハに供給し、ウエハ表面全体に液膜を形成することを本発明者は検討している。ところで、従来の現像装置においては、同一の装置内にノズルから現像液を供給する機構と、ウエハを洗浄する洗浄機構とが設けられている。この洗浄機構は、上記の現像液の液膜が形成されたウエハに洗浄液を供給して洗浄処理を行う機構である。
【0007】
上述の現像液のミストをウエハに供給する現像装置においても、従来の現像装置と同様に現像液のミストを供給する現像機構と、前記洗浄機構とを同じ装置内に設けることが考えられる。しかし、そうなるとウエハに現像液のミストを供給している間及び形成された現像液の液膜とレジストとを反応させている間、洗浄機構はウエハに対して処理を行うことができず、処理を停止し、待機していなければならない。逆に、洗浄機構により洗浄処理が行われている間、現像液のミストを供給する機構はウエハに対して処理を行うことができず、処理を停止し、待機していなければならない。このような結果として、十分なスループットの向上が図れないおそれがある。
【0008】
特許文献1には霧状にした現像液を基板が収納されたチャンバ内に供給することが記載されている。しかし、この特許文献1には液膜を除去して現像処理を止めることについては記載されていない。従って、このような現像装置で処理を行った後、基板を洗浄装置に搬送する場合、現像液とレジストとの反応時間が長くなり、パターンの形状が劣化してしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−2777268(段落0139、141、178)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、高いスループットが得られる現像装置、現像方法及びこの現像方法を実施するコンピュータプログラムを備えた記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の現像装置は、露光された基板を現像する現像装置において、
処理雰囲気を形成する気密な処理容器と、
この処理容器内に搬入された基板の表面に現像液の液膜を形成するために、当該処理容器内に現像液のミストを供給する雰囲気ガス供給部と、
前記液膜による現像を停止するために基板を乾燥する乾燥部と、
を備えていることを特徴とする。
ここで、基板の表面を乾燥することは、前記液膜を構成する液分を除去することであり、現像液を構成する液分以外の他の成分は基板に付着していてよい。
【0012】
前記現像成分供給部は、基板の表面に現像液を結露させて液膜を形成するために当該処理容器内に現像液の蒸気を含む気体を供給するものであることに代えて、基板の表面に現像液の液膜を形成するために現像液のミストを供給するものであってもよい。前記乾燥部は、例えば処理容器内の処理雰囲気を外部雰囲気に開放するための容器開閉機構であり、例えば前記乾燥部は、前記処理容器内に設けられ、基板を載置する載置プレートと、この載置プレートを加熱する加熱部と、を含む。また、乾燥部は、処理容器内に載置された基板を受け取って当該処理容器の外に搬送するための移動プレートと、この移動プレートに設けられ、当該移動プレートを加熱するための加熱部と、を含んでいてもよく、前記乾燥部は、前記処理容器内の基板に乾燥用のガスを供給する乾燥用ガス供給部であってもよい。
【0013】
前記雰囲気ガス供給部は、例えば基板の表面に現像液の液膜を形成するために現像液のミストを供給するものであることに代えて、基板の表面に現像液を結露させて液膜を形成するために当該処理容器内に現像液の蒸気を含む気体を供給するものであり、基板が載置され、基板表面に前記蒸気が結露するように基板の温度を制御する温調プレートが設けられてもよい。前記雰囲気ガス供給部は、例えば雰囲気ガスを加熱する加熱手段を備え、例えば雰囲気ガスは、加熱雰囲気における現像液の飽和温度よりも高い温度に加熱される。
【0014】
本発明の現像方法は、露光された基板を現像する現像方法において、
処理雰囲気を形成する気密な処理容器内に基板を搬入する工程と、
次いで処理容器内に現像液のミストを供給し、基板の表面に現像液の液膜を形成する液膜形成工程と、
前記液膜による現像を停止するために基板を乾燥する乾燥工程と、
を含むことを特徴とする。
【0015】
前記液膜形成工程は、例えば処理容器内に現像液の蒸気を含む気体を供給する代わりに、基板の表面に現像液の液膜を形成するために現像液のミストを供給する工程である。前記乾燥工程は、例えば処理容器内の処理雰囲気を外部雰囲気に開放する工程であり、また、例えば前記処理容器内の載置プレート上に基板が載置された状態で載置プレートを介して当該基板を加熱する工程である。さらに、前記乾燥工程は、処理容器内に載置されている基板を、処理容器内と外との間で移動する移動プレートに受け渡し、この移動プレートを介して当該基板を加熱する工程であってもよい。さらに、前記乾燥工程は、前記処理容器内の基板に乾燥用のガスを供給する工程であってもよい。
【0016】
また、基板の表面に現像液の液膜を形成するために現像液のミストを供給する工程に代えて、基板の表面に現像液を結露させて液膜を形成するために当該処理容器内に現像液の蒸気を含む気体を供給する工程を含み、さらに、基板表面に前記蒸気が結露するように基板の温度を制御する工程を含んでいてもよい。例えば前記雰囲気ガスを加熱手段により加熱する工程を含み、雰囲気ガスは、加熱雰囲気における現像液の飽和温度よりも高い温度に加熱されてもよい。
【0017】
本発明の記憶媒体は、露光された基板を処理容器内にて現像する現像装置に用いられるプログラムを格納する記憶媒体において、
前記プログラムは、上述の現像方法を実行するようにステップ群が組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の現像装置は、基板の表面に形成された液膜による現像を停止するために基板を乾燥する乾燥部を備えているので、レジストと現像液との反応を停止させ、基板を洗浄装置へ搬送することができる。従って、現像装置と洗浄装置とで夫々並行して処理を行うことができるのでスループットの低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る現像装置の縦断側面図である。
【図2】前記現像装置の平面図である。
【図3】前記現像装置の斜視図である。
【図4】前記現像装置により処理が行われる手順を示した工程図である。
【図5】前記現像装置により処理が行われる手順を示した工程図である。
【図6】前記現像装置により処理が行われる手順を示した工程図である。
【図7】前記現像装置により処理が行われる手順を示した工程図である。
【図8】ウエハ表面が変化する様子を示した説明図である。
【図9】第2の実施形態に係る現像装置の縦断側面図である。
【図10】前記現像装置により処理が行われる手順を示した工程図である。
【図11】第1の実施形態の現像装置による他の現像手法を示した工程図である。
【図12】評価試験により得られたウエハの縦断面図である。
【図13】評価試験により得られたウエハの縦断面図である。
【図14】評価試験により得られたパターンのCDの平均と3σを示すグラフ図である。
【図15】評価試験により得られたパターンのCDの平均と3σを示すグラフ図である。
【図16】評価試験により得られたパターンのCDの平均と3σを示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
本発明の実施形態に係る現像装置1について、その縦断側面図、横断平面図である図1、図2を夫々参照しながら説明する。この現像装置1は筐体11を備えており、筺体11の側壁にはウエハWの搬送口12が開口している。この搬送口12を介して図2に示す搬送手段21によりウエハWが筐体11内に搬送される。
【0021】
例えばこのウエハWの表面には撥水性のレジスト膜が形成されており、このレジスト膜はポジレジストにより構成され、露光装置にて、所定のパターンに沿って露光されている。ただし、本発明の現像装置及び現像手法は、有機現像であっても適用することができ、ポジレジスト同様にネガレジストについても適用できる。有機現像とは有機物を主薬とする現像液を用いた現像である。また、ウエハWは、前記露光後この現像装置1に搬送するまでに加熱(ポストエクスポージャベーク:PEB)処理を受けている。搬送手段21は、ウエハWの側周を囲むアーム体22と、このアーム体22の側周に複数、この例では4つ設けられ、ウエハWの裏面を支持する支持部23とを備えている。
【0022】
筺体11内には、当該筐体11内を上下に仕切る仕切り板13が設けられている。仕切り板13の上側はウエハWを後述の処理容器5へ搬入するための搬入領域14aとして構成されている。搬入領域14aには冷却プレート15が設けられている。冷却プレート15は概ね円形に形成されており、前記搬送手段21との間でウエハWの受け渡しを行う際に、当該搬送手段21の支持部23と干渉しないように側周から中央に向かう切り欠き16が設けられている。冷却プレート15は、その裏面側に例えば温度調整された水を流すための図示しない流路を備えており、現像装置1の前段の加熱装置で加熱処理されたウエハWが冷却プレート15に載置されると、当該ウエハWが冷却される。
【0023】
冷却プレート15にはスリット17a,17bが設けられ、後述の昇降ピン42がこのスリット17a、17bを介して冷却プレート15の表面上に突出する。仕切り板13の下側の下方領域14bには駆動部18が設けられており、搬送口12側から後述の温調プレート3側へ向けて形成されたガイド15aに沿って、冷却プレート15を水平方向に移動させる。
【0024】
現像装置1の斜視図である図3も参照しながら説明する。現像装置1の奥側にはウエハWを載置する円形の温調プレート3が設けられており、温調プレート3の内部には温調された流体、例えば水の流路31が形成されている。温調プレート3には温調水供給管32、温調水回収管33の各々の一端が接続されており、温調水供給管32、温調水回収管33の各々の他端はポンプ34に接続されている。温調水供給管32には温調部35が介設されており、当該温調部35に供給された水を加熱するためのヒータと、熱交換により前記水を冷却する冷媒の流路とを備えている。前記ヒータの出力及び前記冷媒の流通量が制御されることにより、ユーザが設定する温度に前記水が温調される。
【0025】
温調水供給管32、温調水回収管33及び流路31は温調水の循環路をなしており、ポンプ34により温調水供給管32に供給された水は、前記温調部35にて温調されて流路31に供給される。そして、ポンプ34により流路31から温調水回収管33を介して回収され、繰り返し温調水供給管32に供給されて温調される。このように温調水が流通することで、温調プレート3の表面全体の温度が均一に、且つ温調部35にて温調される水の温度と同じ温度に制御される。そして、温調プレート3に載置されたウエハWは、この温調プレート3表面と同じ温度に温調される。
【0026】
温調プレート3の表面の中央部に吸引口36が開口しており、温調プレート3の表面の周縁部には温調プレート3の周方向に沿って複数の吸引口37が開口している。これら吸引口36,37には排気管38の一端が各々接続されている。各排気管38の他端は合流し、流量制御部39を介して真空ポンプなどにより構成される排気手段40に接続されている。流量制御部39は、バルブやマスフローコントローラを備え、排気量を制御する。
【0027】
温調プレート3の表面には、当該温調プレート3の周方向に3つの孔41が配列されており、この孔41には、温調プレート3の厚さ方向に3本の昇降ピン42が挿通されている(図1では便宜上2本のみ図示している)。昇降ピン42は、昇降機構43により温調プレート3の表面にて突没し、冷却プレート15と温調プレート3との間でウエハWの受け渡しを行う。温調プレート3内において、昇降ピン42の周囲には既述の温調水の漏れを防ぐためのシール部材44が設けられている。
【0028】
仕切り板13において、温調プレート3を囲うように複数の排気口45が開口しており、排気口45には排気管46の一端が接続されている。排気管46の他端は合流し、流量制御部47を介して排気手段40に接続されている。流量制御部47は、流量制御部39と同様に構成されている。また、仕切り板13上には排気口45を囲うようにOリング48が設けられている。
【0029】
温調プレート3上には処理容器5が設けられており、この処理容器5は、下方が開口した扁平な円形状の容器として構成されている。処理容器5は、支持部51を介して容器開閉機構をなす昇降機構52に接続され、当該昇降機構52により昇降自在に構成されている。図1に示すように処理容器5の下降時にはこの処理容器5の下端がOリング48に密着し、処理容器5内に気密な処理空間(処理雰囲気)Sが形成される。処理容器5の壁部には処理容器5の内壁を温調するヒータ59が設けられている。処理容器5の天井部の中央下面には霧状にした現像液を処理空間Sに供給するためのノズル53が設けられている。ノズル53は、処理容器5の天井中央部に設けられた開口部54を介して現像雰囲気ガス供給管55の一端に接続されている。
【0030】
現像雰囲気ガス供給管55の他端は、現像雰囲気ガス加熱部56、流量制御部57をこの順に介して現像液が貯留された現像液供給源58に接続されている。現像液供給源58は不図示の圧送手段を備え、現像雰囲気ガス供給管55の下流側に現像液を供給する。流量制御部57は流量制御部39、47と同様にバルブやマスフローコントローラを備え、下流側への現像液の供給流量を制御する。現像雰囲気ガス加熱部56は、現像雰囲気ガス供給管55から供給された現像液と、後述の不活性ガス供給管61から供給されたN2ガスとを混合し、現像液のミスト(以下、現像ミストという)を含んだ現像雰囲気ガスを生成することができる。生成した現像雰囲気ガスは、現像雰囲気ガス供給管55を介して処理空間Sに供給される。さらに、現像雰囲気ガス加熱部56は例えばヒータなどの加熱手段を備えており、この現像雰囲気ガスを加熱し、所定の温度に調整することができる。
【0031】
例えば現像処理時に流量制御部57により現像雰囲気ガス加熱部56に供給される現像液の供給流量及び現像雰囲気ガスの温度はウエハWの処理ごとに一定となるように制御される。また、処理空間Sへの現像雰囲気ガスの供給時間もウエハW毎に一定になるように制御され、排気口45及び吸引口36、37からの排気量も例えばウエハWの処理ごとに一定となるように制御される。これによって、各ウエハWに一定の量の現像ミストが付着し、所定の厚さの現像液膜50が形成される。現像雰囲気ガス供給管55及び現像雰囲気ガス加熱部56は、雰囲気ガス供給部を構成する。
【0032】
この現像装置1では、処理空間Sへ現像雰囲気ガスの供給が開始されてから、予め設定された時間が経過したときに、現像液膜50を構成する液分が除去されてウエハW表面は乾燥した状態にされ、現像液とレジストとの反応が停止する。その後、ウエハWは現像装置1の外部に設けられた洗浄装置に搬送され、洗浄処理を受けて、レジストパターンが解像される。
【0033】
現像雰囲気ガス加熱部56には不活性ガス供給管61の一端が接続されている。不活性ガス供給管61の他端は、流量制御部63を介して不活性ガス例えばN2ガスが貯留されたN2ガス供給源64に接続されている。N2ガスは、上記のように現像雰囲気ガスに含まれた状態で、処理空間Sに供給することもできるし、パージガスとして、現像雰囲気ガス供給管55を介して単独で処理空間Sに供給することもできる。また、N2ガスはこのように単独で処理空間Sに供給される場合でも、現像雰囲気ガス加熱部56にて、例えば所定の温度に加熱されて供給される。
【0034】
この現像装置1は制御部100により、各部の動作が制御される。制御部100は、例えばコンピュータからなり、不図示のプログラム格納部を有している。このプログラム格納部には、後述の作用で説明する現像処理が行われるように命令が組まれた例えばソフトウエアからなるプログラムが格納されている。このプログラムが制御部100に読み出されることで、制御部100は現像装置1の各部へ制御信号を送信する。それによって、処理容器5及び昇降ピン42の昇降、温調部35による水の温調、温調プレート3の流路31への温調水の供給、処理容器5のヒータ59の出力、N2ガスや現像雰囲気ガスの処理空間Sへの供給などが制御される。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスクまたはメモリーカードなどの記憶媒体に収納された状態でプログラム格納部に格納される。
【0035】
続いて、現像装置1の作用について図4〜図7を参照しながら説明する。また、図8には現像装置1及び前記洗浄装置による処理を受けて変化するウエハWの表面状態を示しており、この図8も適宜参照しながら説明する。温調プレート3の流路31には温調水が供給され、例えば温調プレート3表面が、予め設定された温度例えば20℃に温調される。また、排気口45及び吸引口36、37から所定の排気量で排気が行われると共にヒータ59により処理容器5の内壁の温度が、例えばウエハWに供給される現像雰囲気ガスの温度と同じ温度に温調される。
【0036】
続いて、搬送手段21が、現像装置1の前段の加熱装置にて加熱処理されたウエハWを保持した状態で、搬送口12を介して筐体11内に進入し(図4(a))、下降してウエハWを冷却プレート15に受け渡した後に後退する(図4(b))。図8(a)はこのときのウエハWの表面を示しており、その表面のレジスト膜71は、露光部72と非露光部73とからなる。
【0037】
冷却プレート15はウエハWを冷却しながら温調プレート3上へ前進する。冷却プレート15によりウエハWが温調プレート3上に搬送されると、昇降ピン42が上昇し、ウエハWを保持する(図4(c))。冷却プレート15が搬送口12側へ後退し(図5(a))、昇降ピン42が下降して、ウエハWが温調プレート3に載置される。ウエハWの中央部、周縁部が吸引口36、37に夫々吸引されて、ウエハWの裏面全体が温調プレート3表面に密着し、ウエハW全体が温調プレート3の表面温度と同じ温度になるように温調されると共に、処理容器5が下降して処理空間Sが形成される(図5(b))。
【0038】
現像雰囲気ガス加熱部56により現像ミストを含んだ現像雰囲気ガスが生成し、処理空間Sに供給され、前記現像ミストがウエハWに付着して、所定の膜厚の現像液膜50が形成されると(図5(c))、前記現像雰囲気ガスの供給と、排気口45からの排気とが停止し、現像液膜50とレジストとの反応が進行する(図6(a)、図8(b))。後に現像液膜50の除去を行うこと及び現像液の省液化の観点から、現像液膜の50膜厚H1が例えば1μm〜100μmになるように現像ミストの付着量が制御される。
【0039】
処理空間Sへ前記現像雰囲気ガスの供給を開始してから予め設定された時間が経過したときに、排気口45からの排気が再び開始されると共に処理空間Sに所定の温度に加熱されたN2ガスが供給され(図6(b))、処理空間Sの現像雰囲気ガスがパージされて除去されると共にウエハWの表面がN2ガスにより乾燥された状態となる(図6(c)、図8(c))。その後、N2ガスの供給が停止し、昇降ピン42がウエハWを温調プレート3から浮かせると共に処理容器5が上昇して処理空間Sが外部雰囲気に開放される(図7(a))。
【0040】
然る後、冷却プレート15が温調プレート3上に移動し、当該ウエハWが冷却プレート15に載置され、冷却プレート15は搬送口12へと移動する(図7(b))。そして、冷却プレート15にウエハWを受け渡す時とは逆の動作で搬送手段21がウエハWを受け取り、ウエハWは洗浄装置に搬送される。この洗浄装置において、ウエハWに洗浄液70が供給され、図8(d)に示すように露光部72が、この洗浄液に押し流され、ウエハW表面から除去されて、レジストパターンが解像される。その後、洗浄液70が除去され、ウエハWが乾燥される(図8(e))。
【0041】
このように、この現像装置1では、ウエハWを温調プレート3に載置して、その表面に現像ミストを含む現像雰囲気ガスを供給して現像液膜50を形成し、現像雰囲気ガスの供給を開始してから予め設定された時間が経過したときに、N2ガスを処理空間Sに供給し、ウエハW表面を乾燥させている。これによって、現像液とレジストとの反応を停止させることができるので、前記反応が進行し過ぎることによるレジストパターンの劣化が抑えられる。従って、現像装置1の外部に設けられた洗浄装置にウエハWを搬送し、当該洗浄装置にて洗浄処理を行うことができるので、現像装置1にて一のウエハWを、洗浄装置にて他のウエハWを夫々並行して処理することができる。その結果として、スループットの向上を図ることができる。
【0042】
また、現像装置1は従来のように現像液を供給する装置ではないため、現像液を供給するためのノズルの移動機構や、ウエハWを保持した状態で回転させる回転機構などが不要である。従って、この実施形態のように現像液を供給する装置と洗浄液を供給する装置とを分けても、これらの装置を設置するスペースの大型化を抑えることができる。
【0043】
上記の第1の実施形態で、現像雰囲気ガスの供給を開始してから予め設定された時間が経過したときに、N2ガスを供給する代わりに、処理容器5を上昇させ、処理空間Sを外部雰囲気に開放してウエハWの乾燥を行ってもよい。処理空間Sが開放されると、処理容器5の外部の空気がウエハWの周囲に流れ、ウエハWの周囲の雰囲気に含まれる現像液の分圧が低下し、現像液膜50の蒸気圧が低下する。その結果、現像液膜50を構成する液分が蒸発して、ウエハW表面が乾燥した状態となる。また、ウエハWが乾燥された状態とは、現像液を構成する液分が除去された状態であり、現像液を構成する他の成分はウエハWに付着していてよい。前記液分を除去すれば現像液とレジストとの反応が停止することが、後述の評価試験で確認されている。
【0044】
(第2の実施形態)
ウエハW表面を乾燥した状態にする工程としては上記の例に限られない。以下、そのようにウエハW表面を乾燥状態にする各実施形態について説明する。図9には第2の実施形態の現像装置101の縦断側面図を示している。この現像装置101の現像装置1との差異点として、現像装置101では加熱部としてヒータ102を備えた載置プレートである冷却プレート103が設けられている。ヒータ102が設けられることを除いて、冷却プレート103は冷却プレート15と同様に構成される。この現像装置101では、処理空間Sが開放されてウエハWが乾燥された後、さらに冷却プレート103で加熱されることにより当該ウエハWの乾燥が行われ、現像液膜50の液分が除去される。
【0045】
この現像装置101による処理手順について説明する。先ず、第1の実施形態と同様に冷却プレート103により、ウエハWが処理容器5に向けて搬送される。この処理容器5への搬送時において、例えばヒータ102の出力は低下しており、ウエハWは第1の実施形態と同様に冷却されながら、温調プレート3上へと搬送される。第1の実施形態と同様に現像液膜50の形成が行われると共に、ヒータ102の出力が上昇し、冷却プレート103の温度が上昇する(図10(a))。
【0046】
そして、温調プレート3にウエハWが載置されてから予め設定された時間が経過したときに、既述のように処理空間Sの外部雰囲気への開放が行われ、ウエハWの乾燥が進行する(図10(b))。そして、ウエハWが冷却プレート103に載置され、加熱されながら搬送口12へと搬送され、現像液膜50の液分が除去される(図10(c))。このような第2の実施形態においても第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0047】
また、第2の実施形態において、冷却プレート103の代わりに移動加熱プレートを設けてもよい。この移動加熱プレートは、例えばウエハWを冷却するための水の流路が設けられない他は、冷却プレート103と同様に構成される。そして、ウエハWを処理容器5へと搬送するときには当該ウエハWの冷却を行わず、ウエハWを温調プレート3から搬送口12へと搬送するときには、冷却プレート103と同様にウエハWを加熱する。
【0048】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では第1の実施形態の現像装置1が用いられる。第1の実施形態と同様にウエハWを温調プレート3に載置して、現像液膜50を形成する。そして、処理空間Sに現像雰囲気ガスを供給してから予め設定された時間が経過したときに、温調部35により温調プレート3の温度が、現像液の露点よりも高い温度、例えば沸点以上の温度に上昇する。それによって現像液膜50中の液分が蒸発して、ウエハWが乾燥状態とされる。その後は第1及び第2の実施形態と同様にウエハWが処理容器5から搬出される。
【0049】
上記の各実施形態で、現像ミストの最大粒子径は例えば50μm以下であり、平均粒子径は例えば10μm以下である。このように粒子径を制御し、現像ミストをいわゆるドライフォグとすることで、現像処理を行う際にウエハW以外の箇所が現像液に濡れてしまうことを抑えることができる。それによって、現像欠陥やパーティクルの発生を抑えることができる。また、上記の現像雰囲気ガスの形成方法としては、現像液を加熱することに限られず、現像液に超音波を印加してもよい。
【0050】
ところで、現像液膜50の形成手法としては、上記の例に限られない。例えば現像雰囲気ガス加熱部56において現像雰囲気ガスを、現像液の飽和温度よりも高い温度、例えば50℃に加熱し、現像液の蒸気(以下、現像蒸気と記載する)を生成する。そのように温度制御した現像雰囲気ガスを処理空間Sに供給すると共に温調プレート3によりウエハWを冷却して、前記現像蒸気をウエハW表面に結露させてもよい。この場合の現像装置1での処理工程について説明する。
【0051】
先ず、ヒータ59は処理容器5の内壁を、現像雰囲気ガスが結露しにくい温度に維持する。現像雰囲気ガスが結露しにくい温度とは、現像雰囲気ガスが結露しない温度も含み、処理空間Sに供給される現像雰囲気ガスに含まれる、現像液の蒸気の露点よりも高い温度のことを言う。そして、ウエハWが温調プレート3に載置されて、現像雰囲気ガスに含まれる現像蒸気の露点以下の温度に温調されると共に処理空間Sが形成される(図11(a))。処理空間Sに現像雰囲気ガスが供給され、前記現像蒸気がウエハW表面に結露し(図11(b))、所定の膜厚の現像液膜50が形成されると、現像雰囲気ガスの供給及び排気口45からの排気が停止する。その後、既述の第1の実施形態と同様にN2ガスが供給され、処理空間Sの現像雰囲気ガスが除去されると共にウエハWが乾燥される。
【0052】
このように現像ミストを含まない現像雰囲気ガスをウエハWに供給する場合でも、既述の各実施形態と同様の効果が得られる。前記現像雰囲気ガスを供給する場合、処理空間S形成時には昇降ピン42がウエハWを浮いた状態で保持し、処理空間Sへ現像雰囲気ガスを供給した後にウエハWを温調プレート3に載置して現像液膜50を形成してもよい。処理中に温調プレート3に結露した現像液は吸引口36、37から吸引される。また、現像雰囲気ガスは、現像ミスト及び現像蒸気の両方を含んでいてもよく、その場合は現像ミストの付着分と現像蒸気の結露分とにより、現像液膜50が形成される。
【0053】
また、上記のように現像液を結露させて現像液膜50を形成する場合でもウエハWの乾燥は、他の実施形態の乾燥手法が適用でき、例えば処理空間Sを開放することにより行ってもよい。その他に例えば、昇降ピン42を介してウエハWを温調プレート3から浮き上がらせ、処理空間Sに残留している現像蒸気の熱により、ウエハWを乾燥させてもよい。各乾燥工程を開始するタイミングとしては、例えば現像液とレジストとの反応が終了した時点であり、つまり洗浄処理を行ったとした場合に不要なレジストを除去できる時点である。
【0054】
各実施形態において、処理容器5のヒータ59を設けることで、処理容器5へ現像液が付着してパーティクルとなることをより確実に防いでいるが、このようなヒータ59を設けなくてもよい。例えば現像雰囲気ガス加熱部56で加熱されたN2ガスを単独で処理空間Sに供給し、処理容器5の内壁を加熱する。それによって、前記内壁を、現像蒸気が結露する温度よりも高い温度に制御し、その後、上記の現像雰囲気ガスを供給してもよい。
【0055】
各実施形態に示したウエハWの乾燥手法は互いに組み合わせることができる。例えば第1の実施形態に第2の実施形態の冷却プレート103を適用し、N2ガス供給後、さらに冷却プレート103によりウエハWを加熱し、現像液膜50を除去してもよい。このように冷却プレートによる現像液膜50の除去を行わない場合、搬送手段21と昇降ピン42との間で直接ウエハWの受け渡しが行われてもよい。
【0056】
(評価試験)
評価試験1
レジストが塗布され、所定のパターンに沿って露光されたウエハW1〜ウエハW3に夫々ノズルにより現像液を供給した。ウエハW1については現像液供給後のレジストの断面を撮像した。ウエハW2については現像液供給後に洗浄液を2秒供給した後、レジストの断面を撮像した。ウエハW3については現像液供給後に洗浄液を13秒供給した後、レジストの断面を撮像した。また、各ウエハW1〜W3に塗布するレジストの種類を変更して、同様の実験を行った。
【0057】
図12はこの評価試験1の結果を示している。図12(a)〜(c)が互いに同じレジストを用いたウエハW1〜W3の撮像結果であり、図12(d)〜(f)が互いに同じレジストを用いたウエハW1〜W3の撮像結果である。いずれのレジストを用いた場合であっても、洗浄液が供給されていないウエハW1についてはパターンの解像が進行していなかった。それに対して、洗浄液が供給されたウエハW2、W3についてはパターンが解像されていた。この実験の結果から露光されたレジストは、現像液が供給された段階ではなく、洗浄液が供給された段階で溶出を開始する。つまり、現像液により溶解された残渣を掻き出しているのではないことが分かる。従って、現像処理を行うにあたり、レジストに供給する現像液は少量であってもよいことが考えられる。この実験により本発明者は、上記の各実施形態のように、ウエハW表面に現像ミストを供給することで現像液の薄膜を形成することに思い至った。
【0058】
評価試験2
評価試験1と同様に露光されたウエハW1、W2を用意した。ウエハW1についてはスピンチャックに載置し、そのスピンチャックにより鉛直軸回りに回転させながら、ノズルより現像液を供給した。現像液を供給しながら当該現像液の供給位置を、ウエハW1の周縁部から中心部に向けて径方向に移動させ、その後は中心部に向けて所定の時間現像液の供給を続けた。現像液供給後、ウエハW1に洗浄液を供給して現像液を除去し、レジストの断面を撮像した。
【0059】
また、ウエハW2については容器本体と上蓋とからなる処理容器内に搬送した。上蓋を閉じて、処理容器内に気密な処理空間を形成した後、当該処理空間を排気しながら、第6の実施形態と同様に現像ミストを処理空間に供給して、処理雰囲気を形成した。現像ミスト供給後、ウエハW1に洗浄液を供給して現像液を除去し、レジストの断面を撮像した。
【0060】
図13(a)(b)はウエハW1の撮像結果を、図13(c)(d)はウエハW2の撮像結果を、夫々示している。このようにウエハW1とW2とで形成されたパターンの形状に殆ど差が見られなかった。この実験からミスト状にした現像液を用いてもノズルから現像液を供給する場合と同様に現像を行うことができることが示された。
【0061】
評価試験3
評価試験1、2と同様に露光されたウエハWを複数枚用意した。容器本体と上蓋とからなる処理容器に順次ウエハWを搬送し、上蓋を閉じて気密な処理空間を形成した後、処理空間を排気しながら、当該処理空間に前記現像ミストを供給して処理雰囲気を形成した。現像ミストの供給時間は45秒、60秒、90秒と夫々ウエハW毎に変更した。現像ミスト供給後は、上蓋を開いて処理空間を外部雰囲気に開放した後、ウエハWを取り出し、当該ウエハWに洗浄処理を行った。そして、各ウエハW面内の各所におけるレジストパターンのCDの平均を算出すると共にCDについて、ばらつきの指標である3σを算出した。現像ミストの供給時間が45秒、60秒、90秒である実験を、夫々評価試験3−1、3−2、3−3とする。
【0062】
評価試験4
評価試験2と同様にノズルから現像液を供給し、洗浄処理を行ったウエハWについても評価試験4と同様にCDの平均及び3σを算出した。ノズルからの現像液の供給時間は、ウエハWごとに変更した。この供給時間が短い順に夫々評価試験4−1、4−2、4−3とする。
【0063】
評価試験5
ウエハWの径方向に伸びる吐出口を備えたノズルをウエハWの一端側から他端側へ、現像液を吐出しながら移動させてウエハWに液盛りを行った後、洗浄処理を行った。現像液の供給時間はウエハW毎に変更しており、この供給時間が30秒、60秒であるものを夫々評価試験5−1、5−2とする。
【0064】
図14は評価試験3〜5の結果を示している。図中の棒グラフが各評価試験のCD平均を、図中の点が各評価試験の3σを夫々示している。この結果から、現像ミストとして現像液を供給する場合も、ノズルにより現像液を供給する場合と同様に現像液の供給時間が長くなるとCD平均が小さくなっていくことが分かる。また、3σについては、現像ミストとして現像液を供給する場合と、ノズルにより現像液を供給する場合との間で大きな差はない。これらの評価試験の結果から現像ミストによる現像は、ノズルにより現像液を供給する現像に比べてパターン形状に大きな影響を与えないことが示された。
【0065】
評価試験6
評価試験3と同様に、露光されたウエハWが搬入された処理空間を排気しながら、当該処理空間に現像ミストを供給した。現像ミストの供給時間は30秒とした。現像ミストの供給停止後、処理空間を外部雰囲気に開放してウエハW表面を乾燥させ、その後にウエハWの洗浄処理を行った。そして、評価試験3と同様にレジストパターンのCDの平均とCDの3σを算出した。現像ミストの供給停止から処理空間の開放までの時間はウエハW毎に設定し、夫々30秒、180秒とした。この開放までの時間が30秒であるものを評価試験6−1とし、180秒であるものを6−2とする。
【0066】
また、現像ミストの供給時間を60秒にして評価試験6−1、6−2と同様の実験を行った。現像ミストの供給停止から前記処理空間の開放までの時間はウエハW毎に変更し、夫々0秒、30秒、180秒とした。この開放までの時間が0秒、30秒、180秒であるものを夫々6−3、6−4、6−5とする。
【0067】
図15は評価試験6の結果を示している。図中の棒グラフがCDの平均を、図中の点がCDの3σを夫々示している。評価試験6−5では評価試験6−1〜6−4に比べて3σが若干大きくなっている。つまり、評価試験6−5ではパターンのCDのばらつきが若干大きくなっている。また、処理空間を開放するまでの時間が長くなるにつれて、CDの平均が小さくなっている。これは現像ミストの供給を停止しても、処理空間に残った現像ミストによりウエハW表面が乾燥せず、現像が進んだためであると考えられる。この評価試験6の結果から、パターン形状は、ウエハW表面が乾燥するまでの時間により影響されることが分かる。
【0068】
評価試験7
評価試験3と同様に、露光されたウエハWが搬入された処理空間を排気しながら、当該処理空間に現像ミストを供給した。現像ミストの供給時間は60秒とした。現像ミストの供給停止後、処理空間を開放してウエハW表面を乾燥させ、その後にウエハWの洗浄処理を行った。処理空間を開放してから洗浄処理を行うまでの時間はウエハW毎に設定し、夫々10秒、45秒、90秒、180秒、600秒とした。洗浄処理後は、評価試験3と同様にレジストパターンのCDの平均とCDの3σを算出した。洗浄処理を行うまでの時間が10秒、45秒、90秒、180秒、600秒であるものを夫々評価試験7−1、7−2、7−3、7−4、7−5とする。
【0069】
図16は評価試験7の結果を示している。図中の棒グラフがCDの平均を、図中の点がCDの3σを夫々示している。各評価試験間でCDの平均及び3σは大きく変動していない。従って、ウエハWの乾燥を行ってから洗浄処理を行うまでの時間はパターンの形状に大きく影響しないことが分かる。従って、上記のようにウエハW表面を乾燥させた後、洗浄装置までウエハWを搬送して洗浄処理を行うことが可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0070】
W ウエハ
S 処理空間
1 現像装置
11 筐体
12 搬送口
15 冷却プレート
21 搬送手段
3 温調プレート
35 温調部
36、37 吸引口
42 昇降ピン
43 昇降機構
45 排気口
5 処理容器
56 現像雰囲気ガス加熱部
100 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光された基板を現像する現像装置において、
処理雰囲気を形成する気密な処理容器と、
この処理容器内に搬入された基板の表面に現像液の液膜を形成するために、当該処理容器内に現像液のミストを供給する雰囲気ガス供給部と、
前記液膜による現像を停止するために基板を乾燥する乾燥部と、
を備えていることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記乾燥部は、処理容器内の処理雰囲気を外部雰囲気に開放するための容器開閉機構であることを特徴とする請求項1記載の現像装置。
【請求項3】
前記乾燥部は、前記処理容器内に設けられ、基板を載置する載置プレートと、この載置プレートを加熱する加熱部と、を含むことを特徴とする請求項1記載の現像装置。
【請求項4】
前記乾燥部は、処理容器内に載置された基板を受け取って当該処理容器の外に搬送するための移動プレートと、この移動プレートに設けられ、当該移動プレートを加熱するための加熱部と、を含むことを特徴とする請求項1記載の現像装置。
【請求項5】
前記乾燥部は、前記処理容器内の基板に乾燥用のガスを供給する乾燥用ガス供給部であることを特徴とする請求項1記載の現像装置。
【請求項6】
前記雰囲気ガス供給部は、基板の表面に現像液の液膜を形成するために現像液のミストを供給するものであることに代えて、基板の表面に現像液を結露させて液膜を形成するために当該処理容器内に現像液の蒸気を含む気体を供給するものであり、基板が載置され、基板表面に前記蒸気が結露するように基板の温度を制御する温調プレートが設けられることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の現像装置。
【請求項7】
前記雰囲気ガス供給部は、雰囲気ガスを加熱する加熱手段を備えることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の現像装置。
【請求項8】
雰囲気ガスは、加熱雰囲気における現像液の飽和温度よりも高い温度に加熱されることを特徴とする請求項7に記載の現像装置。
【請求項9】
露光された基板を現像する現像方法において、
処理雰囲気を形成する気密な処理容器内に基板を搬入する工程と、
次いで処理容器内に現像液のミストを供給し、基板の表面に現像液の液膜を形成する液膜形成工程と、
前記液膜による現像を停止するために基板を乾燥する乾燥工程と、
を含むことを特徴とする現像方法。
【請求項10】
前記乾燥工程は、処理容器内の処理雰囲気を外部雰囲気に開放する工程であることを特徴とする請求項9記載の現像方法。
【請求項11】
前記乾燥工程は、前記処理容器内の載置プレート上に基板が載置された状態で載置プレートを介して当該基板を加熱する工程であることを特徴とする9記載の現像方法。
【請求項12】
前記乾燥工程は、処理容器内に載置されている基板を、処理容器内と外との間で移動する移動プレートに受け渡し、この移動プレートを介して当該基板を加熱する工程であることを特徴とする請求項9記載の現像方法。
【請求項13】
前記乾燥工程は、前記処理容器内の基板に乾燥用のガスを供給する工程であることを特徴とする請求項9記載の現像方法。
【請求項14】
基板の表面に現像液の液膜を形成するために現像液のミストを供給する工程に代えて、基板の表面に現像液を結露させて液膜を形成するために当該処理容器内に現像液の蒸気を含む気体を供給する工程を含み、
基板表面に前記蒸気が結露するように基板の温度を制御する工程を含むことを特徴とする請求項9ないし13のいずれか一つに記載の現像方法。
【請求項15】
前記雰囲気ガスを加熱手段により加熱する工程を含むことを特徴とする請求項9ないし14のいずれか一つに記載の現像方法。
【請求項16】
雰囲気ガスは、加熱雰囲気における現像液の飽和温度よりも高い温度に加熱されることを特徴とする請求項15に記載の現像方法。
【請求項17】
露光された基板を処理容器内にて現像する現像装置に用いられるプログラムを格納する記憶媒体において、
前記プログラムは、請求項9ないし16のいずれか一項に記載の現像方法を実行するようにステップ群が組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【請求項1】
露光された基板を現像する現像装置において、
処理雰囲気を形成する気密な処理容器と、
この処理容器内に搬入された基板の表面に現像液の液膜を形成するために、当該処理容器内に現像液のミストを供給する雰囲気ガス供給部と、
前記液膜による現像を停止するために基板を乾燥する乾燥部と、
を備えていることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記乾燥部は、処理容器内の処理雰囲気を外部雰囲気に開放するための容器開閉機構であることを特徴とする請求項1記載の現像装置。
【請求項3】
前記乾燥部は、前記処理容器内に設けられ、基板を載置する載置プレートと、この載置プレートを加熱する加熱部と、を含むことを特徴とする請求項1記載の現像装置。
【請求項4】
前記乾燥部は、処理容器内に載置された基板を受け取って当該処理容器の外に搬送するための移動プレートと、この移動プレートに設けられ、当該移動プレートを加熱するための加熱部と、を含むことを特徴とする請求項1記載の現像装置。
【請求項5】
前記乾燥部は、前記処理容器内の基板に乾燥用のガスを供給する乾燥用ガス供給部であることを特徴とする請求項1記載の現像装置。
【請求項6】
前記雰囲気ガス供給部は、基板の表面に現像液の液膜を形成するために現像液のミストを供給するものであることに代えて、基板の表面に現像液を結露させて液膜を形成するために当該処理容器内に現像液の蒸気を含む気体を供給するものであり、基板が載置され、基板表面に前記蒸気が結露するように基板の温度を制御する温調プレートが設けられることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の現像装置。
【請求項7】
前記雰囲気ガス供給部は、雰囲気ガスを加熱する加熱手段を備えることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の現像装置。
【請求項8】
雰囲気ガスは、加熱雰囲気における現像液の飽和温度よりも高い温度に加熱されることを特徴とする請求項7に記載の現像装置。
【請求項9】
露光された基板を現像する現像方法において、
処理雰囲気を形成する気密な処理容器内に基板を搬入する工程と、
次いで処理容器内に現像液のミストを供給し、基板の表面に現像液の液膜を形成する液膜形成工程と、
前記液膜による現像を停止するために基板を乾燥する乾燥工程と、
を含むことを特徴とする現像方法。
【請求項10】
前記乾燥工程は、処理容器内の処理雰囲気を外部雰囲気に開放する工程であることを特徴とする請求項9記載の現像方法。
【請求項11】
前記乾燥工程は、前記処理容器内の載置プレート上に基板が載置された状態で載置プレートを介して当該基板を加熱する工程であることを特徴とする9記載の現像方法。
【請求項12】
前記乾燥工程は、処理容器内に載置されている基板を、処理容器内と外との間で移動する移動プレートに受け渡し、この移動プレートを介して当該基板を加熱する工程であることを特徴とする請求項9記載の現像方法。
【請求項13】
前記乾燥工程は、前記処理容器内の基板に乾燥用のガスを供給する工程であることを特徴とする請求項9記載の現像方法。
【請求項14】
基板の表面に現像液の液膜を形成するために現像液のミストを供給する工程に代えて、基板の表面に現像液を結露させて液膜を形成するために当該処理容器内に現像液の蒸気を含む気体を供給する工程を含み、
基板表面に前記蒸気が結露するように基板の温度を制御する工程を含むことを特徴とする請求項9ないし13のいずれか一つに記載の現像方法。
【請求項15】
前記雰囲気ガスを加熱手段により加熱する工程を含むことを特徴とする請求項9ないし14のいずれか一つに記載の現像方法。
【請求項16】
雰囲気ガスは、加熱雰囲気における現像液の飽和温度よりも高い温度に加熱されることを特徴とする請求項15に記載の現像方法。
【請求項17】
露光された基板を処理容器内にて現像する現像装置に用いられるプログラムを格納する記憶媒体において、
前記プログラムは、請求項9ないし16のいずれか一項に記載の現像方法を実行するようにステップ群が組まれていることを特徴とする記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−166086(P2011−166086A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30524(P2010−30524)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]