説明

現像装置、画像形成装置、及び、画像形成システム

【課題】現像剤担持体が回転する際に当接部材がゴム状の性質にて適切に使用される現像装置、画像形成装置、及び、画像形成システムを実現することにある。
【解決手段】規則的に配置された凹部を表面に有し、現像剤を担持した状態で回転可能な現像剤担持体と、ゴム弾性体から成り、前記現像剤担持体の前記表面に当接する当接部材であって、該現像剤担持体の回転に伴い振動する当接部材と、を備えた現像装置であって、前記現像剤担持体が回転する際の前記表面の移動速さを、前記凹部の、該現像剤担持体の周方向のピッチ、で割った値は、前記当接部材の、損失弾性率を貯蔵弾性率で割った損失正接が、最大になるときの該当接部材の振動数、よりも小さいことを特徴とする現像装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置、画像形成装置、及び、画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザビームプリンタ等の画像形成装置は既によく知られている。かかる画像形成装置は、例えば、潜像を担持する像担持体と、現像剤によって像担持体に担持された潜像を現像する現像装置と、を有している。そして、画像形成装置は、コンピュータなどの外部装置から画像信号等が送信されると、像担持体に担持された潜像を、現像装置内の現像剤で現像して現像剤像を形成し、当該現像剤像を媒体に転写して、最終的に媒体に画像を形成する。
【0003】
上述の現像装置は、現像剤を担持した状態で回転可能な現像剤担持体を備えており、該現像剤担持体が、現像剤によって像担持体に担持された潜像を現像する。そして、この現像剤担持体の表面には、十分な量の現像剤が担持されること等を考慮して、規則的に配置された凹部が設けられている場合がある。また、現像装置には、ゴム弾性体から成り前記現像剤担持体の前記表面に当接する当接部材、が設けられている。この当接部材として、例えば、現像剤担持体に担持された現像剤の層厚を規制する層厚規制部材がある。
【特許文献1】特開2006−259384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ゴム弾性体から成る当接部材は、該当接部材の温度の大きさに応じて、ゴム状の性質またはガラス状の性質を示すことが知られている。そして、当接部材が一般的に使用される温度においては、該当接部材はゴム状の性質を示す。このため、当接部材が現像装置に設けられている場合にも、該当接部材がゴム状の性質として使用されることが、要請されている。
【0005】
また、当接部材は振動することがあるが、振動数の大きさに応じて、当接部材がゴム状の性質またはガラス状の性質を示すことが知られている。すなわち、該当接部材の損失弾性率を貯蔵弾性率で割った値を損失正接(tanδ)とすると、該当接部材の振動数が、前記損失正接(tanδ)が最大になるときの振動数(以下、「損失正接最大振動数」とも呼ぶ)よりも大きい場合には、該当接部材はガラス状の性質を示す。一方、当接部材の振動数が、前記損失正接最大振動数よりも小さい場合には、該当接部材はゴム状の性質を示す。
【0006】
上述したように当接部材は現像剤担持体の表面(この表面は、凹部を有する)に当接しており、該現像剤担持体が、その回転の際に当接部材を摺擦することにより、該当接部材を振動させる。そして、現像剤担持体の回転に伴い振動する当接部材の振動数が、前記損失正接最大振動数よりも大きい場合には、該当接部材がガラス状の性質を示すため、上述した要請に応えられないこととなる。
【0007】
そこで、本発明は係る課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、現像剤担持体が回転する際に当接部材がゴム状の性質にて適切に使用される現像装置、画像形成装置、及び、画像形成システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、主たる本発明は、
規則的に配置された凹部を表面に有し、現像剤を担持した状態で回転可能な現像剤担持体と、
ゴム弾性体から成り、前記現像剤担持体の前記表面に当接する当接部材であって、該現像剤担持体の回転に伴い振動する当接部材と、
を備えた現像装置であって、
前記現像剤担持体が回転する際の前記表面の移動速さを、前記凹部の、該現像剤担持体の周方向のピッチ、で割った値は、
前記当接部材の、損失弾性率を貯蔵弾性率で割った損失正接が、最大になるときの該当接部材の振動数、
よりも小さいことを特徴とする現像装置である。
【0009】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により少なくとも次のことが明らかにされる。
【0011】
規則的に配置された凹部を表面に有し、現像剤を担持した状態で回転可能な現像剤担持体と、
ゴム弾性体から成り、前記現像剤担持体の前記表面に当接する当接部材であって、該現像剤担持体の回転に伴い振動する当接部材と、
を備えた現像装置であって、
前記現像剤担持体が回転する際の前記表面の移動速さを、前記凹部の、該現像剤担持体の周方向のピッチ、で割った値は、
前記当接部材の、損失弾性率を貯蔵弾性率で割った損失正接が、最大になるときの該当接部材の振動数、
よりも小さいことを特徴とする現像装置。このような現像装置によれば、現像剤担持体が回転する際に、当接部材をゴム状の性質にて使用させることが可能となる。
【0012】
また、かかる現像装置であって、
前記当接部材は、
前記表面に当接して、前記現像剤担持体に担持された現像剤の層厚を規制するための層厚規制部材、
であることが望ましい。かかる場合には、層厚規制部材がガラス状の性質で使用されて現像剤の層厚を不適切に規制することを防止できる。
【0013】
また、かかる現像装置であって、
前記当接部材は、
その長手方向が前記現像剤担持体の軸方向に沿うように、かつ、その短手方向の一端が該現像剤担持体の回転方向上流側に向くように、
前記表面に当接し、
前記当接部材の、前記表面に当接する当接部は、前記短手方向において前記一端から離れていることが望ましい。
【0014】
また、かかる現像装置であって、
前記凹部は、前記周方向に対する傾斜角度が異なる2種類の螺旋状の溝部、であり、
該2種類の螺旋状の溝部は、互いに交差して格子形状をなしており、
前記現像剤担持体は、前記2種類の螺旋状の溝部に囲まれた正方形の頂面、を有し、
該正方形の頂面が有する2本の対角線のうちの一方が前記周方向に沿っていることが望ましい。かかる場合には、規則正しい凹部が、現像剤担持体の表面に形成されやすい。
【0015】
また、かかる現像装置であって、
該現像装置は、画像形成装置の画像形成装置本体に対して着脱可能であり、
前記画像形成装置には、使用温度域が設定されており、
前記損失正接が最大になるときの前記当接部材の振動数は、温度の大きさに応じて異なり、
前記現像剤担持体が回転する際の前記表面の移動速さを、前記凹部の、前記現像剤担持体の周方向のピッチ、で割った値は、
前記使用温度域内の全ての温度における、前記損失正接が最大になるときの該当接部材の振動数、よりも小さいことが望ましい。かかる場合には、画像形成装置が画像形成を実行する際には、当接部材は必ずゴム状の性質にて使用される。
【0016】
また、かかる現像装置であって、
前記当接部材は、熱可塑性エラストマーから成ることが望ましい。
【0017】
また、かかる現像装置であって、
前記現像剤担持体が回転する際の前記表面の移動速さを、前記凹部の、該現像剤担持体の周方向のピッチ、で割った値は、
前記損失正接が最大値になるときの前記当接部材の振動数よりも小さい振動数であって、当該振動数のときに前記損失正接が前記最大値の半分になる振動数、
よりも小さいことが望ましい。かかる場合には、現像剤担持体が回転する際に当接部材がゴム状の性質にてより適切に使用されることとなる。
【0018】
また、(a)潜像を担持するための像担持体と、
(b)現像剤にて該像担持体に担持された潜像を現像するための現像装置であって、
規則的に配置された凹部を表面に有し、現像剤を担持した状態で回転可能な現像剤担持体と、
ゴム弾性体から成り、前記現像剤担持体の前記表面に当接する当接部材であって、該現像剤担持体の回転に伴い振動する当接部材と、
を備え、
前記現像剤担持体が回転する際の前記表面の移動速さを、前記凹部の、該現像剤担持体の周方向のピッチ、で割った値は、
前記当接部材の、損失弾性率を貯蔵弾性率で割った損失正接が、最大になるときの該当接部材の振動数、
よりも小さい現像装置と、
(c)を有することを特徴とする画像形成装置。このような画像形成装置によれば、現像剤担持体が回転する際に、当接部材をゴム状の性質にて使用させることが可能となる。
【0019】
また、(A)コンピュータ、及び、
(B)このコンピュータに接続可能な画像形成装置であって、
(a)潜像を担持するための像担持体と、
(b)現像剤にて該像担持体に担持された潜像を現像するための現像装置であって、
規則的に配置された凹部を表面に有し、現像剤を担持した状態で回転可能な現像剤担持体と、
ゴム弾性体から成り、前記現像剤担持体の前記表面に当接する当接部材であって、該現像剤担持体の回転に伴い振動する当接部材と、
を備え、
前記現像剤担持体が回転する際の前記表面の移動速さを、前記凹部の、該現像剤担持体の周方向のピッチ、で割った値は、
前記当接部材の、損失弾性率を貯蔵弾性率で割った損失正接が、最大になるときの該当接部材の振動数、
よりも小さい現像装置と、
(c)を有する画像形成装置、
(C)を具備したことを特徴とする画像形成システム。このような画像形成システムによれば、現像剤担持体が回転する際に、当接部材をゴム状の性質にて使用させることが可能となる。
【0020】
===画像形成装置の全体構成例===
次に、図1を用いて、『画像形成装置』としてレーザビームプリンタ(以下、プリンタともいう)10を例にとって、その概要について説明する。図1は、プリンタ10を構成する主要構成要素を示した図である。なお、図1には、矢印にて上下方向を示しており、例えば、給紙トレイ92は、プリンタ10の下部に配置されており、定着ユニット90は、プリンタ10の上部に配置されている。
【0021】
<<プリンタ10の構成例>>
本実施の形態に係るプリンタ10は、図1に示すように、潜像を担持するための『像担持体』の一例としての感光体20の回転方向に沿って、帯電ユニット30、露光ユニット40、YMCK現像ユニット50、一次転写ユニット60、中間転写体70、クリーニングユニット75を有し、さらに、二次転写ユニット80、定着ユニット90、ユーザへの報知手段をなし液晶パネルでなる表示ユニット95、及び、これらのユニット等を制御しプリンタとしての動作を司る制御ユニット100を有している。
【0022】
感光体20は、円筒状の導電性基材とその外周面に形成された感光層を有し、中心軸を中心に回転可能であり、本実施の形態においては、図1中の矢印で示すように時計回りに回転する。
【0023】
帯電ユニット30は、感光体20を帯電するための装置であり、露光ユニット40は、レーザを照射することによって帯電された感光体20上に潜像を形成する装置である。この露光ユニット40は、半導体レーザ、ポリゴンミラー、F−θレンズ等を有しており、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ等の不図示のホストコンピュータから入力された画像信号に基づいて、変調されたレーザを帯電された感光体20上に照射する。
【0024】
YMCK現像ユニット50は、感光体20上に形成された潜像を、『現像装置』に収容された『現像剤』の一例としてのトナー、すなわち、ブラック現像装置51に収容されたブラック(K)トナー、マゼンタ現像装置52に収容されたマゼンタ(M)トナー、シアン現像装置53に収容されたシアン(C)トナー、及び、イエロー現像装置54に収容されたイエロー(Y)トナーを用いて現像するための装置である。
【0025】
このYMCK現像ユニット50は、前記4つの現像装置51、52、53、54が装着された状態で回転することにより、前記4つの現像装置51、52、53、54の位置を動かすことを可能としている。すなわち、このYMCK現像ユニット50は、前記4つの現像装置51、52、53、54を4つの保持部55a、55b、55c、55dにより保持しており、前記4つの現像装置51、52、53、54は、中心軸50aを中心として、それらの相対位置を維持したまま回転可能となっている。そして、1ページ分の画像形成が終了する毎に選択的に感光体20に対向し、それぞれの現像装置51、52、53、54に収容されたトナーにて、感光体20上に形成された潜像を順次現像する。なお、前述した4つの現像装置51,52,53,54の各々は、『画像形成装置本体』の一例としてのプリンタ本体10a(具体的には、YMCK現像ユニット50の前記保持部)に対して着脱可能となっている。また、各現像装置の詳細については後述する。
【0026】
一次転写ユニット60は、感光体20に形成された単色トナー像を中間転写体70に転写するための装置であり、4色のトナーが順次重ねて転写されると、中間転写体70にフルカラートナー像が形成される。この中間転写体70は、PETフィルムの表面に錫蒸着層を設けさらにその表層に半導電塗料を形成、積層したエンドレスのベルトであり、感光体20とほぼ同じ周速度にて回転駆動される。二次転写ユニット80は、中間転写体70上に形成された単色トナー像やフルカラートナー像を紙、フィルム、布等の媒体に転写するための装置である。定着ユニット90は、媒体上に転写された単色トナー像やフルカラートナー像を媒体に融着させて永久像とするための装置である。
【0027】
クリーニングユニット75は、一次転写ユニット60と帯電ユニット30との間に設けられ、感光体20の表面に当接されたゴム製のクリーニングブレード76を有し、一次転写ユニット60によって中間転写体70上にトナー像が転写された後に、感光体20上に残存するトナーをクリーニングブレード76により掻き落として除去するための装置である。
【0028】
制御ユニット100は、図2に示すようにメインコントローラ101と、ユニットコントローラ102とで構成され、メインコントローラ101には画像信号及び制御信号が入力され、この画像信号及び制御信号に基づく指令に応じてユニットコントローラ102が前記各ユニット等を制御して画像を形成する。
【0029】
<<プリンタ10の動作例>>
次に、このように構成されたプリンタ10の動作について説明する。
まず、不図示のホストコンピュータからの画像信号及び制御信号がインターフェイス(I/F)112を介してプリンタ10のメインコントローラ101に入力されると、このメインコントローラ101からの指令に基づくユニットコントローラ102の制御により感光体20、及び、中間転写体70が回転する。
【0030】
感光体20は、回転しながら、帯電位置において帯電ユニット30により順次帯電される。感光体20の帯電された領域は、感光体20の回転に伴って露光位置に至り、露光ユニット40によって、第1色目、例えばイエローYの画像情報に応じた潜像が該領域に形成される。また、YMCK現像ユニット50は、イエロー(Y)トナーを収容したイエロー現像装置54が、感光体20に対向した現像位置に位置している。感光体20上に形成された潜像は、感光体20の回転に伴って現像位置に至り、イエロー現像装置54によってイエロートナーで現像される。これにより、感光体20上にイエロートナー像が形成される。感光体20上に形成されたイエロートナー像は、感光体20の回転に伴って一次転写位置に至り、一次転写ユニット60によって、中間転写体70に転写される。この際、一次転写ユニット60には、トナーTの帯電極性(本実施の形態においては、負極性)とは逆の極性の一次転写電圧が印加される。なお、この間、感光体20と中間転写体70とは接触しており、また、二次転写ユニット80は、中間転写体70から離間している。
【0031】
上記の処理が、第2色目、第3色目、及び、第4色目について、各々の現像装置毎に順次実行されることにより、各画像信号に対応した4色のトナー像が、中間転写体70に重なり合って転写される。これにより、中間転写体70上にはフルカラートナー像が形成される。
【0032】
中間転写体70上に形成されたフルカラートナー像は、中間転写体70の回転に伴って二次転写位置に至り、二次転写ユニット80によって媒体に転写される。なお、媒体は、給紙トレイ92から、給紙ローラ94、レジローラ96を介して二次転写ユニット80へ搬送される。また、転写動作を行う際、二次転写ユニット80は中間転写体70に押圧されるとともに二次転写電圧が印加される。
【0033】
媒体に転写されたフルカラートナー像は、定着ユニット90によって加熱加圧されて媒体に融着される。一方、感光体20は一次転写位置を経過した後に、クリーニングユニット75に支持されたクリーニングブレード76によって、その表面に付着しているトナーTが掻き落とされ、次の潜像を形成するための帯電に備える。掻き落とされたトナーTは、クリーニングユニット75が備える残存トナー回収部に回収される。
【0034】
===制御ユニットの概要===
次に、制御ユニット100の構成について図2を参照しつつ説明する。制御ユニット100のメインコントローラ101は、インターフェイス112を介してホストコンピュータと電気的に接続され、このホストコンピュータから入力された画像信号を記憶するための画像メモリ113を備えている。ユニットコントローラ102は、装置本体の各ユニット(帯電ユニット30、露光ユニット40、YMCK現像ユニット50、一次転写ユニット60、クリーニングユニット75、二次転写ユニット80、定着ユニット90、表示ユニット95)と電気的に接続され、それらが備えるセンサからの信号を受信することによって、各ユニットの状態を検出しつつ、メインコントローラ101から入力される信号に基づいて、各ユニットを制御する。
【0035】
===現像装置について===
次に、図3〜図8を用いて、現像装置の構成例及び動作例について説明する。図3は、現像装置の概念図である。図4は、現像装置の主要構成要素を示した断面図である。図5は、現像ローラ510の斜視模式図である。図6は、現像ローラ510の正面模式図である。図7は、溝部512の断面形状を示した模式図である。図8は、図6の拡大模式図であり、溝部512及び頂面515を表した図である。なお、図4に示す断面図は、図3に示す長手方向に垂直な面で現像装置を切り取った断面を表したものである。また、図4においては、図1同様、矢印にて上下方向を示しており、例えば、現像ローラ510の中心軸は、感光体20の中心軸よりも下方にある。また、図4では、イエロー現像装置54が、感光体20と対向する現像位置に位置している状態にて示されている。また、図5〜図8においては、図を分かりやすくするために、溝部512等のスケールが実際のものと異なっている。
【0036】
YMCK現像ユニット50には、ブラック(K)トナーを収容したブラック現像装置51、マゼンタ(M)トナーを収容したマゼンタ現像装置52、シアン(C)トナーを収容したシアン現像装置53、及び、イエロー(Y)トナーを収容したイエロー現像装置54が設けられているが、各現像装置の構成は同様であるので、以下、イエロー現像装置54について説明する。
【0037】
<<現像装置の構成例>>
イエロー現像装置54は、『現像剤担持体』の一例としての現像ローラ510、上シール520、トナー収容体530、ハウジング540、トナー供給ローラ550、規制ブレード560、ホルダー526等を有している。
【0038】
現像ローラ510は、トナーTを担持した状態で回転することによりトナーTを感光体20と対向する対向位置(現像位置)に搬送する。この現像ローラ510は、アルミ合金、鉄合金等からなる部材である。
【0039】
現像ローラ510は、図5及び図6に示すように、トナーTを適切に担持させるためにその中央部510aの表面に『凹部』の一例としての溝部512を有している。本実施の形態においては、当該溝部512として、互いに巻き方向の異なる2種類の螺旋状の溝部512、すなわち、第一溝部512a及び第二溝部512b、が設けられている。図6に示すように、第一溝部512a及び第二溝部512bの、現像ローラ510の周方向に対する傾斜角度、は互いに異なっており、また、第一溝部512aの長手方向と現像ローラ510の軸方向との成す鋭角の大きさと、第二溝部512bの長手方向と前記軸方向との成す鋭角の大きさは、共に、約45度である。また、図7に示すように、第一溝部512aのX方向の幅及び第二溝部512bのY方向の幅は約42μm、溝部512の深さは約7μm、溝角度(図7において、記号αで表される角度)は約90度である。
【0040】
さらに、溝部512は、底面514と側面513とを備えており、本実施の形態においては、側面513の傾斜角度は、約45度である(図7参照)。
【0041】
このように構成された2種類の螺旋状の溝部512は、図5、図6及び図8に示すように、現像ローラ510の中央部510aの表面に、規則的に配置され、かつ、互いに交差して格子形状をなしている。したがって、溝部512に四方を囲われた菱形(正方形)の頂面515が、前記中央部510aに、網目上に多数形成されていることとなる。
【0042】
前述したとおり、本実施の形態においては、第一溝部512aの長手方向と前記軸方向との成す鋭角の大きさと、第二溝部512bの長手方向と前記軸方向との成す鋭角の大きさが、共に、約45度であるため、頂面515は、正方形の平面形状を有しており、かつ、当該頂面515が有する2本の対角線のうちの一方(他方)が現像ローラ510の周方向(軸方向)に沿っている。なお、正方形の頂面515の一辺の長さは、図7に示すように、約38μmである。
【0043】
さらに、現像ローラ510は、中心軸を中心に回転可能であり、図4に示すように、感光体20の回転方向(図4において時計方向)と逆の方向(図4において反時計方向)に回転する。なお、本実施の形態において、現像ローラ510が回転する際の現像ローラ510の表面の移動速さV(すなわち、現像ローラ510の表面における、現像ローラ510の線速度)は、320mm/sである。また、感光体20が回転する際の感光体20の表面の移動速さ(すなわち、感光体20の表面における、感光体20の線速度)は、200mm/sとなっており、現像ローラ510の感光体20に対する周速比は約1.6である。
【0044】
また、イエロー現像装置54が感光体20と対向している状態で、現像ローラ510と感光体20との間には空隙が存在する。すなわち、イエロー現像装置54は、感光体20上に形成された潜像を非接触状態で現像する。なお、本実施の形態に係るプリンタ10においては、ジャンピング現像方式が用いられ、感光体20上に形成された潜像を現像する際に、現像ローラ510と感光体20との間に交番電界が形成される。
【0045】
ハウジング540は、一体成型された複数の樹脂製のハウジング部、すなわち、上ハウジング部542と下ハウジング部544、とを溶着して製造されたものであり、その内部に、トナーTを収容するためのトナー収容体530が形成されている。トナー収容体530は、内壁から内方へ(図4の上下方向)突出させたトナーTを仕切るための仕切り壁545により、二つのトナー収容部、すなわち、第一トナー収容部530aと第二トナー収容部530bと、に分けられている。また、図4に示すように、ハウジング540(すなわち、第一トナー収容部530a)は下部に開口572を有しており、現像ローラ510が、この開口572に臨ませて設けられている。
【0046】
トナー供給ローラ550は、前述した第一トナー収容部530aに設けられ、当該第一トナー収容部530aに収容されたトナーTを現像ローラ510に供給するとともに、現像後に現像ローラ510に残存しているトナーTを、現像ローラ510から剥ぎ取る。このトナー供給ローラ550は、ポリウレタンフォーム等からなり、弾性変形された状態で現像ローラ510に当接している。トナー供給ローラ550は、第一トナー収容部530aの下部に配置されており、第一トナー収容部530aに収容されたトナーTは、該第一トナー収容部530aの下部にてトナー供給ローラ550によって現像ローラ510に供給される。トナー供給ローラ550は、中心軸を中心として回転可能であり、その中心軸は、現像ローラ510の回転中心軸よりも下方にある。また、トナー供給ローラ550は、現像ローラ510の回転方向(図4において反時計方向)と逆の方向(図4において時計方向)に回転する。
【0047】
上シール520は、現像ローラ510にその軸方向に沿って当接して、現像位置を通過後に現像ローラ510上に残留しているトナーTのハウジング540内への移動を許容し、かつ、ハウジング540内のトナーTのハウジング540外への移動を規制する。この上シール520は、ポリエチレンフィルム等からなるシールである。上シール520は、上シール支持板金522によって支持されている。また、上シール520の現像ローラ510側とは反対側には、モルトプレーン等の弾性体からなる上シール付勢部材524が圧縮した状態で設けられている。この上シール付勢部材524は、その付勢力で上シール520を現像ローラ510側へ付勢することにより、上シール520を現像ローラ510に押しつけている。なお、上シール520が現像ローラ510に当接する当接位置は、現像ローラ510の中心軸よりも上方である。
【0048】
規制ブレード560は、現像ローラ510の軸方向一端部から他端部に亘って現像ローラ510の表面に当接して、現像ローラ510に担持されたトナーTの層厚を規制し、また、現像ローラ510に担持されたトナーTに電荷を付与する。この規制ブレード560は、図4に示すように、『当接部材』の一例としてのゴム部562と、ゴム支持部564と、を有している。
【0049】
ゴム部562は、現像ローラ510の表面に当接して、該現像ローラ510に担持されたトナーTの層厚を規制する『層厚規制部材』である。このゴム部562は、その長手方向が現像ローラ510の軸方向(図6)に沿うように、かつ、その短手方向の『一端』(規制ブレード560の先端560a)が現像ローラ510の回転方向上流側に向くように(図4参照)、配置されている。すなわち、ゴム部562は、いわゆるカウンタ当接している。また、ゴム部562の前記一端(規制ブレード560の先端560a)は、現像ローラ510に接触しておらず、ゴム部562の、現像ローラ510の表面に当接する当接部562aは、前記短手方向において前記先端560aから離れている。すなわち、ゴム部562は、現像ローラ510にエッジにて当接しておらず、腹当たりにて当接しており、ゴム部562が有する平面が現像ローラ510に当接することにより、前記層厚を規制する。なお、ゴム部562が現像ローラ510に当接する当接位置は、現像ローラ510の中心軸よりも下方であり、かつ、トナー供給ローラ550の中心軸よりも下方である。また、当該ゴム部562は、現像ローラ510にその軸方向に沿って当接することにより、トナー収容体530からのトナーTの漏れを防止する機能も発揮する。
【0050】
ところで、上述したゴム部562は、『ゴム弾性体』から成る。ここで、ゴム弾性体を、ゴム弾性を備える弾性体と定義する。このゴム弾性体は、ゴムと熱可塑性エラストマーとに分類され、前記ゴムは、加熱により流動した状態から固化する弾性体(すなわち、熱硬化性を示す弾性体)であり、熱可塑性エラストマーは、加熱により固化した状態から流動化する弾性体(すなわち、熱可塑性を示す弾性体)である。また、ゴム部562として使用される前記ゴムとして、例えば、ウレタンゴムがある。そして、本実施の形態に係るゴム部562は、その熱可塑性により加工しやすい観点等から、熱可塑性エラストマーから成る。
【0051】
ゴム支持部564は、薄板564aと薄板支持部564bとから構成されており、その短手方向一端部564d(すなわち、薄板564a側の端部)でゴム部562を支持する。薄板564aは、リン青銅、ステンレス等からなり、バネ性を有している。薄板564aは、ゴム部562を支持しており、その付勢力によってゴム部562を現像ローラ510に押しつけている。薄板支持部564bは、ゴム支持部564の短手方向他端部564eに配置された金属製の板金であり、当該薄板支持部564bは、前記薄板564aの、ゴム部562を支持している側とは逆側の端、を支持した状態で、ハウジング540に取り付けられている。また、薄板支持部564bの現像ローラ510側とは逆側には、モルトプレーン等からなるブレード裏部材570が設けられている。
【0052】
<<現像装置の動作例>>
このように構成されたイエロー現像装置54において、トナー供給ローラ550がトナー収容体530に収容されているトナーTを現像ローラ510に供給する。現像ローラ510に供給されたトナーTは、現像ローラ510の回転に伴って、規制ブレード560の当接位置に至り、該当接位置を通過する際に、層厚が規制されるとともに、負の電荷が付与される(負極性に帯電される)。層厚が規制され、負の電荷が付与された現像ローラ510上のトナーTは、現像ローラ510のさらなる回転によって、感光体20に対向する対向位置(現像位置)に搬送され、該対向位置にて感光体20上に形成された潜像の現像に供される。現像ローラ510の回転によって現像位置を通過した現像ローラ510上のトナーTは、上シール520を通過して、上シール520によって掻き落とされることなく現像装置内に回収される。さらに、未だ現像ローラ510に残存しているトナーTは、前記トナー供給ローラ550によって剥ぎ取られうる。
【0053】
===ゴム部562の物性と、温度との関係について===
ゴム弾性体から成るゴム部562等の物質の動的粘弾性を示すものとして、『貯蔵弾性率』と『損失弾性率』がある。貯蔵弾性率は、物質の弾性的な振る舞いを表し、損失弾性率は、物質の粘性的な振る舞いを表す。これら貯蔵弾性率や損失弾性率の大きさは、物質の温度に応じて変動する。そして、物質の貯蔵弾性率(損失弾性率)の大きさの変動に応じて、例えば、該物質が、ゴム状の性質(物性)またはガラス状の性質を示す。具体的には、貯蔵弾性率や損失弾性率が大きい場合には、該物質はガラス状の性質を示し、貯蔵弾性率や損失弾性率が小さい場合には、該物質はゴム状の性質を示す。
【0054】
図9を用いて、具体的に説明する。図9は、ゴム部562の温度に対する貯蔵弾性率等を示すグラフである。図9には、本実施の形態に係るゴム部562の貯蔵弾性率(図9中でG´)及び損失弾性率(図9中でG″)が、示されている。グラフに示されているように、貯蔵弾性率と損失弾性率の大きさは、ゴム部562の温度が低い場合には大きな値を示し、ゴム部562の温度が高い場合には小さな値を示す。そして、上述したように貯蔵弾性率(損失弾性率)が大きい場合にはガラス状の性質が示されるから、ゴム部562の温度が低い場合(例えば、−40℃)には、該ゴム部562はガラス状の性質を示す。一方で、貯蔵弾性率(損失弾性率)が小さい場合にはゴム状の性質が示されるから、ゴム部562の温度が高い場合(例えば、40℃)には、該ゴム部562はゴム状の性質を示す。
【0055】
また、図9には、損失弾性率G″を貯蔵弾性率G´で割った損失正接(図9中のtanδ)が、示されている。この損失正接が最も大きくなるピーク温度T(図9においては、−35℃付近)を境界として、ゴム部562の性質が変わる。すなわち、ピーク温度Tよりも低い温度の場合には、ゴム部562はガラス状の性質を示し、該ピーク温度Tよりも高い温度の場合には、ゴム部562はゴム状の性質を示す。なお、上記のピーク温度Tは、ガラス転移点温度とも呼ばれる。
【0056】
ちなみに、図9に示すグラフは、以下のような測定によって求められている。本測定の測定機として、TAインスルツルメント製のARESが使用され、測定の際の治具としてトーションタイプのものが使用されている。そして、測定モードとして、温度依存性測定モードが選択され、測定の温度範囲は−50℃〜60℃である(図9)。なお、−50℃から60℃までの昇温速度は、5℃/minである。このような測定条件にて測定されることにより、ゴム部562の貯蔵弾性率G´、損失弾性率G″、及び、損失正接(tanδ)が、求められる。
【0057】
ところで、本実施の形態に係るプリンタ10には、使用温度域が設定されており、具体的には、この使用温度域は、10℃〜35℃である。そして、プリンタ本体10aに装着された現像装置51、52、53、54のゴム部562の温度は、この使用温度域よりも少し(約10℃程度)高い温度なる。このため、ゴム部562は、上述したピーク温度T(約−35℃)よりも高い温度で使用されるから、温度との関係においてゴム状の性質を示すこととなる。
【0058】
このように、温度との関係においてゴム部562がゴム状の性質を示すことからも分かるように、ゴム部562が一般的に使用される場合には、該ゴム部562がゴム状の性質として使用されることが、要請されている。
【0059】
===ゴム部562の物性と、振動数との関係について===
上述したようにゴム部562が現像ローラ510の表面に当接しているから、該現像ローラ510は、その回転の際に、該ゴム部562を摺擦する。このため、現像ローラ510の回転に伴いゴム部562が振動することとなる。特に、現像ローラ510の表面には溝部512が形成されているため、該現像ローラ510の回転に伴いゴム部562は振動しやすい。そして、ゴム部562の振動数の大きさに応じて、該ゴム部562の性質が異なることが知られている。すなわち、振動数の大きさに応じて、ゴム部562は、ゴム状の性質またはガラス状の性質を示すことが知られている。かかる点について、以下において説明する。
【0060】
図10は、ゴム部562の振動数(周波数)に対する貯蔵弾性率等を示すグラフである。なお、以下においては、便宜上、振動数の代わりに周波数を用いる。また、図10に示すグラフの横軸の目盛りは、対数となっている(後述する図11と図12も同様)。図10には、図9と同様に、ゴム部562の貯蔵弾性率(図10中でG´)及び損失弾性率(図10中でG″)が、示されている。グラフに示されているように、貯蔵弾性率と損失弾性率の大きさは、ゴム部562の周波数が小さい場合には小さい値を示し、ゴム部562の周波数が大きい場合には大きい値を示す。このため、ゴム部562の周波数が小さい場合には、ゴム部562はゴム状の性質であり、ゴム部562の周波数が大きい場合には、ゴム部562はガラス状の性質である。
【0061】
また、図10には、図9と同様に、損失弾性率G″を貯蔵弾性率G´で割った損失正接(図10中のtanδ)が、示されている。この損失正接が最も大きくなるピーク周波数f(図10においては、約100000Hz)を境界として、ゴム部562の性質が変わる。すなわち、ピーク周波数fよりも低い周波数の場合には、ゴム部562はゴム状の性質を示し、該ピーク周波数fよりも高い周波数の場合には、ゴム部562はガラス状の性質を示す。
【0062】
このため、上述した要請、すなわち、現像ローラ510の回転に伴い振動するゴム部562をゴム状の性質として使用する要請、に応えるためには、ゴム部562の振動数(周波数)をピーク周波数fよりも低くすることが必要となる。
【0063】
ちなみに、図10に示すグラフは、図9に示すグラフと同様な測定によって求められている。すなわち、測定機として前述したARESが使用され、測定モードとして周波数依存性測定モードが選択されている。そして、測定対象のゴム部562に印加される周波数の範囲は、10−4〜1014であり(図10)、周波数の印加歪みは、0.1%(一定)である。また、測定の際のゴム部562の温度は、20℃に維持されている。なお、後述する図11と図12に示すグラフも、同様な測定によって求められている。
【0064】
<<本実施の形態に係る現像装置51、52、53、54の有効性について>>
本実施の形態に係る現像装置51、52、53、54においては、現像ローラ510が回転する際の該現像ローラ510の表面の移動速さを、溝部512の、該現像ローラ510の周方向のピッチ、で割った値が、ゴム部562の、損失弾性率を貯蔵弾性率で割った損失正接が、最大になるときの該ゴム部562の振動数、よりも小さくなっている(V/L1<f)。これにより、現像ローラ510の回転に伴い振動するゴム部562が、ゴム状の性質にて適切に使用されることとなる。
【0065】
以下、当該事項について、図8等を用いて、より詳しく説明する。前述したとおり、本実施の形態に係る現像ローラ510の表面には、周方向に対する傾斜角度が異なる2種類の螺旋状の溝部512が設けられており、当該2種類の螺旋状の溝部512は、互いに交差して格子形状をなしている。また、現像ローラ510は前記2種類の螺旋状の溝部512に囲まれた正方形の頂面515を有し、正方形の頂面が有する2本の対角線のうちの一本が周方向に沿っている(図8)。そして、このような現像ローラ510において、溝部512の、周方向のピッチ(図8に示す幅L1)は、約113μmである。
【0066】
また、前述したとおり、現像ローラ510が回転する際の現像ローラ510の表面の移動速さVは、320mm/sである。従って、現像ロータ510が回転する際の現像ローラ510の表面の移動速さVを前記ピッチL1で割った値V/L1は、約2831Hzである。そして、図10に示すように、ゴム部562の損失正接(tanδ)が最大になるときの該ゴム部562のピーク周波数fは、約100000Hzであるから、本実施の形態において、V/L1<fの関係が満たされる。
【0067】
次に、このようなV/L1<fの関係が満たされると、どうして、現像ローラ510が回転する際にゴム部562がゴム状の性質として使用されるか、について説明する。前述したようにゴム部562は現像ローラ510の表面に当接するが、該表面には規則的に配置された溝部512が形成されている。このため、現像ローラ510が回転する際に、規則的に配置された溝部512がゴム部562を摺擦することにより、該ゴム部562が一定の振動数で振動することとなる。そして、ゴム部562の振動数の大きさは、溝部512の周方向におけるピッチL1と、該現像ローラ510の表面の移動速さVによって定まる。すなわち、現像ローラ510が回転する際のゴム部562の振動数は、V/L1となる。このため、このV/L1がゴム部562のピーク周波数fよりも小さければ(V/L1<f)、該ゴム部562はゴム状の性質と使用されることとなる。
【0068】
従って、本実施の形態に係る現像装置51、52、53、54においては、V/L1<fの関係が満たされることにより、現像ローラ510の回転に伴い振動するゴム部562の振動数が、該ゴム部562のピーク周波数f(約100000Hz)よりも小さくなるため、現像ローラ510が回転する際にゴム部562がゴム状の性質にて使用されることとなる。この結果、ゴム部562が、現像ローラ510に担持されたトナーの層厚を規制する機能が、適切に発揮される。
【0069】
<ピーク周波数fとゴム部562の温度との関係について>
上述したようにプリンタ10には使用温度域(すなわち、10℃〜35℃)が設定されており、ゴム部562の温度も、プリンタ10の使用温度に応じて異なる。そして、該ゴム部562の損失正接(tanδ)が最大になるときのゴム部562のピーク振動数fは、ゴム部562の温度の大きさに応じて異なる。かかる点について、図11を用いて説明する。
【0070】
図11は、ゴム部562の振動数(周波数)に対する損失正接(tanδ)を示すグラフである。ただし、図10には、ゴム部562の温度が20℃であるときの、該ゴム部562の損失正接(tanδ)が示されているのに対して、図11には、ゴム部562の温度が10℃、20℃、30℃であるときの、該ゴム部562の損失正接(tanδ)が示されている。図11のグラフを見ると分かるように、ゴム部562の温度が高いほど、損失正接(tanδ)が大きくなる傾向にある。このため、ゴム部562の損失正接(tanδ)が最大になるときのゴム部562のピーク振動数fも、ゴム部562の温度が大きい(高い)ほど、大きくなる。そして、上述した値V/L1は、約2831Hzであるから、10℃、20℃、30℃におけるピーク周波数よりも、小さい。
【0071】
従って、上記実施の形態においては、プリンタ10の使用温度域(10℃〜35℃)の全ての温度において、前述したV/L1<fの関係が満たされることとなるため、プリンタ10画像形成動作に伴い現像ローラ510が回転する際には、該ゴム部562が必ずゴム状の性質にて使用されることとなる。
【0072】
<ピーク周波数fとゴム部562の材質との関係について>
上述したゴム部562は、DIC製のT8175(実施例1)である。しかし、ゴム部562として、T8125以外のものも使用でき、例えば、東洋ゴム製のT7350(実施例2)や、バンドーゴム製のSS2(実施例3)を使用できる。そして、これら3つの物質の材質は以下の通りである。すなわち、実施例1のT8175は熱可塑性エラストマーであり、その硬度(ショアA)は78である。実施例2のT7350はウレタンゴムであり、その硬度(JIS A)は75である。実施例3のSS2はウレタンゴムであり、その硬度(JIS A)は78である。
【0073】
図12は、上述した3つの物質の損失正接(tanδ)を示したグラフである。図12のグラフを見ると分かるように、実施例1のT8175のピーク周波数fは約100000(Hz)であり、実施例2のT7350のピーク周波数fは約5000(Hz)であり、実施例3のSS2のピーク周波数fは約4000(Hz)である。このため、上記の3つの物質をゴム部562として使用した場合には、前述したV/L1<fの関係が満たされるため、該3つの物質から成るゴム部562は、現像ローラ510が回転する際にゴム状の性質にて使用されることとなる。なお、上記実施の形態においては、3つの物質のうちの最もピーク周波数fが大きい実施例1のT8175をゴム部562として、使用されている。
【0074】
なお、図12には、比較例として、クリーニングブレード76に使用可能な北辰工業製の201759の損失正接(tanδ)が示されている。この物質のピーク周波数fは、約300(Hz)であり、該物質をゴム部652として使用した場合には、V/L1<fの関係が満たされず、現像ローラ510が回転する際に該ゴム部652がガラス状の性質にて使用される恐れがある。
【0075】
ちなみに、図12に示す実施例1のT8175の損失正接のグラフは、図10の損失正接のグラフと同一のものであり、T8175を測定する際の該T8175の温度は、20℃である。そして、実施例2のT7350と実施例3のSS2と比較例の201759を測定する際の、これらの温度も20℃である。
【0076】
<溝部512の周方向のピッチL1と、現像ローラ510の移動速さVについて>
上記実施の形態においては、溝部512の周方向のピッチL1は約113μmであり、現像ローラ510の表面の移動速さVは320mm/sであることとしたが、これに限定されるものではない。前記ピッチL1と移動速さVは、V/L1<fの関係が満たされれば、どのような値になってもよい。ただし、ピッチL1の大きさは約85μm〜約142μmであり、移動速さVは100mm/s〜480mm/sであることが望ましい。
【0077】
===現像装置の動作中にV/L1<fの関係を維持するための方策===
上述したように、現像ローラ510の移動速さVは320mm/sであり、溝部512のピッチL1は約113μmであり、前記移動速さVを前記ピッチL1で割った値V/L1(約2831Hz)が、ゴム部562のピーク周波数fよりも小さいこととした。
【0078】
ところで、現像装置の動作中に、前記値V/L1の大きさが変動することがある。例えば、現像装置51、52、53、54等に外乱が作用して、回転中の現像ローラ510の移動速さVが320mm/sよりも大きくなる場合には、前記値V/L1も大きくなる(別言すれば、現像ローラ510の回転に伴い振動するゴム部562の振動数(周波数)も大きくなる)。そして、仮に、ゴム部562のピーク周波数fが2831Hz(移動速さVが320mm/sである場合の周波数)に近い大きさである場合には、前記値V/L1の大きさが、変動した際に当該ピーク周波数fよりも大きくなることがある(すなわち、現像装置の動作中にV/L1<fの関係が維持されず、V/L1>fの関係になることがある)。そして、値V/L1がピーク周波数fよりも大きい場合には、前述したように、ゴム部562がガラス状の性質を示す問題が発生することとなる。
【0079】
そこで、かかる問題を解消すべく、現像装置の動作中に移動速さV等が変動してもV/L1<fの関係を維持するための方策として、本実施の形態においては、現像ローラ510の移動速さVを溝部512のピッチL1で割った値V/L1は、損失正接(tanδ)が最大値になる前記ピーク周波数fよりも小さい周波数であって、当該周波数のときに前記損失正接が前記最大値の半分になる周波数(以下、周波数f2とも呼ぶ)、よりも小さい(V/L1<f2)こととしている。
【0080】
当該事項について、図13を用いて説明する。図13は、前述した実施例1のゴム部562(T8175)の損失正接tanδ等を示した図であり、図10に示すグラフに対して前記周波数f2等が追加されている。図13に示すように、損失正接tanδの最大値は約0.58であり、このときの周波数(ピーク周波数f)は約100000Hzである。このため、前記最大値の半分は0.29であり、このときの前記周波数f2は約1000Hzである。そして、周波数f2が約1000Hzである場合にV/L1<f2の関係が成り立つためには、例えば、移動速さVを100mm/sに定め、ピッチL1を125μmに定める。かかる場合には、値V/L1は800Hzとなり、V/L1<f2の関係が成り立つこととなる。
【0081】
このように、V/L1<f2の関係が成り立つ場合には、例えば前記移動速さVの大きさの変動に伴い前記値V/L1の大きさが変動しても、周波数f2(約1000Hz)がピーク周波数f(約100000Hz)の1/100倍の大きさであるため、当該値V/L1が前記ピーク周波数fよりも大きくなり難い。この結果、現像装置の動作中(現像ローラ510の回転中)にV/L1<fの関係が維持されることとなり、現像ローラ510が回転する際にゴム部562がゴム状の性質にてより適切に使用されることとなる。
【0082】
なお、上記において、前記値V/L1は、周波数f2よりも小さいこととしたが、損失正接が、その最大値(約0.58)と最小値(図13においては、約0.02)の中間値(約0.28)になる周波数、よりも小さいこととしてもよい。ただし、本実施例においては、前記最小値が0に近い大きさであるので、前記中間値(約0.28)と、前記最大値の半分の値(0.29)が、ほぼ同じである。このため、中間値のときの周波数と、前記周波数f2もほぼ同じ大きさとなる(後述する実施例2と実施例3のゴム部562についても、同様である)。
【0083】
次に、図14と図15を用いて、前述した実施例2に係るゴム部562(T7350)と実施例3に係るゴム部562(SS2)における、V/L1<f2の関係について説明する。図14は、実施例2のゴム部562の損失正接tanδ等を示した図であり、図15は、実施例3のゴム部562の損失正接tanδ等を示した図である。
【0084】
第二実施例のT7350のゴム部562においては、図14に示すように、損失正接tanδの最大値は約0.76であり、ピーク周波数fは約5000Hzである。このため、前記最大値の半分は0.38であり、周波数f2は約100Hzである。よって、T7350のゴム部562の場合には、値V/L1が100Hzより小さくなるように移動速さVとピッチL1を定めることにより、当該ゴム部562が現像装置の動作中にゴム状の性質にて使用され続けることとなる。
【0085】
第三実施例のSS2のゴム部562においては、図15に示すように、損失正接tanδの最大値は約0.60であり、ピーク周波数fは約4000Hzである。このため、前記最大値の半分は0.30であり、周波数f2は約60Hzである。よって、SS2のゴム部562の場合には、値V/L1が60Hzより小さくなるように移動速さVとピッチL1を定めることにより、当該ゴム部562が現像装置の動作中にゴム状の性質にて使用され続けることとなる。
【0086】
ところで、図13〜図15に示されているように、周波数f2よりも小さい周波数のときには、周波数f2とピーク周波数fの間の周波数のときに比べて、ゴム部562の貯蔵弾性率G´の変動が小さい。ここで、貯蔵弾性率G´は、前述したように物質の弾性的な振る舞いを表すものであり、この貯蔵弾性率G´の大きさに応じて、当該ゴム部562の振動の度合いも変化することが知られている。そして、ゴム部562の貯蔵弾性率G´の変動が小さい場合には、ゴム部562の振動の度合いが安定するため、当該ゴム部562の現像ローラ510への当接も安定し、この結果、ゴム部562が、現像ローラ510に担持されたトナーの層厚を規制する機能(トナーに電荷を付与する機能)が、適切に発揮されることとなる。
【0087】
===現像ローラ510の製造方法===
ここでは、現像ローラ510の製造方法について、図16A〜図16E、図17を用いて説明する。図16A〜図16Eは、現像ローラ510の製造工程における、現像ローラ510の変遷を示した模式図である。図17は、現像ローラ510の転造加工を説明するための説明図である。
【0088】
先ず、図16Aに示すように、現像ローラ510の基材としてのパイプ材600を準備する。当該パイプ材600の肉厚は0.5〜3mmである。次に、図16Bに示すように、当該パイプ材600の長手方向両端部にフランジ圧入部602を作る。当該フランジ圧入部602は、切削加工により作られる。次に、図16Cに示すように、当該フランジ圧入部602にフランジ604を圧入する。フランジ604のパイプ材600への固定を確実にするために、フランジ604の圧入後、フランジ604をパイプ材600へ接着又は溶接するようにしてもよい。次に、図16Dに示すように、フランジ604が圧入されたパイプ材600の表面にセンタレス研磨を施す。当該センタレス研磨は、当該表面の全面に亘って実施され、センタレス研磨後の当該表面の十点平均粗さRzは、1.0μm以下となる。次に、図16Eに示すように、フランジ604が圧入されたパイプ材600に、転造加工を施す。本実施の形態においては、2つの丸ダイス650、652を用いた所謂スルーフィード転造(歩み転造、通し転造とも呼ばれている)加工が実施される。
【0089】
すなわち、図17に示すように、ワークとしての前記パイプ材600を挟むように配置された二つの丸ダイス650、652、を当該パイプ材600に所定の圧力(当該圧力の方向を、図17中記号Pで示す)で押し付けた状態で、当該二つの丸ダイス650、652を同方向(図17参照)に回転させる。スルーフィード転造においては、丸ダイス650、652が回転することにより、パイプ材600が丸ダイス650、652の回転方向とは逆方向(図17参照)に回転しながら、図17中記号Hで示した方向に移動する。丸ダイス650、652の表面には、溝680を形成するための凸部650a、652aが備えられており、当該凸部650a、652aがパイプ材600を変形させることにより、パイプ材600に溝680が形成される。
【0090】
そして、転造加工の終了後に、前記中央部510aの表面にメッキを施す。本実施の形態においては、当該メッキとして無電解Ni−Pメッキを用いるが、これに限定されるものではなく、例えば、硬質クロームメッキや電気メッキを用いてもよい。
【0091】
===その他の実施の形態===
以上、上記実施の形態に基づき本発明に係る画像形成装置等を説明したが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【0092】
上記実施の形態においては、画像形成装置として中間転写型のフルカラーレーザビームプリンタを例にとって説明したが、本発明は、中間転写型以外のフルカラーレーザビームプリンタ、モノクロレーザビームプリンタ、複写機、ファクシミリなど、各種の画像形成装置に適用可能である。
【0093】
また、感光体についても、円筒状の導電性基材の外周面に感光層を設けて構成した、いわゆる感光ローラに限られず、ベルト状の導電性基材の表面に感光層を設けて構成した、いわゆる感光ベルトであってもよい。
【0094】
また、上記実施の形態において、図4に示すように、前記『当接部材』は、現像ローラ510の表面に当接して、現像ローラ510に担持されたトナーの層厚を規制するためのゴム部562、であることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、前記当接部材は、ゴム弾性体から成っていれば、上シール520やトナー供給ローラ550であることとしてもよい。
ただし、前記当接部材がゴム部562である場合には、上述したV/L1<fの関係が満たされることにより、該ゴム部562がガラス状の性質で使用されてトナーの層厚を不適切に規制することを防止でき、この結果、現像ローラ510による現像が適切に実行される点で、上記実施の形態の方がより望ましい。
【0095】
また、上記実施の形態において、ゴム部562は、その長手方向が現像ローラ510の軸方向に沿うように、かつ、その短手方向の一端(規制ブレード560の先端560a)が該現像ローラ510の回転方向上流側に向くように、前記表面に当接することとした(図4参照)。そして、ゴム部562の、前記表面に当接する当接部562aは、前記短手方向において前記一端から離れていることとした(すなわち、ゴム部562は、現像ローラ510に腹当たりにて当接している)。しかし、上記に限定されるものではない。例えば、当接部562aは前記一端である、すなわち、ゴム部562は、現像ローラ510にエッジにて当接していることとしてもよい。
【0096】
また、上記実施の形態において、図6に示すように、凹部は、現像ローラ510の周方向に対する傾斜角度が異なる2種類の螺旋状の溝部512、であり、該2種類の螺旋状の溝部512は、互いに交差して格子形状をなしていることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、凹部は、溝状のものでなくてもよい。また、凹部が、溝部である場合に、溝部は螺旋状でなくてもよい。また、凹部として、1種類の溝部のみが設けられていてもよい。
【0097】
また、上記実施の形態において、図6に示すように、現像ローラ510は、前記2種類の螺旋状の溝部512に囲まれた正方形の頂面515、を有し、該正方形の頂面515が有する2本の対角線のうちの一方が前記周方向に沿っていることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、図18Bに示すように、頂面は、正方形でない菱形、であってもよい。また、頂面は、菱形でもなく、例えば、図18Cに示すように、円形であってもよい。また、図18Aに示すように、正方形の頂面が有する2本の対角線の双方が、前記周方向に沿っていないこととしてもよい。なお、図18A〜図18Cは、現像ローラ510の表面形状についてのバリエーションを示した図である。
【0098】
また、上記実施の形態においては、溝部512が、底面514と側面513とを備えており、側面513の傾斜角度は、約45度である(図7参照)こととしたが、これに限定されるものではなく、例えば、側面513の傾斜角度が、約90度であることとしてもよい。
【0099】
また、上記実施の形態において、該現像装置51、52、53、54は、プリンタ10のプリンタ本体10aに対して着脱可能であり(図1参照)、プリンタ10には、使用温度域が設定されており、前記損失正接(tanδ)が最大になるときのゴム部562の振動数は、温度の大きさに応じて異なることとした(図11参照)。そして、現像ローラ510が回転する際の前記表面の移動速さVを、溝部512の、現像ローラ510の周方向のピッチL1、で割った値V/L1は、前記使用温度域内(具体的には、10℃〜35℃)の全ての温度における、前記損失正接(tanδ)が最大になるときのゴム部562のピーク振動数f、よりも小さいこととしたが、これに限定されるものではない。例えば、前記使用温度域内うちの一部の温度のときには、上述したV/L1<fの関係が満たされないこととしてもよい。
ただし、前記使用温度域内の全ての温度のときにV/L1<fの関係が満たされる場合には、プリンタ10が画像形成を実行する際には、ゴム部562は必ずゴム状の性質にて使用される点で、上記実施の形態の方がより望ましい。
【0100】
また、上記実施の形態において、ゴム部562は、熱可塑性エラストマーから成ることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、ゴム部562は、ウレタンゴムから成ることとしてもよい。
【0101】
また、上記実施の形態において、現像ローラ510が回転する際の前記表面の移動速さVを、溝部512の、現像ローラ510の周方向のピッチL1、で割った値V/L1は、損失正接tanδが最大値になるときのゴム部562のピーク周波数f(振動数)よりも小さい周波数であって、当該周波数のときに損失正接tanδが前記最大値の半分になる振動数f2(図13〜図15参照)、よりも小さいこととしたが、これに限定されるものではない。例えば、前記値V/L1は、ピーク周波数f1と周波数f2の間の大きさであることとしてもよい。
ただし、前記値V/L1が周波数f2よりも小さい場合には、例えば現像ローラ510の移動速さVが変動してゴム部562の振動数(周波数)が変わっても、当該振動数(周波数)が、ピーク周波数fより大きくなり難い(別言すれば、ゴム部562が、ガラス状の性質を示し難い)ため、現像ローラ510が回転する際にゴム部562がゴム状の性質にてより適切に使用されることとなる点で、上記実施の形態の方がより望ましい。
【0102】
===画像形成システム等の構成===
次に、本発明に係る実施の形態の一例である『画像形成システム』の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0103】
図19は、画像形成システムの外観構成を示した説明図である。画像形成システム700は、コンピュータ702と、表示装置704と、プリンタ706と、入力装置708と、読取装置710とを備えている。コンピュータ702は、本実施形態ではミニタワー型の筐体に収納されているが、これに限られるものではない。表示装置704は、CRT(Cathode Ray Tube:陰極線管)やプラズマディスプレイや液晶表示装置等が用いられるのが一般的であるが、これに限られるものではない。プリンタ706は、上記に説明されたプリンタが用いられている。入力装置708は、本実施形態ではキーボード708Aとマウス708Bが用いられているが、これに限られるものではない。読取装置710は、本実施形態ではフレキシブルディスクドライブ装置710AとCD−ROMドライブ装置710Bが用いられているが、これに限られるものではなく、例えばMO(Magneto Optical)ディスクドライブ装置やDVD(Digital Versatile Disk)等の他のものであっても良い。
【0104】
図20は、図19に示した画像形成システムの構成を示すブロック図である。コンピュータ702が収納された筐体内にRAM等の内部メモリ802と、ハードディスクドライブユニット804等の外部メモリがさらに設けられている。
【0105】
なお、以上の説明においては、プリンタ706が、コンピュータ702、表示装置704、入力装置708、及び、読取装置710と接続されて画像形成システムを構成した例について説明したが、これに限られるものではない。例えば、画像形成システムが、コンピュータ702とプリンタ706から構成されても良く、画像形成システムが表示装置704、入力装置708及び読取装置710のいずれかを備えていなくても良い。また、例えば、プリンタ706が、コンピュータ702、表示装置704、入力装置708、及び、読取装置710のそれぞれの機能又は機構の一部を持っていても良い。一例として、プリンタ706が、画像処理を行う画像処理部、各種の表示を行う表示部、及び、デジタルカメラ等により撮影された画像データを記録した記録メディアを着脱するための記録メディア着脱部等を有する構成としても良い。
【0106】
このようにして実現された画像形成システムは、システム全体として従来システムよりも優れたシステムとなる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】プリンタ10を構成する主要構成要素を示した図である。
【図2】図1のプリンタ10の制御ユニットを示すブロック図である。
【図3】現像装置の概念図である。
【図4】現像装置の主要構成要素を示した断面図である。
【図5】現像ローラ510の斜視模式図である。
【図6】現像ローラ510の正面模式図である。
【図7】溝部512の断面形状を示した模式図である。
【図8】図6の拡大模式図である。
【図9】ゴム部562の温度に対する貯蔵弾性率等を示すグラフである。
【図10】ゴム部562の振動数(周波数)に対する貯蔵弾性率等を示すグラフである。
【図11】ゴム部562の振動数(周波数)に対する損失正接(tanδ)を示すグラフである。
【図12】各物質の損失正接(tanδ)を示したグラフである。
【図13】実施例1のゴム部562の損失正接tanδ等を示した図である。
【図14】実施例2のゴム部562の損失正接tanδ等を示した図である。
【図15】実施例3のゴム部562の損失正接tanδ等を示した図である。
【図16】図16A〜図16Eは、現像ローラ510の製造工程における、現像ローラ510の変遷を示した模式図である。
【図17】現像ローラ510の転造加工を説明するための説明図である。
【図18】図18A〜図18Cは、現像ローラ510の表面形状についてのバリエーションを示した図である
【図19】画像形成システムの外観構成を示した説明図である。
【図20】図19に示した画像形成システムの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0108】
10 プリンタ、10a プリンタ本体、20 感光体、30 帯電ユニット、
40 露光ユニット、50 YMCK現像ユニット、50a 中心軸、
51 ブラック現像装置、52 マゼンタ現像装置、53 シアン現像装置、
54 イエロー現像装置、55a、55b、55c、55d 保持部、
60 一次転写ユニット、70 中間転写体、75 クリーニングユニット、
76 クリーニングブレード、80 二次転写ユニット、90 定着ユニット、
92 給紙トレイ、94 給紙ローラ、95 表示ユニット、96 レジローラ、
100 制御ユニット、101 メインコントローラ、
102 ユニットコントローラ、112 インターフェイス、113 画像メモリ、
510 現像ローラ、510a 中央部、510b 軸部、512 溝部、
512a 第一溝部、512b 第二溝部、513 側面、514 底面、
515 頂面、520 上シール、522 上シール支持板金、
524 上シール付勢部材、530 トナー収容体、
530a 第一トナー収容部、530b 第二トナー収容部、540 ハウジング、
542 上ハウジング部、544 下ハウジング部、545 仕切り壁、
550 トナー供給ローラ、560 規制ブレード、
560a 先端、562 ゴム部、562a 当接部、564 ゴム支持部、
564a 薄板、564b 薄板支持部、564d 短手方向一端部、
564e 短手方向他端部、570 ブレード裏部材、572 開口、
600 パイプ材、602 フランジ圧入部、
604 フランジ、650 丸ダイス、650a 凸部、652 丸ダイス、
652a 凸部、680 溝、700 画像形成システム、702 コンピュータ、
704 表示装置、706 プリンタ、708 入力装置、708A キーボード、
708B マウス、710 読取装置、
710A フレキシブルディスクドライブ装置、
710B CD−ROMドライブ装置、
802 内部メモリ、804 ハードディスクドライブユニット、
T トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
規則的に配置された凹部を表面に有し、現像剤を担持した状態で回転可能な現像剤担持体と、
ゴム弾性体から成り、前記現像剤担持体の前記表面に当接する当接部材であって、該現像剤担持体の回転に伴い振動する当接部材と、
を備えた現像装置であって、
前記現像剤担持体が回転する際の前記表面の移動速さを、前記凹部の、該現像剤担持体の周方向のピッチ、で割った値は、
前記当接部材の、損失弾性率を貯蔵弾性率で割った損失正接が、最大になるときの該当接部材の振動数、
よりも小さいことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の現像装置であって、
前記当接部材は、
前記表面に当接して、前記現像剤担持体に担持された現像剤の層厚を規制するための層厚規制部材、
であることを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の現像装置であって、
前記当接部材は、
その長手方向が前記現像剤担持体の軸方向に沿うように、かつ、その短手方向の一端が該現像剤担持体の回転方向上流側に向くように、
前記表面に当接し、
前記当接部材の、前記表面に当接する当接部は、前記短手方向において前記一端から離れていることを特徴とする現像装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の現像装置であって、
前記凹部は、前記周方向に対する傾斜角度が異なる2種類の螺旋状の溝部、であり、
該2種類の螺旋状の溝部は、互いに交差して格子形状をなしており、
前記現像剤担持体は、前記2種類の螺旋状の溝部に囲まれた正方形の頂面、を有し、
該正方形の頂面が有する2本の対角線のうちの一方が前記周方向に沿っていることを特徴とする現像装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の現像装置であって、
該現像装置は、画像形成装置の画像形成装置本体に対して着脱可能であり、
前記画像形成装置には、使用温度域が設定されており、
前記損失正接が最大になるときの前記当接部材の振動数は、温度の大きさに応じて異なり、
前記現像剤担持体が回転する際の前記表面の移動速さを、前記凹部の、前記現像剤担持体の周方向のピッチ、で割った値は、
前記使用温度域内の全ての温度における、前記損失正接が最大になるときの該当接部材の振動数、よりも小さいことを特徴とする現像装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の現像装置であって、
前記当接部材は、熱可塑性エラストマーから成ることを特徴とする現像装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の現像装置であって、
前記現像剤担持体が回転する際の前記表面の移動速さを、前記凹部の、該現像剤担持体の周方向のピッチ、で割った値は、
前記損失正接が最大値になるときの前記当接部材の振動数よりも小さい振動数であって、当該振動数のときに前記損失正接が前記最大値の半分になる振動数、
よりも小さいことを特徴とする現像装置。
【請求項8】
(a)潜像を担持するための像担持体と、
(b)現像剤にて該像担持体に担持された潜像を現像するための現像装置であって、
規則的に配置された凹部を表面に有し、現像剤を担持した状態で回転可能な現像剤担持体と、
ゴム弾性体から成り、前記現像剤担持体の前記表面に当接する当接部材であって、該現像剤担持体の回転に伴い振動する当接部材と、
を備え、
前記現像剤担持体が回転する際の前記表面の移動速さを、前記凹部の、該現像剤担持体の周方向のピッチ、で割った値は、
前記当接部材の、損失弾性率を貯蔵弾性率で割った損失正接が、最大になるときの該当接部材の振動数、
よりも小さい現像装置と、
(c)を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
(A)コンピュータ、及び、
(B)このコンピュータに接続可能な画像形成装置であって、
(a)潜像を担持するための像担持体と、
(b)現像剤にて該像担持体に担持された潜像を現像するための現像装置であって、
規則的に配置された凹部を表面に有し、現像剤を担持した状態で回転可能な現像剤担持体と、
ゴム弾性体から成り、前記現像剤担持体の前記表面に当接する当接部材であって、該現像剤担持体の回転に伴い振動する当接部材と、
を備え、
前記現像剤担持体が回転する際の前記表面の移動速さを、前記凹部の、該現像剤担持体の周方向のピッチ、で割った値は、
前記当接部材の、損失弾性率を貯蔵弾性率で割った損失正接が、最大になるときの該当接部材の振動数、
よりも小さい現像装置と、
(c)を有する画像形成装置、
(C)を具備したことを特徴とする画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−276147(P2008−276147A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134101(P2007−134101)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】