説明

現像装置およびこれを備える画像形成装置

【課題】 経時的な現像ギャップの変動を抑え、画像濃度むらなどの画質劣化を抑えることができる現像装置およびこれを備える画像形成装置を提供する。
【解決手段】 感光体ドラム32は、円柱または円筒状の金属基体32aと、金属基体32aの表面に設けられた感光性材料からなる感光層32bとを有する。現像ローラ62は、回転軸部62aと、回転軸部62aの回転軸線に中心軸線が一致するように設けられる、円柱または円筒状のローラ部62bとを有する。間隔規定部材80は、絶縁材料からなり、回転軸部62aの外周を取り巻いて環状に設けられる絶縁環状部材80aと、金属材料からなり、絶縁環状部材80aの外周に沿って環状に設けられる金属環状部材80bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式によって画像を形成する画像形成装置に搭載される現像装置に関し、特には非磁性1成分現像剤を用いて非接触現像を行う現像装置およびこれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式によって画像の形成を行う画像形成装置は、感光体の表面に形成される静電潜像に対して、現像装置が現像剤の成分であるトナーを感光体に供給して静電潜像を現像することによって可視像であるトナー像を形成し、さらにトナー像を転写媒体である記録紙などに転写し、転写されたトナー像を記録紙に定着させて堅牢な記録画像を形成する。
【0003】
近年、小型化が容易なカラーインクジェット方式の画像形成装置の普及により、電子写真方式を利用した画像形成装置においても、小型化・低価格化が求められている。
【0004】
このような要求に応じるために、電子写真方式の現像装置としては、構造が簡単で小型化が可能な、非磁性一成分現像方式が有用であり、現在も改良技術の開発が進められている。非磁性一成分現像方式には潜像担持体に、現像ローラを接触させて現像を行う接触現像方式と、潜像担持体と現像ローラとが所定の間隙を隔てて現像を行う非接触現像方式とがある。
【0005】
非接触現像方式の場合、潜像担持体表面と現像ローラ表面との間隔(以下では「現像ギャップ」という)を高精度に保持する必要がある。特に現像ローラのシャフト部分もしくは現像剤担持部分の端面に間隔規定部材を装着し、これを潜像担持体の表面に加圧接触させて所望の現像ギャップを維持する方式(DSDカラー方式)が広く採用されている。この方式では現像ローラのシャフトと現像担持部の同心円度(いわゆるフレ)の精度が重要になるが、フレ精度が加工技術の進歩により向上していることから、間隔規定部材を嵌めるだけの単純な構成で所望の現像ギャップが得られることが特徴である。
【0006】
しかしながら、この方式においては、間隔規定部材と感光体との接触部分に異物、たとえば現像剤や紙粉などが挟まりやすく、これらの異物が滞留してくると現像ギャップが変動する場合がある。
【0007】
異物の挟み込みによる現像ギャップの変動に対しては、特許文献1間隔規定部材の外周部を尖らせて算盤珠状に構成する。このような算盤珠状の間隔規定部材を用いることにより、間隔規定部材と感光体との接触が外周部に沿って線接触になり、異物の挟まりが起こりにくくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−106245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
間隔規定部材は、単純な構造であっても現像ギャップを高精度に保持することができるが、間隔規定部材と感光体との接触部分に現像剤やゴミなどの異物が挟まり易く、異物の滞留と離脱とが断続的に繰り返されて、安定した現像ギャップを維持することができなくなる場合がある。特許文献1に示すように、間隔規定部材の外周部を尖らせ、略算盤珠状にしたものを用いることで、異物が挟まりにくくなり、異物による現像ギャップの変動を防止できる。しかし、このような構成では、間隔規定部材と感光体との接触部における当接圧力が高くなり、間隔規定部材では、その外周部が磨耗変形し、感光体では、間隔規定部材が接触する位置において磨耗や剥がれが生じ、経時的な現像ギャップの変動をもたらす場合がある。
【0010】
本発明の目的は、経時的な現像ギャップの変動を抑え、画像濃度むらなどの画質劣化を抑えることができる現像装置およびこれを備える画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、円柱または円筒状の基体と、前記金属基体の表面に設けられた感光性材料からなる感光層とを有する像担持体が担持する静電潜像を、現像剤を用いて現像する現像装置であって、
現像剤を収容する現像槽と、
回転軸部と、前記回転軸部の回転軸線に中心軸線が一致するように設けられる、円柱または円筒状のローラ部とを有する現像剤担持体であって、前記現像槽内に回転自在に設けられ、前記回転軸線が前記像担持体の軸線と平行になるように、前記像担持体を臨んで配置され、前記現像槽に収容される現像剤を担持して前記像担持体に搬送する現像剤担持体と、
絶縁材料からなる、前記回転軸部の外周を取り巻いて環状に設けられる内側環状部材と、前記基体と同じ材料からなる、前記絶縁環状部材の外周に沿って環状に設けられる外側環状部材とを有する間隔規定部材であって、前記外側環状部材と、前記基体とが線接触の状態で当接するように設けられることで、前記感光層の表面と前記ローラ部の表面との間隔を規定する間隔規定部材と、を備えることを特徴とする現像装置である。
【0012】
また本発明は、前記外側環状部材は金属材料からなり、前記基体が金属材料からなることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記内側環状部材と前記外側環状部材とは、着脱可能に構成されることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記内側環状部材と前記外側環状部材とは、装着時において、相対的に位置の変化が可能に構成されていることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記外側環状部材が、螺旋状に形成されていることを特徴とする。
また本発明は、前記現像装置を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、円柱または円筒状の基体と、前記金属基体の表面に設けられた感光性材料からなる感光層とを有する像担持体の表面に形成された静電潜像を、現像剤担持体が搬送する現像剤によって現像する。現像剤担持体は、回転軸部と、前記回転軸部の回転軸線に中心軸線が一致するように設けられる、円柱または円筒状のローラ部とを有する。
【0017】
前記感光層の表面と前記ローラ部の表面との間隔は、間隔規定部材によって規定される。間隔規定部材は、絶縁材料からなる、前記回転軸部の外周を取り巻いて環状に設けられる内側環状部材と、前記基体と同じ材料からなる、前記絶縁環状部材の外周に沿って環状に設けられる外側環状部材とを有しており、前記外側環状部材と、前記基体とが当接するように設けられる。
【0018】
また、前記外側環状部材と前記基体との接触が線接触であるので、異物の挟み込みが抑えられる。また、外側環状部材の材質と、基体とは同じ材料で構成されるから、一方の部材が摩耗したり変形したり剥離したりすることがない。
【0019】
これにより、現像ギャップが変動する要因を除去することで、経時的な現像ギャップの変動を抑え、画像濃度むらなどの画質劣化を抑えることができる。
【0020】
さらには内側環状部材が絶縁材料から構成されるので、現像剤担持体への印加電圧が、基体へとリークすることを防ぐことができる。
【0021】
また本発明によれば、前記外側環状部材は金属材料からなり、前記基体が金属材料からなる。
【0022】
これにより、互いに当接する各部材の摩耗や変形が生じにくいので、より長期間にわたって、現像ギャップの変動を抑えることができる。
【0023】
また本発明によれば、前記内側環状部材と前記外側環状部材とは、着脱可能に構成される。
【0024】
前記内側環状部材と前記外側環状部材とを一体的に形成した場合、寸法精度が悪いと回転時に周期的な現像ギャップの変動が生じる。前記内側環状部材と前記外側環状部材とを着脱可能に構成することで、それぞれの部材において寸法精度が確保できていれば、所望の現像ギャップを十分に確保することができる。
【0025】
また本発明によれば、前記内側環状部材と前記外側環状部材とは、装着時において、相対的に位置の変化が可能、すなわち遊びがある状態で構成される。このような遊び部分があることで、所望の現像ギャップとなる適切な嵌めあい位置に、自己制御され、現像ギャップの変動を抑制することができる。
【0026】
また本発明によれば、前記外側環状部材が、螺旋状に形成されているので、螺嵌させて内側環状部材に嵌め込むことができる。またその内径を広げることが可能であり、内側環状部材に対して容易に嵌め込むことができる。
【0027】
また本発明によれば、上記の現像装置を備えることにより、長期間にわたって画像濃度むらなどの画質劣化が生じない画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態である現像装置Xを備えた画像形成装置Zの全体構成を示す概略図である。
【図2】現像装置Xの構成を示す概略図である。
【図3】間隔規定部材80の周辺の構成を示す概略図である。
【図4】間隔規定部材80の他の態様を示す外観図である。
【図5】間隔規定部材80の他の態様を示す外観図である。
【図6】間隔規定部材80の他の態様を示す外観図である。
【図7】他の実施形態の間隔規定部材90の構成を示す概略図である。
【図8】さらに他の実施形態の間隔規定部材100の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明の実施形態である現像装置Xを備えた画像形成装置Zの全体構成を示す概略図であり、図2は、現像装置Xの構成を示す概略図である。
【0030】
画像形成装置Zは、複数の動作条件に基づいて動作し、動作条件に応じてコピアモード(複写モード)、プリンタモード、ファクシミリモードなどの各動作モードを有する。操作部からの指示入力、パーソナルコンピュータなどの外部装置からの印刷ジョブの受信などに応じて、制御部が動作モードを選択する。
【0031】
図1に示すように、画像形成装置Zは、原稿読み取り部10、給紙部20、印刷部30、排紙部40に大別され、原稿読み取り部10が給紙部20の上方に配設され、排紙部40が原稿読み取り部10と給紙部20の中間部位に配設されている。
【0032】
以下では、各動作モードの中からコピアモードについて説明する。
ユーザが、原稿読み取り部10のプラテンガラス11上に原稿を載置した後、給紙部20の給紙カセット21または装置側面に設けられた手差しトレイ23に用紙(記録紙)を装着し、さらに装置の外装前面部に配置される操作パネル(不図示)上の条件入力キー(印刷枚数/印刷倍率等々)を入力した後に、操作パネルのスタートキーを操作すると、載置された原稿に対する複写動作が開始される。
【0033】
スタートキーが操作されると、メイン駆動モータが始動し、各駆動ギヤが回転する。その後、給紙ローラ22,22aが回転して用紙が装置内へ給紙され、給紙された用紙はレジストローラ31に到達して捕捉される。このレジストローラ31により、用紙は、感光体ドラム32上に形成された画像の先端部との位置合わせのために一時搬送が停止され、用紙の先端部が均一にレジストローラ31に押しつけられて用紙の先端位置の補正が行なわれる。
【0034】
原稿読み取り部10においては、コピーランプ12aが点灯し、コピーランプユニット12が矢印C方向へ移動することで原稿への露光が開始される。コピーランプ12aにより原稿に照射された照射光は、原稿の画像情報を含む反射光となり、この反射光が、コピーランプユニット12に設けられた第1ミラー12b、第2ミラー13、第3ミラー14で反射され、光学レンズ15を通ってCCD(電荷結合素子)16へと入力されることによって、原稿画像の画像情報が読み取られる。
【0035】
このようにして読み取られた画像情報は、CCD回路で、光による画像情報から電気信号による画像情報へと変換される。画像情報を示す電気信号は、設定された条件に基づいて画像処理が行われ、レーザスキャナユニット33へプリントデータとして送信される。
【0036】
印刷部30においては、帯電ユニット34により、感光体ドラム32の周面の一部が軸方向全体に渡って所定帯電電位に帯電され、感光体ドラム32が回転することによってその周面全体が所定の負の帯電電位に帯電される。
【0037】
次に、レーザスキャナユニット33では、回転方向に複数の反射面を有したポリゴンミラーと各種光学系とにより、半導体レーザから出射されたレーザ光が偏向されながら感光体ドラム32へと照射される。これにより、帯電した感光体ドラム32上をレーザ光が走査し、感光体ドラム32上に、電位ギャップによる静電潜像が形成される。
【0038】
その後、現像装置Xが備える現像槽61内の負の直流電位に印加された現像ローラ62により、現像槽61内のトナーが、回転する感光体ドラム32表面上に供給され、静電潜像はこのトナーによって感光体ドラム32上の静電潜像がトナー像として現像される。
【0039】
また、用紙は、タイミングを合わせてレジストローラ31により、感光体ドラム32方向へと搬送され、転写ユニット36により感光体ドラム32上のトナー像が用紙へと転写される。感光体ドラム32上に残留したトナーはドラムユニットのクリーニングブレード37aによってかきとられ、クリーナーユニット37により回収される。
【0040】
クリーニングブレード37aによりトナーがかきとられた感光体ドラム32の表面は、帯電ユニット34へ移動する途中で除電装置39により必要に応じて除電される。
【0041】
トナー像が転写された用紙は、定着装置38の加熱ローラ38aと加圧ローラ38bとの間を通過することで熱と圧力が加えられ、用紙上の未定着トナーが用紙に溶融・固着されて定着される。加熱ローラ38aは、その内部に設けられた加熱ヒータ38cによって加熱される。排紙部40においては、トナー像が定着され画像形成された用紙が、排紙ローラ41によって排紙トレイ42へと排出される。
【0042】
また、原稿読み取り部10が備える原稿トレイ19に原稿が載置されていることが、所定のセンサにより検出されている場合には、所定のスタートキー操作がなされたときに給紙ローラ51が回転し、原稿トレイ19上に載置された原稿が原稿読み取り部10内へ送出されて所定の搬送経路Rt1に沿って搬送される。この搬送経路Rt1には、レジストローラ53が設けられており、このレジストローラ53によって原稿が捕捉され、原稿先端の位置決めが行われた後、所定のタイミングで原稿読み取り位置へと搬送される。そして、コピーランプユニット12が所定の停止位置で停止したまま搬送中の原稿を露光する。この露光により得られた原稿からの反射光により原稿画像を読み取る処理は前述したとおりである。
このようにして画像が読み取られたのち、原稿は原稿排出部18へと排出される。
【0043】
図2は、現像装置Xの構成を示す概略図である。
現像装置Xは、大略、現像剤を表面に担持する現像ローラ62と、現像剤を収容する現像槽61と、現像槽61の中で現像剤60を撹拌搬送する撹拌搬送部材63,64,65を含む。それぞれは、たとえば、図中の矢符に示すように紙面に向かって反時計まわりに回転する。
【0044】
現像ローラ62は、現像槽内で回転自在に設けられるローラ部材である。現像ローラ62の材質としては、アルミニウム、ステンレスなど金属、所定の抵抗を有する導電性のゴムローラなどを使用できる。本実施例では外径φ16mmのアルミニウム製スリーブを用い、その表面をブラスト処理して表面粗さRaを0.3〜0.8μm程度に処理したものを用いている。現像ローラ62と感光体ドラム32とは、回転軸線が互いに平行になるように配置され、詳細は後述するが、本発明の特徴である間隔規定部材を介して、所望の間隙となるように構成されている。なお、間隔規定部材の詳細は後述する。
【0045】
現像ローラ62表面に担持される現像剤60としては、キャリアを含まない非磁性トナーからなる非磁性一成分現像剤が用いられる。トナー供給ローラ66により非磁性トナー60が搬送され、現像ローラ62の表面上に一定量のトナーを供給する。
【0046】
現像ローラ62の上方には、層厚規制部材として作用するドクターブレード68が設けられている。ドクターブレード68の一方端にはブレードと一体化された板状ウレタンゴム67が設けられ、他方端は固定用板金71,72によって挟持され、ビス73によって現像槽本体に固定されている。
【0047】
ドクターブレード68は、ばね性を有する薄い金属板金であり、他方端が固定されることで、ばね性によりウレタンゴム67を一定の圧力で現像ローラ62表面に押圧している。ドクターブレード68の材質としてはりん青銅板を用いることができ、他にステンレス板、ベリリウム銅板などばね性を有し、かつゴム材の成型温度に耐えうる材質を使用可能である。ドクターブレード68の厚みは0.12mmで、ゴム部材の外側の支持部分長さは25mmである。
【0048】
先端部分のゴム部材については、ウレタンゴムの他にシリコンゴムなども使用可能である。ゴムの硬度はJIS−A硬度で65°〜85°が好適であり、本実施形態では75°〜80°のウレタンゴムとした。ゴム部材の厚みは1mmとし、当接面側のゴム部材表面とドクターブレード68との距離は約0.8mmである。また当接部分における現像ローラ62の回転方向に沿ったゴム部材の長さは8mmである。
【0049】
これにより、現像ローラ62表面に、一定の帯電量で帯電されたトナーからなるトナー層が担持される。帯電されたトナーは、現像ローラ62と感光体ドラム32との電位差に応じて、現像ローラ62から感光体ドラム32に供給されて静電潜像を現像し、トナー像を形成する。
【0050】
現像槽61は、たとえば硬質の合成樹脂などからなり、外観が略直方体形状を有する容器部材である。
【0051】
現像槽61内において、第1撹拌搬送部材65と第2撹拌搬送部材63は主としてトナーの攪拌と搬送の役割を担っている。両部材共に回転軸の周囲に設けられた薄い樹脂性、たとえばPET(ポリエチレンテレフタレート)製の撹拌翼を有している。
【0052】
また、第3撹拌搬送部材64は、たとえば硬質の合成樹脂製のスクリュー状の回転部材であって、主としてトナーの攪拌と回転軸方向に沿ったトナーの搬送の役割を担っている。
【0053】
第2撹拌搬送部材63とトナー供給ローラ66との間には、中間壁部材69が設けられる。中間壁部材69は、たとえば合成樹脂などからなる平板状の部材であり、現像槽61の長手方向に延びて現像槽61の底部から立ち上がるようにして設けられる。中間壁部材69の中央部には開口穴70が設けられ、現像槽61内において、第2撹拌搬送部材63からトナー供給ローラ66へ向う現像剤の流れを形成している。
【0054】
トナー供給ローラ66は、芯金のまわりに円筒状のたとえば発泡ウレタンなどの多孔性弾性部材が設けられたものであり、この穴部にトナーを吸着させつつ、現像ローラ62の表面を摺擦することでトナーを現像ローラ62表面に供給し、現像後に現像ローラ62表面に残った余分のトナーをクリーニングする。
【0055】
次に、本発明の特徴である間隔規定部材について説明する。
図3は、間隔規定部材80の周辺の構成を示す概略図である。図3(a)は、感光体ドラム32、現像ローラ62および間隔規定部材80を上方から見た図を示し、図3(b)は、感光体ドラム32、現像ローラ62および間隔規定部材80を回転軸線方向から見た図を示す。感光体ドラム32は、円柱または円筒状の金属基体32aと、金属基体32aの表面に設けられた感光性材料からなる感光層32bとを有する。現像ローラ62は、回転軸部62aと、回転軸部62aの回転軸線に中心軸線が一致するように設けられる、円柱または円筒状のローラ部62bとを有する。間隔規定部材80は、絶縁材料からなり、回転軸部62aの外周を取り巻いて環状に設けられる絶縁環状部材80aと、金属材料からなり、絶縁環状部材80aの外周に沿って環状に設けられる金属環状部材80bとを有する。
【0056】
絶縁環状部材80aは、たとえば、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)共重合樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂などの合成樹脂材料を用いて構成される内側環状部材である。金属環状部材80bは、たとえば、アルミニウム、ステンレスなどの金属材料を用いて構成される外側環状部材であり、金属基体32aと同系統の金属材料で構成されることが好ましい。
【0057】
間隔規定部材80の金属環状部材80bと、感光体ドラム32の金属基体32aとが当接することで、感光層32bの表面とローラ部62bとの表面との間隔(現像ギャップ)Gが規定されるように構成される。たとえば、絶縁環状部材80aは、外径を15mmとし、内径を8mmとし、現像ローラ62の回転軸部62aが内側に嵌まるように構成されている。金属環状部材80bは、アルミニウムからなり、外径を16.3mmとし、周方向の断面形状が直径1mmの円形状である。絶縁環状部材80aと金属環状部材80bとは、たとえば、金属環状部材80bを、合成樹脂でモールディングするように形成することで、一体的に形成することが可能で、絶縁環状部材80aと金属環状部材80bの同心円度は10μm以内の高い同心円度を達成できる。
【0058】
この間隔規定部材80を感光体ドラム32に加圧接触させるにあたり、金属環状部材80bが、金属基体32aに当接するように構成している。これによって、現像ローラ62のローラ部62bの表面と金属基体32a表面との間隔は(16.3mm−16mm)÷2=0.15mm、すなわち150μmとなる。また、感光層32bの厚みは約30μmであるので、現像ギャップGとしては120μmに規定される。
【0059】
金属基体32aの材質をアルミニウムとし、金属環状部材80bと同系統の材質としている。
【0060】
上記のような構成にて、連続印字テストを行った。印字条件は以下に示すとおりである。
感光体表面電位:−750V
現像電位 :−700V
感光体周速度 :140mm/s
周速比 :1.0
感光体ドラム径:φ30mm
現像ローラ径 :φ16mm
トナー :ポリエステル樹脂製、平均粒径8.8μm
帯電量≒-7μC/g、現像ローラ62の付着量≒0.6mg/cm
印字装置 :シャープ株式会社製ARC−262の改造機
印字速度 :26枚/分(A4横送り)
連続印字枚数 :A4紙 5000枚
【0061】
印字テストの結果、間隔規定部材80と金属基体32aとの接触部における異物の挟み込みが抑えられ、各部材の磨耗変形による現像ギャップの変動も発生しなかったため、現像ギャップ変動による画像濃度むらの発生が抑えられた。
【0062】
金属環状部材80bの周方向の断面形状が円形状であるので、金属環状部材80bと金属基体32aとの接触が線接触となり、異物の挟み込みが抑えられる。また、金属環状部材80bの材質と、金属環状部材80bが当接する金属基体32aとは両方とも金属材料であるから、一方の部材が摩耗したり変形したり剥離したりすることがない。
【0063】
このように、本発明では、現像ギャップが変動する要因を除去することにより、経時的な現像ギャップの変動を抑え、画像濃度むらなどの画質劣化を抑えることができる。さらには絶縁環状部材80aが絶縁材料から構成されるので、現像ローラ62への印加電圧が、金属基体32aへとリークすることを防ぐことができる。
【0064】
なお、上記の説明では金属環状部材80bを使用したが、感光体ドラム32の基体の材質と同じ材質であれば、金属以外の材質を用いてもよい。金属基体32aが、ステンレスまたは導電性樹脂などの場合は、それらと同程度の磨耗性を有する材質の環状部材を用いることで、同様の効果を得ることができる。
【0065】
図4〜図6は、間隔規定部材80の他の態様を示す外観図である。図4(a)、図5(a)、図6(a)は、間隔規定部材80を軸線方向から見た図であり、図4(b)、図5(b)、図6(b)は、間隔規定部材80を上方から見た図である。
【0066】
図4に示す態様では、金属環状部材80bは、上記と同様に周方向の断面形状が円形状の部材であるが、絶縁環状部材80aが上記のような円筒状ではなく、外周面が外方に膨らむ曲面形状に形成されている。このような形状とすることで、絶縁環状部材80aと金属基体32aとの当接部分に異物が挟み込まれることを防ぐことができる。
【0067】
図5に示す態様では、金属環状部材80bが、周方向の断面形状が円形状ではなく、端面が、外方に凸の曲面形状を有する円板状部材である、絶縁環状部材80aは、円筒状に形成される。このような形状とすることで、絶縁環状部材80aと金属基体32aとの距離が離れるので、絶縁環状部材80aと金属基体32aとの当接部分に異物が挟み込まれることを防ぐことができる。
【0068】
図6に示す態様では、絶縁環状部材80aが、外径の異なる2種の円筒部材を同軸に重ねて形成されている。金属環状部材80bは、図5の態様と同様で、絶縁環状部材80aの小径部材の外周面に嵌め込まれている。
【0069】
図7は、他の実施形態の間隔規定部材90の構成を示す概略図である。本実施形態の
間隔規定部材90は、絶縁環状部材90aと金属環状部材90bとからなり、絶縁環状部材90aと金属環状部材90bとが別体に形成される。
【0070】
図3などに示した実施形態では、絶縁環状部材と金属環状部材とを一体的に形成することで、高い同心円度を実現できるが、成型時に不具合が発生し同心円度の低いものとなった場合、回転軸線が偏心してしまうこととなる。偏心した間隔規定部材を回転軸部62aの回転によって回転させると、現像ギャップが回転に伴って周期的に変動してしまう。このような問題を回避するには、個々の部品の寸法精度だけでなく、一体成型時の個々の部材の位置を厳密に合わせる必要があり、歩留まり低下やコストアップの要因となる懸念がある。
【0071】
本実施形態では、それぞれが別体で形成されているので、絶縁環状部材90aと金属環状部材90bのそれぞれが個別に高い寸法精度で形成されていれば、周期的な現像ギャップの変動を抑えることができる。
【0072】
絶縁環状部材90aは、外周面が金属環状部材90bの形状に応じて凹状に形成され、凹状部分に金属環状部材90bを嵌め込んで使用される。絶縁環状部材90aの内径と、凹状部分の底となる外径との差RI/2と、金属環状部材90bの外径と内径との差RO/2との寸法精度が十分に確保できていれば、間隔規定部材90が回転している状態であっても、回転軸部62aから感光体ドラム32の表面までの距離は、RI/2+RO/2として確保される。
【0073】
これにより、間隔規定部材90の製造歩留まりも向上でき、低コストで安定した現像ギャップを確保できる。また絶縁環状部材90aと金属環状部材90bの組み付けにおいて、周方向の一部で金属環状部材90bが所望の組み付け状態でない場合、絶縁環状部材90aと金属環状部材90bの嵌め合いが困難である。組み付けの不具合箇所が修正されないと、回転時に周期的な現像ギャップ変動が発生してしまう。
【0074】
そこで本実施形態では、図7に示すように、絶縁環状部材90aと金属環状部材90bの嵌め合い部分の寸法を適切に設定することで、遊び部分を設けることができ、微小ながら相対的な移動が可能となる。
【0075】
遊び部分があることで、所望の現像ギャップとなる適切な嵌めあい位置に、自己制御(セルフアライメント)され、現像ギャップの変動を抑制することが可能となる。
【0076】
本実施形態の間隔規定部材90の寸法例について以下に示す。
金属環状部材90b
・材質 :アルミニウム
・断面 :φ1mm =RO/2(内径と外径の差の1/2)=E(厚み)
・内径A :15mm
・外径 :17mm
絶縁環状部材90a
・材質 :ポリアセタール樹脂
・内径 :φ8mm
・外径B :φ14.3mm
・最外径C:φ15.3mm
・溝幅D :1.3mm
【0077】
使用時にはまず、金属環状部材90bを絶縁環状部材90aに嵌める。金属環状部材90bの内径Aが15mmに対し、絶縁環状部材90aの最外径Cは15.3mmとなっており、樹脂の弾性変形を利用して凹部に嵌め込む。このとき、嵌め込み易いように絶縁環状部材90aの端縁部は曲面加工している。金属環状部材90bは、絶縁環状部材90aに嵌め込まれるが、凹部の開口幅Dは1.3mmであり、金属環状部材90bの断面径E(=1.0mm)よりやや大きくなっており、金属環状部材90bは絶縁環状部材90aに対して遊びがある状態となっている。また凹部の底までの外径は14.3mmで、内径は8mmである。回転軸部62a表面から凹部の底までの長さRI/2は(14.3−8)/2=3.15mmとなる。現像ローラ62の直径が16mm、回転軸部62aの直径が8mmの場合、現像ローラ62中心から金属環状部材90bまでの長さは、回転軸部62aの半径+RI/2+金属環状部材90bの周方向断面径であるので、8/2+3.15+1.0=8.15mmとなる。
【0078】
現像ローラ62の半径が8mmであるので、感光体ドラム32の金属基体32a表面と現像ローラ62のローラ部62b表面との間隔は、150μmとすることができる。
【0079】
このように、本実施形態では、間隔規定部材の成型において、2種の部材間の相対位置の制約がなくなるため、容易にかつ低コストで製造できる。また金属環状部材90bが絶縁環状部材90aに対して自由に動けるため、嵌め合い状態の不具合による間隔規定部材の内径と外径との差に起因する周期的な現像ギャップの変動が起こりにくく、より好適である。
【0080】
図8は、さらに他の実施形態の間隔規定部材100の構成を示す概略図である。本実施形態の間隔規定部材100は、絶縁環状部材100aと金属環状部材100bとが別体であり、金属環状部材90bが螺旋状に形成され、絶縁環状部材90aの外周面には、金属環状部材90bの形状に応じた螺旋状溝が設けられる。
【0081】
別体となっている絶縁環状部材90aと金属環状部材90bとを嵌め合わせる際、金属環状部材90bを、絶縁環状部材90aに対して螺嵌させて組み付けることができる。金属環状部材90bが螺旋状に形成されているため、捩じることによりその内径を広げることが可能であり、絶縁環状部材90aに対して容易に嵌め込むことができる。
【0082】
本実施形態では、金属環状部材90bの内径と、絶縁環状部材90aの外周系の寸法精度の緩和が可能となり、さらに容易に低コスト化できる。
【符号の説明】
【0083】
32 感光体ドラム
32a 金属基体
32b 感光層
61 現像槽
62 現像ローラ
62a 回転軸部
62b ローラ部
63 第2撹拌搬送部材
64 第3撹拌搬送部材
65 第1撹拌搬送部材
66 トナー供給ローラ
80,90,100 間隔規定部材
80a,90a,100a 絶縁環状部材
80b,90b,100b 金属環状部材
X 現像装置
Z 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱または円筒状の基体と、前記金属基体の表面に設けられた感光性材料からなる感光層とを有する像担持体が担持する静電潜像を、現像剤を用いて現像する現像装置であって、
現像剤を収容する現像槽と、
回転軸部と、前記回転軸部の回転軸線に中心軸線が一致するように設けられる、円柱または円筒状のローラ部とを有する現像剤担持体であって、前記現像槽内に回転自在に設けられ、前記回転軸線が前記像担持体の軸線と平行になるように、前記像担持体を臨んで配置され、前記現像槽に収容される現像剤を担持して前記像担持体に搬送する現像剤担持体と、
絶縁材料からなる、前記回転軸部の外周を取り巻いて環状に設けられる内側環状部材と、前記基体と同じ材料からなる、前記絶縁環状部材の外周に沿って環状に設けられる外側環状部材とを有する間隔規定部材であって、前記外側環状部材と、前記基体とが線接触の状態で当接するように設けられることで、前記感光層の表面と前記ローラ部の表面との間隔を規定する間隔規定部材と、を備えることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記外側環状部材は金属材料からなり、前記基体が金属材料からなることを特徴とする請求項1記載の現像装置。
【請求項3】
前記内側環状部材と前記外側環状部材とは、着脱可能に構成されることを特徴とする請求項1または2記載の現像装置。
【請求項4】
前記内側環状部材と前記外側環状部材とは、装着時において、相対的に位置の変化が可能に構成されていることを特徴とする請求項3記載の現像装置。
【請求項5】
前記外側環状部材が、螺旋状に形成されていることを特徴とする請求項3または4記載の現像装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の現像装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−32459(P2012−32459A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169857(P2010−169857)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】