説明

現像装置および画像形成装置

【課題】劣化したトナーを現像剤から分離して除去することができる現像装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】像保持体の表面に沿って延び、現像剤を表面に保持し、現像剤をその延びた方向に交わる方向へと搬送することで潜像を現像する現像剤保持体と、現像剤保持体に隣接して延び、内部に現像剤を収容して、現像剤を攪拌しつつ現像剤保持体に沿った第1方向に搬送することで現像剤を現像剤保持体に供給する第1収容室と、第1収容室に隣接し第1収容室に並んで延び、内部に前記現像剤を収容し、両端に、第1収容室との間で現像剤が移動する移動口が設けられ、トナーが供給されて現像剤とトナーを攪拌して混合しつつ第1方向とは逆の第2方向に搬送する、搬送経路の途中に底が浅い浅底箇所が設けられている第2収容室と、浅底箇所を通過する現像剤に向けて送風する送風器と、第2収容室内に浮遊しているトナーを吸引する吸引器とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、帯電されたトナーを含んだ現像剤で静電的な潜像を現像することでトナー像を形成する画像形成装置や、その画像形成装置に用いられる現像装置が知られている。
【0003】
この現像装置は、内部に現像剤を収容し、その現像剤を潜像の近くに搬送することで潜像を現像する装置である。
【0004】
そのような現像装置として、現像剤分離手段を備えた装置が提案されている。この現像剤分離手段は、現像剤供給部材と対応する位置若しくは現像剤を搬送する位置に設けられていて、移動する現像剤を磁力により担持しながら移動する現像剤に対して気流を用いて該現像剤の一部を他の部分と分離する(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−202317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、劣化したトナーを現像剤から分離して除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る現像装置は、
表面に静電的な潜像が形成され、帯電されたトナーでその潜像が現像され、その現像された像を保持する像保持体の表面に沿って延び、上記トナーを含む現像剤を表面に保持し、その現像剤をその延びた方向に交わる方向へと搬送することで上記潜像を現像する現像剤保持体と、
上記現像剤保持体に隣接して延び、内部に上記現像剤を収容してその現像剤を攪拌しつつ現像剤保持体に沿った第1方向に搬送することで現像剤を現像剤保持体に供給する第1収容室と、
上記第1収容室に隣接しその第1収容室に並んで延び、内部に上記現像剤を収容し、両端に、その第1収容室との間で現像剤が移動する移動口が設けられ、トナーが供給されて現像剤とトナーを攪拌して混合しつつ上記第1方向とは逆の第2方向に搬送する、搬送経路の途中に底が浅い浅底箇所が設けられている第2収容室と、
上記浅底箇所を通過する現像剤に向けて送風する送風器と、
上記第2収容室内に浮遊しているトナーを吸引する吸引器と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る現像装置は、請求項1に係る現像装置に更に、
上記現像剤保持体によって搬送される現像剤に接触する位置に、その現像剤との摩擦によって上記トナーとは逆極性に帯電される帯電物を保持することで、その保持した帯電物にトナーを吸着させる帯電物保持体と、
上記帯電物に吸着されたトナーを、帯電物ごとあるいは帯電物とは分けて回収する回収器とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る現像装置は、請求項1に係る現像装置に更に、
上記現像剤保持体の表面に対面し、その現像剤保持体によって搬送される現像剤のうち現像剤保持体の表面から離れた部分に当たって止めることで、現像剤保持体によって搬送される現像剤の層厚を規制する層厚規制部材と、
上記層厚規制部材によって止められた現像剤に対して、その層厚規制部材側から空気を吹き付ける吹き付け器とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る画像形成装置は、
表面に像が形成され、その形成された像を保持する像保持体と、
上記像保持体の表面に静電的な潜像を形成する潜像形成部と、
帯電されたトナーを含む現像剤を内部に収容し、上記像保持体の表面に形成された上記潜像をそのトナーで現像することによりトナー像を形成する現像装置とを備え、
上記現像装置が、
上記像保持体の表面に沿って延び、上記現像剤を表面に保持し、その現像剤をその延びた方向に交わる方向へと搬送することで上記潜像を現像する現像剤保持体と、
上記現像剤保持体に隣接して延び、内部に上記現像剤を収容してその現像剤を攪拌しつつ現像剤保持体に沿った第1方向に搬送することで現像剤を現像剤保持体に供給する第1収容室と、
上記第1収容室に隣接しその第1収容室に並んで延び、内部に上記現像剤を収容し、両端に、その第1収容室との間で現像剤が移動する移動口が設けられ、トナーが供給されて現像剤とトナーを攪拌して混合しつつ上記第1方向とは逆の第2方向に搬送する、搬送経路の途中に底が浅い浅底箇所が設けられている第2収容室と、
上記浅底箇所を通過する現像剤に向けて送風する送風器と、
上記第2収容室内に浮遊しているトナーを吸引する吸引器と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る現像装置および請求項4に係る画像形成装置によれば、劣化したトナーを現像剤から分離して除去することができる。
【0012】
請求項2に係る現像装置によれば、上記現像剤保持体および上記回収器を有さない場合に較べ、劣化したトナーの除去の効率が向上する。
【0013】
請求項3に係る現像装置によれば、上記吹き付け器を有さない場合に較べ、トナーの劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】画像形成装置の具体的な第1実施形態に相当するプリンタの概略構成図である。
【図2】図1に示す現像器をレーザ露光器側から透視した透視図である。
【図3】第2収容室の浅底箇所付近を、現像ロールとは反対側から透視した透視図である。
【図4】現像器の模式的な断面図である。
【図5】第2の劣化トナー回収器によって劣化トナーが回収される様子を模式的に示す図である。
【図6】トナーとキャリアとの静電的な状況を示す図である。
【図7】トナーとキャリアとが静電的に引きつけ合う強さを示した図である。
【図8】第2実施形態における層厚規制部材の近辺を示す図である。
【図9】エア供給器の構造を示す側面図である。
【図10】エア供給器の構造を示す上面図である。
【図11】第3実施形態における空気の噴出形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の現像装置および画像形成装置に対する具体的な実施形態を、以下図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、画像形成装置の具体的な第1実施形態に相当するプリンタの概略構成図である。
【0017】
図1に示すプリンタ1は、矢印A方向に回転する感光体10と、この感光体10の表面に電荷を付与する帯電器11と、外部から送信されてきた画像データに基づいたレーザ光を生成するレーザ露光器12とを備えている。これら帯電器11とレーザ露光器12によって感光体10上に静電的な潜像が形成される。感光体10が本発明にいう像保持体の一例に相当し、帯電器11とレーザ露光器12との組合せが本発明にいう潜像形成部の一例に相当する。
【0018】
図1に示すプリンタ1は更に、トナーを含む現像剤を内部に収容し、感光体10上の潜像をその現像剤中のトナーで現像することでトナー像を形成する現像器13と、現像器13にトナーを補給する補給器2とを備えている。この現像器13は、本発明の現像装置の第1実施形態に相当する。現像器13は、現像剤を表面に保持し、感光体10に対向して回転することで現像剤を感光体10との間に搬送する現像ロール133を有している。この現像ロール133は、感光体10の表面に沿って延びていて、現像剤を、その延びた方向に交わる方向へと搬送する。この現像器13に収容されている現像剤には、トナーの他に、このトナーとの摩擦によりトナーを摩擦帯電させる電荷付与粒子であり磁性粒子でもある磁性キャリアも含まれている。さらに現像剤には、トナーの帯電性を制御する帯電制御剤等というような外添剤も含まれている。
【0019】
更に、プリンタ1は、記録用紙を収容した用紙カセット16と、用紙カセット16から記録用紙を引き出して矢印B方向に搬送する用紙搬送装置17と、搬送されてきた記録用紙上に感光体10上のトナー像を転写する転写ロール14と、記録用紙上のトナー像を加熱および加圧することでその記録用紙上にそのトナー像を定着させる定着器15とを備えている。
【0020】
更にまた、プリンタ1は、プリンタ1内の各部の動作を制御する中央制御部100と、感光体ロール10の表面から不要なトナーなどを除去するクリーニング装置50とを備えている。クリーニング装置50は、感光体ロール10表面の、トナー像の転写を終えた部分に対向した位置、即ち、矢印Aの向きの回転おける転写ロール14よりも下流側、かつ帯電器11よりも上流側の位置に配備されており、クリーニングブレード51と付着物収容箱52を有している。クリーニングブレード51は、感光体10の回転中心に沿った全幅にわたって先端が感光体10表面に接触していて、トナーや紙粉などといった付着物を掻き取て感光体10表面から除去するものであり、付着物収容箱52は、除去された付着物を収容するものである。
【0021】
ここで、このプリンタ1における画像形成の動作の流れを簡単に説明する。
【0022】
図1に示すプリンタ1では、感光体10の表面に帯電器11により電荷が付与され、電荷が付与された感光体10の表面に、外部から送信されてきた画像データに基づいたレーザ光がレーザ露光器12により照射される。この照射により、感光体10の表面に付与された電荷の一部が除電されて、感光体10の表面に静電的な潜像が形成される。
【0023】
現像器13に収容されている現像剤は現像ロール133によって、現像器13と感光体10との間の領域に運ばれ、運ばれた現像剤中のトナーが感光体10の表面の潜像に静電的に付着することでこの潜像は現像される。この現像により得られたトナー像が、矢印B方向に搬送されてきた記録用紙上に転写ロール14によって転写される。そして、記録用紙上のトナー像が定着器15により加熱および加圧されることによって溶融されて記録用紙上に定着される。
【0024】
このような動作によってプリンタ1は記録用紙上に画像を形成する。尚、このプリンタ1は、モノクロ画像専用機であるが、本発明は、カラー画像機に適用されてもよい。
【0025】
以下、現像器13の詳細構造について説明する。
【0026】
図2は、図1に示す現像器をレーザ露光器側から透視した透視図である。
【0027】
現像器13は、上述した現像ロール133と、現像剤を収容する現像剤収容槽132と、現像剤収容槽132の内部で現像剤を撹拌しながら搬送する撹拌搬送部材131とを備えている。
【0028】
現像剤収容槽132は、現像ロール133に並んで延びた壁1321によって、内部が、現像ロール133に隣り合った第1収容室132aと、この第1収容室132aに隣り合った第2収容室132bとに分けられている。これら第1収容室132aおよび第2収容室132bが、本発明にいう第1収容室および第2収容室の各一例に相当する。
【0029】
これら第1収容室132aおよび第2収容室132bそれぞれには、撹拌搬送部材131が1つずつ配備されており、これら撹拌搬送部材131は、具体的には、螺旋状のフィンが棒の周囲に備えられた構造を有している。この棒に、図示しないモータによって回転駆動力が加えられることで撹拌搬送部材131は棒を中心として回転する。このように撹拌搬送部材131が回転することで、現像剤は、撹拌搬送部材131の上記棒に沿って搬送されると共に攪拌されることとなる。また、第1収容室132aおよび第2収容室132bそれぞれに配備された撹拌搬送部材131が互いに逆向きに現像剤を搬送することで、現像剤収容槽132に収容されている現像剤は壁1321の周囲を反時計回りに循環する。また、撹拌搬送部材131によってトナーと磁性キャリアとが撹拌されることで、現像剤収容槽132の内部でトナーがマイナス帯電し、磁性キャリアはプラス帯電する。このため、マイナス帯電したトナーは磁性キャリアに静電的に付着する。これにより、現像剤収容槽132の内部では、トナーと磁性キャリアが渾然一体となっている。
【0030】
現像剤収容槽132の第2収容室132b内のトナー補給箇所134には、上述した補給器2によってトナーが補給される。また、第2収容室132b内には、現像剤の搬送においてトナー補給箇所134よりも下流側に、他の箇所よりも底が浅くなっている浅底箇所135が設けられている。現像剤は、この浅底箇所135を乗り越えながら搬送されていく。
【0031】
補給器2によるトナーの補給量は、現像によって消費されたトナーを補う量になるように、上述した中央制御部100によって制御されている。具体的には、図示を省略した濃度センサによって現像剤収容槽132内のトナー濃度が検知されていて、このトナー濃度が目標濃度に一致するように補給量が制御されている。このようにトナーの補給が制御されているプリンタ1では、画像密度の低い画像形成が長く続くと、新たなトナーの補給があまり行われない状況も続く。その結果、既存のトナーと磁性キャリアとの度重なる攪拌により、トナー表面の外添剤がトナー表面に対して埋没あるいは離脱することとなり、現像器内部のトナーの帯電性能の劣化が早まる。帯電性能が劣化したトナーは、磁性キャリアと摩擦されても帯電量の上昇は鈍い。また、このようにトナーが劣化状態が続くと、本来であれば狭いトナーの帯電量分布が広くなってしまい、帯電量が上昇しすぎた過帯電トナーが生じる。
【0032】
このような広い帯電量分布が生じた後で、例えば高画像密度の画像形成が行われると、それまでよりも多量のトナーを必要とするため多量の新たなトナーが供給されることとなる。このように供給される新たなトナーは、帯電性能が劣化トナーよりも高く、未だ帯電されていないトナーである。このため、現像剤収容槽132に収容されている劣化したトナーのうちの過帯電側のトナーが有する電荷は、新たに供給されてきたトナーに急速に奪い取られる。そして、現像剤収容槽132内の現像剤は、新たに供給されてきたトナーに電荷を奪われた上に、劣化のために磁性キャリアとの摩擦によっても帯電量の上昇が鈍い低帯電トナーと、電荷を奪われたことで逆極化した逆極トナーと、帯電が充分な新たなトナーとが混在した状態となる。
【0033】
このようなトナーが混在した現像剤が現像ロール133上に保持されて現像に用いられると、帯電量が不足している低帯電トナーは、磁性キャリアから離れても潜像に付着せず脱離(クラウド)が発生する。また、逆極性に転じた逆極トナーは、感光体10の表面に形成された潜像以外の部分である背景領域に付着してカブリが発生する。
【0034】
本実施形態の現像器13は、このようなクラウドやカブリの発生を防ぐために、劣化したトナーを回収する2種類の回収器を備えている。
【0035】
以下、これらの回収器について説明する。
【0036】
図3は、第2収容室132bの浅底箇所135付近を、現像ロール133とは反対側から透視した透視図である。
【0037】
上述したように、第2収容室132b内の現像剤20は、撹拌搬送部材131によって搬送され、浅底箇所135を乗り越えて搬送されていく。
【0038】
第2収容室132bの浅底箇所135の上方には、第1の劣化トナー回収器136が設けられている。第1の劣化トナー回収器136には、ファン136aと送風口136bが備えられており、ファン136aによって生じた風が送風口136bから吹き出す。そして、その風は、浅底箇所135を通過する現像剤20に吹き付けられる。
【0039】
現像剤20中のトナーのうち劣化したトナーは、現像剤20から遊離しやすくなっている。低帯電トナーは、帯電量が不足しているために磁性キャリアとの静電的な結びつきが弱く、逆極トナーは、逆極化しているために磁性キャリアとは静電的に反発するからである。そして、浅底箇所135を乗り越えることでほぐされた現像剤20に送風口136bからの風が吹き付けることにより、劣化トナー21は現像剤20から遊離して第2収容室132b内を浮遊する。
【0040】
第1の劣化トナー回収器136に備えられたファン136aは、吸引口136cへと向かう空気流も生み、第2収容室132b内を浮遊している劣化トナー21は、この空気流によって吸引口136cから第1の劣化トナー回収器136内へと吸い込まれる。吸引口136cから吸い込まれた劣化トナー21は、フィルタ136dによって濾されてトナー回収室136eに溜まる。このトナー回収室136eに溜まった劣化トナー21は、図1に示すプリンタ1が停止している時にユーザなどによって廃棄される。
【0041】
このように、第1の劣化トナー回収器136は、現像剤20中から劣化トナー21を選択的に分離して回収する。第1の劣化トナー回収器136は、本発明にいう送風器と吸引器とを兼ねた一例に相当する。
【0042】
この第1の劣化トナー回収器136は、単独の機能としては、低帯電トナーも逆極トナーも回収する。但し、送風口136bからの送風量が多すぎると、現像器から外部への浮遊トナーの噴き出しが発生してしまう。このため、低帯電トナーと逆極トナーの双方が第1の劣化トナー回収器136で回収される場合には、送風量は、この噴き出しを回避する程度に抑制される。
【0043】
これに対し本実施形態では、上述したように劣化トナーを回収する2種類の回収器を備えており、後述する第2の劣化トナー回収器の機能との相乗効果により、この第1の劣化トナー回収器136では主に逆極トナーが回収されることとなる。
【0044】
第2の劣化トナー回収器は、現像ロール133の付近に設けられている。
【0045】
図4は、現像器の模式的な断面図である。
【0046】
この断面図には、現像器を、現像ロール133の回転軸に垂直に切った断面が模式的に示されている。
【0047】
図4に示されている現像ロール133は、矢印C方向に回転する円筒部材1331と、この円筒部材1331の内部に、この円筒部材1331とは独立に固定された永久磁石ロール1332とを有している。この永久磁石ロール1332は、円筒部材1331の周回方向に複数の磁極が配列されたものであり、現像剤の吸着および解放を規定する磁力分布を有している。現像ロール133は、現像剤収容槽132から一部が露出した状態に保持されており、円筒部材1331は回転に伴って、現像剤収容槽132の内部と外部とを交互に通過する。また、円筒部材1331には、永久磁石ロール1332の磁力分布により、現像剤収容槽132内を通過中に表面に現像剤が供給され、この供給された現像剤を、現像ロール133と上記感光体との対面箇所へと搬送する。
【0048】
円筒部材1331が回転に伴って現像剤収容槽132内部から外部へと移動する境界部分には、円筒部材1331の外周面に対して隙間を空けて対向し、図4に垂直な方向に延びた丸棒状の層規制部材137bが設けられている。この層規制部材137bは、円筒部材1331によって現像剤収容槽132の外部へと搬送されていく現像剤のうち、円筒部材1331の外周面から離れた部分に当たってその部分を止めることで、円筒部材1331によって外部へと搬送されていく現像剤の層厚を規制する。本実施形態では、この層規制部材137bが、第2の劣化トナー回収器137に組み込まれている。
【0049】
第2の劣化トナー回収器137は、層規制部材137bと同様に図4に垂直な方向に延びた形状を有している。この第2の劣化トナー回収器137には層規制部材137bの他に、キャリア供給部材137aとキャリア回収部材137cとキャリア供給室137dとキャリア回収室137eが備えられている。
【0050】
図5は、第2の劣化トナー回収器によって劣化トナーが回収される様子を模式的に示す図である。
【0051】
図5に示すように、現像剤20中では、劣化トナー21とキャリア22と正常トナー23が混ざり合っている。また、キャリア供給室137dには、現像剤20中のキャリア22と同じキャリア24が収容されている。但し、このキャリア供給室137d内のキャリア24は未帯電である。キャリア供給部材137aは、回転することでキャリア供給室137d内のキャリア24を層規制部材137bの方へと押し出す。この層規制部材137bは、丸棒状の磁石になっていて、キャリア供給部材137aによって押し出されてきたキャリア24を磁力で表面に保持する。また、層規制部材137bは回転することで表面のキャリア24を、現像剤20と接触する位置へと搬送する。現像剤20と接触する位置で層規制部材137bに保持されたキャリア24は、現像剤20中のトナーとの摩擦によって、トナーの帯電極性とは逆極性に帯電する。層規制部材137bに保持されたキャリア24が、本発明にいう帯電物の一例に相当し、層規制部材137bは、本発明にいう帯電物保持体の一例に相当する。なお、図5では、層規制部材137bと現像ロール133との距離が極めて大きく描かれているため、層規制部材137bに保持されたキャリア24は現像剤20から距離を空けているように見えるが、実際にはもっと近く、現像剤20の量も、層規制部材137bで余分な部分が掻き取られる程度まで充分に多く収容されている。
【0052】
層規制部材137bに保持されて帯電したキャリア24は、後述する静電的な状況の下で、現像剤20中の劣化トナー21(但し低帯電トナー)を選択的に吸着する。そのように劣化トナー21を吸着したキャリア24は、層規制部材137bの回転に伴ってキャリア回収室137eへと搬送され、キャリア回収部材137cによって回収される。キャリア回収部材137cはブレード状の部材であり、層規制部材137bに沿って延びて層規制部材137bの表面に接触している。そしてキャリア回収部材137cは、層規制部材137bの回転に伴って層規制部材137bの表面からキャリア24を掻き取る。この層規制部材137b、キャリア回収室137e、およびキャリア回収部材137cを合わせたものが、本発明にいう回収器の一例に相当する。
【0053】
ここで、劣化トナー21が吸着される状況について詳細に説明する。
【0054】
図6は、トナーとキャリアとの静電的な状況を示す図であり、図7は、トナーとキャリアとが静電的に引きつけ合う強さを示す図である。但し、これらの図に示された劣化トナー21は低帯電トナーのことである。
【0055】
図6に示すように、現像剤20中のキャリア22は、帯電性が正常な正常トナー23と静電的に強く結びついている。図7では、この正常トナー23と現像剤20中のキャリア22とが静電的に引きつけ合う力が長い矢印q3で示されている。一方、劣化トナー21(低帯電トナー)は、現像剤20中のキャリア22と静電的に引きつけあう強さが正常トナー23よりも弱く、図7では短い矢印q1で示されている。この結果、劣化トナー21(低帯電トナー)は正常トナー23に較べて現像剤20から離れやすい状態となっていて、現像剤20中でも、正常トナー23に較べてキャリア22から遠目に位置していると考えられる。
【0056】
ここで、層規制部材137bに保持されたキャリア24は、キャリア24だけがむき出しの状態で存在するため、そのキャリア24と劣化トナー21(低帯電トナー)とが互いに引きつける静電的な力は、図7の矢印q2で示されているように、現像剤20中のキャリア22が引きつける力よりも強い。
【0057】
現像剤20中の劣化トナー21(低帯電トナー)は、このような力の差と、現像剤20中でキャリア22から遠目に位置していることとによって、現像剤20中から正常トナー23とは区別されて分離され、層規制部材137bに保持されたキャリア24に吸着される。
【0058】
このように、第2の劣化トナー回収器137は劣化トナー21を現像剤20から除去するが、劣化トナー21のうちでも低帯電トナーを除去することになる。この結果、第1収容室132aから第2収容室132bへと搬送されてくる現像剤20中では、逆極トナーの割合が増えている。この逆極トナーは、低帯電トナーよりもさらに、現像剤20から遊離しやすい。このため、逆極トナーの割合が増えた現像剤20が第2収容室132bの浅底箇所135に達すると、第1の劣化トナー回収器136によって主に逆極トナーが効率よく回収されることとなる。逆極トナーの割合が増えると、送風や浅底箇所135の乗り越えによる劣化トナーの遊離効率は、逆極トナーの割合増加以上に一層促進され、上述した噴き出しを回避する送風量の下でも劣化トナーが効率よく回収されるからである。
【0059】
このように第1の劣化トナー回収器136と第2の劣化トナー回収器137が組み合わされた場合は、2つの回収器でいわば役割分担が行われることになり、結果として、劣化トナーの回収効率や回収量は、第1の劣化トナー回収器136や第2の劣化トナー回収器137が単独で用いられる場合の単純合計よりも高い。
【0060】
以上で第1実施形態の説明を終了し、以下、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、図1に示すプリンタ1に、第1実施形態の現像器13に替えて第2実施形態の現像器が備えられている。また、この第2実施形態の現像器は、上述した第2の劣化トナー回収器に替えて、トナー劣化を抑制するための機構が層厚規制部材の近辺に設けられている点を除いて第1実施形態の現像器13と同様の現像器である。以下では、第1実施形態との相違点に着目した説明を行う。
【0061】
図8は、第2実施形態における層厚規制部材の近辺を示す図である。
【0062】
この第2実施形態では、板状で中空の層規制部材138が備えられている。この層規制部材138は、現像ロール133の回転軸に沿って延びて現像ロール133の表面に対面している。そして、現像ロール133によって第1実施形態と同様に搬送される現像剤20のうち、現像ロール133の表面から離れた部分に層規制部材138が当たってその部分を止めることで、現像ロール133によって搬送される現像剤20の層厚が規制される。この層規制部材138が、本発明にいう層規制部材の一例に相当する。層規制部材138によって止められた現像剤は、層規制部材138の裏側に滞留して滞留現像剤25となる。このように滞留した現像剤をそのまま放置するとトナー劣化が進んでしまうので、この第2実施形態では、中空の層規制部材138内に空気を送り込み、その空気を層規制部材138から滞留現像剤25に吹き付けさせる。滞留現像剤25は空気によって突き崩されることになり、その結果、滞留現像剤25が放置される場合よりもトナー劣化が抑制される。このようにトナー劣化が抑制されると、上述した劣化トナーの完全な防止はできないものの、特に、逆極性トナーの抑制に寄与する。
【0063】
ここで、層規制部材138内に空気を送り込むエア供給器について説明する。
【0064】
図9は、エア供給器の構造を示す側面図であり、図10は、エア供給器の構造を示す上面図である。
【0065】
第2実施形態では、層規制部材138に隣り合ってエア供給器139が設けられていて、これらの層規制部材138とエア供給器139によって第1収容室132aの天井部分が構成されている。一方、第2収容室132bには、第1実施形態と同様に第1の劣化トナー回収器136が備えられている。
【0066】
エア供給器139にはファン139aが設けられており、このファン139aによって空気が中空の層規制部材138内に送り込まれる。図10に示すように、層規制部材138は現像ロールに沿って図10の左右方向に延びており、エア供給器139も図10の左右方向に延びている。このため、エア供給器139のファン139aは複数(ここでは3つ)設けられている。これらのファン139aによって、現像ロールに沿って延びた層規制部材138全体に空気が送り込まれる。また、層規制部材138の裏側(即ち図9で右側)には、層規制部材138に沿ったスリット状の送気口が空いていて、この送気口から空気が噴き出す。この第2実施形態では、層規制部材138とエア供給器139とを合わせたものが、本発明にいう吹き付け器の一例に相当する。
【0067】
ファン139aは、第1収容室132a内の空気を吸い込んで再び層規制部材138内に送り込む。このようにファン139aが空気を吸い込むとき、第1収容室132a内に浮遊しているトナーも空気と共にエア供給器139に吸い込まれることになるが、ここではトナーの回収を目的にしていないため、トナーを含んだ空気がそのまま層規制部材138内に送り込まれることになる。空気中のトナーがファン139aに当たると一部はファン139aに付いてから剥がれて落下するので、この落下するトナーは受け皿139bで受けられる。受け皿139bで受けられたトナーは、プリンタ1が停止している時にユーザなどによって廃棄される。
【0068】
このような第2実施形態では、層規制部材138からの空気の吹き付けによって、上述したように、劣化トナー中の逆極トナーの発生が抑制されている。このため、第2収容室132bに備えられている第1の劣化トナー回収器136で回収される劣化トナーは主に低帯電トナーである。逆極トナーが少ないので、送風量を充分に多くしても上述した噴き出しは発生し難い。このため、この第2実施形態でも、第1の劣化トナー回収器136では、第1の劣化トナー回収器136が単独で備えられる場合よりも効率よく劣化トナーが回収されることになる。
【0069】
以上で第2実施形態の説明を終了し、以下、第3実施形態について説明する。
【0070】
この第3実施形態は、層規制部材の裏側における空気の噴出形態が異なる点を除いて、第2実施形態と同様の形態である。以下では、第2実施形態との相違点に着目した説明を行う。
【0071】
図11は、第3実施形態における空気の噴出形態を示す図である。
【0072】
第3実施形態では、内部が詰まった層規制部材140が備えられている。この層規制部材140は、第2実施形態の層規制部材138と同様に、図11の奥行き方向に延びた形状を有している。そして、層規制部材140の裏側に沿って通風路141が設けられている。この通風路141も図11の奥行き方向に延びていて、この通風路141には、第2実施形態と同様のエア供給器から空気が送り込まれる。そして、通風路141の先から空気が噴き出し、層規制部材140の裏側に滞留した滞留現像剤25に向けて空気が吹き付けられる。これにより、第2実施形態と同様に、トナー劣化が抑制されることとなる。この通風路141とエア供給器を合わせたものが本発明にいう吹き付け器の一例に相当する。
【0073】
なお、上述した各実施形態では、劣化トナーの回収タイミングや空気噴出のタイミングについては特に限定しないが、トナー劣化に合わせたタイミングで回収や空気噴出を行うという形態もあり得る。このようなタイミングを認識するため、即ちトナー劣化の程度を認識するためには、以下に述べるような種々の方式が考えられる。
【0074】
第1の方式は、撹拌搬送部材131を駆動する駆動力を検知する方式である。トナーが劣化すると現像剤が詰まってくるので、現像剤を搬送する撹拌搬送部材131に負荷が掛かる。このため、駆動力の検知によりトナーの劣化が認識されることになる。そして、回収手段による劣化トナーの回収は、トナーの劣化が認識された後で高画像密度の画像形成が始まると実施され、エア噴出は、トナーの劣化し始めが認識されると実施される。以下の方式でも同様である。
【0075】
第2の方式は、層規制部材に圧力センサを取り付けて、層規制部材に掛かる現像剤の圧力を検知する方式である。トナーが劣化すると現像剤が詰まってくるので、層規制部材に掛かる圧力が増加する。このため、圧力の検知によりトナーの劣化が認識されることになる。
【0076】
第3の方式は、プリンタで形成される画像の密度を検知する方式である。具体的には、センサで画像の密度を直接に検出する方式と、プリンタに外部から送信されてきた画像データに基づいて画像の密度を検知する方式がある。上述したように、密度の低い画像を繰り返し形成するとトナーの劣化が進むので、画像密度の検知によりトナーの劣化が認識されることになる。
【0077】
第4の方式は、現像器におけるトナー消費量を算出する方式である。現像器におけるトナー消費量は、上述した濃度センサの検知結果から容易に算出される。トナー消費量が少ない状態が続くとトナーの劣化が進むので、トナー消費量の算出によりトナーの劣化が認識されることになる。
【符号の説明】
【0078】
1 プリンタ
10 感光体
11 帯電器
12 レーザ露光器
13 現像器
14 転写ロール
15 定着器
16 用紙カセット
17 用紙搬送装置
20 現像剤
21 劣化トナー
22 キャリア
23 正常トナー
24 回収用キャリア
50 クリーニング装置
131 撹拌搬送部材
132 現像剤収容槽
133 現像ロール
1331 円筒部材
1332 永久磁石ロール
136 第1の劣化トナー回収器
136a ファン
136b 送風口
136c 吸引口
136d フィルタ
136e トナー回収室
137 第2の劣化トナー回収器
137a キャリア供給部材
137b 層規制部材
137c キャリア回収部材
137d キャリア供給室
137e キャリア回収室
138,140 層規制部材
139 エア供給器
141 通風路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に静電的な潜像が形成され、帯電されたトナーで該潜像が現像され、その現像された像を保持する像保持体の表面に沿って延び、前記トナーを含む現像剤を表面に保持し、該現像剤をその延びた方向に交わる方向へと搬送することで前記潜像を現像する現像剤保持体と、
前記現像剤保持体に隣接して延び、内部に前記現像剤を収容して該現像剤を攪拌しつつ該現像剤保持体に沿った第1方向に搬送することで該現像剤を該現像剤保持体に供給する第1収容室と、
前記第1収容室に隣接し該第1収容室に並んで延び、内部に前記現像剤を収容し、両端に、該第1収容室との間で現像剤が移動する移動口が設けられ、トナーが供給されて該現像剤と該トナーを攪拌して混合しつつ前記第1方向とは逆の第2方向に搬送する、搬送経路の途中に底が浅い浅底箇所が設けられている第2収容室と、
前記浅底箇所を通過する現像剤に向けて送風する送風器と、
前記第2収容室内に浮遊しているトナーを吸引する吸引器と、
を備えたことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記現像剤保持体によって搬送される現像剤に接触する位置に、該現像剤との摩擦によって前記トナーとは逆極性に帯電される帯電物を保持することで、その保持した帯電物に該トナーを吸着させる帯電物保持体と、
前記帯電物に吸着されたトナーを、該帯電物ごとあるいは該帯電物とは分けて回収する回収器とを備えたことを特徴とする請求項1記載の現像装置。
【請求項3】
前記現像剤保持体の表面に対面し、該現像剤保持体によって搬送される現像剤のうち該現像剤保持体の表面から離れた部分に当たって止めることで、該現像剤保持体によって搬送される現像剤の層厚を規制する層厚規制部材と、
前記層厚規制部材によって止められた現像剤に対して、該層厚規制部材側から空気を吹き付ける吹き付け器とを備えたことを特徴とする請求項1記載の現像装置。
【請求項4】
表面に像が形成され、その形成された像を保持する像保持体と、
前記像保持体の表面に静電的な潜像を形成する潜像形成部と、
帯電されたトナーを含む現像剤を内部に収容し、前記像保持体の表面に形成された前記潜像を該トナーで現像することによりトナー像を形成する現像装置とを備え、
前記現像装置が、
前記像保持体の表面に沿って延び、前記現像剤を表面に保持し、該現像剤をその延びた方向に交わる方向へと搬送することで前記潜像を現像する現像剤保持体と、
前記現像剤保持体に隣接して延び、内部に前記現像剤を収容して該現像剤を攪拌しつつ該現像剤保持体に沿った第1方向に搬送することで該現像剤を該現像剤保持体に供給する第1収容室と、
前記第1収容室に隣接し該第1収容室に並んで延び、内部に前記現像剤を収容し、両端に、該第1収容室との間で現像剤が移動する移動口が設けられ、トナーが供給されて該現像剤と該トナーを攪拌して混合しつつ前記第1方向とは逆の第2方向に搬送する、搬送経路の途中に底が浅い浅底箇所が設けられている第2収容室と、
前記浅底箇所を通過する現像剤に向けて送風する送風器と、
前記第2収容室内に浮遊しているトナーを吸引する吸引器と、
を備えたものであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−133144(P2012−133144A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285378(P2010−285378)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】