説明

現像装置および画像形成装置

【課題】現像後の現像剤が攪拌搬送手段で攪拌搬送されないまま汲み上げ極によって汲み上げられるのを抑制する。
【解決手段】現像剤Gを汲み上げる汲み上げ極S1を備え、汲み上げ極S1によって汲み上げた現像剤Gを表面に保持しつつ回転し、静電潜像が形成された像保持体18に現像剤Gを供給して静電潜像を現像する現像ロール70と、現像ロール70から剥離落下される現像後の現像剤Gを受ける位置に配置され、回転軸72Aを中心として回転し、現像剤Gを攪拌すると共に、攪拌された現像剤Gを汲み上げ極S1によって汲み上げられる位置Hまで搬送する第1攪拌搬送オーガ72と、を有し、汲み上げ極S1は、現像ロール70の回転軸71方向から見た場合、現像ロール70の回転軸71と第1攪拌搬送オーガ72の回転軸72Aを結ぶ線L1よりも現像ロール70の回転方向(矢印C方向)において下流側にオフセットされて配置されるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、図2に示されるように、像保持体(1)に対向する現像剤保持体(41)と、現像剤保持体(41)に現像剤を供給する現像剤供給部(401)と、現像剤供給部(401)に現像剤を攪拌して供給する現像剤攪拌部(402)と、現像剤保持体(41)上の現像処理済みの現像剤を剥ぎ取る剥ぎ取り手段と、剥ぎ取り手段により剥ぎ取られた現像剤を回収して現像剤供給部(401)の非画像形成領域の下流部に搬送する現像剤回収部(403)と、現像剤攪拌部(402)の現像剤搬送方向上流近傍に補給トナーを送り込む第1のトナー補給手段(51)と、現像剤回収部(403)の現像剤搬送方向上流側に補給トナーを送り込む第2のトナー補給手段(52)とを有する現像装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、図2に示されるように、現像ローラ(52)の現像剤汲み上げ部(61)の近傍に配設された現像剤搬送部材54と、現像ローラ(52)の現像剤汲み上げ部(61)の下方に位置する現像剤離し部(62)の近傍に配設された現像剤搬送部材(55)と、これら現像剤搬送部材(54、55)の間に配設された仕切り板(56)とを有する現像装置が開示されている。
【0004】
特許文献3には、図3に示されるように、現像剤を貯留する貯留槽と、像保持体の軸方向と平行に配置された円筒状の現像スリーブと、前記現像スリーブ内に配置された第1磁性部材および第2磁性部材と、から構成される現像剤保持体と、前記現像スリーブの軸方向と平行に前記貯留槽に配置され、前記現像剤保持体へ向かう方向に回転し撹拌および搬送することで、現像剤溜まりを生成する撹拌部材と、を備え、前記第1磁性部材は、前記現像スリーブにおいて前記現像剤溜りと近接する位置に配置され前記現像剤溜りから前記現像スリーブへ現像剤をひきつけ、前記現像スリーブは前記撹拌部材および前記像保持体に近接する位置に配置され予め定められたの回転方向に回転して前記像保持体に現像剤を搬送し、前記第2磁性部材は、前記現像スリーブにおいて前記予め定められたの回転方向における前記第1磁性部材の上流側且つ前記現像スリーブが前記像保持体と対向する位置の下流側となる位置に配置され、前記第1磁性部材と反発磁界を形成し前記現像スリーブから現像剤を離脱させる、現像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−148921号公報
【特許文献2】特開2003−307924号公報
【特許文献3】特開2009−237430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、現像後の現像剤が攪拌搬送手段で攪拌搬送されないまま汲み上げ極によって汲み上げられるのを抑制するようにした現像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1の現像装置は、現像剤を汲み上げるための磁力線を発生する汲み上げ極を備え、前記汲み上げ極によって汲み上げた現像剤を表面に保持しつつ回転し、静電潜像が形成された像保持体に現像剤を供給して前記静電潜像を現像する現像部材と、前記現像部材から剥離落下される現像後の現像剤を受ける位置に配置され、前記現像部材の回転軸に沿って延びる回転軸を中心として回転し、現像剤を攪拌すると共に、攪拌された現像剤を前記汲み上げ極によって汲み上げられる位置まで搬送する攪拌搬送手段と、を有し、前記汲み上げ極は、前記現像部材の回転軸方向から見た場合、前記現像部材の回転軸と前記攪拌搬送手段の回転軸を結ぶ線よりも前記現像部材の回転方向において下流側に配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2の現像装置は、請求項1に記載の現像装置において、磁性材からなり、円柱状を呈し、円柱軸が前記現像部材の回転軸に沿って延び、前記現像部材の回転方向において前記汲み上げ極よりも下流側の位置において前記現像部材と隙間をおいて対向するように配置され、前記現像部材の表面に保持された現像剤に当って現像剤の層厚を規制する層厚規制部材を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3の現像装置は、請求項2に記載の現像装置において、前記現像部材は、前記層厚規制部材に対向する位置に設けられて前記層厚規制部材に向けて磁力線を発生する層厚規制極を備え、前記層厚規制極は、前記現像部材の回転軸方向から見た場合、前記現像部材の回転軸と前記層厚規制部材の円柱軸を結ぶ線よりも前記現像部材の回転方向において下流側にオフセットされて配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4の画像形成装置は、静電潜像が形成される像保持体と、前記像保持体に形成された静電潜像を現像する請求項1〜3のいずれかに記載の現像装置と、前記現像装置によって現像された像を被転写体に転写する転写装置と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に記載の現像装置によれば、汲み上げ極が現像部材の回転軸と攪拌搬送手段の回転軸を結ぶ線よりも現像部材の回転方向において下流側に配置されていない場合に比べて、現像部材から落下した現像後の現像剤が攪拌搬送手段で攪拌搬送されないまま汲み上げ極によって汲み上げられるのを抑制することができる。
【0012】
本発明の請求項2に記載の現像装置によれば、層厚規制部材として板状のものを用いる場合に比べて、汲み上げ極の磁極の設定を弱めることができる。
【0013】
本発明の請求項3に記載の現像装置によれば、層厚規制極が現像部材の回転軸と層厚規制部材の円柱軸を結ぶ線よりも現像部材の回転方向において下流側にオフセットされて配置されていない場合に比べて、層厚規制部材の上流側の現像剤の流動性を活発にすることができる。
【0014】
本発明の請求項4に記載の画像形成装置によれば、請求項1〜3に記載の現像装置を備えないものに比べて、濃度ムラが生じるのが抑制された画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る現像装置を示す構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る現像装置の汲み上げ極の位置と剥離極の位置を様々に変化させた場合の濃度ムラの発生の有無を示すグラフである。
【図4】本発明の実施形態に係る現像装置の汲み上げ極近傍の磁力線と現像剤の流れとを示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係る現像装置に対する比較例としての現像装置の汲み上げ極近傍の磁力線と現像剤の流れとを示す説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係る現像装置に対する比較例としての現像装置の汲み上げ極近傍の磁力線と現像剤の流れとを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る現像装置と画像形成装置の実施形態について、添付の図面に基づいて説明する。
【0017】
(全体構成)
図1に示すように、画像形成装置10の装置本体10Aの内部には、入力される画像データに対して画像処理を行なう画像処理部12が設けられている。
【0018】
この画像処理部12は、入力された画像データをイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色の階調データに処理するようになっており、この処理された階調データを受け取って、レーザ光LBによる画像露光を行う露光装置14が装置本体10A内の中央に設けられている。
【0019】
また、露光装置14の上方には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4つの画像形成ユニット16Y、16M、16C、16Kが、略水平方向に間隔をおいて配置されている。以下、Y,M,C,Kを区別して説明する必要が無い場合は、Y,M,C,Kを省略して記載する。
【0020】
これらの4つの画像形成ユニット16Y、16M、16C、16Kは、すべて同様に構成されており、予め決められた速度で回転駆動される円柱状の像保持体18と、この像保持体18の外周面を帯電する一次帯電用の帯電部材20と、前述した露光装置14の画像露光によって帯電した像保持体18の外周面に形成された静電潜像を、予め決められた色のトナーで現像してトナー像として可視化する現像装置22と、像保持体18の外周面を清掃する清掃ブレード24とを含んで構成されている。また、帯電部材20の下側には、円柱状の帯電部材20と接して帯電部材20の外周面を清掃する清掃部材64が設けられている。
【0021】
また、露光装置14には、4つの画像形成ユニット16Y、16M、16C、16Kに共通に構成された、図示しない4つの半導体レーザが設けられており、これらの半導体レーザからレーザ光LB−Y、LB−M、LB−C、LB−Kが階調データに応じて出射されるようになっている。
【0022】
なお、半導体レーザから出射されたレーザ光LB−Y、LB−M、LB−C、LB−Kは、図示しないf−θレンズを介して回転多面鏡であるポリゴンミラー26に照射され、このポリゴンミラー26によって偏向走査されるようになっている。そして、このポリゴンミラー26によって偏向走査されたレーザ光LB−Y、LB−M、LB−C、LB−Kは、図示しない結像レンズ及び複数枚のミラーを介して、像保持体18上の露光ポイントに、斜め下方から走査露光されるようになっている。
【0023】
また、露光装置14は、その周囲が直方体状のフレーム28によって密閉されている。そして、フレーム28の上部には、4本のレーザ光LB−Y、LB−M、LB−C、LB−Kを、各画像形成ユニット16Y、16M、16C、16Kの像保持体18上に向けて透過させる透明なガラス製のウインドウ30Y、30M、30C、30Kが設けられている。
【0024】
一方、各画像形成ユニット16Y、16M、16C、16Kの上方には、転写ユニット21が設けられている。そして、この転写ユニット21は、無端状の被転写体の一例としての中間転写ベルト32と、中間転写ベルト32が巻き掛けられ、回転駆動して中間転写ベルト32を矢印方向に周回させる駆動ロール40と、中間転写ベルト32が巻き掛けられ、中間転写ベルト32に張力を付与する張力付与ロール36と、中間転写ベルト32の外周面を清掃する清掃ブレード38と、中間転写ベルト32を挟んで像保持体18Y、18M、18C、18Kの反対側に配置される転写装置の一例としての一次転写ロール34Y、34M、34C、34Kと、を含んで構成されている。
【0025】
この4つの一次転写ロール34Y、34M、34C、34Kによって、画像形成ユニット16Y、16M、16C、16Kの像保持体18上に順次形成されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像が、中間転写ベルト32上に、多重に転写される構成となっている。
【0026】
また、中間転写ベルト32を挟んで駆動ロール40の反対側には、転写装置の一例としての二次転写ロール42が設けられている。中間転写ベルト32上に多重に転写されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像は、中間転写ベルト32により搬送され、駆動ロール40と二次転写ロール42に挟まれ、搬送経路56に沿って搬送される被転写体の一例としてのシート部材Pに二次転写されるようになっている。
【0027】
さらに、二次転写ロール42に対してシート部材Pの搬送方向下流側には、シート部材Pに転写されたトナー画像を熱及び圧力によりシート部材Pに定着する定着装置44が設けられている。
【0028】
また、定着装置44の下流側には、トナー画像が定着したシート部材Pを画像形成装置10の装置本体10Aの上部に設けられた排出部48に排出する排出ロール46が設けられている。
【0029】
一方、画像形成装置10の装置本体10A内の下側には、シート部材Pが積載される給紙部材50が設けられている。さらに、この給紙部材50に積載されたシート部材Pを搬送経路56へ送り出す給紙ロール52が設けられ、給紙ロール52の下流側には、シート部材Pを1枚ずつ分離して搬送る分離ロール54が設けられている。また、分離ロール54の下流側には、搬送タイミングを合わせる位置合せロール58が設けられている。これにより、給紙部材50から供給されたシート部材Pは、予め決められたタイミングで回転する位置合せロール58によって中間転写ベルト32と二次転写ロール42とが接する位置(二次転写位置)へ送り出される構成となっている。
【0030】
さらに、排出ロール46の隣りには、定着装置44によって片面に画像が定着されたシート部材Pを、排出ロール46によって排出部48上にそのまま排出せずに、両面用搬送経路62に搬送する搬送ロール60が設けられている。これにより、両面用搬送経路62に沿って搬送されるシート部材Pは、表裏が反転された状態で、位置合せロール58へと再度搬送され、今度は、シート部材Pの裏面にトナー画像が転写・定着されて排出部48上に排出されるようになっている。
【0031】
この構成により、以下のようにシート部材Pに画像が形成される。
【0032】
先ず、画像処理部12から露光装置14に各色の階調データが順次出力され、この露光装置14から階調データに応じて出射されたレーザ光LB−Y、LB−M、LB−C、LB−Kは、帯電部材20によって帯電した像保持体18の外周面に走査露光され、像保持体18の外周面に静電潜像が形成される。像保持体18上に形成された静電潜像は、現像装置22Y、22M、22C、22Kによって、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像として可視化される。
【0033】
さらに、各画像形成ユニット16Y、16M、16C、16Kの上方に渡って配置された転写ユニット21の一次転写ロール34によって、像保持体18上に形成されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー画像が、周回する中間転写ベルト32上に多重に転写される。
【0034】
また、周回する中間転写ベルト32上に多重に転写された各色のトナー画像は、二次転写ロール42により、給紙部材50から給紙ロール52、分離ロール54、位置合せロール58によって搬送経路56に予め決められたタイミングで搬送されたシート部材Pに二次転写される。
【0035】
さらに、トナー画像が転写されたシート部材Pは、定着装置44へと搬送される。シート部材Pに転写されたトナー画像は、定着装置44によってシート部材Pに定着され、定着された後、画像形成装置10の装置本体10Aの上部に設けられた排出部48に排出ロール46によって排出される。
【0036】
さらに、シート部材Pの両面に画像を形成させる場合は、定着装置44によって片面に画像が定着されたシート部材Pを、排出ロール46によって排出部48上にそのまま排出せずに、搬送方向を切り替え、搬送ロール60を介して両面用搬送経路62へと搬送する。そして、両面用搬送経路62に沿ってシート部材Pを搬送することで、シート部材Pの表裏が反転され、シート部材Pが再度位置合せロール58へと搬送される。今度は、シート部材Pの裏面にトナー画像が転写・定着され、転写・定着された後、排出部48上に排出ロール46によって排出される。
【0037】
(要部構成)
図2に示されるように、現像装置22は、像保持体18に対向するように配置された現像部材の一例としての現像ロール70と、現像ロール70の下方に配置され、現像ロール70に二成分系現像剤G(以下単に現像剤Gと言う)を供給する攪拌搬送手段の一例としての第1攪拌搬送オーガ72と、第1攪拌搬送オーガ72の隣りに配置される第2攪拌搬送オーガ74と、現像ロール70と第1攪拌搬送オーガ72および第2攪拌搬送オーガ74とを収容する筐体76と、を含んで構成されている。なお、現像剤Gは、トナーと磁性キャリアとを主要成分として含有している。
【0038】
さらに、第1攪拌搬送オーガ72及び第2攪拌搬送オーガ74は、それぞれ現像ロール70の回転軸71に沿って延びる回転軸72A、74Aを備えており、筐体76にそれぞれ回転可能に支持されている。また、第1攪拌搬送オーガ72及び第2攪拌搬送オーガ74の回転軸72A、74Aには、予め決められたピッチで螺旋羽根72B、74Bが螺旋状に形成されている。
【0039】
さらに、回転軸72A、74Aの端部には、それぞれ図示しないギアが固定されており、図示しないモータからの回転力がギアへ伝達され、ギアを介して第1攪拌搬送オーガ72及び第2攪拌搬送オーガ74がそれぞれ回転すると、螺旋羽根72B、74Bによって、筐体76内に収容された現像剤Gが攪拌されながら搬送されるようになっている。
【0040】
詳細には、第1攪拌搬送オーガ72と第2攪拌搬送オーガ74との間には、筐体76の底部から上方に向って立ち上がった仕切壁78が形成されており、この仕切壁78によって、第1攪拌搬送オーガ72が配置された第1攪拌路82と、第2攪拌搬送オーガ74が配置された第2攪拌路84とが形成されている。さらに、仕切壁78の長手方向(図2の紙面鉛直方向)の両端部は開放されており、第1攪拌路82と第2攪拌路84とが繋がっている。
【0041】
この構成により、現像剤Gは、第1攪拌搬送オーガ72及び第2攪拌搬送オーガ74の回転によってそれぞれ第1攪拌路82及び第2攪拌路84内を攪拌されながら搬送されて、第1攪拌路82と第2攪拌路84との間を循環するようになっている。
【0042】
現像ロール70は、像保持体18との間に間隙(現像ギャップ)が形成されるように配置されている。現像ロール70は、筐体76に回転不能に支持される円柱状のマグネットロール70Bと、マグネットロール70Bに被せられてマグネットロール70Bの回りを回転する回転スリーブ70Aとを備えている。
【0043】
回転スリーブ70Aは、マグネットロール70Bの円柱軸を中心としてマグネットロール70Bの回りを、図2中に示す矢印Cに回転する回転軸71を有しており、矢印B方向に回転する像保持体18とは反対の方向に回転するようになっている。
【0044】
マグネットロール70Bの内部には、回転スリーブ70Aの周方向に沿って表面側にS極又はN極が形成される5本の永久磁石が放射状に形成されている。そして、現像極S2は、像保持体18に対向する位置に配置されている。また、回転スリーブ70Aの回転方向に沿って現像極S2の隣りに搬送極N2が配置され、その隣りに剥離極S3が配置され、その隣りに汲み上げ極S1、層厚規制極N1の順で磁極が配置されている。
【0045】
汲み上げ極S1は、回転スリーブ70Aの回転軸71と第1攪拌搬送オーガ72の回転軸72Aを結ぶ線L1よりも回転スリーブ70Aの回転方向において下流側にオフセットされて配置されている。ここで、「オフセット」とは、汲み上げ極S1の長手方向に向く中心線が対象線(線L1)に対して片側(下流側)に偏っていることをいう。汲み上げ極S1は、現像剤Gを汲み上げるための磁力線を発生している。
【0046】
現像極S2と剥離極S3と汲み上げ極S1とは何れもS極であり、搬送極N2、層厚規制極N1は何れもN極である。なお、現像ロール70には、マイナスの現像バイアス電圧が印加されている。
【0047】
さらに、回転スリーブ70Aの回転方向において汲み上げ極S1の下流側であって回転スリーブ70Aと対向する位置には、磁性材から構成される円柱状の層厚規制部材88が設けられている。層厚規制部材88は、その円筒軸89を回転スリーブ70Aの回転軸71に沿って延びるように配置されている。層厚規制部材88は、その両端が筐体76に回転不能に支持されている。
【0048】
層厚規制極N1は、層厚規制部材88に対向する位置に設けられるが、回転スリーブ70Aの回転方向(以下単に回転方向という)において、層厚規制部材88の円筒軸89と回転スリーブ70Aの回転軸71とを結んだ線L2よりも下流側にオフセットされて配置されている。ここで、「オフセット」とは、層厚規制極N1の長手方向に向く中心線が対象線(線L2)に対して片側(下流側)に偏っていることをいう。
【0049】
筐体76の内表面には、層厚規制部材88に当ってUターンした余剰の現像剤Gを第1攪拌路82へ案内する案内面90が形成されている。案内面90は、回転スリーブ70Aの外表面と対向するように配置され、回転スリーブ70Aの外表面と案内面90とで現像剤Gを挟むようになっている。
【0050】
図2に示されるように、現像剤Gは、第1攪拌搬送オーガ72及び第2攪拌搬送オーガ74の回転によってそれぞれ第1攪拌路82及び第2攪拌路84内を攪拌されながら搬送され、第1攪拌路82と第2攪拌路84との間を循環する。そして、攪拌された現像剤Gは、第1攪拌搬送オーガ72によって汲み上げ極S1による汲み上げ位置Hまで搬送される。
【0051】
回転スリーブ70Aが矢印C方向に回転すると、先ず、第1攪拌路82の汲み上げ位置Hの現像剤Gが、汲み上げ極S1によって汲み上げられて回転スリーブ70Aの表面に吸着する。
【0052】
回転スリーブ70Aの表面には、層厚規制極N1から現像極S2に向かう磁力線、搬送極N2から現像極S2に向う磁力線、搬送極N2から剥離極S3に向かう磁力線、層厚規制極N1から汲み上げ極S1に向かう磁力線が形成されており、回転スリーブ70Aの表面に吸着された現像剤Gは、回転スリーブ70Aの表面において磁力線の方向に配列される。即ち、回転スリーブ70Aの表面には、磁力線の方向に配列された現像剤Gから構成される磁気ブラシが形成される。また、層厚規制極N1の対向位置には、磁性材からなる層厚規制部材88が設けられているため、層厚規制極N1は層厚規制部材88に向かう磁力線が発生されている。
【0053】
汲み上げ極S1の近傍において回転スリーブ70Aの表面に形成された磁気ブラシは、回転スリーブ70Aが矢印Cに回転するのに伴い、層厚規制極N1に向って搬送される。
【0054】
ここで、汲み上げ極S1と層厚規制極N1との間には、回転スリーブ70Aと対向するように、予め定められた隙間を空けて層厚規制部材88が設けられている。矢印Cに回転する回転スリーブ70Aによって層厚規制極N1に向って搬送される現像剤Gは、層厚規制部材88と当って、層厚が規制される。
【0055】
具体的には、層厚規制部材88と回転スリーブ70Aとの隙間を通過しようとする現像剤Gは、層厚規制部材88に対して回転方向下流側に配置される層厚規制極N1に引き付けられる。これにより、層厚規制部材88と回転スリーブ70Aとの隙間に現像剤Gが滞留することなく、回転スリーブ70A上の現像剤Gの層厚が規制され、磁気ブラシの高さが揃えられる。
【0056】
一方、層厚規制部材88と回転スリーブ70Aとの隙間を通過することができなかった余剰の現像剤Gは、層厚規制部材88と当って、Uターンをして案内面90に沿って流れて第1攪拌路82に戻される。
【0057】
層厚規制部材88で層厚が規制された現像剤Gは、層厚規制極N1→現像極S2→搬送極N2→剥離極S3へと搬送される。
【0058】
現像極S2近傍において現像剤G中のトナーが像保持体18に移行し、像保持体18に形成された静電潜像はトナー像として可視化され、回転スリーブ70Aの表面には殆ど磁性キャリアだけになった(トナー濃度が低下した)現像剤Gが残る。汲み上げ極S1と剥離極S3は同極であり、回転スリーブ70Aの表面において汲み上げ極S1と剥離極S3との間には磁力線が形成されていない。そのため、トナー濃度が低下した現像後の現像剤Gは、回転スリーブ70Aの回転に伴い、剥離極S3と汲み上げ極S1との間で回転スリーブ70Aの表面から剥離落下する。剥離落下した現像剤Gは、それを受ける位置に配置される第1攪拌搬送オーガ72に戻される。第1攪拌搬送オーガ72に戻された現像剤Gは第1攪拌路82および第2攪拌路84内で周囲の現像剤Gと共に攪拌され、そのトナー濃度が回復する。
【0059】
ここで、現像後の現像剤Gが剥離落下する下方に矢印D方向に回転する第1攪拌搬送オーガ72を設けることで、現像後の現像剤Gは汲み上げ極S1から遠ざかる側へ向けて剥離落下する。しかしながら、画像形成装置10の環境変化によって現像剤Gの流動性が悪化すると、図2中の仮想線で示す現像剤Gの流れ92のように、現像後の現像剤Gの剥離落下ポイントが回転スリーブ70Aの回転方向において下流側にずれ、一部の現像後の現像剤Gが第1攪拌搬送オーガ72の方に落下せず、第1攪拌搬送オーガ72や第2攪拌搬送オーガ74で攪拌搬送されないまま汲み上げ極S1によって汲み上げられることがある。現像後の現像剤Gが攪拌されないまま汲み上げられると、静電潜像の現像において濃度ムラが生じることとなる。
【0060】
図3は、汲み上げ極S1の位置と剥離極S3の位置を様々に変化させた場合の濃度ムラの発生の有無を示すグラフである。縦軸を汲み上げ極S1の位置とし、横軸を剥離極S3の位置とし、濃度ムラ無しをマル記号で示し、濃度ムラ有りをバツ記号で示している。汲み上げ極S1と剥離極S3の位置としては、現像極S2の角度位置を0°とした時計回りにおける角度位置で示している。
【0061】
図3に示すように、汲み上げ極S1の126°の角度位置の前後で濃度ムラの有無が切り換るとの知見を得ている。ここで、126°の角度位置は、回転スリーブ70Aの回転軸71と第1攪拌搬送オーガ72の回転軸72Aを結ぶ線L1(図2参照)に相当する位置である。
【0062】
このことから、本実施形態の現像装置22の汲み上げ極S1にあっては、上述したように、回転スリーブ70Aの回転軸71と第1攪拌搬送オーガ72の回転軸72Aを結ぶ線L1よりも回転スリーブ70Aの回転方向において下流側にオフセットされて配置させている。それにより、現像後の現像剤Gが第1攪拌搬送オーガ72や第2攪拌搬送オーガ74で攪拌搬送されないまま汲み上げ極S1によって汲み上げられるのを抑制し、静電潜像の現像において濃度ムラが生じるのを抑制している。
【0063】
図4は、本実施形態の現像装置22の汲み上げ極S1近傍の磁力線と現像剤Gの流れとを模式的に示す説明図である。図5は、現像装置22に対する比較例としての現像装置100の汲み上げ極S1近傍の磁力線と現像剤Gの流れとを模式的に示す説明図である。
【0064】
図4に示すように、汲み上げ極S1の下流側に磁性材からなる円柱状の層厚規制部材88を設けることで、汲み上げ極S1による現像剤Gの汲み上げが補助されるような磁力線が層厚規制極N1によって発生される。
【0065】
一方、図5に示すように、層厚規制部材として矩形の板状の磁性材102を用いた場合、層厚規制極N1からの磁力線は磁性材102に集中し、汲み上げ極S1による現像剤Gの汲み上げを補助するような磁力線は生じない。そのため、汲み上げ極S1の磁極を強めに設定する必要があり、その結果、現像後の現像剤Gが第1攪拌搬送オーガ72や第2攪拌搬送オーガ74で攪拌搬送されないまま汲み上げ極S1によって汲み上げられやすくなる。
【0066】
本実施形態の現像装置22にあっては、層厚規制部材88を円柱状の磁性材から構成し、層厚規制極N1によって汲み上げ極S1による現像剤Gの汲み上げを補助する磁力線を発生させ、その分、汲み上げ極S1の磁極を弱めに設定するようにしている。そのため、現像後の現像剤Gが第1攪拌搬送オーガ72や第2攪拌搬送オーガ74で攪拌搬送されないまま汲み上げ極S1によって汲み上げられるのが抑制されるようになっている。
【0067】
図6は、現像装置22に対する比較例としての現像装置200の汲み上げ極S1近傍の磁力線と現像剤Gの流れとを示す説明図である。
【0068】
比較例としての現像装置200にあっては、層厚規制極N1を回転スリーブ70Aの回転方向において線L2よりも上流側にオフセットして配置している。この場合、層厚規制部材88の上流側の磁力線は、回転スリーブ70Aの周方向に沿う方向よりも層厚規制部材88の方向に向くようになる。そのため、層厚規制部材88の上流側の現像剤Gの流動性がそれほど活発とはならず、層厚規制部材88で規制された現像剤Gは第1攪拌路84内に取り込まれる。
【0069】
一方、本実施形態の現像装置22にあっては、上述したように、層厚規制極N1を回転スリーブ70Aの回転方向において線L2よりも下流側にオフセットして配置している。この場合、図4に示すように、層厚規制部材88の上流側の磁力線は、回転スリーブ70Aの周方向に沿うようになる。そのため、層厚規制部材88の上流側の現像剤Gの流動性が活発となり、層厚規制部材88で規制された現像剤Gの一部は第1攪拌路84内に取り込まれるが、残部は汲み上げ極S1付近まで流動し、汲み上げ極S1によって再度汲み上げられるようになる。
【0070】
即ち、層厚規制部材88の上流側において、層厚規制部材88で規制された現像剤Gが汲み上げ極S1によって再度汲み上げられるという汲み上げ循環が生じるようになる。この汲み上げ循環は、汲み上げ極S1による現像後の現像剤Gの汲み上げを妨げる(ブロックする)ように作用する。結果として、層厚規制極N1を回転スリーブ70Aの回転方向において線L2よりも下流側にオフセットして配置することで、現像後の現像剤Gが第1攪拌搬送オーガ72や第2攪拌搬送オーガ74で攪拌搬送されないまま汲み上げ極S1によって汲み上げられるのが抑制されるようになる。
【0071】
また、現像後の現像剤Gが攪拌されないまま汲み上げ極S1によって汲み上げられとしても、層厚規制部材88の上流側の現像剤Gの流動性が活発である(汲み上げ循環が生じる)ため、現像剤Gは層厚規制部材88の上流側で攪拌され、静電潜像の現像において濃度ムラが生じるのが抑制される。
【0072】
尚、本実施形態に係る画像形成装置10では、中間転写ベルト32を有し一次転写と二次転写を行う形式のものについて説明したが、像保持体18に保持されるトナー像をシート部材Pに直接転写する形式の画像形成装置についても本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
10 画像形成装置
14 露光装置
18 像保持体
22 現像装置
32 中間転写ベルト(被転写体の一例)
34 一次転写ロール(転写装置の一例)
42 二次転写ロール(転写装置の一例)
70 現像ロール(現像部材の一例)
70A 回転スリーブ
70B マグネットロール
71 回転軸
72 第1攪拌搬送オーガ(攪拌搬送手段の一例)
72A 回転軸
74 第2攪拌搬送オーガ
74A 回転軸
89 円筒軸
88 層厚規制部材
G 現像剤
L1 線
L2 線
P シート部材(被転写体の一例)
S1 汲み上げ極
N1 層厚規制極
S2 現像極
N2 搬送極
S3 剥離極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を汲み上げるための磁力線を発生する汲み上げ極を備え、前記汲み上げ極によって汲み上げた現像剤を表面に保持しつつ回転し、静電潜像が形成された像保持体に現像剤を供給して前記静電潜像を現像する現像部材と、
前記現像部材から剥離落下される現像後の現像剤を受ける位置に配置され、前記現像部材の回転軸に沿って延びる回転軸を中心として回転し、現像剤を攪拌すると共に、攪拌された現像剤を前記汲み上げ極によって汲み上げられる位置まで搬送する攪拌搬送手段と、
を有し、
前記汲み上げ極は、前記現像部材の回転軸方向から見た場合、前記現像部材の回転軸と前記攪拌搬送手段の回転軸を結ぶ線よりも前記現像部材の回転方向において下流側に配置されている現像装置。
【請求項2】
磁性材からなり、円柱状を呈し、円柱軸が前記現像部材の回転軸に沿って延び、前記現像部材の回転方向において前記汲み上げ極よりも下流側の位置において前記現像部材と隙間をおいて対向するように配置され、前記現像部材の表面に保持された現像剤に当って現像剤の層厚を規制する層厚規制部材を有する請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記現像部材は、前記層厚規制部材に対向する位置に設けられ、前記層厚規制部材に向けて磁力線を発生する層厚規制極を備え、
前記層厚規制極は、前記現像部材の回転軸方向から見た場合、前記現像部材の回転軸と前記層厚規制部材の円柱軸を結ぶ線よりも前記現像部材の回転方向において下流側にオフセットされて配置されている請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
静電潜像が形成される像保持体と、
前記像保持体に形成された静電潜像を現像する請求項1〜3のいずれかに記載の現像装置と、
前記現像装置によって現像された像を被転写体に転写する転写装置と、
を有する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−203252(P2012−203252A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68744(P2011−68744)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】