説明

現像装置および画像形成装置

【課題】トナー収納室と現像室との間をトナーが循環するという現象の発生を抑制しながら、トナー供給室のトナー量を適切にコントロールする。
【解決手段】現像装置124は、第1開口部29aおよび第2開口部29bが形成された仕切壁28を含み、この仕切壁28を隔てて現像室22とトナー収納室24とが隣接する現像ハウジング20と、現像室22に配置される現像ローラー31および第1撹拌部材34と、トナー収納室24に配置される第2撹拌部材36と、現像室22側の仕切壁28の壁面に固定される第1弁部材30aと、トナー収納室24側の仕切壁28の壁面に固定される第2弁部材30bとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリ、若しくはそれらの複合機などの画像形成装置に適用される現像装置、およびその現像装置を備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機などの画像形成装置として、感光体ドラム(像担持体)の周囲に現像装置が配置され、感光体ドラム上に形成された静電潜像がこの現像装置によりトナー現像されるものが知られている。
【0003】
現像装置としては、例えば特許文献1に開示されるものが公知である。この現像装置は、現像ローラーおよび供給ローラーが配置されるトナー供給室(現像室)と、撹拌部材が配置されるトナー収納室とを備えている。トナー供給室とトナー収納室との間は、開口部を備える境界壁(仕切壁)で仕切られており、この境界壁は、上下に並ぶ2つの開口部(供給ローラー等の回転方句に並ぶ2つの開口部)を備えている。これらの開口部のうち下側開口部は、トナー収納室からトナー供給室にトナーを補給するためのもので、常時開放されている。他方、上側開口部は、トナー供給室からトナー収納室にトナーを戻すためのもので、トナー供給室の残留トナー量に応じてシート状の弁部材により開閉される。
【0004】
この弁部材は、トナー収納室側の境界壁の壁面に部分的に固定されており、トナー供給室の残留トナー量が少ない状態では、境界壁の壁面に当接して上側開口部を閉じる一方、トナー供給室にトナーが過剰に供給されると、トナーの圧力により前記壁面から離れる方向に撓み変形して上側開口部を開き、これによりトナー供給室からトナー収納室へのトナーの移動を許容する。すなわち、この現像装置は、撹拌部材の回転に伴いトナーを押圧することで下側開口部を通じてトナー供給室にトナーを補給し、トナー供給室にトナーが過剰に供給されると、自ずと弁部材が変形して上側開口部を開放し、これによりトナー収納室にトナーを戻す(還流させる)ことで、トナー供給室のトナー量を必要量にコントロールする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−299023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の現像装置では、下側開口部が常時開放されているため、トナー供給室がトナーで満たされた状態でも、撹拌部材の回転に伴い、下側開口部通じて継続的にトナー供給室が供給されてしまう。そのため、上下の開口部を通じて現像室とトナー収納室との間でトナーが循環し、このようなトナーの循環が継続的に生じる結果、新旧トナーが一様に混ざってトナーの劣化を促進させることが考えられる。このような場合、特に、現像装置内の残留トナー量少なくなると、トナーの劣化が顕著になり画質に悪影響をもたらすおそれがあるため、この点に改善の余地がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みて成されたものであり、トナー収納室と現像室(トナー供給室)との間をトナーが循環するという現象の発生を抑制しながら、現像室のトナー量を適切にコントロールすることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、静電潜像が形成された像担持体上にトナーを供給することにより前記静電潜像を現像する一成分現像に用いられる現像装置であって、仕切壁を含みかつ当該仕切壁を挟んで前記像担持体にトナーを供給するための現像室と補給用のトナーが収納されるトナー収納室とが形成されるとともに、前記仕切壁に、前記トナー収納室から前記現像室にトナーを補給するための第1開口部および前記現像室から前記トナー収納室に余剰トナーを戻すための第2開口部が形成された現像ハウジングと、前記現像室内に配置され、前記トナーを外周面上に保持した状態で回転することにより当該トナーを前記像担持体に供給する現像ローラーと、前記第1開口部を前記現像室側から塞ぐように当該現像室側の前記仕切壁の壁面に沿って固定され、かつ、前記現像ローラーの回転方向における一方側端部を自由端として当該自由端が前記壁面から離れる方向に弾性的に撓み変形可能に形成された第1弁部材と、前記第2開口部を前記トナー収納室側から塞ぐように当該トナー収納室側の前記仕切壁の壁面に沿って固定され、かつ、前記回転方向における一方側端部を自由端として当該自由端が前記壁面から離れる方向に弾性的に撓み変形可能に形成された第2弁部材と、前記トナー収納室に配置され、当該トナー収納室内のトナーを前記第1開口部の側に押圧すべく作動する押圧部材と、を備えているものである。
【0009】
この現像装置では、現像室内の残留トナー量が少ない状態では、トナー収納室のトナーが押圧部材の作動により第1開口部側に押圧されることで第1弁部材が撓み変形し、これにより第1開口部を通じてトナー収納室から現像室にトナーが補給される。逆に、現像室内の残留トナー量がある程度多い場合には、現像室のトナーにより第1弁部材が仕切壁に押し付けられることで当該第1部材の撓み変形が規制され、これにより現像室へのトナーの補給が停止される。そして、現像室にトナーが過剰補給されてしまった場合には、現像室のトナーの圧力で第2弁部材が撓み変形し、これにより第2開口部を通じて現像室からトナー収納室にトナーが戻される。すなわち、この現像装置によれば、現像室の残留トナー量が一定量に達するまでは現像室へのトナー補給が継続的に行われ、現像室の残留トナー量が一定量に達すると、当該現像室のトナー量が当該一定量以下に減少するまでトナー補給が停止される。そしてその間、現像室にトナーが過剰補給されてしまった場合にだけ現像室からトナー収納室に余剰トナーが戻される。従って、継続的に現像室にトナーが補給されることが抑制され、現像ハウジング内でトナーが継続的に循環するという現象の発生が効果的に抑制される。
【0010】
上記の現像装置においては、さらに、前記現像室内の前記第1弁部材に対向する位置に配置され、前記現像ローラーと平行な軸回りに回転することで、前記第1弁部材に沿ってその固定端側から前記自由端側に向って流れるトナー流を形成する第1回転部材、又は、前記トナー収納室内の前記第2弁部材に対向する位置に配置され、前記第現像ローラーと平行な軸回りに回転することで、前記第2弁部材に沿ってその固定端側から前記自由端側に向って流れるトナー流を形成する第2回転部材の少なくとも一方を備えているのが好適である。
【0011】
この現像装置によれば、第1回転部材の回転に伴い、現像部内に、第1弁部材に沿ったトナー流が形成され、このトナー流によって第1弁部材が第1開口部を閉止する方向に付勢される。同様に、第2回転部材の回転に伴い、トナー収納室に、第2弁部材に沿ったトナー流が形成され、このトナー流によって第2弁部材が第2開口部を閉止する方向に付勢される。従って、第1開口部や第2開口部が必要以上に開くことが防止され、現像室のトナー量に応じた現像室へのトナー補給や現像室からトナー収納室への余剰トナーの移動(還流)がより適切に行われる。
【0012】
この場合、前記第2回転部材がその回転に伴いトナー収納室内のトナーを前記第1開口部の側に押圧することが可能な形状を有することにより、前記第2回転部材が前記押圧部材としての機能を兼ね備えるものであるのが好適である。
【0013】
この構成によれば、上記のように現像室へのトナー補給や現像室からトナー収納室への余剰トナーの移動(還流)を適切に行わせることを可能する一方で、部材の共通化による現像装置のコンパクト化や製造コストの低廉化を図ることが可能となる。
【0014】
なお、現像室からトナー収納室へのトナーの移動は、必要最小限の範囲、つまり、現像室にトナーが過剰補給された場合にのみ許容され、それ以外は当該トナーの移動を規制できる方が、現像ハウジング内におけるトナーの循環を抑制する上で望ましい。従って、前記第1弁部材は、前記第2弁部材に比べて高い撓み強度を有するものであるのが好適である。また、前記第1開口部は、その総開口面積が前記第2開口部の総開口面積よりも小さくなるように形成されているのが好適である。
【0015】
これらの構成によれば、現像室からトナー収納室に必要以上にトナーが移動することを効果的に抑制でき、現像ハウジング内でのトナー循環を抑制する上で特に有効となる。
【0016】
また、上記現像装置において、前記第1開口部は、前記仕切壁のうち前記現像ローラーの軸方向における中央部分に形成され、前記第2開口部は、前記軸方向における少なくとも前記第1開口部の両外側の位置に形成されているのが好適である。
【0017】
この構成によれば、前記軸方向の両端側から現像室内にトナーが補給され、トナーの過剰補給が生じた場合には、その余剰トナーが前記軸方向の中央部分からトナー収納室に戻される。このように現像室内において前記軸方向に沿って外側から内側にトナーが移動することで、当該軸方向について新旧トナーの均一化が図られる。
【0018】
なお、上記現像装置において、前記第1開口部および前記2開口部は、前記仕切壁のうち前記現像ローラーの回転方向に互いにずれた位置に形成されていてもよいが、前記現像ローラーの軸方向に一列に並ぶように形成されているものによれば、特に、上記第1回転部材や第2回転部材が備えられる場合には、前記軸方向と直交する方向にこれら回転部材を集約して配置することができる分、現像装置をコンパク化する上で有利となる。
【0019】
なお、上記課題を解決するための他の本発明は、画像形成装置であって、静電潜像を形成するための像担持体と、この像担持体上に形成された前記静電潜像を現像する上記現像装置とを含むものである。
【0020】
この画像形成装置によれば、上記のような現像装置を備えているため、現像装置の現像ハウジング内でトナーが循環することに起因するトナー劣化を回避することが可能となり、より継続的に良好な画像を形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明の現像装置によれば、トナー収納室と現像室との間を継続的にトナーが循環するという現象の発生を抑制しながら、トナー供給室のトナー量を適切にコントロールすることができる。そして、本発明の画像形成装置によれば、上記のようなトナーの循環に起因するトナー劣化を回避することが可能となり、より継続的に良好な画像を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る画像形成装置(本発明に係る現像装置が適用される画像形成装置)を示す概略図である。
【図2】現像装置を示す断面図である。
【図3】仕切壁をトナー収納室側から見た状態を示す概略図である。
【図4】現像装置の別の例を示す断面図である。
【図5】仕切壁の別の例を示す概略図(トナー収納室側から見た状態)である。
【図6】仕切壁の別の例を示す概略図(トナー収納室側から見た状態)である。
【図7】仕切壁の別の例を示す概略図(トナー収納室側から見た状態)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置10の内部構造を示す断面図である。この画像形成装置10は、複写機、プリンタおよびファクシミリ装置としての機能を有する、いわゆる複合機である。より詳しくは、磁性一成分現像剤(磁性トナー)を用いて画像を現像する複合機である。
【0025】
画像形成装置10は、装置本体11と、原稿画像を読み取るための画像読取部16とを備える。画像読取部16は、装置本体11の上部に配置されており、この装置本体11と画像読取部16との間には、画像形成後の用紙が排出される排紙トレイ151を備えた排紙部15が設けられている。
【0026】
前記画像読取部16は、図略のコンタクトガラス上に載置され、若しくは図略の原稿自動読取装置からコンタクトガラス上に供給される原稿の原稿面に光を照射して走査し、原稿面からの反射光をCCDで受光することによりその画像情報を読み取り、当該画像情報を後記露光装置123へ出力する。
【0027】
前記装置本体11は、画像形成処理が施される用紙が収容される給紙部14と、前記画像読取部16によって読み取られる原稿の画像情報、コンピュータ等の外部機器から伝送される画像情報あるいは通信回線を介して伝送される画像情報等に基づき前記用紙上にトナー像を形成する画像形成部12と、この画像形成部12によって用紙上に形成されたトナー像に定着処理を施す定着部13とを含む。
【0028】
前記給紙部14は、画像形成処理が施される用紙を収容する給紙カセット141と、ピックアップローラー142とを備え、当該ピックアップローラー142の駆動により、前記用紙カセット141に収納された用紙をその最上層のものから1枚ずつ繰り出す。
【0029】
前記画像形成部12は、画像読取部16が読み取った画像情報に基づき給紙部14から給紙される用紙にトナー画像を形成するものである。この画像形成部12は、感光体ドラム121(本発明の像担持体に相当する)と、この感光体ドラム121の周囲に配置される、帯電装置122、露光装置123、現像装置124、転写ローラー125、クリーニング装置126及び除電ランプ127を含む。
【0030】
感光体ドラム121は、その軸回りに回転し、その周面に静電潜像及びトナー像を形成させるものである。この感光体ドラム121としては、アモルファスシリコン(a−Si)系材料を用いた感光体ドラムを用いることができる。帯電装置122は、感光体ドラム121の表面を均一に帯電するものである。露光装置123は、レーザー光源とミラーやレンズ等の光学系機器とを有し、前記画像読取部16から入力される画像情報(画像データ)に基づき変調された光を感光体ドラム121の周面に照射して、当該感光体ドラム121上に静電潜像を形成する。現像装置124は、感光体ドラム121上の前記静電潜像を現像してトナー像を形成するものであり、磁性トナーを用いて、いわゆる磁性一成分現像法に基づき前記静電潜像を現像する。前記転写ローラー125は、感光体ドラム121の周面に形成されたトナー像をシート上に転写させるもので、トナーと逆極性の転写バイアスが与えられることで、トナー像をシート上に転写させる。クリーニング装置126は、クリーニングローラー等を有し、トナー像転写後の感光体ドラム121の周面を清掃するものである。除電ランプ127は、クリーニング処理後の感光体ドラム121の周面に残留している電荷を取り除くためのものである。
【0031】
すなわち、前記画像形成部12は、画像読取部16から出力される画像情報に基づき感光体ドラム121に静電潜像を形成し、これをトナー現像した上で、当該トナー像を給紙部14から供給される用紙上に転写させる。そして、当該トナー像の転写後は、感光体ドラム121上に残留するトナーのクリーニングおよび除電処理を行い、次の静電潜像を感光体ドラム121上に形成する。なお、前記画像形成部12と給紙部14との間には、搬送ローラー対112を備えた、上下方向に延びる用紙搬送路111が形成されており、給紙部14から繰り出される用紙は、これら搬送ローラー対112の駆動により画像形成部12へ向けて搬送される。
【0032】
前記定着部13は、画像形成部12で用紙上に転写されたトナー像に対して定着処理を施すものである。この定着部13は、内側に通電発熱体を備えた定着ローラー131とこれに対向配置される加圧ローラー132とを備えており、画像形成部12から搬送されてくる用紙をこれら定着ローラー131と加圧ローラー132との間で押圧挟持しつつ加熱処理を施すことで前記トナー像を用紙に定着させる。なお、定着処理後の用紙は、定着部13の上方に延設される排紙搬送路113を通って前記排紙部15の排紙トレイ151上へ排出される。
【0033】
次に、前記現像装置124の具体的な構造とその作用効果について説明する。
【0034】
図2は、前記現像装置124の要部を断面図で示している。これらの図に示すように、前記現像装置124は、感光体ドラム121の軸方向に延びる長尺の略箱形の形状を有する現像ハウジング20を備える。この現像ハウジング20は、その内部に長手方向に延びる仕切壁28を有しており、この仕切壁28により当該現像ハウジング20内部が、感光体ドラム121側の現像室22とこれに隣接するトナー収納室24とに仕切られている。
【0035】
前記現像室22には、現像ローラー31、層厚規制部材32および第1撹拌部材34が配置されている。
【0036】
前記現像ローラー31は、感光体ドラム121と平行に設けられている。この現像ローラー31は、磁極が交互に異なる複数の内蔵磁石が周方向に並ぶ固定磁石ロール31aと、その外側(外周上)に配置されて当該固定磁石ロールに対して相対回転可能な筒状の現像スリーブ31bとを含み、当該現像スリーブ31bが外部からの駆動力を受けて回転するように前記現像ハウジング20に支持されている。この現像ローラー31は、その外周面の一部が現像ハウジング20に形成される開口部から外部露出することにより前記感光体ドラム121に対向しており、図中矢印で示す方向(反時計回り)に回転(現像スリーブが回転)することにより前記感光体ドラム121上にトナーを供給する。
【0037】
前記層厚規制部材32は、現像ローラー31に沿ってその長手方向に延びる板状の部材である。この層厚規制部材32は、感光体ドラム121上に運ばれるトナー量を規制するもので、前記現像ローラー31の外周面との間に一定の隙間が形成されるように、現像ローラー31の周方向の特定位置に配置されている。
【0038】
前記第1撹拌部材34(本発明の第1回転部材に相当する)は、現像室22内のトナーを撹拌するもので、前記現像ローラー31と平行に配置された状態で前記現像ハウジング20に回転可能に支持されており、外部からの駆動力を受けて図中矢印で示す方向(時計回り)に回転する。第1撹拌部材34は、回転軸34aとこれに固定されてその軸方向と直交する方向に延びる、例えばPET(Polyethylene Terephthalate)等の樹脂製シートからなるパドル部材34bとを備えており、回転軸34aの回転に伴い、これと一体にパドル部材34bを旋回させることでトナー収納室24内のトナーを撹拌する。また、この撹拌に伴い、当該第1撹拌部材34と仕切壁28との間に当該仕切壁28に沿ったトナー流を形成する。この点は後に詳述する。
【0039】
前記トナー収納室24には、トナー収納室24内のトナーを撹拌しながら当該トナー収納室24から現像室22にトナー補給を行うための第2撹拌部材36が配置されている。
【0040】
この第2撹拌部材36(本発明の押圧部材を兼ねる第2回転部材に相当する)は、前記仕切壁28を挟んで前記第1撹拌部材34と平行にかつこの第1撹拌部材34に対して水平方向に横並びに配置されている。この第2撹拌部材36は、前記第1撹拌部材34と同等の構成を有する。すなわち、第2撹拌部材36は、回転軸36aおよびPET等の樹脂製シートからなるパドル部材36bを備えており、外部からの駆動力を受けて図中矢印で示す方向(時計回り)に回転することによりパドル部材36bを旋回させ、この旋回によりトナー収納室24内のトナーを撹拌しつつ前記第1開口部29a側に押圧する。
【0041】
なお、現像ハウジング20のうち当該トナー収納室24の上方にはトナーホッパー40が連結されている。このトナーホッパー40は、現像装置124に外部からトナーを補給するものであり、前記現像ハウジング20に形成された組付部21に組み付けられている。
【0042】
このトナーホッパー40は、同図に概略的に示すように、内底部に補給口42aが形成された断面漏斗状のホッパーハウジング42と、前記補給口42aの近傍に配置される補給ローラー44とを備えており、当該補給ローラー44の回転に伴いホッパーハウジング42内に貯溜されたトナーを前記補給口42aから現像ハウジング20の前記トナー収納室24に補給する。こうしてトナー収納室24内に補給されるトナーが、第2撹拌部材36の回転に伴い撹拌されつつ仕切壁28に形成される開口部を通じて前記現像室22内に供給される。
【0043】
詳しく説明すると、図2及び図3に示すように、前記仕切壁28のうち現像ハウジング20の内底部近傍の位置には、両第1撹拌部材34および第2撹拌部材36に沿ってそれらの軸方向に所定間隔で並ぶ複数(図示の例では4つ)の開口部29a(第1開口部29aという)が形成されるとともに、それらの上方の位置にそれぞれ一定間隔を隔てて開口部29b(第2開口部29b)が形成されている。これら開口部29a、29bは全て同一形状であり、当実施形態では、第1撹拌部材34等の長手方向に細長い矩形状である。
【0044】
これら開口部29a、29bのうち第1開口部29aは現像室22側から開閉され、他方、第2開口部29bはトナー収納室24側から開閉される。具体的には、現像室22には、前記第1開口部29aを開閉するため第1弁部材30aが固定されている。この第1弁部材30aは、弾性変形が可能な樹脂製のシート状部材である。当実施形態では、第1弁部材30aは、例えばPET(Polyethylene Terephthalate)からなる厚さ20μm〜100μm程度の矩形シートであり、前記各第1開口部29aの並び方向に延びかつ全ての第1開口部29aを一体に塞ぐ事が可能な面積を有する。この第1弁部材30aは、同図に示すように、現像室22側の仕切壁28の壁面に沿って配置され、かつ、下端部が前記壁面から離れる方向に撓み変形することが可能となるように第1開口部29aと第2開口部29bとの間の位置で前記壁面に両面テープなどの固定手段より固定されている。一方、トナー収納室24には、前記第2開口部29bを開閉するため第2弁部材30bが固定されている。この第2弁部材30bも、前記第1弁部材30aと同様に、例えばPETからなる厚さ20μm〜100μm程度の矩形シートであり、前記各第2開口部29bの並び方向に延びかつ全ての第2開口部29bを一体に塞ぐ事が可能な面積を有する。この第2弁部材30bは、トナー収納室24側の仕切壁28の壁面に沿って配置され、かつ、上端部が前記壁面から離れる方向に撓み変形することが可能となるように第1開口部29aと第2開口部29bとの間の位置で前記壁面に両面テープなどの固定手段より固定されている。
【0045】
この現像装置124では、前記第2撹拌部材36の回転に伴いトナー収納室24内のトナーが仕切壁28の各第1開口部29aを通じて現像室22に供給される。詳しくは、第2撹拌部材36のパドル部材36bの旋回によりトナーが第1開口部29a側に押圧されることにより、このトナーの圧力により第1弁部材30aが撓み変形して前記第1開口部29aが開き、これによりトナー収納室24から現像室22にトナーが補給される。
【0046】
この際、前記現像室22内では、第1撹拌部材34の回転に伴い、仕切壁28に沿って第1弁部材30aの固定端側から自由端側(図2では上方から下方)に向かうトナー流が形成されることで第1弁部材30aが仕切壁28側に付勢されている。従って、現像室22内のトナー量が一定量より少ない場合には、トナー収納室24内のトナーの圧力、すなわち、第2撹拌部材36により押圧されるトナーの圧力が現像室22内のトナーの圧力(第1弁部材30aに作用する付勢力)に勝ることで、第1弁部材30aが上記のように撓み、現像室22へのトナー補給が許容される。逆に、現像室22内のトナー量が前記一定量を超えると、現像室22内のトナーの圧力がトナー収納室24内のトナーの圧力に勝り、この場合には、第1開口部29aが第1弁部材30aにより閉止され、現像室22へのトナー補給が停止される。
【0047】
なお、現像室22にトナーが過剰供給されてしまった場合には、現像室22のトナーの圧力が上昇することで第2弁部材30bが撓み変形し、これにより第2開口部29bが開き、現像室22からトナー収納室24にトナーが戻される(還流する)。その結果、現像室22内の残留トナー量が前記一定量に保たれる。この際、前記トナー収納室24内では、前記第2撹拌部材36の回転に伴い、仕切壁28に沿って第2弁部材30bの固定端側から自由端側(図2では下方から上方)に向かうトナー流が形成されることで、第2弁部材30bが仕切壁28側に付勢されている。従って、第2弁部材30bは、現像室22内の残留トナー量が前記一定量を超えて当該現像室22のトナーの圧力が比較的高くなった場合にのみ撓み変形し、これにより現像室22からトナー収納室24にトナーが戻される。
【0048】
なお、図3中の「出」、「入」は、各開口部29a、29bの機能を表示したものである。すなわち、第1開口部29aは、トナー収納室24から現像室22にトナーを導入するものであり、第2開口部29bは、現像室22からトナー収納室24にトナーを導出(還流)させるものであることを示している(図5〜図7について同じ)。
【0049】
以上のように、この画像形成装置10の現像装置124では、現像室22の残留トナー量が一定量となるまでは現像室22へのトナー補給が許容され、現像室22が一定量に達すると、第1弁部材30aが閉止されて当該現像室のトナー量が一定量以下に減少するまでトナー補給が停止される。そしてその間、現像室22にトナーが過剰補給されてしまった場合にのみ、現像室22からトナー収納室24にトナーが戻される。そのため、現像室22の残留トナー量に拘わらず常に継続的に現像室22にトナーが補給されるこということが抑制される。従って、第1開口部29a及び第2開口部29bを通じて現像室22とトナー収納室24との間をトナーが継続的に循環するという現象が発生することが効果的に抑制され、当該トナーの循環が生じることによる不都合、つまり、現像ハウジング20内で新旧トナーが一様に混ざってトナー劣化が促進され、このトナー劣化に起因して残留トナー量の減少に伴い画質が悪化するという不都合をもたらすことが未然に防止される。
【0050】
そのため、この画像形成装置10によれば、上記のような現像ハウジング20内でのトナーの循環に起因するトナー劣化を回避して、より継続的に良好な画像を形成することが可能となる。
【0051】
ところで、上述した画像形成装置10は、本発明にかかる画像形成装置(本発明にかかる現像装置が適用された画像形成装置)の好ましい実施形態の例示であって、画像形成装置10や現像装置124の具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、以下のような構成を採用することもできる。
【0052】
(1)現像装置124は、図4及び図5に示すように、仕切壁28に第1開口部29aと第2開口部29bとが一列に形成されているものでもよい。図示の例では、仕切壁28の長手方向(現像ローラー31等の軸方向)の中央部分に第2開口部29bが2つ形成され、その両側にそれぞれ第2開口部29bが形成され、これら開口部29a、29bが全体として長手方向に一列に並んでいる。そして、中央2つの第2開口部29bが第2弁部材30bにより一体に開閉され、両側の第1開口部29aがそれぞれ第1弁部材30aによりそれぞれ開閉される。このような構成は、仕切壁28の上下方向寸法が小さい場合に好適である。この構成によれば、両端の第1開口部29aから現像室22にトナーが補給されながら、過剰補給されたトナーが中央の第2開口部29bからトナー収納室24に戻される。そのため、現像室22では、トナーが現像ローラー31の軸方向に沿って両端から中央に移動し、当該軸方向において新旧トナーが均一化されるという利点がある。
【0053】
(2)図2および図3した現像装置124(現像ハウジング20)の変形例として、図6に示す構成を採用してもよい。同図に示す現像ハウジング20の仕切壁28には、その長手方向の中央部分にのみ第2開口部29bが形成され、長手方向の両端部にのみ第2開口部29bが形成されている。この構成によれば、上記開口部29a、29bが上下にずれた構成の現像装置124についても、図5の例と同様に、現像室22において新旧トナーの均一化が図られる。
【0054】
なお、図5及び図6の例において、第1開口部29aと第2開口部29bとの位置関係は逆でもよい。すなわち、仕切壁28の長手方向の中央部分に第1開口部29aが形成され、その両側に第2開口部29bが形成される構成であってもよい。この場合も、トナー移動方向が逆になるだけで、図5、図6の構成と同等の作用効果を享受することができる。
【0055】
(3)トナー収納室24に余剰トナーを戻すための第2開口部29bの総開口面積が、現像室22にトナーを補給するための第1開口部29aの総開口面積よりも小さくなるように当該開口部29a、29bが形成されていているものでもよい。すなわち、現像ハウジング20内のトナー循環を抑制する上では、現像室22からトナー収納室24へのトナーの移動(還流)は、必要最小限に抑えられる(現像室22にトナーが過剰補給された場合にのみ許容され、それ以外は当該トナーの移動が規制される)方が望ましい。従って、例えば図7に示すように、第2開口部29bの総開口面積が第1開口部29aの総開口面積より小さくなるように当該開口部29a、29bを形成してもよい。この構成によれば、現像室22からトナー収納室24に必要以上にトナーが移動することが抑制される。そのため、現像ハウジング20内でのトナー循環を抑制する上で有効となる。なお、この図7の例では、仕切壁28の長手方向における第2開口部29bの両外側に第1開口部29aが位置するため、上述した図5及び図6の構成と同様に、図5の例と同様に、現像室22において新旧トナーの均一化が図られるという利点もある。
【0056】
なお、図7の例では、個々の開口部29a、29bの開口面積が同一であり、第2開口部29bよりも第1開口部29a方が多く形成されることで第2開口部29bの総開口面積が第1開口部29aの総開口面積よりも小さくされている。しかし、第2開口部29bの総開口面積が第1開口部29aの総開口面積よりも小さければ、両開口部29a、29bの数が同一であっても、図7の例と同等の作用効果を享受することができる。
【0057】
(4)また、現像ハウジング20内のトナー循環を抑制する観点から、第2開口部29bを開閉する第2弁部材30bの撓み強度が、第1開口部29aを開閉する第1弁部材30aの撓み強度よりも高くなるように当該弁部材30a、30bを構成してもよい。この構成によれば、仮に図2および図3に示すように開口部29a、29bの数が同一の構成でも、現像室22からトナー収納室24へトナーが移動し難くなるため、実質的には、図7の例と同様の作用効果、すなわち、現像室22からトナー収納室24に必要以上のトナーが移動することを抑制することができる。なお、第2弁部材30bの撓み強度を第1弁部材30aの撓み強度よりも高くするには、第2弁部材30bを第1弁部材30aよりも曲げ剛性の大きい材料で形成する、弁部材30a、30bを同一材料で形成した上で第2弁部材30bの厚みを第1弁部材30aより厚くする、若しくは、第2弁部材30bを第1弁部材30aよりも曲げ剛性の大きい形状にすることが考えられる。
【0058】
(5)現像ハウジング20の仕切壁28に形成される開口部29a、29bは、図3のように、仕切壁28の長手方向にそれぞれ複数の開口部29a、29bが断続的に形成されるもの以外に、第1開口部29aおよび第2開口部29bとして、仕切壁28の長手方向に連続的に延びる単一の開口部がそれぞれ形成されているものであってもよい。この点は、図5〜図7の例についても同じである。
【0059】
(6)また、実施形態では、画像形成装置10としていわゆる複合機について説明したが、画像形成装置は、単独のプリンタ、複写機、ファクシミリ装置、またカラー画像を形成する画像形成装置などであってもよい。また、画像形成装置は、一成分現像剤を用いて静電潜像をトナー現像するもの(一成分現像法が用いられるもの)であれば、一成分現像剤として磁性トナーを用いるものに限らず、非磁性トナーを用いるものであってもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 画像形成装置
12 画像形成部
121 感光体ドラム(像担持体)
124 現像装置
22 現像室
24 トナー収納室
28 仕切壁
29a 第1開口部
29b 第2開口部
30a 第1弁部材
30b 第2弁部材
31 現像ローラー
34 第1撹拌ローラー(第1回転部材)
36 第2撹拌ローラー(押圧部材、第2回転部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が形成された像担持体上にトナーを供給することにより前記静電潜像を現像する一成分現像に用いられる現像装置であって、
仕切壁を含みかつ当該仕切壁を挟んで前記像担持体にトナーを供給するための現像室と補給用のトナーが収納されるトナー収納室とが形成されるとともに、前記仕切壁に、前記トナー収納室から前記現像室にトナーを補給するための第1開口部および前記現像室から前記トナー収納室に余剰トナーを戻すための第2開口部が形成された現像ハウジングと、
前記現像室内に配置され、前記トナーを外周面上に保持した状態で回転することにより当該トナーを前記像担持体に供給する現像ローラーと、
前記第1開口部を前記現像室側から塞ぐように当該現像室側の前記仕切壁の壁面に沿って固定され、かつ、前記現像ローラーの回転方向における一方側端部を自由端として当該自由端が前記壁面から離れる方向に弾性的に撓み変形可能に形成された第1弁部材と、
前記第2開口部を前記トナー収納室側から塞ぐように当該トナー収納室側の前記仕切壁の壁面に沿って固定され、かつ、前記回転方向における一方側端部を自由端として当該自由端が前記壁面から離れる方向に弾性的に撓み変形可能に形成された第2弁部材と、
前記トナー収納室に配置され、当該トナー収納室内のトナーを前記第1開口部の側に押圧すべく作動する押圧部材と、を備えていることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の現像装置において、さらに、
前記現像室内の前記第1弁部材に対向する位置に配置され、前記現像ローラーと平行な軸回りに回転することで、前記第1弁部材に沿ってその固定端側から前記自由端側に向って流れるトナー流を形成する第1回転部材、又は、前記トナー収納室内の前記第2弁部材に対向する位置に配置され、前記第現像ローラーと平行な軸回りに回転することで、前記第2弁部材に沿ってその固定端側から前記自由端側に向って流れるトナー流を形成する第2回転部材の少なくとも一方を備えていることを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項2に記載の現像装置において、
前記第2回転部材がその回転に伴いトナー収納室内のトナーを前記第1開口部の側に押圧することが可能な形状を有することにより、前記第2回転部材が前記押圧部材としての機能を兼ね備えることを特徴とする現像装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の現像装置において、
前記第1弁部材は、前記第2弁部材に比べて高い撓み強度を有することを特徴とする現像装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の現像装置において、
前記第1開口部は、その総開口面積が前記第2開口部の総開口面積よりも小さくなるように形成されていることを特徴とする現像装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の現像装置において、
前記第1開口部は、前記仕切壁のうち前記現像ローラーの軸方向における中央部分に形成され、前記第2開口部は、前記軸方向における少なくとも前記第1開口部の両外側の位置に形成されていることを特徴とする現像装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の現像装置において、
前記第1開口部および前記2開口部は、前記現像ローラーの軸方向に一列に並ぶように形成されていることを特徴とする現像装置。
【請求項8】
静電潜像を形成するための像担持体と、
この像担持体上に形成された前記静電潜像を現像する、請求項1乃至7の何れか一項に記載の現像装置と、を含むことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−25096(P2013−25096A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159886(P2011−159886)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】