説明

現像装置および画像形成装置

【課題】シール部材で生じる摩擦熱によるトナーの溶融・固化を従来よりも抑制しつつ、トナーの漏出を効果的に防止することが可能な現像装置を提供すること。
【解決手段】第2スクリュー軸54の現像容器から突出した端部側を現像容器内で軸支するすべり軸受80と、すべり軸受80よりも現像容器の内部76寄りに在って、第2スクリュー軸54外周に密接し、すべり軸受80と第2スクリュー軸54との間隙から現像剤が現像容器の外部に漏出するのを防止するための第1のシール部材84と、第1のシール部材84よりもさらに現像容器の内部76寄りに在って、第2スクリュー軸54に所定の長さに渡って密接状態で環装された第2のシール部材86とを有し、第1のシール部材84をエラストマー材料で形成し、第2のシール部材86を繊維材料で形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置および画像形成装置に関し、特に、現像剤の給送にスクリューフィーダを用いる現像装置および当該現像装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式により画像を形成するプリンタ、複写機等の画像形成装置に用いられる現像装置であって、例えば、トナーと磁性キャリアとからなる二成分現像剤を使用する現像装置においては、現像剤を撹拌することによりキャリアとトナーを摩擦帯電させる。摩擦帯電によりキャリア表面にトナーが静電付着し、トナーが付着したキャリアは現像ローラの表面に磁気的に吸引される。磁気的に吸引されブラシ状になった現像剤は、現像ローラの回転によって搬送され、途中穂高規制板によって搬送量が規制された後、感光体ドラム表面に形成された静電潜像を現像する。
【0003】
現像ローラは、現像容器から外周の一部が露出するように設けられ、一方向に回転されることにより、外周面に吸引された現像剤を感光体ドラム表面と対向する領域(現像領域)まで搬送すると共に、現像に供した後の残余の現像剤を現像容器内に回収する。
ここで、現像剤の撹拌と現像剤の現像ローラへの給送の両方を効率良く行うものとして、例えば、一対のスクリューフィーダが多く用いられている。
【0004】
第1のスクリューフィーダの第1のスクリュー軸は、前記現像容器内において現像ローラと平行に対向させて設けられている。第2のスクリューフィーダの第2のスクリュー軸は、第1のスクリュー軸と平行に設けられている。前記現像容器内は、両スクリュー軸の両端部分が対向する部分以外の両スクリュー軸間が隔壁により区画されている。すなわち、隔壁の両端側は、現像剤が両スクリュー軸間を流通することができる開口部となっている。
【0005】
両スクリュー軸は、現像容器の外部に設けられたモータ等の駆動源により回転され、互いに反対の向きに現像剤を搬送する。搬送される現像剤は、各スクリュー軸の下流端部で行き場を失い対応する開口部を介して他方のスクリュー軸側へ流入するため、現像剤は現像容器内を循環することとなる。そして、第2のスクリュー軸の下流側端部にトナーが補給され、第2のスクリューで搬送される間に現像剤は十分に撹拌された上で、第1のスクリュー軸側へ流入する。流入した現像剤は、第1のスクリュー軸で現像ローラの全長に渡って給送されることとなる。
【0006】
両スクリュー軸は、前記駆動源からの動力を受け取るため、一端部が現像容器外部に突出されている。スクリュー軸が突出する現像容器部分は、内面が円筒状に形成された円筒部に形成されており、突出側端部近傍のスクリュー軸部分が前記円筒部に固定された軸受により回転自在に軸支されている。
ところで、形成される画像の高画質化の要請に伴って、トナーの粒径がより小さくなる傾向にある。このため、軸受とスクリュー軸外周との間の極僅かな間隙を介して、トナーが現像容器外部(現像装置外部)へ漏出するおそれがある。特に、現像剤の流通方向の下流側端部に軸受が存する場合には、現像剤による圧力が高いためこの問題が顕著である。
【0007】
これを防止する目的で、従来、前記円筒部内において前記軸受よりも現像容器の内部寄りに、シール部材を設けている。当該シール部材は、合成ゴムなどからなり円環状をしている。その外径は前記円筒部内径よりも大きく、内径はスクリュー軸外径よりも小さい。このシール部材を前記円筒部とスクリュー軸に圧入することにより、弾性変形させてシール部材を円筒部およびスクリュー軸に強く密着させることにより、シール性を担保している。
【0008】
しかしながら、スクリュー軸とシール部材との間の摩擦力によって生じる摩擦熱によりトナーが溶融した後固化して、大きな粒径となり、その一部が現像容器の現像剤が流通する内部に混入して、形成される画像の品質の低下を招くといった事態が生じている。また、固化したトナーは、スクリュー軸の回転トルクを増大させてしまう。特に、プロセス速度の高速化により、より多くのトナーを現像ローラに給送する必要から、スクリュー軸の回転数が高くなり、また、定着装置における省電力の要請からトナーの低融点化が図られている状況において、この問題が顕著になっている。
【0009】
これに対処するため、特許文献1に記載の現像装置では、前記シール部材のさらに現像容器の内部寄りにドーナッツ状をした100[μm]の厚みのシート材を仕切り部材として、スクリュー軸に非接触で設け、これにより、前記シール部材へのトナーの進入を防止しようとしている。また、特許文献2に記載の現像装置では、前記シール部材と同様なシール部材をさらに現像容器の内部寄りに設けた二重シール構造としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平4−291282号公報
【特許文献2】特開2000−250309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1の現像装置では、仕切り部材によって、大半のトナーがシール部材へ向って進入することは阻止できるものの、仕切り部材とスクリュー軸とは非接触のためこの間隙から、徐々にトナーが進入し、やがてシール部材に到達する。このため、シール部材において溶融したトナーが固化し、スクリュー軸の回転トルクが増大してしまう。また、特許文献2の現像装置では、軸受に近い側のシール部材へのトナーの流入は、軸受から遠い側のシール部材により阻止できるものの、遠い側のシール部材は、近い側のシール部材と同様の構成であるため、やはり、トナーの溶融・固化による上記した問題が遠い側のシール部材において生じる。
【0012】
本発明は、上記した課題に鑑み、従来よりも摩擦熱によるトナーの溶融・固化を抑制しつつ、トナーの漏出を効果的に防止することが可能な現像装置、および当該現像装置を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明に係る現像装置は、回転により現像容器内の現像剤を現像ローラへ搬送するスクリューフィーダを有し、前記スクリューフィーダを構成するスクリュー軸の一端部を、駆動源からの回転駆動力を受けるため前記現像容器から外部に突出させた構成を有する現像装置であって、前記スクリュー軸の突出した端部側を前記現像容器内で軸支する軸受と、前記軸受よりも現像容器の内部寄りに在って、前記スクリュー軸外周に密接し、前記軸受とスクリュー軸との間隙から現像剤が現像容器の外部に漏出するのを防止するための、エラストマー材料で形成された第1のシール部材と、前記第1のシール部材よりもさらに現像容器の内部寄りに在って、前記スクリュー軸に所定の長さに渡り密接状態で環装され、繊維材料で形成された第2のシール部材と、を備えることを特徴とする。
【0014】
また、上記の目的を達成するため、本発明に係る現像装置は、回転により現像容器内の現像剤を現像ローラへ搬送するスクリューフィーダを有し、前記スクリューフィーダを構成するスクリュー軸の一端部を、駆動源からの回転駆動力を受けるため前記現像容器から外部に突出させた構成を有する現像装置であって、前記スクリュー軸の突出した端部側を前記現像容器内で軸支する軸受と、前記軸受よりも現像容器の内部寄りに在って、前記スクリュー軸外周に密接し、前記軸受とスクリュー軸との間隙から現像剤が現像容器の外部に漏出するのを防止するための第1のシール部材と、前記第1のシール部材よりもさらに現像容器の内部寄りに在って、前記スクリュー軸に所定の長さに渡り密接状態で環装され、前記スクリュー軸の回転によって当該スクリュー軸外周面との間で生じる摩擦力が前記第1のシール部材よりも小さい第2のシール部材と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、前記第2のシール部材は、繊維材料で形成されていることを特徴とする。この場合に、前記繊維材料はフェルトであることを特徴とする。さらに、前記第1のシール部材、および前記第2のシール部材は、円筒状内面を有し前記軸受が設けられた軸受室内に設けられており、当該軸受室と現像剤が流通する現像容器内部とは、前記スクリュー軸が貫通する窓を有する隔壁で仕切られていて、前記第2のシール部材は、筒状をしていて、前記隔壁にその一端面が押圧され圧縮された状態で前記スクリュー軸に装着されていることを特徴とする。
【0016】
あるいは、前記第2のシール部材は、円筒状をした基材の内周面に繊維を植毛してなるものであることを特徴とする。
また、前記スクリュー軸の軸心方向における、前記第1のシール部材と前記第2のシール部材との間に、当該第2のシール部材の構成材料の前記第1のシール部材と前記スクリュー軸外周面との間への巻き込み防止のためのスペーサが設けられていることを特徴とする。
【0017】
さらに、前記第2のシール部材にフッ素系の潤滑剤が塗布または含浸されていることを特徴とする。
上記の目的を達成するため、本発明に係る画像形成装置は、上記した現像装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
上記の構成からなる現像装置によれば、エラストマー材料で形成された第1のシール部材よりも現像容器の内部寄りに在る第2のシール部材が繊維材料で形成されているため、スクリュー軸外周面との間で生じる摩擦力を、第1のシール部材よりも第2のシール部材の方が小さくできる。このため、合成ゴムなどで形成された第1のシール部材と同様のものを用いて第2のシール部材を形成した上記従来よりも、第2のシール部材での摩擦熱を低く抑えることがきる。その結果、従来よりもトナーの溶融・固化が抑制できる。また、第2のシール部材は、スクリュー軸に所定の長さに渡り密接状態で環装されているため、第1シール部材へのトナーの進入を防げるので、トナーの漏出を防止できる。
【0019】
また、上記の構成からなる現像装置によれば、第1のシール部材よりも現像容器の内部寄りに在る第2のシール部材の方が、スクリュー軸外周面との間で生じる摩擦力が小さいため、第2のシール部材として第1のシール部材と同様のものを用いた上記従来よりも、第2のシール部材での摩擦熱を低く抑えることがきる。その結果、従来よりもトナーの溶融・固化が抑制できる。また、第2のシール部材は、スクリュー軸に所定の長さに渡り密接状態で環装されているため、第1シール部材へのトナーの進入を防げるので、トナーの漏出を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態に係るタンデム型プリンタの概略構成を示す図である。
【図2】上記タンデム型プリンタを構成する作像ユニットの断面図である。
【図3】図2において、F・F線に沿って切断した現像ユニットの断面図の一部である。
【図4】(a)は、第2スクリュー軸の支持構造部分の拡大断面図であり、(b)は、第1のシール部材、第2のシール部材が第2スクリュー軸に装着される前の状態を示す図である。
【図5】変形例に係る現像装置において第2スクリュー軸を軸支するすべり軸受およびその近傍を示す断面図である。
【図6】変形例に係る第2のシール部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る定着装置およびこれを備えた画像形成装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、実施の形態に係るタンデム型プリンタ10(以下、単に「プリンタ10」と言う。)の概略構成を示す図である。なお、ここでは、プリンタを例に取り上げているが、本発明は複写機やファクシミリ等の画像形成装置にも適用できる。
【0022】
図1に示すように、プリンタ10は、筐体12内部に水平に架設され、矢印Aの方向に走行する転写ベルト14、転写ベルト14の走行方向に列設された4つの作像ユニット16C,16M,16Y,16K、各作像ユニットに対応して設けられた1次転写ローラ18C,18M,18Y,18K、および2次転写ユニット20を含み、各作像ユニット16C,16M,16Y,16Kによって形成された各色成分のトナー像を、一旦転写ベルト14に重ね合わせて転写した後、記録シートSに転写してカラー画像を形成する、いわゆる中間転写方式の画像形成装置である。
【0023】
作像ユニット16C,16M,16Y,16Kの各々は、像担持体である感光体ドラム22C,22M,22Y,22Kを中心としてその周囲に配された帯電ユニット24C,24M,24Y,24K、現像ユニット26C,26M,26Y,26Kを有している。作像ユニット20C,…,20Kの下方には、露光ユニット28が配されており、各感光体ドラム22C,…,22Kに向けて、光変調されたレーザ光LBが出射される。矢印Bの方向に回転される感光体ドラム22C,…,22Kの表面は、帯電ユニット24C,…,24Kによって一様に帯電された後、前記レーザ光LBによって露光されて、その表面に静電潜像が形成され、当該静電潜像は現像ユニット16C,…,16Kによってトナー像に現像される。なお、各現像ユニット16C,…,16Kは、レーザ光の光変調色成分に対応して、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)のトナーを現像剤として感光体ドラム22C,…,22Kに供給する。
【0024】
各感光体ドラム22C,…,22Kに形成されたトナー像は、1次転写ローラ18C,…,18Kと感光体ドラム22C,…,22Kとの間に発生する電界の作用を受けて、走行する転写ベルト14上に順次転写される。
一方、給紙カセット30からピックアップローラ32によって繰り出された記録シートSは、転写ベルト14上のトナー像が2次転写ユニット20に到達するタイミングに合わせて、レジストローラ34によって2次転写ユニット20へと搬送される。2次転写ユニット20は、転写ベルト14上に重ね合わされたトナー像を、記録シートS上へ転写する。
【0025】
記録シートS上のトナー像は、定着装置36によって定着された後、排出ローラ38によって、排紙トレイ40へ排出される。
図2に、作像ユニットの断面図を示す。なお、各色毎に設けられた4台の作像ユニット16C,16M,16Y,16Kの各々は、いずれも同様の構成であるため、以降の説明およびこれに用いる図面においては、C,M,Y,Kの符号を省略することとする。
【0026】
上記したように、作像ユニット16は、感光体ドラム22を中心としてその周囲に帯電ユニット24、現像ユニット26が配されている。
現像ユニット26は、ユニットタイプの現像装置である。現像ユニット26は、トナーと磁性キャリアとからなる二成分現像剤(以下、単に「現像剤」と言う。図2において不図示。)を収納する現像容器42を有する。
【0027】
現像ユニット26は、また、現像容器42から外周の一部が露出するように設けられた現像ローラ44を有する。後述するように撹拌され摩擦帯電されて、その表面にトナーが付着したキャリアは、現像ローラ44の表面に磁気的に吸引される。磁気的に吸引されブラシ状になった現像剤(不図示)は、矢印Eの方向に回転する現像ローラ42によって搬送され、途中、穂高規制板46によって搬送量が規制された後、感光体ドラム22表面と対向する領域(現像領域)まで搬送されて、感光体ドラム22表面に形成された静電潜像を現像する。現像に供した後の残余の現像剤は、回転する現像ローラ44によって現像容器42内に回収される。
【0028】
現像ユニット26は、現像剤の撹拌と現像剤の現像ローラ44への搬送を行うための第1スクリューフィーダ48と第2スクリューフィーダ50とを有する。第1スクリューフィーダ48を構成する第1スクリュー軸52は、現像ローラ44と平行に対向させて設けられており、第2スクリューフィーダ50を構成する第2スクリュー軸54は、第1スクリュー軸52と平行に設けられている。
【0029】
図2において、第1スクリュー軸52の軸心と第2スクリュー軸54の軸心を通るF・F線に沿って切断した現像ユニット26の断面図の一部を図3に示す。
上記したように、現像容器42内には現像剤Dが収納されている。
現像容器42には、第1スクリュー軸52と第2スクリュー軸54とが平行に設けられている。現像容器42内は、第1および第2スクリュー軸52,54の端部部分が対向する部分に開口部56を残して設けられた仕切壁58によって区画されている(仕切られている)。なお、両スクリュー軸52,54の図3には現れていないもう一端部部分が対向する部分にも開口部が開設されている(すなわち、仕切壁58では仕切られていない。)。
【0030】
第2スクリュー軸54が回転されると、現像剤Dは、当該軸心に沿い、矢印Gの向きに搬送される。第2スクリュー軸54で搬送される現像剤Dは、やがて、現像容器42の隔壁60により行く手を阻まれ、開口部56を通って第1スクリュー軸52側へ流入する。流入した現像剤Dは、回転される第1スクリュー軸52によってその軸心に沿い、矢印Jの向きに搬送される。これにより、第1スクリュー軸52と平行に配された現像ローラ44(図3では不図示)の表面に現像剤が供給される。なお、図3には現れないもう一方の上記開口部に対応する第2スクリュー軸54端部に、現像により消費されるトナーを補うため新たなトナーが補給される。補給されたトナーは、回転する第2スクリュー軸54で撹拌されながら搬送され、開口部56に至る間に十分に帯電された状態となって現像ローラ44へと供給される。
【0031】
第1スクリュー軸52および第2スクリュー軸54は、上記回転に要する動力を受けるため、一端部を現像容器42から外部へ突出させている。
そして、第1スクリュー軸52の突出端部部分には、歯車が2個軸心方向に列設されてなる歯車ユニット62が設けられている。歯車ユニット62は、全体的に略円筒状をしていてその外周に形成された第1平歯車64と第2平歯車66とを有する。歯車ユニット62の端部は、径が縮小されていて、当該縮径部62Aが、現像容器42の側端をカバーするカバー板68に形成されたボス孔70に挿入されて回転自在に支持されている。
【0032】
第2スクリュー軸54の突出端部部分には、平歯車72が設けられており、平歯車72が第2平歯車66と歯合している。
そして、図示しないモータから図示しない動力伝達機構を介して、動力が伝達され、第1平歯車64が回転されると、第1スクリュー軸52、第2平歯車66が回転する。第2平歯車66の回転に伴い、これに歯合した平歯車72が回転して第2スクリュー軸54が回転する。
【0033】
第1スクリュー軸52と第2スクリュー軸54の現像容器42から突出した上記端部側は、前記動力伝達機構からの動力を円滑に受けるため、現像容器42に軸受を介して支持されている。軸受によるスクリュー軸の支持構造は、両スクリュー軸52,54のいずれも同様であるため、第2スクリュー軸54における支持構造を代表に説明することとする。
【0034】
図4(a)に、第2スクリュー軸54の上記支持構造部分の拡大断面図を示す。また、図4(b)に、後述する第1のシール部材84、第2のシール部材86が第2スクリュー軸54に装着される前の状態を示す。なお、図4(a)、(b)において、平歯車72の図示は省略している。
現像容器42は、円筒状をした内面を有する軸受室74を有している。軸受室74と現像剤Dが流通する現像容器42の内部76とは、第2スクリュー軸54が貫通する窓78を有する隔壁60で仕切られている。
【0035】
第2スクリュー軸54を軸支するすべり軸受80は、フランジ部82を有するスリーブ軸受であり、ポリアセタール、フッ素樹脂、ナイロンその他の合成樹脂からなる。因みに、フッ素樹脂の動摩擦係数は、0.15〜0.25である。
すべり軸受80には、第1のシール部材84が一体的に設けられている。第1のシール部材は、合成ゴム、EPDM(エチレンプロピレンラバー)、シリコンゴム、フッ素系ゴムその他のエラストマー材料からなる。この内でも、特に、四ふっ化エチレン樹脂(PTFE)が耐高温性、摩耗特性に優れているため好ましい。第1のシール部材84は、リング状をしており、その径方向、外側半分は平板状に形成されており、内側半分はテーパ状に形成されている(以下、この内側半分を「テーパ部」と言う。)。前記平板状に形成されている部分が、すべり軸受80のインサート成型の際にすべり軸受80に一体的に固着されている。なお、円筒状をした、80Aで示す空洞部分は、成型の際に生じるヒケの発生を防止するためのいわゆる肉盗み(肉抜き)である。
【0036】
第2スクリュー軸54に装着される前において、第1のシール部材84の内径(テーパ部内径)は第2スクリュー軸54(のストレート部)の径よりも小さい。すべり軸受80を第2スクリュー軸54に装着すると、第1のシール部材84は第2スクリュー軸54に圧入され、前記テーパ部が径方向外方に弾性変形して広がる。テーパ部内面はその復元力で、図4(a)に示すように、第2スクリュー軸54の外周に密接し、ここで、現像剤(トナー)のすべり軸受80内周と第2スクリュー軸54外周との間の間隙への進入が阻止され、現像剤(トナー)の現像容器42外部への漏出が防止される。なお、すべり軸受80は、軸受室74に圧入されており、すべり軸受80外周面と軸受室74の内周面とは密着しているため、この部分から現像剤(トナー)が現像容器42外部への漏出することはない。
【0037】
第2スクリュー軸54には、また、第1のシール部材84よりも現像容器42の内部寄りの位置に円筒状をした第2のシール部材86が装着されている。第2のシール部材86は、繊維材料であるフェルトからなる。
第2スクリュー軸54に装着される前の第2のシール部材86の内径は、第2スクリュー軸54の(ストレート部の)外径よりも小さい。当該内径と当該外径の差は、第2のシール部材86を第2スクリュー軸54に圧入した状態で、第2のシール部材86の内周面が第2スクリュー軸54外周面を押圧する押圧力が、第1のシール部材84が第2スクリュー軸54外周面を押圧する押圧力よりも小さくなる範囲で設定される。
【0038】
また、第2のシール部材86の外径は、軸受室74の内径よりも若干大きめになっている。
第2のシール部材86は、すべり軸受80に先立って、第2スクリュー軸54に嵌め込まれ、環装される。次に、すべり軸受80が、第2のスクリュー軸54にフランジ部82が軸受室74開口部の周縁74Aに当接するまで圧入される。
【0039】
ここで、すべり軸受80のフランジ部82を除いた長さをL1、装着前の第2のシール部材86の長さをL2、軸受室74の奥行きをL3とした場合、L2<(L3−L1)の関係を満たしている。よって、すべり軸受80の上記圧入の完了状態(装着状態)で、第2のシール部材86は、すべり軸受80の端面と軸受室74内壁との間で圧縮された状態になる。
【0040】
この圧入完了状態(装着状態)において、第2のシール部材86は、第2のスクリュー軸54に所定の長さに渡り密接状態で環装されていることになる。ここで、装着状態における第2のシール部材86の第2のスクリュー軸54の軸心方向の長さは、短すぎると、現像剤(トナー)のシール性が確保できず、長すぎると、軸受室74の奥行や第2のスクリュー軸54の長さの無用な増大を招いてしまい、ひいては現像装置全体の大型化を招来してしまう。よって。前記所定の長さは、第2のシール部材86による現像剤(トナー)のシール性が確保できる必要最小限の長さとすることが好ましい。なお、この長さは、実験等により容易に求めることができる。
【0041】
上記の構成からなる第2のシール部材86は、第2スクリュー軸54の外周および隔壁60面に密接しているため、現像剤(トナー)が第1のシール部材84にまで至るのを可能な限り防止することができる。これにより、第2スクリュー軸54の回転中に第2スクリュー軸54との間で生じる摩擦力が大きいため発熱量が大きい第1のシール部材84におけるトナーの溶融を防止できる。
【0042】
また、第2のシール部材86は、繊維材料(例えば、フェルトの動摩擦係数は、0.2〜0.3である。)からなるため、エラストマー材料(例えば、合成ゴムの動摩擦係数は、0.75程度である。)からなる第1のシール部材84よりも動摩擦係数が小さく、また、上記したように第2のシール部材86が第2スクリュー軸54外周を押圧する力は、第1のシール部材86が第2スクリュー軸54外周を押圧する力よりも小さい。よって、第2スクリュー軸54の回転中に第2スクリュー軸54との間で生じる摩擦力は、第2のシール部材86の方が、第1のシール部材84よりも小さい。したがって、発生する摩擦熱も第2のシール部材86の方が、第1のシール部材84よりも低い。その結果、第2のシール部材を第1のシール部材と同じエラストマー材料で構成した場合(特許文献2)と比較して、当該第2のシール部材で生じるトナーの溶融・固化を抑制することが可能となる。
(変形例1)
図5に変形例1に係る現像装置において第2スクリュー軸54を軸支するすべり軸受80およびその近傍の断面図を示す。
【0043】
図5に示すように、変形例1では、第1のシール部材84と第2のシール部材86との間に、スペーサ88を設けている。スペーサ88は、合成樹脂からなるリング状をしており、第2スクリュー軸54との摩擦により第2のシール部材86にホツレが生じた場合に、当該ホツレ部分の第1のシール部材84への巻き込みを防止するものである。
スペーサ88の内周面と第2スクリュー軸54の外周面との間は、上記ホツレが通過しない程度に小さな間隙としている。
(変形例2)
図6に変形例2で用いる第2のシール部材の斜視図を示す。図6に示すように、変形例2に係る第2のシール部材90は、上記した第2のシール部材86と同様、全体的に円筒状をしている。
【0044】
第2のシール部材90は、円筒状をした基材92の内面に合成樹脂繊維94を植毛してなる植毛材からなる。第2のシール部材90は、例えば、基材92となる合成樹脂シートの片面に接着剤を一様な厚みで塗布し、塗布された接着剤に無数の合成樹脂繊維を植設した後、前記接着剤を硬化させてなるものをテープ状に切り取り、当該テープをリング状に丸めて、両端部同士を接着剤によって固着させてなるものである。例えば、合成樹脂繊維としてアクリル繊維を用いることができる。この場合に、植毛密度を2000[本/25mm2]とすることができる。また、合成樹脂繊維としてナイロン繊維を用いることもできる。
【0045】
上記の構成からなる第2のシール部材90も、第1および第2スクリュー軸52,54の外周と接触する部分(密接する部分)は繊維材料からなるため、エラストマー材料からなる第1のシール部材84よりも、両スクリュー軸52,54の回転中に生じる摩擦力は小さく、上述した第2のシール部材86(図4)と同様の効果が得られる。
以上、本発明を実施の形態、変形例に基づいて説明してきたが、本発明は上記したものに限らないことは勿論であり、例えば、以下の形態とすることもできる。
【0046】
(1)さらに、摩擦力を低減させるため、上記のフェルトからなる第2のシール部材86、植毛材からなる第2のシール部材90にフッ素系の潤滑剤を塗布または含浸させても構わない。例えば、フェルト自体の動摩擦係数は、上記の通り0.2〜0.3であるが、これにフッ素系の潤滑剤を含浸させると、動摩擦係数は、0.1にまで低下させることができる。
【0047】
(2)上記実施の形態では、第1のシール部材として、軸受と一体となったものを用いたが、これに限らず、軸受から独立したシール部材としても構わない。
(3)上記実施の形態では、スクリュー軸の軸受として、すべり軸受を用いたが、これに限らず、ころがり軸受を用いても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る現像装置は、例えば、プリンタ、コピー機などの電子写真方式で画像を形成する画像形成装置で用いる現像装置として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
26 現像ユニット
42 現像容器
44 現像ローラ
48 第1スクリューフィーダ
50 第2スクリューフィーダ
52 第1スクリュー軸
54 第2スクリュー軸
80 すべり軸受
84 第1のシール部材
86,90 第2のシール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転により現像容器内の現像剤を現像ローラへ搬送するスクリューフィーダを有し、
前記スクリューフィーダを構成するスクリュー軸の一端部を、駆動源からの回転駆動力を受けるため前記現像容器から外部に突出させた構成を有する現像装置であって、
前記スクリュー軸の突出した端部側を前記現像容器内で軸支する軸受と、
前記軸受よりも現像容器の内部寄りに在って、前記スクリュー軸外周に密接し、前記軸受とスクリュー軸との間隙から現像剤が現像容器の外部に漏出するのを防止するための、エラストマー材料で形成された第1のシール部材と、
前記第1のシール部材よりもさらに現像容器の内部寄りに在って、前記スクリュー軸に所定の長さに渡り密接状態で環装され、繊維材料で形成された第2のシール部材と、
を備えることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
回転により現像容器内の現像剤を現像ローラへ搬送するスクリューフィーダを有し、
前記スクリューフィーダを構成するスクリュー軸の一端部を、駆動源からの回転駆動力を受けるため前記現像容器から外部に突出させた構成を有する現像装置であって、
前記スクリュー軸の突出した端部側を前記現像容器内で軸支する軸受と、
前記軸受よりも現像容器の内部寄りに在って、前記スクリュー軸外周に密接し、前記軸受とスクリュー軸との間隙から現像剤が現像容器の外部に漏出するのを防止するための第1のシール部材と、
前記第1のシール部材よりもさらに現像容器の内部寄りに在って、前記スクリュー軸に所定の長さに渡り密接状態で環装され、前記スクリュー軸の回転によって当該スクリュー軸外周面との間で生じる摩擦力が前記第1のシール部材よりも小さい第2のシール部材と、
を備えることを特徴とする現像装置。
【請求項3】
前記第2のシール部材は、繊維材料で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記繊維材料はフェルトであることを特徴とする請求項1または3に記載の現像装置。
【請求項5】
前記第1のシール部材、および前記第2のシール部材は、円筒状内面を有し前記軸受が設けられた軸受室内に設けられており、当該軸受室と現像剤が流通する現像容器内部とは、前記スクリュー軸が貫通する窓を有する隔壁で仕切られていて、前記第2のシール部材は、筒状をしていて、前記隔壁にその一端面が押圧され圧縮された状態で前記スクリュー軸に装着されていることを特徴とする請求項4に記載の現像装置。
【請求項6】
前記第2のシール部材は、円筒状をした基材の内周面に繊維を植毛してなるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項7】
前記スクリュー軸の軸心方向における、前記第1のシール部材と前記第2のシール部材との間に、当該第2のシール部材の構成材料の前記第1のシール部材と前記スクリュー軸外周面との間への巻き込み防止のためのスペーサが設けられていることを特徴とする請求項1、3〜6のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項8】
前記第2のシール部材にフッ素系の潤滑剤が塗布または含浸されていることを特徴とする請求項1、3〜7のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の現像装置を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−25145(P2013−25145A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160749(P2011−160749)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】