説明

現像装置とそれを用いた画像形成装置及びプロセスカートリッジ

【課題】トナーの飛散や画像の地汚れがなく、常に安定してトナーの搬送を行うことができる現像装置とこれを用いた画像形成装置、現像方法、画像形成方法及びプロセスカートリッジを提供する。
【解決手段】磁気ブラシを形成して現像剤を搬送する現像剤供給部材43と、供給部材から供給されるトナーを搬送するトナー搬送部材40をニップ領域(A2)を介して対向配置し、このニップ領域内に位置する搬送部材に予め設けた電極の所定箇所を境界にしてトナーの搬送電界方向を分割して形成し、一方はトナーが現像領域(A1)へ向かうように、他方はA1と逆に向かうように現像装置を構成する。この現像装置をプロセスカートリッジ及び画像形成装置に搭載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤を搬送する現像剤供給部材と、現像剤供給部材から供給されるトナーを搬送するトナー搬送部材とを備えた現像装置に関し、特に、ニップ領域において現像剤供給部材からトナー搬送部材に供給されたトナーを、搬送電界により堆積や貼り付きなどが無く好適に現像領域へ搬送するように構成した現像装置とそれを用いた画像形成装置、プロセスカートリッジ及び現像方法と画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写装置、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置として、電子写真プロセスを用いて、潜像担持体に潜像を形成し、この潜像にトナー(以下「粉体」と表現することがある。)を付着させてトナー像として可視像化し、このトナー像を記録媒体に転写、あるいは中間転写部材に一旦転写した後、記録媒体に転写することにより画像を形成するものがある。
【0003】
このような画像形成装置において、潜像を現像する現像装置としては、従来から、現像装置内で攪拌されたトナーを現像剤担持体である現像ローラ表面に担持し、現像ローラを回転させることによって潜像担持体の表面に対向する位置まで搬送し、潜像担持体の潜像を現像し、現像終了後、潜像担持体に転写しなかったトナーは現像ローラの回転により現像装置内に回収し、新たにトナーを攪拌・帯電して再び現像ローラに担持して搬送するようにしたものが知られている。
【0004】
例えば、トナー搬送装置を基底部材と直線電極配列と交流多相電源から構成し、進行静電波パターンによって帯電したトナーを像形成表面へ供給する手法が提案されている。このトナー搬送装置は回転可能なブラシを備えており、トナー供給源から基底部材へトナーを供給するように構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、予備荷電手段によって予備荷電した現像剤を搬送電界発生手段を備えた現像剤担持送体に供給し、供給された現像剤を現像剤担持送体により搬送する手法が提案されている。この場合の予備荷電手段の一つとして、予備荷電ローラと現像剤担持送体の間で現像剤を摩擦する方法を用いて荷電している。もう一つの予備荷電手段としては、現像剤としてトナーとキャリアを用い、攪拌羽根によって摩擦接触させて荷電を行う方法を用いている。この場合、マグネットローラが内装されたスリーブローラを用いて現像剤をスリーブローラの表面に保持し、磁気ブラシの状態で現像剤担持送体に供給するように構成している(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
上記特許文献1及び特許文献2は、いずれもトナーを潜像担持体に対向する位置まで搬送し、振動、浮遊、スモーク化させて、潜像担持体との間で生じる吸引力で搬送面からトナーを分離して潜像担持体表面に付着させるようにしたものである。
しかし、特許文献1は2成分磁気ブラシから搬送電極へ帯電したトナーのみを単に供給するようにしたものであり、このような手法ではトナーの供給量が増加するとトナーが堆積して搬送できなくなる可能性がある。一方、特許文献2の予め帯電したトナーを単に搬送部材に供給して電界カーテンにより搬送する手法でも上記同様にトナー過剰供給時においてトナーが搬送部材に貼り付くという問題が発生する。
したがって、上記技術では従来から使用されている磁気ブラシローラを適用しただけであって、トナー搬送における適正条件については考慮されていないため、経時的に不安定となり、トナー搬送部材による安定したトナー搬送を行うことができないという課題がある。
【0007】
一方、本出願人は、静電気力による粉体の水平方向の移動(搬送)と垂直方向の移動(ホッピング)を含む現象を利用し、静電搬送部材の表面を、移相電界によって粉体が進行方向の成分を持って飛び跳ねる現象を利用した現像方式を用いる装置を提案している。
すなわち、この現像装置は、潜像担持体に対向して配置され、粉体を移動させる進行波電界を発生するための複数の電極を有する搬送部材を備え、搬送部材の電極には、粉体が潜像の画像部に対しては潜像担持体側に向かい、非画像部に対しては粉体が潜像担持体と反対側に向かう方向の電界を形成するn相の電位が印加されるものであり、搬送部材に対する現像剤の供給は帯電したトナーを平板上の搬送部材に直接供給するように構成している(例えば、特許文献3参照。)。
また、本出願人は、磁気ブラシローと、磁気ブラシローから供給されたトナーを感光体に搬送する現像ローラとを備えた現像装置において、トナーの帯電量個数分布を規定することにより、高品質のトナー像を形成する手法を提案している(例えば、特許文献4参照。)。
【0008】
上記特許文献3の搬送用の電極を有した搬送部材でトナーを像担持体近傍まで搬送し現像を行う手法によれば、移相電界によってトナーを搬送させる搬送部材に対してトナーを安定供給することができる。また特許文献4の手法によれば、地汚れや画像濃度不足のないトナー像が形成される。
しかし、上記現像装置では何れも供給部材について詳細な規定がなく、多量のトナーを供給すると、トナーが搬送部材上に滞留して所定のトナー搬送ができなくなるという状況が起こる可能性があり、更に好適にトナーを現像領域へ搬送できるようにすることが望まれる。
【0009】
【特許文献1】特開昭60−257461号公報
【特許文献2】特公平3−21967号公報
【特許文献3】特開2004−198675号公報
【特許文献4】特開2001−272857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術で述べたように、潜像担持体上の潜像にトナーを付着させて現像する現像装置の構成として、2成分現像剤を用いて供給部材で磁気穂(磁気ブラシ)を形成して予めトナーを帯電し、帯電したトナーを供給部材から搬送部材(搬送基板)へ供給するものが知られている。
帯電したトナーを供給部材から搬送部材に供給する場合、主に電界の力で供給部材から搬送部材の電極へトナーを移動させることになるが、この時の供給量が過剰であったりタイミングがずれたりすることにより、搬送電極上でトナーが滞留したり、搬送される現像剤量が極端に低下する場合がある。特に、供給部材から搬送基板へ供給されるトナー量が多くなり、搬送基板上にトナーが積層して多層になると搬送基板の搬送電界がトナーに作用しなくなったり、トナーが凝集して搬送基板に付着し(貼り付き)、最悪の場合にはトナーが搬送されないという問題が発生する可能性がある。
【0011】
すなわち、本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、磁気ブラシを形成して現像剤を搬送する現像剤供給部材と、該現像剤供給部材から供給されるトナーを現像領域へ搬送するトナー搬送部材とを備えた現像装置において、
現像剤供給部材により高密度状態で現像剤を搬送するとともに、常に安定して多量のトナーをトナー搬送部材に供給し、供給されたトナーをトナー搬送部材により堆積や貼り付きなどがなく経時的に安定して搬送を行うことができ、トナーの飛散や画像の地汚れがない現像装置を提供することを目的とするとともに、この現像装置を用いた画像形成装置、プロセスカートリッジ及び現像方法、画像形成方法を提供することを目的とする。
併せて、本発明の現像装置にはEH(Electrostatic transport& Hopping)現象を利用し、低電圧駆動を可能とし、高い現像効率を達成することを目的とする。
【0012】
ここで、EH現象とは、粉体が移相電界のエネルギーを与えられ、そのエネルギーが機械的なエネルギーに変換されて、粉体自身が動的に変動する現象をいう。このEH現象は、静電気力による粉体の水平方向の移動(搬送)と垂直方向の移動(ホッピング)を含む現象であり、静電搬送部材の表面を、移相電界によって粉体が進行方向の成分を持って飛び跳ねる現象であり、このEH現象を用いた現像方式をEH現像という。
【0013】
なお、本明細書において、EH現象における搬送部材上の粉体の振る舞いを区別して表現する場合、基板水平方向への移動については、「搬送」、「搬送速度」、「搬送方向」、「搬送距離」という表現を使用し、基板垂直方向への飛翔(移動)については、「ホッピング」、「ホッピング速度」、「ホッピング方向」、「ホッピング高さ(距離)」という表現を使用し、搬送部材上での「搬送及びホッピング」は「移送」と総称する。なお、搬送部材、搬送基板という用語に含まれる「搬送」は「移送」と同義である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは鋭意検討した結果、現像装置の現像剤供給部材からトナー搬送部材へトナーを供給するニップ領域におけるトナー搬送部材の搬送電界条件あるいはトナー搬送部材の配設条件を規定することにより、上記課題が解決されることを見出し本発明に至った。以下、本発明について具体的に説明する。
【0015】
すなわち、本発明は、表面に現像剤を保持し、該現像剤を搬送する現像剤供給部材と、該現像剤供給部材から供給されるトナーを潜像担持体と対向する現像領域(A1)へ搬送するトナー搬送部材とを備え、A1で潜像担持体上の潜像にトナーを付着させて現像する現像装置において、
前記現像剤供給部材と前記トナー搬送部材は、現像剤供給部材がトナーを供給するニップ領域(A2)を介して対向配置され、
該現像剤供給部材は、トナー供給電界形成用の電源(B1)に接続され、
該トナー搬送部材は、複数の電極を備えるとともに、該電極に搬送電界を形成する電源(B2)に接続され、
電源(B1)のバイアス印加により現像剤供給部材からトナー搬送部材に供給されたトナーを搬送する際、
電源(B2)のバイアス印加によりニップ領域(A2)内に位置する電極の所定箇所を境界にしてトナーの搬送電界方向を分割して形成し、一方はトナーが現像領域(A1)へ向かうように、他方はA1と逆に向かうように構成したことを特徴とする現像装置である。(請求項1)
【0016】
上記構成とすることで、現像剤供給部材から高密度状態で安定して多量のトナーがトナー搬送部材に供給され、しかも、ニップ領域(A2)内でトナーの搬送電界方向を分割することにより、トナーの搬送量が適正に規定され、トナーの堆積や貼り付きが発生することなく効率的に安定してトナー搬送を行うことができる。また、低電圧駆動が可能であり、トナーの飛散や画像の地汚れもなく、高い現像効率で高品質現像を行うことができる。
【0017】
また、本発明は、上記現像装置(請求項1)において、前記トナー搬送部材が、円筒状、ベルト状または基板状の何れかの形状を有する部材であることを特徴とする。
【0018】
上記現像装置は、円筒状、ベルト状または基板状の何れの搬送部材形状でも使用することができ、トナーの堆積や貼り付きが発生することなく効率的に安定してトナー搬送を行うことができるので、搭載される画像形成装置の構成に柔軟に対応することができる。
【0019】
また、本発明は、上記現像装置(請求項1)において、前記トナー搬送部材による現像領域(A1)へのトナー搬送方向と、現像剤供給部材による現像剤の搬送方向が逆であることを特徴とする。
【0020】
トナーの搬送方向と現像剤の供給方向とを逆にすることによって、例えば、二成分現像剤のキャリアから解離したトナーを再びキャリアや現像剤担持体に捕獲されることなくトナー搬送部材に供給し、貼り付きなどが無く、更に効率良く安定してトナーを搬送電界に乗せて搬送することができる。
【0021】
また、本発明は、上記現像装置(請求項1)において、電源(B2)のバイアス印加によりトナーの搬送電界方向を分割するニップ領域(A2)内に位置する電極の所定箇所における境界を可変とさせるようにしたことを特徴とする。
【0022】
電極の所定箇所における境界を可変とさせることにより、経時においてトナー貼り付き等が発生しても、貼り付き部を避けるようにトナーの搬送電界方向を分割する境界を変更し設定することが可能になるので、常に安定してトナー搬送を行うことができ、均一で高品質の現像を行うことが可能となる。
【0023】
また、本発明は、上記現像装置(請求項1)において、前記現像剤が、磁性キャリアと非磁性のトナーから成る二成分現像剤であり、該トナーはトナー母体表面に添加剤を被着し、その添加剤のトナー母体表面積に対する被覆率が50%以上であることを特徴とする。
【0024】
二成分現像剤は一成分現像剤と比較してトナー帯電安定性が良好であり、二成分現像剤を用いることによって現像剤担持体表面上に磁気ブラシが好適に形成され、トナーを良好にホッピングして搬送することができる。
そして、添加剤のトナー母体(樹脂を主成分とする)表面積に対する被覆率を規定することにより、トナー搬送部材に対してトナーの堆積や貼り付きが発生することなく更に効率的に、且つ安定してトナー搬送を行うことができる。
【0025】
更に、本発明は、表面に現像剤を保持し、該現像剤を搬送する現像剤供給部材と、該現像剤供給部材から供給されるトナーを潜像担持体と対向する現像領域(A1)へ搬送するトナー搬送部材とを備え、A1で潜像担持体上の潜像にトナーを付着させて現像する現像装置において、
前記現像剤供給部材と前記トナー搬送部材は、現像剤供給部材がトナーを供給するニップ領域(A2)を介して対向配置され、且つトナー搬送部材の一方の端部はニップ領域(A2)内に配設され、
該現像剤供給部材は、トナー供給電界形成用の電源(B1)に接続され、
該トナー搬送部材は、複数の電極を備えるとともに、該電極に搬送電界を形成する電源(B2)に接続され、
電源(B1)のバイアス印加により現像剤供給部材からトナー搬送部材に供給されたトナーを搬送する際、
電源(B2)のバイアス印加によりニップ領域(A2)内に配設されたトナー搬送部材の一方の端部を搬送開始点としてトナーの搬送電界方向を形成し、トナーが現像領域(A1)に向かうように構成したことを特徴とする現像装置である。(請求項6)
【0026】
上記構成とすることで、現像剤供給部材から安定して多量のトナーがトナー搬送部材に供給され、しかも、現像剤供給部材と対向配置されるトナー搬送部材の一方の端部をニップ領域(A2)内に配設し、その端部を搬送開始点としてトナーの搬送電界方向を形成することにより、トナーの搬送量が適正に規定され、トナーの堆積や貼り付きが発生することなく効率的に安定してトナー搬送を行うことができる。また、低電圧駆動が可能であり、トナーの飛散や画像の地汚れもなく、高い現像効率で高品質現像を行うことができる。
【0027】
また、本発明は、上記現像装置(請求項6)において、前記トナー搬送部材が、円筒状、ベルト状または基板状の何れかの形状を有する部材であることを特徴とする。
【0028】
現像装置(請求項1)において説明したのと同様、円筒状、ベルト状または基板状の何れの搬送部材形状でも使用することができ、安定してトナー搬送が行えるので、搭載される画像形成装置の構成に柔軟に対応することができる。
【0029】
また、本発明は、上記現像装置(請求項6)において、前記トナー搬送部材によるトナー搬送方向と、現像剤供給部材による現像剤の搬送方向が逆であることを特徴とする。
【0030】
現像装置(請求項1)において説明したのと同様、例えば、二成分現像剤のキャリアから解離したトナーを再びキャリアや現像剤担持体に捕獲されることなくトナー搬送部材に供給し、貼り付きなどが無く、更に効率良く安定してトナーを搬送電界に乗せて搬送することができる。
【0031】
また、本発明は、上記現像装置(請求項6)において、前記現像剤が、磁性キャリアと非磁性のトナーから成る二成分現像剤であり、該トナーはトナー母体表面に添加剤を被着し、その添加剤のトナー母体表面積に対する被覆率が50%以上であることを特徴とする。
【0032】
現像装置(請求項1)において説明したのと同様、二成分現像剤を用いることによって現像剤担持体表面上に磁気ブラシが好適に形成され、トナーが良好に搬送される。
そして、添加剤の被覆率を規定することにより、トナー搬送部材に対してトナーの堆積や貼り付きが発生することなく更に効率的且つ安定してトナー搬送を行うことができる。
【0033】
また、本発明は、上記何れかに記載の現像装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
に係るものである。
【0034】
上記画像形成装置によれば、前記何れかに記載の現像装置を備えているので、トナーの飛散や地汚れなどもなく、経時におけるトナーの安定供給が達成され、画像品質を向上することができ、更に、装置の小型化、低コスト化を図ることができる。
【0035】
また、本発明は、電子写真プロセスにおける潜像担持体、帯電手段、クリーニング手段のうちの少なくとも一つと、上記何れかに記載の現像装置を一体に保持したことを特徴とするプロセスカートリッジに係るものである。
【0036】
上記構成のプロセスカートリッジによれば、低電圧駆動が可能であり、高い現像効率で高品質現像を行うことができ、装置の小型化、メンテナンス性の向上が図れ、適宜交換することにより、常に安定した現像を行うことができる。
【0037】
また、本発明は、上記記載のプロセスカートリッジを備えていることを特徴とする画像形成装置に係るものである。
【0038】
上記プロセスカートリッジを備えた画像形成装置によれば、カートリッジを適宜交換することにより、常に安定した高品質の画像を形成することができる。更に、メンテナンス性が良好で、装置の小型化、低コスト化を図ることができる。
【0039】
また、本発明は、前記何れかに記載の現像装置により、潜像担持体上の潜像にトナーを付着させて現像することを特徴とする現像方法に係るものである。
【0040】
上記現像方法によれば、経時においてもトナー搬送部材に対してトナーの堆積や貼り付きが発生することなく安定してトナー搬送を行うことができ、トナーの飛散や画像の地汚れもなく、現像品質が向上する。
【0041】
また、本発明は、上記記載の現像方法を用いたことを特徴とする画像形成方法に係るものである。
【0042】
上記画像形成方法によれば、低電圧駆動が可能であり、高い現像効率で高品質現像を行うことができるとともに、常に安定して高品質の画像を形成することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明に係る現像装置によれば、経時においてもトナーの供給を安定して行うことができる現像品質の高い現像装置が提供される。また、低電圧で現像することができるため、潜像担持体の耐久性が向上するとともに、環境問題を回避することができる。
本発明に係る画像形成装置によれば、画像品質を向上することができ、装置の小型化、低コスト化が図れる。
本発明に係るプロセスカートリッジによれば、メンテナンス性の向上、装置の小型化が図れる。
本発明に係るプロセスカートリッジを備えた画像形成装置によれば、画像品質を向上することができる。プロセスカートリッジを複数備えれば、フルカラー画像形成装置を構成することができる。
本発明に係る現像方法によれば、トナー供給を安定して行うことができるとともに、高い現像効率で高品質現像を行うことができる。
本発明に係る画像形成方法によれば、低電圧駆動、トナーの飛散抑制などによる高品質現像により、高画質画像を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
前述のように本発明における現像装置は、表面に現像剤を保持し、該現像剤を搬送する現像剤供給部材と、該現像剤供給部材から供給されるトナーを潜像担持体と対向する現像領域(A1)へ搬送するトナー搬送部材とを備え、A1で潜像担持体上の潜像にトナーを付着させて現像する現像装置において、
前記現像剤供給部材と前記トナー搬送部材は、現像剤供給部材がトナーを供給するニップ領域(A2)を介して対向配置され、
該現像剤供給部材は、トナー供給電界形成用の電源(B1)に接続され、
該トナー搬送部材は、複数の電極を備えるとともに、該電極に搬送電界を形成する電源(B2)に接続され、
電源(B1)のバイアス印加により現像剤供給部材からトナー搬送部材に供給されたトナーを搬送する際、
電源(B2)のバイアス印加によりニップ領域(A2)内に位置する電極の所定箇所を境界にしてトナーの搬送電界方向を分割して形成し、一方はトナーが現像領域(A1)へ向かうように、他方はA1と逆に向かうように構成したことを特徴とする。
【0045】
また、本発明における現像装置は、表面に現像剤を保持し、該現像剤を搬送する現像剤供給部材と、該現像剤供給部材から供給されるトナーを潜像担持体と対向する現像領域(A1)へ搬送するトナー搬送部材とを備え、A1で潜像担持体上の潜像にトナーを付着させて現像する現像装置において、
前記現像剤供給部材と前記トナー搬送部材は、現像剤供給部材がトナーを供給するニップ領域(A2)を介して対向配置され、且つトナー搬送部材の一方の端部はニップ領域(A2)内に配設され、
該現像剤供給部材は、トナー供給電界形成用の電源(B1)に接続され、
該トナー搬送部材は、複数の電極を備えるとともに、該電極に搬送電界を形成する電源(B2)に接続され、
電源(B1)のバイアス印加により現像剤供給部材からトナー搬送部材に供給されたトナーを搬送する際、
電源(B2)のバイアス印加によりニップ領域(A2)内に配設されたトナー搬送部材の一方の端部を搬送開始点としてトナーの搬送電界方向を形成し、トナーが現像領域(A1)に向かうように構成したことを特徴とする。
【0046】
上記本発明の現像装置によれば、経時においてもトナーを安定して搬送を行うことができ、トナーの飛散や画像の地汚れのない高品質現像を高い現像効率で行うことができる。
また、EH現象を利用した低電圧駆動で現像することができるため、潜像担持体の耐久性が向上するとともに、NOxなどの発生がなく環境問題を回避することができる。
【0047】
ここで、上記トナー搬送部材は、円筒状やベルト状(無端状部材)または基板状の何れの形状でもよい。なお、円筒状部材とはローラ等を含み真円である必要はない。
現像装置に用いるトナー搬送部材を円筒状やベルト状(無端状部材)または基板状等、多様な形状とすることが可能であるため、画像形成装置の設計がどのような構成であっても本発明の現像装置が実現できて搭載が可能となり、仕様に対して柔軟に対応することができる。
なお、無端状部材における「無端」は端部のない部材形状を示すものであり、本発明で表現する「トナー搬送部材の一方の端部」における部材全体構造の端部とは別である。
【0048】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。先ず、図1を参照して説明する。図1は、本発明に係る現像装置の第1実施形態を説明するための概略構成図である。
なお、第1実施形態は、上記電源(B2)のバイアス印加によりニップ領域(A2)内に位置する電極の所定箇所を境界にしてトナーの搬送電界方向を分割して形成し、一方はトナーが現像領域(A1)へ向かうように(正方向)、他方はA1と逆に向かうように構成した現像装置の場合である。
【0049】
図1の現像装置34において、現像剤供給部材である磁気ブラシローラ43は、複数の磁極を有する磁石部材47を内蔵した非磁性の回転可能なスリーブ48で構成されている。磁石部材47は固定配置され、現像剤62がスリーブ48上の所定箇所を通過するときに磁力が作用するようになっている。本実施形態で用いたスリーブ48は、直径がφ18mmであり、表面粗さRz(十点平均粗さ)が10〜20μmの範囲に入るようにサンドブラスト処理されている。なお、現像剤62は、磁性キャリア(磁性粒子)61と非磁性のトナー(トナー)60から成る二成分現像剤であり、後述するように、トナーはトナー母体表面に帯電制御剤と添加剤を被着し、その添加剤のトナー母体表面積に対する被覆率が50%以上のものを使用している。
【0050】
磁気ブラシローラ43に内蔵された磁石部材47は、規制ブレード46による規制箇所から磁気ブラシローラ43の回転方向にN極(N1)、S極(S1)、N極(N2)、S極(S2)、S極(S3)の5つの磁極を有する。なお、磁石部材47の磁極の配置は、図1の構成に限定されるものではなく、磁気ブラシローラ43の周囲に設けられた規制ブレード46等の配置に応じて他の配置に設定してもよい。例えば、図2の別の概略構成図に示すように、規制ブレード46による規制箇所から磁気ブラシローラ43の回転方向にN極(N1)、S極(S1)、N極(N2)、S極(S2)の4つの磁極を配置してもよい。また、図1の現像装置34の例では、磁石部材47を固定配置しスリーブ48を回転駆動するように構成したが、スリーブ48を固定配置し、その内側のローラ状の磁石部材を回転させるように構成してもよい。
【0051】
上記磁石部材47の磁力により、スリーブ48上にトナー60及び磁性粒子61からなる現像剤62がブラシ状に担持される。そして、磁気ブラシローラ43上の磁気ブラシ中のトナー60は、磁性粒子61と混合されることで規定の帯電量を得る。この磁気ブラシローラ43上のトナーの帯電量としては、−10〜−40[μC/g]の範囲が好適である。
【0052】
上記磁性粒子61は金属もしくは樹脂をコアとしてフェライト等の磁性材料を含有し、表層はシリコン樹脂等で被覆されたものである。磁性粒子61の粒径は20〜50μmの範囲が好適である。また、磁性粒子61の抵抗は、ダイナミック抵抗DRで104〜1015Ωの範囲が好適である。
【0053】
ここで、上記磁性粒子61のダイナミック抵抗DRの測定は、図3に示す測定装置を用いて、以下のように行うことができる。なお、図3は磁性粒子のダイナミック抵抗DRを測定する装置構成を示す模式図である。
先ず、接地した台座200の上方に、固定磁石を所定位置に内蔵した直径φ20mmの回転可能なスリーブ201をセットする。このスリーブ201の表面には、幅W=65mm及び長さL=0.5〜1mmの対向面積を有する対向電極(ドクタ)202を、ギャップg=0.9mmで対向させる。次に、スリーブ201を回転速度600rpm(線速628mm/sec)で回転駆動し始める。そして、回転しているスリーブ201上に測定対象の磁性粒子を所定量(14g)だけ担持させ、該スリーブ201の回転により該磁性粒子を10分間攪拌する。次に、スリーブ201に電圧を印加しない状態で、スリーブ201と対向電極202との間を流れる電流IRII[A]を電流計203で測定する。次に、直流電源204からスリーブ201に耐圧上限レベル(高抵抗シリコンコートキャリアでは400Vから鉄粉キャリアでは数V)の印加電圧E[V]を5分間印加する。本実施形態では200Vを印加した。そして、電圧Eを印加した状態でスリーブ201と対向電極202との間を流れる電流IRQ[A]を電流計203で測定する。
これらの測定結果から、次式(1)を用いてダイナミック抵抗DR[Ω]を算出することができる。なお、式中(1)中、DRはダイナミック抵抗を、Eは印加電圧を示す。
DR=E/(IRQ−IRII) …(1)
【0054】
また、前述の図1におけるトナー搬送部材(搬送部材)40は、現像剤供給部材(磁気ブラシローラ)43内の磁極N2に隣接するトナー供給領域(トナーを供給するニップ領域)A2で磁気ブラシローラ43上の磁気ブラシと接触するようにして対向するとともに、現像領域A1で潜像担持体(感光体)31に対向するように配設されている。すなわち、搬送部材42は、現像領域A1にトナーを搬送する。
【0055】
また、本実施形態では規制ブレード46と磁気ブラシローラ43の間の最近接部における間隔が500μmに設定され、また規制ブレード46に対向した磁石部材47の磁極N1を、規制ブレード46との対向位置よりも磁気ブラシローラ43の回転方向上流側に数度傾斜して位置している。これにより、ケーシング41内における現像剤62の循環流を容易に形成することができる。
【0056】
上記規制ブレード46は、磁気ブラシローラ43との対向部で磁気ブラシローラ43上に形成された現像剤62の量を規制するように磁気ブラシと接触し、所定量の現像剤がトナー供給領域に搬送されるようにするとともに、現像剤62中のトナー60と磁性粒子61との摩擦帯電を促進させている。
【0057】
また、磁気ブラシローラ43は図示しない回転駆動装置により図1(図2も同様)の矢印c方向に回転駆動され、トナー供給ニップ領域(トナー供給領域)A2でトナー60のみが供給される。また、トナー供給領域A2におけるトナー搬送部材42と磁気ブラシローラ43のスリーブとのギャップは1.1mmに設定した。
【0058】
また、トナー搬送部材(搬送部材)42に設けられた輸送電界を形成するための電極には、電源(B2)49が接続され複数の電圧が印加されている。また、現像剤供給部材(磁気ブラシローラ)43のスリーブ48には、トナー供給領域A2にトナー供給用電界を形成するためのトナー供給バイアスVVXSを印加する電源(B1)50が接続されている。
【0059】
次に、上記構成の現像装置34の動作を説明する。
図1のケーシング41内に収容された現像剤62は、トナー60と磁性粒子61が混合されたものであり、攪拌・搬送部材44,45や磁気ブラシローラ43のスリーブ48の回転力、磁石部材47の磁力によって攪拌され、そのときに、トナー60に磁性粒子61との摩擦帯電により電荷が付与される。
【0060】
一方、磁気ブラシローラ43上に担持された現像剤62は規制ブレード46によって規制され、トナー供給ニップ領域A2では、磁気ブラシ中のトナーが分離されて、トナー60の一定量がトナー供給バイアスで形成された電界等によって搬送部材に転移し、残りはケーシング41内に戻される。
【0061】
本実施形態における現像剤供給部材(磁気ブラシローラ)の供給能力は、電位差1000[V]で0.6[mg/cm2]が供給される。ここでスリーブ48の回転線速は、40[cm/s]であり、幅1cm当たりの搬送能力は、0.6[mg/cm2]×40[cm/s]=24[mg/cm・s]となる。またこの時、トナー搬送部材上を搬送されるトナー量は、搬送部材の終端で2秒間に搬送された量から計算すると、供給と同様に2.4[mg/cm・s]であった。しかし、該磁気ブラシローラ403に印加する電圧を上げていくと供給能力は15[mg/cm・s]を超えたところで搬送部材上にトナーが積層して滞留してしまった。
【0062】
ところが、図4(a)、(b)に示すようにトナー搬送部材(搬送部材)40における搬送方向を決めるバイアス印加の順番がトナー供給ニップ領域(ニップ領域)A2の一箇所を境にして、現像領域A1に向かう搬送方向(正方向)と、現像領域に対して逆方向に向かう、いわゆる双方向に移動できるように配設、制御することで供給ニップ領域で供給されたトナーは境界において両方向へ移動するようになる。
【0063】
すなわち、図4(a)に示すように現像材供給部材(供給部材)43と搬送部材40の間において現像剤62の存在するニップ領域A2で、図4(b)に示すように搬送部材を分割して現像領域へ搬送する正方向と、前者と逆方向の供給領域内へトナーを移動させることが可能となるように搬送部材を構成する。
図4(a)において供給部材から搬送部材へ供給されたトナーは現像領域A1へ搬送されるが、逆方向へ搬送されたものはニップ領域A2内で再度磁気ブラシと接触することにより磁気ブラシに回収され、供給ローラを含む供給部へ戻る。
【0064】
上記構成により実質上、搬送量が低減されて搬送部材上に多層のトナー層が形成されなくなってトナーの堆積や貼り付きが発生しにくくなり、円滑にトナーを搬送することが可能となる。
【0065】
上記現像装置構成において、トナー搬送部材による現像領域(A1)へのトナー搬送方向と、現像剤供給部材による現像剤の搬送方向が逆であることが好ましい。
トナーの搬送方向と現像剤の供給方向とを逆にすることによって、効率良く安定してトナーを搬送電界に乗せて搬送することができる。例えば、二成分現像剤のキャリア(磁性粒子)から解離したトナーを再びキャリアや現像剤担持体に捕獲されることなくトナー搬送部材に供給することができる。したがって、更に効率良く安定してトナーを搬送電界に乗せて搬送することができる。
【0066】
また、上記現像装置構成において、電源(B2)のバイアス印加によりトナーの搬送電界方向を分割するニップ領域(A2)内に位置する電極の所定箇所における境界を可変とするのが好ましい。
すなわち、電極の所定箇所における境界を可変とさせることにより、時間経過とともにトナーの体積や貼り付き等が生じたとしても、トナーの搬送電界方向を分割する境界を変更し、この貼り付き部を避けるように設定できるため、好適な条件で安定して継続的なトナー搬送を行うことができる。
【0067】
次に、本発明に係る現像装置の第2実施形態について図5を参照して説明する。図5は、本発明に係る現像装置の第2実施形態を説明するための模式図である。
なお、第2実施形態は、現像剤供給部材と対向配置されるトナー搬送部材の一方の端部をニップ領域(A2)内に配設し、この端部を搬送開始点としてトナーの搬送電界方向を形成してトナーが現像領域(A1)に向かうように構成した現像装置の場合である。
【0068】
上記のように本第2実施形態ではトナー搬送部材である搬送基板端部がトナー供給幅中に存在する。図5に示すように、搬送基板である場合、搬送基板のトナー搬送開始点とする一方の端部をトナー供給ニップ領域(A2)内に設定配置し、供給ニップを形成する磁気ブラシの幅を減らして供給を行うものである。例えば、供給部における磁気ブラシの最近接領域でほぼ中央部に搬送基板の一方の端部を搬送開始点として配置することにより、供給されるトナーが半減し、またトナー供給領域が狭まるのでトナーの供給が適正とされ、多層に堆積することなく必要とされるトナー量が制御されて安定、且つ確実に搬送される。
【0069】
すなわち、トナー搬送部材の一方の端部をニップ領域(A2)内に配設することにより、第1実施形態のようにニップ領域(A2)内でトナーの搬送電界方向を分割することなく、トナーの搬送量が適正に規定され、効率的に安定してトナー搬送を行うことができる。
【0070】
なお、第2実施形態における動作は、トナー搬送部材の一方の端部を搬送開始点としてトナーの搬送電界方向を形成し、好適なトナー量で現像領域(A1)に向かうように制御すること以外は、実施形態1と基本的な原理は同じであることから、詳細説明を省略する。
また、第2実施形態の現像装置構成において、トナー搬送部材による現像領域(A1)へのトナー搬送方向と、現像剤供給部材による現像剤の搬送方向が逆であることが好ましい。理由は前記第1実施形態の場合と同様である。
【0071】
次に、本発明の現像装置に用いられる現像材とトナーについて説明する。
図1、2で示したように、現像剤62は(磁性粒子)61と非磁性のトナー(トナー)60から成る二成分現像剤が好ましい。
トナーは樹脂を主成分とするトナー母体表面に添加剤を被着し、その添加剤のトナー母体表面積に対する被覆率が50%以上であるものが好適である。
ここで、トナー母体の表面を覆う添加剤の被覆率は、下記式(2)で与えられる。
【0072】
【数1】

【0073】
上記式(1)において、Tnは添加剤の被覆率、Cはトナー母体に対する添加剤の添加量(wt%)、rは添加剤の粒径、Rはトナーの粒径、ρ、ρRはそれぞれ添加剤の比重とトナーの比重を表す。
【0074】
ρを1、ρRを1とし、それぞれ実際に6μm径のトナーに0.1μm径の添加剤を添加したと仮定し、添加量Cを変化させて上記式(2)により被覆率を求めると、添加量と被覆率の関係は図6のグラフに示すような結果となり、3wt%の添加量で被覆率が約50%になる。
また、図7は、使用したトナーの添加剤被覆率に対する貼り付きの発生度合いを比較したものであり、添加剤量が多い場合、すなわち、被覆率が50%以上とすることで、トナーが搬送され易く流動性が高まり、トナー搬送部材における貼り付きの余裕度を広げることが可能となる。
【0075】
前記現像剤62を構成するトナー60は、ポリエステル、ポリオ−ル、スチレンアクリル等の樹脂に帯電制御剤(CCA)及び色剤を混合したものであり、その周りにシリカ、酸化チタン等の外添剤を添加することで流動性を高めている。
添加剤の粒径は、通常0.1〜1.5μmの範囲である。用いられる色剤としては、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、キナクリドン、カーミン等を挙げることができる。トナー60として、更に必要に応じてワックス等を分散混合させた母体トナーに上記各種添加剤を外添しているものも使用することができる。
【0076】
トナー60の体積平均粒径は3〜12μmの範囲が好適である。本実施形態で用いたトナーの体積平均粒径は3〜7μmであり、この範囲の粒径を用いることによって1200dpi以上の高解像度の画像にも十分対応することが可能である。
また、本実施形態では、帯電極性が負極性のトナー60を使用しているが、潜像担持体(感光体)31の帯電極性などに応じて帯電極性が正極性のトナーを使用してもよい。
【0077】
次に、トナー搬送部材が基板状(搬送基板)であるものを例として、現像装置における現像領域とその前後の領域におけるトナーの搬送等について図8を参照して詳しく説明する。
現像装置は、(感光体ドラム)10と、表面に現像剤を保持し磁気ブラシを形成して搬送する図示しない現像剤供給部材から供給されたトナーTを搬送、ホッピング、回収するための電界を発生する複数の電極102を有するトナー搬送部材(搬送基板)1と、を備えている。なお、搬送基板1はトナーを潜像担持体と対向する現像領域(A1)へ搬送する。そして、この搬送基板1は図示しない電源(B2)の駆動回路2から所要の電界を発生させるためのn相(ここでは3相とする。)の異なる駆動波形Va1〜Vc1及びVa2〜Vc2が印加される。
【0078】
ここでは、搬送基板1は、駆動波形Va1〜Vc1及びVa2〜Vc2を与える電極102の範囲及び潜像担持体である感光体ドラム10との関係において、トナーTを感光体ドラム10近傍まで移送する搬送領域11、感光体ドラム1の潜像にトナーTを付着させてトナー像を形成するための現像領域12、トナーTを搬送基板1側に回収するための現像領域通過後の領域(これを、以下「回収領域」という。)13とに分けられる。
【0079】
そして、この現像装置における搬送基板1の搬送領域11ではトナーTを感光体ドラム10の近傍まで移送し、現像領域12では感光体ドラム10上の潜像の画像部に対してはトナーTがドラム10側に向かい、非画像部に対してはトナーTがドラム10と反対側(搬送基板側)に向かう方向の電界を形成して、トナーTを潜像に付着させて現像を行うための電界を発生し、回収領域13ではトナーTが潜像の画像部及び非画像部のいずれに対しても感光体ドラム10と反対側(搬送基板側)に向かう方向の電界を形成する。
【0080】
これにより、現像領域12では潜像担持体(感光体ドラム)10上の潜像にトナーが付着して可視像化され、現像に寄与しなかったトナーは感光体ドラム10の回転方向(移動方向)下流側の回収領域で搬送基板1側に回収されるので、飛散トナーの発生が防止される。なお、回収領域13は現像領域12よりも潜像担持体10の移動方向下流側とすることで、確実に浮遊トナーの回収を行うことができる。
【0081】
そこで、先ず、図8に示す現像装置における搬送基板1の構成について図9乃至図13を参照して詳細に説明する。なお、図9は、図8の搬送基板1の構成を説明するための平面展開図、図10は図9のA−A線に沿う断面図、図11は図9のB−B線に沿う断面図、図12は図9のC−C線に沿う断面図、図13(6)は図9のD−D線に沿う断面図である。
【0082】
この搬送基板1は、ベース基板(支持基板)101上に3本の電極(搬送電極)102a、102b、102c(これらを「電極102」とも総称する。)を1セットとして、所定の間隔で、トナー移送方向(トナー進行方向、トナー移動方向:図9、図10で矢示方向とする。)に沿ってトナー移送方向と略直交する方向に繰り返し形成配置し、この上に搬送面を形成する絶縁性の搬送面形成部材となり、電極102の表面を覆う保護膜となる、無機または有機の絶縁性材料で形成した表面保護層103を積層したものである。なお、ここでは、表面保護層103が搬送面を形成しているが、表面保護層103上に更に粉体(トナー)との適合性に優れた表面層を別途成膜することもできる。
【0083】
これらの電極102a、102b、102cの両側には、電極102a、102b、102cとそれぞれ両端部で相互接続した共通電極105a、105b、105c(これらを「共通電極105」とも総称する。)をトナー移送方向に沿って、すなわち、個々の電極と略直交する方向に設けている。この場合、共通電極105の幅(この幅は、トナー移送方向と直交する方向の幅)は電極102の幅(この幅は、トナー移送方向に沿う方向の幅)よりも広くしている。なお、図9では、共通電極105を、搬送領域11では共通電極105a1、105b1、105c1を、現像領域12では共通電極105a2、105b2、105c2、回収領域13では共通電極105a3、105b3、105c3と、区別して表記している。
【0084】
ここでは、支持基板101上に共通電極105a、105b、105cのパターンを形成した後層間絶縁膜107(表面保護層103と同じ材料でも異なる材料のいずれでもよい。)を形成し、この層間絶縁膜107にコンタクトホール108を形成した後、電極102a、102b、102cを形成することによって電極102a、102b、102cと共通電極105a、105b、105cとをそれぞれ相互接続している。
【0085】
なお、電極102aと共通電極105aを一体形成したパターン上に層間絶縁膜を形成し、この層間絶縁膜上に電極102bと共通電極105bを一体形成したパターンを形成し、更に層間絶縁膜を形成して、この層間絶縁膜上に電極102cと共通電極105cを一体形成したパターンを形成する、つまり、電極を三層構造とすることもでき、あるいは、一体形成に相互接続とコンタクトホールによる相互接続とを混在させることもできる。
【0086】
更に、これらの共通電極105a、105b、105cには図示しないが駆動回路2からの駆動信号(駆動波形)Va、Vb、Vcを入力するための駆動信号印加用入力端子を設けている。この駆動信号入力用端子は、支持基板101に裏面側に設けてスルーホールを介して共通電極105に接続してもよいし、あるいは後述する層間絶縁膜107上に設けてもよい。
【0087】
ここで、支持基板101としては、ガラス基板、樹脂基板あるいはセラミックス基板等の絶縁性材料からなる基板、あるいは、SUSなどの導電性材料からなる基板にSiO2等の絶縁膜を成膜したもの、もしくはポリイミドフィルムなどのフレキシブルに変形可能な材料からなる基板などを用いることができる。
【0088】
電極102は、支持基板101上にAl、Ni−Cr等の導電性材料を0.1〜10μmの厚さ、好ましくは0.5〜2.0μmで成膜し、これをフォトリソ技術等を用いて所要の電極形状にパターン化して形成している。これら複数の電極102の粉体(トナー)進行方向における幅Lは移動させる粉体の平均粒径の1倍以上20倍以下とし、且つ、電極102と102間の粉体(トナー)進行方向の間隔Rも移動させる粉体の平均粒径の1倍以上20倍以下としている。
【0089】
表面保護層103としては、例えば、SiO2、TiO2、TiO4、SiON、BN、TiN、Ta25などを厚さ0.5〜10μm、好ましくは厚さ0.5〜3μmで成膜して形成している。また、無機ナイトライド化合物、例えば、SiN、Bn、Wなどを用いることができる。特に、表面水酸基が増えると帯電トナーの帯電量が搬送途中で下がる傾向にあるので、表面水酸基(SiOH、シラトール基)が少ない無機ナイトライド化合物が好ましい。
【0090】
次に、このように構成した搬送基板1におけるトナーの静電搬送の原理について説明する。
搬送基板1の複数の電極102に対してn相の駆動波形を印加することにより、複数の電極102によって移相電界(「進行波電界」あるいは「搬送電界」と同じ)が発生し、搬送基板1上の帯電したトナーは反発力及び/または吸引力を受けて移送方向にホッピングと搬送を含んで移動する。
【0091】
例えば、搬送基板1の複数の電極102に対して、図14に示すようにグランドG(0V)と正の電圧+との間で変化する3相のパルス状駆動波形(駆動信号)Va(A相)、Vb(B相)、Vc(C相)をタイミングをずらして印加する。
【0092】
このとき、図15に示すように、搬送基板1上に負帯電トナーTがあり、搬送基板1の連続した複数の電極102に同図に(1)で示すようにそれぞれ「G」、「G」、「+」、「G」、「G」が印加されたとすると、負帯電トナーTは「+」の電極102上に位置する。
【0093】
次のタイミングで複数の電極102には(2)に示すようにそれぞれ「+」、「G」、「G」、「+」、「G」が印加され、負帯電トナーTには同図で左側の「G」の電極102との間で反発力が、右側の「+」の電極102との間で吸引力がそれぞれ作用するので、負帯電トナーTは「+」の電極102側に移動する。更に、次のタイミングで複数の電極102には(3)に示すようにそれぞれ「G」、「+」、「G」、「G」、「+」が印加され、負帯電トナーTには同様に反発力と吸引力がそれぞれ作用するので、負帯電トナーTは更に「+」の電極102側に移動する。
【0094】
このように複数の電極102に電圧の変化する複相の駆動波形を印加することで、搬送基板1上には進行波電界(搬送電界)が発生し、この進行波電界の進行方向に負帯電トナーTは搬送及びホッピングを行いながら移動する。なお、正帯電トナーの場合には駆動波形の変化パターンを逆にすることで同様に同方向に移動する。
【0095】
更に図16を参照して具体的に説明すると、同図(a)に示すように、搬送基板1の電極A〜Fがいずれも0V(G)で搬送基板1上に負帯電トナーTが載っている状態から、同図(b)に示すように電極A、Dに「+」が印加されると、負帯電トナーTは電極A及び電極Dに吸引されて電極A、D上に移る。次のタイミングで、同図(c)に示すように、電極A、Dがいずれも「0」になり、電極B、Eに「+」が印加されると、電極A、D上のトナーTは反発力を受けるとともに、電極B、Eの吸引力を受けることになって、負帯電トナーTは電極B及び電極Eに移送される。更に、次のタイミングで、同図(d)に示すように、電極B、Eがいずれも「0」になり、電極C、Fに「+」が印加されると、電極B、E上のトナーTは反発力を受けるとともに、電極C、Fの吸引力を受けることになって、負帯電トナーTは電極C及び電極Fに移送される。このように進行波電界によって負帯電トナーは順次図において右方向に移送されることになる。
【0096】
次に、駆動回路2の全体構成について図17を参照して説明する。
この駆動回路2は、パルス信号を生成出力するパスル信号発生回路21と、このパルス信号発生回路21からのパルス信号を入力して駆動波形Va1、Vb1、Vc1を生成出力する波形増幅器22a、22b、22cと、パルス信号発生回路21からのパルス信号を入力して駆動波形Va2、Vb2、Vc2を生成出力する波形増幅器23a、23b、23cとを有する。
【0097】
パルス信号発生回路21は、例えば、ロジックレベルの入力パルスを受けて、各120°に位相シフトした2組みパルスで、次段の波形増幅器22a〜22c、23a〜23cに含まれるスイッチング手段、例えばトランジスタを駆動して100Vのスイッチングを行うことができるレベルの出力電圧10〜15Vのパルス信号を生成して出力する。
【0098】
波形増幅器22a、22b、22cは、図8に示した搬送領域11の各電極102及び回収領域13の各電極102に対して、例えば図18に示すように、各相の+100Vの印加時間taを繰り返し周期tfの1/3である約33%に設定した(これを「搬送電圧パターン」または「回収搬送電圧パターン」という。)3相の駆動波形(駆動パルス)Va1、Vb1、Vc1を印加する。
【0099】
波形増幅器23a、23b、23cは、現像領域11の各電極102に対して、例えば、図19または図20に示すように、各相の+100Vまたは0Vの印加時間taを繰り返し周期tfの2/3である約67%に設定した(これを「ホッピング電圧パターン」という。)3相の駆動波形(駆動パルス)Va2、Vb2、Vc2を印加する。
【0100】
次に、現像バイアスについて説明する。
上記説明したようにEH現像ではトナーをホッピングさせることによって潜像担持体の静電潜像を一成分現像方式で反転現像を行うことができる。すなわち、現像領域で、トナーが潜像の画像部に対しては潜像担持体側に向かい、非画像部に対してはトナーが潜像担持体と反対側に向かう方向の電界を形成する手段を備えることによって現像を行うことができる。
【0101】
例えば、前述した図20に示すホッピング電圧パターンの駆動波形のように、0〜−100Vで遷移するパルス状電圧波形である場合、潜像担持体上の非画像部電位が−100Vより低いときには、画像部に対してはトナーが潜像担持体側に向かい、非画像部に対してはトナーが潜像担持体と反対側に向かうことになる。この場合、潜像の非画像部の電位を−150Vや後述する−170Vとした場合に、トナーが潜像担持体側に向かうことが確認された。
【0102】
また、ホッピング電圧パターンの駆動波形が20V〜−80Vで遷移するパルス状電圧波形である場合、画像部の電位を約0V、非画像部の電位が−110Vのときにも、パルス状駆動波形のローレベルの電位が潜像の画像部電位と非画像部電位との間にあるので、同様に、画像部に対してはトナーが潜像担持体側に向かい、非画像部に対してはトナーが潜像担持体と反対側に向かうことになる。
要するに、パルス状駆動波形のローレベルの電位を潜像の画像部の電位と非画像部の電位との間の電位に設定することで、非画像部へのトナーの付着を防止し、高品質の現像を行うことができる。
【0103】
このように、EH現像においては、トナーがホッピングしていることにより潜像の画像部に対してトナーが吸引付着し、非画像部ではトナーが反発されて付着されないので、トナーによる潜像の現像を行うことができ、このとき、既にホッピングしているトナーは搬送基板1との間で吸着力が生じないため、容易に潜像担持体側に移送することができ、高い画像品質が得られる現像を低電圧で行うことができるようになる。
【0104】
すなわち、従来の所謂ジャンピング現像方式にあっては、現像ローラから帯電トナーを剥離させて感光体に移送させるには、トナーの現像ローラに対する付着力以上の印加電圧が必要であり、DC600〜900Vのバイアス電圧をかけなければならない。これに対して、本発明によれば、トナーの付着力は通常50〜200nNであるが、搬送基板1上でホッピングしているために搬送基板1に対する付着力が略零になるので、トナーを搬送基板1から剥離する力が不要になり、低電圧で十分にトナーを潜像担持体側に移送することが可能になるのである。
【0105】
しかも、電極102、102間に印加する電圧が|150〜100|V以下の低電圧であっても発生する電界が非常に大きい値となり、電極102表面に付着しているトナーを容易に剥離し、飛翔、ホッピングさせることが可能になる。また、OPC等の感光体を帯電する時に発生するオゾン、NOxが非常に少なく、または皆無にすることができて、環境問題、感光体の耐久性に非常に有利となる。
【0106】
したがって、従来方式の現像ローラ表面、またはキャリア表面に付着しているトナーを剥離するために現像ローラと感光体の間に印加していた500V〜数KVの高電圧バイアスを必要とすることがなく、感光体の帯電電位を非常に低い値として、潜像を形成して現像することが可能になる。
【0107】
例えば、潜像担持体としてOPC感光体を使用し、その表面のCTL(Charge Transport Layer)の厚さが15μm、その比誘電率εが3、帯電したトナーの電荷密度が(−3E−4)C/m2の場合、OPC表面電位は約−170Vとなるが、この場合、搬送基板の電極への印加電圧として、0〜−100V、デューティー50%のパルス状駆動電圧を印加すると、平均で−50Vとなり、トナーが負帯電であれば搬送基板の電極とOPC感光体との間の電界は前述した関係になる。
【0108】
このとき、搬送基板とOPC感光体とのギャップ(間隔)が0.2〜0.3mmであれば十分に現像が可能となる。トナーのQ/M、搬送基板の電極への印加電圧、印刷速度すなわちOPC感光体の回転速度によっても異なるが、負帯電トナーの場合、少なくともOPC感光体を帯電する電位は−300V以下、または現像効率を優先した構成の場合は−100V以下でも十分に現像を行うことができる。なお、正帯電の場合の帯電電位は+電位となる。
【0109】
ところで、上述したEH現像は、搬送基板1上でトナーをホッピングさせることによって、搬送基板1との吸着力を0にすることで現像を行うものであるが、本発明者らの研究によると、単に搬送基板上でトナーをホッピングにさせるだけでは、ホッピングしたトナーが潜像担持体側への進行性を有しているとしても、潜像担持体10の潜像に付着することの確実性が保証されず、トナー飛散が生じることも確認された。
【0110】
そこで、本発明者らはEH現像について鋭意研究した結果、ホッピングしたトナーが潜像担持体の潜像の画像部に対して選択的に確実に付着し、かつ、非画像部には付着しない、いわゆる地汚れが生じない条件を見出したものである。
【0111】
すなわち、潜像担持体の潜像の電位(表面電位)と搬送基板に印加する電位(発生させる電界)との関係を所定の関係に設定する。つまり、上述したように、潜像担持体の潜像の画像部に対してはトナーが潜像担持体側に向かい、非画像部に対してはトナーが搬送基板側に向かう電界を発生させる。これにより、潜像の画像部に対してはトナーが確実に付着し、非画像部に向かうトナーは搬送基板側に押し返されるので、搬送基板からホッピングしたトナーが効率的に現像に利用され、飛散を防止でき低電圧駆動による高品質現像を可能にすることができる。
【0112】
この場合、搬送基板の電極に印加する電位の平均値(平均値電位)を潜像担持体の潜像の画像部の電位と非画像部の電位との間の電位に設定することで、上述したように、潜像担持体の潜像の画像部に対してはトナーが潜像担持体側に向かい、非画像部に対してはトナーが搬送基板側に向かう電界を発生させることができる。
【0113】
次に、トナーの搬送及びホッピングを行うための搬送基板1に設けられる複数の電極102の幅(電極幅)L及び電極間隔R、並びに表面保護層103について説明する。
搬送基板1における電極幅Lと電極間隔Rはトナーの搬送効率、ホッピング効率に大きく影響する。すなわち、電極と電極の間にあるトナーはほぼ水平方向の電界により、基板表面を隣接する電極まで移動する。これに対して、電極上に乗っているトナーは、少なくとも垂直方向の成分も持った初速が与えられることから、多くは基板面から離れて飛翔する。
【0114】
特に、電極端面付近にあるトナーは、隣接電極を飛び越えて移動するため、電極幅Lが広い場合には、その電極上に乗っているトナーの数が多くなり、移動距離の大きいトナーが増えて搬送効率が上がる。ただし、電極幅Lが広すぎると、電極中央付近の電界強度が低下するためにトナーが電極に付着し、搬送効率が低下することになる。そこで、本発明者らは鋭意研究した結果、低電圧で効率よく粉体を搬送、ホッピングするための適正な電極幅があることを見出した。
【0115】
また、電極間隔Rは、距離と印加電圧の関係から電極間の電界強度を決定し、間隔Rが狭い程電界強度は当然強く、搬送、ホッピングの初速が得られやすい。しかし、電極から電極へ移動するようなトナーについては、一回の移動距離が短くなり、駆動周波数を高くしないと移動効率が上がらないことになる。これについても、本発明者らは鋭意研究した結果、低電圧で効率よく粉体を搬送、ホッピングするための適正な電極間隔があることを見出した。
【0116】
更に、電極表面を覆う表面保護層の厚さも電極表面の電界強度に影響を与え、特に垂直方向成分の電気力線への影響が大きく、ホッピングの効率を決定することをも見出した。
【0117】
そこで、搬送基板の電極幅、電極間隔、表面保護層厚さの関係を適正に設定することによって、電極表面でのトナー吸着問題を解決し、低電圧で効率的な移動を行うことができる。
【0118】
より詳しく説明すると、先ず、電極幅Lについては、電極幅Lをトナー径(粉体径)の1倍としたときは、最低1個のトナーを乗せて搬送、ホピングするための幅寸法であり、これより狭いとトナーに作用する電界が少なくなり、搬送力、飛翔力が低下して実用上は十分でない。
【0119】
また、電極幅Lが広くなるにしたがって、特に、電極上面中央付近で、電気力線が進行方向(水平方向)に傾斜し、垂直方向の電界の弱い領域が発生し、ホッピングの発生力が小さくなる。電極幅Lがあまり広くなると、極端な場合、トナーの帯電電荷に応じた鏡像力、ファンデルワールス力、水分等による吸着力が勝り、トナーの堆積が発生することがある。
【0120】
そして、搬送及びホッピングの効率から、電極の上にトナー20個程度が乗る幅であれば吸着が発生しにくく、100V程度の低電圧の駆動波形で効率良く搬送、ホッピングの動作が可能である。それ以上広いと部分的に吸着が発生する領域が生じる。例えば、トナーの平均粒径を5μmとすると、5〜100μmまでの範囲に相当する。
【0121】
電極幅Lのより好ましい範囲は、駆動波形による印加電圧を100V以下の低電圧でより効率的に駆動するため、トナーの平均粒径の2倍以上、10倍以下である。電極幅Lをこの範囲内とすることで、電極表面中央付近の電界強度の低下が1/3以下に抑えられ、ホッピングの効率低下は10%以下となって、効率の大幅な低下をきたすことがなくなる。これは、例えば、トナーの平均粒径を5μmとすると、10〜50μmの範囲に相当する。
【0122】
更に、より好ましくは、電極幅Lは、トナーの平均粒径の2倍以上、6倍以下の範囲である。これは、例えば、トナーの平均粒径を5μmとすると、10〜30μmに相当する範囲である。この範囲とすることによって非常に効率が良くなることが判明している。
【0123】
ここで、図21に示すように、搬送基板1(図9〜13の符号と同じ)上の電極102(図9〜13の符号と同じ)の幅(電極幅)Lを30μm、電極間隔Rを30μm、電極102の厚みを5μm、表面保護層103(図10〜13の符号と同じ)の厚みを0.1μmとし、隣接する2つの電極12にそれぞれ+100V、0Vを印加し、電極幅L、電極間隔Rに対する搬送電界TE、ホッピング電界HEの強度を測定した結果を図22及び図23に示している。
【0124】
なお、各評価データはシミュレーションと実測、および粒子の振る舞いについて高速度ビデオにより実測評価した結果である。図21では細部を分かり易くするために電極102は2つを示しているが、実際のシミュレーション、及び実験は前述したように十分な数の電極を有する領域について評価している。また、トナーTの粒径は8μm、電荷量は−20μC/gである。
【0125】
これらの図22及び図23で示す電界の強度は電極表面の代表点の値であり、搬送電界TEの代表点TEaは図21に示す電極端部5μm上方の点、ホッピング電界HEの代表点HEaは図21に示す電極中央部5μm上方の点とし、それぞれX方向、Y方向のトナーに作用する一番電界の強い代表点に相当する。
【0126】
これらの図22及び図23から、トナーの搬送、ホッピングに作用する力を付与できる電界としては(5E+5)V/m以上、吸着の問題がない好ましい電界としては(1E+6)V/m以上、更に十分な力を付与できるより好ましい電界としては(2E+6)V/m以上の範囲であることが分かる。
【0127】
電極間隔Rについては、間隔が広くなるほど搬送方向の電界強度は低下するため、上記電界強度の範囲に対応する値としても同様で、前述したように、トナーの平均粒径の1倍以上、20倍以下、好ましくは2倍以上、10倍以下、更に、より好ましくは2倍以上、6倍以下である。
【0128】
また、図23からホッピングの効率は電極間隔Rが広がると低下するが、トナー平均粒径の20倍までは実用上のホッピング効率が得られる。トナー平均粒径の20倍を越えるとやはり多くのトナーの吸着力が無視できなくなり、ホッピングが全く発生しないトナーが発生するため、この点でも電極間隔Rはトナーの平均粒径の20倍以下とする必要がある。
【0129】
以上のように、Y方向の電界強度は電極幅L、電極間隔Rで決定され、狭い方が電界強度は高くなる。また、電極端部寄りのX方向の電界強度も電極間隔Rで決定され、狭い方が電界強度は高くなる。
【0130】
このように、電極のトナー進行方向における幅をトナーの平均粒径の1倍以上、20倍以下で、且つ、電極のトナー進行方向の間隔を粉体の平均粒径の1倍以上、20倍以下とすることによって、電極上または電極間にある帯電したトナーに対し、その鏡像力、ファンデルワールス力、その他、吸着力にうち勝って、トナーを搬送、ホッピングさせるのに十分な静電力を作用させることができ、トナーの滞留が防止されて、低電圧で安定して効率的に搬送及びホッピングをさせることができる。
【0131】
本発明者らの研究によると、トナーの平均粒径が2〜10μm、Q/mが負帯電の場合には−3〜−40μC/g、より好ましくは、−10〜−30μC/g、正帯電の場合には+3〜+40μC/g、より好ましくは、+10〜+30μC/gであるときに、特に、上述した電極構成による搬送及びホッピングを効率的に行うことができた。
【0132】
次に、図10〜13に示した表面保護層103について説明する。
表面保護層を設けることにより、電極の汚れ、微粒子等の付着が無く、表面を搬送に好適な条件で維持することができ、高湿度環境での沿面リークの回避でき、Q/mの変動が無く、粉体の帯電電荷量を安定に維持することができる。
【0133】
ここで、図21において表面保護層103の厚さを0.1〜80μmの範囲で変化させたときのX方向の電界強度を計算値で求めた結果を図24に示している。
【0134】
この表面保護層13の誘電率εは空気より高い値であり、通常ε=2以上である。図24から分かるように、この表面保護層の膜厚(電極表面からの厚さ)が厚すぎると、表面のトナーに作用する電界強度が低下する。そこで、搬送効率、耐温湿度環境等を考慮すると、搬送動作に対して効率低下を問題にしないで実用可能な表面保護層厚さは、30%効率が低下する10μm以下、より好ましくは効率低下が数%に押さえられる5μm以下である。
【0135】
また、電極表面のホッピングに作用する電界強度の例を図25及び図26に示している。図25は表面保護層の厚みを5μmとした例、図26は表面保護層の厚みを30μmとした例であり、いずれも電極幅30μm、電極間隔30μmで印加電圧0V、100Vとしている。
【0136】
これらの各図から分かるように、表面保護層の厚さが厚くなると空気より誘電率が高い保護層から隣接する電極方向へ向かう電界が増加するため、表面の垂直方向成分が減少するとともに、保護層の厚み分、表面のトナーに作用する電界強度が低下する。
【0137】
すなわち、ホッピングに作用する垂直方向成分の電気力線は保護層厚さに大きく依存する。100V程度の低電圧で効率的にホッピングに作用する力を付与できる電界は、吸着の問題がない好ましい電界として(1E+6)V/m以上、更に十分な力を付与できるより好ましい電界としては(2E+6)V/m以上の範囲であり、そのための保護層厚さとしては10μm以下、より好ましくは5μm以下である。
なお、表面保護層の材料としては、比抵抗は10E6Ωcm以上、誘電率εが2以上の材料を用いることが好ましい。
【0138】
このように、電極表面を覆う表面保護層を設け、この表面保護層の厚さを10μm以下とすることで、特に粉体に対して垂直方向成分の電界をより強く作用させることができ、ホッピングの効率を上げることができる。
【0139】
また、潜像担持体の帯電電位との関係については、トナーが負帯電トナーの場合、潜像担持体の表面の帯電電位を−300V以下、正帯電トナーの場合、潜像担持体の表面の帯電電位を+300V以下にする。すなわち、潜像担持体の表面の帯電電位は|300|V以下とする。
【0140】
これによって、前述したように、電極をファインピッチ化した場合に、電極102、102間に印加する電圧が150〜100V以下の低電圧であっても発生する電界が非常に大きい値となり、電極102表面に付着しているトナーを容易に剥離し、飛翔、ホッピングさせることが可能になる。また、OPC等の感光体を帯電する時に発生するオゾン、NOxが非常に少なく、または皆無にすることができて、環境問題、感光体の耐久性に非常に有利となる。
【0141】
次に、移動させるトナーの帯電極性と表面保護層の最外層の材料の関係について説明する。なお、表面保護層の最外層とは、表面保護層が単一層の場合には当該層を、表面保護層が複数層から形成される場合には粉体が接触する面を形成する層をいう。
【0142】
画像形成装置に用いられるトナーを搬送する場合、トナーの80%以上を占める樹脂材料としては、溶融温度、カラーにおいては透明性等が考慮され、一般的にはスチレン−アクリル系の共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリオール樹脂等が用いられる。
トナーの帯電特性はこれらの樹脂の影響を受けるが、積極的に帯電量をコントロールする目的で帯電制御剤が加えられる。ブラックトナー(BK)用の帯電制御剤としては、正帯電の場合は、例えば、ニグロシン系染料、四級アンモニウム塩類、負帯電の場合は、例えば、アゾ系含金属錯体、サリチル酸金属錯体が使用される。また、カラートナー用の帯電制御剤としては、正帯電の場合は、例えば、四級アンモニウム塩類、イミダゾール系錯体類、負帯電の場合は、例えば、サリチル酸金属錯体や塩類、有機ホウ素塩類が使用される。
【0143】
一方、これらのトナーは、搬送基板上を移相電界(進行波電界)によって搬送、またはホッピングする動作によって、表面保護層と接触、剥離を繰り返すため、トナーが摩擦帯電の影響を受けることになるが、その帯電量と極性は材料相互の帯電系列によって決まってくる。
【0144】
この場合、トナーの帯電量を主に帯電制御剤によって決定される飽和帯電量、または多少低下する程度に維持することで、搬送、ホッピング、感光体現像にとっての効率を向上させることができる。
【0145】
そこで、トナーの帯電極性が負の場合は、少なくとも表面保護層の最表面を形成する層の材料として、摩擦帯電系列上でトナーの帯電制御剤として用いられる材料の近傍(搬送、ホッピングの領域が少ない場合)に位置する材料か、または正端側に位置する材料を使用することが好ましい。例えば、帯電制御剤が、サリチル酸金属錯体の場合はこの近傍に位置するポリアミド系が好ましい。例えば、ポリアミド(ナイロン:商品名)66、ナイロン(商品名)11等を用いる。
【0146】
また、トナーの帯電極性が正の場合は、少なくとも表面保護層の最表面を形成する層の材料として、摩擦帯電系列上でトナーの帯電制御剤として用いられる材料の近傍(搬送、ホッピングの領域が少ない場合)に位置する材料か、または負端側に位置する材料を使用することが好ましい。例えば、帯電制御剤が、四級アンモニウム塩類の場合はこの近傍、またはフッ素等のテフロン(登録商標)系材料を用いる。
【0147】
次に、電極102の厚みについて説明する。
上述したように電極表面を覆う数μm厚さの表面保護層を形成した場合、表面保護層の下に電極がある領域とない領域に対応して、搬送基板表面には凹凸が生じることになる。このとき、電極の厚さを3μm以下の薄層に形成することによって、保護膜表面の凹凸を問題にすることなくトナー等、5μm程度の粉体をスムースに搬送することができる。したがって、電極を3μm以下の厚みに形成すれば、搬送基板表面の平坦化処理等を必要しないで、薄層の表面保護層を有する搬送基板を実用化でき、搬送、ホッピングのための電界強度が低下することもなくなり、より効率的な搬送、ホッピングを行うことができる。
【0148】
本発明の現像装置を用いて潜像担持体上の潜像にトナーを付着させて現像する方法により、トナー供給を安定して行うことができ、高い現像効率で高品質現像を行うことができる。
また、上記現像方法を用いた画像形成方法とすれば、安定したトナー供給により高品質現像を達成し、トナーの飛散や地汚れのない高画質画像を形成することができる。
【0149】
以下、本発明の現像装置を備えたことを特徴とする画像形成装置、プロセスカートリッジ等について説明する。
本発明に係る現像装置を含む本発明に係る画像形成装置の第1実施形態について図27を参照して説明する。
この画像形成装置の全体の概略及び動作を説明すると、潜像担持体である感光体ドラム301は基体302上に感光体層303を形成してなり、同図で矢示方向に回転駆動される。この感光体ドラム301は帯電装置305によって一様に帯電され、露光部306からの読み取り画像に応じたレーザー光による書き込みにより、感光体ドラム301の表面に静電潜像が形成される。
【0150】
そして、この感光体ドラム301表面の静電潜像は、本発明に係る現像装置316によってトナーが付着されて可視像化され、この可視像は、給紙カセット317から給紙された転写紙(記録媒体)319に転写電源321からの電圧が印加される転写コロ320によって転写され、この可視像が転写された転写紙319は、感光体ドラム301の表面より分離されて、定着ユニット323のローラ間を通って、可視像が定着され、機外の排紙トレイへと排紙される。
【0151】
一方、転写が終了した感光体ドラム301の表面に残留しているトナーはクリーニング装置325によって除去され、感光体ドラム301の表面に残留している電荷は除電ランプ326によって消去される。
【0152】
そこで、現像装置316について説明すると、現像装置316内には粉体であるトナーの帯電を施す部材の一例として帯電ブラシ331a、331bの両ブラシが接触するように配置され回転動作し、トナータンク332から送り込まれるトナーTはブラシ331a、331bによる摩擦を受けて帯電が施される。
【0153】
供給部で帯電が施されトナーは、搬送基板341に送り込まれ、この搬送基板341上を搬送、ホッピングされて潜像担持体301に対向する現像領域に送られて、所要の現像を行った後、現像に供されなったトナーは搬送基板341の終端から落下して、逆搬送基板342によってトナーに帯電を施す部材(帯電ブラシ331b)に逆送される。
【0154】
なお、搬送基板341及び逆送搬送基板342の構成は、前記搬送基板1と同様であり、搬送基板341及び逆送搬送基板342の各電極に駆動波形を与える駆動回路の構成も図示は省略するが、前記現像装置の各実施形態で説明した同様である。
【0155】
このように構成することで、飛散トナーが少なく、高い現像品質で現像を行って高画質の画像を形成することができる。
【0156】
次に、本発明における画像形成装置の第2実施形態について図28を参照して説明する。なお、同図は同画像形成装置の全体概略構成図である。
この画像形成装置の全体の概略及び動作を説明すると、潜像担持体である感光体ドラム401(例えば、有機感光体:OPC)は同図で時計方向に回転駆動される。コンタクトガラス402上に原稿を載置し、図示しないプリントスタートスイッチを押すと、原稿照明光源403とミラー404とを含む走査光学系405と、ミラー406、407を含む走査光学系408とが移動して、原稿画像の読み取りが行われる。
【0157】
ここで、走査された原稿画像がレンズ409の後方に配置した画像読み取り素子410で画像信号として読み込まれ、読み込まれた画像信号はデジタル化され画像処理される。そして、この画像処理をした信号でレーザーダイオード(LD)を駆動し、このレーザーダイオードからのレーザー光をポリゴンミラー413で反射した後、ミラー414を介して感光体ドラム401上に照射する。この感光体ドラム401は帯電装置415によって一様に帯電されており、レーザー光による書き込みにより、感光体ドラム401の表面に静電潜像が形成される。
【0158】
そして、この感光体ドラム401表面の静電潜像は、本発明に係る現像装置416によってトナーが付着されて可視像化され、この可視像(トナー像)は、給紙部417Aまたは417Bから給紙コロ418Aまたは418Bで給紙された転写紙(記録媒体)419に転写チャージャ420のコロナ放電により転写される。この可視像が転写された転写紙419は、分離チャージャ421により感光体ドラム401の表面より分離されて、搬送ベルト422によって搬送され、定着ローラ対423の圧接部を通って、可視像が定着され、機外の排紙トレイ424へと排紙される。
【0159】
一方、転写が終了した感光体ドラム401の表面に残留しているトナーはクリーニング装置425によって除去され、感光体ドラム401の表面に残留している電荷は除電ランプ426によって消去される。
【0160】
図28の現像装置416の要部拡大図を図29に示す。図29に示すように、トナーを収納するトナーホッパ部431と、このトナーホッパ部431内のトナーを攪拌するアジテータ432と、トナーホッパ部431内のトナーを帯電させてトナーボックス部433に供給する帯電ローラ434及びこの帯電ローラ434の周面に接触させて配置したドクターブレード435とを備えている。
【0161】
また、トナーボックス部433内に供給されたトナーを現像のために搬送、ホッピングするために搬送する搬送基板441と、この搬送基板441の終端から落下する現像に供されなかったトナーに帯電を施す部材(帯電ローラ434)に戻す方向に搬送する逆送搬送基板442とを備えている。
【0162】
なお、上記画像形成装置の第1実施形態でも述べたとおり、搬送基板441及び逆送搬送基板442の構成は、前記搬送基板1と同様であり、搬送基板441及び逆送搬送基板442の各電極に駆動波形を与える駆動回路の構成も図示は省略するが、前記現像装置の各実施形態で説明した同様である。
このように構成することで、飛散トナーが少なく、高い現像品質で現像を行って高画質の画像を形成することができる。
【0163】
次に、本発明に係るプロセスカートリッジを備えた画像形成装置の第3実施形態について図30及び図31を参照して簡単に説明する。なお、図30は同画像形成装置の概略構成図、図31は同画像形成装置を構成するプロセスカートリッジの概略構成図である。
【0164】
この画像形成装置500は、マゼンダ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)の4色でフルカラー画像を形成するレーザプリンタの一例であり、各色用の画像信号に応じたレーザビームを出射する4つの光書き込み装置501M、501C、501Y、501Bk(以下「光書き込み装置501」とも総称する。)と、作像用の4つのプロセスカートリッジ502M、502C、502Y、502Bk(図において、502Bと省略する。)と、画像が転写される記録用紙を収納する給紙カセット503と、給紙カセット503から記録用紙を給紙する給紙ローラ504と、記録用紙を所定のタイミングで搬送するレジストローラ505と、記録用紙を各プロセスカートリッジの転写部に搬送する転写ベルト506と、記録用紙に転写された画像を定着する定着ベルト507と加圧ローラ508からなる定着装置509と、定着後の記録用紙を排紙トレイ511に排紙する排紙ローラ510等を備えた構成となっている。
【0165】
4つのプロセスカートリッジ502M、502C、502Y、502Bkの構成は同じ(以下「プロセスカートリッジ502」とも総称する。)であり、図31に示すように、各プロセスカートリッジ502は、ケース内に像担持体であるドラム状の感光体521と、帯電ローラ522と、本発明に係る現像装置523と、クリーニングブレード524等を一体に備え、画像形成装置本体に対して着脱可能に構成している。現像装置523を着脱自在であるプロセスカ−トリッジ502内に具備させることにより、メンテナンス性の向上、他の装置との一体交換を容易に行うことができるようになる。
【0166】
また、現像装置523内には、トナー供給ローラ525、帯電ローラ526、搬送基板1、搬送基板1へのトナー送り込み基板527、回収トナーを戻すトナー戻しローラ528が設けられており、各色のトナーが収納されている。また、プロセスカートリッジ502の背面側には、光書き込み装置501からのレーザビームが入射される窓口となるスリット530が設けられている。
【0167】
各光書き込み装置501M、501C、501Y、501Bkは、半導体レーザ、コリメートレンズ、ポリゴンミラー等の光偏向器、走査結像用光学系等から構成され、装置外部のパーソナルコンピュータ等のホスト(画像処理装置)から入力される各色用の画像データに応じて変調されたレーザビームを出射し、各プロセスカートリッジ502M、502C、502Y、502Bkの感光体521上を走査し、静電荷像(静電潜像)を書き込む。
【0168】
そして、画像形成が開始されると、各プロセスカートリッジ502M、502C、502Y、502Bkの感光体521が帯電ローラ522で均一に帯電され、各光書き込み装置501M、501C、501Y、501Bkから画像データに応じたレーザビームが照射されて各感光体上に各色の静電潜像が形成される。
【0169】
この感光体521上に形成された静電潜像は、現像装置523の搬送基板1によるEH現像により、各色のトナーによって現像され顕像化される。また、現像に供されなかったトナーは搬送基板1で搬送されてトナー戻しローラ528によってトナー送り込み基板527の入口側に戻される。このように、本発明に係る現像装置によって現像を行うことで、前述したように高品質の画像を形成することができる。
【0170】
一方、図30に示すように各プロセスカートリッジ502Bk、502Y、502C、502Mの各色の画像形成に同期して、供給カセット503内の記録用紙が供給ローラ504で給紙され、レジストローラ505により所定のタイミングで転写ベルト506に向けて搬送される。そして、記録用紙は転写ベルト506に担持されて4つのプロセスカートリッジ502Bk、502Y、502C、502Mの感光体521に向けて順次搬送され、各感光体上のBk、Y、C、Mの各色のトナー像が順次重ね合わせて転写される。4色のトナー像が転写された記録用紙は、定着装置509に搬送され、4色のトナー像からなるカラー画像が定着されて排紙トレイ511に排紙される。
【0171】
次に、本発明に係るプロセスカートリッジを含む本発明に係る画像形成装置の第4実施形態について図32及び図33を参照して簡単に説明する。なお、図32は同画像形成装置の概略構成図、図33は同画像形成装置を構成するプロセスカートリッジの概略構成図である。
【0172】
この画像形成装置は、水平に延在する転写ベルト(像担持体)551に沿って、各色のプロセスカ−トリッジ560Y、560M、560C、560Bk(以下「プロセスカートリッジ560」とも総称する。)を並置したタンデム方式のカラー画像形成装置である。なお、プロセスカ−トリッジ560は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順で説明したが、この順番に特定されるものではなく、どの順番で並置してもよい。
【0173】
プロセスカ−トリッジ560は、潜像担持体561、帯電手段562、本発明に係るトナー搬送部材(搬送基板)1を含む現像手段563、クリーニング装置564等の構成要素のうち、複数のものをプロセスカ−トリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカ−トリッジを複写機やプリンタ等の画像形成装置本体に対して着脱可能に構成している。
【0174】
通常、カラーの画像形成装置は複数の画像形成部を有するため装置が大きくなってしまう。また、現像装置、クリーニングや帯電などの各ユニットが個別で故障したり、寿命による交換時期がきた場合は、装置が複雑でユニットの交換に非常に手間がかかっていた。
【0175】
そこで、少なくとも像担持体と現像手段の構成要素をプロセスカ−トリッジ560として一体に結合して構成することによって、ユーザーによる交換も可能な小型で高耐久のカラー画像形成装置を提供することができる。
【0176】
ここで、各色のプロセスカ−トリッジ560Y、560M、560C、560Bkで現像された像担持体上の現像トナーは水平に延在する転写電圧が印加された転写ベルト551に順次転写される。
【0177】
このようにイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと画像の形成が行なわれ、転写ベルト551上に多重に転写され、転写手段552で転写材553にまとめて転写される。そして、転写材553上の多重トナー像は図示しない定着装置によって定着される。
【0178】
上記各実施形態で説明した画像形成装置は、いずれも本発明に係る静電搬送装置を含む現像装置を備えているので、装置の小型化、低コスト化を図れ、トナ−飛散などもなく、画像品質を向上することができる。
【0179】
なお、上記実施形態においては、粉体としてトナーを例に説明しているが、トナー以外の粉体を搬送するための装置などにも同様に適用することができる。また、搬送電極に印加する駆動信号は3相を例に説明しているが、4相、6相などでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】本発明に係る現像装置の第1実施形態を説明する概略構成図である。
【図2】本発明に係る現像装置の第1実施形態における別の概略構成図である。
【図3】本発明における磁性粒子のダイナミック抵抗DRを測定する装置構成を示す模式図である。
【図4】本発明におけるニップ領域(A2)内でトナーの搬送電界方向を現像領域(A1)方向とその逆方向に分割した構成を示す模式図((a)、(b))である。
【図5】本発明に係る現像装置の第2実施形態を説明する概略構成図である。
【図6】トナー母体の表面を覆う添加剤の被覆率を計算する式(1)から求めた添加量と被覆率の関係を示すグラフである。
【図7】添加剤の被覆率とトナーの貼り付き発生度合いの関係を示すグラフである。
【図8】本発明の現像装置においてトナー搬送部材が基板状である場合の現像領域とその前後の領域におけるトナーの搬送を説明するための概略構成図である。
【図9】図8の搬送基板1の構成を説明するための平面展開図である。
【図10】図9のA−A線に沿う断面図である。
【図11】図9のB−B線に沿う断面図である。
【図12】図9のC−C線に沿う断面図である。
【図13】図9のD−D線に沿う断面図である。
【図14】本発明における搬送基板に付与する駆動波形の一例を説明する模式図である。
【図15】本発明におけるトナーの搬送、ホッピングを説明するための概念図である。
【図16】本発明におけるトナーの搬送、ホッピングを具体的に説明するための概念図である。
【図17】図8の駆動回路の一例を示すブロック図である。
【図18】駆動回路2により形成される駆動波形(搬送電圧及び回収搬送電圧パターン)の一例を説明する模式図である。
【図19】駆動回路2により形成される駆動波形(ホッピング電圧パターン)の一例を説明する模式図である。
【図20】駆動回路2により形成される駆動波形(ホッピング電圧パターン)の他の例を説明する模式図である。
【図21】本発明におけるトナー搬送部材の電極幅及び電極間隔の適正な条件を説明するための模式図である。
【図22】図21において電極幅と0V電極端の電界(X方向)の関係を示すグラフである。
【図23】図21において電極幅と0V電極端の電界(Y方向)の関係を示すグラフである。
【図24】図21において表面保護層の膜厚と電界強度の関係を示すグラフである。
【図25】図21において電極表面のホッピングに作用する電解強度の強さを表面保護層の膜厚(5μm)との関係で示した模式図である。
【図26】図21において電極表面のホッピングに作用する電解強度の強さを表面保護層の膜厚(30μm)との関係で示した模式図である。
【図27】本発明に係る画像形成装置の第1実施形態を説明する概略構成図である。
【図28】本発明に係る画像形成装置の第2実施形態を説明する概略構成図である。
【図29】図28に示す現像装置416の要部拡大図である。
【図30】本発明に係る画像形成装置の第3実施形態を説明する概略構成図である。
【図31】図30の画像形成装置を構成するプロセスカートリッジの概略構成図である。
【図32】本発明に係る画像形成装置の第4実施形態を説明する概略構成図である。
【図33】図32の画像形成装置を構成するプロセスカートリッジの概略構成図である。
【符号の説明】
【0181】
T トナー
A1 現像領域
A2 トナー供給ニップ領域(ニップ領域)
1 搬送基板
2 駆動回路
10 潜像担持体(感光体)
11 搬送領域
12 現像領域
13 回収領域
31 潜像担持体(感光体)
34 現像装置
41 ケーシング
42 トナー搬送部材(搬送部材)
43 現像剤供給部(磁気ブラシローラ)
46 規制ブレード
47 磁石部材
48 スリーブ
49 電源(B2)
50 電源(B1)
62 現像剤
60 非磁性のトナー(トナー)
61 磁性キャリア(磁性粒子)
101 ベース基板(支持基板)
102(102a、102b、102c) 電極
103 表面保護層
105a、105b、105c 共通電極
105a1、105b1、105c1 共通電極
105a2、105b2、105c2 共通電極
105a3、105b3、105c3 共通電極
301 潜像担持体(感光体ドラム)
302 基体
303 感光体層
305 帯電装置
306 露光部
316 現像装置
331a、331b 帯電ブラシ
332 トナータンク
341 搬送基板
342 逆搬送基板
401 感光体ドラム
408 走査光学系
415 帯電装置
416 現像装置
431 トナーホッパ部
432 アジテータ
433 トナーボックス部
434 帯電ローラ
435 ドクターブレード
441 搬送基板
442 逆送搬送基板
521 感光体
522 帯電ローラ
523 現像装置
524 クリーニングブレード
525 トナー供給ローラ
526 帯電ローラ
527 トナー送り込み基板
528 トナー戻しローラ
551 転写ベルト(像担持体)
560Y、560M、560C、560Bk プロセスカ−トリッジ
561 潜像担持体
562 帯電手段
563 現像手段
564 クリーニング装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に現像剤を保持し、該現像剤を搬送する現像剤供給部材と、該現像剤供給部材から供給されるトナーを潜像担持体と対向する現像領域(A1)へ搬送するトナー搬送部材とを備え、A1で潜像担持体上の潜像にトナーを付着させて現像する現像装置において、
前記現像剤供給部材と前記トナー搬送部材は、現像剤供給部材がトナーを供給するニップ領域(A2)を介して対向配置され、
該現像剤供給部材は、トナー供給電界形成用の電源(B1)に接続され、
該トナー搬送部材は、複数の電極を備えるとともに、該電極に搬送電界を形成する電源(B2)に接続され、
電源(B1)のバイアス印加により現像剤供給部材からトナー搬送部材に供給されたトナーを搬送する際、
電源(B2)のバイアス印加によりニップ領域(A2)内に位置する電極の所定箇所を境界にしてトナーの搬送電界方向を分割して形成し、一方はトナーが現像領域(A1)へ向かうように、他方はA1と逆に向かうように構成したことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記トナー搬送部材が、円筒状、ベルト状または基板状の何れかの形状を有する部材であることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記トナー搬送部材による現像領域(A1)へのトナー搬送方向と、現像剤供給部材による現像剤の搬送方向が逆であることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項4】
前記電源(B2)のバイアス印加によりトナーの搬送電界方向を分割するニップ領域(A2)内に位置する電極の所定箇所における境界を可変とさせるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項5】
前記現像剤が、磁性キャリアと非磁性のトナーから成る二成分現像剤であり、該トナーはトナー母体表面に添加剤を被着し、その添加剤のトナー母体表面積に対する被覆率が50%以上であることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項6】
表面に現像剤を保持し、該現像剤を搬送する現像剤供給部材と、該現像剤供給部材から供給されるトナーを潜像担持体と対向する現像領域(A1)へ搬送するトナー搬送部材とを備え、A1で潜像担持体上の潜像にトナーを付着させて現像する現像装置において、
前記現像剤供給部材と前記トナー搬送部材は、現像剤供給部材がトナーを供給するニップ領域(A2)を介して対向配置され、且つトナー搬送部材の一方の端部はニップ領域(A2)内に配設され、
該現像剤供給部材は、トナー供給電界形成用の電源(B1)に接続され、
該トナー搬送部材は、複数の電極を備えるとともに、該電極に搬送電界を形成する電源(B2)に接続され、
電源(B1)のバイアス印加により現像剤供給部材からトナー搬送部材に供給されたトナーを搬送する際、
電源(B2)のバイアス印加によりニップ領域(A2)内に配設されたトナー搬送部材の一方の端部を搬送開始点としてトナーの搬送電界方向を形成し、トナーが現像領域(A1)に向かうように構成したことを特徴とする現像装置。
【請求項7】
前記トナー搬送部材が、円筒状、ベルト状または基板状の何れかの形状を有する部材であることを特徴とする請求項6に記載の現像装置。
【請求項8】
前記トナー搬送部材によるトナー搬送方向と、現像剤供給部材による現像剤の搬送方向が逆であることを特徴とする請求項6に記載の現像装置。
【請求項9】
前記現像剤が、磁性キャリアと非磁性のトナーから成る二成分現像剤であり、該トナーはトナー母体表面に添加剤を被着し、その添加剤のトナー母体表面積に対する被覆率が50%以上であることを特徴とする請求項6に記載の現像装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかに記載の現像装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
電子写真プロセスにおける潜像担持体、帯電手段、クリーニング手段のうちの少なくとも一つと、請求項1〜9の何れかに記載の現像装置を一体に保持したことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項12】
請求項11に記載のプロセスカートリッジを備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項1〜9の何れかに記載の現像装置により、潜像担持体上の潜像にトナーを付着させて現像することを特徴とする現像方法。
【請求項14】
請求項13に記載の現像方法を用いたことを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2007−127862(P2007−127862A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320960(P2005−320960)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】