説明

現像装置及びプロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】少なくとも2つの現像剤担持体を有する2成分現像方式の現像装置において、低抵抗キャリアを使用した際に発生するキャリア付着を防止することが可能な現像装置を提供する。
【解決手段】像担持体21上の静電潜像にトナーTとキャリアCとを含む2成分現像剤Gを供給して現像する複数の現像剤担持体23a1,23a2を備えた現像装置23において、各現像剤担持体23a1,23a2は、回転可能な現像剤担持体外周部材と、現像剤担持体外周部材に内包される、現像剤を担持し搬送させる磁界発生手段とを有し、像担持体21の回転方向最下流位置に配置された現像剤担持体23a2の現像剤担持体外周部材の電気抵抗値を他の現像剤担持体23a1の現像剤担持体外周部材の電気抵抗値に比して高くした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置の現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置において、現像剤担持体上に現像剤を担持し担持された現像剤を現像剤規制部材で規制した後に感光体等の像担持体に対向する現像領域に搬送する現像装置が知られている。ここで、現像剤として磁性キャリアとトナーとからなる2成分現像剤を用いる現像装置では、像担持体として内部に磁界発生手段を有する現像スリーブを用いている。この現像スリーブは、内部の磁界発生手段の磁力により現像装置内部に収容された現像剤を担持し、回転することにより担持された現像剤を感光体と対向する現像領域に搬送する。
【0003】
近年の画像形成速度の高速化に伴い、感光体等の潜像担持体の表面移動速度は高速化される傾向にある。このような高速の画像形成装置では、現像剤担持体を比較的高速で回転させないと潜像に対するトナー供給量が不足して現像濃度不足が生じてしまう。しかし現像剤担持体を高速で回転させると、現像剤と像担持体との摩擦により像担持体や現像剤の劣化の進行が早まってしまう。そこでこのような問題を解決するため、従来高速の画像形成装置では複数の現像剤担持体を使用し、像担持体上の潜像を現像する多段現像装置が提案されている。このような多段現像装置では、現像を複数回繰り返すことでそれぞれの現像剤担持体を高速で回転させることなく十分な画像濃度を得ることができる。
【0004】
また、キャリアの電気抵抗値を高くすると、画像部のエッジが強調された画像となる。エッジが強調されると文字画像においては鮮鋭さが増すというメリットがあるが、一般的に写真画像においては高画質を達成するために障害となる。そのためエッジ強調を低減し、高画質化達成のために抵抗の低いキャリアを使用する必要がある。また、現像スリーブの電気的導通を損なわずに現像スリーブ表面を高硬度化する目的で、電気比抵抗が10−8Ω・cm以下の導電性層または半導電性の被覆層を形成する技術が、例えば「特許文献1」に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、低抵抗のキャリアを使用した場合には現像スリーブからの電荷注入が生じ、現像電界によりキャリアが感光体に付着する、いわゆるキャリア付着が発生し易くなるという問題がある。また「特許文献1」に開示された技術では、低抵抗キャリアを使用した際にキャリア付着の防止とエッジ強調の低減とを両立することができない。
【0006】
本発明は上述の問題点を解決し、少なくとも2つの現像剤担持体を有する2成分現像方式の現像装置において、低抵抗キャリアを使用した際に発生するキャリア付着を防止することが可能な現像装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、像担持体上の静電潜像にトナーとキャリアとを含む2成分現像剤を供給して現像する複数の現像剤担持体を備えた現像装置において、
前記各現像剤担持体は、回転可能な現像剤担持体外周部材と、前記現像剤担持体外周部材に内包される、現像剤を担持し搬送させる磁界発生手段とを有し、前記像担持体の回転方向最下流位置に配置された前記現像剤担持体の前記現像剤担持体外周部材の電気抵抗値が他の前記現像剤担持体の前記現像剤担持体外周部材の電気抵抗値に比して高いことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の現像装置において、さらに前記最下流位置に配置された前記現像剤担持体の前記現像剤担持体外周部材が導電性の円筒部材とそれを被覆する被覆層とを有することを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の現像装置において、さらに前記被覆層が半導電性材料からなることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の現像装置において、さらに前記半導電性材料が窒化チタンであることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、画像形成装置の装置本体に対して着脱自在なプロセスカートリッジであって、請求項1ないし4の何れか1つに記載の現像装置と前記像担持体とを一体的に有することを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし4の何れか1つに記載の現像装置を有する画像形成装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、その回転方向最下流位置に配置された現像剤担持体の現像剤担持体外周部材の電気抵抗値を他の現像剤担持体の現像剤担持体外周部材よりも高くすることにより、エッジ強調の低減とキャリア付着の防止とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態を適用可能な画像形成装置の概略図である。
【図2】本発明の一実施形態を適用可能な画像形成装置のプロセスカートリッジを説明する概略図である。
【図3】本発明の一実施形態に用いられる現像装置を説明する概略図である。
【図4】本発明の一実施形態に用いられる現像装置を説明する概略図である。
【図5】本発明の一実施形態に用いられる現像装置を説明する概略図である。
【図6】本発明の一実施形態に用いられる現像装置を説明する概略図である。
【図7】本発明の一実施形態に用いられる現像装置を説明する概略図である。
【図8】本発明の一実施形態に用いられるコート材料を示す表である。
【図9】本発明の一実施形態における実験条件及び実験結果を示す表である。
【図10】本発明の他の実施形態に用いられるコート材料を示す表である。
【図11】本発明の他の実施形態における実験結果を示す表である。
【図12】本発明の他の実施形態における実験結果を示す表である。
【図13】本発明のさらに他の実施形態に用いられるコート材料を示す表である。
【図14】本発明のさらに他の実施形態における実験結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一実施形態を適用可能な画像形成装置を示している。同図において画像形成装置1の装置左側には、画像情報に基づいて帯電工程後の像担持体である感光体ドラム21に静電潜像を書き込む書込部2A〜2Dが設けられており、この書込部2A〜2Dはポリゴンミラー3A〜3D、光学素子4A〜4Dを用いる光走査装置によって構成されている。なお、書込部として光走査装置に代えてLEDアレイを用いることもできる。装置本体の下部に設けられた給紙部61は、記録紙やOHPシート等の記録媒体Pを格納し、画像形成時において記録媒体Pを転写ベルト30に向けて給送する。
【0016】
転写ベルト30は、記録媒体Pをその表面に静電的に吸着させて搬送し、感光体ドラム21上に形成されたトナー像を記録媒体P上に転写させるための無端ベルトであり、その外周面上に吸着ローラ64及びベルトクリーナ65を有している。転写ベルト30を介して感光体ドラム21に対向する転写ローラ24は、芯金及びこれを被覆する導電性弾性層を有している。転写ローラ24の導電性弾性層は、ポリウレタンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンポリエチレン(EPDM)等の弾性材料にカーボンブラック、酸化亜鉛、酸化スズ等の導電性付与剤を配合分散して電気抵抗値(体積抵抗率)を中抵抗に調整した弾性体である。装置本体の上部に設けられた定着部66は、加熱ローラ68及び加圧ローラ67を有し記録媒体P上のトナー像を熱と圧力とによって定着させる周知の構成である。
【0017】
装置本体中、転写ベルト30に沿った縦方向には4個のプロセスカートリッジ20Y(イエロ),20C(シアン),20M(マゼンタ),20BK(ブラック)がそれぞれ配設されている。各プロセスカートリッジ20Y,20C,20M,20BK上には、キャリア(磁性キャリア)と各色(イエロ、シアン、マゼンタ、ブラック)のトナー(トナー粒子)とを現像装置23に供給する剤カートリッジ28Y,28C,28M,28BKが配設されている。プロセスカートリッジ20Y,20C,20M,20BK及び剤カートリッジ28Y,28C,28M,28BKは、転写ベルト30の回転支軸を中心として転写ベルト30を開放することにより装置本体に対して着脱することができる。
【0018】
本実施形態における画像形成装置1は、複写機及びプリンタとして機能する複合型の画像形成装置である。複写機として機能する場合には、スキャナから読み込まれた画像情報に対してA/D変換、MTF補正、階調処理等の種々の画像処理が施されて書き込みデータに変換される。プリンタとして機能する場合には、コンピュータ等から送信されるページ記述言語やビットマップ等の形式の画像情報に対して画像処理が施されて書き込みデータに変換される。画像形成時には、書込部2A〜2Dからプロセスカートリッジ20BK,20M,20C,20Yに対してブラック、マゼンタ、シアン、イエロの画像情報に応じた露光光がそれぞれ照射される。すなわち、各光源から発せられた露光光(レーザ光)がポリゴンミラー3A〜3D、光学素子4A〜4Dを等を通過して各感光体ドラム21上に照射される。これにより、各プロセスカートリッジ20BK,20M,20C,20Yの感光体ドラム21上に露光光に応じたトナー像が形成される。そして、このトナー像が記録媒体Pに転写されることとなる。
【0019】
給紙部61から給送された記録媒体Pは、レジストローラ63の位置で一旦タイミングを合わせられ、転写ベルト30へと給送される。記録媒体Pの給送位置に配設された吸着ローラ64は、電圧の印加により搬送された記録媒体Pを転写ベルト30に吸着させる。転写ベルト30の矢印方向への移動に伴い移動する記録媒体Pは、各プロセスカートリッジ20Y,20C,20M,20BKの位置を順次通過し、これにより記録媒体P上に各色のトナー像が重畳転写される。カラートナー像が転写された記録媒体Pは、転写ベルト30から分離して定着部66に送られ、記録媒体P上のカラートナー像は加熱ローラ68及び加圧ローラ67に挟持されつつ加熱されることで記録媒体P上に定着される。一方、記録媒体Pが分離した後の転写ベルト30の表面は、その後にベルトクリーナ65の位置に達してその表面に付着したトナー等の汚れがクリーニングされる。
【0020】
次に、画像形成装置1におけるプロセスカートリッジ20Y,20C,20M,20BK、及び剤カートリッジ28Y,28C,28M,28BKについて説明する。なお、各プロセスカートリッジ20Y,20C,20M,20BKはほぼ同一構造であり、各剤カートリッジ28Y,28C,28M,28BKもほぼ同一構造であるため、図2において各プロセスカートリッジ及び各剤カートリッジは符号のアルファベット(Y,C,M,BK)の図示を省略し、書込部も符号のアルファベット(A〜D)の図示を省略する。
【0021】
図2はプロセスカートリッジ20及び剤カートリッジ28の拡大図、図3はプロセスカートリッジ20に設けられた現像装置23の拡大図、図4は現像装置23における循環経路を図3に示す矢印X方向から長手方向に見た断面図、図5は図4の現像装置23における循環経路Y1−Y1断面を示す断面図、図6は図4の現像装置23における循環経路Y2−Y2断面を示す断面図である。
【0022】
図2に示すようにプロセスカートリッジ20は、感光体ドラム21、帯電部22、現像装置23、クリーニング部25が一体化されたものであって、プレミックス現像方式(キャリアの補給・排出を適宜に行う現像方式)が採用されている。感光体ドラム21は、負帯電の有機感光体であって図示しない回転駆動手段によって反時計回り方向に回転駆動される。帯電部22は、芯金上にウレタン樹脂、導電性粒子としてのカーボンブラック、硫化剤、発泡剤等を処方した中抵抗の発泡ウレタン層をローラ状に形成した弾性を有する帯電ローラである。帯電部22の中抵抗層の材質としては、ウレタン、エチレン−プロピレン−ジエンポリエチレン(EPDM)、ブタジエンアクリロニトリルゴム(NBR)、シリコーンゴムや、イソプレンゴム等に抵抗調整のためにカーボンブラックや金属酸化物等の導電性物質を分散したゴム材、これ等を発泡させたものを用いることも可能である。
【0023】
クリーニング部25は、感光体ドラム21に摺接するクリーニングブラシ(またはクリーニングブレード)が設置されており、感光体ドラム21上の未転写トナーを機械的に除去及び回収する。現像装置23は、現像剤担持体である2個の現像ローラ23a1,23a2が感光体ドラム21に対して近接するように配置されており、双方の対向部分には感光体ドラム21と磁気ブラシとが接触する現像領域が形成される。現像装置23内には、トナーTとキャリアCとからなる現像剤G(2成分現像剤)が収容されており、この現像剤Gによって感光体ドラム21上に形成される静電潜像を現像(トナー像を形成)する。なお、現像装置23については後述する。
【0024】
ここで、本実施形態に用いられる現像装置23はプレミックス現像方式のものであり、現像装置23内に適宜に新品のキャリアC(現像剤G)が剤カートリッジ28から供給されると共に、劣化した現像剤Gが現像装置23の外部に設置された剤貯留容器70に向けて排出される。
【0025】
図2を参照して剤カートリッジ28は、その内部に現像装置23内に供給するための現像剤Gを収容している。そして、剤カートリッジ28は現像装置23に新品のトナーTを供給するトナーカートリッジとして機能すると共に、現像装置23に新品のキャリアCを供給する供給手段としても機能する。具体的に、現像装置23に設置された磁気センサ26(図4参照)によって検知されるトナー濃度(現像剤G中のトナーTの割合)の情報に基づいて、シャッタ機構80の開閉動作を行って剤カートリッジ28から現像装置23内に向けて現像剤Gを適宜供給する。なお、本実施形態では剤カートリッジ28の現像剤GにおけるキャリアCに対するトナーTの混合率(トナー濃度)が比較的高く設定されている。供給管29は、剤カートリッジ28から供給される現像剤Gを現像装置23内に確実に導くためのものである。すなわち、剤カートリッジ28から排出された現像剤Gは、供給管29を介して現像装置23内に供給される。
【0026】
次に、現像装置23の構成及び動作について説明する。図3に示すように、現像装置23は現像ローラ23a1,23a2、搬送スクリュ23b1〜23b3(オーガスクリュ)、現像剤規制部材としてのドクターブレード23c、キャリア捕集ローラ23k、スクレーパ23m、排出スクリュ23n、ケース部材である上ケース23r等によって構成されている。また現像装置23内には、現像剤Gを搬送して循環経路を形成する3つの現像剤搬送部B1〜B3が形成されている。現像ローラ23a1,23a2は図示しない回転駆動手段によって図3の時計回り方向に回転駆動され、各現像ローラ23a1,23a2のスリーブ内には、スリーブの周面に現像剤Gの穂立ちが行われるように磁界を形成するマグネットが固定されており、このマグネットから発せられる法線方向磁力線に沿うように現像剤G中のキャリアCがスリーブ上においてチェーン状に穂立ちする。このチェーン状に穂立ちしたキャリアCに帯電したトナーTが付着して磁気ブラシが形成される。磁気ブラシは、スリーブの回転によってスリーブと同方向(時計回り方向)に移送される。
【0027】
詳しくは、現像ローラ23a1,23a2の周囲にはそれぞれスリーブ内のマグネットによって複数の磁極が形成されている。現像ローラ23a1の周囲には、第1現像剤搬送部B1に収容された現像剤を汲み上げるための汲み上げ磁極、ドクターブレード23cに対向する位置に形成されたドクタ対向磁極、感光体ドラム21との対向領域に形成された主磁極、現像ローラ23a2との対向位置まで現像剤を搬送するための搬送磁極等が形成されている。現像ローラ23a2の周囲には、現像ローラ23a1上の現像剤を受け取るための受け取り磁極、感光体ドラム21との対向領域に形成された主磁極、キャリア捕集ローラ23kとの対向位置に形成された捕集ローラ対向磁極、第2現像剤搬送部B2に向けて現像剤を離脱させるための剤離れ磁極等が形成されている。
【0028】
ドクターブレード23cは、現像領域の上流側に設置されていて現像ローラ23a1上に担持された現像剤を適量に規制する。本形態のドクターブレード23cは、SUS316やXM7等の非磁性金属材料で形成された厚さ2mm程度の板状部材である。なお、ドクターブレード23cの対向面側にSUS430等の磁性金属材料で形成された厚さ0.3mm程度の薄板を設置してもよい。
【0029】
3個の搬送スクリュ23b1〜23b3は軸部上に螺旋状のスクリュ部が形成されたものであり、現像装置23内に収容された現像剤Gを長手方向(図2において紙面方向)に循環しつつ攪拌及び混合する。現像剤搬送部材としての第1搬送スクリュ23b1は、第1現像剤搬送部B1であって現像ローラ23a1に対向する位置に配設されていて、現像剤Gを水平方向(図4に白矢印で示す)に搬送すると共に現像ローラ23a1上に現像剤を供給する。換言すると第1搬送スクリュ23b1は、現像ローラ23a1に対向すると共に現像ローラ23a1に現像剤Gを長手方向(現像ローラ23a1の軸方向)に搬送しながら供給する。
【0030】
第2現像剤搬送部材としての第2搬送スクリュ23b2は、第2現像剤搬送部B2の、第1搬送スクリュ23b1の下方であって現像ローラ23a2に対向する位置に配置されている。そして、現像ローラ23a2から離脱した現像剤G(現像工程後に剤離れ極によって現像ローラ23a2上から強制的に離脱された現像剤G)を水平方向に搬送する。換言すると第2搬送スクリュ23b2は、第1現像剤搬送部B1の下方であって現像ローラ23a2に対向する位置に配設されると共に、現像ローラ23a2から離脱した現像剤Gを長手方向に搬送する。第1搬送スクリュ23b1及び第2搬送スクリュ23b2は、現像ローラ23a1,23a2や感光体ドラム21と同様に、回転軸がほぼ水平となるように配設されている。
【0031】
第3現像剤搬送部材としての第3搬送スクリュ23b3は、第2搬送スクリュ23b2による搬送経路の下流側と第1搬送スクリュ23b1による搬送経路の上流側とを直線的に結ぶように、図4に示すように水平方向に対して斜めとなるように第3現像剤搬送部B3に配設されている。そして、第3搬送スクリュ23b3は、第2搬送スクリュ23b2によって搬送された現像剤Gを第1搬送スクリュ23b1による搬送経路の上流側に搬送すると共に、第1搬送スクリュ23b1による搬送経路の下流側から落下経路23fを介して循環される現像剤Gを第1搬送スクリュ23b1による搬送経路の上流側に搬送する(図4に白矢印で示す右斜め上方への搬送)。換言すると第3搬送スクリュ23b3は、第2現像剤搬送部B2によって搬送された現像剤Gを第1現像剤搬送部B1の上流側に搬送すると共に、第1現像剤搬送部B1の下流側に達した現像剤Gを第1現像剤搬送部B1の上流側に搬送する。なお、第1搬送スクリュ23b1による搬送経路(第1現像剤搬送部B1)と、第2搬送スクリュ23b2による搬送経路(第2現像剤搬送部B2)と、第3搬送スクリュ23b3による搬送経路(第3現像剤搬送部B3)とは、壁部によってそれぞれ隔絶されている。
【0032】
図4に示すように、第2現像剤搬送部B2の下流側と第3現像剤搬送部B3の上流側とは第1中継部23gを介して互いに連通し、また第3現像剤搬送部B3の下流側と第1現像剤搬送部B1の上流側とは第2中継部23hを介して互いに連通しており、さらに第1現像剤搬送部B1の下流側と第3現像剤搬送部B3の上流側とは落下経路23fを介して互いに連通している。このような構成により、3つの現像剤搬送部B1〜B3(搬送スクリュ23b1〜b3)によって現像装置23において現像剤Gを長手方向に循環させる循環経路が形成されることになる。ここで現像装置23が稼働されると、装置内に収容された現像剤は図4中に示すように流動する。図4において、第1現像剤搬送部B1において下流側に落ちる現像剤の剤面が上流側の剤面に比して低いのは、搬送中の現像剤の一部が現像ローラ23a1に供給されているためである。すなわち、現像ローラ23a1に供給されなかった現像剤は、落下経路23fを介して第3現像剤搬送部B3の上流側に移動することとなる。なお、第3現像剤搬送部B3には磁気センサ26が配設されており、磁気センサ26のトナー濃度検知結果に基づいて剤カートリッジ28から現像装置23に向けて所定のトナー濃度の現像剤Gが供給される。本実施形態では、現像装置23内の現像剤Gのトナー濃度が4〜7重量%となるように制御されている。
【0033】
図4及び図5に示すように、第1現像剤搬送部B1の壁部には、現像装置23内に収容された現像剤Gの一部を外部(剤貯留容器70)に排出するための排出口23dが設けられている。排出口23dは、剤カートリッジ28から現像装置23内に現像剤Gが供給されて装置内の現像剤量が増加してその位置に搬送される現像剤の剤面(上面)が所定の高さを超えたときに、その余剰分の現像剤Gを剤貯留容器70に向けて排出するためのものである。すなわち余剰分の現像剤Gは、排出口23dの下部の高さを超えて排出口23dから排出されて排出経路71を経由して剤貯留容器70に向けて重力落下していく。このように、トナーTの母体樹脂や外添剤によって汚染されて劣化したキャリアが自動的に現像部の外部に排出されるので、経時においても画像品質の劣化を抑制することができる。なお、図2及び図4では図示を省略しているが、排出経路71中には排出口23dから排出された現像剤を水平方向に搬送するための排出スクリュ23nが設置されている(図3参照)。
【0034】
また、現像装置23における現像剤の循環経路において、上述した排出口23dが配設された位置を通過せずに現像剤Gの一部を循環経路の上流側に戻すためのバイパス経路が形成されている。具体的には、図4及び図6に示すように、第1現像剤搬送部B1であって排出口23dの上流側(排出口23dに比較的近接した位置)に開口23eが設けられている。そして、この開口23eがバイパス経路の入口となって、バイパス経路の出口が第3搬送スクリュ23b3による搬送経路中(長手方向中央近傍)に配設されている。このように、現像装置23における現像剤の循環経路にバイパス経路を設けることにより、現像装置内の現像剤に波上の偏り等が生じても排出口23dから排出される現像剤量にばらつきが生じ、必要量を超えた現像剤が現像装置23から排出される不具合を抑制することができる。
【0035】
図7は、現像装置23における現像剤の循環経路において現像剤に波状の偏りが生じた状態を示している。このように現像剤の循環経路では、高低差の大きな波状の偏りが生じる場合がある。このような波状の偏りは、現像装置23の稼働開始直後に顕著に現れる。そして、このような波状の偏りが生じた場合には、従来は排出口23dの下部よりも高い位置にある現像剤(図7において高さH2の現像剤)の全てが排出口23dから排出されてしまっていた。このようにして排出されてしまう現像剤は本来的には排出を予定していないものであるため、このような現象が繰り返し生じると現像装置23内の現像剤量が不足してしまい、現像剤の劣化状態が不安定になったりトナーの帯電量が低下したりして、出力画像上に画像濃度低下等の不具合現象が生じてしまうこととなる。
【0036】
これに対して、本実施形態では排出口23dの上流側にバイパス経路に通じる開口23eを設けているため、排出口23dの下部よりも高い位置にある現像剤の一部が排出口23dから排出されることなく、開口23eを通じて第3搬送スクリュ23b3における搬送経路に戻されることになる。これにより排出口23dから過剰に現像剤が排出される不具合の発生を防止することができる。ここで、バイパス経路における開口23eの下部の高さが排出口23dの下部の高さよりも高さH1だけ高くなるように構成されている。これにより、排出口23dの下部よりも高い位置にある現像剤のうち、高さ(H2−H1)分の現像剤は排出口23dから排出されることはなく、開口23eを通じて第3搬送スクリュ23b3における搬送経路に戻されることとなる。これにより、排出手段の本来の機能を維持しつつ、排出口23dから過剰に現像剤が排出される不具合を確実に防止することができる。なお、排出口23dと開口23eとの長手方向の距離Wはできるだけ短い方が好ましい。
【0037】
図3に示すように、本実施形態では現像ローラ23a2の下方(回転方向下流側)であって感光体ドラム21と対向する位置にキャリア捕集ローラ23kが配設され、さらにキャリア捕集ローラ23kと当接する位置にスクレーパ23mが配設されている。キャリア捕集ローラ23kはステンレス等からなる円筒体内に所定の磁界を形成するマグネットが固設されたものであって、現像装置23内から移動(飛翔)して感光体ドラム21に付着したキャリアを捕集するためのものである。キャリア捕集ローラ23kは、図3において反時計回り方向に回転駆動され、キャリア捕集ローラ23kによって捕集されて担持されたキャリアは、そのほとんどが現像ローラ23a2との対向位置で現像ローラ23a2上に移行し、現像ローラ23a2の剤離れ磁極の位置で現像ローラ23a2から離脱して第2現像剤搬送部B2内に回収される。一方、現像ローラ23a2上に移行せずにキャリア捕集ローラ23k上に残留・担持されたキャリアは、スクレーパ23mによって機械的に掻き取られて第2現像剤搬送部B2内に回収される。このように、キャリア捕集ローラ23kを設置することで感光体ドラム21上に付着したキャリアを現像装置23内に回収できるため、異常画像(ホタル画像、白抜け画像)の発生が抑制されると共に、現像装置23内のキャリアが不足するという不具合の発生が防止される。
【0038】
なお本実施形態では、現像ローラ23a1,23a2の外径が30mm、現像ローラ23a1の外周面上の線速が748mm/sec、現像ローラ23a2の外周面上の線速が898mm/sec、プロセス線速(感光体ドラム21の外周面上の線速、及び記録媒体Pの搬送速度)が440mm/sec程度に設定されている。また本実施形態に用いられるキャリアCは、粒径が55μm、飽和磁化が96emu/g程度、また電気抵抗率が1×1010Ωcm程度である。また本実施形態に用いられるトナーTは、粒径が6.8μm程度のものである。
【0039】
次に、本発明の特徴部である現像剤担持体である現像ローラの構成について説明する。本実施形態に用いられる現像ローラ23a1,23a2は、アルミニウム、真鍮、ステンレス、導電性樹脂等の非磁性体を円筒形に形成してなるスリーブを用いている。また、現像ローラ23a2は現像ローラ23a1よりも電気抵抗値が高くなるように、その表面に現像剤担持体外周部材としての被覆が施されている。被覆される材料としては、アルマイト、TiN、CrN等の金属系皮膜、またはアクリル、ナイロン、ポリエチレン、ポリウレタン等の樹脂に導電性を得るためにカーボンブラック等の導電性材料を含有させたもの等を用いてもよい。さらに、所望の特性を得るために複数の樹脂・金属材料を混ぜ合わせてもよい。コートの方法としては、スパッタリング、イオンプレーティング等のPVDや化学めっき等の手法が挙げられる。
【0040】
本発明者等は、本発明の効果を確かめるため、上述した画像形成装置1を用いて以下に示す条件で実験を行った。図8は実験に用いたコート材料を、図9は実験条件及び結果を示している。このように、その回転方向最下流位置に配置された現像ローラ23a2のみにコートを施し、現像剤担持体外周部材(スリーブ)の電気抵抗値を他の現像ローラ23a1の現像剤担持体外周部材よりも高くすることにより、図9に示すようにエッジ強調の低減とキャリア付着の防止とを両立することができる。
【0041】
図10は、コート材料を変えた際の実験条件を、図11及び図12は実験結果をそれぞれ示している。図11に示すキャリア付着個数は現像ポテンシャルを変化させた際にA3用紙1枚当たりのキャリア付着個数を調べたものであり、現像ローラ23a2に高抵抗の材料をコートすることでキャリア付着が低減されていることを示している。また、図12はコート材料を変えた際の画像濃度の比較結果を示している。実験は現像バイアスを550Vとして比較を行った。この結果から、現像ローラ23a2の抵抗が高すぎると画像濃度が低下することが判明した。このことから、キャリア付着の防止と画像濃度低下の防止の両立のため、コート材料としては半導電性材料を用いることが望ましい。
【0042】
さらに、本発明者等は現像スリーブ23a2のコート材料を図13に示す内容に変更して実験を行った。結果を図14に示す。図14に示すように、現像ローラ耐久枚数とは、現像ローラに削れやトナー固着が発生して出力画像に縦スジ等の異常が発生するまでの出力枚数としている。No.8に関しては、1000k枚を超えても出力画像に異常が見られなかった。このように、窒化チタンは高濃度かつ耐摩耗性に優れた材料であることから、現像ローラコート材料として適している。
【符号の説明】
【0043】
1 画像形成装置
20 プロセスカートリッジ
21 像担持体(感光体ドラム)
23 現像装置
23a1,23a2 現像剤担持体(現像ローラ)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0044】
【特許文献1】特開昭58−132768号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上の静電潜像にトナーとキャリアとを含む2成分現像剤を供給して現像する複数の現像剤担持体を備えた現像装置において、
前記各現像剤担持体は、回転可能な現像剤担持体外周部材と、前記現像剤担持体外周部材に内包される、現像剤を担持し搬送させる磁界発生手段とを有し、前記像担持体の回転方向最下流位置に配置された前記現像剤担持体の前記現像剤担持体外周部材の電気抵抗値が他の前記現像剤担持体の前記現像剤担持体外周部材の電気抵抗値に比して高いことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1記載の現像装置において、
前記最下流位置に配置された前記現像剤担持体の前記現像剤担持体外周部材が導電性の円筒部材とそれを被覆する被覆層とを有することを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項2記載の現像装置において、
前記被覆層が半導電性材料からなることを特徴とする現像装置。
【請求項4】
請求項3記載の現像装置において、
前記半導電性材料が窒化チタンであることを特徴とする現像装置。
【請求項5】
画像形成装置の装置本体に対して着脱自在なプロセスカートリッジであって、
請求項1ないし4の何れか1つに記載の現像装置と前記像担持体とを一体的に有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項6】
請求項1ないし4の何れか1つに記載の現像装置を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2013−57826(P2013−57826A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196467(P2011−196467)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】