説明

現像装置及び画像形成装置

【課題】トナーを劣化させることなく、現像に使われずに、現像ローラの表面に残ったトナーを回収することができ、経時的な画像品質の低下を低減させることができるようにする。
【解決手段】本発明の現像装置は、静電潜像担持体の静電潜像に現像剤を付着させて、静電潜像を現像する現像剤担持体と、現像剤担持体に現像剤を供給する供給部材と、導電性ブラシ部を有するものであり、前記導電性ブラシ部が前記現像剤担持体に当接し、静電潜像を現像した後に現像剤担持体の表面に保持される現像剤を移して回収する現像剤回収ブラシ部材とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置及び画像形成装置に関するものである。例えば、本発明は、電子写真方式を用いた現像装置及び画像形成装置に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、現像装置において、静電潜像の現像後、現像ローラの表面に残ったトナー(現像剤)を回収する技術として特許文献1に記載される技術がある。
【0003】
特許文献1の記載技術は、現像ローラに対して接触するように回収ローラを設け、現像ローラと回収ローラとが接触するニップ部を形成する。回収ローラには回収バイアス電圧が印加されており、前記ニップ部において、現像ローラの表面に残留するトナーが掻き取られるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−100516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1の記載技術は、現像ローラ上の残留トナーを確実に回収するために、回収ローラを現像ローラに強く接触させることが必要となる。
【0006】
この場合、現像ローラと回収ローラとのニップ部において、回収ローラとの摩擦や圧力により、例えば外添剤が脱落する等のトナーの劣化が生じ得る。従って、回収したトナーが再利用される場合、劣化したトナーが含まれるので、劣化していない正規のトナーのみが用いられるときよりも、画像の品質が低下するおそれがある。
【0007】
そのため、トナーを劣化させることなく、現像に使われずに、現像ローラの表面に残ったトナーを回収することができ、経時的な画像品質の低下を低減させることができる現像装置及び画像形成装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために、第1の本発明は、静電潜像担持体の静電潜像に現像剤を付着させて、静電潜像を現像する現像剤担持体と、現像剤担持体に現像剤を供給する供給部材と、導電性ブラシ部を有するものであり、導電性ブラシ部が現像剤担持体に当接し、静電潜像を現像した後に現像剤担持体の表面に保持される現像剤を移して回収する現像剤回収ブラシ部材とを備えることを特徴とする現像装置である。
【0009】
第2の本発明は、静電潜像担持体の静電潜像に現像剤を付着させて、静電潜像を現像する現像剤担持体と、現像剤担持体に現像剤を供給する供給部材と、導電性ブラシ部を有するものであり、導電性ブラシ部が現像剤担持体に当接し、静電潜像を現像した後に現像剤担持体の表面に保持される現像剤を移して回収する現像剤回収ブラシ部材とを有する現像装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トナーを劣化させることなく、現像に使われずに、現像ローラの表面に残ったトナーを回収することができ、経時的な画像品質の低下を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態の現像装置の内部構成を示す断面図である。
【図2】第2の実施形態の現像装置への電圧印加方法と、トナー回収ブラシローラ及び現像ローラ間のニップ量とを示す図である。
【図3】第1の実施形態の画像形成装置の内部構成を示す断面図である。
【図4】第1の実施形態の画像形成制御を示すブロック図である。
【図5】第1の実施形態の現像ローラの構成を示す構成図である。
【図6】第1の実施形態の現像ローラの抵抗値を測定する測定方法を説明する説明図である。
【図7】第1の実施形態において、トナー回収ブラシローラに交流バイアス電圧を印加した場合の、トナー回収効率及び現像ローラの表面に残留下トナーの帯電量の関係を説明する説明図である。
【図8】第1の実施形態において、トナー回収ブラシローラに直流バイアス電圧を印加した場合の、トナー回収効率及び現像ローラの表面に残留下トナーの帯電量の関係を説明する説明図である。
【図9】第1の実施形態の現像装置における駆動負荷トルクと回転線速度比との関係を説明する説明図である。
【図10】第1の実施形態の現像装置を用いた連続試験によるカブリの測定結果を説明する説明図である。
【図11】第1の実施形態の現像装置の連続試験による回転線速度比とカブリとの関係を説明する説明図である。
【図12】第2の実施形態の現像装置の内部構成を示す断面図である。
【図13】第2の実施形態の現像装置への電圧印加方法と、トナー回収ブラシローラ及び現像ローラ間のニップ量と、トナー回収ブラシローラ及びフリッカー間のニップ量とを示す図である。
【図14】第2の実施形態において、連続印字試験を行なったときのトナー回収効率を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(A)第1の実施形態
以下では、本発明の現像装置及び画像形成装置の第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
(A−1)第1の実施形態の構成
(A−1−1)画像形成装置の構成
以下では、第1の実施形態の画像形成装置の構成について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図3は、第1の実施形態の画像形成装置200の内部構成を示す断面図である。図3において、第1の実施形態の画像形成装置200は、現像装置100A、露光装置18、転写ローラ19、定着器20、用紙搬送ローラ22、23、24を有する。
【0015】
用紙搬送ローラ22は、印刷時に、収容トレイ内に収容されている記録媒体21を取り出し、記録媒体21を搬送するものである。なお、図3に図示する矢印は、搬送される記録媒体21の搬送方向を示すものである。
【0016】
用紙搬送ローラ23は、用紙搬送ローラ22により取り出された記録媒体21をさらに搬送し、記録媒体21を感光ドラム3及び転写ローラ19に搬送するものである。
【0017】
露光装置18は、画像信号である画像データに基づく光を感光ドラム3に照射して、感光ドラム3上に画像データに対応する静電潜像を形成するものである。
【0018】
現像装置100Aは、露光装置18により形成された感光ドラム3上の静電潜像に対して、現像剤であるトナーを付着させて、静電潜像を現像するものである。
【0019】
転写ローラ19は、感光ドラム3に対向する位置に設けられ、感光ドラム3と共に回転することにより、感光ドラム3上に形成されたトナー像を記録媒体21に転写するものである。
【0020】
定着器20は、転写ローラ19からの記録媒体21上のトナーを溶融し、記録媒体21の繊維間にトナーを浸透させて、記録媒体21上に定着させるものである。定着器20は、例えば、トナーを溶融させるためヒーターや、温度検出ための温度センサ等を有するものである。
【0021】
用紙搬送ローラ24は、定着器20からの記録媒体21を、画像形成装置200の外部へ搬出するものである。
【0022】
図1は、第1の実施形態の現像装置100Aの内部構成を示す断面図である。図1において、現像装置100Aは、現像ローラ1、トナー供給ローラ2、感光ドラム3、帯電ローラ4、トナー回収ブラシローラ5、現像ブレード6、クリーニングブレード9、撹拌部材11、12、13、14、15、16を有する。
【0023】
現像装置100Aは、トナー10を収容するトナー収容部10aを有する。第1の実施形態では、トナー10として非磁性一成分のトナーを用いるものとする。なお、非磁性一成分トナーに限定されるものではなく、磁性一成分トナーを用いるようにしてもよい。トナー収容部10aは、トナー10を現像ローラ1に供給するトナー供給部と、現像ローラ1上の残留トナーを回収するトナー回収部とを隔てる隔壁17を有する。
【0024】
撹拌部材11、12、13、14は、トナー収容部10aに収容されるトナーを撹拌してトナー供給ローラ2側にトナー10を搬送するものである。また、撹拌部材15、16は、現像ローラ1上から回収したトナー10をトナー通過部であるトナー搬送口7に搬送するものである。回収されたトナー10は、例えばトナー搬送口7を介してトナー収容部10aに搬送されるようにしてもよい。また、撹拌部材12、13、14、15、16は、例えばクランク形状の金属バーを用いることができ、クランク形状の金属バーが図1に図示する破線上を矢印方向に回転するものである。
【0025】
現像ローラ1は、トナー供給ローラ2と接触しており、トナー供給ローラ2からトナー10の供給を受け、対向する感光ドラム3の静電潜像にトナー10を付着させて静電潜像を現像する現像剤担持体である。現像ローラ1は、感光ドラム3と接触して設けられているものである。また、現像ローラ1は、現像後に、表面に残ったトナー10を移して回収するトナー回収ブラシローラ5と接触するようにして設けられている。なお、現像ローラ1は、図1に図示する回転方向で回転するものである。
【0026】
トナー供給ローラ2は、図1において現像ローラ1の略下方に接触するようにして配置され、トナー収容部10に収容されるトナー10を現像ローラ1に対して供給する供給部材である。なお、トナー供給ローラ2は、図1に図示する回転方向で回転するものである。
【0027】
現像ブレード6は、現像ローラ1の表面に供給されたトナー10のトナー量を規制して、トナーの薄層を形成する規制部材である。
【0028】
帯電ローラ4は、感光ドラム3を帯電させる帯電部材である。なお、帯電ローラ4は、図1に図示する回転方向で回転するものである。
【0029】
感光ドラム3は、帯電ローラ4により帯電された後に、露光装置18から画像信号に対応した光が照射され、画像信号に基づく静電潜像を担持する静電潜像担持体である。なお、感光ドラム3は、図1に図示する回転方向で回転するものである。
【0030】
クリーニングブレード9は、記録媒体21に対してトナー像を転写した後、感光ドラム3の表面に残った転写残トナーを回収するものである。
【0031】
トナー回収ブラシローラ5は、現像ローラ1と接触するようにして設けられており、現像後、現像ローラ1の表面に残った残留トナーを移して回収する現像剤回収ブラシ部材である。トナー回収部材としてトナー回収ブラシローラ5を用いることにより、金属ローラ等で回収する場合に比べて、現像ローラ1との当接部分の接触力が弱くなるため、現像装置100Aの駆動トルクの負荷を軽減することができる。なお、トナー回収ブラシローラ5は、図1に図示する回転方向で回転するものである。
【0032】
トナー回収ブラシローラ5は、表面に導電性ブラシが形成されているものである。ブラシは導電性繊維であれば、その素材は広く適用することができ、例えば、合成樹脂繊維や金属繊維などを適用することができる。
【0033】
図4は、第1の実施形態の画像形成装置200の画像形成制御を示すブロック図である。
【0034】
図4において、画像形成装置200は、印刷制御部25、インターフェイス制御部26、受信メモリ27、画像データ編集メモリ28、操作部29、センサ群30、帯電ローラ用電源4a、現像ローラ用電源1a、トナー供給ローラ用電源2a、トナー回収ブラシ用電源5a、転写ローラ用電源19a、ヘッド駆動制御部18a、定着制御部20a、搬送モータ制御部31a、駆動制御部32a、用紙搬送モータ31、駆動モータ32を有する。なお、図4において、帯電ローラ4、現像ローラ1、トナー供給ローラ2、現像ブレード6、トナー回収ブラシローラ5、転写ローラ19、露光装置18、定着器20は、図1及び図3に図示するものである。
【0035】
印刷制御部25は、画像形成装置200における画像形成処理を司るものである。印刷制御部25は、例えば、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、入出力ポート、タイマ等を有して構成されるものである。印刷制御部25は、インターフェイス制御部26を介して、上位装置から受信した印刷データ及び制御コマンドに基づいて、画像形成装置200の全体のシーケンスを制御し印刷動作を行なうものである。
【0036】
インターフェイス制御部26は、上位装置から入力された印刷データを受信メモリ27に与えたり、入力された印刷データ及びコマンドを印刷制御部25に与えたりするものである。
【0037】
受信メモリ27は、インターフェイス制御部26を介して、入力された印刷データを一時的に記録するものである。
【0038】
画像データ編集メモリ28は、受信メモリ27に記録された印刷データを受け取り、当該印刷データに基づく編集処理により形成された画像データ、すなわちイメージデータを記録するものである。
【0039】
操作部29は、操作者による操作情報を取り込むものである。操作部29は、例えば、画像形成装置200の操作指示を行なうスイッチ、画像形成装置200の状態表示をする出力部(例えばLED等)、入力情報の表示や画像形成装置200の状態等を表示する表示部等を適用することができる。
【0040】
センサ群30は、画像形成装置200の動作状態を監視するための複数のセンサである。センサ群30は、画像形成装置200の各動作状態を監視するものであれば広く適用することができ、例えば、用紙位置検出センサ、温湿度センサ、印刷濃度センサ等を適用することができる。
【0041】
帯電ローラ用電源4aは、印刷制御部25の指示に従って、帯電ローラ4に対して所定の電圧を印加するものである。
【0042】
現像ローラ用電源1aは、印刷制御部25の指示に従って、現像ローラ1に対して所定の電圧を印加するものである。
【0043】
トナー供給ローラ用電源2aは、印刷制御部25の指示に従って、トナー供給ローラ2に対して所定の電圧を印加するものである。また、トナー供給ローラ用電源2aは、現像ブレード6に対して所定の電圧を印加するものである。
【0044】
トナー回収ブラシローラ用電源5aは、印刷制御部25の指示に従って、トナー回収ブラシローラ5に対して、所定の電圧を印加する電圧印加手段である。トナー回収ブラシローラ用電源5aは、所定の直流電圧と所定の交流電圧とを重畳させた重畳電圧を、トナー回収ブラシローラ5に対して印加する。なお、トナートナー回収ブラシローラ用電源5aは、交流電圧をトナー回収ブラシローラ5に印加するようにしてもよい。
【0045】
転写ローラ用電源19aは、印刷制御部25の指示に従って、転写ローラ19に対して、所定の電圧を印加するものである。
【0046】
なお、前記帯電ローラ用電源4a、現像ローラ用電源1a、トナー供給ローラ用電源2a、トナー回収ブラシローラ用電源5a、及び、転写ローラ用電源19aは、印刷制御部25の指示によって、印加する電圧値を変更することができる。
【0047】
ヘッド駆動制御部18aは、印刷制御部25の指示に従って、画像データ編集メモリ28に記録されている画像データを露光装置18に与え、露光装置18を駆動させるものである。
【0048】
定着制御部20aは、印刷制御部25の指示に従って、定着器20に対して、所定の電圧を印加するものである。定着制御部20aは、定着器20が備える温度センサのセンサ出力を読み込み、そのセンサ出力に基づいて定着器20のヒーターを通電させて、定着器20の温度を一定になるように制御する。
【0049】
搬送モータ制御部31aは、印刷制御部25の制御の下、記録媒体21を搬送する用紙搬送モータ31の制御を行なうものである。搬送モータ制御部31aは、所定のタイミングで用紙搬送モータ31を制御することで、用紙搬送ローラ22、23、24を駆動させ、記録媒体21を搬送させたり又は停止させたりするものである。
【0050】
用紙搬送モータ31は、搬送モータ制御部31aの制御を受けて、図3に示す用紙搬送ローラ22、23、24を駆動する駆動部である。
【0051】
駆動制御部32aは、印刷制御部25の制御の下、駆動モータ32を制御するものである。駆動制御部32aは、駆動モータ32を制御することにより、感光ドラム3を回転させると共に、例えばギア列等の機構により、帯電ローラ4、現像ローラ1、トナー供給ローラ2、トナー回収ブラシローラ5、撹拌部材11、12、13、14、15、16をそれぞれ回転させるものである。
【0052】
駆動モータ32は、駆動制御部32aの制御を受けて、感光ドラム3を駆動させる駆動部である。
【0053】
(A−1−2)現像装置の詳細な構成
次に、第1の実施形態の現像装置100Aの詳細な構成について図1を参照しながら説明する。
【0054】
現像剤であるトナー10は、例えば粉砕法で製造し、バインダーとしてポリエステル樹脂を用いた非磁性一成分の負帯電性トナーを用いる。例えば、トナー10の体積平均粒径は5.7μm、円形度0.92、ブローオフ帯電量は−36μC/gである。
【0055】
トナー10の体積平均粒径の測定には、コールター社製コールターマルチサイザーIIを使用した。また、円形度の測定は、シスメックス株式会社製フロー式粒子像分析装置FPIA−3000を使用した。ブローオフ帯電量の測定は、京セラ株式会社製粉体帯電量測定装置TYPE TB−203を使用した。トナー10は、トナー0.5gと、パウダーテック株式会社製フェライトキャリア(F−60)9.5gを混合し、30分撹拌した後、ブロー圧7.0kPa、吸引圧−4.5kPaの条件で飽和帯電量を測定した。
【0056】
現像ローラ1は、感光ドラム3と接触するように配置されており、感光ドラム3に対する、食い込み量(以降、ニップ量という)は0.1mmである。
【0057】
図5は、現像ローラ1の構成例を示す構成図である。図5に示すように、現像ローラ1は、導電性の芯金33上に、弾性層34を配した構成となっている。
【0058】
弾性層34は、弾性材料であれば広く適用することができ、例えば、シリコンゴム、ウレタンゴム等の一般的なゴム材料を使用することができる。第1の実施形態では、弾性層34としてシリコンゴムを用いる場合を例示する。弾性層34のゴム硬度は、例えば、アスカーC硬度で50度〜80度程度のものが好適であり、この実施形態ではアスカーC硬度60度のものとした。
【0059】
さらに、図5に示すように、現像ローラ1は、トナー10への電荷付与性を考慮し、弾性層34の表面上に、半導電性樹脂膜35を被膜させたものとする。半導電性樹脂膜35は、半導電性の有するものであれば広く適用することができ、例えばアクリル樹脂にカーボンブラック等を分散させたものを用いることができる。
【0060】
現像ブレード6は、現像ローラ1上のトナー10のトナー量を規制して薄層を形成するものである。現像ブレード6は、例えば、板厚が0.08mmであり、現像ローラ1との当接部に曲げ加工が施されており、曲げ部の曲率半径Rは0.18mmとし、現像ローラ1に対する線圧が35gf/cmである、SUS株式会社製のものを使用した。
【0061】
現像ブレード6は、現像ローラ1上のトナー層厚、トナー帯電量を所定量に設定するものであるため、上記の使用条件で、現像ローラ1の表面粗さ、抵抗値を検討する必要がある。第1の実施形態では、次のようにして検討した。
【0062】
現像ローラ1の表面粗さは、現像ローラ1の表面の十点平均粗さRz(JIS B0601−1994)を2〜8μmとした。なお、表面粗さの測定は、小坂研究所製サーフコーダSEF3500で行ない、測定器の触針半径は2μm、触針圧は0.7mN、触針の送り速さは0.1mm/secとして行なった。
【0063】
現像ローラ1の抵抗値は、弾性層34と半導電性樹脂膜35を含めた測定で1×10〜1×10Ωの範囲が好ましい。第1の実施形態では、現像ローラ1の抵抗値の測定方法を次のようにして行なった。
【0064】
図6は、現像ローラ1の抵抗値の測定を説明する説明図である。図6において、現像ローラ1の抵抗値は、ヒューレット・パッカード社製ハイレジスタンスメータ(型番:4339B)36を用いて測定した。図6(B)に示すように、現像ローラ1には、幅2.0mm、直径6.0mmのSUS株式会社製のボールベアリング37を20gfの力で接触させ、芯金33と現像ローラ1の表面との間の抵抗値を測定した。図6(A)に示すように、ボールベアリング37はP1からP6まで6箇所とし、現像ローラ1を50rpmの速度で回転させながら、芯金33とP1〜P6の各点との間の抵抗値を測定した。第1の実施形態では、P1からP6までの各点で1周につき各100ポイント測定し、計600ポイントの抵抗値を測定し、その平均値を現像ローラ1の抵抗値とした。また、このときの現像ローラ1への印加電圧は、100Vとした。
【0065】
トナー供給ローラ2は、金属製の芯金外周に成形された発泡体で構成されるものである。例えば、第1の実施形態のトナー供給ローラ2は、硬度50度(アスカーF)のウレタンゴム発泡体を厚さ5mmで成形したものを用いる。トナー供給ローラ2は現像ローラ1に対して強く接触させて設けられており、現像ローラ1に対するニップ量は0.5mmとする。
【0066】
トナー回収ブラシローラ5は、感光ドラム3に現像されなかった現像ローラ1上のトナーを回収するものであり、現像ローラ1と接触しながら、図1に図示する矢印方向に回転するものである。すなわち、現像ローラ1とトナー回収ブラシローラ5とは、各々の表面が当接部において同方向に移動する。なお、トナー回収ブラシローラ5は、現像ローラ1に対するニップ量は0.5mmで接触している。
【0067】
例えば、トナー回収ブラシローラ5は、所望の抵抗値に調整された導電性繊維を織り込んだ生地を、導電性の芯金にスパイラル状に巻きつけて構成されるものである。トナー回収ブラシローラ5の抵抗値は、例えば図6で図示した測定器を用いて測定することができる。トナー回収ブラシローラ5の抵抗値は、図6の測定器で、50V印加において、1×10〜1×1011Ωの範囲であることが望ましい。トナー回収ブラシローラ5の抵抗値が前記範囲より高くなると、ブラシ糸に電荷が蓄積され、現像ローラ1上の未現像トナーを除電できなくなるからである。また、トナー回収ブラシローラ5は、ブラシ糸の長さが3mm、繊度(太さ)が6デニール、植密度が75KF/インチとした。また、ブラシ繊維の素材としては、アクリル(SA7材)を使用した。
【0068】
撹拌部材12、13、14、15、16は、クランク形状の金属バーであり、図1に図示する破線上を矢印方向に回転させるものである。
【0069】
撹拌部材12、13、14は、トナー供給ローラ2にトナー10を搬送することができれば、図1に示す構成に限定されるものではない。例えば、撹拌部材の個数は3個に限定されるものではなく、2個、4個以上としてもよいし、また例えば、撹拌部材の位置や回転方向も限定されるものではない。
【0070】
撹拌部材15、16は、隔壁17の下方に設けられており、トナー回収ブラシローラ5によって回収されたトナー10をトナー搬送口7側に搬送するものである。撹拌部材15、16もトナー搬送口に回収トナー10を搬送することができれば、図1に示す構成に限定されるものではない。
【0071】
隔壁17は、トナー供給ブラシローラ2によるトナー供給部と、トナー回収ブラシローラ5によるトナー回収部を隔て、トナー供給部からトナー回収部にトナー10が流入するのを防ぐものである。この隔壁17を設けることにより、トナー回収ブラシローラ5の表面に多量のトナー10が付着することがなく、現像ローラ1からのトナー10の回収効率を維持することができる。
【0072】
トナー収容部10aは、隔壁17を境にしたトナー回収ブラシローラ5の側ではなく、トナー供給ローラ2の側に設置した。これにより、トナー収容部10aからトナー供給ローラ2へ効率良くトナー10を補給することができ、且つ、トナー補給時にトナー回収ブラシローラ5に多量のトナー10が付着することが抑えられる。
【0073】
(A−2)第1の実施形態の動作
(A−2−1)画像形成装置における動作
次に、第1の実施形態の画像形成装置200における画像形成動作について、図1〜図4を用いて説明する
例えばパーソナルコンピュータ等の上位装置から印刷命令が印刷制御部25に入力されると、印刷制御部25は、駆動制御部32aを通じて駆動モータ32を駆動させる。駆動モータ32は感光ドラム3を駆動させ、感光ドラム3は、図1に図示する方向に一定の周速度で回転する。
【0074】
感光ドラム3の回転による駆動を受けて、現像ローラ1、供給ローラ2、トナー回収ブラシローラ5、撹拌部材11、12、13、14、15、16が、それぞれ図1の図示方向に回転する。
【0075】
帯電ローラ用電源4aは、印刷制御部25の制御の下、帯電ローラ4に対して直流電圧の印加をする。これにより、帯電ローラ4と接触又は圧接する感光ドラム3の表面が一様均一に帯電する。
【0076】
次に、露光プロセスでは、ヘッド駆動制御部18aが、印刷制御部25の制御の下、露光装置18に対して露光制御を行なう。露光装置18は、画像データ編集メモリ28に記録されている画像データに対応した光を感光ドラム3に照射する。これにより、感光ドラム3の表面に静電潜像が形成される。
【0077】
さらに、後に詳述する現像装置100Aの動作により、感光ドラム3上の静電潜像にトナー10が付着し、静電潜像が現像される。
【0078】
一方、記録媒体21は、用紙搬送ローラ22、23、24により搬送されて転写ローラ19に送られる。転写ローラ用電源19aは転写ローラ19に電圧を印加する。感光ドラム3に対向して設けられた転写ローラ19は回転し、感光ドラム3上に形成されたトナー像が記録媒体21に転写される。
【0079】
その後、記録媒体21は定着器20へ搬送される。定着器20では、熱及び圧力によりトナー10が溶融し、記録媒体21の繊維間にトナー10が浸透し、定着が行なわれる。定着された記録媒体21は搬送ローラ24により画像形成装置200の外部へ送出される。
【0080】
また、転写後の感光ドラム3には若干のトナー10が残留する場合があるが、この残留トナー10は、クリーニングブレード9によって除去される。このようにして感光ドラム3は繰り返し利用される。
【0081】
(A−2−2)現像装置における動作
次に、第1の実施形態の現像装置100Aにおける動作について図面を用いて詳細に説明する。
【0082】
なお、感光ドラム3は、その外形が30mmであり、単位時間当たりの回転数が158rpm(42ppm相当)であるとする。
【0083】
現像ローラ1は、その外形が16mmであり、感光ドラム3との間の回転線速度比が回転線速度比ω=1.27であるとする。
【0084】
トナー供給ローラ2は、その外形が12mmであり、現像ローラ1との間の回転線速度比が回転線速度比ω=1.21であるとする。
【0085】
さらにトナー回収ブラシローラ5は、その外形が10mmであるとする。
【0086】
図2は、現像装置100Aへの電圧印加方法と、トナー回収ブラシローラ5及び現像ローラ1間のニップ量とを示す図である。
【0087】
図2において、現像ローラ1には、現像ローラ用電源1aから直流バイアス電圧−200Vが印加される。
【0088】
また、トナー供給ローラ2及び現像ブレード6には、トナー供給ローラ用電源2aから、現像ローラ1と異なる直流バイアス電圧−300Vが印加される。
【0089】
従って、現像ローラ1と供給ローラ2との間、現像ローラ1と現像ブレード6との間には、電位差による電界が、供給ローラ2及び現像ブレード6から現像ローラ1の方向に生じる。この電位差による電界の方向は、トナー10が引きつけられる方向である。
【0090】
トナー供給ローラ2が回転すると、トナー供給ローラ2と現像ローラ1との間の摩擦により、トナー10は摩擦帯電される。そのため、トナー供給ローラ2に印加されたバイアス電圧−300Vと現像ローラ1に印加されたバイアス電圧−200Vとの電圧差によって生じる電界により、トナー10は、トナー供給ローラ2から現像ローラ1に供給される。
【0091】
現像ローラ1は、摩擦帯電されたトナー10を吸着し、図1に図示する矢印方向に回転する。現像ローラ1に吸着されたトナー10は、現像ローラ1の回転により、回転方向の下流側に搬送される。
【0092】
現像ローラ1の回転方向の下流側には、現像ブレード6が配置されている。現像ブレード6は現像ローラ1の表面を押圧しており、現像ローラ1上のトナー10は規制され、均一な厚さのトナー層が形成される。このとき、現像ブレード6は現像ローラ1の表面を押圧しているから、現像ブレード6と現像ローラ1との間でトナー10が擦られ、トナー10は摩擦帯電される。
【0093】
このようにして、現像ブレード6を通過したトナー10は、更に現像ローラ1の回転により運ばれ、感光ドラム3上の静電潜像に付着し、静電潜像が現像される。
【0094】
一方、静電潜像に現像されずに現像ローラ1の表面に保持されているトナー10は、現像ローラ1の回転により、トナー回収領域51である現像ローラ1とトナー回収ブラシローラ5とのニップ部に到達する。
【0095】
図2に示すように、トナー回収領域51は、現像ローラ1に対してトナー回収ブラシローラ5が当接しており、そのニップ量は0.5mmである。トナー回収領域51において、現像ローラ上1のトナー10は、トナー回収ブラシローラ5に移動して回収される。
【0096】
ここで、トナー回収ブラシローラ5には、トナー回収ブラシ用電源5aから直流電圧及び交流電圧の重畳電圧が印加される。これは、トナー回収ブラシローラ5によるトナー回収効率を向上させるためである。
【0097】
つまり、現像ローラ1には直流電圧が印加されているので、トナー回収ブラシローラ5に直流電圧及び交流電圧の重畳電圧を印加することにより、トナー回収ブラシローラ5と現像ローラ1との間には振動電界が形成される。従って、トナー回収領域51において、現像ローラ1とトナー回収ブラシローラ5とのニップ部により、負帯電性のトナー10が振動を繰り返しながらトナー回収ブラシローラ5に移動して回収される。
【0098】
ここで、現像ローラ1とトナー回収ブラシローラ5との間に振動電界を形成するために、現像ローラ1に直流電圧及び交流電圧の重畳電圧を印加する方法も考えられる。
【0099】
しかし、第1の実施形態では、トナー回収ブラシローラ5に直流電圧及び交流電圧の重畳電圧を印加する。第1の実施形態では、現像ローラ1は感光ドラム3と接触して現像する方式を採用しており、帯電している感光ドラム3と現像ローラ1との間の電位差により電界が生じる。この状態で、現像ローラ1に対して前記重畳電圧を印加してしまうと、感光ドラム3と現像ローラ1との間で交流電圧が生じてしまうから、現像ローラ1上のトナー10が保持する帯電量に偏りが生じ得る。そのため、例えば、トナー10が移動しすぎてしまう等のように、現像ローラ1上でトナー10のムラができてしまい、その結果、画像品質の低下を引き起こしてしまうことがある。
【0100】
そこで、第1の実施形態では、トナー回収ブラシローラ5に直流電圧及び交流電圧の重畳電圧を印加することで、現像ローラ1とトナー回収ブラシローラ5との間の電界を、トナー回収ブラシローラ5側の制御で行なうようにする。
【0101】
例えば、トナー回収ブラシ用電源5aは、トナー回収ブラシローラ5に、交流バイアス電圧成分として、peak to peakが1200Vの周波数5kHzの矩形波を印加する。また、トナー回収ブラシ用電源5aは、トナー回収ブラシローラ5に直流バイアス電圧成分を0Vとする。そのため、+600Vから−600Vまでの交流バイアス電圧が、トナー回収ブラシローラ5に印加されることとなる。また、現像ローラ1には−200Vの直流電圧が印加されているので、トナー回収ブラシローラ5と現像ローラ1との電界は、+800Vから−400Vまでの振動電界が形成される。したがって、トナー回収領域51において、現像ローラ1とトナー回収ブラシローラ5とのニップ部では、負帯電性トナーが振動を繰り返しながら、トナー回収ブラシローラ5に移動して回収される。
【0102】
なお、トナー回収ブラシローラ5と現像ローラ1との間に振動電界を形成するために、トナー回収ブラシローラ5に印加される交流電圧の上側ピークの絶対値と、下側ピークの絶対値とが、現像ローラ1に印加される電圧の平均値よりも大きいことが望ましい。
【0103】
図7は、トナー回収ブラシローラ5に交流バイアス電圧を印加した場合の、トナー回収効率及び現像ローラ1の表面に残留したトナー10の帯電量の関係を説明する図である。
【0104】
図8は、図7の比較例であり、トナー回収ブラシローラ5に直流バイアス電圧を印加した場合の、トナー回収効率及び現像ローラ1の表面に残留したトナー10の帯電量の関係を説明する図である。
【0105】
なお、図7及び図8では、現像ローラ1の表面の回転線速度をVdとし、トナー回収ブラシロール5の表面の回転線速度をVrとし、回転線速度比Vr/Vd=1.0とする場合を例示する。
【0106】
また、図7及び図8において、トナー回収効率は85%以上をもって良好な回収効率とする。また、現像ローラ1上のトナーの帯域量とは、残留トナーの単位質量当たりの電荷量をいい、ここでは、トナーの帯電量が、−10[μC/g]以上かつ0[μC/g]以下の範囲を良好範囲とする。
【0107】
図8を参照すると、直流バイアス電圧値が450Vのときに、85%以上の良好なトナー回収効率を得ているが、トナー帯電量は、2μC/g程度であり、良好範囲から外れていることがわかる。
【0108】
つまり、比較例の場合、良好な回収効率を得る条件のとき、トナーが異常帯電してしまう。これは、回収効率を得るために必要な強い電界が、常にトナー回収ブラシローラ5に向かって発生しているため、現像ローラ1表面に残留したトナー10が逆帯電しやすいことを意味している。
【0109】
これに対して、図7を参照すると、peak to peakの交流バイアス電圧値を1200Vとするときに、85%以上の良好なトナー回収効率を得ており、トナー帯電量も良好範囲にあることがわかる。
【0110】
図7に示すように、トナー回収ブラシローラ5に交流バイアス電圧を印加して振動電界を発生させた場合、トナー回収領域51内ではトナーには逆方向の電界が交互にかかる。そのため、トナー10の保持する電荷量が過剰に偏ることなく、最終的には、トナー10が平均的な電界の向きであるトナー回収ブラシローラ5に移動させることができる。
【0111】
また、図2において、トナー回収ブラシローラ5は、現像ローラ1の回転方向と逆方向で回転している。従って、トナー回収領域51では、各々の表面がニップ量0.5mmで当接しながら、トナー回収ブラシローラ5及び現像ローラ1は同じ方向に移動する。
【0112】
ここで、各々の表面の回転線速度が異なると、トナー回収ブラシローラ5及び現像ローラ1は摺擦しながら回転することになるため、現像装置100Aにおける駆動負荷トルクが増加する。現像装置100Aの駆動負荷トルクの増加は、現像装置100A内の要素部材の摩耗を早めるだけでなく、摩擦によりトナー10を劣化させる。トナー10が摩擦により劣化すると、結果として、画像品質の低下を引き起こす。
【0113】
そこで、このことに鑑み、第1の実施形態では、現像ローラ1及びトナー回収ブラシローラ5の回転線速度比を、以下に示すようにして調整した。
【0114】
これにより、駆動負荷トルクの増分を比較的小さくする好適な回転線速度比を得ることができた。これは、駆動負荷トルクを小さくできるので、摩擦によるトナー10の劣化を回避でき、画像品質の低下を防ぐことができる。また、これは、現像装置100Aの駆動負荷トルクの増加を抑えるので、現像装置100A内の要素部材の磨耗を遅くらせ、消費電力の軽減、装置の長寿命化を図ることができる。
【0115】
図9は、現像装置100Aにおける駆動負荷トルクと回転線速度比との関係を説明する説明図である。
【0116】
図9において、縦軸は、駆動負荷トルクの増分Δ[kg・cm]であり、トナー回収ブラシローラ5が設けられていない場合の駆動負荷を0[kg・cm]としている。横軸は、現像ローラ1表面の回転線速度をVdとし、トナー回収ブラシロール5表面の回転線速度をVrとするときの回転線速度比Vr/Vdである。
【0117】
図9では、トナー回収ブラシローラ5との比較例として、発泡シリコンゴムの硬度F56度(アスカーF)と硬度F82度(アスカーF)とを、トナー回収部材として用いた場合も示す。
【0118】
なお、いずれの場合も、現像ローラ1に対するニップ量は0.5mmである。ここで、トナー回収部材を現像ローラ1に安定して当接させるためには、トナー回収部材と現像ローラ1との間のニップ量を0.5mm以上とすることが望ましい。当該ニップ量が大きくなると、当接部材同士の摺擦が大きくなり、摩擦による回収性が向上する反面、駆動負荷トルクが過大に増加することになる。そのため、第1の実施形態では、トナー回収部材と現像ローラ1との間のニップ量を0.5mmとした。
【0119】
第1の実施形態では、現像ローラ1表面の回転線速度がVd=249.9[mm/sec]とし、トナー回収部材表面の回転線速度Vrを調整して、Vr/Vdが「0.55」、「0.7」、「0.8」、「1.0」、「1.2」、「1.3」、「1.45」の場合の駆動負荷トルクを測定した。
【0120】
なお、第1の実施形態では、駆動負荷トルクの増分Δが0.0〜1.0[kg・cm]以下の範囲を良好範囲とした。
【0121】
図9において、第1の実施形態のトナー回収ブラシローラ5を用いた場合、回転線速度比が0.7≦Vr/Vd≦1.2のとき、駆動負荷トルクの増分Δは良好範囲にあることがわかる。
【0122】
すなわち、トナー回収ブラシローラ5と現像ローラ1との表面の回転線速度比を0.7≦Vr/Vd≦1.2とすることで、駆動負荷トルクの過大な増加が抑えられ、現像ローラ1との安定した当接が確保できる。
【0123】
また、図9において、トナー回収ブラシローラ5を用いた場合の駆動負荷トルクの増分Δは、発泡シリコン硬度F56度及び発泡シリコン硬度F82度を用いた場合に比べて小さいことがわかる。
【0124】
このように、トナー回収部材として硬度の高い部材を用いると、駆動負荷トルクが増加してしまう。これに対して、トナー回収ブラシローラ5を用いることは、硬度の高い部材を用いる場合よりも、駆動負荷トルクの増大が抑えられ、良好なトナー回収効率が得られる。
【0125】
上記のようにして、現像ローラ1上に残留したトナー10は、トナー回収ブラシローラ5により回収される。回収されたトナー10は、撹拌部材16、15によりトナー搬送口7に搬送される。
【0126】
また、現像ローラ1は図1の図示方向に回転し、現像ローラ1上のトナー10の回収された部分は、供給ローラ2からトナー10が供給される。
【0127】
次に、現像ローラ1とトナー回収ブラシローラ5との間の回転線速度比Vr/Vdを調整したときのカブリの測定結果を説明する。
【0128】
図10は、現像装置100Aを用いた連続試験によるカブリの測定結果を説明する説明図である。縦軸は色相差ΔEであり、横軸は回転線速度比Vr/Vdである。
【0129】
なお、図10における連続試験条件は、「連続パターン:0%(白色)連続印字」、「通紙枚数:10000枚」、「感光ドラム回転数:47885回転」、「印字速度:42ppm相当」とする。
【0130】
ここで、カブリとは、正常に帯電したトナーに対して、低い帯電量のトナーや逆極性に帯電したトナーにより画像の背景部、すなわち非画像部にトナーが付着することをいう。また、カブリトナーとは、上記カブリを引き起こす低い帯電量のトナーや、逆極性に帯電したトナーをいう。
【0131】
カブリの測定方法は、感光ドラム3の表面に付着したトナーを、分光測色計を用いて測定する方法を用いた。
【0132】
例えば、画像形成装置200は0%印刷を行なう。そして、0%印刷の途中で画像形成装置200を止めて、現像後転写前の感光ドラム3の表面に粘着テープを付着させる。そして、感光ドラム3に付着させた粘着テープ(以下、カブリ粘着テープともいう)を白色用紙に貼り付ける。
【0133】
上記の比較用として、感光ドラム3に付着させていない粘着テープ(以下、比較用テープともいう)を、上記同様に、白色用紙に貼り付ける。なお、粘着テープとして住友スリーエム株式会社製のスコッチメンディングテーブルを用いた。
【0134】
そして、カブリ採取テープと比較用テープとの色相差を、分光測色計を用いて測定する。第1の実施形態では、分光測色計として、コニカミノルタ製、CM−2600d、測定径=φ8mmを用いた。
【0135】
また、色相差(L*a*b表色系色度)ΔEは、ΔE=(ΔL+Δa+Δb1/2で算出した。第1の実施形態では、色相差ΔEが0以上5以下の範囲を良好範囲とする。
【0136】
図10及び図11に示すように、回転線速度比が0.7≦Vr/Vd≦1.2のときに、色相差ΔEが良好範囲にあることがわかる。すなわち、回転線速度比が0.7≦Vr/Vd≦1.2である場合、カブリが小さく、良好な画像品質を維持することができる。
【0137】
(A−3)第1の実施形態の効果
以上のように、第1の実施形態の現像装置は、トナー回収ブラシローラを用いることで、現像装置の駆動負荷トルクを過剰に増加させることなく、現像ローラ上のトナーを回収することができる。その結果、画像形成装置は、品質の良い画像を提供することができる。
【0138】
また、第1の実施形態の現像装置は、トナー回収ブラシローラに対して、直流電圧及び交流電圧の重畳電圧を印加することにより、良好なトナー回収効率を得ることができる。
【0139】
さらに、第1の実施形態の現像装置は、トナー回収ブラシローラと現像ローラとの回転線速度比Vr/Vdを0.7≦Vr/Vd≦1.2とすることで、現像装置の駆動負荷トルクの過剰な増大を抑えながら、良好なトナー回収効率を得ることができる。
【0140】
(B)第2の実施形態
次に、本発明の現像装置及び画像形成装置の第2の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0141】
(B−1)第2の実施形態の構成
第2の実施形態の画像形成装置の構成は、第1の実施形態で説明した画像形成装置200の構成と同じである。
【0142】
第2の実施形態では、現像装置の構成が第1の実施形態と異なる。そこで、以下では、第2の実施形態の現像装置に特有の構成を中心に詳細に説明する。
【0143】
図12は、第2の実施形態の現像装置100Bの内部構成を示す断面図である。
【0144】
図12において、第2の実施形態の現像装置100Bは、現像ローラ1、トナー供給ローラ2、感光ドラム3、帯電ローラ4、トナー回収ブラシローラ5、現像ブレード6、クリーニングブレード9、撹拌部材11、12、13、14、15、16、フリッカー8を有する。なお、図12では、第1の実施形態で説明した構成要素と対応する構成要素には、同一の番号を付す。
【0145】
第2の実施形態と第1の実施形態との構成上の相違点は、現像装置100Bがフリッカー8を備える点である。
【0146】
フリッカー8は、トナー回収ブラシローラ5に保持されるトナー10を飛翔させる現像剤飛翔部材である。フリッカー8は、トナー回収ブラシローラ5に保持されるトナー10を弾き飛ばすことができるものであれば様々な構成を広く適用することができる。
【0147】
フリッカー8は、例えば、断面直径3mm程度の金属(例えば、ステンレス等)からなる円柱状のバーとしたり、又例えば、厚さが0.1mm程度の金属板としたりすることができる。第2の実施形態では、フリッカー8が断面直径3mmの円柱状のバーからなる場合を例示する。
【0148】
図13は、現像装置100Bへの電圧印加方法と、トナー回収ブラシローラ5及び現像ローラ1間のニップ量と、トナー回収ブラシローラ5及びフリッカー8間のニップ量とを示す図である。
【0149】
図13に示すように、フリッカー8は、トナー回収ブラシローラ5に対するニップ量を0.5mmとして設けられている。これは、トナー回収ブラシローラ5と現像ローラ1との間のニップ量が0.5mmであるため、現像ローラ1と接触部分にトナー10が保持されているからである。従って、フリッカー8のトナー回収ブラシローラ5に対するニップ量は、トナー回収ブラシローラ5と現像ローラ1との間のニップ量に合わせて調整することができる。
【0150】
なお、フリッカー8として金属板を使用する場合、トナー回収ブラシローラ5のブラシ繊維が、金属板のエッジにより摩耗等しやすくなるおそれがある。そこで、例えば、金属板のエッジ先端部などブラシ繊維と当接する部分に対して曲げ加工等を施すようにしてもよい。
【0151】
また、図13では、フリッカー8にバイアス電圧を印加しないが、フリッカー8にバイアス電圧を印加するようにしてもよい。
【0152】
(B−2)第2の実施形態の動作
次に、第2の実施形態の現像装置100Bにおける動作について図面を参照しながら説明する。第2の実施形態の現像装置100Bの基本的な動作は、第1の実施形態と同じであり重複するので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0153】
現像ローラ1は図13に図示する回転方向に回転する。また、トナー回収ブラシローラ5は図13に図示する回転方向に回転し、トナー回収領域51においてトナー回収ブラシローラ5は現像ローラ1表面のトナー10を回収する。
【0154】
トナー回収ブラシローラ5の回転に伴い、現像ローラ1と接触した部分は、フリッカー8との当接部に至る。
【0155】
このとき、トナー回収ブラシローラ5のブラシ繊維はフリッカー8によって湾曲するが、当接部が通過する際、トナー回収ブラシローラ5の回転に伴うブラシ繊維の反発力により、トナー回収ブラシローラ5に保持されていたトナー10が、略下方に弾き飛ばされる。
【0156】
そして、撹拌部材15、16によって、トナー10はトナー搬送口7側に搬送される。
【0157】
図14は、連続印字試験を行なったときのトナー回収効率を示す説明図である。図14では、第1の実施形態の現像装置100Aを用いた場合と、第2の実施形態の現像装置100Bを用いた場合のトナー回収効率を示している。
【0158】
連続印字試験の条件は、温度が23℃、相対湿度が40%の環境内で、印刷濃度が0%(いわゆる白紙印字)とする場合であり、10,000枚の連続印刷を行なう場合とする。
【0159】
図14に示すように、第2の実施形態の現像装置100Bは、第1の実施形態の現像装置100Aを用いる場合に比べて、連続印刷枚数が増えるほど、経時的に良好なトナー回収効率を得ることがわかる。
【0160】
これは、トナー回収ブラシローラ5に保持されたトナー10を、フリッカー8が強制的に飛翔させることで、ブラシ間に蓄積されるトナー量が低減されることで理解できる。
【0161】
(B−3)第2の実施形態の効果
以上のように、第2の実施形態の現像装置は、第1の実施形態の効果に加えて、フリッカーが、トナー回収ブラシローラに保持されているトナーを強制的に飛翔させることで、トナー回収効率を更に向上させることができる。
【0162】
(C)他の実施形態
上述した第1及び第2の実施形態においても、種々の変形実施形態を説明したが、さらに次のような変形実施形態も適用することができる。
【0163】
本発明は、電子写真方式のカラー又はモノクロの画像形成装置、及び、それらの画像形成装置の現像装置に適用することができる。
【0164】
上述した第1及び第2の実施形態では、トナー回収ブラシローラの回転方向と、現像ローラとの回転方向とが逆方向である場合を例示したが、同じ方向としてもよい。
【0165】
上述した第1及び第2の実施形態において、トナー回収ブラシローラの構成は特に限定されることなく様々な構成を広く適用することができる。例えば、ブラシ繊維の長さ、太さ、植密度は、特に限定されるものではない。また例えば、ブラシ繊維の芯金への取り付け方や取り付け態様も特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0166】
100A及び100B…現像装置、
1…現像ローラ、2…トナー供給ローラ、3…感光ドラム、
4…帯電ローラ、5…トナー回収ブラシローラ、6…現像ブレード、
7…トナー搬送口、8…フリッカー、9…クリーニングブレード、
10…トナー、10a…トナー収容部、
11、12、13、14、15、16…撹拌部材、17…隔壁、
200…画像形成装置、
18…露光装置、19…転写ローラ、20…定着器、21…記録媒体、
22、23、24…搬送ローラ、
25…印刷制御部、26…インターフェイス制御部、27…受信メモリ、
28…画像データ編集メモリ、29…操作部、30…センサ群、
1a…現像ローラ用電源、2a…トナー供給ローラ用電源、
4a…帯電ローラ用電源、5a…トナー回収ブラシ用電源、
18a…ヘッダ駆動制御部、19a…転写ローラ用電源、
20a…定着制御部、31a…搬送モータ制御部、32a…駆動制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像担持体の静電潜像に現像剤を付着させて、前記静電潜像を現像する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に前記現像剤を供給する供給部材と、
導電性ブラシ部を有するものであり、前記導電性ブラシ部が前記現像剤担持体に当接し、前記静電潜像を現像した後に前記現像剤担持体の表面に保持される前記現像剤を移して回収する現像剤回収ブラシ部材と
を備えることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記現像剤回収ブラシ部材に対して、少なくとも交流電圧を印加するものであって、前記現像剤担持体と前記現像剤回収ブラシ部材との間に振動電界を形成させる電圧印加手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記電圧印加手段が、前記現像剤回収ブラシ部材に対して、直流電圧と交流電圧とを重畳させた重畳電圧を印加するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記現像剤回収ブラシ部材の表面における回転線速度をVrとし、前記現像剤担持体の表面における回転線速度をVdとするときに、回線線速度比Vr/Vdが0.7≦Vr/Vd≦1.2であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の現像装置。
【請求項5】
前記現像剤担持体の前記現像剤を回収した前記現像剤回収ブラシ部材に保持される前記現像剤を飛翔させる現像剤飛翔部材を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の現像装置。
【請求項6】
前記現像剤が、非磁性一成分トナーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の現像装置。
【請求項7】
静電潜像担持体の静電潜像に現像剤を付着させて、前記静電潜像を現像する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体に前記現像剤を供給する供給部材と、
導電性ブラシ部を有するものであり、前記導電性ブラシ部が前記現像剤担持体に当接し、前記静電潜像を現像した後に前記現像剤担持体の表面に保持される前記現像剤を移して回収する現像剤回収ブラシ部材と
を有する現像装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−88673(P2013−88673A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230038(P2011−230038)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】