説明

現在位置特定装置およびプログラム

【課題】GPS受信機を位置検出のための他の装置と併用する環境において、GPS受信機の消費電力低減を実現する新規な技術を提供する。
【解決手段】車両用ナビゲーション装置は、自律航法用のための信号を出力するセンサから出力される信号の値と車両の現在位置との間の関係式を用いて、センサが出力された信号に応じた前記車両の現在位置を算出し、また、GPS受信部が出力した信号に基づいて、間欠的に、前記関係式を補正する。また、車両用ナビゲーション装置は、関係式を補正したことに起因して(ステップ130)、GPSアンテナおよびGPS受信部への電力供給を一時的に停止させ(ステップ145)、その後、復帰条件が満たされたことに起因して、停止している前記電力供給を再開させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現在位置特定装置およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、GPS受信機から出力された位置情報を用いて現在位置を算出する現在位置特定装置において、消費電力を低減するために、GPS受信機の動作を間欠的にし、または、現在位置の算出処理を間欠的に実行する技術が知られている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−277528号公報
【特許文献2】特開2000−338218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらの技術は、位置検出のための装置としてGPS受信機を単独で使用するという前提において消費電力を低減する技術であり、GPS受信機以外の位置検出用の装置についての言及は全くない。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、衛星航法用受信機(例えば、GPS受信機)を位置検出のための他の装置と併用する環境において、GPS受信機の消費電力低減を実現する新規な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、車両に搭載される現在位置特定装置であって、衛星航法用アンテナ(2)が衛星航法用衛星から受信した信号に対して周波数変換および復調を行い、その結果の信号を出力する衛星航法用受信部(11)と、自律航法用の検出信号を出力するセンサ(3、12、13)から出力される前記検出信号の値と前記車両の現在位置との間の関係式を用いて、前記センサ(3、12、13)から出力された前記検出信号に応じた前記車両の現在位置を算出し、また、前記衛星航法用受信部(11)が出力した信号に基づいて、間欠的に、前記関係式を補正する制御部(17)と、を備え、前記制御部(17)は、前記関係式を補正したことに起因して、前記衛星航法用アンテナ(2)および前記衛星航法用受信部(11)のいずれかまたは両方への電力供給を一時的に停止させ、その後、所定の復帰条件が満たされたことに起因して、停止している前記電力供給を再開させることを特徴とする現在位置特定装置である。
【0007】
このように、制御部がセンサからの検出信号に応じて車両の現在位置を算出し、また、センサの出力する検出信号の値と車両の現在位置との間の関係式を、衛星航法用受信部が出力した信号に基づいて、間欠的に、補正するようになっている。本発明は、衛星航法用受信部がこのように使用されることを利用する。すなわち、衛星航法用受信部が出力した信号に基づいてこの関係式を補正したことに起因して、衛星航法用アンテナおよび衛星航法用受信部のいずれかまたは両方への電力供給を一時的に停止させる。
【0008】
このようになっていることで、衛星航法用アンテナおよび衛星航法用受信部のいずれかまたは両方への電力供給が一時的に停止され、衛星航法用受信部から信号を一時的に受けることができなくなっても、センサの検出信号の値と車両の現在位置との間の関係式がその前に補正されているので、センサの検出信号を用いた現在位置の特定の精度は高く保たれる。したがって、衛星航法用アンテナおよび衛星航法用受信部のいずれかまたは両方への電力供給が一時的に停止される期間を長くして消費電力を抑えても、現在位置特定装置における現在位置の測定精度が高く維持される。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の現在位置特定装置において、当該現在位置特定装置は、経路案内の機能を有するナビゲーション装置であって、前記制御部(17)は、前記関係式を補正した場合でも、当該現在位置特定装置が経路案内を行っている場合は、前記衛星航法用アンテナ(2)への電力供給も前記衛星航法用受信部(11)への電力供給も停止させないことを特徴とする。
【0010】
このように、現在位置特定装置が経路案内機能を有するナビゲーション装置である場合、現在位置特定装置が経路案内を行っている場合の方が、経路案内を行っていない場合に比べ、現在位置特定に高い精度が求められる。したがって、上記のように、関係式を補正した場合でも、現在位置特定装置が経路案内を行っている場合は、電力供給を停止させないことで、経路案内時の現在位置特定の精度を更に高くすることができる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の現在位置特定装置において、前記復帰条件の1つは、前記電力供給を停止した後の前記車両の移動距離が基準距離を超えることであることを特徴とする。
【0012】
このようにすることで、推測航法の精度の劣化要因の増大に応じて、停止した電力供給を再開させることができるので、効率的なタイミングで、電力供給を再開させることができる。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の現在位置特定装置において、当該現在位置特定装置は、地図表示の機能を有し、前記基準距離は、当該現在位置特定装置が地図表示を行っている場合よりも、地図表示を行ってない場合の方が長いことを特徴とする。
【0014】
このようにするのは、地図表示を行っていない場合(例えば、動画再生中、オーディオ操作画面表示中等)よりも地図表示を行っている場合の方が、より正確な現在位置の特定が望まれるので、より早く衛星航法用アンテナおよび衛星航法用受信部への電力供給を再開したいからである。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の現在位置特定装置において、前記復帰条件の1つは、前記電力供給を停止した後の前記車両の旋回角度が基準角度を超えることであることを特徴とする。
【0016】
このようにすることで、推測航法の精度の劣化要因の増大に応じて、停止した電力供給を再開させることができるので、効率的なタイミングで、電力供給を再開させることができる。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の現在位置特定装置において、当該現在位置特定装置は、地図表示の機能を有し、前記基準角度は、当該現在位置特定装置が地図表示を行っている場合よりも、地図表示を行ってない場合の方が大きいことを特徴とする。
【0018】
このようにするのは、地図表示を行っていない場合(例えば、動画再生中、オーディオ操作画面表示中等)よりも地図表示を行っている場合の方が、より正確な現在位置の特定が望まれるので、より早く衛星航法用アンテナおよび衛星航法用受信部への電力供給を再開したいからである。
【0019】
また、請求項7に記載の発明は、衛星航法用アンテナ(2)が衛星航法用衛星から受信した信号に対して周波数変換および復調を行い、その結果の信号を出力する衛星航法用受信部(11)と、制御部(17)と、を備え、車両に搭載される現在位置特定装置、に用いられるプログラムであって、前記制御部(17)を、自律航法用の検出信号を出力するセンサから出力される前記検出信号の値と前記車両の現在位置との間の関係式を用いて、前記センサから出力された前記検出信号に応じた前記車両の現在位置を算出し、また、前記衛星航法用受信部が出力した信号に基づいて、間欠的に、前記関係式を補正する現在位置算出手段(17a)、および、前記関係式を補正したことに起因して、前記衛星航法用アンテナおよび前記衛星航法用受信部のいずれかまたは両方への電力供給を一時的に停止させ、その後、所定の復帰条件が満たされたことに起因して、停止している前記電力供給を再開させる電力供給制御手段(17b)、として機能させるプログラムである。このように本発明の特徴は、プログラムの発明としても実現可能である。
【0020】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態における車両用ナビゲーション装置1の構成図である。
【図2】電力供給制御処理のフローチャートである。
【図3】電力供給制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る車両用ナビゲーション装置1を示す。
【0023】
車両用ナビゲーション装置1は、GPS受信部11、ジャイロセンサ12、Gセンサ13、ハードディスクドライブ14、RAM15、システム電源回路16、およびCPU17を備えている。
【0024】
GPS受信部11は、車両に搭載されたGPSアンテナ2がGPS衛星(衛星航法用衛星の一例に相当する)から受信した信号に対して周波数変換、復調、増幅等を行い、その結果の信号をCPU17に出力する。GPS受信部11からCPU17に出力される信号には、航法データ、C/Aコード等の位置情報が含まれている。
【0025】
ジャイロセンサ12は、車両の旋回角速度に応じた値(例えば電圧)の検出信号をCPU17に出力する周知のセンサである。Gセンサ13は、車両の加速度に応じた値(例えば電圧)の検出信号をCPU17に出力する周知のセンサである。
【0026】
ハードディスクドライブ(以下、HDDという)14は、磁気記憶媒体を備え、この記憶媒体には、地図表示用および経路案内用の周知の地図データ、および、CPU17が実行するプログラムが記録されている。RAM15は、CPU17の作業領域として使用される記憶媒体である。
【0027】
システム電源回路16は、車両内のバッテリ電源から電力供給を受け、受けた供給電力を、車両用ナビゲーション装置1の各部11〜17およびGPSアンテナ2に配分する回路である。このシステム電源回路16からGPS受信部11およびGPSアンテナ2への電力供給の有無は、CPU17からの制御に応じて切り替わるようになっている。なお、GPSアンテナ2は、電力供給を受けて作動する増幅回路を備えている。したがって、GPSアンテナ2が電力供給を受けることができなくなると、GPS衛星からの信号を受信できなくなる。
【0028】
CPU17は、HDD14からプログラムを読み出して実行することで、各種処理を実現する。CPU17がプログラムを読み出して実行する処理としては、現在位置算出処理17a、地図表示制御処理、誘導経路算出処理、経路案内処理、電力供給制御処理17b等がある。CPU17は、処理を、タイムシェアリング方式で実質的に同時に実行できるようになっている。
【0029】
現在位置算出処理17aは、GPS受信部11および自律航法用のための検出信号を出力する各種センサから受けた当該検出信号に基づいて、定期的に(例えば0.1秒に1回)車両の現在位置を算出する処理である。ここで、自律航法用のための検出信号を出力するセンサとしては、上述のジャイロセンサ12およびGセンサ13に加え、車両に搭載されると共に車速に概ね比例した周波数の車速パルス信号(検出信号に相当する)をCPU17に出力する車速センサ3がある。
【0030】
地図表示制御処理は、現在位置算出処理17aが算出した現在位置を含む地図画像を地図データに基づいて構成し、構成した地図画像を図示しない車載の画像表示装置に表示させる装置である。
【0031】
誘導経路算出処理は、図示しない操作部(ボタン、タッチパネル等)を介してユーザによる目的地の入力を受け付け、現在位置から当該目的地までの最適な誘導経路を算出する処理である。
【0032】
経路案内処理は、算出された誘導経路に沿った走行を案内する処理であり、誘導経路と自車位置との位置関係を逐次監視し、誘導経路状の右左折交差点の手前に自車両が到達したとき等の必要時に、右折、左折等を指示する案内音声を図示しない音声出力装置に出力させ、また、右左折交差点の拡大図を上記画像表示装置に表示させる処理である。なお、経路案内処理は、誘導経路が算出された後、ユーザが操作部に対して経路案内を開始する旨の操作を行った場合に、および、誘導経路が算出された後、車両が走行を開始した場合に、始まり、また、ユーザが操作部に対して経路案内を終了する旨の操作を行った場合に、および、車両が目的地近傍に到着した場合に、終了する。
【0033】
電力供給制御処理17bは、システム電源回路16を制御して、GPS受信部11およびジャイロセンサ12への電力供給の有無の切り替えを行う処理である。
【0034】
ここで、現在位置算出処理17aおよび電力供給制御処理17bについてより詳しく説明する。まず、現在位置算出処理17aについて説明する。現在位置算出処理17aにおいてCPU17は、基本的に、センサ3、12、13およびGPS受信部11のうち、自律航法用のセンサ3、12、13のみから出力される検出信号の値に基づいて、自車両の現在位置を所定の第1の周期で(例えば、0.1秒周期で)繰り返し算出し、算出した現在位置を、自車両の現在位置として確定する。
【0035】
この際、センサ3、12、13から出力された検出信号の値から現在位置を算出するために、センサ3、12、13から出力される検出信号の値と現在位置との間の関係式を用いる。
【0036】
この関係式は、例えば、Pc=Pp+D(v、g、y)という関係式を用いる。ここで、Pcは、今回の現在位置算出タイミングにおいて算出すべき現在位置を表すベクトル量(例えば、緯度と経度の成分を有するベクトル量)であり、Ppは、前回の現在位置算出タイミングにおいてセンサ3、12、13の検出信号値を用いて算出した現在位置を表すベクトル量(例えば、緯度と経度の成分を有するベクトル量)である。
【0037】
また、D(v、g、y)は、前回の現在位置算出タイミングから今回の現在位置算出タイミングまでの車両の移動量を表すベクトル関数(例えば、緯度変化量と経度変化量の成分を有するベクトル関数)であり、その変数v、g、yは、それぞれ今回の現在位置算出タイミングにおける車両の速度、加速度、ヨーレートである。D(v、g、y)の関数形については、周知であるのでここでは説明を省略する。
【0038】
ここで、車速vは、例えば、今回の現在位置算出タイミングにおける車速センサ3からのパルス信号(検出信号)の周波数Svに係数Kvを乗じることで算出される。また、加速度gは、今回の現在位置算出タイミングにおけるGセンサ13の検出信号値Sgに係数Kgを乗じることで得ることができる。また、ヨーレートyは、今回の現在位置算出タイミングにおけるジャイロセンサ12の検出信号値Syに係数Kyを乗じることで得ることができる。
【0039】
したがって、上記関係式Pc=Pp+D(v、g、y)は、Pc=Pp+D(Kv×Sv、Kg×Sg、Ky×Sy)となる。この関係式中の係数Kv、Kg、Kyは、車速センサ3、ジャイロセンサ12、Gセンサ13の特性が温度、振動等によって変化し、また、使用によって経年変化することに対応させるため、後述するように、くり返し補正するようになっている。
【0040】
また、現在位置算出処理17aにおいてCPU17は、上記第1の周期よりも十分長い第2の周期で(例えば、1分周期で)間欠的に、GPS受信部11を用いた現在位置の捕捉および上記関係式の補正を行う。
【0041】
具体的には、CPU17は、センサ3、12、13およびGPS受信部11のうち、GPS受信部11のみから出力される信号の値に基づいて、自車両の現在位置を算出する。そして、算出した現在位置を、現在の車両の現在位置として確定する。つまり、確定する現在位置を、センサ3、12、13の検出信号値を用いて第1の周期で算出していた現在位置から、Gセンサ13の出力信号値を用いて算出した車両の現在位置に置き換える。このような置き換えは、GPS受信部11による現在位置の捕捉に該当する。
【0042】
また、CPU17は、Gセンサ13の出力信号値から得られた現在位置と、センサ3、12、13の検出信号値から得られた車速v、加速度g、ヨーレートyとを用いて、Kv×Sv、Kg×Sg、Ky×Syが、それぞれ正しい車速v、加速度g、ヨーレートyとなるよう、係数Kv、Kg、Kyの値を補正する。Gセンサ13の出力信号値を用いた係数Kv、Kg、Kyの補正方法は周知であるので、その詳細については説明を省略する。このように係数Kv、Kg、Kyを補正することで、上記関係式の補正が実現する。
【0043】
続いて、電力供給制御処理17bについて説明する。図2、3に、この電力供給制御処理17bのフローチャートを示す。CPU17は、車両用ナビゲーション装置1の起動後すぐに、この電力供給制御処理17bの実行を開始するようになっている。
【0044】
以下、この電力供給制御処理17bの詳細を、時系列に沿って説明する。まず、車両用ナビゲーション装置1の起動後、CPU17はまずステップ110で、システム電源回路16を制御して、GPSアンテナ2およびGPS受信部11への電力供給を開始する。
【0045】
これにより、GPSアンテナ2はGPS衛星から送信された信号(航法データ、C/Aコード等を含む)を受信し始め、GPS受信部11は、GPSアンテナ2が受信した信号に対して周波数変換、復調、増幅等を行い、その結果の信号をCPU17に出力し始める。
【0046】
続いてステップ120で、直前のステップ110の実行後現在に至るまでの期間中に、GPS受信部11による現在位置の捕捉が完了したか否かを判定する。起動後10分程度は、最初の現在位置の捕捉は完了しないので、ステップ120の判定結果はNO(否定判定)となり、再度ステップ120を実行する。
【0047】
時間が経過し、GPS受信部11による現在位置の捕捉が完了したと判定すると、続いてステップ130に進み、直前のステップ110の実行後現在に至るまでの期間中に、現在位置算出処理17aにおける上記関係式の補正が完了したか否かを判定する。この判定結果がNO(否定判定)の場合、処理はステップ120に戻る。
【0048】
本実施形態においては、現在位置算出処理17aにおいてGPS受信部11による現在位置の捕捉および関係式の補正は、上記第2の周期に比べれば非常に短い時間(例えば1秒以内)で続けて実行される。すると、ステップ120とステップ130の両方の判定結果がYES(肯定判定)となり、続いてステップ140に進む。
【0049】
ステップ140では、CPU17が経路案内処理を現在実行しているか否かを判定し、実行していれば、ステップ120に戻り、実行していなければ、GPSアンテナ2およびGPS受信部11への電力供給を停止するために、ステップ145に進む。
【0050】
経路案内処理を現在実行している場合に、GPSアンテナ2およびGPS受信部11への電力供給を停止せずにステップ120に戻るのは、経路案内処理時には高い精度で現在位置を特定する必要があり、そのためには、GPS受信部11による現在位置の捕捉および関係式の補正をできるだけ欠かすことなる実行することが望ましいからである。
【0051】
本例では、現在経路案内中でないとする。この場合、続いてステップ145に進み、システム電源回路16を制御して、GPSアンテナ2およびGPS受信部11への電力供給を停止する。
【0052】
すると、GPS受信部11からCPU17に信号が出力されなくなる。したがって、GPSアンテナ2およびGPS受信部11への電力供給が停止されている間は、GPS受信部11による現在位置の捕捉および関係式の補正ができなくなる。
【0053】
続いてステップ150では、CPU17が地図表示制御処理を実行中であるか否かを判定し、実行中であれば、ステップ155で第1の基準値セット設定を行い、実行中でなければステップ160で第2の基準値セット設定を行う。
【0054】
ステップ155、160における基準値セット設定では、後述するステップ170、175、180で用いる基準時間、基準距離、および基準角度(すなわち基準値セット)の値を設定する。
【0055】
ただし、ステップ155の第1基準値セット設定で設定する基準時間、基準距離、基準角度の値(例えば、10分、30km、720°)の方が、ステップ160の第2基準値セット設定で設定する基準時間、基準距離、基準角度の値(例えば、20分、60km、1440°)よりも小さくなる。このようにするのは、地図表示を行っていない場合(例えば、動画再生中、オーディオ操作画面表示中等)よりも地図表示を行っている場合の方が、経路案内中の場合ほどではないにしても、より正確な現在位置の特定が望まれるので、より早くGPSアンテナ2およびGPS受信部11への電力供給を再開したいからである。なお、どちらの場合も、基準時間は、上述の第2の周期よりも長く設定する。
【0056】
ステップ155または160に続いては、ステップ165で、直前のステップ145における電源オフ後の経過時間が、設定された基準時間を超えたという条件(復帰条件の一例に相当する)が満たされるか否かを判定し、満たされなければステップ170に進み、満たされればステップ110に戻る。
【0057】
また、ステップ170では、直前のステップ145における電源オフ後の車両の移動距離が、設定された基準距離を超えたという条件(復帰条件の一例に相当する)が満たされるか否かを判定し、満たされなければステップ175に進み、満たされればステップ110に戻る。
【0058】
また、ステップ175では、直前のステップ145における電源オフ後の車両の旋回角度が、設定された基準角度を超えたという条件(復帰条件の一例に相当する)が満たされるか否かを判定し、満たされなければステップ180に進み、満たされればステップ110に戻る。
【0059】
また、ステップ180では、現在経路案内中であるという条件(復帰条件の一例に相当する)が満たされるか否かを判定し、満たされなければステップ150に戻り、満たされればステップ110に戻る。
【0060】
つまり、CPU17は、ステップ165〜180における4つの復帰条件のうち1つも満たされない間は、ステップ150〜180の処理を繰り返すことで、GPSアンテナ2およびGPS受信部11への電力供給の停止を継続する。その結果、上述の第2の周期よりも長い間ステップ150〜180の処理がくり返されれば、GPS受信部11による現在位置捕捉および関係式の補正のタイミングが訪れても、それら捕捉および補正ができなくなる。
【0061】
なお、ステップ150〜180の処理がくり返されている間、地図表示しているか否かが変化すると、基準時間、基準距離、基準角度もそれに応じて変化する。
【0062】
そして、ステップ165〜180における4つの復帰条件のうち1つでも満たされれば、ステップ110に戻ってGPSアンテナ2およびGPS受信部11への電力供給を再開する。
【0063】
なお、ステップ165、170、175の復帰条件は、推測航法精度の劣化要因が許容範囲を超えて大きくなったことを検出する条件である。したがって、ステップ165で用いる基準時間は、航法データ(アルマナックデータとエフェメリスデータ)の鮮度を保つのに要する時間(数時間)に比べて十分短い。また、ステップ180の復帰条件は、ステップ140の条件と同じ目的で設けられている。
【0064】
ステップ165、170、175の復帰条件のいずれかが満たされてステップ110に戻ると、システム電源回路16を制御して、GPSアンテナ2およびGPS受信部11への電力供給を再開する。そしてその後、ステップ120、130で、GPS受信部11による現在位置の捕捉および関係式の補正が実現するのを待ち、それらが実現したタイミングで、経路案内中でなければ(ステップ140参照)、再度ステップ145でGPSアンテナ2およびGPS受信部11への電力供給を停止する。
【0065】
ただし、経路案内中である場合は、ステップ140で経路案内中であると判定することにより、GPSアンテナ2およびGPS受信部11への電力供給が続いたまま、ステップ120〜140の処理が繰り返され、その間は、上述の第2の周期で、GPS受信部11による現在位置捕捉および関係式の補正が実現される。
【0066】
以上説明した通り、CPU17が現在位置算出処理17aを実行することで、センサ3、12、13の出力信号に応じて車両の現在位置を算出し、また、センサ3、12、13の出力する検出信号の値と車両の現在位置との間の関係式を、GPS受信部11が出力した信号に基づいて、間欠的に、補正するようになっている。本実施形態では、衛星航法用受信部がこのように使用されることを利用する。
【0067】
すなわち、電力供給制御処理17bを実行することで、CPU17は、GPS受信部11を用いて現在位置捕捉を行い、上述の関係式を補正したことに起因して、関係式を補正したタイミングで、GPSアンテナ2およびGPS受信部11のいずれかまたは両方への電力供給を一時的に停止させ、その後、上述の復帰条件が満たされたことに起因して、停止している前記電力供給を再開させる。
【0068】
このようになっていることで、GPS受信部11およびGPSアンテナ2が作動を停止させたときでも、センサ3、12、13からの信号により現在位置を特定できるので、消費電力を低減しつつ、現在位置を特定することができる。
【0069】
更に、GPSアンテナ2およびGPS受信部11の両方への電力供給が一時的に停止され、GPS受信部11から信号を一時的に受けることができなくなっても、センサ3、12、13の出力信号の値と車両の現在位置との間の関係式がその直前に補正されているので、電力供給停止の間も、センサ3、12、13の出力信号を用いた現在位置の特定の精度はある程度高く保たれる。したがって、衛星航法用アンテナおよび衛星航法用受信部の両方への電力供給が一時的に停止される期間を長くして消費電力を抑えても、現在位置特定装置における現在位置の測定精度が高く維持される。
【0070】
つまり、「経路案内は必要ないが現在位置特定精度は一定レベル以上を保つちたい」という、ナビゲーション動作では極めて発生頻度の高い状況において、現在位置特定精度を高く保ちつつ、消費電力低減を行うことができる。
【0071】
また、CPU17は、関係式を補正した場合でも、経路案内処理を行っている場合は、GPSアンテナ2への電力供給もGPS受信部11への電力供給も停止させないようになっている。
【0072】
経路案内機能を有するナビゲーション装置1が経路案内を行っている場合の方が、経路案内を行っていない場合に比べ、現在位置特定に高い精度が求められる。したがって、上記のように、関係式を補正した場合でも、現在位置特定装置が経路案内を行っている場合は、GPSアンテナ2およびGPS受信部11への電力供給を停止させないことで、経路案内時の現在位置特定の精度を更に高くすることができる。
【0073】
また、ステップ165、170、175のような復帰条件を採用することで、推測航法の精度の劣化要因の増大に応じて、停止した電力供給を再開させることができるので、効率的なタイミングで、電力供給を再開させることができる。
【0074】
なお、上記実施形態において、車両用ナビゲーション装置1が現在位置特定装置の一例に相当し、GPSアンテナ2が衛星航法用アンテナの一例に相当し、GPS受信部11が衛星航法用受信部の一例に相当し、CPU17が制御部の一例に相当する。また、CPU17が、現在位置算出処理17aを実行することで、現在位置算出手段の一例として機能し、電力供給制御処理17bを実行することで、電力供給制御手段の一例として機能する。
【0075】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。
【0076】
例えば、復帰条件のいずれかが実現してステップ110で再度GPSアンテナ2、GPS受信部11への電力供給を再開した場合は、最初の数秒間「衛星情報捕捉中」などのコーションを画像表示装置に表示させることで、ユーザへの情報提供を行うようになっていてもよい。
【0077】
また、上記実施形態においては、ステップ145で、GPSアンテナ2およびGPS受信部11の両方への電力供給を停止したが、それらのうちどちらか一方のみへの電力供給を停止するようになっていてもよい。
【0078】
また、上記実施形態においては、本発明をGPSに適用しているが、本発明はGLONASS衛星、GALILEO衛星等を用いた測位に適用することもできる。すなわち、衛星航法による測位なら、どのような測位にも本発明は適用可能である。
【0079】
また、上記の実施形態において、CPU17がプログラムを実行することで実現している各機能は、それらの機能を有するハードウェア(例えば回路構成をプログラムすることが可能なFPGA)を用いて実現するようになっていてもよい。
【0080】
また、本発明の現在位置特定装置は、必ずしもナビゲーション装置でなくともよく、例えば、現在位置を含んだ地図を表示する地図表示装置であってもよいし、現在位置を逐次記録する現在位置記録装置であってもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 車両用ナビゲーション装置
2 GPSアンテナ
3 車速センサ
11 GPS受信部
12 ジャイロセンサ
13 Gセンサ
14 HDD
15 RAM
16 システム電源回路
17 CPU
17a 現在位置算出処理
17b 電力供給制御処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される現在位置特定装置であって、
衛星航法用アンテナ(2)が衛星航法用衛星から受信した信号に対して周波数変換および復調を行い、その結果の信号を出力する衛星航法用受信部(11)と、
自律航法用の検出信号を出力するセンサ(3、12、13)から出力される前記検出信号の値と前記車両の現在位置との間の関係式を用いて、前記センサ(3、12、13)から出力された前記検出信号に応じた前記車両の現在位置を算出し、また、前記衛星航法用受信部(11)が出力した信号に基づいて、間欠的に、前記関係式を補正する制御部(17)と、を備え、
前記制御部(17)は、前記関係式を補正したことに起因して、前記衛星航法用アンテナ(2)および前記衛星航法用受信部(11)のいずれかまたは両方への電力供給を一時的に停止させ、その後、所定の復帰条件が満たされたことに起因して、停止している前記電力供給を再開させることを特徴とする現在位置特定装置。
【請求項2】
当該現在位置特定装置は、経路案内の機能を有するナビゲーション装置であって、
前記制御部(17)は、前記関係式を補正した場合でも、当該現在位置特定装置が経路案内を行っている場合は、前記衛星航法用アンテナ(2)への電力供給も前記衛星航法用受信部(11)への電力供給も停止させないことを特徴とする請求項1に記載の現在位置特定装置。
【請求項3】
前記復帰条件の1つは、前記電力供給を停止した後の前記車両の移動距離が基準距離を超えることであることを特徴とする請求項1または2に記載の現在位置特定装置。
【請求項4】
当該現在位置特定装置は、地図表示の機能を有し、
前記基準距離は、当該現在位置特定装置が地図表示を行っている場合よりも、地図表示を行ってない場合の方が長いことを特徴とする請求項3に記載の現在位置特定装置。
【請求項5】
前記復帰条件の1つは、前記電力供給を停止した後の前記車両の旋回角度が基準角度を超えることであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の現在位置特定装置。
【請求項6】
当該現在位置特定装置は、地図表示の機能を有し、
前記基準角度は、当該現在位置特定装置が地図表示を行っている場合よりも、地図表示を行ってない場合の方が大きいことを特徴とする請求項5に記載の現在位置特定装置。
【請求項7】
衛星航法用アンテナ(2)が衛星航法用衛星から受信した信号に対して周波数変換および復調を行い、その結果の信号を出力する衛星航法用受信部(11)と、制御部(17)と、を備え、車両に搭載される現在位置特定装置、に用いられるプログラムであって、
前記制御部(17)を、
自律航法用の検出信号を出力するセンサから出力される前記検出信号の値と前記車両の現在位置との間の関係式を用いて、前記センサから出力された前記検出信号に応じた前記車両の現在位置を算出し、また、前記衛星航法用受信部が出力した信号に基づいて、間欠的に、前記関係式を補正する現在位置算出手段(17a)、および、
前記関係式を補正したことに起因して、前記衛星航法用アンテナおよび前記衛星航法用受信部のいずれかまたは両方への電力供給を一時的に停止させ、その後、所定の復帰条件が満たされたことに起因して、停止している前記電力供給を再開させる電力供給制御手段(17b)、として機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−163765(P2011−163765A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22979(P2010−22979)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】