説明

現在位置表示装置

【課題】船舶や航空機などの移動する施設内にユーザが滞在している場合に、施設の位置および進行方向を認識でき、また、ユーザが施設内のいずれの位置にいるのかを把握することができる現在位置表示装置を提供する。
【解決手段】本発明の移動端末11は、移動施設の内部を表現する案内図データを記憶する記憶部と、移動端末の現在位置情報である端末位置情報を取得する端末位置取得部と、移動施設の現在位置情報および方向情報を含む施設位置情報を取得する施設位置取得部と、案内図データおよび施設位置情報に基づいて回転処理が施された移動施設の案内図を作成する案内図作成部と、作成された前記案内図上に端末位置情報に基づき移動端末の現在位置を表示する表示部とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部を人が移動可能であって自己も移動可能である移動施設内に固定された移動施設装置と該移動施設装置から受信した情報を表示する移動端末とを備える現在位置表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーション装置はGPS(Global Positioning System)等による電波航法やジャイロ、車速センサ、ヨーレートセンサ等を用いた自律航法により自己の現在位置を確認している。そして、地図データベースを利用して地図上での自己位置を特定してディスプレイ上に表示している。
【0003】
特許文献1には、車両がフェリーに乗船したことを予測するとともに、車両が当該フェリーから降船する地点を予測する。そして、降船直後に自車位置を特定できる技術が開示されている。この技術によると、フェリーに車で乗船して移動した場合にも、目的地に着いたときから通常のナビゲーションを実行することができる。
【0004】
また、特許文献2には、例えば地下街のような屋外でない場所においても、ユーザが現在地を認識して目的地までの経路を把握する技術が開示されている。この技術によると、地図データと案内看板データとに基づいて、探索された地下経路を案内するため、施設内のように現在地の認識が困難な場所においても、ユーザが適切に現在地を認識することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−286518号公報
【特許文献2】特開2008−32744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば船舶や航空機などの移動する施設内にユーザが滞在している場合には、施設の位置座標が時間とともに変化する。そのため、ユーザは施設の位置および進行方向を認識できず、また、ユーザの位置座標が測位できたとしても施設内のいずれの位置にいるのかを把握することができなかった。
本発明は、施設の位置座標が時間と共に変化する移動施設の内部に移動端末が存在する場合であっても、自己の位置を把握することが可能な現在位置表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の現在位置表示装置は、自ら移動する移動施設の内部を該移動施設とは独立して移動する移動端末に、前記移動施設の案内図および前記移動端末の現在位置を表示する現在位置表示装置であって、前記移動施設の内部を表現する案内図データを記憶する記憶部と、前記移動端末の地球上の絶対的な現在位置情報または前記移動端末と前記移動施設との相対的な現在位置情報である端末位置情報を取得する端末位置取得部と、前記移動施設の地球上の絶対的な現在位置情報および前記移動施設が向いている方向情報を含む施設位置情報を取得する施設位置取得部と、前記案内図データおよび前記施設位置情報に基づいて回転処理が施された前記移動施設の案内図を作成する案内図作成部と、該案内図作成部によって作成された前記案内図上に前記端末位置情報に基づき前記移動端末の現在位置を表示する表示部とを備えることを特徴とする。
なお、上述した特徴は、本発明の特徴のすべてを列挙したものではなく、これらを要部とする構成もまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0008】
本発明の現在位置表示装置によれば、移動施設および移動端末の位置情報をそれぞれ取得し、それらに基づいて案内図データに端末の位置情報を重畳表示するので、移動端末が移動施設内に存在する場合であっても、移動施設内における移動端末の位置を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】現在位置表示装置の構成の一例を示す図。
【図2】現在位置表示処理の一例を示すフローチャート。
【図3】現在位置表示の一例を示す図。
【図4】現在位置表示処理の一例を示すフローチャート。
【図5】現在位置表示の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施例について説明する。
図1に示すように、本実施例における現在位置表示装置1は、移動施設2の内部を表現する案内図データを記憶する記憶部21と、移動端末11の現在位置情報である端末位置情報を取得する端末位置取得部22と、移動施設2の現在位置情報および移動施設2が向いている方向情報を含む施設位置情報を取得する施設位置取得部23と、案内図データおよび施設位置情報に基づいて回転処理が施された移動施設2の案内図を作成する案内図作成部24と、作成された案内図上に端末位置情報に基づき移動端末11の現在位置を表示する表示部25を備えている。
【0011】
なお、本実施例における現在位置表示装置1は、図1に示すように、移動施設2(図3参照)内を移動可能なクラアントとしての移動端末11と、移動施設2内に載置されているサーバとしての移動施設装置12とを備えるサーバ−クライアントシステムで構成される。移動端末11と移動施設装置12とは、赤外線などによって直接通信可能に接続されてもよく、所定の地点または移動施設2内に配置されている無線基地局13及び公衆通信回線としてのインターネット14を介して通信可能に接続されてもよい。
【0012】
移動端末11は、端末位置取得部22および表示部25を備えており、また、必要に応じて記憶部21と案内図作成部24と移動施設装置12に備えられた送信部27から情報を受信する受信部26とを備えていてもよい。
【0013】
移動施設装置12は、移動施設2の内部の任意の場所に固定されていてもよく、移動施設2の外部に設置されていてもよい。移動施設装置12が移動施設2の内部に固定される場合には、移動施設内の特定の位置に予め設置されていてもよく、携帯型の装置として利用者が利用する際に特定の場所に固定させてもよい。移動施設装置12は、施設位置取得部23を備えており、また、必要に応じて記憶部21、案内図作成部24、受信部26へ情報を送信する送信部27および施設内位置記憶部28を備えていてもよい。
【0014】
記憶部21には、案内図データが記憶されている。案内図データには、例えば、施設内のフロア見取り図、背景形状、移動施設内のサービス情報などが含まれている。また、案内図データは、施設内の通路に対応するリンク、部屋・フロアの入口などに対応するノードからなるネットワークデータを備え、移動施設2内の指定された地点への誘導を行うこともできる。なお、記憶部21は、移動端末11もしくは移動施設装置12のいずれか一方に備えられていればよい。
【0015】
また、記憶部21は、案内図データに加え、地図データを記憶していてもよい。地図データは、道路や建物など地図に描画すべき地物のポリゴンデータや建物の名称や地名などの地図上に表示すべき文字情報である文字データを有する。また、地図データには、緯度、経度からなる位置座標が記憶されている。
【0016】
端末位置取得部22は、移動端末11に備えられており、移動端末11の地球上の絶対的な現在位置情報または移動施設2との相対的な現在位置情報である端末位置情報を取得する。端末位置情報としては、例えば、移動端末11が存在する位置座標からなる絶対位置情報、移動施設装置12との相対的な位置を示す相対位置情報などが挙げられる。絶対位置情報の取得は、例えば、端末位置取得部22としてGPSを備えることによって移動端末11の座標からなる現在位置を検出することができる。具体的には、移動端末11のGPSアンテナによって受信された、図示しない複数のGPS衛星から送信される電波信号に基づいて移動端末11の現在位置の座標(緯度及び経度)を測位する。このほかにも、現在位置は、DGPS(ディファレンシャルGPS)を利用した方法や、ジャイロセンサを利用若しくは併用した方法などによって測位してもよい。
また、端末位置取得部22は、移動施設2に備えられた無線LAN基地局やビーコン送信器などの装置から、信号を受信することによって、移動端末11と移動施設装置12との相対的な位置に関する相対位置情報を取得することができる。
【0017】
施設位置取得部23は、移動施設装置12に備えられており、移動施設装置12が設置されている位置の緯度・経度情報である施設位置情報を検出する。施設位置情報としては、具体的には、例えば、移動施設2内の特定の定点の位置座標からなる現在位置情報である。具体的には、例えば、GPSを備えることによって、移動施設装置12のGPSアンテナによって受信された、複数のGPS衛星から送信される電波信号に基づいて移動施設2の現在位置(緯度及び経度)を測位する。このほかにも、DGPS(ディファレンシャルGPS)を利用した方法や、ジャイロセンサを利用若しくは併用した方法などによって移動施設装置12の現在位置を測位してもよい。
【0018】
また、施設位置取得部23は、移動施設2が向いている方向に関する施設方向情報を検出する。施設方向情報は、例えば、移動施設2内部の複数の地点に施設方向検出部32としてのGPSやジャイロセンサ等を備えることによって、検出したそれぞれの位置座標から算出する構成をとることができる。また、施設位置取得部23は、地磁気センサを備え、方位の算出に用いる地磁気を検出することによって、移動施設2の進行方向を検出する構成をとってもよい。
【0019】
案内図作成部24は、案内図データおよび施設位置情報に基づいて回転処理が施された移動施設2の案内図を作成する。案内図作成部24は、移動端末11もしくは移動施設装置12のいずれか一方に備えられていればよい。案内図データの回転処理は、任意に設定することが可能である。例えば、移動施設2の進行方向が表示部25の上方となるように回転する、予め設定された方位が表示部25の上方となるように回転する、または、移動端末11の進行方向が表示部25の上方となるように回転するなどの設定が可能である。
【0020】
表示部25は、移動端末11に備えられており、案内図上に端末位置情報に基づき移動端末11の現在位置を表示する。具体的には、表示部25は、まず、施設位置情報が有する移動施設装置12の位置座標および施設内位置情報が有する移動施設装置12の移動施設2内における存在位置から移動施設2が存在する座標を算出する。そして、表示部25は、端末位置情報が有する移動端末11の位置座標を案内図に重ね合わせて表示する。
案内図は、例えば、移動施設2の内部図に移動端末11の現在位置を重畳表示する形態をとることができる。また、表示部25は、案内図に加え、施設位置情報と地図データとに基づいて、地図データと移動施設2との位置および方向の関係が反映された地図を表示する構成をとることができる。具体的には、表示部25は、施設位置情報が有する移動施設装置12の位置座標を取得し、地図データの該当する位置座標に移動施設2のマークを重ね合わせて表示した地図を案内図と共に表示する。
【0021】
受信部26は、移動端末11に備えられており、施設位置情報および施設内位置情報を移動施設装置12に備えられた送信部27から受信する。また、移動施設装置12が記憶部21を備えている場合には、受信部26は上記に加えて案内図データを受信する。また、移動施設装置12がさらに案内図作成部24を備えている場合は、案内図データに代えて、案内図データと施設位置情報とに基づいて案内図作成部24によって回転処理が施された移動施設2の案内図を受信する。
【0022】
送信部27は、移動施設12に備えられており、施設位置情報、施設内位置情報および案内図などを移動端末11に備えられた受信部26へ送信する。
【0023】
施設内位置記憶部28は、移動施設装置12に備えられており、移動施設装置12が移動施設2のいずれの場所に固定されているかを示す施設内位置情報を記憶する。施設内位置情報は、予め設定されていてもよく、また、移動施設装置12が移動可能な形態である場合には、設置者によって都度施設内位置記憶部28に入力する構成をとってもよい。施設内位置情報としては、例えば、移動施設装置12が設置されている部屋やフロアを示す情報などがある。
【0024】
次に、本実施例における現在位置表示装置1を用いて移動施設を案内する方法の一例について説明する。図2に示すように、移動施設装置12は、施設内位置記憶部28より施設内位置情報を読み出す(ステップS110)。次に、施設位置取得部23は、移動施設装置12の現在位置および進行方向の測定を行い、施設位置情報を検出する(ステップS111)。
【0025】
案内図作成部24は、記憶部21に記憶された施設の案内図データを読み出す(ステップS112)。そして、案内図作成部24は、施設位置取得部23によって検出された移動施設2の方向をもとに、案内図データを北が上方となるように回転させることによって案内図を作成する(ステップS113)。具体的には、施設位置取得部23の施設内位置情報と施設位置情報とから、北を上方とした方向に対する移動施設2の傾き角度を算出し、算出した傾き角度に応じて案内図データを回転させる。
【0026】
送信部27は、施設位置情報と、施設内位置情報と、案内図作成部24によって回転処理が施された案内図とを、移動端末11に備えられた受信部26へと送信する(ステップS114)。
【0027】
一方、移動端末11に備えられた端末位置取得部22は、移動端末11の現在位置の測定を行い、端末位置情報を取得する(ステップS120)。次に、受信部26は、移動施設装置12に備えられた送信部27より施設位置情報と、施設内位置情報と、案内図作成部24によって作成された案内図とを受信する(ステップS121)。
【0028】
そして、表示部25は、図3に示すように、端末位置情報、施設位置情報、施設内位置情報および案内図に基づいて、移動施設2内における移動端末11の現在位置GT1が重畳表示された案内図NM1を表示する(ステップS122)。具体的には、表示部25は、まず、施設位置情報が有する移動施設装置12の位置座標および施設内位置情報が有する移動施設装置12の移動施設2内における存在位置から移動施設2が存在する位置座標を算出する。次に、表示部25は、算出した位置座標を用いて回転処理が施された案内図に移動施設2の位置情報を反映させる。そして、表示部25は、端末位置情報が有する移動端末11の位置座標を回転処理が施された案内図に重ね合わせて表示する。本実施例の処理を行うことによって、移動施設および移動端末の位置情報に基づいて案内図に移動端末の位置情報を重畳表示するので、移動施設内における移動端末の位置を把握することができる。
【0029】
(変形例1)
本実施例における現在位置表示装置1を用いて移動施設を案内する方法の別の一例について説明する。図4に示すように、本発明の現在位置表示装置1は、移動端末11に案内図作成部24および記憶部21が備えられており、案内図データの記憶、および案内図の作成を移動端末11側で行う形態をとる。
【0030】
移動施設装置12は、施設内位置記憶部28から施設内位置情報を読み出す(ステップS130)。次に、施設位置取得部23は、移動施設装置12の現在位置および方向の測定を行い、施設位置情報を検出する(ステップS131)。送信部27は、施設位置情報および施設内位置情報を移動端末11に備えられた受信部26へと送信する(ステップS132)。
【0031】
一方、移動端末11に備えられた端末位置取得部22は、移動端末11の現在位置の測定を行い、端末位置情報を取得する(ステップS140)。そして、受信部26は、移動施設装置12に備えられた送信部27から施設位置情報および施設内位置情報を受信する(ステップS141)。
【0032】
次に、案内図作成部24は、案内図データを記憶部21から読み出す(ステップS142)。案内図作成部24は、案内図データと受信部26によって受信した移動施設の施設位置情報をもとに(ステップS143)、案内図データを回転させて案内図を作成する(ステップS144)。表示部25は、端末位置情報、施設内位置情報および案内図に基づいて、移動施設装置12内における移動端末11の存在位置が重畳表示された案内図を表示する(ステップS145)。
【0033】
(変形例2)
本例における現在位置表示装置1は、図5に示すように、表示部25に移動施設2を案内するための案内図NM3および端末位置情報GT3を表示させるときに、さらに、地図データに施設位置情報GP3を重畳表示させた地図MF3を表示する。このような形態をとることによって、ユーザは、移動施設内における自己の位置が認識できるだけでなく、移動施設の現在位置も併せて把握することができる。
【符号の説明】
【0034】
1…現在位置表示装置
11…移動端末
12…移動施設装置
13…無線基地局
14…インターネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自ら移動する移動施設の内部を該移動施設とは独立して移動する移動端末に、前記移動施設の案内図および前記移動端末の現在位置を表示する現在位置表示装置であって、
前記移動施設の内部を表現する案内図データを記憶する記憶部と、
前記移動端末の地球上の絶対的な現在位置情報または前記移動端末と前記移動施設との相対的な現在位置情報である端末位置情報を取得する端末位置取得部と、
前記移動施設の地球上の絶対的な現在位置情報および前記移動施設が向いている方向情報を含む施設位置情報を取得する施設位置取得部と、
前記案内図データおよび前記施設位置情報に基づいて回転処理が施された前記移動施設の案内図を作成する案内図作成部と、
該案内図作成部によって作成された前記案内図上に前記端末位置情報に基づき前記移動端末の現在位置を表示する表示部と
を備えることを特徴とする現在位置表示装置。
【請求項2】
前記記憶部は、さらに地図データを記憶しており、
前記案内図作成部は、前記施設位置情報と前記案内図データと前記地図データとに基づいて、案内図を作成することを特徴とする請求項1に記載の現在位置表示装置。
【請求項3】
前記案内図作成部は、前記移動施設の進行方向が前記表示部の上方となるように回転された前記案内図を作成することを特徴とする請求項1または2に記載の現在位置表示装置。
【請求項4】
前記案内図作成部は、予め設定された方位が前記表示部の上方となるように回転された案内図を作成することを特徴とする請求項1または2に記載の現在位置表示装置。
【請求項5】
前記案内図作成部は、前記移動端末の進行方向が前記表示部の上方となるように回転された前記案内図を作成することを特徴とする請求項1または2に記載の現在位置表示装置。
【請求項6】
内部を人が移動可能であって、自己も移動可能である移動施設内に固定され、移動端末へ情報の送信を行う移動施設装置であって、
前記移動施設の地球上の絶対的な現在位置情報および前記移動施設が向いている方向情報を含む施設位置情報を取得する施設位置取得部と、
前記移動施設の内部を表現する案内図データを記憶する案内図記憶部と、
前記移動施設内における自己の固定位置である施設内位置情報を記憶する位置記憶部と、
前記案内図データおよび前記施設位置情報に基づいて回転処理が施された前記移動施設の案内図を作成する案内図作成部と、
前記施設位置情報、前記施設内位置情報および前記案内図データを移動端末へ送信する送信部と、
を備えることを特徴とする移動施設装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−194161(P2012−194161A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60411(P2011−60411)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(597151563)株式会社ゼンリン (155)
【Fターム(参考)】