説明

現場点検ナビゲーションシステム

【課題】各点検項目の抜けがなく、最短点検ルートのもとに現場点検を実行する。
【解決手段】 監視制御装置3及び情報収集管理装置5との間で無線通信によりデータ授受を行うメガネ型端末1としては、各点検項目に点検周期及び点検位置等のマスタデータ及び各点検現場の地図情報を記憶する記憶手段12a,12dと、各点検項目の収集データを保存する記憶手段12bと、現在位置を測定するGPS機能部15と、メガネ型端末の眼鏡部分に設けられる表示部13と、情報処理部11とを備え、この情報処理部11は、現場点検時、GPS機能部で得られる現在位置に基づき、地図情報を読み出して表示部に表示する地図表示手段11Aと、各点検項目の点検周期から点検項目を抽出する点検項目抽出手段11Bと、現在位置と抽出された各点検項目の点検位置とに基づいて、最短の点検ルートを生成し表示部に表示する点検ルート表示手段とを設けた構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場、倉庫等の日常的(定期的)な点検パトロール管理情報を収集し、管理する現場点検ナビゲーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
製造設備(生産に寄与する設備を含む)は、万が一不慮の故障等で停止したとき、製造、生産に多大な影響を及ぼす。
【0003】
製造設備を構成する各製造機器の稼動情報を常時自動的に収集することも考えられるが、自動化する範囲には限りがあり、人間の五感に頼らざるを得ない情報も多々存在する。従って、日常的な点検パトロールは必須であり、各製造機器が常に最適な状態で継続的に稼動させる点からも、その製造に寄与するところが大きい。
【0004】
現場点検パトロールの業務は、製造設備の故障を事前に予知する予防保全が大きなポイントであり、そのためには点検パトロールにより得られる情報を履歴管理することが重要となってくる。
【0005】
ところで、従来の点検パトロール業務の作業方法を見たとき、点検実施者が紙と鉛筆を携行し、対象とする現場を巡回しながら製造設備の稼動状態を紙に記録した後、その紙をそのまま台帳に保管するか、或いは紙に記録した情報を事務所に持ち帰って管理用端末に打ち込んで電子化し保管する方法がとられている。
【0006】
しかし、上記2つの作業方法においては、幾つかの問題点が指摘されている。
(イ) 点検実施者やオペレータが、製造設備の稼動状態を紙に記録する際や紙の記録情報を管理用端末に入力する際、人為的な記録ミスや入力ミスを発生するおそれがある。
【0007】
(ロ) 現場を点検するルートは、点検実施者の経験により決められるが、必ずしも効率的なルートであるとは限らない。
【0008】
(ハ) また、点検実施者は、点検実施の間、中央監視室などに設置される監視装置の監視情報を見たり、操作したりすることができない。
【0009】
(ニ) 点検実施者は、雨天の点検パトロール作業や両手を使う作業も多い。そのため、特に雨天等では紙に記録することが難しいとか、点検実施者の手の汚れにより必要な作業ができ難い等の問題がある。
【0010】
そこで、最近の動向としては、点検実施者が携帯端末を携行し、製造設備の稼動状態を携帯端末に入力し電子化する現場パトロールシステムが提案されている。
【0011】
この現場パトロールシステムは、パトロールサーバとハンディ端末とで構成され、パトロールサーバから点検作業に関する情報を含むパトロールパターン情報をハンディ端末に送信する。ハンディ端末は、現場の点検機器等の近傍に付されるバーコードを読取った後、点検機器の指示値を入力する。そして、入力された指示値とパトロールパターン情報の規定値と比較し、規定値内であれば順次保存し、パトロール終了後に収集情報をパトロールサーバに送信する。前記指示値が規定値外であれば、警報表示し、電話等にて上長と連絡し、該当機器に対して適切な処置を講じている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−140660号公報(図1,図2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、以上のような現場パトロールシステムは、点検実施者が携帯端末を携行し、現場を巡回しながら点検機器等の指示値を直接入力するので、収集情報の入力ミス等を低減化することができる。
【0013】
しかしながら、現場パトロールシステムは、点検実施者が点検作業時に携帯端末を手にして操作することから、取り扱いが不便な面がある。また、点検ルートは、予め決められており、ルート途中の時々の状況に応じて柔軟、かつ、効率的なルートに変更できない問題がある。
【0014】
さらに、点検実施者は、点検実施の間、中央監視室などに設置される監視装置の監視情報を見ることができない点については前述した通りである。
【0015】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、各点検項目の抜けがなく、効率的な点検ルートのもとに現場点検パトロールを実行する現場点検ナビゲーションシステムを提供することを目的とする。
【0016】
また、本発明は、点検パトロール中に監視制御装置の監視情報を見ながら適切な対応を取り得る現場点検ナビゲーションシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(1) 上記課題を解決するために、本発明は、所定箇所に設置される監視制御装置及び情報収集管理装置と現場点検パトロール時に装着する少なくとも1台のメガネ型端末とが相互に無線通信によりデータ授受を行う現場点検ナビゲーションシステムであって、
前記メガネ型端末は、各点検項目ごとに点検周期及び点検位置データ等のマスタデータ及び各点検現場の地図情報を記憶する第1の記憶手段と、現場点検パトロール時に収集した点検項目の収集データを保存する第2の記憶手段と、人工衛星を利用して現在位置を測定するGPS機能部と、前記メガネ型端末の眼鏡部分に設けられる表示部と、
現場点検パトロール時、前記GPS機能部で測定される現在位置に基づき、前記第1の記憶手段から所定の地図情報を読み出して前記表示部に表示する点検現場地図表示手段と、前記各点検項目の点検周期から点検すべき点検項目を抽出する点検項目抽出手段と、前記現在位置と前記点検項目抽出手段で抽出された各点検項目の点検位置データとに基づいて前記地図上にマーキングを施すとともに、最短の点検ルートを生成し前記表示部の地図上に表示する点検ルート表示手段とを有する情報処理部とを備えた構成である。
【0018】
(2) また、別の発明は、前記現場点検ナビゲーションシステムのメガネ型端末は、前記(1)の構成に新たに、
キーボードや操作用スイッチに関する投影データを記憶する第3の記憶手段と、映像を投影する映像投影部と、送受信機能を持った通信部とを備え、
前記情報処理部は、前記現場点検パトロール時、前記第3の記憶手段から投影データを読み出して前記映像投影部から地面や壁面に投影し、点検実施者による前記点検ルートの中の1つの点検項目に関する収集データの操作入力を促す状態データ収集手段と、この状態データ収集手段により操作入力された収集データを前記第2の記憶手段に格納するとともに前記通信部を介して無線送信し、前記情報収集管理装置のデータベースに保存可能とする収集データ送信手段をさらに設けた構成である。
【0019】
(3) さらに、本発明は、前記現場点検ナビゲーションシステムのメガネ型端末は、前記(1)の構成に新たに、キーボードや操作用スイッチに関する投影データを記憶する第3の記憶手段と、映像を投影する映像投影部と、送受信機能を持った通信部とを備え、
前記情報処理部は、前記現場点検パトロール時、前記第3の記憶手段から投影データを読み出して前記映像投影部から地面や壁面に投影し、この投影データの操作入力によって前記通信部を通して前記監視制御装置によって取得される点検項目の監視情報の要求を促し、当該監視制御装置から点検項目の監視情報を取得する情報要求取得手段と、この取得された監視情報を前記表示部に表示し確認可能とする情報確認手段とを付加し、
前記表示部に表示された監視情報から各点検項目の状態を把握可能とし、
さらに、前記監視制御装置から発生するアラーム情報を取得するアラーム情報取得手段と、この取得されたアラーム情報を前記表示部に表示する緊急表示手段と、投影されたキーボードや操作用スイッチからアラーム情報の確認操作およびアラーム発生該当機器の緊急点検要否の選択が行えるアラーム情報確認手段と、前記緊急点検要否の選択により緊急点検が必要となった場合に、点検ルートを再生成し前記表示部の地図上に表示する点検ルート変更手段とをさらに付加した現場点検ナビゲーションシステムである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、各点検項目の抜けがなく、効率的な点検ルートのもとに現場点検パトロールを実行できる現場点検ナビゲーションシステムを提供できる。
【0021】
また、本発明は、点検パトロール中に監視制御装置の監視情報を見ながら適切な対応を取り得る現場点検ナビゲーションシステムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る現場点検ナビゲーションシステムの一実施の形態を示す系統構成図である。
【0023】
現場点検ナビゲーションシステムは、少なくとも1つのメガネ型端末1(1a,…1n)と、アクセスポイントを有する無線通信部2と、マンマシン機能を持った監視制御装置3と、点検対象機器を制御するローカルコントローラ(シーケンサー等)4と、パソコン等の情報収集管理装置5と、プリンタ6とで構成され、これら無線通信部2、監視制御装置3、情報収集管理装置5及びプリンタ6は企業内通信ネットワーク(LAN,WAN等)7または相互に無線で接続されている。
【0024】
メガネ型端末1は、点検実施者が現場の点検項目となる各点検対象機器を点検パトロールする際に眼鏡形式で装着する携帯端末であって、現場点検パトロール時の収集データを収集し管理するサーバ機能としての役割を持っている。
【0025】
メガネ型端末1は、図2に示すように、CPUで構成される情報処理部11、記憶装置12、表示部13、通信部14、GPS(全地球即位システム)機能部15を備えている。
【0026】
情報処理部11、記憶装置12及び通信部14は、メガネ型端末1を構成するフレーム内に収容するか、フレーム外部に直付けされ、何れも防水処理を施すことにより、降雨等による影響を受けない構成とする。表示部13は、例えば小型液晶パネル等と光学系とを組み込んだ視認可能なディスプレィ機能を備えたものであって、メガネ型端末1を構成する眼鏡部分に設けられる。表示部13についても防水処理を施す。GPS機能部15は、例えば左右何れかのフレームに取付けられ、入出力インタフェース16を介して情報処理部11に接続される。
【0027】
記憶装置12には、少なくとも各機器の点検に必要なマスタデータを記憶するマスタテーブル12aと、点検結果の各機器の状態データである収集データを保存する収集データ管理テーブル12bと、例えばキーボードやスイッチなどの投影データを格納する投影データ記憶部12cと、点検現場の地図情報を格納する地図情報記憶部12dとが設けられている。
【0028】
マスタテーブル12aは、図3に示すように、例えば少なくとも点検用全機器(点検項目)、点検周期(巡回周期)、機器毎の規定値(例えばオン・オフ、上下限値等)、点検用全機器の点検ポイント(経・緯度情報)等のマスタデータが格納され、点検開始位置と各機器の点検周期から点検ルートが自動的に決定可能になっている。なお、点検周期に代えて、例えば予め各機器の点検周期から定まる複数の点検ルートパターンを格納し、点検パトロール時に複数の点検ルートパターンの中の1つのパターンを選択可能とした構成であってもよい。また、同一機器の中に複数の点検項目がある場合、点検項目ごとに点検周期、規定値が設定される。
【0029】
収集データ管理テーブル12bは、例えば点検日時及び点検用全機器に関する項目が設けられ、実際の点検日時毎に点検ルート上の各点検機器の状態データを格納する領域が形成されている。
【0030】
情報処理部11は、機能的には、図4に示すように構成される。
すなわち、情報処理部11は、例えば現場点検場所(出発点)の現在位置に基づき、現場の地図情報を表示部13に表示する点検現場地図表示手段11Aと、マスタテーブル12aに記憶される点検用全機器の点検周期から必要な点検機器を抽出する点検項目抽出手段11Bと、この点検項目抽出手段11Bにより決定された各点検機器の点検ポイントと前記GPS機能部15から得られる現在位置とから点検ルートを生成し、現場の地図情報上に点検機器箇所及び効率的な最短点検ルートを表示する点検ルート表示手段11Cとで構成される。
【0031】
前記通信部14は、送受信機能を有し、点検ルートに従って各機器から取得された収集データを記憶装置12の収集データ管理テーブル12bに格納すると共に、無線通信部2を介して情報収集管理装置5をアクセスし、機器点検毎に収集データを送信し、情報収集管理装置5のデータベースに保存する。
【0032】
次に、以上のように構成されたシステムの動作について説明する。
先ず、点検実施者は、各点検用機器の点検周期から知り得る定刻(例えば午前10時,午後2時等)に現場を点検するために事務所を出発し、点検現場に到着後、メガネ型端末1を装着する。
【0033】
ここで、点検実施者は、メガネ型端末1のフレームに付設されるスイッチのオン又は情報収集管理装置5から送信されてくる点検開始のトリガ信号を受けると、メガネ型端末1が動作を開始する。なお、メガネ型端末1の電池電源は、点検実施者の腰部バンド、作業服ポケットまたはメガネ型端末1のフレームに取付けられる。例えば点検実施者の腰部バンドに電池電源が吊り下げられている場合、電池電源の出力がメガネ型端末1のフレームの端子に接続し、通電可能とする。
【0034】
メガネ型端末1の情報処理部11は、動作を開始すると、点検現場地図表示手段11Aを実行する。点検現場地図表示手段11Aは、GPS機能部15を用い、人工衛星から発する電波から現在位置を取得し、この取得された現場の現在位置に基づき、記憶装置12の地図情報記憶部12dから当該現場の地図情報を読み出し、表示部13に表示する(図5参照)。
【0035】
しかる後、メガネ型端末1の情報処理部11は点検項目抽出手段11Bを実行する。点検ルート抽出手段11Bは、動作開始時刻とマスタテーブル12aの点検用全機器の点検周期から自動的に点検対象となる点検機器を抽出する。
【0036】
そして、情報処理部11は、点検対象となる点検機器を抽出した後、点検ルート表示手段11Cを実行する。点検ルート表示手段11Cは、点検項目抽出手段11Bで決定された各点検機器の点検ポイントに基づいて現場地図上に所定図形のマーキング(イ)(例えば*マーク、☆マーク等)を施すとともに、そのマーキング部分に機器名等の予定点検項目(ロ)を表示する。さらに、点検ルート表示手段11Cは、前記GPS機能部15で測定された現在位置と、各点検機器の点検ポイントデータとから作業効率を考慮した例えば細実線などの最短点検ルート(ハ)を結ぶことにより、ナビゲーション表示する。
【0037】
従って、以上のような実施の形態によれば、点検作業開始時にメガネ型端末1の表示部13に点検現場地図を表示するとともに、点検現場地図上に点検項目(ロ)及び最短点検ルート(ハ)を表示するので、効率的に点検ルートにのもとに点検パトロールを実行することができる。
【0038】
(他の実施の形態)
(1) 図6は前述した最短点検ルートに従って各点検機器の状態データを収集する他の実施の形態例を説明する図である。
【0039】
このメガネ型端末1は、前述した情報処理部11に、点検ルート抽出手段11A、点検現場地図表示手段11B、点検ルート表示手段11Cの他、新たに機器状態データ収集手段11D及び収集データ送信手段11Eを設けた構成である。
【0040】
さらに、情報処理部11には新たに映像投影部17が設けられる。映像投影部17は、GPS機能部15の取付け側フレームとは反対側のフレームに外付け、またはメガネフレームの中間部に埋め込むことにより、映像投影部17から例えば半導体レーザ光を照射する構成とする。なお、映像投影部17から照射する光は、半導体レーザ光に限らないことは言うまでもない。
【0041】
次に、以上のようなメガネ型端末1の動作について説明する。
情報処理部11は、点検ルート表示手段11Cによる最短点検ルートのナビゲーション表示後の所定時間経過後または情報処理部11に付加されるスイッチ18のオン入力を受付けたとき、機器状態データ収集手段11Dを実行する。
【0042】
機器状態データ収集手段11Dは、記憶装置12の投影データ記憶部12cに記憶されるキーボードやスイッチなどの投影データを読み出し、映像投影部17から地面や壁面などに投影データを投影する。つまり、映像投影部17が地面や壁面にキーボードや必要なスイッチを投影することにより、点検実施者がキーボードや操作用スイッチにタッチ操作可能にすることにより、点検機器の状態データを入力する。
【0043】
機器状態データ収集手段11Dは、キーボードや操作スイッチのタッチ操作のもとに点検日時及び点検機器の状態データ(例えば点検機器の指示値)を受け取ると、収集データ管理テーブル12bに図7に示すように点検日時及び各点検機器の状態データを書き込む。
【0044】
このとき、表示部13の現場地図上の適宜な領域(ニ)に当該点検機器の前回値と今回値とを表示してもよい。
【0045】
そして、点検機器の状態データを格納した後、当該機器の状態データと規定値とを比較し、当該機器の状態データが規定値外のとき、表示部13に警報表示する。このとき、点検実施者は該当機器に対して適切な処置を講ずる。
【0046】
引き続き、情報処理部11は、収集データ送信手段11Eを実行する。収集データ送信手段11Eは、点検日時及び各点検機器の状態データを収集データ管理テーブル12bに格納した後、通信部14に送信指令を出す。通信部14は、システムを構成する無線通信部2のアクセスポイントを介して情報収集管理装置5をアクセスする。通信部14は、アクセスによる通信回線の確立後、点検日時及び各点検機器の状態データを送信し、情報収集管理装置5のデータベースに保存する。
【0047】
従って、以上のような実施の形態によれば、メガネ型端末1から地面や壁面にキーボードや操作用スイッチを投影することにより、従来のように端末を手に把持することなく、また雨天や手の汚れに影響されず、さらに両手を使用する状態を回避しつつ、各点検機器の状態データを確実に入力できる。
【0048】
また、各機器のデータ収集毎に通信部14を介して情報収集管理装置5のデータベースに保存すれば、点検パトロール終了後の作業を軽減できる。
【0049】
(2) 図8はマスタデータの追加、削除及び修正の他、複数のメガネ型端末1(1a,…,1n)による収集データの共有化を図る他の実施の形態を説明する図である。
【0050】
このメガネ型端末1の情報処理部11は、機能的には、点検現場地図表示手段11A、点検ルート抽出手段11B、点検ルート表示手段11Cの他、投影データ表示手段11F、マスタデータ表示手段11G、データ確認判断手段11H及びデータ編集手段11Jが設けられる。
【0051】
投影データ表示手段11Fは、投影データ記憶部12cからキーボードや操作用スイッチなどの投影データを読み出し、地面や壁面に表示する機能を有する。マスタデータ表示手段11Gは、マスタテーブル12aから点検に関するテーブルデータを読み出して表示部13に表示する機能を有する。
【0052】
データ確認判断手段11Hは、キーボードや操作用スイッチから操作示されるマスタデータの追加、削除及び修正入力に対し、マスタテーブル12aの中に該当データがあるか否かを判断する。データ編集手段11Jは、データ無しと判断されたときにはマスタデータに追加し、データ有りと判断されたときには削除又は修正を行う機能を有する。
【0053】
以下、説明の便宜上、マスタデータの削除について説明する。
【0054】
メガネ型端末1の情報処理部11は、スイッチ18のオン入力を受付けたとき、投影データ表示手段11Fを実行する。投影データ表示手段11Fは、投影データ記憶部12cに記憶されるキーボードや操作用スイッチなどの投影データを読み出し、映像投影部17から地面や壁などに投影データを投影する。引き続き、情報処理部11は、キーボードや操作用スイッチからマスタテーブル12aの読み出し指示を受けると、マスタデータ表示手段11Gが図3に示すマスタテーブル12aから点検に関するマスタデータを読み出し、表示部13に表示する。
【0055】
この状態において、削除キーまたは操作用スイッチにより、ある機器または当該機器の特定項目を削除する操作を行うと、データ確認判断手段11Hを実行する。データ確認判断手段11Hは、ある機器または当該機器の特定項目を削除に対し、点検に関するマスタデータが存在するか否かを判断し、有りと判断された場合にはデータ編集手段11Jが当該機器または当該機器に関する特定項目のデータを削除する。
【0056】
なお、マスタデータの追加やある機器の規定値の修正についても、同様に追加、修正用キーまたはスイッチを操作することにより、機器の追加、ある機器の規定値等を修正することが可能である。
【0057】
さらに、他の実施の形態例としては、各メガネ型端末1,…で収集した収集データを、複数のメガネ型端末1a,…,1n間で共有する例について説明する。
【0058】
各メガネ型端末1,…には、送受信可能な通信部14が設けられ、収集データ管理テーブル12bが設けられているが、例えば収集データ管理テーブル12bを共有管理テーブルとして利用するか、新たに記憶装置12に共有管理テーブルを作成する。
【0059】
複数の点検実施者が同一現場内でメガネ型端末1,…を装着し、前述した最短点検ルートに従って各点検機器の状態データを収集し、収集データ管理テーブル12bに点検日時及び点検機器の収集データを格納する。
【0060】
ここで、一方の点検実施者のメガネ型端末例えば1aは、ある機器の状態データを収集し格納した後、この収集データの格納タイミングに同期し、通信部14を介して自動的に識別データとともに点検日時及び点検機器の収集データを転送する
同一現場の他方の点検実施者のメガネ型端末例えば1nは、メガネ型端末1aから転送されてくるある機器の状態データを、自身の通信部14を介して識別データとともに受信する。メガネ型端末1nは、識別データを照合し、既に登録済み識別データと一致したとき、点検日時及び点検機器の収集データを表示部13に表示すると共に、共有管理される収集データ管理テーブル12bに格納する。
【0061】
これにより、複数のメガネ型端末1a,…,1nが共通のデータベースを点検機器の収集データを共有保存することにより、他端末1の点検結果等を参照しながら、点検機器の漏れをなくして、現場点検パトロールを実行できる。
【0062】
さらに、同実施の形態の変形例としては、一方のメガネ型端末1aは、他メガネ型端末端末1nから特定機器の点検済みデータを受けた時、当該特定機器の点検済みデータを収集データ管理テーブル12bに格納した後、投影データ記憶部12cに記憶されるキーボードや操作用スイッチなどの投影データを投影する。そして、点検実施者は、キーボードや操作用スイッチから点検ルートの再検討指示を入力し、前記特定機器を除いた状態で再度最短点検ルートを生成し、表示部13に表示する構成であってもよい。
【0063】
なお、再度最短点検ルートを生成するに当り、点検ルートの途中で点検済みデータを受けたとき、GPS機能部15を用いて、現在位置を確認した後、点検済みとされた特定機器を除く他の点検機器の点検ポイントの経緯度情報から距離を演算し、最短距離となるような最短点検ルートを生成する。
【0064】
これにより、他メガネ型端末1nで点検済み機器を重複点検することを回避でき、効率的に点検パトロールを実施できる。
【0065】
(3) 図9はメガネ型端末1が監視制御装置3で取得した情報を表示し、確認する他の実施の形態を説明する図である。
【0066】
メガネ型端末1の情報処理部11の機能としては、前述した各実施の形態の機能の他、情報要求取得手段11K、情報確認手段11Lが設けられる。
【0067】
情報要求取得手段11Kは、地面や壁などに投影されたキーボードや操作用スイッチをタッチ操作することにより、通信部14を介して監視制御装置3をアクセスし、監視制御装置3で取得された監視情報、点検ルートの各機器或いは特定の機器、例えばバルブの開閉状態、プロセス変数情報を取得する。情報確認手段11Lは、取得された監視情報を図4に示す表示部13の現場地図上の所要とする領域に表示し、内容確認を行う。
【0068】
図10はメガネ型端末1が監視制御装置3で発生したアラームを取得して表示し、緊急点検する他の実施の形態を説明する図である。
【0069】
メガネ型端末1の情報処理部11の機能としては、前述した各実施の形態の機能の他、アラーム情報取得手段11M、緊急表示手段11N、アラーム情報確認手段11O、点検ルート変更手段11Pが設けられる。
【0070】
各機器或いは特定の機器が何らかの要因によって前記監視制御装置からアラームが発生している場合、アラーム情報取得手段11Mによりアラーム情報を取得し、緊急表示手段11Nを実行する。
【0071】
緊急表示手段11Nは、アラーム発生等中の点検機器に関し、図5の(ホ)に示す如く該当機器を点滅表示し、投影されたキーボードや操作用スイッチから該当機器のアラーム情報の確認操作および緊急点検要否の選択をアラーム情報確認手段11Oにより行い、緊急点検が必要なときは、点検ルート変更手段11Pを実行する。なお、該当機器を点滅表示するとともに、必要に応じて、該当機器の状態データや記憶装置12などに記憶されるメッセージ情報,例えば「緊急点検発生等」等を音声発生手段から発生するようにしても構わない。
【0072】
点検ルート変更手段11Pは、アラーム発生等中の点検機器を優先点検とする点検ルートに変更し、現場地図上に表示する。図5の(へ)は点線で示す変更点検ルートの一例を示している。
【0073】
従って、以上のような実施の形態によれば、メガネ型端末1が監視制御装置3で取得した情報を表示し、例えば緊急に点検が必要になったとき、緊急点検機器(点検項目)を自動的に追加し、緊急点検機器を優先する新たな点検ルートを生成するので、緊急時に効率的な点検ルートを確立しつつ点検パトロールを実施できる。
【0074】
(4) さらに、情報収集管理装置5について説明する。
【0075】
情報収集管理装置5は、各端末1,…で収集された各機器の状態データを受信しており、或いは共有管理された各機器の状態データをバックアップ記憶している。その他、点検に関する各点検現場のマスタデータを保存している。
【0076】
そこで、情報収集管理装置5は、表示編集機能により、各点検ルートの各機器の状態データや各点検現場のマスタデータを所要とする帳票化すれば、例えば現場点検パトロール毎の情報である点検報、月報を編集し、前記プリンタ6から印字出力することができる。
【0077】
その他、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【0078】
また、各実施の形態は可能な限り組み合わせて実施することが可能であり、その場合には組み合わせによる効果が得られる。さらに、上記各実施の形態には種々の上位,下位段階の発明が含まれており、開示された複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得るものである。例えば問題点を解決するための手段に記載される全構成要件から幾つかの構成要件が省略されうることで発明が抽出された場合には、その抽出された発明を実施する場合には省略部分が周知慣用技術で適宜補われるものである。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に係る現場点検ナビゲーションシステムの一実施の形態を示す系統構成図。
【図2】図1に示すメガネ型端末の一例を示す構成図。
【図3】図2に示すマスタテーブルのデータ配列例図。
【図4】メガネ型端末における情報処理部の処理を説明する機能ブロック図。
【図5】メガネ型端末の表示部に現場点検地図及び必要な事項を表示した図。
【図6】メガネ型端末における情報処理部の処理を説明する他の実施形態の機能ブロック図。
【図7】各点検機器の収集データを記憶し管理する収集データ管理テーブルのデータ配列例図。
【図8】メガネ型端末における情報処理部の処理を説明するさらに他の実施形態の機能ブロック図。
【図9】メガネ型端末における情報処理部の処理を説明するさらに他の実施形態の機能ブロック図。
【図10】メガネ型端末における情報処理部の処理を説明するさらに他の実施形態の機能ブロック図。
【符号の説明】
【0080】
1,1a,…,1n…,1n…メガネ型端末、2…無線通信部、3…監視制御装置、4…ローカルコントローラ、5…情報収集管理装置、6…プリンタ、7…企業内通信ネットワーク、11…情報処理部、11A…点検現場地図表示手段、11B…点検項目抽出手段、11C…点検ルート表示手段、11D…機器状態データ収集手段、11E…収集データ送信手段、11F…投影データ表示手段、11G…マスタデータ表示手段、11H…データ確認判断手段、11J…データ編集手段、11K…情報要求取得手段、11L…情報確認手段、11M…アラーム情報取得手段、11N…緊急表示手段、11O…アラーム情報確認手段、11P…点検ルート変更手段、12…記憶装置、12a…マスタテーブル、12b…収集データ管理テーブル、12c…投影データ記憶部、12d…地図情報記憶部、13…表示部、14…通信部、15…GPS機能部、17…映像投影部、18…スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定箇所に設置される監視制御装置及び情報収集管理装置と現場点検パトロール時に装着する少なくとも1台のメガネ型端末とが相互に無線通信によりデータ授受を行う現場点検ナビゲーションシステムであって、
前記メガネ型端末は、
各点検項目ごとに点検周期及び点検位置データ等のマスタデータ及び各点検現場の地図情報を記憶する第1の記憶手段と、
現場点検パトロール時に収集した点検項目の収集データを保存する第2の記憶手段と、
人工衛星を利用して現在位置を測定するGPS機能部と、
前記メガネ型端末の眼鏡部分に設けられる表示部と、
現場点検パトロール時、前記GPS機能部で測定される現在位置に基づき、前記第1の記憶手段から所定の地図情報を読み出して前記表示部に表示する点検現場地図表示手段と、前記各点検項目の点検周期から点検すべき点検項目を抽出する点検項目抽出手段と、前記現在位置と前記点検項目抽出手段で抽出された各点検項目の点検位置データとに基づいて前記地図上にマーキングを施すとともに、最短の点検ルートを生成し前記表示部の地図上に表示する点検ルート表示手段とを有する情報処理部と
を備えたことを特徴とする現場点検ナビゲーションシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の現場点検ナビゲーションシステムにおいて、
前記メガネ型端末は、
キーボードや操作用スイッチに関する投影データを記憶する第3の記憶手段と、映像を投影する映像投影部と、送受信機能を持った通信部とを備え、
前記情報処理部は、前記現場点検パトロール時、前記第3の記憶手段から投影データを読み出して前記映像投影部から地面や壁面に投影し、点検実施者による前記点検ルートの中の1つの点検項目に関する収集データの操作入力を促す状態データ収集手段と、この状態データ収集手段により操作入力された収集データを前記第2の記憶手段に格納するとともに前記通信部を介して無線送信し、前記情報収集管理装置のデータベースに保存可能とする収集データ送信手段をさらに付加したことを特徴とする現場点検ナビゲーションシステム。
【請求項3】
請求項1に記載の現場点検ナビゲーションシステムにおいて、
前記メガネ型端末は、
キーボードや操作用スイッチに関する投影データを記憶する第3の記憶手段と、映像を投影する映像投影部とを備え、
前記情報処理部は、前記第1の記憶手段からマスタデータを読み出し、前記表示部に表示するマスタデータ表示手段と、前記第3の記憶手段から投影データを読み出して前記映像投影部から地面や壁面に投影する投影データ表示手段と、点検実施者が投影データの操作によって追加、削除、修正指示及び所望データが入力されたとき、当該所望データが前記マスタデータに存在するか否かを確認するデータ確認判断手段と、この確認後、追加、削除、修正指示に従って前記マスタデータに対して追加、削除、修正編集を実行するデータ編集手段とをさらに付加したことを特徴とする現場点検ナビゲーションシステム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の現場点検ナビゲーションシステムにおいて、
前記各メガネ型端末は、
各メガネ型端末が共有管理する第4の記憶手段と、
前記情報処理部は、前記現場点検パトロール時、自メガネ型端末が前記点検ルート上の点検項目について点検収集した収集データを自メガネ型端末の前記第2の記憶手段に格納するとともに、前記通信部を介して他メガネ型端末に送信し、当該他メガネ型端末の前記第4の記憶手段に記憶させる共有管理処理手段をさらに付加し、
互いに他のメガネ型端末の点検結果を参照しつつ、現場点検パトロールを実行可能としたことを特徴とする現場点検ナビゲーションシステム。
【請求項5】
請求項4に記載の現場点検ナビゲーションシステムにおいて、
前記各メガネ型端末の情報処理部は、前記共有管理された他メガネ型端末の各点検項目の収集データから点検済みか否かを判断し、点検済みと判断されたとき、当該点検ずみとなった点検項目を除いて他の点検項目について、前記GPS機能部で測定される現在位置と当該他の点検項目の点検位置データとから再度最短の点検ルートを生成し前記表示部の地図上に表示する手段をさらに付加したことを特徴とする現場点検ナビゲーションシステム。
【請求項6】
請求項1に記載の現場点検ナビゲーションシステムにおいて、
前記メガネ型端末は、
キーボードや操作用スイッチに関する投影データを記憶する第3の記憶手段と、映像を投影する映像投影部と、送受信機能を持った通信部とを備え、
前記情報処理部は、前記現場点検パトロール時、前記第3の記憶手段から投影データを読み出して前記映像投影部から地面や壁面に投影し、この投影データの操作入力によって前記通信部を通して前記監視制御装置によって取得される点検項目の監視情報の要求を促し、当該監視制御装置から点検項目の監視情報を取得する情報要求取得手段と、この取得された監視情報を前記表示部に表示し確認可能とする情報確認手段とをさらに付加し、
前記表示部に表示された監視情報から各点検項目の状態を把握可能としたことを特徴とする現場点検ナビゲーションシステム。
【請求項7】
請求項1に記載の現場点検ナビゲーションシステムにおいて、
前記各メガネ型端末は、
キーボードや操作用スイッチに関する投影データを記憶する第3の記憶手段と、映像を投影する映像投影部と、送受信機能を持った通信部とを備え、
前記情報処理部は、前記現場点検パトロール時、前記監視制御装置から発生するアラーム情報を取得するアラーム情報取得手段と、この取得されたアラーム情報を前記表示部に表示する緊急表示手段と、投影されたキーボードや操作用スイッチからアラーム情報の確認操作およびアラーム発生該当機器の緊急点検要否の選択が行えるアラーム情報確認手段と、前記緊急点検要否の選択により緊急点検が必要となった場合に、点検ルートを再生成し前記表示部の地図上に表示する点検ルート変更手段とをさらに付加したことを特徴とする現場点検ナビゲーションシステム。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載の現場点検ナビゲーションシステムにおいて、
前記情報収集管理装置は、
各メガネ型端末に配信する前記マスタデータ及び各メガネ型端末から送信されてくる各点検項目の収集データを記憶するバックアップ手段と、少なくとも各点検項目の収集データを帳票化する手段とを備え、帳票化されたデータをプリンタから印字可能とすることを特徴とする現場点検ナビゲーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−171086(P2008−171086A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1672(P2007−1672)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(391017540)東芝ITコントロールシステム株式会社 (107)
【Fターム(参考)】