説明

現場造成による基礎杭構造及び基礎杭の構築方法

【課題】杭穴の根固め部でコンクリート柱体を一体に拘束して根固め部を強化でき、軸部での過剰補強を無くして、適切な強度の基礎杭構造を実現できる。
【解決手段】軸部12の下端部に根固め部13が形成された杭穴11内に、コンクリートを打設してコンクリート柱体21を形成する(a)。鋼管からなる埋設用ケーシング1の下端部3に、拘束筒体5の上端部7を連結し、下降させる(a)。拘束筒体5を地面18に押し込み(b)、拘束筒体5を根固め部13に位置させた状態で、下降を中止する(c)。埋設用ケーシング1と拘束筒体5の連結を解除して(d)、埋設用ケーシング1のみを地上に引き上げる(e)。根固め部13にのみ拘束筒体5が埋設され、軸部12が土と接する基礎杭構造30を構成する(f)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる現場造成杭で、根固め部を強化した現場造成による基礎杭構造及びこの基礎杭構造の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
いわゆる現場造成杭では、根固め部を有する杭穴を掘削して、杭穴内にコンクリートを充填すると共に、鉄筋かご等の構造体を埋設して基礎杭構造を構成していた。この基礎杭構造では、地上構造物の荷重は、主にコンクリート柱体内の鉄筋かご等の構造材を介して根固め部に伝え支持地盤で支持していた。
【0003】
このような基礎杭構造では、長期的な荷重とともに地震などにより生じる短期的な荷重にも考慮を要していた。
【0004】
一方、一般に、鋼管杭はじん性、せん断強度は高いが、材厚が薄く、座屈に弱いという性質を持ち、比較的外径が小さな主に地盤と外側面の摩擦で支持力を確保するいわいる摩擦杭として用いられていた。また、既製杭の下端面積で支持力が決まる先端支持杭としてはあまり用いられていなかった。先端支持杭として使用する場合には、先端部外周面に翼を突設して、先端支持力を確保する提案もあった(特許文献1)。
【0005】
また、鋼管杭を先端支持杭に適用する場合、先端円筒管部を設けて、先端円筒管部を根固め部に位置させて、先端円筒管部内に根固め材が充填された状態で埋設する発明も提案されている(特許文献2)
また、既製杭(主にコンクリート系)を埋設する際に、鋼管をケーシングとして利用する提案もなされている(特許文献3〜5)。この場合には、杭穴を掘削する際にケーシングを埋設して、既製杭を設置するまでの間に杭穴壁の崩壊を防ぐために利用していた。従って、既製杭を設置した後に、ケーシング(鋼管)を地上に引き上げていた。
【0006】
また、立孔を掘る際に、立孔の崩壊を防ぐために鋼管からなるケーシングの内部を掘削して地盤に設置することも成されていた。この場合、ケーシングは上下に連結しながら埋設していた(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−270440号公報
【特許文献2】特開2001−59219号公報
【特許文献3】特開2005−282149号公報
【特許文献4】特開2002−371553号公報
【特許文献5】特開2008−75266号公報
【特許文献6】特開平11−131961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来の技術では、鋼管の強度(剛性)を利用して、杭穴掘削時の杭穴保護し(特許文献3〜6)、あるいは既製杭自体の強度(剛性)を高めるために鋼管を使用する(特許文献1〜2)ものであって、コンクリート柱体と協働して、杭穴根固め部自体の強化に利用できる発明はなかった。とりわけ、極限荷重を受けることが予想される根固め部に対して、有効な補強はできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
しかし、本発明は、根固め部を有する杭穴内にコンクリート柱体を形成する基礎杭構造で、根固め部外周に拘束筒体(主に鋼管)を配置し、かつ杭穴の軸部では、コンクリート柱体の外表面と地盤(土)とを直接に接触する構造となるので、前記問題点を解決して、根固め部の有効な補強を構成できる。
【0010】
即ちこの発明は、先端部に根固め部を有する杭穴内にコンクリートを充填してなり、以下のような要件を総て具備したことを特徴とする現場造成による基礎杭構造である。
(1) 杭穴の軸部の先端側を前記根固め部とした。
(2) 前記杭穴の根固め部の側壁外周に沿って、拘束筒体を埋設して、前記杭穴内にコンクリートを充填してコンクリート柱体を構築した。
(3) 前記杭穴の軸部ではコンクリート柱体と地盤とを直接接触させる。
【0011】
前記において、以下のような要件を総て具備したことを特徴とする現場造成による基礎杭構造である。
(1) 杭穴の根固め部を軸部に比して拡径掘削した。
(2) 拘束筒体を前記根固め部の略全長に亘り埋設した。
【0012】
また、前記において、以下のような要件を総て具備したことを特徴とする現場造成による基礎杭構造である。
(1) 杭穴の根固め部を軸部に比して拡径掘削した。
(2) 拘束筒体の外周に、螺旋突起を形成した。
【0013】
また、第1の方法の発明は、以下のようにして、構築予定の杭穴の根固め部の外周に沿った径で、かつ前記根固め部の長さに対応した長さの拘束筒体を配置して前記杭穴内にコンクリートを充填して、基礎杭を構成することを特徴とした現場造成による基礎杭の構築方法である。
(1) 通常の方法により杭穴を掘削して、該杭穴内にコンクリートを充填してコンクリート柱体を構築する。
(2) (1)の前又は後に、埋設用ケーシングの先端に前記拘束筒体を連結する。
(3) (1)(2)で、杭穴を掘削した後で、コンクリートを充填する前又は充填した後又は充填と同時に、根固め部形成予定位置で、地面から前記埋設用ケーシングを押圧して、前記拘束筒体を埋設用ケーシングと共に地面に押し込む。
(3) 前記拘束筒体が、根固め部に到達したならば、前記埋設用ケーシングの押圧を解除して、前記埋設用ケーシングと拘束筒体の連結を解除して、前記埋設用ケーシングのみを地上に引き上げる。
【0014】
また、第2の方法の発明は、以下のようにして、構築予定の杭穴の根固め部の外周に沿った径で、かつ前記根固め部の長さに対応した長さの拘束筒体を配置して前記杭穴内にコンクリートを充填して、基礎杭を構成することを特徴とした現場造成による基礎杭の構築方法である。
(1) 埋設用ケーシングの先端に、前記拘束筒体を連結し、前記埋設用ケーシング内に掘削ロッドを挿入する。
(2) 根固め部形成予定位置で、地面から前記埋設用ケーシングを押圧して、前記拘束筒体を埋設用ケーシングと共に地面に押し込みながら、前記拘束筒体内で、前記杭穴を掘削する。
(3) 前記拘束筒体が、根固め部形成予定位置に到達し、かつ杭穴の根固め部の掘削が完了したならば、前記埋設用ケーシングの押圧を解除して、前記埋設用ケーシングと拘束筒体の連結を解除して、前記埋設用ケーシング及び前記掘削ロッドを地上に引き上げる。
(4) 続いて、通常の方法により、前記杭穴内にコンクリートを充填して、コンクリート柱体を構築する。
【0015】
また、第3の方法の発明は、以下のようにして、構築予定の杭穴の根固め部の外周に沿った径で、かつ前記根固め部の長さに対応した長さの拘束筒体を配置して前記杭穴内にコンクリートを充填して、基礎杭を構成することを特徴とした現場造成による基礎杭の構築方法である。
(1) 埋設用ケーシングの先端に、前記拘束筒体を連結し、前記埋設用ケーシング内に掘削ロッドを挿入する。
(2) 根固め部形成予定位置で、地面から前記埋設用ケーシングを押圧して、前記拘束筒体を埋設用ケーシングと共に地面に押し込みながら、前記拘束筒体内で、前記杭穴を掘削する。
(3) 前記拘束筒体が、根固め部形成予定位置に到達し、かつ杭穴の根固め部の掘削が完了したならば、前記掘削ロッドを地上に引き上げる。
(4) 続いて、通常の方法により、前記杭穴内にコンクリートを充填して、コンクリート柱体を構築する。
(5) 前記埋設用ケーシングと拘束筒体の連結を解除して、前記埋設用ケーシングを地上に引き上げる。
【0016】
また、第4の方法の発明は、以下のようにして、構築予定の杭穴の根固め部の外周に沿った径で、かつ前記根固め部の長さに対応した長さの拘束筒体を配置して、前記杭穴内にコンクリートを充填して、基礎杭を構成することを特徴とした現場造成による基礎杭の構築方法である。
(1) 埋設用ケーシングの先端に、前記拘束筒体を連結する。
(2) 根固め部形成予定位置で、地面から前記埋設用ケーシングを押圧して、前記拘束筒体を埋設用ケーシングと共に地面に押し込む。
(3) 前記拘束筒体が、根固め部形成予定位置に到達したならば、前記埋設用ケーシングの押圧を解除して、前記埋設用ケーシングと拘束筒体の連結を解除して、前記埋設用ケーシングのみを地上に引き上げる。
(4) 続いて、通常の方法により根固め部を有する杭穴を掘削して、該杭穴内にコンクリートを充填してコンクリート柱体を構築する。
【0017】
前記における「根固め部の長さに対応した長さ」の拘束筒体とは、
・拘束筒体が根固め部のほぼ全長を覆い、拘束筒体の長さが根固め部の長さと略同一の場合
・拘束筒体が根固め部のほぼ全長を覆うが、拘束筒体が、根固め部より若干上方に突出する場合
・拘束筒体が根固め部に位置し、拘束筒体の長さが根固め部の長さより小さい場合
のいずれも含む。
【発明の効果】
【0018】
この発明は、杭穴内にコンクリート柱体を形成し、杭穴の根固め部に拘束筒体を配置し、杭穴軸部には拘束筒を配置しないので、杭穴の根固め部でコンクリート柱体を一体に拘束して根固め部を強化できる。さらに、軸部での過剰補強を無くして、適切な強度の基礎杭構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)〜(f)はこの発明の実施例1の埋設方法を表す。
【図2】(a)〜(e)はこの発明の実施例2の埋設方法を表す。
【図3】(a)〜(e)は、この発明の実施例3で、拘束筒体を地盤に埋設するまでの工程を表す。
【図4】(a)〜(e)は、この発明の実施例3で、拘束筒体を地盤に埋設した後に、コンクリート柱体を形成するまでの工程を表す。
【図5】この発明の拘束筒体とケーシングとをねじで係脱した実施例で(a)は係止状態、(b)は分離状態を表す。
【図6】この発明の拘束筒体とケーシングとの他の係脱を表す図で、(a)は係止状態の縦断面図、(b)は係止状態の正面図、(c)は分離状態の正面図を表す。
【図7】この発明の拘束筒体とケーシングとの他の係脱を表す図で、(a)は分離係止状態の縦断面図、(b)は係止状態の縦断面図を表す。
【図8】この発明の拘束筒体とケーシングとの他の係脱を表す図で、(a)は分離係止状態の正面図、(b)は係止状態の正面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.基礎杭構造30
【0021】
この発明は、先端部に根固め部13を形成する杭穴11内にコンクリートを充填して、コンクリート柱体21を埋設する基礎杭構造30で、根固め部13にのみ拘束筒体5を配置することを特徴とする(図1(f)、図2(e)、図4(e))。
(1)杭穴11は、軸部12の先端部に根固め部13を形成して、根固め部13を支持地盤に配置する。
(2)コンクリート柱体21は、内部に通常は構造鉄筋を組んだ鉄筋かご、H型鋼、鋼管 等の構造体を埋設する。
(3)杭穴11の根固め部13では、拘束筒体5を埋設する。
拘束筒体5は根固め部13の全長(全深さ)に亘って配置されることが望ましい。求める性能によっては、支持地盤に相当する深さに形成されている等、根固め部13の深さ方向の一部に配置される構造であってもよい。また、根固め部13の上方へ若干長さ拘束筒体5の上端7が突出することもできるが、この場合であっても、杭穴11の軸部12の大半には拘束筒体5が無い状態となる。
(4)杭穴11の軸部12では、土の面である杭穴側壁とコンクリート柱体21の外面とを直接接触させてある。なお、この場合、直接接触するとは、鋼管などの構造物が介在していないことを意味し、ソイルセメント層を介して接触する場合、土の周囲を地盤改良した場合などを含む。
【0022】
2.基礎杭構造30の構築方法(施工方法)
【0023】
(1) 拘束筒体5を所定深さに設置する際に、拘束筒体5と同程度の径の埋設用ケーシング1の下端部3に、着脱自在に拘束筒体5の上端部5を取り付けて、埋設用ケーシング1で押圧しながら拘束筒体5を所定深さに配置して、埋設用ケーシング1のみを地上18に引き上げ、拘束筒体5をそのまま地中に残置する。また、前記この構築方法の場合、次の異なる手順が考えられる。
(a) 杭穴11を掘削してコンクリート柱体21を形成した後に、拘束筒体5を押し込む(図1。実施例1)。
(b) 杭穴11を掘削しつつ拘束筒体5を押し込み、その後コンクリート柱体を形成する(図2。実施例2)。
(c) 杭穴11を掘削する前に拘束筒体5を埋設する(図3、図4。実施例3)。
【0024】
(2) 拘束筒体5と埋設用ケーシング1とを係脱する手段は、例えば以下のように構成する。
第一の手段では、埋設用ケーシング1の内面に螺糸を形成し、拘束筒体5の外面6にこれと螺合する螺糸を形成する(図5)。
第二の手段では、拘束筒体5の上端部7の外面6に周に沿って、係止突起32、32を形成する。また、埋設用ケーシング1の下端部3の外周に連結筒部33を嵌装し(埋設用ケーシング1の外径と連結筒部33の内径を一致)、連結筒部33の下端部に、係止突起32、32に対応して、係止突起32を挿入する入り口34と回転した係止突起32を係止できる収容部35とを形成する(図6)。
また、第三の手段では、拘束筒体5の上端7aに、外面6及び内面6aに突出する環状リブ36を形成する。また、埋設用ケーシング1の下端部3に、開閉して環状リブ36を挟むことができる挟持具37、37を、埋設用ケーシング1の半径方向に取り付ける(図7)。挟持具37の開閉は地上から油圧又は空気圧、あるいは機械操作によりロッドを昇降させて、作動させる。
また、第四の手段は、拘束筒体5の上端部7の外面6に周に沿って係止突起32、32を形成する。また、埋設用ケーシング1の下端部3の外周に、開閉して、係止突起32を挟むことができる挟持具38を設けて構成する(図7)。挟持具38は、埋設用ケーシング1の外周に沿って、下縁3aから下方に突出して配置する。
【0025】
(3) 前記における掘削ロッド41は地盤を効率よく掘削できれば任意である。例えば、掘削ロッド41は下端に掘削ヘッド42を有し、掘削ヘッド42は、掘削ロッドに連結するヘッド本体に、下端に掘削刃を有し揺動する掘削腕43、43を取り付けて構成することが望ましい(図2(a)、また、この場合、ヘッド本体の下端部にも下方に向けて掘削刃を形成することもできる(図示していない)。
【実施例1】
【0026】
図1に基づきこの発明の実施例を説明する。この実施例は、コンクリート柱体21を構築した後に、埋設用ケーシング1を使って拘束筒体5を埋設する実施例である。
【0027】
1.埋設用ケーシング1及び拘束筒体5
【0028】
鋼管からなる埋設用ケーシング1の下端部3に、鋼管からなる拘束筒体5(長さL、外径D)の上端部7を連結する。拘束筒体5の上端部7にねじを切ってあり、埋設用ケーシング1の下端部3にこれと螺合するねじを切ってある。埋設用ケーシング1内には縦パイプが配置され、パイプの下端の吐出口を下方に向けて下端部3に位置させる(図示していない)。縦パイプの上端は地上に位置し、地上から縦パイプ内へソイルセメントを供給できるようになっている。
【0029】
2.基礎杭構造30の構築方法(施工方法)
【0030】
(1) 任意の方法で、軸部12(径D00)の下端部に根固め部13(長さL、径D)が形成された杭穴11内に、鉄筋かごを挿入すると共にコンクリートを充填して、コンクリートが固化後に、杭穴内11にコンクリート柱体21を構築する(図1(a))。
【0031】
(2) 基礎杭構築予定位置で、オーガーに埋設用ケーシング1を取り付けて、根固め部13の上方から下降させる(図1(a))。
【0032】
(3) 杭穴軸部12及びコンクリート柱体21の軸と拘束筒体5の軸を一致させて、拘束筒体5を地面18に押し込み(図1(b))、拘束筒体5を根固め部13に位置させた状態で、埋設用ケーシング1の下降を中止する(図1(c))。この際、必要ならば埋設用ケーシング1を回転させながら押し込むこともできる。
【0033】
(4) 続いて、埋設用ケーシング1を逆回転して、埋設用ケーシング1と拘束筒体5の螺合を解除して、切り離し(図2(d))、埋設用ケーシング1のみを地上に引き上げる(図1(e))。この際、地盤を修復する(緩んだ地盤を締め固める)ために、埋設用ケーシング1の下端部3の吐出口から地盤へソイルセメントを突出することもできる。
【0034】
(5) 以上により、基礎杭構造30を構成する(図1(f))。この状態で、杭穴の根固め部13(長さL、径D)、すなわちコンクリート柱体21の根固め部の全長に亘り、拘束筒体5(長さL=L、径D=D)が配置される。また、杭穴11の軸部12では、コンクリート柱体21の外面には土(または、ソイルセメントが浸透した土)が位置する(図1(f))。
【0035】
(6) この実施例で、例えば、
・杭穴11の軸径D00=1200mm
・根固め部径D=1600〜2600mm(=拘束筒体5の径D
の場合、拘束筒体5の厚さは20〜40mm程度を想定している。
【0036】
3.他の実施例
【0037】
(1) 前記実施例において、杭穴11内にコンクリートを充填して、コンクリートが固化した後に拘束筒体5を埋設したが、固化する前に拘束筒体5を埋設することもできる。
【0038】
(2) また、前記実施例において、拘束筒体5は外面に螺旋状の羽根を形成した構造とすることもできる(図示していない)。
【0039】
(3) また、前記実施例において、拘束筒体5の下端部8に鋸刃その他の凹凸を形成して、拘束筒体5の下縁で地盤を切りながら埋設することもでき、この場合には、上記掘削液と併用すれば、比較的堅い地盤であっても容易に拘束筒体5を設置できる。
【0040】
(4) また、前記実施例において、根固め部13の長さLと拘束筒体5の長さLをほぼ同じとしたが、少なくとも、根固め部13で、既製杭21の最下段の突起部23の高さを含めてその高さより下方に拘束筒体5が位置していることが望ましい。
【実施例2】
【0041】
図2に基づいてこの発明の実施例を説明する。この実施例は、杭穴11は、軸部12の径D00、根固め部13の径D(D>D00)で掘削する。
【0042】
1.埋設用ケーシング1及び拘束筒体5
【0043】
鋼管からなる埋設用ケーシング1の下端部3に、鋼管からなる拘束筒体5(長さL、外径D)の上端部7を連結する。拘束筒体5の上端部7にねじを切ってあり、埋設用ケーシング1の下端部3にこれと螺合するねじを切ってある。埋設用ケーシング1内には縦パイプが配置され、パイプの下端の吐出口を下方に向けて下端部3に位置させる(図示していない)。縦パイプの上端は地上に位置し、地上から縦パイプ内へソイルセメントを供給できるようになっている。
【0044】
2.基礎杭構造30の構築方法(施工方法)
【0045】
(1) 基礎杭構築予定位置で、掘削機に埋設用ケーシング1を取り付けると共に、埋設用ケーシング1内に、掘削刃を有する掘削ヘッド42を配置した掘削ロッド41を挿通して、掘削ロッド41の上端を掘削機に連結する。掘削ロッド41の軸と、埋設用ケーシング1及び拘束筒体5の軸とを一致させてある。掘削ヘッド42は、先端に掘削刃を有する掘削腕43、43を揺動自在に取り付けて構成する(図2(a))。
【0046】
(2) 掘削ロッド41の掘削ヘッド42及び拘束筒体5の下端8aを地面18に近づけ、地面18に拘束筒体5の下端部8押し込みながら、地面18を掘削ヘッド42で掘削する(図2(a))。この際、埋設用ケーシング1をねじが締まる方向に回転しながら押し込む。また、途中、必要ならば、埋設用ケーシング1は溶接により上下を連結して継ぎ足す。
また、この際、掘削ヘッド42は杭穴11の軸部12の径D00で掘削し、その外側に同軸で拘束筒体5の径D(=D)で、回転させながら押し込む。したがって、この状態で、内径D00、外径Dに地盤が円筒状に残る。また、この際、掘削ヘッドの掘削の下端位置と、拘束筒体5の下端位置を、略同一にして掘削及び押し込みが進められる(図2(a))。
なお、杭穴11の軸部12の径D00を、根固め部13の径Dと同一とすれば(D00=D)、即ち、軸部12の径D00=拘束筒体5の径D となる。この場合には、地盤は円筒状に残らない。
【0047】
(3) 杭穴11の軸部12の掘削に続いて、掘削ロッド41を逆回転して、掘削径を拡大して、掘削腕43で、径Dで根固め部13を掘削する(図2(b)。したがって、根固め部13の掘削時には、掘削ヘッド43は、拘束筒体5の内面に沿って掘削を進める。
【0048】
(4) 掘削ロッド41での所定の杭穴11の根固め部13が掘削されたならば、拘束筒体5を所定の深さ(構築予定の基礎杭の根固め部の深さ位置)に設置する。
【0049】
(5) 続いて、埋設用ケーシング1を逆回転して、埋設用ケーシング1と拘束筒体5の螺合を解除して、切り離す(図2(d))。続いて、埋設用ケーシング1のみを地上に引き上げる。したがって、拘束筒体5のみ根固め部13内に残置される(図1(d))。
この際、地盤を修復する(緩んだ地盤を締め固める)ために、埋設用ケーシング1の下端部3の吐出口から地盤へソイルセメントを突出する。
【0050】
(6) また、(5)と前後し、または同時に、掘削ロッド43を地上に引きあげる。
【0051】
(7) 続いて、従来の方法により、杭穴11内に、鉄筋かご(図示していない)及びコンクリートを充填して、固化後に杭穴11内にコンクリート柱体21を構築し、基礎杭構造30を構成する(図2(e))。この状態で、根固め部13(長さL、径D)の内面に沿ってほぼ全長に亘り、拘束筒体5(長さL=L、径D=D)が配置される。また、杭穴11の軸部12では、コンクリート柱体21の外面には土(または、ソイルセメントが浸透した土)が位置する(図2(e))。
【0052】
3.他の実施例
【0053】
前記実施例において、埋設用ケーシング1を地上に引き上げた後に、杭穴11内にコンクリートを充填したが、掘削ロッド41を地上18に引き上げ、杭穴11内にコンクリートを充填し、その後に埋設用ケーシング1を地上18に引き上げることもできる(図示していない)。
【実施例3】
【0054】
図3、図4に基づいてこの発明の実施例を説明する。この実施例は、埋設用ケーシング1を使って拘束筒体5を埋設した後に、杭穴11を掘削する実施例である。
【0055】
1.埋設用ケーシング1及び拘束筒体5
【0056】
鋼管からなる埋設用ケーシング1の下端部3に、鋼管からなる拘束筒体5(長さL、外径D)の上端部7を連結する。拘束筒体5の上端部7にねじを切ってあり、埋設用ケーシング1の下端部3にこれと螺合するねじを切ってある。埋設用ケーシング1内には縦パイプが配置され、パイプの下端の吐出口を下方に向けて下端部3に位置させる(図示していない)。縦パイプの上端は地上に位置し、地上から縦パイプ内へソイルセメントを供給できるようになっている。
【0057】
2.基礎杭構造の構築方法(施工方法)
【0058】
(1) 基礎杭構築予定位置で、鋼管杭を埋設するための杭打ち機に埋設用ケーシング1を取り付けて地面18に近づけ(図3(a))、地面18に拘束筒体5の下端部8を押し込む(図3(b))。この際、埋設用ケーシング1をねじが締まる方向に回転しながら押し込む。また、途中、必要ならば、埋設用ケーシング1は溶接により上下を連結して継ぎ足す。
拘束筒体5が所定の深さ(構築予定の基礎杭の根固め部の深さ位置)に達したならば(図3(c))、埋設用ケーシング1を逆回転して、埋設用ケーシング1と拘束筒体5の螺合を解除して、切り離す(図3(d))。続いて、埋設用ケーシング1のみを地上に引き上げ、拘束筒体5を根固め部設置位置に残置する(図3(e)、図4(a))。
【0059】
(2) 続いて、通常の方法により、掘削ロッド(図示していない)で杭穴11の軸部12を掘削して(図4(b))、根固め部13の底付近(拘束筒体の下端付近)まで掘削する(図4(c))。続いて、根固め部を拡大掘削して、拘束筒体5の内面6aまで拡大して、根固め部13(長さL、径D)を掘削して杭穴11を形成して(図4(d))、掘削ロッドを地上に引き上げる。
続いて、杭穴11内に、鉄筋かご(図示していない)及びコンクリートを充填して、コンクリート柱体21を形成して、基礎杭構造30を構成する。
この状態で、根固め部13(長さL、径D)の内面に沿ってほぼ全長に亘り、拘束筒体5(長さL=L、径D=D)が配置される。また、杭穴11の軸部12では、コンクリート柱体21の外面には土(または、ソイルセメントが浸透した土)が位置する(図4(e))。
【符号の説明】
【0060】
1 埋設用ケーシング
2 埋設用ケーシングの上端部
3 埋設用ケーシングの下端部
5 拘束筒体
6 拘束筒体の外面
6a 拘束筒体の内面
7 拘束筒体の上端部
7a 拘束筒体の上端
8 拘束筒体の下端部
8a 拘束筒体の下端
11 杭穴
12 杭穴の軸部
13 杭穴の根固め部
18 地面
21 コンクリート柱体
30 基礎杭構造
31 拘束筒体の係止突起
32 埋設用ケーシングの連結筒部
33 連結筒部の入り口
34 連結筒部の収容部
35 拘束筒体の環状リブ
37 埋設用ケーシングの挟持具
38 埋設用ケーシングの挟持具
41 掘削ロッド
42 掘削ヘッド
43 掘削ヘッドの掘削腕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に根固め部を有する杭穴内にコンクリートを充填してなり、以下のような要件を総て具備したことを特徴とする現場造成による基礎杭構造。
(1) 杭穴の軸部の先端側を前記根固め部とした。
(2) 前記杭穴の根固め部の側壁外周に沿って、拘束筒体を埋設して、前記杭穴内にコンクリートを充填してコンクリート柱体を構築した。
(3) 前記杭穴の軸部ではコンクリート柱体と地盤とを直接接触させる。
【請求項2】
以下のような要件を総て具備したことを特徴とする請求項1記載の現場造成による基礎杭構造。
(1) 杭穴の根固め部を軸部に比して拡径掘削した。
(2) 拘束筒体を前記根固め部の略全長に亘り埋設した。
【請求項3】
以下のような要件を総て具備したことを特徴とする請求項1記載の現場造成による基礎杭構造。
(1) 杭穴の根固め部を軸部に比して拡径掘削した。
(2) 拘束筒体の外周に、螺旋突起を形成した。
【請求項4】
以下のようにして、構築予定の杭穴の根固め部の外周に沿った径で、かつ前記根固め部の長さに対応した長さの拘束筒体を配置して前記杭穴内にコンクリートを充填して、基礎杭を構成することを特徴とした現場造成による基礎杭の構築方法。
(1) 通常の方法により杭穴を掘削して、該杭穴内にコンクリートを充填してコンクリート柱体を構築する。
(2) (1)の前又は後に、埋設用ケーシングの先端に前記拘束筒体を連結する。
(3) (1)(2)で、杭穴を掘削した後で、コンクリートを充填する前又は充填した後又は充填と同時に、根固め部形成予定位置で、地面から前記埋設用ケーシングを押圧して、前記拘束筒体を埋設用ケーシングと共に地面に押し込む。
(3) 前記拘束筒体が、根固め部に到達したならば、前記埋設用ケーシングの押圧を解除して、前記埋設用ケーシングと拘束筒体の連結を解除して、前記埋設用ケーシングのみを地上に引き上げる。
【請求項5】
以下のようにして、構築予定の杭穴の根固め部の外周に沿った径で、かつ前記根固め部の長さに対応した長さの拘束筒体を配置して前記杭穴内にコンクリートを充填して、基礎杭を構成することを特徴とした現場造成による基礎杭の構築方法。
(1) 埋設用ケーシングの先端に、前記拘束筒体を連結し、前記埋設用ケーシング内に掘削ロッドを挿入する。
(2) 根固め部形成予定位置で、地面から前記埋設用ケーシングを押圧して、前記拘束筒体を埋設用ケーシングと共に地面に押し込みながら、前記拘束筒体内で、前記杭穴を掘削する。
(3) 前記拘束筒体が、根固め部形成予定位置に到達し、かつ杭穴の根固め部の掘削が完了したならば、前記埋設用ケーシングの押圧を解除して、前記埋設用ケーシングと拘束筒体の連結を解除して、前記埋設用ケーシング及び前記掘削ロッドを地上に引き上げる。
(4) 続いて、通常の方法により、前記杭穴内にコンクリートを充填して、コンクリート柱体を構築する。
【請求項6】
以下のようにして、構築予定の杭穴の根固め部の外周に沿った径で、かつ前記根固め部の長さに対応した長さの拘束筒体を配置して前記杭穴内にコンクリートを充填して、基礎杭を構成することを特徴とした現場造成による基礎杭の構築方法。
(1) 埋設用ケーシングの先端に、前記拘束筒体を連結し、前記埋設用ケーシング内に掘削ロッドを挿入する。
(2) 根固め部形成予定位置で、地面から前記埋設用ケーシングを押圧して、前記拘束筒体を埋設用ケーシングと共に地面に押し込みながら、前記拘束筒体内で、前記杭穴を掘削する。
(3) 前記拘束筒体が、根固め部形成予定位置に到達し、かつ杭穴の根固め部の掘削が完了したならば、前記掘削ロッドを地上に引き上げる。
(4) 続いて、通常の方法により、前記杭穴内にコンクリートを充填して、コンクリート柱体を構築する。
(5) 前記埋設用ケーシングと拘束筒体の連結を解除して、前記埋設用ケーシングを地上に引き上げる。
【請求項7】
以下のようにして、構築予定の杭穴の根固め部の外周に沿った径で、かつ前記根固め部の長さに対応した長さの拘束筒体を配置して、前記杭穴内にコンクリートを充填して、基礎杭を構成することを特徴とした現場造成による基礎杭の構築方法。
(1) 埋設用ケーシングの先端に、前記拘束筒体を連結する。
(2) 根固め部形成予定位置で、地面から前記埋設用ケーシングを押圧して、前記拘束筒体を埋設用ケーシングと共に地面に押し込む。
(3) 前記拘束筒体が、根固め部形成予定位置に到達したならば、前記埋設用ケーシングの押圧を解除して、前記埋設用ケーシングと拘束筒体の連結を解除して、前記埋設用ケーシングのみを地上に引き上げる。
(4) 続いて、通常の方法により根固め部を有する杭穴を掘削して、該杭穴内にコンクリートを充填してコンクリート柱体を構築する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−236323(P2010−236323A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87662(P2009−87662)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000176512)三谷セキサン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】