説明

現金処理装置

【課題】詰まった現金を取り除く復旧作業を行う際に、視線の移動により作業効率が悪化することを防止し、復旧作業の作業効率を向上させた現金処理装置を提供する。
【解決手段】現金処理装置は、挿入口11および払出口12を介して金庫A〜Dに現金を入出金する装置であり、挿入口11、払出口12および金庫A〜Dを接続する搬送経路21を有し搬送経路21を介して現金を搬送する搬送手段2と、搬送経路21および金庫A〜Dを含め現金が搬送される部位又はその近傍に配置された複数の発光部50〜59とを有し、複数の発光部50〜59のうち現金詰まり位置の近くに配置された発光部55を作動させて現金詰まり位置を外部(作業者)へ報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現金の投入に応じて発券や商品販売等の取引を行い、釣りを返却する自動発券機等に用いる現金処理装置に係り、特に現金詰まりを主因とする障害を復旧する機能を備えた現金処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動発券機や自動販売機等の現金処理装置は、現金を収納する金庫を有し、利用者側に設けられた現金を挿入する挿入口および釣り札等の現金を返却する払出口を介して金庫に現金を入出金するものである。この現金処理装置は、挿入口、払出口及び金庫を接続する搬送経路と現金を識別する識別部と現金の位置を検出する位置検出センサとを有する搬送手段と、この搬送手段を通じて現金を搬送させ取引に応じた入出金制御を行う制御手段とを備える構成が通例である。
【0003】
このような従来の現金処理装置は、現金を搬送する過程で現金が詰まる障害が発生することがあり、この障害が発生すると、障害復旧作業者が詰まった現金を手動で取り除いたうえで、取引をやり直す場合には回収した現金を利用者(外部)や金庫等の適切な場所に戻し、取引を進める場合には未払い金を利用者に支払う等の障害復旧作業が必要になる。この復旧作業に関連して特許文献1には、現金が詰まった位置等の異常発生位置を操作部の画像表示部で表示する現金処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−237369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の現金処理装置では、現金詰まりの可能性がある現金が搬送される部位とは異なる場所に現金詰まり位置を表示する表示部が設けられているので、作業者が詰まった現金を取り除く際に、詰まり位置を表示する表示部と現金が搬送される部位との間で視線を移動させる必要があり煩わしく、作業効率を低下させる要因になる。特に、鉄道の駅に設置される乗車券発券機に適用される場合は、現金が搬送される部位が縦長筐体の下部に配置され、表示部が縦長筐体の上部に配置される構成が通例であり、作業者はしゃがみながら遙か上方に配置された表示部を見上げる必要があり、作業効率を著しく悪化させる。
【0006】
また、障害発生時の搬送経路上には、例えば金庫に入庫しようとした現金のうち取引成立前であって預かり状態の現金(外金)および取引成立後であって金庫へ格納中の現金(内金)のように、金庫の残高を管理するための入出庫情報に金庫内現金であるとして記憶されている現金(内金)と記憶されていない現金(外金)とが混在している。障害復旧作業者にとっては、詰まった現金(搬送中の現金)が金庫内現金であるか金庫外現金であるかを外見に基づいて判断することができないため、詰まった現金が内金及び外金のいずれであるかを装置により表示する必要があり、この表示は作業者にとって理解しやすいものであることが要求される。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、詰まった現金を取り除く復旧作業を行う際に、視線の移動により作業効率が悪化することを防止し、復旧作業の作業効率を向上させた現金処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0009】
すなわち、本発明の一構成に係る現金処理装置は、挿入口および払出口を介して金庫に現金を入出金する現金処理装置であって、前記挿入口、前記払出口および前記金庫を接続する搬送経路を有し当該搬送経路を介して現金を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される現金が詰まった位置を特定する位置特定手段と、前記搬送経路および前記金庫を含め現金が搬送される部位又はその近傍に配置された複数の発光部と、前記位置特定手段が現金詰まり位置を特定した場合に当該現金詰まり位置を外部へ報知する制御手段とを具備してなり、前記制御手段は、前記複数の発光部のうち前記位置特定手段により特定された現金詰まり位置の近くに配置された前記発光部を作動させて現金詰まり位置を外部へ報知することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、搬送経路および金庫を含めて現金が搬送される部位又はその近傍に複数の発光部を設け、これら複数の発光部のうち現金詰まり位置の近くの発光部を作動させるので、視線の移動を要することなく一目で現金の詰まり位置を特定でき、復旧作業の作業効率を向上させることができる。
【0011】
位置検出センサの位置または現金詰まり位置と発光部の位置とが異なる場合であっても作業者にとって分かりやすい適切な位置の発光部を作動させるためには、前記位置特定手段は、搬送される現金の位置を検出する複数の位置検出センサと、前記複数の位置検出センサによる検出結果に基づいて現金が詰まった位置を特定する詰まり位置特定部とを含んでなり、前記制御手段は、前記詰まり位置特定部により特定される現金詰まり位置と作動させる発光部とを関連付けた情報を記憶する記憶部と、前記詰まり位置特定部により特定された現金詰まり位置と前記記憶部の記憶とに基づいて前記発光部を作動させる発光制御部とを含んでなることが好ましい。
【0012】
本発明の他の構成に係る現金処理装置は、挿入口および払出口を介して金庫に現金を入出金する現金処理装置であって、前記挿入口、前記払出口および前記金庫を接続する搬送経路を有し当該搬送経路を介して現金を搬送する搬送手段と、搬送中の現金が金庫内現金及び金庫外現金のいずれかであることを表示する一つの内外金表示部と、搬送中の現金に関する情報を含め前記金庫に関する入出庫情報を管理する制御手段とを具備してなり、前記制御手段は、前記入出庫情報において搬送中の現金が金庫内現金および金庫外現金のいずれか一方である状態からいずれか他方である状態へ変更した場合に、当該入出庫情報の変更に応じて前記内外金表示部の表示を変更することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、搬送中の現金が金庫内現金及び金庫外現金のいずれかであることを表示する内外金表示部が一つだけ設けられているので、詰まった現金が金庫内現金であるか否かを作業者が一目で把握することが可能となり、復旧作業の作業効率を向上させることができる。
【0014】
視線の移動を要さずに復旧作業の作業効率を著しく向上させるためには、前記内外金表示部は、前記搬送経路及び前記金庫を含め現金が搬送される部位とともに一側面側から視認可能な位置に配置されていることが望ましい。
【0015】
現金詰まり時等の障害復旧時に電源の切断を可能とするためには、前記内外金表示部が、搬送中の現金が金庫内現金及び金庫外現金のいずれかであることを表す表示を電磁的に切り替えて、当該表示を次の切り替え時まで機械的に維持するものであることが好ましい。
【0016】
なお、例えば、現金詰まり時等に電力供給が無くても表示を機械的に維持可能なキープソレノイド等を用いた内外金表示部を複数設けると、機械的な動作遅延により複数の内外金表示部の表示に齟齬が生じることが考えられるが、本発明では内外金表示部を一つのみとしているので、このような齟齬が生じることがない。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、以上説明した構成であるから、現金が搬送される部位又はその近傍に設けた発光部の作動を通じて現金の詰まり位置を報知するので、視線の移動を一切要することなく一目で現金の詰まり位置を特定でき、復旧作業の作業性を向上させることができる。
【0018】
また、内外金表示部が一つだけ設けられているので、詰まった現金が金庫内現金であるか否かを作業者が容易に把握することが可能となり、復旧作業の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る現金処理装置を示す概略全体構成図。
【図2】一部の金庫を抜き取った状態を示す図1に対応した図。
【図3】同現金処理装置における発光部および内外金表示部を示す側面図。
【図4】同現金処理装置における搬送手段および制御手段の構成および機能の概略を示すブロック図。
【図5】現金処理装置が記憶する、現金の詰まり位置と作動させる発光部との関連付け情報である詰まり位置発光テーブルを示す模式図。
【図6】同現金処理装置の制御手段で実行される発光制御処理ルーチンを示すフローチャート。
【図7】同現金処理装置において現金が詰まったときに発光部が作動している状態を示す模式図。
【図8】同現金処理装置において取引成立前の内外金表示部の表示制御を示す模式図。
【図9】同現金処理装置において取引成立後の内外金表示部の表示制御を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る現金処理装置を、図面を参照して説明する。なお、現金は紙幣と硬貨とを含むが、本実施形態では紙幣を取り扱う紙幣ブロックとしての現金処理装置を例に挙げて説明する。
【0021】
図1に示す本実施形態の現金処理装置は、例えば乗車券やカード、精算切符等の券売を行う自動発券機として用いられるもので、紙幣ブロック1と、この紙幣ブロック1にセットされて紙幣の収納場所となる4つの金庫A〜Dと、外部から投入される紙幣の金種を識別部22で識別して金庫A〜Dのうち対応する金庫に搬送経路21を介して搬送する搬送手段2とを備えている。
【0022】
紙幣ブロック1は、この現金処理装置を利用する利用者に近い側に挿入口11、出金口13、返却口14(以下、出金口13及び返却口14を合わせて払出口12ともいう)を設けたもので、同じく利用者に近い側に固定式の金庫Dを内設し、係員が操作を行う側に3つのカセット式の金庫A〜Cを設けている。また、紙幣ブロック1には、金庫A〜Cに対応して設けられこれら金庫A〜Cへ識別部22により真性であると識別された紙幣を収納する前に一次的に保留する一次保留部a1〜c1や、搬送経路21上の紙幣(不良券を含む)を一時的に保留する一時保留部Eや出金保留部Fが設けられている。また、読み取り不能、金種相違、重送発生、異常検知時の不良券を回収する不良券回収部Gが設けられている。
【0023】
カセット式の金庫A〜Cは、図2に例示するように把手hを把持して紙幣ブロック1から引き出すことが可能にされている。これら金庫A〜Cと紙幣ブロック1との間には、必要に応じて電磁力等を利用して金庫A〜Cを引き出し禁止状態にする図示しないロック機構が設けてあり、また、紙幣ブロック1又は金庫A〜Cには、引き出し禁止状態か否かを表示して係員に了知させる図示しないLED表示部が設けてある。
【0024】
現金が搬送される部位及びその近傍には、図3に示すように、複数の発光部50〜59がLEDにより構成されている。現金が搬送される部位には、搬送経路21、金庫A〜D、識別部22、挿入口11と識別部22とを連絡する挿入部23、一時保留部E、出金保留部F、不良券回収部G、及びこれらを接続する搬送経路21を備えた搬送手段2が挙げられる。複数の発光部50〜59は、これら現金が搬送される部位とともに紙幣ブロック1の一側面側から視認可能に配置されている。
【0025】
本実施形態では、発光部50〜59は、これら現金が搬送され得る主要部位に対応して配置されている。具体的には、挿入部23に発光部50、識別部22に発光部51、出金保留部Fに発光部52、一時保留部Eに発光部53、金庫Dに発光部54、搬送経路21の主要部の近傍に発光部55、不良券回収部Gに発光部56、金庫Aに発光部57、金庫Bに発光部58、金庫Cに発光部59が対応して配置されている。
【0026】
不良券回収部Gの係員が操作を行う側には、図3に示すように、一つの内外金表示部4が、現金が搬送される部位とともに紙幣ブロック1の一側面側から視認可能な位置に配置されている。内外金表示部4は、カバーの内部に配置され赤色に着色された赤色領域と緑色に着色された緑色領域を有し回転可能に支持されたプレートと、このプレートを外部から視認可能にするカバーに形成された開口部41と、プレートを正方向及び逆方向に回転させるキープソレノイドとを含んでおり、キープソレノイドの電磁石部により電磁的にプレートを回転させ、開口部41を通じて外部から視認可能な領域を赤色領域から緑色領域に、若しくはその逆に切り替えするものである。切り替えた後は、キープソレノイドの永久磁石により電力を供給しなくともプレートの位置を次の切り替え時まで機械的に維持する。本実施形態では、外部から赤色領域が視認できるときは、搬送中の現金が金庫外現金(外金)であることを表示し、外部から緑色領域が視認できるときは、搬送中の現金が金庫内現金(内金)であることを表示するものとしている。
【0027】
この実施形態では、図4に示すように、金庫Aを第一金種たる一万円札を格納する第一金種金庫Aとし、金庫Bを第二金種たる五千円札を格納する第二金種金庫Bとし、金庫Cを第三金種たる千円札を格納する第三金種金庫Cとし、金庫Dを第四金種たる二千円札を格納する第四金種金庫Dとして、金庫A〜Dを四金種循環金庫として設定している。
【0028】
図4に示すように、現金処理装置は、搬送手段2とこれを制御する制御手段3とを含んで構成されている。搬送手段2は、周知の現金処理装置と同様に、図示しない挾持ローラ、搬送ベルト、ウィング等の方向変換部などから構成される搬送経路21と、搬送される現金たる紙幣の金種および真性(偽造か否か)を識別する識別部22と、紙幣の金種識別のみを行い紙幣の真性までは識別しない簡易型の識別部20と、搬送経路21及び金庫A〜Dを含め現金が搬送され得る部位における現金の位置を検出する複数の位置検出センサ24とを有している。なお、図4では複数の位置検出センサ24のうち、搬送経路21の所定部位における現金の位置を検出する二つの位置検出センサ24i-1、24iを例示しているが、その他の位置検出センサ24の図示を省略している。
【0029】
制御手段3は、識別部22或いは簡易型の識別部20の識別結果、位置検出センサ24の検出結果等に基づいて搬送手段2を制御するものであり、挿入口11から投入された紙幣を識別部22に通過させた後、搬送経路21に沿って流通させ、随所に設けた分岐部26a〜26gで必要に応じて紙幣を方向変換して、第一金種金庫A、第二金種金庫B、第三金種金庫C、固定金庫D、一時保留部E、出金保留部F、払出口12、不良券回収部G等へ搬送する動作を行うとともに、金庫A〜D等から搬送経路21上への紙幣の繰り出し動作、簡易型の識別部20における金種識別、更には次なる搬送先である出金口13や金庫A〜Dへの搬送動作などを含む統括的な搬送制御を行うように構成されている。
【0030】
この紙幣の搬送制御に関連して、制御手段3は、搬送経路21の複数箇所に設けられた複数の位置検出センサ24による検出結果に基づいて搬送中の現金が詰まる等の障害が発生しているか否かの判定を行い、障害が発生したと判定した場合に位置検出センサ24による検出結果に基づいて現金詰まり位置を特定し、現金詰まり位置の近くに配置された発光部50〜59を作動させるように構成されている。
【0031】
この紙幣の搬送制御に対して、さらに制御手段3は、発券装置等の図示しない上位制御装置からの指令や位置検出センサ24を含む各種センサの検出結果に基づいて金庫A〜Dの入出金に関する入出金情報(例えば金庫残高など)を管理する入出金制御を行う。
【0032】
入出金情報には、搬送中の現金が金庫内現金(内金)および金庫外現金(外金)のいずれであるかを示す搬送中の現金に関する情報が含まれている。入出金情報において金庫内の現金であるとしている現金を「内金」といい、金庫外の現金であるとしている現金を「外金」という。
【0033】
この入出金制御は、挿入口11から挿入された現金を金庫A〜Dへ入庫する入金処理と、発券等の取引成立に応じて金庫A〜Dから払出口12を通じて釣りを払い出す出金処理とを実行するものであり、入出金制御の態様としては、一次保留部a1〜c1及び出金保留部Fの双方に現金を保留して入金処理および出金処理を並列に実行する入出金処理並列実行型や、挿入口11から挿入された現金を金庫A〜Dへ完全に格納して入金処理を完了させ、その後に出金処理を実行する入出金処理順次実行型が挙げられる。
【0034】
本実施形態では、入出金制御を後者の入出金処理順次実行型としており、入金処理において、乗車券の購入ボタンが押下された等の取引成立(取引確定)したことをもって搬送中の現金に関する情報を「外金」から「内金」へ変更し、この搬送中の現金に関する情報の変更に応じて内外金表示部4の表示を変更する取り扱いをしているが、「内金」と「外金」との取り扱いを切り替えるタイミングはこれに限定されるものではない。
【0035】
上記で述べた搬送制御などを行う具体的な制御手段3は、図4に示すように、入出金制御部31と、前記入出金情報を記憶する金庫入出金情報記憶部32と、搬送制御部33と、障害発生判定部34と、詰まり位置特定部35と、発光部50〜59の作動(発光)を制御する発光制御部36と、内外金表示部4の表示を制御する内外金表示制御部37とを含んで構成されている。
【0036】
金庫入出金情報記憶部32は、金庫A〜D毎にその入出金に関する入出金情報を記憶するものであり、1つの取引毎に金種及び枚数を含めて入金額並びに出金額を記憶するとともに、搬送中の紙幣が内金であるか外金であるかを示す搬送経路21上を搬送中の紙幣に関する情報を記憶している。
【0037】
入出金制御部31は、利用者が操作する図示しない操作部、搬送手段2や各種センサからの信号に基づいて入出金に関する総括的な制御を行うものであり、金庫入出金情報記憶部32に記憶される入出金情報の管理、取引に応じた紙幣の搬送指令を搬送制御部33に対して行う。
【0038】
搬送制御部33は、入出金制御部31からの紙幣の搬送指令に基づいて搬送手段2を駆動制御し、紙幣の搬送を行う。
【0039】
障害発生判定部34は、搬送手段2に設けられた位置検出センサ24からの入力に応じて紙幣詰まり等の障害が発生しているか否かを判定し、その判定結果を詰まり位置特定部35へ伝達する。具体的には、搬送経路21の所定の二箇所を通過する現金を検出する位置検出センサ24i−1(24)及び位置検出センサ24i(24)が配置されており、一方の位置検出センサ24i−1(24i)により現金の通過が検出されたものの、この検出時点から所定時間経過しても他方の位置検出センサ24i(24i−1)で現金の通過が検出されない場合に、障害が発生したと判定する(採用している位置検出センサの数を自然数nとして、i=1、2、…、nである)。搬送制御部33は、搬送手段2に対する搬送指令から、入金時の順方向動作時においてもスイッチバック動作時においても、更には出金時の動作時においても、各部における紙幣の搬送方向に関する情報を有しているため、上流となる位置検出センサ24と下流となる位置検出センサ24の関係が逆転しても紙幣の通過、非通過を検出することができる。
【0040】
詰まり位置特定部35は、障害発生判定部34により障害が発生したと判定された場合に、位置検出センサ24の検出結果に基づいて現金の通過が検出された位置検出センサ24と現金の通過が検出されない位置検出センサ24との間の領域を、現金が詰まっている位置である現金詰まり位置として特定する。本実施形態では、上記のような位置検出センサ24を各部に配置して、現金詰まり位置を図5左欄に示すような領域に区画している。
【0041】
発光制御部36は、詰まり位置特定部35により特定された現金詰まり位置と、図5に示す詰まり位置発光テーブルのデータとに基づいて作動させる発光部50〜59を特定し、特定した発光部を作動させる。詰まり位置発光テーブルは、図4に示す記憶部38に記憶されており、図5に示すように現金詰まり位置と作動させる発光部とを関連付けた情報であり、現金詰まり位置とその位置に近い発光部とを関連付けるとともに、位置検出センサ24の位置または現金詰まり位置と発光部50〜59の位置とが異なる場合であっても作業者が理解し易い位置の発光部を作動させるように関連付けが設定されている。
【0042】
内外金表示制御部37は、金庫入出金情報記憶部32に記憶されている搬送中の現金に関する情報に合致するように内外金表示部4の表示を制御するものである。具体的には、搬送中の現金が内金であるときに内外金表示部4で緑色領域を表示し、搬送中の現金が外金であるときに内外金表示部4で赤色領域を表示するように、内外金表示部4のキープソレノイドを駆動する。
【0043】
このような制御手段3を実現する具体的な構成は、CPU、メモリ及びインターフェイスを有する通常のマイクロコンピュータユニットにより構成され、メモリには図示しない搬送制御処理ルーチンや入出金制御処理ルーチンや障害発生判定処理ルーチンや詰まり位置特定処理ルーチンや図6に示す発光制御処理ルーチンが格納してあり、CPUが適宜必要なプログラムを呼び出して実行することにより、上記の入出金制御部31、搬送制御部33、障害発生判定部34、位置特定部35、発光制御部36および内外金表示制御部37が実現される。これらの詳細な制御、例えば制御手段3は、紙幣を各金庫A〜Cに収納する前に一時的に一旦これらの一次保留部a1、b1、c1に保留し、その後、搬送経路21上に一旦繰り出した後に金庫A〜Cに収納する制御を行うが、本実施形態においてこれらの具体的な構成や制御については省略している。また、各金庫A〜Dに紙幣を装填し、或いは各金庫A〜Dから紙幣を繰り出す際には、各金庫A〜Dの一部または搬送経路21の一部に設けた図示しない計数部によって紙幣の枚数が計数されるようにしている。
【0044】
次に、現金の搬送中に現金詰まりが生じた場合の動作について図6及び図7を参照しつつ説明する。ここでは、挿入口11から1枚の一万円札Mo1が挿入され、これを金庫Aの一次保留部a1へ搬送する途中で詰まった例を挙げて説明する。一万円札Mo1が詰まった位置は、図4に示す位置検出センサ24aと位置検出センサ24bの間であり、発光部55が配置されている搬送経路21の主要部の近傍である。
【0045】
まず、制御手段3は、位置検出センサ24において所定順序および所定タイミングで現金が検出されているか否かを判定し、現金詰まりが生じているか否かを常時判定している(図6の処理A1)。一万円札Mo1が詰まると、位置検出センサ24aで現金が検出されているが、位置検出センサ24bで現金が検出されないので、制御手段3は現金が詰まったと判定する(図6の処理A1:YES)。
【0046】
次に、制御手段3は、位置検出センサ24の検出結果に基づいて現金詰まり位置を特定する(図6の処理A2)。この例では、位置検出センサ24aで現金が検出されているが、位置検出センサ24bで現金が検出されないことをもって位置検出センサ24aと位置検出センサ24bとの間で現金が詰まっていると判定する。
【0047】
次に、制御手段3は、特定した現金詰まり位置と、詰まり位置発光テーブルのデータとに基づいて作動させる発光部55を特定する(図6の処理A3)。この例では、位置検出センサ24aと位置検出センサ24bとの間は搬送経路21内であるので、作動させる発光部は発光部55であると特定する。
【0048】
次に、図7に示すように、特定した発光部55を作動させる(図6に示す処理A4)。なお、発光部55の作動は点灯でも点滅でもかまわない。
【0049】
続けて、内外金表示部4の表示制御について図8及び図9を用いて説明する。ここでは、挿入口11から1枚の一万円札Mo1が挿入され、これを金庫Aの一次保留部a1へ搬送し、その後取引が成立して、一次保留部a1から金庫Aへ一万円札Mo1を搬送する例を挙げて説明する。
【0050】
図8(a)に示すように、取引成立前では一次保留部a1に保留している一万円札Mo1は、預かり金、すなわち金庫Aの外金であり、金庫入出金情報記憶部32に搬送中現金が外金であることを示すデータが記憶されており、この記憶に応じて内外金表示制御部37が内外金表示部4を制御し、内外金表示部4が赤色領域を視認可能な状態に維持し、搬送中現金が外金であることが表示される。
【0051】
ここで、利用者により乗車券の購入ボタンが押下されて取引が成立すると、図8(b)に示すように、取引成立後では一次保留部a1に保留している一万円札Mo1は、金庫Aに格納すべき金庫Aの内金となり、金庫入出金情報記憶部32に記憶されている搬送中現金を示すデータが「外金」から「内金」へ変更され、この記憶に応じて内外金表示部4が緑色領域を視認可能な状態に維持し、搬送中現金が内金であることが表示される。
【0052】
以上のように、本実施形態に係る現金処理装置は、挿入口11および払出口12を介して金庫A〜Dに現金を入出金する現金処理装置であって、挿入口11、払出口12および金庫A〜Dを接続する搬送経路21を有し搬送経路21を介して現金を搬送する搬送手段2と、搬送手段2により搬送される現金が詰まった位置を特定する位置特定手段(位置検出センサ24、詰まり位置特定部35)と、搬送経路21および金庫A〜Dを含め現金が搬送される部位又はその近傍に配置された複数の発光部50〜59と、位置特定手段(位置検出センサ24、詰まり位置特定部35)が現金詰まり位置を特定した場合に現金詰まり位置を外部へ報知する制御手段3とを具備してなり、制御手段3は、複数の発光部50〜59のうち位置特定手段(位置検出センサ24、詰まり位置特定部35)により特定された現金詰まり位置の近くに配置された発光部55を作動させて現金詰まり位置を外部へ報知することを特徴とする。
【0053】
この構成によれば、搬送経路21および金庫A〜Dを含めて現金が搬送される部位又はその近傍に複数の発光部50〜59を設け、これら複数の発光部50〜59のうち詰まり位置に近い発光部55を作動させるので、大きな視線の移動を一切要することなく一目で現金の詰まり位置を特定でき、作業性を著しく向上させることができる。
【0054】
具体的に、本実施形態の位置特定手段は、搬送される現金の位置を検出する複数の位置検出センサ24と、複数の位置検出センサ24による検出結果に基づいて現金が詰まった位置を特定する詰まり位置特定部35とを含んでなり、制御手段3は、詰まり位置特定部35により特定される現金詰まり位置と作動させる発光部とを関連付けた情報を記憶する記憶部38と、詰まり位置特定部35により特定された現金詰まり位置と記憶部38の記憶とに基づいて発光部55を作動させる発光制御部36とを含んでなるので、位置検出センサの位置または現金詰まり位置と発光部の位置とが異なる場合であっても記憶部38の関連付け情報を適切に設定し、作業者にとって分かりやすい適切な位置の発光部を作動させることができる。
【0055】
また、本実施形態は、挿入口11および払出口12を介して金庫A〜Dに現金を入出金する現金処理装置であって、挿入口11、払出口12および金庫A〜Dを接続する搬送経路21を有し搬送経路21を介して現金を搬送する搬送手段2と、搬送中の現金が金庫内現金及び金庫外現金のいずれかであることを表示する一つの内外金表示部4と、搬送中の現金に関する情報を含め金庫A〜Dに関する入出庫情報を管理する制御手段3とを具備してなり、制御手段3は、入出庫情報において搬送中の現金が金庫内現金および金庫外現金のいずれか一方である状態からいずれか他方である状態へ変更した場合に、入出庫情報の変更に応じて内外金表示部4の表示を変更するものであり、搬送中の現金が金庫内現金及び金庫外現金のいずれかであることを表示する内外金表示部4が一つだけ設けられているので、詰まった現金が金庫内現金であるか否かを作業者が一目で把握することが可能となり、復旧作業の作業効率を向上させることができる。
【0056】
この場合の内外金表示部4は、搬送経路21及び金庫A〜Dを含め現金が搬送される部位とともに一側面側から視認可能な位置に配置されているので、現金が詰まっている部位とともに内外金表示部4を視認可能であり、視線の移動を要さずに復旧作業の作業効率を向上させることができる。
【0057】
さらに、本実施形態で採用する内外金表示部4が、搬送中の現金が金庫内現金及び金庫外現金のいずれかであることを表す表示を電磁的に切り替えて、表示を次の切り替え時まで機械的に維持するキープソレノイドであるので、現金詰まり時等の障害復旧時に電源を切断することが可能になり、その場合にも内外金表示部の表示が1箇所のみにおいて適切になされるため、複数の内外金表示部を用いた場合の機械的な遅れにより表示に齟齬が生じる不具合等も有効に解消することが可能となる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0059】
例えば、本実施形態では、入出金情報に搬送中現金に関する情報を含めて金庫入出金情報記憶部32に記憶しているが、搬送中現金に関する情報を記憶せずに、初期化処理を開始した時点や、取引が成立した等の所定条件の成立に応じて内外金表示部4の表示を変更し、結果的に内外金表示部4の表示を通じて制御手段3が搬送中現金に関する情報を管理しているように構成してもよい。すなわち、搬送中現金に関する情報を内外金表示部4の表示を通じて結果的に管理(作業者が把握)することができれば、必ずしも搬送中現金に関する情報をメモリに記憶することを要するものではない。
【0060】
また、本実施形態では、一つの発光部55を作動させているが、複数の発光部を作動させるようにしてもよく、例えば、現金の搬送軌跡を示すように複数の発光部50〜59を作動させると、作業者にとってより一層現金詰まり位置を特定しやすくすることができる。
【0061】
また、本実施形態では、金庫A〜Dを四金種循環金庫としているが、金庫A〜Dに格納する金種は本実施形態のものに限定されるものでなく、どの金種を格納することも可能である。また、固定式の金庫Dを二千円札と五千円札を格納する混合金庫とし、金庫Aに千円札、金庫Bに一万円札を格納する循環金庫とし、金庫Cを多用途に利用可能な自在金庫に設定して、現金の補給及び回収を目的として現金処理装置を停止させることなく運用する、いわゆる無停止補給、無停止回収を実現した金庫設定も可能である。このような様々な金庫の設定に対しても本発明を適用することが可能である。
【0062】
また、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1………紙幣ブロック
11……挿入口
12……払出口
A〜D…金庫
2………搬送手段
21……搬送経路
24……位置検出センサ
3………制御手段
4………内外金表示部
35……詰まり位置特定部
36……発光制御部
38……記憶部
50〜59…発光部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入口および払出口を介して金庫に現金を入出金する現金処理装置であって、
前記挿入口、前記払出口および前記金庫を接続する搬送経路を有し当該搬送経路を介して現金を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される現金が詰まった位置を特定する位置特定手段と、
前記搬送経路および前記金庫を含め現金が搬送される部位又はその近傍に配置された複数の発光部と、
前記位置特定手段が現金詰まり位置を特定した場合に当該現金詰まり位置を外部へ報知する制御手段とを具備してなり、
前記制御手段は、前記複数の発光部のうち前記位置特定手段により特定された現金詰まり位置の近くに配置された前記発光部を作動させて現金詰まり位置を外部へ報知することを特徴とする現金処理装置。
【請求項2】
前記位置特定手段は、搬送される現金の位置を検出する複数の位置検出センサと、前記複数の位置検出センサによる検出結果に基づいて現金が詰まった位置を特定する詰まり位置特定部とを含んでなり、
前記制御手段は、前記詰まり位置特定部により特定される現金詰まり位置と作動させる発光部とを関連付けた情報を記憶する記憶部と、前記詰まり位置特定部により特定された現金詰まり位置と前記記憶部の記憶とに基づいて前記発光部を作動させる発光制御部とを含んでなる請求項1に記載の現金処理装置。
【請求項3】
挿入口および払出口を介して金庫に現金を入出金する現金処理装置であって、
前記挿入口、前記払出口および前記金庫を接続する搬送経路を有し当該搬送経路を介して現金を搬送する搬送手段と、
搬送中の現金が金庫内現金及び金庫外現金のいずれかであることを表示する一つの内外金表示部と、
搬送中の現金に関する情報を含め前記金庫に関する入出庫情報を管理する制御手段とを具備してなり、
前記制御手段は、前記入出庫情報において搬送中の現金が金庫内現金および金庫外現金のいずれか一方である状態からいずれか他方である状態へ変更した場合に、当該入出庫情報の変更に応じて前記内外金表示部の表示を変更することを特徴とする現金処理装置。
【請求項4】
前記内外金表示部は、前記搬送経路及び前記金庫を含め現金が搬送される部位とともに一側面側から視認可能な位置に配置されている請求項3に記載の現金処理装置。
【請求項5】
前記内外金表示部は、搬送中の現金が金庫内現金及び金庫外現金のいずれかであることを表す表示を電磁的に切り替えて、当該表示を次の切り替え時まで機械的に維持するものである請求項3又は4に記載の現金処理装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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