説明

現金取扱装置

【課題】自動取引装置に印字障害が発生した場合においても、媒体に印字された個人情報を漏洩させることなく、単独で障害を復旧させて明細票を発行可能な現金取扱装置を提供する。
【解決手段】利用者に対して取引内容を記載した明細票を印字発行する機能を有する現金取扱装置であって、利用者を識別するための識別情報と、明細票に利用者の個人情報が含まれるか否かを示す有無情報とを記憶する記憶部と、明細票を出力する発行部と、取引過程で生じた障害が復旧したか否かを判定し、取引過程で生じた障害が復旧したと判定した場合に、有無情報に基づいて明細票に利用者の個人情報が含まれるか否かを判定し、明細票に利用者の個人情報が含まれると判定した場合に、識別情報に基づいて利用者を認証し、明細票を前記発行部に発行させる制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現金自動取扱装置の取引内容印字障害発生時の復旧方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現金を取り扱う自動取引装置の明細票(取引内容)には特定個人や団体の名称、口座番号などの個人情報と、取引金額などが記載されており、明細票を万が一誤って当該人以外に発行してしまうことがあると、個人情報漏洩の問題につながる事例がある。従って、明細票を発行するときに当該取引を実施した本人以外には発行しないようにする必要がある。
【0003】
例えば、自動現金取引装置において、入金などの取引結果の明細票を印字中に明細票発行装置或いは装置本体になんらかの障害が発生して印字が正常に行われなかった際に障害の復旧に時間が掛かるため、或いは当該取引者が障害状況を装置管理者に報告するためなどの理由により、当該取引者が端末から離れている間に、復旧手続きによって装置が障害から回復して明細票の発行を行うことが可能になり、当該取引者がいないにも関わらず取引の明細票を発行してしまうことにより、個人情報が他者に渡ってしまう可能性があるという問題がある。
【0004】
このような問題に対して、例えば、特許文献1では、現金自動取引装置において装置の障害が発生した際に、利用者本人を識別可能な識別情報を2次元バーコードや無線通信データとして生成し、これを利用者に対して出力し、利用者が他の現金自動取引装置において取引を継続させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−170421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、利用者が取引を行う際にホストコンピュータに対し、取引者の認証を行い、障害時においても同ホストコンピュータに対して利用者の認証を行わなければならず、ホストコンピュータへの依存度が高いものとなっている。また、上記特許文献1によれば、障害が発生した現金自動取引装置とは異なる他の現金自動取引装置にて障害発生後も利用者が継続して取引を行う技術が提案されているが、例えば、小規模な店舗などに1台だけ設置されている装置などにおいては、障害が発生した当該装置にて速やかに障害を回復し利用者に対して取引を継続させる必要があるため、そのような対応を採用することができず、取引を継続させることができないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、自動取引装置に印字障害が発生した場合においても、媒体に印字された個人情報を漏洩させることなく、単独で障害を復旧させて明細票を発行可能な現金取扱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる現金取扱装置は、利用者に対して取引内容を記載した明細票を印字発行する機能を有する現金取扱装置であって、前記利用者を識別するための識別情報と、前記明細票に前記利用者の個人情報が含まれるか否かを示す有無情報とを記憶する記憶部と、前記明細票を出力する発行部と、取引過程で生じた障害が復旧したか否かを判定し、取引過程で生じた障害が復旧したと判定した場合に、前記有無情報に基づいて前記明細票に前記利用者の個人情報が含まれるか否かを判定し、前記明細票に前記利用者の個人情報が含まれると判定した場合に、前記識別情報に基づいて前記利用者を認証し、前記明細票を前記発行部に発行させる制御部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自動取引装置に印字障害が発生した場合においても、媒体に印字された個人情報を漏洩させることなく、単独で障害を復旧させて明細票を発行可能な現金取扱装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態にかかる現金自動取引装置の概略を示す図である。
【図2】取引の流れを示すフローである。
【図3】障害発生後の装置回復処理の流れを示すフローである。
【図4】個人情報を含む取引の明細票の例である。
【図5】個人情報を含まない取引の明細票の例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる現金取扱装置の実施の形態を詳細に説明する。以下では、本発明にかかる現金取扱装置を、売上金入金機装置に適用した場合について説明しているが、例えば、金融機関に採用されているATM(Automated teller machine)等、顧客との間で行う取引の履歴や内容を紙等の媒体に印字して出力する機能を有しているものであれば、特にこれに限定されるものではない。
【0012】
図1は、本発明の実施形態にかかる売上金入金機装置1000を示す図である。図1に示すように、売上金入金機装置1000は、売上金入金機装置1000の取引内容を管理するホストコンピュータ1および売上金入金機装置1000の動作を管理するサーバ2と、一般的な公衆回線網であるネットワークNを介して接続されている。
【0013】
また、図1に示すように、売上金入金機装置1000は、装置全体を制御する本体制御部3と、利用者に対するボタンやスイッチ類を配した操作部4と、利用者に対して様々な情報を表示するための表示部5と、利用者に対する認証などを行う際のカード取扱装置部6と、本発明にかかるところの利用者明細票のデータ管理を行う明細票発行制御部7と、明細票発行制御部7の内部に含まれ、実際に利用者に対する明細票を発行する明細票発行装置100と、装置の様々な情報を記憶するための不揮発記憶装置8と、利用者が入金した紙幣を計数し、金庫へ収納するための機構を備えた紙幣制御部9と、紙幣制御部9と同様の機構を備えた硬貨制御部10と、を含んで構成されている。
【0014】
図4は、個人情報を包含した取引の明細票の例である。図4に示すように、明細票には、個人情報に該当する印字部位401(例えば、住所、氏名、電話番号)が記載されている。また、図5は、図4における明細票のうち、個人情報を取り除いて出力された明細票の例である。図5に示す明細票には、図4で示した印字部位401が印字されていた個人情報が印字されずに出力されていることがわかる。続いて、図1に示した売上金入金機装置1000を用いた紙幣の入金取引の動作概要を説明する。
【0015】
本実施の形態における売上金入金機装置1000が行う入金取引では、利用者により、カード取扱装置6と操作部4で入力された情報に従って利用者の個人認証を行った後、紙幣制御部9(あるいは硬貨制御部10)で紙幣(または硬貨)の計数が行われると、表示部5において、計数の結果を表示し、4の操作部を経て紙幣及び硬貨は、それぞれ装置内の金庫へ格納される。金庫へ格納された結果を表示部5にて表示すると共に、利用者明細票を利用明細票発行制御部7にて発行する。以下、本発明の実施例を図2を用いて説明する。
【0016】
まず、操作部4が利用者からの操作を受け付けて、利用者が個人認証を行うために、カード取扱装置6が取引カードの挿入を受け付けると、本体制御部3は取引を開始する(ステップ101)。そして、操作部4が利用者のカードが取引のためのカードであること、また、取引を行った個人であることの認証を行うために、取引の利用者であることを示す利用者自身で決めたパスワードの入力を受け付け(ステップ102)、本体制御部3はその認証の可否を判定し(ステップ103)、本体制御部3はその認証が否であると判定した場合(ステップ103;No)、図2に示す処理を終了させる。
【0017】
一方、本体制御部3は、本体制御部3はその認証が可であると判定した場合(ステップ103;Yes)、カードの番号と利用者のパスワードを本体制御部記憶装置8に記憶させ(ステップ104)、取引開始と判断し、継続して取引を行い、利用者との間で入金などの取引を行う(ステップ105)。
【0018】
その後、本体制御部3は、実行中の取引が終了したか否かを判定し(ステップ106)、実行中の取引が終了していないと判定した場合(ステップ106;No)、ステップ105に戻ってそのまま取引を続行させる。
【0019】
一方、本体制御部3は、実行中の取引が終了したと判定した場合(ステップ106;Yes)、取引終了の後、明細票発行制御部7が利用者に対して明細票を発行する前に、当該取引に個人情報が含まれているかどうかの判定を行い(ステップ107)、個人情報を含んでいると判定した場合(ステップ107;Yes)、その旨(例えば、フラグ「1」を設定する等)を本体制御部記憶装置8に記憶し(ステップ108)、個人情報を含んでいないと判定した場合(ステップ107;No)、その旨(例えば、フラグ「0」を設定する等)を本体制御部記憶装置8に記憶する(ステップ109)。
【0020】
その後、利用者に対して明細票を発行するために、明細票発行制御部7が取引内容のデータを編集し(ステップ110)、実際に明細票を発行するために、明細票発行装置7が、編集した明細票の発行を行う(ステップ110)。このステップS110の処理が終了すると、図2に示した全ての処理が終了する。
【0021】
本一連の流れの中で利用者に明細票を発行するまでの取引の最中に生じる問題点として、取引の最中に発生し得る装置障害、例えば、明細票用紙の紙切れなどを装置管理者へ連絡するため、或いは当該取引の利用者本人が障害回復を行うために取引装置から離れている間に、当該取引を行った利用者以外の次なる装置の利用者が装置障害を回復させた場合に、当該取引を行った利用者の次なる利用者に対して当該取引の明細票を発行してしまう点がある。このような場合に備えて、続いて、図3にて、この問題点を防止する方法を説明する。
【0022】
図3に示すように、本体制御部3は、装置が何らかの障害から復旧するまで、操作部4に対して任意の利用者からの操作の受け付けを待つように指示する(ステップ201)。そして、障害から回復後、本体制御部3は、当該取引の明細票に個人情報が含まれているか否かを不揮発記憶装置8から取得することにより判定する(ステップ202)。
【0023】
そして、本体制御部3は、取引中の情報に個人情報が含まれていないと判定した場合(ステップ202;No)、ステップ208に進み、明細票発行制御部7は、任意の利用者に対して明細票を発行する(ステップ208)。
【0024】
一方、本体制御部3は、取引中の情報に個人情報が含まれていると判定した場合(ステップ202;Yes)、当該の取引を開始した利用者であるかどうかを特定するために、図2のステップ101において取引の最初にセットした取引カードの番号、及び図2のステップ102において取引の最初に入力したパスワードの入力を求め(ステップ203)、当該取引の利用者であるか否かの認証を行う(ステップ204)。
【0025】
その後、本体制御部3は、当該の取引を行った利用者であることを認証した場合(ステップ204;Yes)、ステップ208に進み、利用者に対して明細票の発行を行う(ステップ208)。一方、本体制御部3は、例えば、認証装置の故障等の理由により認証が失敗し、当該の取引を行った利用者であることを認証しない場合(ステップ204;No)、さらに、他の利用者であるか否かを判定する(ステップ205)。
【0026】
そして、本体制御部3は、他の利用者であると判定した場合(ステップ205;Yes)、明細票の発行を行わずに、図3に示す処理を終了させる。一方、本体制御部3は、他の利用者でない(すなわち、当該の取引した利用者である)と判定した場合(ステップ205;No)、表示部5に明細票発行の有無のガイダンス表示させ、利用者の操作により、操作部4が明細票発行の有の選択を受け付けたか否かを判定する(ステップ206)。
【0027】
本体制御部3は、操作部4が明細票発行の有の選択を受け付けていないと判定した場合(ステップ206;No)、図3に示す処理を終了させる。一方、本体制御部3は、操作部4が明細票発行の有の選択を受け付けたと判定した場合(ステップ206;Yes)、明細票発行制御部7は、個人情報に関する部位を取り除くようにデータを編集し(ステップ207)、その後、明細票の発行を行う(ステップ208)。このステップ208の処理が終了すると、図3に示した全ての処理が終了する。なお、ステップ207においては、個人情報の部位を取り除くことに替えて、例えば、個人情報に関わる印字項目を、個人情報とは異なる任意の文字記号(例えば、アスタリスク等)などに代替して、或いは空白で明細票に出力させる等、個人情報が視認できない状態で明細票を発行させることとしてもよい。
【0028】
以上のようにして個人情報を含まない明細票か否かの判定を行い、個人情報の漏洩を防止すると共に個人情報を含んでいない場合の明細票に関しては障害からの回復時において認証の要求を行わないこと(ステップ202)により、最初に取引を行った利用者以外の他の利用者であっても障害からの復旧を行うことができ、速やかに新しい取引を行うことができる。
【0029】
例えば、単体のみで設置された現金自動取引装置においても、その障害発生後もホストコンピュータにも頼ることなく速やかに障害回復を行い取引を終了させ、且つ個人情報が他者に洩れることなく明細票を発行することが可能となる。
【0030】
すなわち、最初に取引を行った利用者Aと印字障害回復を行った利用者Bとを取引カードなど取引者を特定する情報が提示され、同一人物と判明した場合にのみ取引結果の明細票を発行することにより、個人情報が漏洩することを防止し、もし同一人物でなかった場合には、明細票発行処理を取りやめて、新しい取引を開始可能とする。当該取引の明細票が必要な場合は、当該取引者が次の機会に端末操作した場合に未発行の明細票がある旨を確認し、発行できるような手段も講じる。
【0031】
このように構成することによって、取引途中で生じた障害に対して、利用者がその場を離れて他の利用者が障害回復を行い、取引を継続しても最初に取引した利用者の取引結果に含まれる個人情報の漏洩を招くことも無くなる。さらに、ホストコンピュータとの通信手段が途絶えたような障害においてもホストコンピュータとの通信を行わない単純なシステム構成で実現できる機能で、個人情報の漏洩をすることなく明細票を発行することができることとなる。
【0032】
なお、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0033】
1 ホストコンピュータ
2 サーバー
3 本体制御部
4 操作部
5 表示部
6 カード取扱装置
7 明細票発行制御部
8 本体制御部記憶装置
9 紙幣制御部
10 硬貨制御部
100 明細票発行装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者に対して取引内容を記載した明細票を印字発行する機能を有する現金取扱装置であって、
前記利用者を識別するための識別情報と、前記明細票に前記利用者の個人情報が含まれるか否かを示す有無情報とを記憶する記憶部と、
前記明細票を出力する発行部と、
取引過程で生じた障害が復旧したか否かを判定し、取引過程で生じた障害が復旧したと判定した場合に、前記有無情報に基づいて前記明細票に前記利用者の個人情報が含まれるか否かを判定し、前記明細票に前記利用者の個人情報が含まれると判定した場合に、前記識別情報に基づいて前記利用者を認証し、前記明細票を前記発行部に発行させる制御部と、
を備えたことを特徴とする現金取扱装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記明細票に前記利用者の個人情報が含まれると判定した場合、前記取引過程で生じた障害が復旧したと判定した後、前記明細票が発行されるまでの間に前記利用者を認証する、
ことを特徴とする請求項1に記載の現金取扱装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記明細票に前記利用者の個人情報が含まれない判定した場合、前記識別情報に基づいて前記利用者が正しく認証できた場合にのみ、前記明細票を発行させる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の現金取扱装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記明細票に前記利用者の個人情報が含まれると判定した場合であって、かつ前記利用者が正しく認証できない場合、前記明細票に含まれる前記利用者の個人情報を視認できない状態で出力させる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の現金取扱装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記個人情報が含まれる部分に、前記個人情報とは異なる文字記号または空白を印字させることにより、前記利用者の個人情報を視認できない状態で前記明細票を出力させる、
ことを特徴とする請求項4に記載の現金取扱装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記明細票に前記利用者の個人情報が含まれると判定した場合であって、かつ前記利用者が正しく認証できない場合、前記利用者から取引操作を受け付ける操作部が前記明細票を発行する旨を受け付けた場合にのみ、前記明細票を発行させる、
ことを特徴とする請求項4または5に記載の現金取扱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−243083(P2012−243083A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112479(P2011−112479)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】