説明

現金自動取引装置

【課題】
生体情報の認証デバイスを含む個人認証ユニットを、操作性、視認性の良い配置にした現金自動取引装置を提供することにある。
【解決手段】
現金自動取引装置27は、その操作に関する表示を行うディスプレイ1を備え、ディスプレイ1の横に、顧客の生体情報を含む複数の個人情報を認証する個人認証デバイス3を設置する。また、ディスプレイ1の中の個人認証デバイス3に近い領域には、個人認証デバイス3の操作に関する表示を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行、郵便局などの金融機関あるいはコンビ二等に設置される現金自動取引装置(ATM:Automatic Teller Machine)に関し、特に、生体情報によって個人を認証する生体情報認証デバイスを搭載した現金自動取引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のATMは、個人の認証方法として主に磁気カードを使用し、暗証番号入力との併用で使用者が正当な人であるかを認証していたが、近年、スキミングなどの行為により磁気カード+暗証番号による個人の認証ではセキュリティ性の低さが懸念され始めている。そこで、セキュリティを強化した認証方法として、ICカード化や指紋、指静脈といった生体認証デバイスの採用が検討されている。例えば、指紋情報を登録したICカードとATMに実装したスキャナで読み取った指紋データの照合で使用者の認証を行うシステムを開示している(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−67523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1においては、指紋スキャナは操作面の右端の最も手前部分に配置されているが、装置前面にある指紋情報を登録したICカード挿入口と離れているため、認証デバイスの関連性がわかりにくいという問題がある。また、今後はセキュリティレベルを高めるため複数の個人認証デバイスを搭載する必要があり、ますます認証デバイスの関連性がわかりやすく操作性の良い認証デバイスの配置が求められる。
【0005】
本発明の目的は、生体情報の認証デバイスを含む個人認証デバイスを、操作性、視認性の良い配置にした現金自動取引装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、カード、通帳、紙幣を取り扱う現金自動取引装置において、現金自動取引装置の操作に関する表示を行う表示部の横に、顧客の生体情報を含む複数の個人情報の認証を行う個人情報認証部とを備える構成を採用した。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、生体情報の認証デバイスを含む個人認証デバイスの操作性を良くすることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の一実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態である現金自動取引装置27の外観図を示す。現金自動取引装置27は、その水平に近いフラット面の中央に、顧客に対する操作案内表示および暗証番号や金額入力などの入力機能を有するタッチパネル1、タッチパネル1の左横には、視覚障害者用音声ガイダンスのためのハンドセット2、タッチパネル1の右横には、タッチパネル1の表示・操作と連なる平面に設けたパネルカット部4に個人認証デバイス3が配置されている。また、タッチパネル1の左奥には、入金硬貨の取込みや出金硬貨の放出を行う硬貨入出金口5があり、タッチパネル1の右奥には、入金紙幣の取込みや出金紙幣の放出を行う紙幣入出金口6が配置されている。
【0010】
また、現金自動取引装置27は、その垂直に近いフラット面には、左側に通帳挿入口7、右側にはキャッシュカードやクレジットカード等の取込み、返却を行うカード挿入口8、取引内容を印字した取引明細票を放出する明細票排出口9を配置する。通帳挿入口7とカード挿入口8の上側には、それぞれフリッカランプ10−1、10−2を有し、顧客に対してそれぞれ操作箇所への誘導を行う。また、垂直フラット面の右上角部に音声ガイダンス用スピーカ11を配置する。
【0011】
取引を行う場合の操作開始から認証までの一般的な操作手順は、
(1)タッチパネル1より取引種別を入力する。
(2)カード挿入口8よりカードを挿入する。
(3)通帳挿入口7より通帳を挿入する。
(4)タッチパネル1より暗証番号を入力する。
となる。そして、この後に、生体情報の認証処理を行うことになるが、認証デバイス3をタッチパネル1の横に配置することで、認証デバイス3の操作案内を、タッチパネル1の中の認証デバイス3に近い位置に表示でき、わかり易い案内が可能となる。また、顧客はタッチパネル1を見ながら操作を進めることが可能となり、生体情報の認証において、顧客に違和感を与えないで処理を進めることができる。
【実施例1】
【0012】
実施例1は、認証デバイス3として、生体情報の一つである指静脈情報を認証する指静脈認証ユニットを用いる場合を説明する。図2〜図6を用いて、現金自動取引装置27に指静脈認証ユニット14を実装した構成を説明する。
【0013】
図2は、パネルカット部4にはまり込む外形寸法で、かつ手のひらに収まる幅の突起状部13を形成し、そこに指静脈認証デバイス12を実装した指静脈認証ユニット14を示す。本実施例では、この指静脈認証ユニット14を、図1で説明したようにタッチパネル1の表示・操作画面と連なる平面に設けたパネルカット部4に配置する。このように配置された指静脈認証ユニット14は、平面に大きく突起した形状をしているので、極めて視認性が良い。
【0014】
図3は、指静脈認証ユニット14に、顧客が手15を置いた認証操作状態を示す。図3に示すように、手のひらに収まる幅の突起状部13により、認証対象である指16が、自然な感じで指静脈認証デバイス12にセットされている。
【0015】
図4は、顧客17が立ち姿勢で自動取引装置27を操作する状態(特にカード挿入口にカードを挿入したり、個人認証デバイス3に手や指を置いたりする状態)を示し、図5は、顧客17が車椅子18を利用して自動取引装置27の個人認証デバイス3を操作する状態を示す。いずれも顧客の自然な姿勢での操作が可能なことを示している。また、図1に示す構成を採用することにより、視覚障害者にとっては、まず平坦なタッチパネル1の面を認知し、指または手のひらでその横に連なる平面上にある手のひらに収まる幅の突起状部13とそこに実装されている指静脈認証デバイス12を探り当てることが容易にできる。
【0016】
図6は、顧客が、現金自動取引装置27の指静脈認証ユニット14に手15を置いて認証操作をしている状態を現金自動取引装置27の上から見た図を示す。指静脈認証ユニット14を、タッチパネル1の右横に配置することで、タッチパネル1の、指静脈認証ユニット14のすぐ横の領域19に、指静脈認証デバイス12の操作ガイダンスを表示でき、わかりやすい操作案内が可能となる。
【0017】
以上説明したように、タッチパネル1の横に指静脈認証ユニット14を配置することにより、指を使用したタッチパネル1の操作との一連の動作と関連して、指静脈認証デバイス12の操作ガイダンスを表示することができ、これにより、健常者のみだけでなく、身障者など車椅子を利用されている人及び視覚障害者等が利用する場合であっても、無理なく操作が可能で良好な操作性が得られる。
【0018】
なお、本実施例では、認証デバイスとして指静脈認証ユニットを用いたが、これに限らず、例えば指紋スキャナ等でもよい。
【実施例2】
【0019】
実施例2は、セキュリティレベルを高めるために、複数の個人認証デバイスを組み合わせて搭載する場合を説明する。図7〜図11を用いて、現金自動取引装置27に、第1の認証部である指静脈認証デバイスと、第2の認証部である携帯電話または非接触ICカードとの通信を行うリーダ/ライタとを実装した構成を説明する。
【0020】
図7は、パネルカット部4にはまり込む外形寸法で、かつ手のひらに収まる幅の突起状部13を形成し、その上側(奥側)に携帯電話あるいは非接触ICカードとの通信を行う非接触リーダ/ライタ20を実装し、その下側(手前側)に指静脈認証デバイス12を実装した個人認証デバイスユニット21を示す。この個人認証デバイスユニット21を、図1で説明したように、タッチパネル1の表示・操作画面と連なる平面に設けたパネルカット部4に配置する。
【0021】
図8は、顧客が手15に持った携帯電話22を、個人認証デバイスユニット21にある非接触リーダ/ライタ20に置いた状態を示し、図9は、図8の状態の次に、顧客の一連の動作として、突起状部13に沿って手15を下げる(または手前に引く)ことにより、指静脈認証デバイス12に、認証対象である指16がセットされた状態を示す。
【0022】
図10は、図7に示す個人認証デバイスユニット21を実装した現金自動取引装置27を上から見た図である。図10は、図8〜図9の一連の動作をタッチパネル1に表示している様子を併せて示している。つまり、キャッシュカードをカード挿入口8に挿入するとともに、携帯電話22を個人認証デバイスユニット21の所定の位置にセットする指示画面をディスプレイ1の領域23−1に表示し、次に携帯電話22を置いた後に手15を指静脈認証デバイス12に動かすことを示す指示画面をディスプレイ1の領域23−2に表示し、次に個人認証デバイスユニット21の指静脈認証デバイス12に、指16をセットする指示画面をディスプレイ1の領域23−3に表示する手順を示す。このように、ディスプレイ21のうちの個人認証デバイスユニット21の真横の領域23−1〜23−3にガイダンスを表示することになり、顧客にとって分かりやすい操作案内が可能となる。
【0023】
図11は、個人認証デバイスユニット21にある非接触リーダ/ライタ20に非接触ICカード24を置く場合を示し、操作方法は携帯電話22と全く同じである。また、このように個人認証デバイスユニット21の上側(奥側)に非接触リーダ/ライタ20を配置した場合は、顧客の操作時に非接触ICカード24または携帯電話22とも落下しにくいという効果がある。
【0024】
上記のように、個人認証デバイスユニット21の配置は実施例1と同様でディスプレイ1の真横なので、健常者のみだけでなく、身障者など車椅子を利用されている人及び視覚障害者等が利用する場合であっても、無理なく操作が可能で良好な操作性が得られる。
【0025】
また、本実施例では、個人認証デバイスユニット21に含まれる2つの認証部のうち、第1の認証部を指静脈認証を行う認証部とし、第2の認証部を非接触ICカードに含まれる個人情報を認証する認証部としたが、これに限らず、第1の認証部及び第2の認証部を、それぞれ異なる部位の生体情報を認証する認証部としてもよく、また、一方を生体情報の認証を行う認証部とし、他方を非接触ICカード以外の認証を行う認証部としてもよい。
【実施例3】
【0026】
実施例3は、実施例2における指認証認証デバイス12と非接触リーダ/ライタ20の配置を上下逆(手前と奥を逆)にした実施例である。実施例3の構成を図12〜図15用いて説明する。
【0027】
図12は、パネルカット部4にはまり込む外形寸法で、かつ手のひらに収まる幅の突起状部13を形成し、その上側(奥側)に指静脈認証デバイス12を配置し、下側(手前側)に携帯電話22あるいは非接触ICカードとの通信を行う非接触リーダ/ライタ20とを配置した個人認証デバイスユニット25である。この個人認証デバイスユニット25を、図1で説明したようにディスプレイ1の表示・操作画面と連なる平面に設けたパネルカット部4に配置する。
【0028】
図13は、個人認証デバイスユニット25にある非接触リーダ/ライタ20に顧客が手15に持った携帯電話22を置いた状態を示し、図14は、図13の状態の次に、顧客の一連の操作として、突起状部13に沿って手15を上げる(奥に置く)ことにより、指静脈認証デバイス12に、認証対象である指16がセットされた状態を示す。この場合、携帯電話22を手のひらで押さえつけながら指静脈認証操作が行えるので、携帯電話22の置き忘れや周囲からの盗難等を防止できる効果がある。
【0029】
図15は、個人認証デバイスユニット25にある非接触リーダ/ライタ20に非接触ICカード24を置く場合を示し、操作方法は携帯電話22と同様である。また、非接触リーダ/ライタ20を使用しない構成の場合には、非接触リーダ/ライタ20の携帯電話あるいは非接触ICカード設置面がパームレストとして利用できる。
【0030】
上記のように、個人認証デバイスユニット25の配置は実施例1または実施例2と同様ディスプレイ1の横なので、健常者のみだけでなく、身障者など車椅子を利用されている人及び視覚障害者等が利用する場合であっても、無理なく操作が可能で良好な操作性が得られる。
【0031】
上記の実施例1〜実施例3で説明した個人認証デバイスユニット14、21、25のパネルカット部4にはまり込む個人認証デバイスの外形寸法を同一にしておけば、以上説明した3種の個人認証デバイスのいずれをも容易に実装することが可能な自動取引装置27を提供できる。このパネルカット部4の寸法をオプションスロットとして定義しておけば、今後の様々な個人認証デバイスの組み合わせの実装を可能にできる。例えば、図16に示すように、図12における非接触リーダ/ライタ20の実装寸法をオプションスロットとして定義し、実装寸法が互換のテンキー26を実装することも可能である。
【0032】
このように本実装構造は、様々な個人認証デバイスの組み合わせに対応可能な自動取引装置27を提供できる。また、出荷済みの装置に対しても現地での個人認証デバイスの増設や変更対応も容易という効果がある。
【0033】
上述したように、本実施形態では、現金自動取引装置27の水平表示画面と連なる平面上に手のひらに収まる巾の突起状部に指静脈認証デバイス12を実装することで、視認性、操作性を確保できる。また、ディスプレイ1の横の位置に複数の認証デバイスを上下に配置することで、認証デバイスに近い位置に手順のわかり易い操作案内を出すことが可能になる。さらに、個人認証デバイスを手のひらに収まる巾の突起状部に上下に実装し一体感を持たせ、高い関連性、視認性、操作性を確保するとともに、様々な個人認証デバイスの組み合わせの搭載を可能にした。また、顧客が操作する個人認証デバイスなどの入力装置は、一般の成人の健常者だけでなく、視覚障害者、車椅子利用者、座高の低い者、子供など、あらゆる顧客にとって、利用しやすく視認しやすい位置に設けることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施の形態である現金自動取引装置27の外観図を示す。
【図2】図1の現金自動取引装置27の個人認証デバイス3に設置される、指静脈認証デバイス12を実装した個人認証デバイスユニット14を示す。
【図3】図2に示す個人認証デバイスユニット14に、操作者が手を置いた状態を示す。
【図4】顧客が立ち姿勢で現金自動取引装置27を操作する状態を示す。
【図5】顧客が車椅子を利用して現金自動取引装置27を操作する状態を示す。
【図6】顧客が現金自動取引装置27の指静脈認証デバイスに指をセットした状態を示す。
【図7】指静脈認証デバイス12と非接触リーダ/ライタ20を実装した個人認証デバイスユニット21を示す。
【図8】図7の個人認証デバイスユニット21に、顧客が携帯電話22を置いた操作状態を示す。
【図9】図7の個人認証デバイスユニット21の指静脈認証デバイス12に、顧客が手を置いた認証操作状態を示す。
【図10】実施例2における現金自動取引装置27の操作手順に沿ったガイダンス表示を示す図である。
【図11】図7の個人認証デバイスユニット21の非接触リーダ/ライタ20に、非接触ICカードを置いた状態を示す図である。
【図12】実施例3における、指静脈認証デバイス12と非接触リーダ/ライタ20を実装した個人認証デバイスユニット25を示す。
【図13】図12の個人認証デバイスユニット25に、顧客が携帯電話22を置いた操作状態を示す。
【図14】図12の個人認証デバイスユニット25に、顧客が手を置いた認証操作状態を示す。
【図15】図12の個人認証デバイスユニット25に非接触ICカードを置いた状態図を示す。
【図16】指静脈認証デバイスとテンキーを実装した個人認証デバイスユニットを示す。
【符号の説明】
【0035】
1:ディスプレイ、2:ハンドセット、3:個人認証デバイス、4:パネルカット部、5:硬貨入出金口、6:紙幣入出金口、7:通帳挿入口、8:カード挿入口、9:明細票排出口、10−1および10−2:フリッカランプ、11:スピーカ、12:指静脈認証デバイス13:突起状部、14:個人認証デバイスユニット、27:現金自動取引装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客が利用する現金自動取引装置において、
該現金自動取引装置を利用する際に用いるカードを挿入するカード挿入部と、
該現金自動取引装置を利用する際に用いる通帳を挿入する通帳挿入部と、
紙幣を取り扱う紙幣入出金部と、
硬貨を取り扱う硬貨入出金部と、
前記各部の操作に関する表示を行う表示部と、
該表示部の横に設置され、前記顧客の生体認証を含む複数の個人認証を行う個人情報認証部とを備えることを特徴とする現金自動取引装置。
【請求項2】
前記個人情報認証部は、前記顧客に関する第1の情報を認証する第1の認証部と、前記第1の認証部で認証する生体情報以外の前記顧客に関する第2の情報を認証する第2の認証部を備え、
前記第1の認証部は前記個人情報認証部のうちの手前側に設置され、前記第2の認証部は前記個人情報認証部のうちの奥側に設置されることを特徴とする請求項1記載の現金自動取引装置。
【請求項3】
前記第1の認証部は、前記顧客の指静脈認証を行う指静脈認証デバイスを含む指静脈情報認証部であることを特徴とする請求項2記載の現金自動取引装置。
【請求項4】
前記表示部のうち、前記認証部に近い領域に、前記認証部に関する案内を表示することを特徴とする請求項1記載の現金自動取引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−26012(P2007−26012A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−206309(P2005−206309)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】