説明

現金自動取引装置

【課題】一部が消失した紙幣の正券への交換を可能にした現金自動取引装置を提供する。
【解決手段】取引選択画面41を表示して、顧客による一部消失紙幣Pの正券への交換取引の選択を受け付ける顧客操作表示画面16と、顧客が入金した一部消失紙幣Pを入出金する入出金口11と、入出金口11から一部消失紙幣Pを搬送する搬送部30と、顧客が入金した一部消失紙幣Pの残存率を計測する残存率計測部37と、残存率に応じた正券への交換取引処理を顧客操作表示画面16に表示して、顧客による交換取引処理の確認を受け付け、顧客により確認された交換取引処理を行う制御部10を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金融機関の支店、営業所等に設置され顧客が操作を行う現金自動取引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関の支店、営業所等に設置された現金自動取引装置では、顧客が操作することにより現金の入出金取引、振込み取引等が可能となっている。一方、傷んだ紙幣又は一部が消失した紙幣があったとき、日本銀行をはじめ一般の金融機関において正券と交換することができる。これらの紙幣の交換は、痛みや消失のひどいものについては日本銀行の本店又は支店に直接持ち込むことにより行うこととなっている。そして、痛みや消失のひどくないものについては、一般の金融機関の支店等の窓口で交換可能となっている。
【0003】
なお、特開2005−148918号公報(特許文献1)には、紙幣の出金取引の処理において、紙幣の損券と正券(新券)の交換を可能とする紙幣類取引装置が記載されている。特許文献1によれば、利用者の入力に応じた額の紙幣を出金し、上記出金した紙幣に損券があったとき、利用者による当該損券の再投入を取引終了前に受け付ける。そして、再投入された紙幣に相当する額の新券を出金することにより、出金取引の一連の取引内で紙幣の交換が実行される。こうして、利用者が、出金された紙幣に磨耗、汚れ、破れ、しわ、異物付着等の劣化が生じている損券が含まれていると判断した場合は、当該出金紙幣を再投入することにより、別の紙幣と交換するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−148918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術によれば、一部が消失した紙幣(以下、一部消失紙幣という)の交換のためにわざわざ金融機関の窓口まで出向かなければならないという問題点があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、一部消失紙幣の正券への交換を可能にした現金自動取引装置を提供することを可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に関する現金自動取引装置は、紙幣を入出金する入出金口と、前記入出金口から前記紙幣を搬送する搬送部と、取引選択画面を表示して、顧客による一部消失紙幣の正券への交換取引の選択を受け付ける顧客操作表示部と、前記顧客が入金した前記一部消失紙幣の残存率を計測する残存率計測部と、前記残存率に応じた前記正券への交換取引処理を前記顧客操作表示部に表示して、前記顧客による前記交換取引処理の確認を受け付け、前記顧客により確認された前記交換取引処理を行う制御部を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
上記構成を有する本発明によれば、一部消失紙幣の正券への交換取引のためにわざわざ金融機関の窓口まで出向かなくても、一部消失紙幣の正券への交換取引処理を可能にした現金自動取引装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一部消失紙幣の残存率と交換処理の説明図である。
【図2】第1の実施の形態に関する現金自動取引装置の外観図である。
【図3】第1の実施の形態に関するATM1の構成図である。
【図4】第1の実施の形態に関する紙幣処理部21を示す説明図である。
【図5】第1の実施の形態に関するATM1の装置制御部10の機能ブロック図である。
【図6】第1の実施の形態に関する動作を示すフローチャートである。
【図7】第1の実施の形態に関する顧客操作表示画面16の表示例を示す説明図である。
【図8】第2の実施の形態に関する紙幣処理部21を示す説明図である。
【図9】第2の実施の形態に関するATM1の装置制御部10の機能ブロック図である。
【図10】第2の実施の形態に関する顧客操作表示画面16の表示例を示す説明図である。
【図11】第3の実施の形態に関する動作を示すフローチャートである。
【図12】第3の実施の形態に関する顧客操作表示画面16の表示例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態について説明する。図2は第1の実施の形態に関する現金自動取引装置(以下ATMという)1の外観図である。ATM1は銀行等の金融機関やコンビニエンスストア等に設置され、顧客の操作により入出金取引等が可能である。ATM1は、入出金取引等において顧客に対して紙幣を投入又は返却するための入出金口としての接客口11を有する。入金取引等の紙幣を投入する取引においては、顧客が当該接客口11に紙幣をセットすると、ATM1がこれを自動計数し、装置内部に取込む。本実施の形態に関する一部消失紙幣Pの正券への交換取引のために、顧客が当該接客口11に一部消失紙幣Pをセットすると、同様にATM1がこれを自動計数し、装置内部に取込む。支払取引等の紙幣を顧客に払出す取引においては、ATM1が紙幣を自動計数し、当該接客口11に集積することにより、顧客が取出し可能とする。一部消失紙幣Pの正券への交換取引において、一部消失紙幣Pと交換される正券を当該接客口11に集積することにより、同様に顧客が取出し可能とする。接客口11にはシャッタ12が設けられ、顧客が紙幣を投入又は取り出すときに開き、それ以外は閉じている。
【0011】
また、ATM1は同じく、硬貨を投入又は返却するための硬貨投入返却口13を有する。入金取引等の硬貨をATM1に投入する取引において、顧客が当該硬貨投入返却口13に硬貨をセットすると、これをATM1が自動計数し、装置内部に取込む。支払取引等の硬貨を顧客に払出す取引においては、ATM1が硬貨を自動計数し、当該硬貨投入返却口13に集積することにより、顧客が取出し可能とする。
【0012】
更に、ATM1はキャッシュカード読み取りのためのカード挿入口14と、通帳の記帳のための通帳挿入口15と、顧客が操作するための入力機能と表示機能を備えたタッチパネル式の顧客操作表示画面16を有する。顧客は顧客操作表示画面16を操作することにより、後述する取引選択画面41において、本実施の形態に関する一部消失紙幣Pの正券への交換取引を選択することができる。そして、一部消失紙幣Pに関して後述する残存率の計測の結果、交換可能な紙幣についての確認ボタンを押下することができる。
【0013】
図3は第1の実施の形態に関するATM1の構成図である。装置制御部10はATM1の各部と接続され、各部の動作を制御する。当該装置制御部10は、RAMやROM又はハードディスク等で構成された装置記憶部28と接続され、装置記憶部28に記憶された制御プログラムにより動作する。また、装置制御部10は各処理に必要なデータを装置記憶部28に書き込むことができ、必要に応じて装置記憶部28から読み出すことができる。また、装置制御部10はホストコンピュータ100と図示しない通信部を介して接続され、入出金取引に関する情報を交換する。
【0014】
紙幣処理部21は、顧客により前記接客口11に投入される入金紙幣又は一部消失紙幣Pを真偽鑑別し、計数し、搬送して後述する金種別収納カセット31又は一部消失紙幣専用金庫32に収納する。なお、一部消失紙幣専用金庫32は、損券や金種を正確に判別できずにリジェクトされるリジェクト券を収納するリジェクト庫であってもよい。更に、紙幣処理部21は一部消失紙幣Pと交換される正券としての出金紙幣を金種別収納カセット31より繰り出し、接客口11に集積する。硬貨処理部23は、顧客により前記硬貨投入返却口13から投入される硬貨を真偽鑑別し、計数し、搬送して図示しない硬貨収納部に収納し、又は顧客に支払われる硬貨を硬貨収納部より繰り出し硬貨投入返却口13に集積するものである。
【0015】
カード処理部24は、顧客が前記カード挿入口14から挿入したキャッシュカードの情報を読取る。顧客が一部消失紙幣の正券への交換取引を希望するとき、顧客が挿入したキャッシュカードから顧客情報を読み取り、記録する。これにより、後日のトラブルに対応することができる。通帳記帳部25は前記通帳挿入口15から挿入された通帳に入出金取引等の取引記録を印字する。
【0016】
顧客操作表示部26は前記顧客操作表示画面16を制御する。即ち、顧客操作表示部26は装置制御部10の指示により、顧客操作表示画面16に後述する取引選択画面41を表示するよう制御する。そして、顧客が一部消失紙幣Pの交換のために後述する一部消失紙幣交換ボタン44を押下すると、顧客操作表示部26はこれを検出し、装置制御部10へ出力する。また、顧客操作表示部26は装置制御部10の指示により、顧客操作表示画面16に対し後述する交換金額表示画面51又は56、即ち一部消失紙幣Pの残存率の計測の結果を示す画面を表示するよう制御する。そして、顧客が交換可能な紙幣についての後述する確認ボタン55を押下すると、顧客操作表示部26はこれを検出し、装置制御部10へ出力する。
【0017】
レシート処理部27はレシートの印刷処理を行い、取引終了時にレシートを前記カード挿入口14から排出する。一部消失紙幣Pの交換取引があったときも同様にレシートを排出する。この場合のレシートには、一部消失紙幣Pの金種、残存率、交換金額、交換枚数、日付等が記載される。
【0018】
図4は第1の実施の形態に関する紙幣処理部21を示す説明図である。紙幣処理部21は、入金紙幣又は一部消失紙幣Pを受け入れる接客口11と、接客口11に投入された入金紙幣又は一部消失紙幣Pを繰り出し搬送等を行う搬送部30と、顧客により投入された入金紙幣又は一部消失紙幣Pの真偽鑑別等を行う鑑別部29と、通常の入金紙幣を収納する金種別収納カセット31及び一部消失紙幣Pを収納する一部消失紙幣専用金庫32を有する。
【0019】
なお、接客口11には、入金紙幣又は一部消失紙幣Pを繰り出す繰出しローラ11−2を有し、金種別収納カセット31には、出金する紙幣を繰り出す繰出しローラ31−2を有する。鑑別部29は搬送部30の途中に設けられ、入金紙幣又は一部消失紙幣Pの真偽判別、正損判別、金種判別、表裏判別及び計数処理を行う。また、搬送部30は顧客が入金した一部消失紙幣Pを正券の搬送速度より遅く搬送する。これにより、一部消失紙幣Pのジャムを防止することができる。
【0020】
図5は第1の実施の形態に関するATM1の装置制御部10の機能ブロック図である。装置制御部10の表示制御部33は、顧客操作表示部26に対し、顧客操作表示画面16に後述する取引選択画面41を表示するよう指示する。また、顧客操作表示画面16に対し後述する交換金額表示画面51又は56、即ち一部消失紙幣Pの残存率の計測の結果を示す画面を表示するよう指示する。押下受付部34は顧客操作表示部26に対し、顧客操作表示画面16の取引選択画面41において顧客が押下した一部消失紙幣交換ボタン44の選択を受け付けるよう指示する。また、交換金額表示画面51又は56において顧客が押下した確認ボタン55の選択を受け付けるよう指示する。
【0021】
紙幣搬送制御部35は、顧客が一部消失紙幣Pを接客口11に投入したときは、紙幣処理部21に対し、シャッタ12を閉じ、繰出しローラ11−2を駆動し、一部消失紙幣Pを搬送するよう指示する。搬送速度は正券の搬送速度より遅く搬送する。また、紙幣処理部21に対し、繰出しローラ31−2を駆動し、一部消失紙幣Pと交換する正券を接客口11へ搬送するよう指示する。更に、紙幣搬送制御部35は一部消失紙幣Pの正券への交換取引が終了するとき、紙幣処理部21に対し、当該一部消失紙幣Pを一部消失紙幣専用金庫32に格納するよう指示する。鑑別制御部36は鑑別部29に対し一部消失紙幣Pを鑑別するよう指示する。鑑別は真偽判別、正損判別、金種判別、表裏判別を行う。
【0022】
残存率計測部37は、真偽判別の結果が真券であり、かつ一部消失紙幣でなおかつ表裏両面があるとき、残存率、即ち正券の面積に対する一部消失紙幣Pが残存する部分の面積の割合を計測する。交換可否判別部38は残存率計測部37が計測した残存率に基づいて、一部消失紙幣Pと交換可能な紙幣を判定する。一部消失紙幣Pの残存率が正券に対し2/3以上か、残存率が正券に対し2/5以上2/3未満か、残存率が正券に対し2/5未満かを判定する。判定の結果、一部消失紙幣Pの同額の正券紙幣か、半額の正券紙幣と交換するか、交換を拒否するかの交換処理を決定する。
【0023】
図1は一部消失紙幣の残存率と交換処理の説明図である。同図(a)は一部消失紙幣Pの残存率が正券に対し2/3以上の場合を示す。この場合は、入金した一部消失紙幣Pと同額の紙幣が交換可能である。同図(b)は一部消失紙幣Pの残存率が正券に対し2/5以上2/3未満の場合を示す。この場合は、入金した一部消失紙幣と半額の紙幣が交換可能である。なお、同額又は半額の場合、一部消失紙幣Pの表裏両面があることが条件である。同図(c)は一部消失紙幣Pの残存率が正券に対し2/5未満の場合を示す。この場合は、紙幣の交換は行うことはできない(日本銀行ホームページより)。
【0024】
図6は第1の実施の形態に関する動作を示すフローチャートである。図7は第1の実施の形態に関する顧客操作表示画面16の表示例を示す説明図である。
S101:装置制御部10の表示制御部33は、顧客操作表示部26に対し、顧客操作表示画面16に取引選択画面41を表示するよう指示する。取引選択画面41には図7(a)に示すように「いらっしゃいませ。ご希望のお取引を押してください。」と表示される。そして、お引き出しボタン42、お預け入れボタン43、一部消失紙幣交換ボタン44及び取消ボタン45等が表示される。顧客が一部消失紙幣の正券への交換取引を希望して一部消失紙幣交換ボタン44を押下すると、装置制御部10の押下受付部34は、顧客操作表示部26に対し、顧客操作表示画面16から顧客が押下した一部消失紙幣交換ボタン44の選択を受け付けるよう指示する。これにより、一部消失紙幣の正券への交換取引処理が開始される。
【0025】
S102:その後、装置制御部10の表示制御部33は、顧客操作表示部26に対し、顧客操作表示画面16にキャッシュカード又は通帳の挿入を促す表示をするよう指示する。
S103:顧客がキャッシュカードをカード挿入口14に挿入するか又は通帳を通帳挿入口15に挿入すると、表示制御部33は顧客操作表示部26に対し、顧客操作表示画面16に暗証番号の入力を促す表示をするよう指示する。
【0026】
S104:顧客が暗証番号を入力すると、表示制御部33は顧客操作表示部26に対し、顧客操作表示画面16に一部消失紙幣Pの投入を促す表示をするよう指示する。更に、顧客が前記接客口11に例えば1万円の一部消失紙幣Pをセットすると、装置制御部10の紙幣搬送制御部35は、紙幣処理部21に対し、前記シャッタ12を閉じ、繰出しローラ11−2を駆動し、一部消失紙幣Pを搬送するよう指示する。そして、紙幣搬送制御部35は紙幣処理部21に対し、一部消失紙幣Pを鑑別部29へ搬送するよう指示する。
【0027】
S105:装置制御部10の鑑別制御部36は、鑑別部29に対し一部消失紙幣Pを鑑別するよう指示する。鑑別部29は一部消失紙幣Pに対し真偽判別、正損判別、金種判別、表裏判別及び一部消失紙幣かどうかの判別を行う。ここで鑑別部29は、例えば一万円の一部消失紙幣であると判別する。
S106:鑑別部29の真偽判別の結果、投入された一部消失紙幣Pが真券であると判別するときは、ステップ107へ進み、偽券であると判別するときは、ステップ115へ進む。
【0028】
S107:鑑別部29による一部消失紙幣かどうかの判別の結果、投入された紙幣が一部消失紙幣Pであるときは、ステップ108へ進む。ここで、一般の紙幣の正損判別は正券と損券の判別を行う。即ち、正券とは真券で流通可能な紙幣であるとき、損券とは真券で再流通不可能な紙幣であるときである。本実施の形態では鑑別部29は一部消失紙幣Pか正券かの判別を行う。一部消失紙幣Pでないとき(正券のとき)は、装置制御部10の表示制御部33は、顧客操作表示部26に対し、顧客操作表示画面16に図7(b)に示す返却画面46を表示するよう指示する。即ち、返却画面46には、「この紙幣は使用可能です。紙幣をお受け取り下さい。」と表示される。その後、ステップ115へ進む。
S108:鑑別部29の判別の結果、一部消失紙幣Pが真券で、かつ一部消失紙幣でなおかつ表裏両面があるとき、装置制御部10の残存率計測部37は、残存率、即ち正券の面積に対する一部消失紙幣Pが残存する部分の面積の割合を計測する。
【0029】
S109:装置制御部10の交換可否判別部38は、残存率計測部37の計測した残存率に基づいて、一部消失紙幣Pと交換可能な紙幣を判定する。一部消失紙幣Pの残存率が正券に対し2/3以上又は残存率が正券に対し2/5以上2/3未満の場合、一部消失紙幣Pと同額又は半額の正券紙幣と交換可能と判定する。その場合ステップ110へ進む。一方、一部消失紙幣Pの残存率が正券に対し2/5未満である場合、交換を拒否する決定する。この場合、装置制御部10の表示制御部33は、顧客操作表示部26に対し、顧客操作表示画面16に図7(e)に示す返却画面57を表示するよう指示する。図7(e)に示す返却画面57は「この紙幣は交換できません。紙幣をお受け取り下さい。」と表示する。その後、ステップ115へ進む。
【0030】
S110:装置制御部10の表示制御部33は、顧客操作表示部26に対し、顧客操作表示画面16に交換金額表示画面51又は56を表示するよう指示する。交換金額表示画面51又は56には、図7(c)又は同図(d)に示すように「交換可能金額は次の通りです。」と表示される。そして同図(c)は、残存率表示52が90%、即ち残存率が正券に対し2/3以上であることを示し、交換可能金額53が10000円であることを示し、更に交換可能枚数54、例えば1枚が表示されることを示す。同図(d)は残存率表示52が55%、即ち残存率が正券に対し2/5以上2/3未満であることを示し、交換可能金額53が正券の半額5000円であることを示し、更に交換可能枚数54、例えば1枚が表示されることを示す。顧客は交換可能金額53が納得できるときは、確認ボタン55を押下する。
【0031】
S111:装置制御部10の押下受付部34は、顧客操作表示部26に対し、交換金額表示画面51の確認ボタン55の押下を受け付けるよう指示し、又は交換金額表示画面56の確認ボタン55の押下を受け付けるよう指示する。
S112:顧客が交換金額表示画面51の確認ボタン55を押下したとき、装置制御部10の紙幣搬送制御部35は、紙幣処理部21に対し、一部消失紙幣Pと同額の正券紙幣を出金するよう指示する。
【0032】
S113:顧客が交換金額表示画面56の確認ボタン55を押下したとき、装置制御部10の紙幣搬送制御部35は、紙幣処理部21に対し、一部消失紙幣Pと半額の正券紙幣を出金するよう指示する。
S114:その後、装置制御部10の紙幣搬送制御部35は、紙幣処理部21に対し、一部消失紙幣Pを一部消失紙幣専用金庫32に格納するよう指示する。
S115:装置制御部10の紙幣搬送制御部35は、紙幣処理部21に対し、ステップ106の偽券、ステップ107の正券又はステップ109で交換を拒否された一部消失紙幣Pを接客口11に返送するよう指示する。これにより、一部消失紙幣の正券への交換取引処理が終了する。
【0033】
以上のように、第1の実施の形態によれば、一部消失紙幣Pの残存率を自動で計測できるので、一部消失紙幣の正券への交換取引のためにわざわざ金融機関の窓口まで出向かなくても、一部消失紙幣の正券への交換取引を可能にした現金自動取引装置を提供することが可能になる。
【0034】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図8は第2の実施の形態に関する紙幣処理部21を示す説明図である。第2の実施の形態に関するATM1が、第1の実施の形態と異なる点は、撮像部69を有する点である。撮像部69は搬送部30の途中に設けられた鑑別部29の近傍に設けられ、一部消失紙幣Pの画像データを残存画像データとして取得する。撮像部69は取得した残存画像データを装置制御部10に出力する。
【0035】
図9は第2の実施の形態に関するATM1の装置制御部10の機能ブロック図である。第2の実施の形態に関する装置制御部10が、第1の実施の形態と異なる点は、撮影処理部65を有する点である。装置制御部10の撮影処理部65は、撮像部69に対して、一部消失紙幣Pの外形の画像データを残存画像データとして取得するよう指示する。撮影処理部65が残存画像データとして取得すると、装置制御部10の表示制御部33は、顧客操作表示部26に対し、交換金額表示画面51又は56の表示とき、残存画像データを表示するよう指示する。
【0036】
次に第2の実施の形態に関する動作を説明する。第2の実施の形態に関する動作が第1の実施の形態と異なる点は、前記図6に示すフローチャートにおけるステップ108及びステップ110である。
S108:鑑別部29の判別の結果、一部消失紙幣Pが真券で、かつ一部消失紙幣でなおかつ表裏両面があるとき、装置制御部10の残存率計測部37は、残存率、即ち正券の面積に対する一部消失紙幣Pが残存する部分の面積の割合を計測する。更に、装置制御部10の撮影処理部65は、撮像部69に対して、一部消失紙幣Pの外形の画像データを残存画像データとして取得するよう指示する。図10は第2の実施の形態に関する顧客操作表示画面16の表示例を示す説明図である。
【0037】
S110:装置制御部10の表示制御部33は、顧客操作表示部26に対し、顧客操作表示画面16に交換金額表示画面61を表示するよう指示する。交換金額表示画面61には、図10に示すように「交換可能金額は次の通りです。」と表示される。更に同図は、一部消失紙幣Pの外形の画像データである残存画像データ62を示し、更に残存率表示52が残存率90%であることと、交換可能金額53が10000円であることと、交換可能枚数54が1枚であることが表示されることを示す。顧客は交換可能金額53が納得できるときは、確認ボタン55を押下する。
【0038】
以上のように、第2の実施の形態によれば、一部消失紙幣Pの外形の画像データである残存画像データ62を交換金額表示画面61に表示するので、顧客は一部消失紙幣Pの残存率の判定状況を容易に判別することができ、顧客にとって一部消失紙幣の正券への交換取引を容易に行うことができる。
【0039】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。前記第1、第2の実施の形態は、取引選択画面71において一部消失紙幣Pの正券への交換取引を選択する場合について説明したが、第3の実施の形態は、入金取引の際、正券に一部消失紙幣が混じっていたとき、一部消失紙幣Pに対して正券と交換して入金取引(以下交換入金という)することができる実施の形態である。第3の実施の形態の構成は第2の実施の形態と同じであるので構成の説明は省略する。
【0040】
図11は第3の実施の形態に関する動作を示すフローチャートである。図12は第3の実施の形態に関する顧客操作表示画面16の表示例を示す説明図である。
S201:装置制御部10の表示制御部33は、顧客操作表示部26に対し、顧客操作表示画面16に取引選択画面71を表示するよう指示する。取引選択画面71には図12(a)に示すように「いらっしゃいませ。ご希望のお取引を押してください。」と表示される。そして、お引き出しボタン42、お預け入れボタン43及び取消ボタン45等が表示される。顧客が入金取引を希望してお預け入れボタン43を押下すると、装置制御部10の押下受付部34は、顧客操作表示部26に対し、顧客操作表示画面16から顧客が押下したお預け入れボタン43の選択を受け付けるよう指示する。
【0041】
S202:その後、装置制御部10の表示制御部33は、顧客操作表示部26に対し、顧客操作表示画面16にキャッシュカード又は通帳の挿入を促す表示をするよう指示する。
S203:顧客がキャッシュカードをカード挿入口14に挿入するか又は通帳を通帳挿入口15に挿入すると、表示制御部33は顧客操作表示部26に対し、顧客操作表示画面16に暗証番号の入力を促す表示をするよう指示する。
【0042】
S204:顧客が暗証番号を入力すると、表示制御部33は顧客操作表示部26に対し、顧客操作表示画面16に入金紙幣の投入を促す表示をするよう指示する。更に、顧客が前記接客口11に入金紙幣、例えば1万円の正券と一部消失紙幣Pの計2万円をセットする
と、装置制御部10の紙幣搬送制御部35は、紙幣処理部21に対し、前記シャッタ12を閉じ、繰出しローラ11−2を駆動し、入金紙幣を搬送するよう指示する。そして、紙幣搬送制御部35は紙幣処理部21に対し、入金紙幣を鑑別部29へ搬送するよう指示する。
【0043】
S205:装置制御部10の鑑別制御部36は、鑑別部29に対し入金紙幣を鑑別するよう指示する。鑑別部29は入金紙幣に対し真偽判別、正損判別、金種判別、表裏判別及び一部消失紙幣かどうかの判別を行う。
S206:鑑別部29の真偽判別の結果、投入された一部消失紙幣Pを含む入金紙幣が真券であると判別するときは、ステップ207へ進み、偽券であると判別するときは、ステップ215へ進む。
【0044】
S207:鑑別部29による判別の結果、投入された紙幣が一部消失紙幣Pであるときは、ステップ208へ進む。一部消失紙幣Pでないとき(正券のとき)は、装置制御部10はステップ216へ進み、入金処理を行う。入金処理の動作の詳細説明は省略する。
S208:鑑別部29の判別の結果、一部消失紙幣Pが真券で、かつ一部消失紙幣でなおかつ表裏両面があるとき、装置制御部10の残存率計測部37は、残存率、即ち正券の面積に対する一部消失紙幣Pが残存する部分の面積の割合を計測する。
【0045】
S209:装置制御部10の交換可否判別部38は、残存率計測部37の計測した残存率に基づいて、一部消失紙幣Pと交換入金可能な紙幣を判定する。一部消失紙幣Pの残存率が正券に対し2/3以上又は残存率が正券に対し2/5以上2/3未満の場合、一部消失紙幣Pと同額又は半額の正券紙幣と交換入金可能と判定する。その場合ステップ210へ進む。一部消失紙幣Pの残存率が正券に対し2/5未満である場合、交換入金を拒否する決定する。この場合、装置制御部10の表示制御部33は、顧客操作表示部26に対し、顧客操作表示画面16に図12(b)に示す交換入金拒否画面73を表示するよう指示する。図12(b)に示す交換入金拒否画面73は「交換入金できない紙幣があります。紙幣をお受け取りください。」と表示される。同図(b)は残存画像データ72と残存率表示52が正券に対し2/5未満の35%であることを示す。その後、ステップ115へ進む。
【0046】
S210:装置制御部10の表示制御部33は、顧客操作表示部26に対し、顧客操作表示画面16に交換入金表示画面74又は75を表示するよう指示する。交換金額表示画面74又は75には、図12(c)及び同図(d)に示すように「一部消失紙幣があります。交換入金ができます。」と表示される。更に同図(c)は、残存率表示52が90%、即ち正券に対し2/3以上であることを示し、交換可能金額53が10000円であることを示す。同図(d)は、残存率表示52が55%、即ち正券に対し2/5以上2/3未満であることを示し、交換可能金額53が5000円であることを示す。顧客は、交換可能金額53が納得できるときは、確認ボタン55を押下する。
【0047】
S211:装置制御部10の押下受付部34は、顧客操作表示部26に対し、交換入金表示画面74の確認ボタン55の押下を受け付けるよう指示する。
S212:一部消失紙幣Pの残存率が正券に対し2/3以上の場合、即ち顧客が交換入金表示画面74の確認ボタン55を押下したとき、装置制御部10の紙幣搬送制御部35は、紙幣処理部21に対し、一部消失紙幣Pと同額の正券紙幣が入金されたとみなして入金処理を行うよう指示する。
【0048】
S213:一方、一部消失紙幣Pの残存率が正券に対し2/5以上2/3未満の場合、即ち顧客が交換入金表示画面75の確認ボタン55を押下したとき、装置制御部10の紙幣搬送制御部35は、紙幣処理部21に対し、一部消失紙幣Pと半額の正券紙幣が入金されたとみなして入金処理を行うよう指示する。
S214:その後、装置制御部10の紙幣搬送制御部35は、紙幣処理部21に対し、一部消失紙幣Pを一部消失紙幣専用金庫32に格納するよう指示する。
S215:装置制御部10の紙幣搬送制御部35は、紙幣処理部21に対し、ステップ206の偽券又はステップ209で交換入金を拒否された一部消失紙幣Pを接客口11に返送するよう指示する。
S216:装置制御部10はステップ207の正券に対し入金処理を行う。
【0049】
以上のように、第3の実施の形態によれば、入金取引の際、正券に一部消失紙幣が混じっていたとき、一部消失紙幣Pに対して正券と交換して入金することができるので、入金取引について顧客は正券と一部消失紙幣を別々に行う必要がなく、顧客にとって容易に一部消失紙幣を正券へ交換する入金取引を行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
P 一部消失紙幣
1 現金自動処理装置(ATM)
10 装置制御部
16 顧客操作表示画面
21 紙幣処理部
26 顧客操作表示部
29 鑑別部
37 残存率計測部
69 撮像部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣を入出金する入出金口と、
前記入出金口から前記紙幣を搬送する搬送部と、
取引選択画面を表示して、顧客による一部消失紙幣の正券への交換取引の選択を受け付ける顧客操作表示部と、
前記顧客が入金した前記一部消失紙幣の残存率を計測する残存率計測部と、
前記残存率に応じた前記正券への交換取引処理を前記顧客操作表示部に表示して、前記顧客による前記交換取引処理の確認を受け付け、前記顧客により確認された前記交換取引処理を行う制御部を有することを特徴とする現金自動取引装置。
【請求項2】
前記制御部が行う前記残存率に応じた前記交換取引処理は、前記残存率2/3以上の場合、前記入金した前記一部消失紙幣と同額の紙幣を出金し、
前記残存率2/5以上2/3未満の場合、前記入金した前記一部消失紙幣と半額の紙幣を出金し、
前記残存率2/5未満の場合、出金処理を行わないことを特徴とする請求項1記載の現金自動取引装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記残存率計測部で計測した前記残存率を前記顧客操作表示部に表示して、前記顧客による前記交換取引処理の確認を受け付けることを特徴とする請求項2記載の現金自動取引装置。
【請求項4】
前記顧客が入金した前記一部消失紙幣の残存画像を撮影する撮像部を有し、
前記制御部は、前記撮像部で撮影した残存画像データを前記顧客操作表示部に表示して、前記顧客による前記交換取引処理の確認を受け付けることを特徴とする請求項3記載の現金自動取引装置。
【請求項5】
前記搬送部は、前記顧客が入金した前記一部消失紙幣を正券の搬送速度より遅く搬送することを特徴とする請求項4記載の現金自動取引装置。
【請求項6】
取引選択画面を表示して、顧客による入金取引の選択を受け付ける顧客操作表示部と、
紙幣を入出金する入出金口と、
前記入出金口から前記顧客が入金した一部消失紙幣を搬送する搬送部と、
前記顧客が入金した前記一部消失紙幣の残存率を計測する残存率計測部と、
前記顧客が入金した前記一部消失紙幣を前記搬送路を介して格納する格納金庫と、
前記残存率に応じた正券への交換入金取引処理を前記顧客操作表示部に表示して、前記顧客による前記交換入金取引処理の確認を受け付け、前記顧客により確認された前記交換入金取引処理を行う制御部を有することを特徴とする現金自動取引装置。
【請求項7】
前記制御部が行う前記残存率に応じた前記交換入金取引処理は、前記残存率2/3以上の場合、前記入金した前記一部消失紙幣と同額の紙幣を入金処理し、前記一部消失紙幣を前記搬送路を介して前記格納金庫に格納し、
前記残存率2/5以上2/3未満の場合、前記入金した前記一部消失紙幣と半額の紙幣を入金処理し、前記一部消失紙幣を前記搬送路を介して前記格納金庫に格納し、
前記残存率2/5未満の場合、入金処理を行わないで、搬送路を介して前記入出金口へ搬送することを特徴とする請求項6記載の現金自動取引装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記残存率計測部で計測した前記残存率を前記顧客操作表示部に表示して、前記顧客による前記交換入金取引処理の確認を受け付けることを特徴とする請求項7記載の現金自動取引装置。
【請求項9】
前記顧客が入金した前記一部消失紙幣の残存画像を撮影する撮像部を有し、
前記制御部は、前記撮像部で撮影した残存画像データを前記顧客操作表示部に表示して、前記顧客による前記交換入金取引処理の確認を受け付けることを特徴とする請求項8記載の現金自動取引装置。
【請求項10】
前記搬送部は、前記顧客が入金した前記一部消失紙幣を正券の搬送速度より遅く搬送することを特徴とする請求項10記載の現金自動取引装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−104019(P2012−104019A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253742(P2010−253742)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(591051645)株式会社OKIソフトウェア (173)
【Fターム(参考)】