説明

球体通過センサ

【課題】 簡単かつ廉価な構成により、球体通過を検出でき、不正行為による誤検出も防止可能な球体通過センサを提案すること。
【解決手段】 球体通過センサ1の球体通過穴3に球体Bが落下すると、球体Bによってその内周面3aから突出している可動片5が押され、可動片5の後端のマグネット片6が一時的にホールIC7に接近する。この結果、ホールIC7の検出レベルが所定以上となり、球体通過を表す球体通過信号が出力される。しかるに、同時にホールIC8の検出レベルが所定以上になった場合にはマグネット片6以外の磁石による不正行為であるとして、不正防止回路によってホールIC7による球体検出を無効にし、球体通過信号を出力させない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ玉などの球体の通過を検出するための球体通過センサに関し、特にホール素子などの磁気検出素子を利用した球体通過センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
パチンコ台などの遊技台では、特定の入賞ポケットにパチンコ玉が入ったことを検出するために、入賞ポケットに球体通過センサが配置されている。この種の球体通過センサとしては、下記特許文献1に開示されているように、電磁誘導作用を利用した近接センサが用いられている。遊技玉は金属製であるので、遊技玉が発振コイルの近傍を通過すると電磁誘導作用によって渦電流が発生し、発振回路の出力振幅が変動する。これに基づき、遊技玉の通過を検出している。
【0003】
ここで、発振コイルの出力は、例えば、磁石などを近づけた場合においても変動する。したがって、遊技台の遊技盤の外側から強力な磁石を近づけると、遊技玉が通過していないのにも拘わらず発振コイルの出力が変動して遊技玉が通過したとの誤検出が行われてしまう。このような不正行為による誤検出を防止するために、特許文献1では、外部磁束を検出するための発振コイルを別途配置し、当該発振コイルによって外部磁束が検出された場合には、不正行為であると判断するようにしている。
【特許文献1】特開平8−80365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発振コイルを利用した検出機構は、発振回路の出力調整、信号処理のための回路構成が複雑であり、特に、不正防止のために複数の発振回路を備えたものは製造価格が高くなる傾向にある。
【0005】
本発明の課題は、簡単で廉価な構成により球体の通過を検出可能な球体通過センサを提案することにある。
【0006】
また、本発明の課題は、簡単で廉価な構成により、球体の通過を検出可能であると共に不正行為による誤検出を防止可能な球体通過センサを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の球体通過センサは、パチンコ玉などの検出対象の球体が通過可能な球体通過穴と、前記球体通過穴を通過する球体によって押されて一時的に移動する可動片と、前記可動片に連動して一時的に検出位置に移動するマグネット片と、前記マグネットが前記検出位置に到ると、球体通過を表す所定レベル以上の磁気検出信号を出力する第1磁気検出素子とを有していることを特徴としている。
【0008】
この構成の球体通過センサでは、球体が球体通過穴を通過する毎に、可動片が一時的に移動し、これに伴ってマグネット片も一時的に検出位置に移動する。この結果、第1磁気センサによってマグネット片が検出される。すなわち、マグネット片から発生する磁束を検知する第1磁気センサの出力レベルが、球体通過を表す所定レベル以上の値に上がる。マグネット片の着磁強度を精度良く管理しておけば、第1磁気検出素子の出力に簡単な信号処理を施すのみで、球体通過を確実に検出できる。
【0009】
本発明において、前記可動片を、前記球体通過穴の内周面から所定量だけ半形方向の内方に突出させ、当該球体通過穴を通過する球体によって所定量だけ半径方向の外方に押し込まれるようにすればよい。この場合には、可動片の突出量を適切な値に設定しておけば、球体の中心部分(最大外径部分)が通過したときにのみ、可動片が一時的に押される。よって、球体が連なった状態で球体通過穴を通過する場合においても、球体の通過毎に可動片の移動が繰り返され、正確に通過する球体の個数を検出できる。
【0010】
次に、外部から強力なマグネットを球体通過センサに近づけて、第1磁気検出素子による誤検出を誘発させる不正行為を防止するためには、少なくとも一つの第2磁気検出素子と、前記第2磁気検出素子の磁気検出出力が所定レベル以上の場合に、前記第1磁気検出素子による球体通過を表す検出信号を無効とする不正防止回路とを有していることが望ましい。
【0011】
第1磁気検出素子が球体通過を表すレベルの出力を発生した場合に、第2磁気検出素子から所定レベル以上の出力が出ている場合には、マグネット片以外の磁力による検出出力であることが分かる。すなわち、不正行為による誤検出であることが分かる。
【0012】
ここで、前記第1磁気検出素子および前記第2磁気検出素子として、ホール素子を用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の球体通過センサでは、球体通過に連動してマグネット片を第1磁気検出素子による検出位置に一時的に移動させて当該球体の通過を検出している。マグネット片の磁気特性を精度良く管理することは、遊技玉などの球体の電磁誘導特性を管理する場合に比べて簡単である。よって、発振回路を用いる場合に比べて、球体通過時に第1磁気検出素子から所定レベル以上の出力を確実に得ることができ、簡単かつ廉価な構成により確実に球体通過を検出できる。
【0014】
また、可動片の球体通過穴内への突出量を適切に設定しておくことにより、連なった状態で通過する球体も確実に検出できる。
【0015】
さらに、球体通過検出用の磁気検出素子以外に1つあるいは複数個の磁気検出素子を配置することにより、簡単かつ廉価に、不正行為に起因する誤検出を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した球体通過センサの一例を説明する。
【0017】
図1は本実施の形態に係る球体通過センサを示す外観斜視図、図2はその内部構成を示す説明図、図3は図1のIII−III線で切断した部分を示す部分断面図である。これらの図を参照して説明すると、球体通過センサ1は、扁平な直方体状のケース2を備え、このケース2における先端側の部位には、その厚さ方向に貫通している円形の球体通過穴3が形成されている。ケース2の後端面2aにはコネクタ4が取り付けられており、ここを介して外部から給電が行われ、また、検出信号が外部に出力されるようになっている。
【0018】
球体通過穴3は検出対象の球体Bの直径よりも僅かに大きな内径の円形穴である。この球体通過穴3の円形内周面3aには開口部3bが形成されており、ここからは、可動片5の先端部分が突出している。可動片5は、球体通過穴3の中心軸線3Aの方向における中間位置に配置されている。また、当該中心軸線3Aに直交する平面上において、当該球体通過穴3の半径方向に移動可能な状態で配置されている。
【0019】
本例では、その先細り状態の先端部分5aが円形内周面3aから所定量だけ内方に突出した突出位置5Aと、球体通過穴3を通過する球体Bによって押されて、所定量だけ半径方向の外方に後退した想像線5Bで示す後退位置との間を移動可能である。可動片5の先端部分5aの球体通過穴内への突出量は、球体Bが球体通過穴3を落下する際に、球体Bの中心部分(最大外径部分)が通過する間だけ当該可動片5に当たるように設定されている。また、可動片5は、ばねなどの不図示の付勢部材によって常に突出位置に位置するように付勢されている。
【0020】
この可動片5の後端5bにはマグネット片6が取り付けられており、可動片5と一体となって移動可能である。なお、可動片5から所定の距離だけ離れた位置にマグネット片6を配置し、後退位置5Bに向けて移動する可動片5によって後方に向けて所定量だけ移動するように配置しておいてもよい。マグネット片6は、可動片5が後退位置5Bに移動すると、当該可動片によって図3において想像線で示す検出位置6Bに移動する。
【0021】
マグネット片6の後方には、球体通過検出用のホールIC7(第1磁気検出素子)が配置されている。このホールIC7は、ケース2の内部に配置されている制御基板8に搭載されている。ホールIC7の磁気検出出力は、マグネット片6がその検出位置6Bに移動すると、予め定めた所定レベル以上となるように設定されている。したがって、球体通過穴3を通過する球体Bによって可動片5が後退位置5Bに押し込まれると、マグネット片6が移動して、球体通過を表す所定レベル以上の磁気検出信号が当該ホールIC7から出力される。
【0022】
ホールICの出力信号は、制御基板8に作り込まれている制御回路9を介して波形整形されて、例えば、一定幅のパルス信号形態の球体通過信号としてコネクタ4を介して外部に出力される。
【0023】
ホールIC7の側方位置には、不正防止用のホールIC10が制御基板8に搭載されている。ホールIC10は、マグネット片6が最も接近した状態においても、所定レベルを超える出力が発生しないように、その配置位置あるいは検出感度が設定されている。
【0024】
図4は、球体通過センサ1の制御系を示す概略ブロック図である。制御系は、可動片5に連動して移動するマグネット片6を検出するホールIC7および不正防止用のホールICと、これらのホールIC7、8の検出信号7S、8Sを処理する信号処理回路11と、不正防止回路12とを有している。信号処理回路11では、それぞれ予め定められた所定レベル以上の磁気検出信号7S、8Sが入力された場合に、それぞれに波形成形を施し、それぞれを、例えば一定幅のパルス信号70S、80Sとして出力する。
【0025】
不正防止回路12では、パルス信号70Sの入力時にパルス信号80Sが入力された場合には、不正行為による誤検出であるとして、パルス信号70Sを無効とし(すなわち、ホールIC7による球体通過検出を無効とし)、当該パルス信号70Sを球体検出信号として出力しない。パルス信号80Sが入力されない場合には、パルス信号70Sを球体通過信号12Sとして出力する。
【0026】
このように構成した本例の球体通過センサ1は、例えば、パチンコ台などの遊技台における遊技盤の背面側において、球体通過孔3の中心軸線3Aが垂直になるように配置され、当該球体通過孔3を自然落下する球体Bを検出する。この場合、球体通過センサ1から出力される球体通過信号は、コネクタ4を経由して、上位側の遊技台に内蔵されている制御部、あるいは、遊技台に対して遊技媒体としてのパチンコ玉などの球体の貸し出し動作を行うために隣接配置されている台間機の制御部に供給される。上位の制御部では、球体検出信号に基づき、入賞などを判別して、遊技媒体の払い出し動作を行う。
【0027】
本例の球体通過センサ1では、球体B1が球体通過穴3を落下すると、その移動軌跡内に位置している可動片5の先端部分5aに当り、これを横方に一時的に押し込む。この結果、マグネット片6が検出位置6Bに一時的に移動し、ホールIC7の磁気検出信号7Sのレベルが所定レベル以上になり、これに基づき、信号処理回路11において所定幅のパルス信号70Sが生成され、不正防止回路12を介して、球体通過信号12Sとして出力される。
【0028】
遊技台の盤面の前方などから強力な磁石を球体通過センサ1に近づける不正行為が行われた場合には、ホールIC7はマグネット片6が接近していないにも拘わらず所定レベル以上の磁気検出信号7Sを発生し、信号処理回路11ではこれに基づき球体通過を表すパルス信号70Sを生成して出力する。しかるに、この場合には、不正防止用のホールIC8によっても磁力が検出され、その磁気検出信号8Sの出力レベルが所定レベル以上に立ち上がるので、信号処理回路11では、この信号8Sから無効信号80Sを生成する。不正防止回路12では、無効信号80Sが入力されると、球体通過を表すパルス信号70Sを無効とする。これによって、不正行為によってホールIC7が誤検出して、入賞していないにも拘わらず入賞したと判断してしまうことを防止できる。
【0029】
次に、本例の球体通過センサ1では、可動片5の先端部分5aが所定量だけ球体通過穴3内に突出している。従って、図3に示すように、連なった状態で複数個の球体Bが落下する場合においても、各球体Bの中心部分(最大外径部分)が可動片5の位置を通過する際にのみ、当該可動片5が押されて移動する。よって、連なった状態で球体が通過する場合であっても、球体が通過する毎に可動片5が移動するので、正確に球体通過を検出できる。
【0030】
(その他の実施の形態)
なお、本例では磁気検出素子としてホール素子を用いたが、この代わりに、磁気抵抗素子などの磁気検出素子を用いることも可能である。また、不正防止用の磁気検出素子(上記の例におけるホールIC8)を複数個配置することも可能である。
【0031】
さらに、パチンコ台などの遊技台以外の分野において、球体を検出するために本発明の球体通過センサを適用可能なことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施の形態に係る球体通過センサを示す外観斜視図である。
【図2】図1の球体通過センサの内部構成を示す説明図である。
【図3】図1のIII−III線で切断した部分を示す部分縦断面図である。
【図4】図1の球体通過センサの制御系を示す概略ブロック図である。
【符号の説明】
【0033】
1 球体通過センサ
2 ケース
3 球体通過穴
3a 内周面
3A 中心軸線
5 可動片
6 マグネット片
7 球体通過検出用のホールIC
10 不正防止用のホールIC
11 信号処理回路
12 不正防止回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パチンコ玉などの検出対象の球体が通過可能な球体通過穴と、
前記球体通過穴を通過する球体によって押されて一時的に移動する可動片と、
前記可動片に連動して一時的に検出位置に移動するマグネット片と、
前記マグネットが前記検出位置に到ると、球体通過を表す所定レベル以上の磁気検出信号を出力する第1磁気検出素子とを有している球体通過センサ。
【請求項2】
請求項1において、
前記可動片は、前記球体通過穴の内周面から所定量だけ半形方向の内方に突出しており、当該球体通過穴を通過する球体によって所定量だけ半径方向の外方に押し込まれることを特徴とする球体通過センサ。
【請求項3】
請求項1または2において、
少なくとも一つの第2磁気検出素子と、
前記第2磁気検出素子から所定レベル以上の磁気検出信号が出力されると、前記第1磁気検出素子から出力される球体通過を表す磁気検出信号を無効とする不正防止回路とを有していることを特徴とする球体通過センサ。
【請求項4】
請求項3において、
前記第1磁気検出素子および前記第2磁気検出素子はホール素子であることを特徴とする球体通過センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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