説明

球帯状シール体及びその製造方法

【課題】マニホールドに接続された排気管に捩じり方向及びせん断方向の力が入力された場合においても、スティックスリップ現象に起因する摩擦異常音を発生させることがなく、運転者等に不快感を与えることのない球帯状シール体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】円筒内面39、部分凸球面状面40並びに部分凸球面状面40の大径側及び小径側の環状端面41及び42により規定された球帯状基体43と、球帯状基体43の部分凸球面状面40に一体的に形成された外層44とを備えた、排気管継手に用いられる球帯状シール体45であって、球帯状基体43は、金網からなる球帯状基体用の補強材と、補強材の金網の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されていると共に圧縮された膨張黒鉛を含む球帯状基体用の耐熱材とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車排気管の球面管継手に使用される球帯状シール体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用エンジンの排気ガスは、自動車エンジンの排気通路の一例を示す図32において、エンジンの各気筒(図示せず)で発生した排気ガスは、排気マニホールド触媒コンバータ600にまとめられ、排気管601及び排気管602を通じてサブマフラ603に送られ、このサブマフラ603を通過した排気ガスは、更に排気管604及び排気管605を介してマフラ(消音器)606へと送られ、このマフラ606を通じて大気中に放出される。
【0003】
これら排気管601及び602並びに604及び605や、サブマフラ603及びマフラ606等の排気系部材にあっては、エンジンのロール挙動及び振動などにより繰返し応力を受ける。とくに高速回転で高出力エンジンの場合は、排気系部材に加わる応力はかなり大きなものとなる。したがって、排気系部材は疲労破壊を招く虞があり、またエンジン振動が排気系部材を共振させ、室内静粛性を悪化させる場合もある。このような問題を解決するために、排気マニホールド触媒コンバータ600と排気管601との連結部607及び排気管604と排気管605との連結部608を排気管球面継手又は蛇腹式継手等の振動吸収機構によって可動連結することにより、自動車エンジンのロール挙動及び振動などにより排気系部材に繰返し受ける応力が吸収され、当該排気系部材の疲労破壊等が防止されると共にエンジンの振動が排気系部材を共振させ車室内の静粛性を悪化させる問題も解決されるという利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭54−76759号公報
【特許文献2】特開2004−301261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した振動吸収機構の一例として、特許文献1に記載された排気管継手及び該継手に使用されるシール体が挙げられる。特許文献1に記載されたシール体は、該シール体の凸球面状の外面で、下流側排気管の端部に固着されたフランジ部材の凹球面状の内面に摺動自在に接触するようにしてその円筒状の内面で上流側排気管の管端部の外周面に嵌装されて用いられ、フランジ部材の凹球面状の内面に対するシール体の凸球面状の外面の相対的な摺動で排気管継手に作用する応力を吸収するようにしている。
【0006】
ところで、前輪駆動横置きエンジンでは、エンジンの後ろ側に排気マニホールドが設けられる場合があり、排気マニホールドに接続される排気管にはせん断方向(排気管の管軸方向と直交する方向)の力に加えて、とくに捩じり方向(排気管の管軸を中心とした回転方向)の力が加わり、この力が排気管継手にも入力されることになる。
【0007】
上記排気管に生じるせん断力及び捩じり力に対処するべく、排気管継手においては、例えば、シール体と排気管を“しまりばめ”として該シール体を排気管の外周面に圧入し、該シール体の円筒内面での回転を防止させる技術、あるいはシール体の円筒内面を金網からなる補強材の露出面とすることにより、シール体の円筒内面と排気管の外面との間の摩擦を高め、シール体を排気管の外面に強固に固定するようにした技術(特許文献2参照)がある。
【0008】
しかしながら、シール体と排気管を“しまりばめ”としてシール体を排気管の外周面に圧入する技術においては、シール体の使用過程に排気管内を流通する排気ガスの熱負荷が加わることにより応力緩和が発生し、“しまりばめ”による圧入力の低下を来たして両者間の強固な一体性が失われるという問題がある。また、特許文献2に記載された技術においては、シール体を排気管の外面に圧入する際には、作業員の力だけでは圧入することができず、別途作製された治具を必要とするなど、作業性に問題があるのと、前記と同様、排気ガスの熱負荷が加わることにより応力緩和が発生し、シール体と排気管の外面との強固な一体性が失われるという問題もある。
【0009】
シール体の円筒内面と排気管の外面との一体性が失われた状態で、排気管継手にせん断方向及び捩じり方向の変位を生じさせる力が入力されると、シール体の円筒内面において排気管の管軸回りに回転を生じさせる力が生じると共に、シール体の大径側の環状端面にも回転を生じさせるような力が生じる。大径側の環状端面は、該環状端面と該環状端面が当接するフランジ部材との間からの排気ガスの漏洩を防止するという観点から膨張黒鉛を含む耐熱材の露出面としているため、大径側の端面とフランジ部材との摺動により該フランジ部材の表面に耐熱材の被膜が移着し、この移着した耐熱材の被膜と耐熱材が露出した大径側の環状端面との摺動に移行した場合には、耐熱材同志の摺動摩擦となり、耐熱材(膨張黒鉛)の静止摩擦係数と動摩擦係数との差が大きいこと、また耐熱材のすべり速度に対する摩擦抵抗が負性抵抗を示すことに起因して、往々にしてスティックスリップ現象を生じ、該スティックスリップ現象に起因する摩擦異常音を発生させる虞があり、この摩擦異常音が運転者等に不快感を与えるという問題を生じる虞がある。
【0010】
本発明は前記諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、マニホールドに接続された排気管に捩じり方向及びせん断方向の力が入力された場合においても、スティックスリップ現象に起因する摩擦異常音を発生させることがなく、運転者等に不快感を与えることのない球帯状シール体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の球帯状シール体は、円筒内面、部分凸球面状面並びに部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面により規定された球帯状基体と、この球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた、排気管継手に用いられる球帯状シール体であって、球帯状基体は、金網からなる球帯状基体用の補強材と、この補強材の金網の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されていると共に圧縮された膨張黒鉛を含む球帯状基体用の耐熱材とを具備しており、該球帯状基体の円筒内面及び部分凸球面状面の大径側の環状端面は、球帯状基体用の耐熱材からなる面と、当該耐熱材からなる面と面一となっていると共に球帯状基体用の補強材からなる面とを含んでおり、球帯状基体用の耐熱材からなる面及び球帯状基体用の補強材からなる面は、該球帯状基体の円筒内面及び部分凸球面状面の大径側の環状端面において混在一体化されており、球帯状基体用の補強材からなる面は、該球帯状基体の円筒内面及び部分凸球面状面の大径側の環状端面において球帯状基体用の耐熱材からなる面に対して点在している。
【0012】
本発明の球帯状シール体によれば、球帯状シール体の円筒内面と該球帯状シール体が配置される排気管の一端部の外面との間に一体性が失われた状態で、排気管に捩じり方向及びせん断方向の力が入力されて該球帯状シール体の円筒内面において排気管がその管軸回りで回転して、当該排気管に固着されたフランジ部材もそれに連れて回転して球帯状シール体の大径側の環状端面と当該環状端面が接触するフランジ部材との間に相対的な回転摺動を生じても、該大径側の環状端面には膨張黒鉛を含む球帯状基体用の耐熱材からなる面に加えて金網からなる球帯状基体用の補強材からなる面が点在して露出しているので、フランジ部材の表面への球帯状基体用の耐熱材の過度の移着は回避され、適正な球帯状基体用の耐熱材の被膜をフランジ部材の表面に形成できて、球帯状シール体の大径側の環状端面とフランジ部材との間の相対的な回転摺動は、適正にフランジの表面に移着されて形成された球帯状基体用の耐熱材の被膜を介しての回転摺動に移行するので、大径側の環状端面は、スティックスリップ現象を生じることはなく、該スティックスリップ現象に起因するフランジ部材の表面と大径側の環状端面との摺動面での摩擦異常音の発生もないので、運転者等に不快感を与えることもない上に、当該球帯状シール体の大径側の環状端面とフランジ部材との間の密封性を低下させることがない。
【0013】
本発明の球帯状シール体における部分凸球面状面の大径側の環状端面において、球帯状基体用の補強材からなる面は、好ましくは、5〜40%の面積割合をもって点在している。
【0014】
大径側の環状端面において、球帯状基体用の補強材からなる面の面積割合が5%未満では、環状端面に露出する耐熱材からなる面の量が多くなり、フランジ部材の表面に移着する該耐熱材の量が多くなるので、該フランジ部材の表面に移着した耐熱材の被膜と環状端面との摺動回転に移行した際に、往々にしてスティックスリップ現象を発生し、該スティックスリップ現象に起因する摩擦異常音を発生させる虞があり、また、大径側の環状端面において、球帯状基体用の補強材からなる面の面積割合が40%を超えると、環状端面に露出する補強材からなる面の割合が多くなりすぎ、該金網からなる補強材と金属からなるフランジ部材との金属同志の摺動回転となり、金属摺動異音を発生させるばかりか、球帯状基体の環状端面とフランジ部材の表面との間の密封性を損なう虞がある。
【0015】
また、球帯状基体の円筒内面においても、球帯状基体用の補強材からなる面は、面5〜40%の面積割合をもって点在して露出していることが好ましい。
【0016】
本発明の球帯状シール体において、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成される外層は、膨張黒鉛を含む外層用の耐熱材と金網からなる外層用の補強材とが圧縮されて外層用の補強材の金網の網目に外層用の耐熱材が充填されて当該耐熱材と補強材とが混在一体化されてなり、該外層の外表面は、外層用の補強材からなる面と外層用の耐熱材からなる面とが混在した平滑な面に形成されていてもよく、また球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成される外層は、膨張黒鉛を含む外層用の耐熱材と、固体潤滑剤と、金網からなる外層用の補強材とが圧縮されて外層用の補強材の金網の網目に固体潤滑剤及び外層用の耐熱材が充填されて当該固体潤滑剤及び耐熱材と外層用の補強材とが混在一体化されてなり、該外層の外表面は、外層用の補強材からなる面と固体潤滑剤からなる面とが混在した平滑な面に形成されていてもよい。
【0017】
固体潤滑剤としては、六方晶窒化硼素23〜57質量%、アルミナ水和物5〜15質量%及び四ふっ化樹脂33〜67質量%を含む潤滑組成物からなるものを好ましい例として挙げることができる。
【0018】
本発明の球帯状シール体において、球帯状基体用の耐熱材及び外層用の耐熱材は、酸化抑制剤としての燐酸塩を1.0〜16.0質量%の割合で含有していてもよく、また酸化抑制剤として燐酸塩を1.0〜16.0質量%及び燐酸を0.05〜5.0質量%含有していてもよい。
【0019】
酸化抑制剤としての燐酸塩又は燐酸塩及び燐酸と膨張黒鉛とを含有する耐熱材は、球帯状シール体自体の耐熱性及び耐酸化消耗性を向上させることができ、球帯状シール体の高温領域でのより好ましい使用を可能とするものである。
【0020】
円筒内面、部分凸球面状面並びに部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面によって規定される球帯状基体と、この球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えている本発明による球帯状シール体の製造方法は、(a)密度αが0.3〜0.9Mg/mの膨張黒鉛シートからなる球帯状基体用の耐熱材を準備する工程と、(b)金属細線を織ったり編んだりして得られる金網からなる球帯状基体用の補強材の二つの層間に該球帯状基体用の耐熱材を挿入し、当該耐熱材を挿入した補強材を耐熱材の厚さ方向に加圧し、球帯状基体用の補強材の金網の網目に球帯状基体用の耐熱材を密に充填すると共に球帯状基体用の補強材の一部を露出させて耐熱材中に当該補強材を埋設するように互いに圧着して、球帯状基体用の耐熱材と球帯状基体用の補強材とが圧縮されていると共に球帯状基体用の耐熱材からなる面と球帯状基体用の補強材からなる面とが面一となっている表面と該補強材の両側において球帯状基体用の耐熱材が充填されていない部分とを有している扁平状の複合シート材を形成する工程と、(c)扁平状の複合シート材を円筒状に数回捲回して筒状母材を形成する工程と、(d)密度αが1.0〜1.5Mg/mの膨張黒鉛シートからなる外層用の耐熱材を準備する工程と、(e)金属細線を織ったり編んだりして得られる金網からなる二つの層を有した外層用の補強材を準備し、この補強材の二つの層間に外層用の耐熱材を挿入し、当該耐熱材を挿入した外層用補強材を当該耐熱材の厚さ方向に加圧し、外層用の補強材の金網の網目に外層用の耐熱材を充填して、表面に外層用の補強材からなる面と外層用の耐熱材からなる面とが混在して露出した扁平状の外層形成部材を形成する工程と、(f)前記筒状母材の外周面に前記外層形成部材を捲回して予備円筒成形体を形成する工程と、(g)該予備円筒成形体を金型のコア外周面に挿入し、該コアを金型内に配置すると共に該金型内において予備円筒成形体をコア軸方向に圧縮成形する工程とを具備しており、球帯状基体は、金網からなる球帯状基体用の補強材と、この補強材の金網の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されていると共に圧縮された膨張黒鉛を含む球帯状基体用の耐熱材とを具備しており、該球帯状基体の円筒内面及び部分凸球面状面の大径側の環状端面は、球帯状基体用の耐熱材からなる面と、当該耐熱材からなる面と面一となっていると共に球帯状基体用の補強材からなる面とを含んでおり、球帯状基体用の耐熱材からなる面及び球帯状基体用の補強材からなる面は、該球帯状基体の円筒内面及び部分凸球面状面の大径側の環状端面において混在一体化されており、球帯状基体用の補強材からなる面は、該球帯状基体の円筒内面及び部分凸球面状面の大径側の環状端面において球帯状基体用の耐熱材からなる面に対して点在しており、外層は、膨張黒鉛を含む外層用の耐熱材と金網からなる外層用の補強材とが圧縮されて外層用の補強材の金網の網目に外層用の耐熱材が充填されて当該耐熱材と補強材とが混在一体化されてなり、該外層の外表面は、外層用の補強材からなる面と外層用の耐熱材からなる面とが混在した平滑な面に形成されている。
【0021】
本発明の球帯状シール体の製造方法によれば、円筒内面及び部分凸球面状面の大径側の環状端面に、球帯状基体用の膨張黒鉛を含む球帯状基体用の耐熱材からなる面と球帯状基体用の補強材からなる面とが面一となっていると共に互いに面一とされた補強材からなる面が耐熱材からなる面に対して点在して露出している球帯状シール体を製造できるので、特に相手材としてのフランジ部材の表面への球帯状基体用の耐熱材の過度の移着はなく、フランジ部材の表面とは、常時、補強材からなる面が耐熱材からなる面に対して点在して露出する大径側の環状端面において回転摺動するので、大径側の環状端面は、フランジ部材との間にスティックスリップ現象を生じることはなく、スティックスリップ現象に起因するフランジ部材の表面と大径側の環状端面との摺動面での摩擦異常音の発生のない球帯状シール体を得ることができる。
【0022】
大径側の環状端面において、球帯状基体用の補強材からなる面の露出する面積割合は、5〜40%であることが好ましく、この面積割合は、前記製造方法の(b)工程の扁平状の複合シート材において、球帯状基体用の耐熱材が充填されない部分の幅を変更することによって調整することができる。図31は、幅が48±1.2mmの扁平状の複合シート材の片側(耳部)に生じた球帯状基体用の耐熱材が充填されない部分の幅(mm)と球帯状基体の大径側の環状端面に補強材からなる面が点在して露出する面積割合の関係を、実験に基づき得たグラフである。
【0023】
また、前記製造方法の(e)工程において、固体潤滑剤の被覆層を含む外層形成部材とすることができる。すなわち、外層用の補強材の金網からなる二つの層間に、一方の表面に固体潤滑剤の被覆層を具備した外層用の耐熱材を挿入し、以下(e)工程を実施することにより、表面に外層用の補強材からなる面と固体潤滑剤の被覆層からなる面とが混在して露出した扁平状の外層形成部材を形成し、この外層形成部材を用いて(f)工程及び(g)工程を実施することにより、外層は、膨張黒鉛を含む外層用の耐熱材と固体潤滑剤と金網からなる外層用の補強材とが圧縮されて外層用の補強材の網目に固体潤滑剤及び外層用の耐熱材が充填されて当該固体潤滑剤及び外層用の耐熱材と外層用の補強材とが混在一体化されてなり、該外層の外表面は、外層用の補強材からなる面と固体潤滑剤からなる面とが混在した平滑な面に形成されている球帯状シール体を得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、球帯状シール体の円筒内面と該球帯状シール体が配置される排気管の一端部の外面との間に一体性が失われた状態で、排気管に捩じり方向及びせん断方向の力が入力されて該球帯状シール体の円筒内面において排気管がその管軸回りで回転して、当該排気管に固着されたフランジ部材もそれに連れて回転して球帯状シール体の大径側の環状端面と当該環状端面が接触するフランジ部材との間に相対的な回転摺動を生じても、該大径側の環状端面には膨張黒鉛を含む球帯状基体用の耐熱材からなる面に加えて金網からなる球帯状基体用の補強材からなる面が点在して露出しているので、フランジ部材の表面への球帯状基体用の耐熱材の過度の移着は回避され、適正な球帯状基体用の耐熱材の被膜をフランジ部材の表面に形成できて、球帯状シール体の大径側の環状端面とフランジ部材との間の相対的な回転摺動は、適正にフランジの表面に移着されて形成された球帯状基体用の耐熱材の被膜を介しての回転摺動に移行するので、大径側の環状端面は、スティックスリップ現象を生じることはなく、該スティックスリップ現象に起因するフランジ部材の表面と大径側の環状端面との摺動面での摩擦異常音の発生もないので、運転者等に不快感を与えることもない上に、当該球帯状シール体の大径側の環状端面とフランジ部材との間の密封性を低下させることのない球帯状シール体及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の実施の形態の一例で製造された球帯状シール体の縦断面説明図である。
【図2】図2は、図1に示す球帯状シール体の部分拡大説明図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態の一例で製造された他の球帯状シール体の断面説明図である。
【図4】図4は、図3に示す球帯状シール体の部分拡大説明図である。
【図5】図5は、本発明の球帯状シール体の製造工程における球帯状基体用の耐熱材の斜視説明図である。
【図6】図6は、補強材の金網の網目の平面説明図である。
【図7】図7は、本発明の球帯状シール体の製造工程における複合シート材の製造工程の説明図である。
【図8】図8は、図7に示す複合シート材の製造工程における複数個の環状凹溝を有するローラの正面説明図である。
【図9】図9は、図7に示す複合シート材の製造工程における円筒状編組金網からなる球帯状基体用の補強材内に球帯状基体用の耐熱材を挿入し、該補強材を扁平状に変形させると共に扁平状に変形された補強材内に耐熱材が位置せしめられた状態の断面説明図である。
【図10】図10は、図7に示す複合シート材の製造工程における円筒状編組金網からなる球帯状基体用の補強材内に球帯状基体用の耐熱材を挿入し、該補強材を扁平状に変形させると共に扁平状に変形された補強材内に耐熱材が位置せしめられた状態の斜視説明図である。
【図11】図11は、図7に示す複合シート材の製造工程における扁平状に変形せしめられた補強材内に位置せしめられた耐熱材を複数個の環状凹溝を有するローラと円筒ローラとで加圧する状態の説明図である。
【図12】図12は、図7に示す複合シート材の製造工程における扁平状に変形せしめられた補強材内に位置せしめられた耐熱材を複数個の環状凹溝を有するローラと円筒ローラとで加圧している状態の説明図である。
【図13】図13は、図7に示す複合シート材の製造工程における扁平状に変形せしめられた補強材内に位置せしめられた耐熱材を複数個の環状凹溝を有するローラと円筒ローラとで加圧した後の状態の説明図である。
【図14】図14は、図7に示す複合シート材の製造工程における扁平状に変形せしめられた補強材内に位置せしめられた耐熱材を複数個の環状凹溝を有するローラと円筒ローラとで加圧した後、一対の円筒ローラで加圧している状態の説明図である。
【図15】図15は、図7に示す複合シート材の製造工程を経て製造された複合シート材の説明図である。
【図16】図16は、本発明の球帯状シール体の製造工程における筒状母材の平面説明図である。
【図17】図17は、図16に示す筒状母材の縦断面説明図である。
【図18】図18は、本発明の球帯状シール体の製造工程における外層用の耐熱材の斜視説明図である。
【図19】図19は、本発明の球帯状シール体の製造工程における扁平状の外層形成部材の製造工程の説明図である。
【図20】図20は、本発明の球帯状シール体の製造工程における外層形成部材の形成方法の説明図である。
【図21】図21は、本発明の球帯状シール体の製造工程における図18に示す外層用の耐熱材を使用した外層形成部材の形成方法の説明図である。
【図22】図22は、本発明の球帯状シール体の製造工程における固体潤滑剤の被覆層を備えた外層用の耐熱材の断面説明図である。
【図23】図23は、本発明の球帯状シール体の製造工程における図22に示す外層用の耐熱材を使用した外層形成部材の形成方法の説明図である。
【図24】図24は、本発明の球帯状シール体の製造工程における図22に示す外層用の耐熱材を使用して形成された外層形成部材の説明図である。
【図25】図25は、本発明の球帯状シール体の製造工程における帯状金網の説明図である。
【図26】図26は、本発明の球帯状シール体の製造工程における図18に示す外層用の耐熱材を使用した外層形成部材の他の形成方法の説明図である。
【図27】図27は、本発明の球帯状シール体の製造工程における図18に示す外層用の耐熱材を使用した外層形成部材の他の形成方法の説明図である。
【図28】図28は、本発明の球帯状シール体の製造工程における予備円筒成形体の平面説明図である。
【図29】図29は、本発明の球帯状シール体の製造工程における金型中に予備円筒成形体を配置した状態の断面説明図である。
【図30】図30は、本発明の球帯状シール体を組込んだ排気管球面継手の断面説明図である。
【図31】図31は、本発明の球帯状シール体を組込んだ他の排気管球面継手の断面説明図である。
【図32】図32は、自動車エンジンの排気系の説明図である。
【図33】図33は、球帯状基体の部分凸球面部の大径側の環状端面において、補強材からなる面が点在して露出する面積割合と複合シート材の耐熱材が充填されない部分の幅との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に本発明を、図に示す好ましい実施の形態の例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例に何等限定されない。
【0027】
本発明の球帯状シール体における構成材料及び球帯状シール体の製造方法について説明する。
【0028】
<耐熱材I及びその製造方法について>
濃度98%の濃硫酸を撹拌しながら、酸化剤として過酸化水素の60%水溶液を加え、これを反応液とする。この反応液を冷却して10℃の温度に保持し、該反応液に粒度30〜80メッシュの鱗片状天然黒鉛粉末を添加して30分間反応を行う。反応後、吸引濾過して酸処理黒鉛粉末を分離し、該酸処理黒鉛粉末を水で10分間撹拌して吸引濾過するという洗浄作業を2回繰返し、酸処理黒鉛粉末から硫酸分を充分除去する。ついで、硫酸を充分除去した酸処理黒鉛粉末を乾燥炉で乾燥し、これを酸処理黒鉛粉末とする。
【0029】
上記酸処理黒鉛粉末を、950〜1200℃の温度で1〜10秒間加熱(膨張)処理して分解ガスを発生せしめ、そのガス圧により黒鉛層間を拡張して膨張させた膨張黒鉛粒子(膨張倍率240〜300倍)を形成する。この膨張黒鉛粒子を所望のロール隙間に調整した双ローラ装置に供給してロール成形し、所望の厚さの膨張黒鉛シートを作製し、この膨張黒鉛シートを耐熱材Iとする。
【0030】
<耐熱材II及びその製造方法>
上記酸処理黒鉛粉末と同様の方法で得た酸処理黒鉛粉末を撹拌しながら、該酸処理黒鉛粉末に燐酸塩として、例えば濃度50%の第一燐酸アルミニウム〔Al(HPO〕水溶液をメタノールで希釈した溶液を噴霧状に配合し、均一に撹拌して湿潤性を有する混合物を作製する。この湿潤性を有する混合物を乾燥炉で乾燥する。ついで、乾燥した混合物を950〜1200℃の温度で1〜10秒間加熱(膨張)処理して分解ガスを発生せしめ、そのガス圧により黒鉛層間を拡張して膨張させた膨張黒鉛粒子(膨張倍率240〜300倍)を形成する。この膨張処理工程において、第一燐酸アルミニウムは構造式中の水が脱離する。この膨張黒鉛粒子を所望のロール隙間に調整した双ローラ装置に供給してロール成形し、所望の厚さの膨張黒鉛シートを作製し、この膨張黒鉛シートを耐熱材IIとする。
【0031】
<耐熱材III及びその製造方法について>
上記酸処理黒鉛粉末と同様の方法で得た酸処理黒鉛粉末を撹拌しながら、該酸処理黒鉛粉末に燐酸塩として、例えば濃度50%の第一燐酸アルミニウム水溶液と燐酸として、例えば濃度84%のオルト燐酸(HPO)水溶液をメタノールで希釈した溶液を噴霧状に配合し、均一に撹拌して湿潤性を有する混合物を作製する。この湿潤性を有する混合物を乾燥炉で乾燥する。ついで、乾燥した混合物を950〜1200℃の温度で1〜10秒間加熱(膨張)処理して分解ガスを発生せしめ、そのガス圧により黒鉛層間を拡張して膨張させた膨張黒鉛粒子(膨張倍率240〜300倍)を形成する。この膨張処理工程において、第一燐酸アルミニウムは構造式中の水が脱離し、オルト燐酸は脱水反応を生じて五酸化燐を生成する。この膨張黒鉛粒子を所望のロール隙間に調整した双ローラ装置に供給してロール成形し、所望の厚さの膨張黒鉛シートを作製し、この膨張黒鉛シートを耐熱材IIIとする。
【0032】
このようにして作製された耐熱材IIには、第一燐酸アルミニウムが1.0〜16.0質量%含有されているのが好ましく、耐熱材IIIには、第一燐酸アルミニウムが1.0〜16.0質量%及び五酸化燐が0.05〜5.0質量%含有されているのが好ましい。この燐酸塩又は燐酸塩及び五酸化燐を含有した膨張黒鉛は、膨張黒鉛自体の耐熱性が向上されると共に酸化抑制作用が付与されるため、例えば600℃ないし600℃を超える高温領域での使用を可能とする。ここで、燐酸塩としては、上記第一燐酸アルミニウムの他に、第一燐酸リチウム(LiHPO)、第二燐酸リチウム(LiPO)、第一燐酸カルシウム〔Ca(HPO〕、第二燐酸カルシウム(CaHPO)、第二燐酸アルミニウム〔Al(HPO〕などを使用することができ、燐酸としては、上記オルト燐酸の他に、メタ燐酸(HPO)、ポリ燐酸などを使用することができる。
【0033】
上記耐熱材I、耐熱材II及び耐熱材IIIにおいて、外層用に使用される耐熱材I、耐熱材II及び耐熱材IIIの密度αは、1.0〜1.5Mg/m、好ましくは1.0〜1.2Mg/mで、厚さが0.30〜0.40mmの耐熱材が使用されて好適であり、球帯状基体用に使用される耐熱材I、耐熱材II及び耐熱材IIIは、球帯状シール体の製造時において密度が外層用に使用される耐熱材の密度の0.3〜0.6倍の密度、すなわち0.3〜0.9Mg/m、好ましくは0.3〜0.6Mg/mの密度で、厚さが1.0〜1.5mmを有する耐熱材が使用されて好適である。
【0034】
<補強材について>
補強材は、鉄系としてオーステナイト系のSUS304、SUS310S、SUS316、フェライト系のSUS430などのステンレス鋼線、鉄線(JISG3532)もしくは亜鉛メッキ鋼線(JISG3547)又は銅系として銅−ニッケル合金(白銅)線、銅−ニッケル−亜鉛合金(洋白)線、黄銅線、ベリリウム銅線からなる金属細線を一本又は2本以上を使用して織ったり編んだりして形成される織組金網又は編組金網が使用されて好適である。
【0035】
金網を形成する金属細線において、線径は、0.28〜0.32mm程度のものが使用され、該線径の金属細線で形成された球帯状基体用の金網の目幅(編組金網を示す図6参照)は、縦4〜6mm、横3〜5mm程度のものが使用されて好適であり、該線径の金属細線で形成された外層用の金網の網目の目幅は、縦2.5〜3.5mm、横1.5〜2.5mm程度のものが使用されて好適である。
【0036】
<固体潤滑剤について>
固体潤滑剤は、摺動性の向上のために球帯状シール体の外層に使用されて好適であって、固体潤滑剤は、六方晶窒化硼素(以下「h−BN」と略称する。)23〜57質量%、アルミナ水和物5〜15質量%及び四ふっ化エチレン樹脂(以下「PTFE」と略称する。)33〜67質量%を含む潤滑組成物を好ましい例として例示し得る。
【0037】
固体潤滑剤は、製造過程においては、分散媒としての酸を含有するアルミナ水和物粒子を分散含有した水素イオン濃度(pH)が2〜3を呈するアルミナゾルに、h−BN粉末及びPTFE粉末を分散含有した水性ディスパージョンであって、h−BN粉末23〜57質量%とPTFE粉末33〜67質量%及びアルミナ水和物5〜15質量%とを含む潤滑組成物を固形分30〜50質量%分散含有した水性ディスパージョンの形態で使用されるとよい。水性ディスパージョンを形成するh−BN及びPTFEは、可及的に微粉末であることが好ましく、これらは平均粒径10μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下の微粉末が使用されて好適である。
【0038】
水性ディスパージョンにおけるアルミナゾルの分散媒としての水に含有される酸は、アルミナゾルを安定化させるための解膠剤として作用するものである。そして、酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、アミド硫酸等の無機酸が挙げられるが、特には硝酸が好ましい。
【0039】
水性ディスパージョンにおけるアルミナゾルを形成するアルミナ水和物は、組成式Al・nHO(組成式中、0<n<3)で表わされる化合物である。該組成式において、nは、通常、0(零)を超えて3未満の数、好ましくは0.5〜2、さらに好ましくは0.7〜1.5程度である。アルミナ水和物としては、例えばベーマイト(Al・HO)やダイアスポア(Al・HO)などのアルミナ一水和物(水酸化酸化アルミニウム)、ギブサイト(Al・3HO)やバイヤライト(Al・3HO)などのアルミナ三水和物、擬ベーマイトなどが挙げられる。
【0040】
次に、上記した構成材料からなる球帯状シール体の製造方法について、図面に基づき説明する。
【0041】
(第一工程)密度が0.3〜0.9Mg/m、好ましくは0.3〜0.6Mg/mを有する膨張黒鉛シートからなる球帯状基体用の耐熱材1を準備する(図5参照)。
【0042】
(第二工程)線径が0.28〜0.32mmの金属細線を編み機(図示せず)で連続的に編んで得られる網目の目幅が縦4〜6mm、横3〜5mm(図6参照)の円筒状編組金網からなる球帯状基体用の補強材2の二つの層間としての内部に、該円筒状編組金網(図25参照)の直径(内径)の長さより小さい長さ(幅)に形成した球帯状基体用の耐熱材1を連続的に挿入し、耐熱材1を挿入した補強材2をその挿入開始端から平滑な円筒状の外周面を有する円筒ローラ3と軸方向に沿って複数個の環状凹溝4をもった円筒状の外周面を有したローラ5(図7及び図8参照)との間の隙間Δ1に供給して耐熱材1の厚さ方向に加圧(図7、図9、図10、図11、図12及び図13参照)し、さらに別の平滑な円筒状の外周面を有する一対の円筒ローラ6及び7間の隙間Δ2に供給して加圧(図7及び図14参照)し、球帯状基体用の補強材2の金網の網目に球帯状基体用の耐熱材1を密に充填すると共に球帯状基体用の補強材2の一部が耐熱材1からなる面8と共に露出し、その他の部分が耐熱材1に埋設するように互いに圧着して、球帯状基体用の耐熱材1からなる面8と球帯状基体用の補強材2からなる面9とを面一に形成して、耐熱材1からなる面8と補強材2からなる面9とが面一となって露出した両表面と補強材2の幅方向の両側に耐熱材1が充填されない部分10及び10とを有する扁平状の複合シート材11(図15参照)を形成する。
【0043】
円筒ローラ3と軸方向に沿って複数個の環状凹溝4をもった円筒状の外周面を有したローラ5との間の隙間Δ1は、0.35〜0.60mmの範囲に設定されるのが好ましく、また一対の円筒ローラ6及び7間の隙間Δ2は、0.45〜0.65mmの範囲に設定されるのが好ましい。
【0044】
上記第二工程で得られた扁平状の複合シート材11の一方の表面12において、球帯状基体用の耐熱材1からなる面8と共に露出する球帯状基体用の補強材2からなる面9の面積割合は、複合シート材11の一方の表面12の面積の5〜40%であることが好ましい。
【0045】
(第三工程)扁平状の複合シート材11を円筒状に数回捲回して筒状母材13を形成する(図16及び図17参照)。この筒状母材13において、円筒状の上、下部側に球帯状基体用の耐熱材1が充填されていない部分10及び10が位置する。
【0046】
(第四工程)密度αが1.0〜1.5Mg/m、好ましくは1.0〜1.2Mg/m、厚さを有する膨張黒鉛シートからなる外層用の耐熱材14(図18)を準備し、この耐熱材14を筒状母材13の外周面を一回巻きできる程度の長さに切断する。
【0047】
(第五工程)
<外層形成部材I及びその製造方法>
線径が0.28〜0.32mmの金属細線を円筒状に編んで形成した網目の目幅が縦2.5〜3.5mm、横1.5〜1.5mm程度(図6参照)の円筒状編組金網(図25参照)からなる外層用の補強材15の二つの層間としての内部に、該円筒状編組金網の直径(内径)の長さよりも小さい長さ(幅)に形成した外層用の耐熱材14を連続的に挿入し、耐熱材14を挿入した補強材15をその挿入開始端から平滑な外周面を有する一対の円筒ローラ16及び17間の隙間Δ3に供給して耐熱材14の厚さ方向に加圧(図19及び図20参照)し、外層用の補強材15の金網の網目に外層用の耐熱材14を密に充填すると共に補強材15の一部18が耐熱材14からなる面19と共に露出し、その他の部分が耐熱材14に埋設するように互いに圧着して、表面に外層用の補強材15からなる面と外層用の耐熱材14からなる面とが混在して露出した扁平状の外層形成部材20(図21参照)を形成する。
【0048】
<外層形成部材II及びその製造方法>
解膠剤として作用する硝酸を含有した分散媒としての水にアルミナ水和物粒子を分散含有した水素イオン濃度が2〜3を呈するアルミナゾルに、h−BN粉末及びPTFE粉末を分散含有した水性ディスパージョンであって、h−BN23〜57質量%とPTFE33〜67質量%及びアルミナ水和物5〜15質量%とを含む潤滑組成物を固形分として30〜50質量%分散含有した水性ディスパージョンを準備する。
【0049】
外層用の耐熱材14を別途準備し、耐熱材14の一方の表面21に、h−BN23〜57質量%とPTFE33〜67質量%及びアルミナ水和物5〜15質量%とを含む潤滑組成物を固形分として30〜50質量%分散含有した水性ディスパージョンを刷毛塗り、ローラ塗りあるいはスプレー等の手段で適用し、これを乾燥させて潤滑組成物からなる被覆層22を形成する(図22参照)。
【0050】
外層形成部材Iと同様にして、線径が0.28〜0.32mmの金属細線を円筒状に編んで形成した網目の目幅が縦2.5〜3.5mm、横1.5〜1.5mm程度(図6参照)の円筒状編組金網(図25参照)からなる外層用の補強材15の二つの層間としての内部に、該円筒状編組金網の直径(内径)の長さよりも小さい長さ(幅)に形成した固体潤滑剤の被覆層22を備えた外層用の耐熱材14を連続的に挿入し、耐熱材14を挿入した補強材15をその挿入開始端から平滑な外周面を有する一対の円筒ローラ16及び17間の隙間Δ3に供給して耐熱材14の厚さ方向に加圧(図19及び図23参照)して一体化させ、外層用の補強材15の金網の網目に外層用の耐熱材14と該耐熱材14の表面21に形成された固体潤滑剤の被覆層22とを充填して、表面に外層用の補強材15からなる面23と固体潤滑剤からなる面24とが混在して露出した扁平状の外層形成部材20aを形成する(図24参照)。
【0051】
上記外層形成部材IIを図25及び図27に示すように他の方法で形成してもよい。即ち、線径が0.28〜0.32mmの金属細線を円筒状に編んで形成した網目の目幅が縦2.5〜3.5mm、横1.5〜2.5mm程度の円筒状編組金網を一対のローラ25及び26間に通して所定の幅の帯状金網27を作製し、帯状金網27を所定の長さに切断した外層用の補強材15を準備する(図25参照)。この帯状金網27からなる外層用の補強材15の二つの層間としての内部に、一方の表面21に固体潤滑剤の被覆層22を備えた外層用の耐熱材14を挿入すると共にこれらを一対のローラ28及び29間の隙間に供給し、耐熱材14の厚さ方向に加圧して一体化させ、外層用の補強材15の金網の網目に耐熱材14と該耐熱材14の表面に形成された固体潤滑剤の被覆層22とを充填して、表面に外層用の補強材15からなる面23と固体潤滑剤からなる面24とが混在して露出した扁平状の外層形成部材20a(図24参照)を形成してもよい。
【0052】
(第六工程)このようにして得た外層形成部材20を、筒状母材13の外周面に巻付け、図28に示すような予備円筒成形体30を作製するか、外層形成部材20aを、固体潤滑剤の被覆層22を外側にして筒状母材13の外周面に巻付け、予備円筒成形体30aを作製する。
【0053】
(第七工程)内面に円筒壁面31と円筒壁面31に連なる部分凹球面状壁面32と部分凹球面状壁面32に連なる貫通孔33とを備え、貫通孔33に段付きコア34を嵌挿することによって内部に中空円筒部35と中空円筒部35に連なる球帯状中空部36とが形成された図29に示すような金型37を準備し、金型37の段付きコア34に予備円筒成形体30又は30aを挿入する。
【0054】
金型37の中空円筒部35及び球帯状中空部36に配された予備円筒成形体30又は30aをコア軸方向に98〜294N/mm(1〜3トン/cm)の圧力で圧縮成形し、図1ないし図4に示すような、中央部に貫通孔38を有すると共に円筒内面39と部分凸球面状面40と部分凸球面状面40の大径側及び小径側の環状端面41及び42とにより規定された球帯状基体43と、球帯状基体43の部分凸球面状面40に一体的に形成された外層44とを備えた球帯状シール体45又は45aを作製する。
【0055】
予備円筒成形体30を使用して作製された球帯状シール体45においては、図1及び図2に示すように、金網からなる球帯状基体用の補強材2と補強材2の金網の網目を充填し、かつこの補強材2と混在一体化されていると共に圧縮された膨張黒鉛を含む球帯状基体用の耐熱材1とを具備している球帯状基体43は、球帯状基体用の耐熱材1と球帯状基体用の補強材2とが互いに圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成されていると共に、露出した球帯状基体43の円筒内面39及び大径側の環状端面41は、球帯状基体用の耐熱材1からなる面46と、面46と面一となっていると共に球帯状基体用の補強材2からなる面47とを含んでおり、面46と面47とは、円筒内面39及び環状端面41において混在一体化されており、面47は、円筒内面39及び環状端面41において面46に対して点在しており、外層44は、膨張黒鉛を含む外層用の耐熱材14と金網からなる外層用の補強材15とが圧縮されて補強材15の金網の網目にに耐熱材14が充填されて当該耐熱材14と補強材15とが混在一体化されてなり、外層44の外表面48は、外層用の補強材15からなる面49と外層用の耐熱材14からなる面50とが混在した平滑な面51に形成されている。
【0056】
また、予備円筒成形体30aを使用して作製された球帯状シール体45aにおいては、図3及び図4に示すように、金網からなる球帯状基体用の補強材2と補強材2の金網の網目を充填し、かつこの補強材2と混在一体化されていると共に圧縮された膨張黒鉛を含む球帯状基体用の耐熱材1とを具備している球帯状基体43は、球帯状基体用の耐熱材1と球帯状基体用の補強材2とが互いに圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成されていると共に、露出した球帯状基体43の円筒内面39及び大径側の環状端面41は、球帯状基体用の耐熱材1からなる面46と、面46と面一となっていると共に球帯状基体用の補強材2からなる面47とを含んでおり、面46と面47とは、円筒内面39及び環状端面41において混在一体化されており、面47は、円筒内面39及び環状端面41において面46に対して点在しており、外層44は、膨張黒鉛を含む外層用の耐熱材14と、被覆層22の潤滑組成物からなる固体潤滑剤52と、金網からなる外層用の補強材15とが圧縮されて補強材15の金網の網目に固体潤滑剤52及び耐熱材14が充填されて当該固体潤滑剤52及び耐熱材14と補強材15とが混在一体化されてなり、該外層44の外表面48は、外層用の補強材15からなる面49と固体潤滑剤52からなる面53とが混在した平滑な面54に形成されている。
【0057】
球帯状シール体45及び45aにおいて、球帯状基体43の円筒内面39での球帯状基体用の補強材2からなる面47の面積割合は、複合シート材11の一方の表面12において、球帯状基体用の補強材2からなる面9が露出する面積割合である5〜40%となり、また部分凸球面状面40の大径側の環状端面41での球帯状基体用の補強材2からなる面47の面積割合は、複合シート材11を形成する球帯状基体用の金網からなる補強材2の両側に形成される球帯状基体用の耐熱材1が充填されない部分10の幅を調整することによって、5〜40%に適宜調整することが可能となる。
【0058】
球帯状シール体45又は45aは、図30又は図31に示す排気管球面継手に組込まれて使用される。すなわち、図30に示す排気管球面継手において、エンジン側に連結された上流側排気管100の外周面には、管端部101を残して鋳物製のフランジ200が立設されており、管端部101には、球帯状シール体45又は45aが貫通孔38を規定する円筒内面39において嵌合されており、大径側の環状端面41において球帯状シール体45又は45aがフランジ200に当接されて着座せしめられており、上流側排気管100と対峙して配されていると共にマフラ側に連結された下流側排気管300には、凹球面部302と凹球面部302に連接されたフランジ部303とを一体に備えた径拡大部301が固着されており、凹球面部302の内面304が球帯状シール体45又は45aの外層44の外表面48における補強材15からなる面49と外層用の耐熱材14からなる面50とが混在した平滑な面51に、あるいは補強材15からなる面49と固体潤滑剤52からなる面53とが混在した平滑な面54に摺動自在に接している。
【0059】
図31は、図30に示す排気管球面継手において、上流側排気管100の外周面に、管端部を残して立設された鋳物製のフランジ200に代えて、上流排気管100にバルジ加工を施して形成した板金製のフランジ200と該フランジ200に当接して上流側排気管100の外周面と直交して配されたフランジ200aとからなるフランジを備えた排気管球面継手を示すもので、他の構成は図30に示す排気管球面継手と同様である。
【0060】
図30又は図31に示す排気管球面継手において、一端がフランジ200又は200aに固定され、他端が径拡大部301のフランジ部303を挿通して配された一対のボルト400とボルト400の膨大頭部及びフランジ部303の間に配された一対のコイルバネ500とにより、下流側排気管300には、常時、上流側排気管100方向にバネ力が付勢されている。そして、排気管球面継手は、上、下流側排気管100、300に生じる相対角変位に対しては、球帯状シール体45又は45aの外表面の平滑な面51又は54と下流側排気管300の端部に形成された径拡大部301の凹球面部302の内面304との摺接でこれを許容するように構成されている。
【実施例】
【0061】
実施例1
球帯状基体用の耐熱材として、密度0.3Mg/m、厚さ1.35mmを有する膨張黒鉛シート(耐熱材I)を準備した。
【0062】
球帯状基体用の補強材として、線径0.28mmのオーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)を一本使用して網目の目幅が縦4mm、横5mmの円筒状編組金網を連続的に編むと共に該円筒状編組金網の二つの層間としての内面に前記球帯状基体用の耐熱材を連続的に挿入し、該耐熱材の挿入開始端から該耐熱材を挿入した補強材を、円筒ローラと外周面に軸方向に沿って複数個の環状凹溝を有するローラとの隙間(隙間Δ1は0.50mmとした。)に供給して該耐熱材の厚さ方向に加圧し、さらに別の一対の円筒ローラ間の隙間(隙間Δ2は0.45mmとした。)に供給し、加圧して球帯状基体用の補強材の金網の網目に球帯状基体用の耐熱材を密に充填すると共に該球帯状基体用の耐熱材中に球帯状基体用の補強材の一部が該耐熱材の表面に露出し、その他の部分が埋設するように互いに圧着して、球帯状基体用の耐熱材からなる面と球帯状基体用の補強材からなる面とを面一に形成すると共に耐熱材からなる面と補強材からなる面とが点在して露出した扁平状の複合シート材を作製した。この複合シート材において、複合シート材の一方の表面で耐熱材の表面と共に露出する補強材からなる面の面積割合をキーエンス社製の画像測定カメラCV−5000を用いて画像測定したところ、当該面積割合は26.4%であった。また、複合シート材を形成する補強材の幅(46.8mm)方向の両側に耐熱材が充填されない部分が生じ、耐熱材が充填されない部分の片側の幅は1.9mmであった。
【0063】
該扁平状の複合シート材を、球帯状基体用の耐熱材からなる面と補強材からなる面とが面一となっていると共に耐熱材からなる面と補強材からなる面とが露出した表面を重ね合わせるように円筒状に数回捲回して筒状母材を形成した。
【0064】
金属細線として前記球帯状基体用の補強材と同様の線径0.28mmのオーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)を一本使用して網目の目幅が縦3.5mm、横2.5mmの円筒状編組金網を連続的に編むと共に該円筒状編組金網の二つの層間としての内面に、密度1.12Mg/m、厚さ0.38mmの膨張黒鉛シート(耐熱材I)からなる外層用の耐熱材を連続的に挿入し、該耐熱材の挿入開始端から該耐熱材を挿入した補強材を、平滑な外周面を有する一対の円筒ローラ間の隙間(隙間Δ3は0.6mmとした。)に供給して該耐熱材の厚さ方向に加圧し、外層用の補強材の金網の網目に外層用の耐熱材を充填すると共に該補強材の一部が該耐熱材からなる表面と共に露出した扁平状の外層形成部材を形成した。
【0065】
前記筒状母材の外周面に前記外層形成部材を捲回し、予備円筒成形体を作製した。この予備円筒成形体を図28に示す金型の段付きコアに挿入し、該予備円筒成形体を金型の中空部に位置させた。
【0066】
金型の中空部に配した予備円筒成形体をコア軸方向に294N/mm(3トン/cm)の圧力で圧縮成形し、中央部に貫通孔を有すると共に円筒内面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた球帯状シール体を得た。
【0067】
得られた球帯状シール体において、球帯状基体は、球帯状基体用の耐熱材と球帯状基体用の補強材とが互いに圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成されていると共に、該球帯状基体の円筒内面及び大径側の環状端面は、球帯状基体用の耐熱材からなる面と球帯状基体用の耐熱材からなる面と面一となっていると共に球帯状基体用の補強材からなる面とを含んでおり、当該耐熱材からなる面と補強材からなる面とは、球帯状基体の円筒内面及び大径側の環状端面において混在一体化されており、補強材からなる面は、球帯状基体の円筒内面及び大径側の環状端面において耐熱材からなる面に対して点在しており、外層は、外層用の耐熱材と外層用の補強材とが圧縮されて補強材の金網の網目に耐熱材が充填されて当該耐熱材と補強材とが混在一体化されてなり、該外層の外表面は、外層用の補強材からなる面と外層用の耐熱材からなる面とが混在した平滑な面に形成されている。
【0068】
球帯状基体の部分凸球面状面の大径側の環状端面において、耐熱材からなる面と共に露出する補強材からなる面の面積割合をキーエンス社製の画像測定カメラCV−5000を用いて画像測定したところ、23.2%であった。また、球帯状基体の円筒内面において、補強材からなる面の面積割合は、補強材からなる面が複合シート材の一方の表面で耐熱材からなる面と共に露出する面積割合(26.4%)となっていることを確認した。
【0069】
実施例2
球帯状基体用の耐熱材として、密度0.5Mg/m、厚さ1.35mmを有する膨張黒鉛シート(耐熱材I)を準備した。
【0070】
球帯状基体用の補強材として、線径0.28mmのオーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)を一本使用して網目の目幅が縦4mm、横5mmの円筒状編組金網を連続的に編むと共に該円筒状編組金網の二つの層間としての内面に前記球帯状基体用の耐熱材を連続的に挿入し、該耐熱材の挿入開始端から該耐熱材を挿入した補強材を、円筒ローラと外周面に軸方向に沿って複数個の環状凹溝を有するローラとの隙間(隙間Δ1は0.50mmとした。)に供給して該耐熱材の厚さ方向に加圧し、さらに別の一対の円筒ローラ間の隙間(隙間Δ2は0.45mmとした。)に供給し、加圧して球帯状基体用の補強材の金網の網目に球帯状基体用の耐熱材を密に充填すると共に該球帯状基体用の耐熱材中に球帯状基体用の補強材の一部が該耐熱材の表面に露出し、その他の部分が埋設するように互いに圧着して、球帯状基体用の耐熱材からなる面と球帯状基体用の補強材からなる面とを面一に形成すると共に耐熱材からなる面と補強材からなる面とが点在して露出した扁平状の複合シート材を作製した。この複合シート材において、複合シート材の一方の表面で耐熱材の表面と共に露出する補強材からなる面の面積割合をキーエンス社製の画像測定カメラCV−5000を用いて画像測定したところ、当該面積割合は25.7%であった。また、複合シート材を形成する補強材の幅(47mm)方向の両側に耐熱材が充填されない部分を生じ、耐熱材が充填されない部分の片側の幅は片側1.7mmであった。
【0071】
以下、前記実施例1と同様の方法で球帯状シール体を作製した。作製した球帯状シール体において、球帯状基体は、球帯状基体用の耐熱材と球帯状基体用の補強材とが互いに圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成されていると共に、該球帯状基体の円筒内面及び大径側の環状端面は、球帯状基体用の耐熱材からなる面と球帯状基体用の耐熱材からなる面と面一となっていると共に球帯状基体用の補強材からなる面とを含んでおり、当該耐熱材からなる面と補強材からなる面とは、球帯状基体の円筒内面及び大径側の環状端面において混在一体化されており、外層は、外層用の耐熱材と外層用の補強材とが圧縮されて補強材の金網の網目に耐熱材が充填されて当該耐熱材と補強材とが混在一体化されてなり、該外層の外表面は、外層用の補強材からなる面と外層用の耐熱材からなる面とが混在した平滑な面に形成されている。
【0072】
球帯状基体の部分凸球面状面の大径側の環状端面において、耐熱材からなる面と共に露出する補強材からなる面の面積割合をキーエンス社製の画像測定カメラCV−5000を用いて画像測定したところ、20.3%であった。また、球帯状基体の円筒内面において、補強材からなる面の面積割合は、補強材からなる面が複合シート材の一方の表面で耐熱材からなる面と共に露出する面積割合(25.7%)となっていることを確認した。
【0073】
実施例3
球帯状基体用の耐熱材として、密度0.5Mg/m、厚さ1.35mmを有し、燐酸塩として第一燐酸アルミニウムを4質量%含有する膨張黒鉛シート(耐熱材II)を準備した。
【0074】
球帯状基体用の補強材として、線径0.28mmのオーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)を一本使用して網目の目幅が縦3.5mm、横2.5mmの円筒状編組金網を連続的に編むと共に該円筒状編組金網の二つの層間としての内面に前記球帯状基体用の耐熱材を連続的に挿入し、該耐熱材の挿入開始端から該耐熱材を挿入した補強材を、円筒ローラと外周面に軸方向に沿って複数個の環状凹溝を有するローラとの隙間(隙間Δ1は0.50mmとした。)に供給して該耐熱材の厚さ方向に加圧し、さらに別の一対の円筒ローラ間の隙間(隙間Δ2は0.45mmとした。)に供給し、加圧して球帯状基体用の補強材の金網の網目に球帯状基体用の耐熱材を密に充填すると共に該球帯状基体用の耐熱材中に球帯状基体用の補強材の一部が該耐熱材の表面に露出し、その他の部分が埋設するように互いに圧着して、球帯状基体用の耐熱材からなる面と球帯状基体用の補強材からなる面とを面一に形成すると共に耐熱材からなる面と補強材からなる面とが点在して露出した扁平状の複合シート材を作製した。この複合シート材において、複合シート材の一方の表面で耐熱材の表面と共に露出する補強材からなる面の面積割合をキーエンス社製の画像測定カメラCV−5000を用いて画像測定したところ、当該面積割合は26.7%であった。また、複合シート材を形成する補強材の幅(48.3mm)方向の両側に耐熱材が充填されない部分を生じ、耐熱材が充填されない部分の片側の幅は片側2.8mmであった。
【0075】
該扁平状の複合シート材を、球帯状基体用の耐熱材からなる面と補強材からなる面とが面一となっていると共に耐熱材からなる面と補強材からなる面とが露出した表面を重ね合わせるように円筒状に数回捲回して筒状母材を形成した。
【0076】
金属細線として前記球帯状基体用の補強材と同様の線径0.28mmのオーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)を一本使用して網目の目幅が縦3.5mm、横2.5mmの円筒状編組金網を連続的に編むと共に該円筒状編組金網の二つの層間としての内面に、密度1.12Mg/m、厚さ0.38mmを有し、球帯状基体用の耐熱材と同様の膨張黒鉛シート(耐熱材II)からなる外層用の耐熱材を連続的に挿入し、該耐熱材の挿入開始端から該耐熱材を挿入した補強材を、平滑な外周面を有する一対の円筒ローラ間の隙間(隙間Δ3は0.6mmとした。)に供給して該耐熱材の厚さ方向に加圧し、外層用の補強材の金網の網目に外層用の耐熱材を充填すると共に該補強材の一部が該耐熱材からなる面と共に露出した扁平状の外層形成部材を形成した。
【0077】
前記筒状母材の外周面に前記外層形成部材を捲回し、予備円筒成形体を作製した。この予備円筒成形体を図28に示す金型の段付きコアに挿入し、該予備円筒成形体を金型の中空部に位置させた。
【0078】
以下、前記実施例1と同様の方法で球帯状シール体を作製した。作製した球帯状シール体において、球帯状基体は、球帯状基体用の耐熱材と球帯状基体用の補強材とが互いに圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成されていると共に、該球帯状基体の円筒内面及び大径側の環状端面は、該球帯状基体用の耐熱材からなる面と球帯状基体用の耐熱材からなる面と面一となっていると共に球帯状基体用の補強材からなる面とを含んでおり、当該耐熱材からなる面と補強材からなる面とは、球帯状基体の円筒内面及び大径側の環状端面において混在一体化されており、外層は、外層用の耐熱材と外層用の補強材とが圧縮されて補強材の金網の網目に耐熱材が充填されて当該耐熱材と補強材とが混在一体化されてなり、該外層の外表面は、外層用の補強材からなる面と外層用の耐熱材からなる面とが混在した平滑な面に形成されている。
【0079】
球帯状基体の部分凸球面状面の大径側の環状端面において、耐熱材からなる面と共に露出する補強材からなる面の面積割合をキーエンス社製の画像測定カメラCV−5000を用いて画像測定したところ、35.9%であった。また、球帯状基体の円筒内面において、補強材からなる面の面積割合は、補強材からなる面が複合シート材の一方の表面で耐熱材からなる面と共に露出する面積割合(26.7%)となっていることを確認した。
【0080】
実施例4
球帯状基体用の耐熱材として、密度0.5Mg/m、厚さ1.40mmを有し、燐酸塩として第一燐酸アルミニウムを4質量%及び五酸化燐を1質量%含有する膨張黒鉛シート(耐熱材III)を準備した。
【0081】
球帯状基体用の補強材として、線径0.28mmのオーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)を一本使用して網目の目幅が縦3.5mm、横2.5mmの円筒状編組金網を連続的に編むと共に該円筒状編組金網の二つの層間としての内面に前記球帯状基体用の耐熱材を連続的に挿入し、該耐熱材の挿入開始端から該耐熱材を挿入した補強材を、円筒ローラと外周面に軸方向に沿って複数個の環状凹溝を有するローラとの隙間(隙間Δ1は0.50mmとした。)に供給して該耐熱材の厚さ方向に加圧し、さらに別の一対の円筒ローラ間の隙間(隙間Δ2は0.45mmとした。)に供給し、加圧して球帯状基体用の補強材の金網の網目に球帯状基体用の耐熱材を密に充填すると共に該球帯状基体用の耐熱材中に球帯状基体用の補強材の一部が該耐熱材の表面に露出し、その他の部分が埋設するように互いに圧着して、球帯状基体用の耐熱材からなる面と球帯状基体用の補強材からなる面とを面一に形成すると共に耐熱材からなる面と補強材からなる面とが点在して露出した扁平状の複合シート材を作製した。この複合シート材において、複合シート材の一方の表面で耐熱材の表面と共に露出する補強材からなる面の面積割合をキーエンス社製の画像測定カメラCV−5000を用いて画像測定したところ、当該面積割合は26.6%であった。また、複合シート材を形成する補強材の幅(48mm)方向の両側に耐熱材が充填されない部分を生じ、耐熱材が充填されない部分の片側の幅は片側1.2mmであった。
【0082】
該扁平状の複合シート材を、球帯状基体用の耐熱材からなる面と補強材からなる面とが面一となっていると共に耐熱材からなる面と補強材からなる面とが露出した表面を重ね合わせるように円筒状に数回捲回して筒状母材を形成した。
【0083】
金属細線として前記球帯状基体用の補強材と同様の線径0.28mmのオーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)を一本使用して網目の目幅が縦3.5mm、横2.5mmの円筒状編組金網を作製し、これを一対のローラ間に通して帯状金網とし、これを外層用の補強材とした。外層用の耐熱材として、密度1.12Mg/m、厚さ0.38mmを有し、球帯状基体用の耐熱材と同様の膨張黒鉛シート(耐熱材III)を用意した。
【0084】
解膠剤として作用する硝酸を含有した分散媒としての水にアルミナ水和物としてベーマイト(アルミナ一水和物:Al・HO)を分散含有した水素イオン濃度(pH)が2を呈するアルミナゾルを準備し、このアルミナゾルにh−BN粉末及びPTFE粉末を分散含有した水性ディスパージョンであって、h−BN41.5質量%とPTFE50.0質量%及びベーマイト8.5質量%を含む潤滑組成物を固形分として50質量%分散含有した水性ディスパージョン(h−BN20.7質量%とPTFE25.0質量%及びベーマイト4.3質量%)を前記外層用の耐熱材の一方の表面にローラ塗りし、乾燥して該潤滑組成物からなる固体潤滑剤の被覆層(h−BN41.5質量%とPTFE50.0質量%及びベーマイト8.5質量%)を形成した。
【0085】
固体潤滑剤の被覆層を具備した耐熱材を、外層用の補強材である帯状金網の二つの層間としての内部に挿入すると共にこれらを一対のローラ間に通して一体化し、補強材に金網の網目に耐熱材と該耐熱材の表面に形成された固体潤滑剤の被覆層とを充填して、表面に補強材からなる面と固体潤滑剤からなる面とが混在して露出した扁平状の外層形成部材を作製した。
【0086】
前記筒状母材の外周面に前記外層形成部材を、被覆層を外側にして捲回し、予備円筒成形体を作製した。以下、実施例1と同様の方法で球帯状シール体を作製した。
【0087】
作製した球帯状シール体において、球帯状基体は、球帯状基体用の耐熱材と球帯状基体用の補強材とが互いに圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成されていると共に、該球帯状基体の円筒内面及び大径側の環状端面は、該球帯状基体用の耐熱材からなる面と球帯状基体用の耐熱材からなる面と面一となっていると共に補強材からなる面とを含んでおり、当該耐熱材からなる面と補強材からなる面とは、球帯状基体の円筒内面及び大径側の環状端面において混在一体化されており、外層は、外層用の耐熱材と、h−BN41.5質量%とPTFE50.0質量%及びベーマイト8.5質量%を含む潤滑組成物からなる固体潤滑剤と、外層用の補強材とが圧縮されて補強材の金網の網目に固体潤滑剤及び耐熱材が充填されて当該固体潤滑剤及び耐熱材とが混在一体化されてなり、該外層の外表面は、外層用の補強材からなる面と固体潤滑剤からなる面とが混在した平滑な面に形成されている。
【0088】
球帯状基体の部分凸球面状面の大径側の環状端面において、耐熱材からなる面と共に露出する補強材からなる面の面積割合をキーエンス社製の画像測定カメラCV−5000を用いて画像測定したところ、9.5%であった。また、球帯状基体の円筒内面において、補強材からなる面の面積割合は、補強材からなる面が複合シート材の一方の表面で耐熱材からなる面と共に露出する面積割合(26.6%)となっていることを確認した。
【0089】
比較例
金属細線として線径0.28mmのオーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)を一本使用して網目の目幅が縦4mm、横5mmの円筒状編組金網を作製し、これを一対のローラ間に通して帯状金網とし、これを球帯状基体用の補強材とした。耐熱材として、密度1.12Mg/m、厚さ0.38mmの膨張黒鉛シートを使用した。耐熱材をうず巻き状に一周分捲回したのち、耐熱材の内側に球帯状基体用の補強材を重ね合わせ、うず巻き状に捲回して最外周に耐熱材を配して筒状母材を作製した。この筒状母材においては、耐熱材の幅方向の両端部はそれぞれ球帯状基体用の補強材の幅方向に突出(はみ出し)している。
【0090】
上記球帯状基体用の補強材と同様の金属細線を一本使用して、網目の目幅が3.5mm、横1.5mmの円筒状編組金網を作製し、これを一対のローラ間に通して帯状金網とし、これを外層用の補強材とした。
【0091】
上記球帯状基体用の耐熱材と同様の耐熱材を使用し、上記外層用の補強材の帯状金網の幅よりも小さい幅を有する耐熱材を別途準備し、これを外層用の耐熱材とした。
【0092】
外層用の耐熱材を外層用の補強材である帯状金網内に挿入すると共にこれらを一対のローラ間に通して一体化し、補強材の金網の網目に耐熱材を充填して、表面に補強材からなる面と耐熱材からなる面とが混在して露出した扁平状の外層形成部材を作製した。
【0093】
前記筒状母材の外周面に前記外層形成部材を捲回し、予備円筒成形体を作製した。この予備円筒成形体を金型の段付きコアに挿入し、該予備円筒成形体を金型の中空部に配置した。
【0094】
金型の中空部に配置した予備円筒成形体をコア軸方向に294N/mmの圧力で圧縮成形し、中央部に貫通孔を規定すると共に円筒内面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、該球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた球帯状シール体を得た。
【0095】
得られた球帯状シール体において、球帯状基体は、球帯状基体用の耐熱材と球帯状基体用の補強材とが互いに圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成されていると共に、該球帯状基体の円筒内面及び大径側の環状端面は、球帯状基体用の耐熱材が露出しており、外層は、外層用の耐熱材と金網からなる外層用の補強材とが圧縮されて補強材の金網の網目に耐熱材が充填されて当該耐熱材と補強材とが混在一体化されてなり、該外層の外表面は、補強材からなる面と耐熱材からなる面とが混在した平滑な面に形成されている。
【0096】
次に、上記した実施例1乃至実施例4及び比較例で得た球帯状シール体を図30及び31に示す排気管球面継手に組み込み、摩擦異音の発生の有無及びガス漏れ量について試験した結果を説明する。
【0097】
<摩擦異音の発生の有無について>
試験条件
コイルバネによる押圧力(スプリングセットフォース)760N
回転角 ±0.05° ±0.1° ±0.2° ±0.3° ±0.5°
加振周波数 20Hz
温度(図30及び図31に示す凹球面部302の外表面温度) 室温(25℃)、200℃〜500℃までは100℃ごとに上昇
試験時間 8時間を1サイクルとして3サイクル実施
フランジ材質 (1)鋳物製フランジ(図30に示す排気管球面継手のフランジ200)
(2)板金製フランジ(図31に示す排気管球面継手のフランジ200)

相手材(図30及び図31に示す径拡大部301の材質) SUS409
【0098】
<試験方法>
図30又は図31に示す排気管球面継手において、上流側排気管100を固定すると共に、球帯状シール体45又は45aの外層44の平滑な面51又は54と該面51又は54が摺動自在に接触する径拡大部の凹球面部302とを固定し、下流側排気管200を管軸回りに揺動回転させることにより、球帯状シール体45又は45aの部分凸球面状面40の大径側の環状端面41と上流側排気管100に立設されたフランジ200との間でのみ揺動回転させ、当該間の摺動部位での摩擦異常音の発生の有無を確認する。摩擦異常音の発生の有無の確認は、室温、200℃、300℃、400℃及び500℃の5回行った。
【0099】
<摩擦異常音の判定レベル>
記号:0 摩擦異常音の発生なし。
記号:0.5 集音パイプで摩擦異常音の発生を確認できる。
記号:1 排気管球面継手の摺動部位から約0.2m離れた位置で摩擦異常音の発
生を確認できる。
記号:1.5 排気管球面継手の摺動部位から約0.5m離れた位置で摩擦異常音の発
生を確認できる。
記号:2 排気管球面継手の摺動部位から約1m離れた位置で摩擦異常音の発生を
確認できる。
記号:2.5 排気管球面継手の摺動部位から約2m離れた位置で摩擦異常音の発生を
確認できる。
記号:3 排気管球面継手の摺動部位から約3m離れた位置で摩擦異常音の発生を
確認できる。
記号:3.5 排気管球面継手の摺動部位から約5m離れた位置で摩擦異常音の発生を
確認できる。
記号:4 排気管球面継手の摺動部位から約10m離れた位置で摩擦異常音の発生
を確認できる。
記号:4.5 排気管球面継手の摺動部位から約15m離れた位置で摩擦異常音の発生
を確認できる。
記号:5 排気管球面継手の摺動部位から約20m離れた位置で摩擦異常音の発生
を確認できる。
以上の判定レベルの総合判定において、記号:0から記号:2.5までを摩擦異常音の発生なしと判定し、記号3から記号5までを摩擦異常音の発生ありと判定した。
【0100】
<ガス漏れ量の試験条件及び試験方法>
<試験条件>
コイルばねによる押圧力(スプリングセットフォース):760N
加振角度:±3°
加振周波数(揺動速度):12Hz
温度(図29及び図30に示す凹球面部302の外表面温度):室温(25℃)〜500℃
試験時間 8時間を1サイクルとして3サイクル実施
相手材(図30及び図31に示す径拡大部301の材質) SUS409
【0101】
<試験方法>
室温(25℃)において12Hzの加振周波数で±3°の揺動運動を継続しながら温度を500℃まで昇温し、3サイクル(24時間後)経過した時点でのガス漏れ量(l(リットル)/30sec)と試験前のガス漏れ量とを測定した。
【0102】
<ガス漏れ量の測定方法>
図30又は図31に示す排気管球面継手の一方の上流側排気管100の開口部を閉塞し、他方の下流側排気管200側から、10kPa(0.1kgf/cm)の圧力で乾燥空気を流入し、環状端面41と上流側排気管100に立設されたフランジ200との接触部からのガス漏れ量を流量計にて、(1)試験初期(試験開始前)及び試験後の2回測定した。
【0103】
試験結果を表1ないし表3に示す。
【0104】
【表1】


表中の「露出面積率」は、球帯状シール体の部分凸球面状面の大径側の環状端面において、補強材からなる面の面積割合であり、回転角のaは、板金製のフランジ、bは鋳物製のフランジであり、以下の表2乃至表5においても同様である。
【0105】
【表2】

【0106】
【表3】

【0107】
【表4】

【0108】
【表5】

【0109】
表1乃至表5に示す試験結果から、実施例1乃至実施例4からなる球帯状シール体は、部分凸球面状面の大径側の環状端面と排気管球面継手の上流側排気管に立設されたフランジ(鋳物製及び板金製)との間の回転摺動において、鋳物製及び板金製のフランジの相違による性能の差はほとんどなく、いずれも試験時間を通して摩擦異常音の発生はなく(判定レベル記号2以下)、ガス漏れ量においても優れていることが確認された。一方、比較例からなる球帯状シール体においては、部分凸球面状面の大径側の環状端面と排気管球面継手の上流側排気管に立設されたフランジ(鋳物製及び板金製)との間の回転摺動において、試験時間を通して判定レベル記号3以上を示し、摩擦異常音の発生が確認された。また、ガス漏れ量においても、試験後の漏洩量が大幅に増大していることが確認された。
【0110】
なお、実施例3において、第一燐酸アルミニウム(燐酸塩)を含有した耐熱材を使用した球帯状シール体の耐熱性及び耐酸化抑制作用による効果、また実施例4において、第一燐酸アルミニウム(燐酸塩)及び五酸化燐を含有した耐熱材を使用し、外層に固体潤滑剤の被覆層を備えた球帯状シール体の耐熱性及び耐酸化抑制作用による効果並びに外層での摺動性の向上については、上記試験では直接的には関係してないが、実際の製品としての球帯状シール体としては重要な要素となるものである。
【0111】
以上説明したように、本発明の球帯状シール体は、部分凸球面状の大径側の環状端面に、補強材からなる面が点在して露出しているので、該球帯状シール体の円筒内面と球帯状シール体が配置される排気管の外面との間の一体性が失われた状態で捩じり方向及びせん断方向の力が入力されて球帯状シール体の円筒内面において排気管の管軸回りの回転が生じても、部分凸球面状の大径側の環状端面において耐熱材からなる面と共に露出して当該耐熱材からなる面と面一とされて点在した補強材からなる面が当該環状端面においてフランジと常に摺接するので、フランジとの間にスティックスリップ現象を生じることなく、当該スティックスリップ現象に起因する摩擦異常音を発生させることがない。
【0112】
また、製造工程の扁平状の複合シート材において、円筒状に編まれた編組金網を径方向に圧縮することによって形成される球帯状基体用の補強材である帯状金網の幅方向の両側(耳部)での球帯状基体用の耐熱材である膨張黒鉛が充填されない部分の幅を調整することによって、部分凸球面状の大径側の環状端面において露出した補強材からなる面の面積割合の多少を調整することができる。
【符号の説明】
【0113】
1 球帯状基体用の耐熱材
2 球帯状基体用の補強材
11 複合シート材
13 筒状母材
14 外層用の耐熱材
15 外層用の補強材
20 外層形成部材
30 予備円筒成形体
37 金型
38 貫通孔
39 円筒内面
40 部分凸球面状面
41 大径側の環状端面
42 小径側の環状端面
43 球帯状基体
44 外層
45、45a 球帯状シール体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒内面、部分凸球面状面並びに部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面により規定された球帯状基体と、この球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えた、排気管継手に用いられる球帯状シール体であって、球帯状基体は、金網からなる球帯状基体用の補強材と、この補強材の金網の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されていると共に圧縮された膨張黒鉛を含む球帯状基体用の耐熱材とを具備しており、該球帯状基体の円筒内面及び部分凸球面状面の大径側の環状端面は、球帯状基体用の耐熱材からなる面と、当該耐熱材からなる面と面一となっていると共に球帯状基体用の補強材からなる面とを含んでおり、球帯状基体用の耐熱材からなる面及び球帯状基体用の補強材からなる面は、該球帯状基体の円筒内面及び部分凸球面状面の大径側の環状端面において混在一体化されており、球帯状基体用の補強材からなる面は、該球帯状基体の円筒内面及び部分凸球面状面の大径側の環状端面において球帯状基体用の耐熱材からなる面に対して点在していることを特徴とする球帯状シール体。
【請求項2】
部分凸球面状面の大径側の環状端面において、球帯状基体用の補強材からなる前記面は、5〜40%の面積割合をもって点在している請求項1に記載の球帯状シール体。
【請求項3】
円筒内面において、球帯状基体用の補強材からなる前記面は、5〜40%の面積割合をもって点在している請求項1又は2に記載の球帯状シール体。
【請求項4】
外層は、膨張黒鉛を含む外層用の耐熱材と金網からなる外層用の補強材とが圧縮されて外層用の補強材の金網の網目に外層用の耐熱材が充填されて当該耐熱材と補強材とが混在一体化されてなり、該外層の外表面は、外層用の補強材からなる面と外層用の耐熱材からなる面とが混在した平滑な面に形成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の球帯状シール体。
【請求項5】
外層は、膨張黒鉛を含む外層用の耐熱材と、固体潤滑剤と、金網からなる外層用の補強材とが圧縮されて外層用の補強材の金網の網目に固体潤滑剤及び外層用の耐熱材が充填されて当該固体潤滑剤及び耐熱材と外層用の補強材とが混在一体化されてなり、該外層の外表面は、外層用の補強材からなる面と固体潤滑剤からなる面とが混在した平滑な面に形成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の球帯状シール体。
【請求項6】
固体潤滑剤は、六方晶窒化硼素23〜57質量%、アルミナ水和物5〜15質量%及び四ふっ化樹脂33〜67質量%を含む潤滑組成物からなる請求項5に記載の球帯状シール体。
【請求項7】
球帯状基体用の耐熱材及び外層用の耐熱材は、燐酸塩を1.0〜16.0質量%と膨張黒鉛とを含んでいる請求項1から6のいずれか一項に記載の球帯状シール体。
【請求項8】
球帯状基体用の耐熱材及び外層用の耐熱材は、更に燐酸を0.05〜5.0質量%含んでいる請求項7に記載の球帯状シール体。
【請求項9】
円筒内面、部分凸球面状面並びに部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面によって規定される球帯状基体と、この球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えている球帯状シール体の製造方法であって、
(a)密度αが0.3〜0.9Mg/mの膨張黒鉛シートからなる球帯状基体用の耐熱材を準備する工程と、
(b)金属細線を織ったり編んだりして得られる金網からなる球帯状基体用の補強材の二つの層間に該球帯状基体用の耐熱材を挿入し、当該耐熱材を挿入した補強材を耐熱材の厚さ方向に加圧し、球帯状基体用の補強材の金網の網目に球帯状基体用の耐熱材を密に充填すると共に球帯状基体用の補強材の一部を露出させて耐熱材中に当該補強材を埋設するように互いに圧着して、球帯状基体用の耐熱材と球帯状基体用の補強材とが圧縮されていると共に球帯状基体用の耐熱材からなる面と球帯状基体用の補強材からなる面とが面一となっている表面と該補強材の両側において耐熱材が充填されていない部分とを有している扁平状の複合シート材を形成する工程と、
(c)扁平状の複合シート材を円筒状に数回捲回して筒状母材を形成する工程と、
(d)密度αが1.0〜1.5Mg/mの膨張黒鉛シートからなる外層用の耐熱材を準備する工程と、
(e)金属細線を織ったり編んだりして得られる金網からなる二つの層を有した外層用の補強材を準備し、この補強材の二つの層間に外層用の耐熱材を挿入し、当該耐熱材を挿入した外層用補強材を当該耐熱材の厚さ方向に加圧し、外層用の補強材の金網の網目に外層用の耐熱材を充填して、表面に外層用の補強材からなる面と外層用の耐熱材からなる面とが混在して露出した扁平状の外層形成部材を形成する工程と、
(f)前記筒状母材の外周面に前記外層形成部材を捲回して予備円筒成形体を形成する工程と、
(g)該予備円筒成形体を金型のコア外周面に挿入し、該コアを金型内に配置すると共に該金型内において予備円筒成形体をコア軸方向に圧縮成形する工程と、
を具備しており、球帯状基体は、金網からなる球帯状基体用の補強材と、この補強材の金網の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されていると共に圧縮された膨張黒鉛を含む球帯状基体用の耐熱材とを具備しており、該球帯状基体の円筒内面及び部分凸球面状面の大径側の環状端面は、球帯状基体用の耐熱材からなる面と、当該耐熱材からなる面と面一となっていると共に球帯状基体用の補強材からなる面とを含んでおり、球帯状基体用の耐熱材からなる面及び球帯状基体用の補強材からなる面は、該球帯状基体の円筒内面及び部分凸球面状面の大径側の環状端面において混在一体化されており、球帯状基体用の補強材からなる面は、該球帯状基体の円筒内面及び部分凸球面状面の大径側の環状端面において球帯状基体用の耐熱材からなる面に対して点在しており、外層は、膨張黒鉛を含む外層用の耐熱材と金網からなる外層用の補強材とが圧縮されて外層用の補強材の金網の網目に外層用の耐熱材が充填されて当該耐熱材と補強材とが混在一体化されてなり、該外層の外表面は、外層用の補強材からなる面と外層用の耐熱材からなる面とが混在した平滑な面に形成されていることを特徴とする球帯状シール体の製造方法。
【請求項10】
円筒内面、部分凸球面状面並びに部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面によって規定される球帯状基体と、この球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えている球帯状シール体の製造方法であって、
(a)密度αが0.3〜0.6Mg/mの膨張黒鉛シートからなる球帯状基体用の耐熱材を準備する工程と、
(b)金属細線を織ったり編んだりして得られる金網からなる球帯状基体用の補強材の二つの層間に該球帯状基体用の耐熱材を挿入し、当該耐熱材を挿入した補強材を耐熱材の厚さ方向に加圧し、球帯状基体用の補強材の金網の網目に球帯状基体用の耐熱材を密に充填すると共に球帯状基体用の補強材の一部を露出させて耐熱材中に当該補強材を埋設するように互いに圧着して、球帯状基体用の耐熱材と球帯状基体用の補強材とが圧縮されていると共に球帯状基体用の耐熱材からなる面と補強材からなる面とが面一となっている表面と該補強材の両側において耐熱材が充填されていない部分とを有している扁平状の複合シート材を形成する工程と、
(c)扁平状の複合シート材を耐熱材からなる面と補強材からなる面とが面一となっている表面を外側にして円筒状に数回捲回して筒状母材を形成する工程と、
(d)密度αが1.0〜1.5Mg/mの膨張黒鉛シートからなる外層用の耐熱材を準備し、該外層用の耐熱材の一方の表面に固体潤滑剤の水性ディスパージョンを適用し、乾燥して該外層用の耐熱材の表面に固体潤滑剤の被覆層を形成する工程と、
(e)金属細線を織ったり編んだりして得られる金網からなる二つに層を有した外層用の補強材を準備し、この補強材の二つの層間に、固体潤滑剤の被覆層が形成された耐熱材を挿入し、当該耐熱材を挿入した外層用の補強材を加圧し、外層用の補強材の金網の網目に外層用の耐熱材と該耐熱材の表面に形成された固体潤滑剤の被覆層とを充填して、表面に外層用の補強材からなる面と固体潤滑剤の被覆層からなる面とが混在して露出した扁平状の外層形成部材を形成する工程と、
(f)前記筒状母材の外周面に前記外層形成部材をその固体潤滑剤の被覆層を外側にして捲回して予備円筒成形体を形成する工程と、
(g)該予備円筒成形体を金型のコア外周面に挿入し、該コアを金型内に配置すると共に該金型内において予備円筒成形体をコア軸方向に圧縮成形する工程と、
を具備しており、球帯状基体は、金網からなる球帯状基体用の補強材と、この補強材の金網の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されていると共に圧縮された膨張黒鉛を含む球帯状基体用の耐熱材とを具備しており、球帯状基体用の耐熱材からなる面及び球帯状基体用の補強材からなる面は、該球帯状基体の円筒内面及び部分凸球面状面の大径側の環状端面において混在一体化されており、球帯状基体用の補強材からなる面は、該球帯状基体の円筒内面及び部分凸球面状面の大径側の環状端面において球帯状基体用の耐熱材からなる面に対して点在しており、外層は、膨張黒鉛を含む外層用の耐熱材と、固体潤滑剤と、金網からなる外層用の補強材とが圧縮されて外層用の補強材の網目に固体潤滑剤及び外層用の耐熱材が充填されて当該固体潤滑剤及び外層用の耐熱材と外層用の補強材とが混在一体化されてなり、該外層の外表面は、外層用の補強材からなる面と固体潤滑剤からなる面とが混在した平滑な面に形成されていることを特徴とする球帯状シール体の製造方法。
【請求項11】
固体潤滑剤の水性ディスパージョンは、分散媒としての酸を含有する水にアルミナ水和物粒子を分散した水素イオン濃度が2〜3を呈するアルミナゾルに、六方晶窒化硼素粉末及び四ふっ化エチレン樹脂粉末を分散含有した水性ディスパージョンであって、六方晶窒化硼素23〜57質量%、アルミナ水和物5〜15質量%及び四ふっ化エチレン樹脂33〜67質量%を含む潤滑組成物を固形分として含む水性ディスパージョンである請求項10に記載の球帯状シール体の製造方法。
【請求項12】
該球帯状基体の円筒内面において、球帯状基体用の補強材からなる前記面は、5〜40%の面積割合をもって点在している請求項9から11のいずれか一項に記載の球帯状シール体の製造方法。
【請求項13】
球帯状基体用の耐熱材及び外層用の耐熱材は、燐酸塩1.0〜16.0質量%と膨張黒鉛とを含んでいる請求項9から12のいずれか一項に記載の球帯状シール体の製造方法。
【請求項14】
球帯状基体用の耐熱材及び外層用の耐熱材は、更に燐酸を0.05〜5.0質量%含んでいる請求項13に記載の球帯状シール体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2012−107686(P2012−107686A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256336(P2010−256336)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】