説明

球根類移植機

【課題】人手によらなくても収容部から各供給カップに種芋、球根類を容易に供給できるようにした球根類などの移植機を提供すること。
【解決手段】漏斗状で、上方が開放した側壁と底面からなる上段の箱体23に人手により種芋、球根類などを供給すると、該箱体23から傾斜部20を介して下段の箱体24に転げ落ち、下段の箱体24の底面の溝部25から箱体24の出口の突出部26で回転ブラシ27で順次、桟28aで仕切られた上向き搬送路を有する第1無端ベルトコンベア28に受け渡され、次いで機体の横向きに搬送する第2無端ベルトコンベア31と該コンベア31の下側に並列配置された桟32a付のカウンタベルト32を経由して植付体30に供給する球根類移植機である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪等の走行推進体で機体を推進させながら種芋や球根等を植え付ける球根類移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の苗供給カップに機体の走行と共に歩行する作業者が一株づつ供給することにより、苗供給カップからその下方にある植付体等の苗植付装置に苗を供給して圃場に苗を植え付けていくようにした移植機に改良を加えることによって、種芋や球根等でも容易に移植ができるようにした移植機が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−51613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1記載の移植機は、種芋類供給部として複数の供給カップを回転テーブル上で搬送させ、それぞれ所定の位置でそれぞれの供給カップから種芋や球根等を植付体に受け渡し供給する構成とし、前記回転テーブル上を回転する各供給カップには種芋や球根等を収容する収容部から人手により1つずつ供給する構成になっている。
このように種芋や球根等を収容する収容部から各供給カップに人手により1つずつ供給する構成では、種芋や球根等の各供給カップへの供給に手間取り、作業性に改善の余地があった。
本発明の課題は、人手によらなくても収容部から各供給カップに種芋や球根類などを容易に供給できるようにした種芋や球根類などの移植機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は次の解決手段により解決される。
請求項1記載の発明は、種芋や球根類を供給する球根類供給装置(4)と該球根類供給装置(4)から供給される種芋や球根類を受け取った後、圃場に植え付ける球根類植付体(30)を走行部支持フレーム(14)上に設けた球根類移植機において、球根類供給装置(4)は、種芋や球根類を載置する供給部(A)と該供給部(A)から受け取った種芋や球根類を整列して搬送する整列部(B)と該整列部(B)から順次種芋や球根類を受け取る搬送部(C)とを備えたことを特徴とする球根類移植機である。
【0006】
請求項2記載の発明は、供給部(A)は、漏斗状で、上方が開放した側壁と底面からなる箱体(23,24)を上下2段に傾斜部(20)で接続した構成からなり、上段の箱体(23)に供給される球根類が重力により下段の箱体(24)に転げ落ちるように、前記箱体(23,24)と傾斜部(20)の底面は出口側に向けて水平より下向きに傾斜配置され、下段の箱体(24)の底面に溝部(25)を設け、該溝部(25)の出口を下段の箱体(24)から整列部Bに向けて突出した突出部(26)を設け、該突出部(26)は樋状部分(26a)を含む構成とし、樋状部分(26a)の凹部には回転ブラシ(27)を配置した構成を備えていることを特徴とする請求項1記載の球根類移植機である。
【0007】
請求項3記載の発明は、整列部(B)は、前記供給部(A)から受け取った球根類を1個ずつ受け取る桟(28a)で仕切られた空間を有し、上向きに傾斜した搬送路が形成される第1無端ベルトコンベア(28)を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の球根類移植機である。
【0008】
請求項4記載の発明は、搬送部(C)は、整列部(B)から受け取った球根類を1個ずつ受け取る桟を有し、機体の横向きに搬送する第2無端ベルトコンベア(31)と該第2無端ベルトコンベア(31)の下側に並列配置され、第2無端ベルトコンベア(31)から受け取った球根類を球根類植付体(30)に1個ずつ落下供給する桟(32a)を有するカウンタベルト(32)を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の球根類移植機である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、球根類移植機が、球根類供給装置(4)として種芋や球根類を載置する供給部(A)と該供給部(A)から受け取った種芋や球根類を整列して搬送する整列部(B)と該整列部(B)から順次種芋や球根類を受け取る搬送部(C)とを備えているので人手に頼らずに順次種芋や球根類の植付体(30)に供給して圃場に植え付けることができる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、球根類供給装置(4)の供給部(A)の上段の箱体(23)に人手によって供給された種芋や球根類は、傾斜底面を転がり落ちながら傾斜部(20)を経由して下段の箱体(24)の底面の溝部(25)から突出部(26)に達し、該突出部(26)で回転ブラシ(27)により順次整列部(B)に向けて排出されるので、人手による作業が不要となる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、請求項1、2記載の発明の効果に加えて、供給部(A)から搬送される種芋や球根類が整列部(B)の桟(28a)で仕切られ、上向きに傾斜した第1無端ベルトコンベア(28)で排除した種芋や球根類が整列されて搬送部(C)に向けて搬送され、供給部(A)に人手により種芋や球根類を乱雑に供給するだけでよい。
【0012】
請求項4記載の発明によれば、請求項1ないし3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、搬送部(C)が横幅方向に幅広い第2無端ベルトコンベア(31)を有するので種芋や球根類の搬送状態を監視することができ、またカウンタベルト(32)で種芋や球根類の1個ずつを球根類植付体(30)に落下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例の種芋、球根類などの移植機の側面図である。
【図2】図1の移植機の全体の概略斜視図である。
【図3】図2の球根供給装置の供給部の下段の箱体の下半分を示す斜視図(図3(a))、溝部の横断面図(図3(b))、上段の箱体の横断面図(図3(c))である。
【図4】図1の移植機の他の実施例の球根供給装置部分の側面図である。
【図5】図1の移植機の球根植付体の作動機構の要部拡大側面図である。
【図6】図5の球根植付体の作動機構のリンク機構の線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について図面と共に説明する。
本発明の球根を代表例として種芋や球根類などの移植機の一実施例の側面図を図1に示す。なお、説明を簡単にするために種芋や球根類などを単に球根ということがあり、これら種芋や球根類などに用いる部材の名称として球根類を接頭語に使用し、例えば種芋や球根類など植付体を単に球根類植付体ということがある。
【0015】
本実施例の球根類移植機は、走行装置1と操縦ハンドル2を備えた機体に昇降駆動するリンク機構3と連結して昇降動作する開閉可能なくちばし状の球根類植付体30を備えた構成としている。なお、以下の説明では球根類移植機の前進方向に向かって前側と後側をそれぞれ前と後といい、前進方向に向かって右と左をそれぞれ右と左という。
【0016】
球根類移植機は、走行装置1と操縦ハンドル2を備えた機体に昇降駆動するリンク機構3とリンク機構3に連結して昇降動作する開閉可能なくちばし状の球根類植付体30を備えているが、走行装置1は転動自在に支持した左右一対の前輪6とエンジン5の動力が伝達されて駆動回転する左右一対の後輪7とを備えている。
【0017】
エンジン5の後部には、ミッションケース8を配置し、そのミッションケース8は、その左側部からエンジン5の左側方に延びるケース部分を有し、これがエンジン5の左側部と連結している。このケース部分にエンジン5の出力軸が入り込んでミッションケース8内の伝動機構に動力が伝達する構成となっている。ミッションケース8の左右両側部に一対の伝動ケース9を回動自在に取り付け、この伝動ケース9の回動中心にミッションケース8から左右両外側方に延出させた車輪駆動軸9Aの先端が入り込んで伝動ケース9内の伝動機構(図示せず)に走行用の動力を伝達している。そして、走行用の動力は伝動ケース9内の伝動機構を介して、機体後方側に延びてその後端側側方に突出する車軸10に伝達して後輪7が駆動回転するようになっている。
【0018】
左右水平用油圧シリンダ15が機体の左側に設けられ、該左右水平用油圧シリンダ15のピストンロッド先端に上下軸心周りに回動自在に天秤杆13が取り付けられている。また、天秤杆13の連結部の右側はロッド(図示せず)に連結し、左側は伸縮作動可能な左右水平制御用油圧シリンダ15で連結している。
【0019】
畝高さ検知センサ(図示せず)の検出結果に基づいて、図示していない昇降用油圧シリンダのピストンロッドが機体後方に突出すると、天秤杆13の連結部の右側のロッド(図示せず)や左右水平制御用油圧シリンダ15も動作し、前記ロッドと左右水平制御用油圧シリンダ15にそれぞれ連結している左右のアーム(図示せず)が機体側面視で後方に回動し、これに伴い左右の伝動ケース9が下方に回動して機体が上昇する。反対に、昇降用油圧シリンダのピストンロッドが機体前方に引っ込むと、左右のアーム(図示せず)は前方に回動し、これに伴い伝動ケース9が上方に回動して、機体が下降する。
また、操縦ハンドル2の近傍に配置した操作具の人為操作によって機体を上昇或は下降させるよう作動する構成も備えている。
【0020】
さらに、前記左右水平制御用油圧シリンダ15が伸縮作動すると、前記天秤杆13が、その左右中央部の図示しない昇降用油圧シリンダのピストンロッドの先端と連結する上下軸心周りに回動して左右の伝動ケース9を互い違いに上下動させ機体を左右に傾斜させる。この左右水平制御用油圧シリンダ15は左右水平に対する機体の左右傾斜を検出するセンサ(図示せず)の検出結果に基づいて機体を左右水平になるように作動する構成にしている。
【0021】
一対の前輪6はエンジン5の下方の左右中央位置で前後方向の軸心周りに回動自在に取り付けた前輪支持フレーム16の左右両側部の下方に延びるアーム部分の下端部側方に固定した車軸17に回転自在に取り付けている。
【0022】
操縦ハンドル2はミッションケース8に前端部を固定した機体フレーム14の後端部に取り付けられている。機体フレーム14は機体の左右中央から右側に偏った位置に配置されて後方に延び、また、前後中間部から斜め後上方に延びている。操縦ハンドル2は機体フレーム14の後端部から左右後方に延びてその各後端部を操縦ハンドル2の一対のグリップ部2aとしている。操縦ハンドル2の左右のグリップ部2aは、作業者がそのグリップ部2aを楽に手で握れるように適宜な高さに設定する。なお、図例ではグリップ部2aを左右に分かれた構成としているが、操縦ハンドル2の左右の後端部を互いに左右に連結してその連結部分をグリップ部2aとしても良い。
【0023】
上下一対の平行リンク部材(昇降アーム19と副リンク20)からなるリンク機構3はミッションケース8内から球根類植付体駆動用の動力を受けて伝動する伝動機構を内装する植付伝動ケース18に装着している。図1のように植付伝動ケース18は、その前部がミッションケース8の後部に連結し、そこから斜め後ろの上方に延びている。
植付伝動ケース18内に内装された動力伝動機構によりリンク機構3が昇降駆動され、該リンク機構3の先端が球根類植付体30に連結しているのでリンク機構3により球根類植付体30を昇降させることができる。
【0024】
球根類植付体30には球根類供給装置4から球根などが1個ずつ供給されるが、該球根類供給装置4は供給部Aと整列部Bと搬送部Cとから構成される。図2に球根類供給装置4の構成を斜視図で示す。
供給部Aは漏斗状で、上方が開放した側壁と底面からなる箱体23,24を上下2段に傾斜通路21を介して接続された構成からなり、上段の箱体23に供給される球根類が重力により傾斜通路21を通って下段の箱体24に転げ落ちるように、これら箱体23,24の底面及び2つ箱体23,24を繋ぐ傾斜通路21の底面は水平よりそれぞれ出口側に向けて傾斜している。
【0025】
下段の箱体24の底部に溝部25を設け、該溝部25の出口は下段の箱体24から整列部Bに向けて突出した突出部26を設けている。該突出部26は樋状部分26aと該樋状部分26aに接続して底部の湾曲状の板だけからなる板部分26bにより構成され、樋状部分26aの凹部には回転ブラシ27が配置されている。該回転ブラシ27の回転軸27aは樋状部分26aの長手方向を横断する方向に配置されている。
【0026】
図3(a)に斜視図で供給部Aの下段の箱体24の下半分を示すが、下段の箱体24の底部の溝部25の幅は球根類1個分より少し大きい程度とし、また図3(b)に前記溝部25の横断面図を示すように、溝部25のコーナー部分は丸みを持たせることにより、球根類を1個ずつ順次、確実に搬送することができる。また、上記溝部25の出口にある突出部26の樋状部分26aに接続して底部の湾曲状の板部分26bはシュータとしての機能があり、確実に整列部Bに球根類を送り出すことができる。
【0027】
また、図3(c)に下段の箱体24の横断面図に示すように、下段の箱体24の機体進行方向の両側壁の外側に一対のコンテナ置き台45,45を配置しても良い。該コンテナ置き台45に球根類を入れたコンテナ(図示せず)を載置しておくと、球根類の植付作業途中で移植機に十分な数の球根類を載せておくことができ、植付作業を能率良く続行することができる。
なお、整列部Bと機体フレーム14との間には補強ロッド22(図1)を掛け渡している。
【0028】
さらに図2に示すように、上記突出部26の樋状部分26aの凹部内部に供給される球根類を回転ブラシ27の羽根で整列部Bに向けて掻き出す。このとき、回転ブラシ27の回転方向は球根類搬送方向の逆方向とすることで球根類を1個ずつ次の整列部Bの第1無端ベルトコンベア28上に順次供給することができる。
また、樋状部分26aに続く湾曲状板部分26bの上方には整列部Bを構成する第1無端ベルトコンベア28の端部と該ベルトコンベア駆動用の一方のローラ29が位置している。
【0029】
整列部Bを構成する第1無端ベルトコンベア28は前記突出部26の湾曲状板部分26bから上向きに傾斜配置されており、該第1無端ベルトコンベア28には球根類がすべり落ちないように桟(仕切板)28aがベルトコンベア28の進行方向に直交する方向に1個の球根類が載置できる間隔で複数個設けられている。前記桟(仕切板)28aの高さは球根類1個分とほぼ同じ高さとすることで球根類が第1無端ベルトコンベア28から確実にすべり落ちるのを防ぐことができる。また上向きの第1無端ベルトコンベア28により球根類が整列されて搬送部(C)に向けて搬送される。また、第1無端ベルトコンベア28の両側には球根類がこぼれ落ちないようにガイド板34を設ける。
【0030】
整列部Bに配置される第1無端ベルトコンベア28の上方端部の下方には搬送部Cを構成する第2無端ベルトコンベア(横ベルト)31の一方の端部(下端部)が配置され、該第2無端ベルトコンベア31の他方の端部(上端部)の下方にはカウンタベルト32が配置される。カウンタベルト32上にも、該カウンタベルト32の外側には球根類がすべり落ちないように桟(仕切板)32aがカウンタベルト32の進行方向に直交する方向に1個の球根類が載置できる間隔で複数個配置されている。
【0031】
整列部Bの第1無端ベルトコンベア28から搬送部Cの第2無端ベルトコンベア31の下端部付近で受け渡された球根類は、該第2無端ベルトコンベア31上を搬送され、その終端部からカウンタベルト32上に落下する。該カウンタベルト32上の球根類は隣接位置にある桟(仕切板)32aの間に1つずつ供給されるので、球根類はカウンタベルト32の端部から球根類植付体30に1つずつ供給されることになる。
第2無端ベルトコンベア31の終端部側を矢印A方向(上向き)に回動することができ、この場合は人手により第2無端ベルトコンベア31を経由せずにカウンタベルト32上に直接球根類を供給することができる。
【0032】
図4には整列部Bの他の実施例の構成の要部側面図を示す。この場合は、整列部Bに配置する第1の無端ベルトコンベア28’を設け、該コンベア28’の移動方向が傾斜状に向いている部分と水平状になっている部分から構成を採用してもよい。この場合は水平状ベルトコンベア部分があるために整列状態を十分監視することができる。また第1の無端ベルトコンベア28’の両側には球根類が落下しないようにガイド28b’を設ける。
【0033】
なお、図4に示す実施例では図2に示す第2無端ベルトコンベア31及びカウンタベルト32を設けないで、第1無端ベルトコンベア28’から底面の蓋が開放自在な中継カップ33を経由して球根類植付体30に球根類を1つずつ供給する。このとき、中継カップ33の底面の蓋は、球根類植付体30が上昇して中継カップ33に近接した時に連繋して開き、中継カップ33内の球根類を球根類植付体30に供給する。
【0034】
搬送部Cの第2無端ベルトコンベア(横ベルト)31は本移植機を操作する作業員の目の前で長手方向が横向きに配置されており、作業員は第2無端ベルトコンベア31上で搬送中の球根類を観察できるので、その整列状態などを確認すること、また整列し直すことも容易にできる。また第2無端ベルトコンベア31の長さは供給部Aの機体横方向の幅とほぼ同じ長さとしているので球根類供給装置4は、全体として機体上で左右横方向のバランスを保つことができる。
【0035】
上記構成からなる球根類供給装置4では、供給部Aに人手により球根類を供給しておくと、供給部Aから受け取った種芋や球根類を整列して搬送する整列部Bと該整列部Bから順次種芋や球根類を受け取る搬送部Cとを備えているので人手に頼らずに球根などを順次球根類植付体30に供給して圃場に植え付けることができる。
【0036】
また供給部Aに球根等を人手によって上段の箱体23に球根等を供給すると該球根類は傾斜面を転がり落ちながら整列部Bに達するので人手による作業が不要となり、供給部Aから搬送される球根類が1個ずつ整列部Bで整列しながら搬送部Cに搬送されるので供給部Aに人手により乱雑に供給するだけでよい。
【0037】
また、搬送部Cが横幅方向に幅広い第2無端ベルトコンベア31を有するので球根類の搬送状態を監視することができ、またカウンタベルト32で球根類の1個ずつを球根類植付体30に落下させることができる。
【0038】
球根類植付体30は、下方に向かって伸びる左右一対の球根植付用のくちばし部からなる。球根類供給装置4から落下した球根類を収納した球根類植付体30はリンク機構3によって、側面視で上下に長い略楕円形状の軌跡Tに従って下降し、圃場内で左右くちばし部を開くと球根類が圃場に植え付けられ、その後に球根類植付体30が上昇しながら左右のくちばし部が閉じる。
【0039】
このように球根植付用のくちばし部の下端部が左側方から見て反時計回りに略楕円形状の軌跡Tでそれぞれ昇降回動する。従って、作業走行しながら球根類植付体30が上記回転方向で前記軌跡Tを描くように昇降回動すると、前述のように軌跡Tの下端部で球根類植付用のくちばし部の下端が圃場の畝Uの土壌中に突入し、くちばし部は機体前後方向に開いて球根類植付体30内の球根類と肥料などを畝Uの土壌に放出する。
【0040】
また、球根類植付体30が球根類を供給する球根類供給装置4の球根類供給位置に来ると、タイミングよく球根類供給装置4のカウンタベルト32から1個の球根類を球根類植付体30の供給口に落下させることができるように球根類植付体30の略楕円形状の軌跡Tと描いて作動する作動とカウンタベルト32の移動速度を同期させる。
【0041】
球根類植付体30の作動機構の要部拡大側面図を図5に示し、前記作動機構のリンク機構3の線図を図6に示す。球根類植付体30は、その上部に形成した開口30aから球根類を受け、球根類植付体30を昇降駆動する植付伝動ケース18に前端側を連結する昇降アーム19と、この昇降アーム19の下方に並行して昇降動作しつつ球根類植付体30のホルダ30bと連結して、その姿勢を保持する副リンク20が設けられている。また、昇降アーム19と副リンク20の前端部19a,20aは連結リンク35により連結されており、前後に揺動可能に上端36aを支軸に軸支した揺動アーム36を介して前後移動可能に連結するとともに、昇降アーム19の中間部分の連結点19bを回転駆動するクランクアーム38を設ける。
【0042】
副リンク20と植付体30との連結部20cは、ホルダ30bの後部に配置してコンパクト化を図り、また、植付体30の開閉動作のための開閉レバー37を昇降アーム19との支点19cに軸支する。開閉レバー37には連結ロッド39を介して並行動作が可能な開閉アーム42を設けてクランクアーム38の連結点19bに軸支するとともに、このクランクアーム38の回転動作と同期して回転動作して副リンク20の中途部を連結点40bで支持する副クランクアーム40を設け、この副クランクアーム40と一体に開閉カム41を設け、ローラ42aを介して開閉アーム42を所定のタイミング(植付体30が畝の土中に入って苗を植え付けるタイミング)で作用し、植付体30が左右に開いて畝に苗を植え付ける。
【0043】
昇降アーム19と副リンク20は、各々の中途部がクランクアーム38と副クランクアーム40により駆動されて上下動する平行リンクとなっており、各々の後端側が植付体30に連結されて、植付体30を所定の軌跡Tで上下動させる構成であるが、各々の前端側が連結リンク35により連結されているので、該連結リンク35により昇降アーム19と副リンク20が回動部の遊びにより平行リンクの姿勢が崩れるのを防止し、昇降アーム19と副リンク20は平行リンクの姿勢を適正に維持して作動し、植付体30を所定の軌跡で上下動させて適正な苗の移植作業が行える。
【0044】
なお、連結リンク35に植付伝動ケース18側に固定したガイドピンに嵌る作動規制用の長穴を設けて、連結リンク35が適正な所定の作動をするように構成すれば、更に、昇降アーム19と副リンク20は平行リンクの姿勢を適正に維持して作動し、植付体30を所定の軌跡で上下動させて適正な苗の移植作業が行える。
【0045】
上記構成からなる球根類植付体30の作動機構は、クランクアーム38及び副クランクアーム40の回転によって上下に揺動される昇降アーム19と副リンク20により、植付体30が昇降動作と連動して左右に開閉して苗株の植付けを行う。詳細には、リンク構成線図である図6に示すように、クランクアーム38及び副クランクアーム40が回転すると、昇降アーム19及び副リンク20の前端部19a,20aが揺動アーム36により前後移動しつつ上下に揺動され、後端位置の植付体30の下端が縦長の長円状軌跡Tを描いて作動する。
なお、昇降アーム19と副リンク20、連結リンク35、クランクアーム38及び副(昇降)クランクアーム40及び揺動アーム36にて植付体30のリンク機構3が構成されている。
【0046】
植付体30の開閉動作については、昇降アーム19の支軸19cに軸支した開閉レバー37が、連結ロッド39を介して開閉アーム42と並行動作し、この開閉アーム42は、クランクアーム38と同一位相で回転動作する副クランクアーム40と一体の開閉カム41によって動作制御される。したがって、簡易な形状のカムによって開閉タイミングと開閉量の高精度の制御が可能となる。
【0047】
また、この移植機の伝動軸50には、伝動トルクを変更するカム機構43が設けられている。即ち、伝動軸50に固定されたカム43aと該カム43aに引張りバネ44aにて圧接する押圧ローラ44bと該押圧ローラ44bを揺動自在に支持するローラ支持揺動アーム44cとによって構成されている。また、カム43aは、植付体30の上昇位置での停止位置T1(図1)直前から伝動軸50にブレーキをかけて、その後、植付体30が下降する際に球根類植付体30の自重による下動慣性力を抑えるためにブレーキ力を徐々に増大しながらブレーキをかけ続け、植付体30の最下降位置(植付位置)の直前で、伝動軸50に対するブレーキをかけるのを中止し、その後、植付体30が上昇する過程では回転をアシストする形状となっている。
【0048】
従って、球根類植付体30を軌跡Tにて上下作動させる伝動軸50の伝動トルクが植付体30の上下動に合わせて変更され(植付体30が下降する際に植付体30の自重による下動慣性力を抑えるためにブレーキ力をかけ、植付体30が上昇する過程では回転をアシストする)、植付体30は所定の適正な作動速度を維持して円滑に作動し、適切な苗の移植作業が行える。また、このカム機構43にて植付体30の上昇位置での停止位置T1直前から伝動軸50にブレーキをかけるので、植付体30は植付クラッチ(図示せず)による間欠駆動の停止位置で適正に停止し、別途植付体30を停止させるブレーキ装置を設ける必要がなく、簡潔な構成で安価に構成できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の球根類移植機は、球根類に限らず、その他の野菜などの苗の植え付け用の苗移植機として利用可能性がある。
【符号の説明】
【0050】
1 走行装置 2 操縦ハンドル
3 リンク機構 4 球根類供給装置
5 エンジン 6 前輪
7 後輪 8 ミッションケース
9 伝動ケース 9A 車輪駆動軸
10 車軸 13 天秤杆
14 機体フレーム 15 左右水平用油圧シリンダ
16 前輪支持フレーム 17 車軸
18 植付伝動ケース 19 昇降アーム
20 副リンク 21 傾斜通路
22 補強ロッド 23 上段の箱体
24 下段の箱体 25 溝部
26 突出部 26a 樋状部分
26b 底部湾曲状板部分 27 回転ブラシ
28 第1無端ベルトコンベア
28a 桟(仕切板) 29 ローラ
30 球根類植付体 31 第2無端ベルトコンベア
32 カウンタベルト 32a 桟(仕切板)
33 中継カップ 34 ガイド板
35 連結リンク 36 揺動アーム
37 開閉レバー 38 クランクアーム
39 連結ロッド 40 副クランクアーム
41 開閉カム 42 開閉アーム
42a ローラ 43 カム機構
43a カム 44a 引張りバネ
44b 押圧ローラ 44c ローラ支持揺動アーム
45 コンテナ置き台 50 伝動軸
A 供給部 B 整列部
C 搬送部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種芋や球根類を供給する球根類供給装置(4)と該球根類供給装置(4)から供給される種芋や球根類を受け取った後、圃場に植え付ける球根類植付体(30)を走行部支持フレーム(14)に設けた球根類移植機において、
球根類供給装置(4)は、種芋や球根類を載置する供給部(A)と該供給部(A)から受け取った種芋や球根類を整列して搬送する整列部(B)と該整列部(B)から順次種芋や球根類を受け取る搬送部(C)とを備えたことを特徴とする球根類移植機。
【請求項2】
供給部(A)は、漏斗状で、上方が開放した側壁と底面からなる箱体(23,24)を上下2段に傾斜部(20)で接続した構成からなり、上段の箱体(23)に供給される球根類が重力により下段の箱体(24)に転げ落ちるように、前記箱体(23,24)と傾斜部(20)の底面は出口側に向けて水平より下向きに傾斜配置され、
下段の箱体(24)の底面に溝部(25)を設け、該溝部(25)の出口を下段の箱体(24)から整列部Bに向けて突出した突出部(26)を設け、該突出部(26)は樋状部分(26a)を含む構成とし、樋状部分(26a)の凹部には回転ブラシ(27)を配置した構成を備えていることを特徴とする請求項1記載の球根類移植機。
【請求項3】
整列部(B)は、前記供給部(A)から受け取った球根類を1個ずつ受け取る桟(28a)で仕切られた空間を有し、上向きに傾斜した搬送路が形成される第1無端ベルトコンベア(28)を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の球根類移植機。
【請求項4】
搬送部(C)は、整列部(B)から受け取った球根類を1個ずつ受け取る桟を有し、機体の横向きに搬送する第2無端ベルトコンベア(31)と該第2無端ベルトコンベア(31)の下側に並列配置され、第2無端ベルトコンベア(31)から受け取った球根類を球根類植付体(30)に1個ずつ落下供給する桟(32a)を有するカウンタベルト(32)を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の球根類移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−23991(P2012−23991A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163832(P2010−163832)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】