説明

球検査用転がし装置

【課題】球径に応じて転がす量を変えられ、球の不具合を見落としにくい球検査用転がし装置を提供する。
【解決手段】複数の球55を載置する移動台12と、複数の球55を縦横複数列に配置するとともに水平面内で移動不能に設けた配置部材30と、移動台12を水平面内の直交する2方向のうち一方向に移動させる第1駆動装置20と、移動台12を水平面内の直交する2方向のうち他方向に移動させる第2駆動装置40と、第1駆動装置20および第2駆動装置40を制御して移動台12を動かし、球55に縦転がしおよび横転がしを与える制御装置51と、制御装置51に球径を入力する入出力装置52とからなり、制御装置51は、入力された球径に応じた移動台12の移動量を算出する算出手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球を転がして目視検査するのに最適な球検査用転がし装置に関する。
【背景技術】
【0002】
玉軸受に使用される球は、材質の面で鋼製およびセラミックス製の2種類があり、鋼製のものはカメラで捉えた画像を処理することにより、球の色、傷等の不具合を発見している。光の反射の関係上、鋼製はカメラで白っぽく捕えられるのに対し、セラミックス製はカメラで黒っぽく捕えられるので、セラミックス製の球は、球の色、傷等の不具合を発見しにくい。
【0003】
図18(特許文献1)に示す球検査用転がし装置は、駆動ローラ140および2個のコーンローラ160、170間に球150を配置し、駆動ローラ140および2個のコーンローラ160、170をそれぞれ回転させることにより球150を回転させるものである。2個のコーンローラ160、170が同じ回転速度で回転しているときは、図18の軸線q回りに球150が回転し、コーンローラ160がコーンローラ170よりも速い回転速度で回転しているときは、軸線qが軸線p回りに時計回りに回転して軸線qが右下がり(図18において)となり、コーンローラ160がコーンローラ170よりも遅い回転速度で回転しているときは、軸線qが軸線p回りに反時計回りに回転して軸線qが左下がり(図18において)となる。このような原理を利用して2個のコーンローラ160、170の回転速度を変えることにより、球150の全面を見るようにしている。このものは、球150を1個1個回転させて見るものであるため、鋼製の球のようにカメラで捉えて画像処理するものには最適であるが、セラミック製の球には不向きである。
【0004】
セラミックス製の球は、1個1個転がすと球の色、傷等の不具合を発見しにくいので、複数の球を転がして目視で一際異なるものを見つける方法を採用している。この方法を採用した球検査用転がし装置として、図19(特許文献2)に示すようなものがある。図19の(1)は、球検査用転がし装置の平面図であり、図19の(2)は、(1)のF−F線断面図である。このものは、ガイド板120の各ガイド穴123に球130を入れてこれらの球130をパッド110上に載せ、ガイド板120をガイド溝121、122およびピン111、112、113に倣って動かすことにより、各球130を一斉に図14の(1)の左下がりの方向に転がし、続いて左上がりの方向に転がし、左下がりの方向に転がし、左上がりの方向に転がし、最後に左下がりの方向に転がすことができる。これを使用すれば、誰が行っても同じ転がしを球に与えることができ、熟練度によるバラツキを無くすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭56−58643号公報
【特許文献2】特許第4654269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図19に示す球検査用転がし装置は、ガイド板120をガイド溝121、122およびピン111、112、113に倣って動かす方法を採用しているため、球径に応じて転がす量を変えられない問題がある。またガイド板120とともに球130を移動させるため、作業者は顔などを動かす必要があり、球の不具合を見落としやすい。本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、球径に応じて転がす量を変えられ、球の不具合を見落としにくい球検査用転がし装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、複数の球を載置する移動台と、前記複数の球を縦横複数列に配置するとともに水平面内で移動不能に設けた配置部材と、前記移動台を水平面内の直交する2方向のうち一方向に移動させる第1駆動装置と、前記移動台を水平面内の直交する2方向のうち他方向に移動させる第2駆動装置と、前記第1駆動装置および前記第2駆動装置を制御して前記移動台を動かし、前記球に縦転がしおよび横転がしを与える制御装置と、制御装置に球径を入力する入出力装置とからなり、前記制御装置は、入力された球径に応じた前記移動台の移動量を算出する算出手段を有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、球径に応じて転がす量を変えられ、球の不具合を見落としにくい球検査用転がし装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態における球検査用転がし装置の平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態において図1のA矢視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における枠の拡大平面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における図3のB−B線断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態において図3のD−D線断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態における入出力装置の画面の状態図である。
【図7】本発明の第1の実施形態において球径入力のフロー図である。
【図8】本発明の第1の実施形態において検査用球転がし動作のフロー図である。
【図9】本発明の第1の実施形態において第2移動台移動のフロー図である。
【図10】本発明の第1の実施形態において第1移動台移動のフロー図である。
【図11】本発明の第1の実施形態における第2移動台を後ろ方向へ移動させた動作図である。
【図12】本発明の第1の実施形態における第1移動台を左方向へ移動させた動作図である。
【図13】本発明の第1の実施形態における球の転がり状態を示す状態図である。
【図14】本発明の第1の実施形態において第1移動台の原点移動のフロー図である。
【図15】本発明の第1の実施形態において第2移動台の原点移動のフロー図である。
【図16】本発明の第2の実施形態における検査用球転がし動作のフロー図である。
【図17】本発明の第2の実施形態において球の転がり状態を示す状態図である。
【図18】従来におけるコーンローラタイプの球検査用転がし装置の平面図である。
【図19】従来におけるガイド板タイプの球検査用転がし装置の全体図であり、(1)は平面図であり、(2)は(1)のF−F線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1の実施形態について、図1ないし図13を参酌しつつ説明する。図1は球検査用転がし装置の平面図であり、図2は図1のA矢視図であり、図3は枠の拡大平面図であり、図4は図3のB−B線断面図であり、図5は図3のD−D線断面図であり、図6は入出力装置の画面の状態図であり、図7は球径入力のフロー図であり、図8は検査用球転がし動作のフロー図であり、図9は第2移動台移動のフロー図であり、図10は第1移動台移動のフロー図であり、図11は第2移動台を後ろ方向へ移動させた動作図であり、図12は第1移動台を左方向へ移動させた動作図であり、図13は球の転がり状態を示す状態図であり、図14は第1移動台の原点移動のフロー図であり、図15は第2移動台の原点移動のフロー図である。
【0011】
図1および図2に示すように、球検査用転がし装置10は、床面に設置された図略の下部支持台と、この下部支持台上に載置された上部支持台11と、上部支持台11に前後方向に移動可能に設けられた第1移動台12と、第1移動台12を前後方向に駆動する第2駆動装置40と、第1移動台12に左右方向に移動可能に設けられた第2移動台13と、第2移動台13を左右方向に駆動する第1駆動装置20と、第1駆動装置20および第2駆動装置40を制御する制御装置51と、動作プログラムおよび球径等のデータを入力する入出力装置52とからなっている。
【0012】
上部支持台11は、水平な面を有する板状で金属製のテーブルであり、上部支持台11は、金属製で凹凸の非常に少ない上面を有し、この上面に前後方向が長手方向となるように一対の案内レール41が設置されている。各案内レール41に一対のボール保持器42が前後方向に移動可能に案内され、これらのボール保持器42上に第2移動台12が設置されている。第2移動台12は、水平な面を有する板状で金属製のテーブルであり、第2移動台は、金属製で凹凸の非常に少ない上面を有し、この上面に左右方向が長手方向となるように一対の案内レール21が設置されている。各案内レール21に一対のボール保持器22が左右方向に移動可能に案内され、これらのボール保持器22上に第1移動台13が設置されている。第1移動台13は、水平な面を有する板状で金属製のテーブルであり、第1移動台13は、金属製で凹凸の非常に少ない上面を有する。第1移動台13上には四角形状の枠30が設けられ、この枠30は固定ブラケット14を介して上部支持台11に固定されている。
【0013】
図3ないし図5に示すように、枠30は、金属製で四角形状の枠状のもので、この内側に球55が縦4列、横5列配置される。枠30は、主に左右方向に延びる左右板31、34と、前後方向に延びる前後板32、33とからなる。枠30は、左右板31、34の両端に連結ボルト37で前後板32、33を連結した簡単なものである。
【0014】
前後板32、33の前側には、前後方向に案内溝32b、33bが形成され、案内溝32b、33bに可動用左右板36が案内されている。可動用左右板36の前後板32側の一端には、案内溝32b側へ突出してこれに係合する案内部36bが形成されている。左右板31、34の右側には、左右方向に案内溝31b、34bが形成され、案内溝31b、34bに可動用前後板35が案内されている。可動用前後板35の左右板31側の一端には、案内溝31b側へ突出してこれに係合する案内部35bが形成されている。可動用左右板36および可動用前後板35が互いに干渉しないように、可動用左右板36の右側に櫛の歯36aが形成され、可動用前後板35の前側に櫛の歯35aが形成され、歯36aおよび歯35aは互いに上下方向にずれて設けられている。歯35aは案内部34bに係合し、歯36aは案内部33bに係合している。
【0015】
前後板32、33の前側には前後方向に長溝32a、33aが穿孔され、左右板31、34の右側には左右方向に長溝31a、34aが穿孔されている。可動用左右板36の案内部36bおよび歯36aには、長溝32a、33aに対応する位置にネジ穴36cが穿孔され、長溝32a、33aを介してネジ穴36cに固定ボルト38が螺合され、可動用左右板36がその位置に固定されるようになっている。同じように可動用前後板35の案内部35bおよび歯35aには、長溝31a、34aに対応する位置にネジ穴35cが穿孔され、長溝31a、34aを介してネジ穴35cに固定ボルト38が螺合され、可動用前後板35がその位置に固定されるようになっている。球55の外径に応じて可動用左右板36および可動用前後板35を移動して固定することにより、板31、32、35、36および球55間の隙間をできるだけ少なくし、枠30を前後方向あるいは第1移動台12を左方向に動かしたときに球55がすぐに転がることができる。
【0016】
図1および図2に示すように、第1駆動装置20は、枠30に連結されたネジ軸23と、ネジ軸23に螺合する第2プーリ24と、第2プーリ24と平行に設けられた第1プーリ25と、第1プーリおよび第2プーリ24に掛け渡された駆動ベルト26と、第1プーリ25を回転駆動する第1モータ27と、第1モータ27に印加する電流を制御する第1駆動回路53とからなっている。
【0017】
第1移動台13の右側面には第1案内部材28が固定され、第1案内部材28には前後方向に案内溝29が形成されている。ネジ軸23の一端には、案内溝29へ突出しこれに係合する係合部23aが形成されている。案内溝29に係合部23aが係合することにより、ネジ軸23の左右方向の移動を第1移動台13に伝えることができ、ネジ軸23に対する第1移動台13の前後方向の移動を許容することができる。第1プーリ25および第2プーリ24は、上部支持台11に取り付けられた図略の第1ブラケットを介して回転可能に軸承されている。第1ブラケットには第1モータ27が取付けられ、第1モータ27はこれの回転量を第1駆動回路53へ出力できるサーボモータタイプのものが使用される。第1駆動回路53は制御装置51からの移動指令量を受け取り、この移動指令量に応じた電流を発生させるものである。
【0018】
第2駆動装置40は、枠30に連結されたネジ軸43と、ネジ軸43に螺合する第2プーリ44と、第2プーリ44と平行に設けられた第1プーリ45と、第1プーリ45および第2プーリ44に掛け渡された駆動ベルト46と、第1プーリ45を回転駆動する第2モータ47と、第2モータ47に印加する電流を制御する第2駆動回路54とからなっている。
【0019】
第1移動台13の後ろ側面には第2案内部材48が固定され、第2案内部材48には左右方向に案内溝49が形成されている。ネジ軸43の一端には、案内溝49へ突出しこれに係合する係合部43aが形成されている。案内溝49に係合部43aが係合することにより、ネジ軸43の前後方向の移動を第1移動台13に伝えることができ、ネジ軸43に対する第1移動台13の左右方向の移動を許容することができる。第1プーリ45および第2プーリ44は、上部支持台11に取り付けられた図略の第2ブラケットを介して回転可能に軸承されている。第2ブラケットには第2モータ47が取付けられ、第2モータ47はこれの回転量を第2駆動回路54へ出力できるサーボモータタイプのものが使用される。第2駆動回路54は制御装置51からの移動指令量を受け取り、この移動指令量に応じた電流を発生させるものである。
【0020】
制御装置51は、例えばパソコン本体のマザーボードにコントロールボードを差し込んだものが使用される。コントロールボードには、第1駆動回路53および第2駆動回路54が接続される。パソコン本体には、後述するメイン画面および設定画面を表示する表示プログラムと、コントロールボードを作動させる動作プログラムと、球55の外径等のデータを格納する格納プログラムと、球55の外径等のデータとが格納されている。
【0021】
入出力装置52は、例えばパソコンのマウス、キーボードおよび液晶画面が使用される。液晶画面には、図6の(1)に示すようなメイン画面、または図6の(2)に示すような設定画面が表示されるようになっている。メイン画面には、枠原点移動ボタン56a、検査用球転がしボタン56b、設定ボタン56c、第2移動台各個動作の+ボタン、−ボタン、第1移動台各個動作の+ボタン、−ボタンが設定されている。設定ボタン56cを押すと設定画面へ移るようになっている。設定画面には、球径D入力項目57a、第2移動台の減速比m入力項目57b、第1移動台の減速比n入力項目57c、第2移動台の速度入力項目、第1移動台の速度入力項目、前画面ボタン56dが設定されている。前画面ボタン56dを押すとメイン画面に戻るようになっている。
【0022】
制御装置51には、図7のフローに示すような格納プログラムが入っており、設定画面で球径D入力項目57aに球径Dを入力し、エンターを押すと球径Dが格納されるようになっている。
【0023】
制御装置51には、図8のフローに示すような球検査用球転がし動作プログラムが入っており、メイン画面で検査用球転がしボタン56bを押すと、この動作プログラムが実行されるようになっている。
【0024】
制御装置51には、図9のフローに示すような第2移動台動作プログラムが入っており、図8のステップ60a、60d、60fを実行するときに、図9のフローに従って実行されるようになっている。
【0025】
制御装置51には、図10のフローに示すような第1移動台動作プログラムが入っており、図8のステップ60b、60c、60e、60gを実行するときに、図10のフローに従って実行されるようになっている。
【0026】
制御装置51には、図14のフローに示すような第1移動台原点移動動作プログラムが入っており、図15のフローに示すような第2移動台原点移動動作プログラムが入っており、メイン画面で移動台原点移動ボタン56aを押すと、これらの動作プログラムがほぼ同時に実行されるようになっている。
【0027】
第1移動台12には図略のゴム製のパッドが載置され、パッドには、球55の重力が作用し、パッド自体の摩擦係数が高いので、パッドに対して球55は転がる。これに対して、球55はセラミックス製で摩擦係数が小さく、枠30は金属製で摩擦係数が小さいので、枠30に対し球55は滑る。球55間でも滑りが発生する。すなわち、パッドを前後方向に移動させると、球55は枠30によって前後方向の移動が止められているので、球55はパッド上を転がりながら、球55は枠30に対して滑り、球55同士で滑りが発生する。また、パッドを左右方向に移動させると、球55は枠30によって左右方向の移動が止められているので、球55はパッド上を転がりながら、球55は枠30に対して滑り、球55同士で滑りが発生する。
【0028】
次に第1の実施形態の動作について説明する。第1移動台13が図1の右にあり、第2移動台12が図1の上にある状態で、枠30へ一斉に複数の球55を投入し、可動用左右板36を後ろ側へ移動させ、可動用前後板35を左側へ移動させ、可動用左右板36および可動用前後板35をこの位置で固定ボルト38により固定する。こうして枠30の内側に球55が縦4列、横5列配置され、図1に示す状態となる。
【0029】
作業者は、図6の(1)のメイン画面で設定ボタン56cを押す。図6の(2)の設定画面となり(図7のステップ63a)、球径D入力項目57aへ球径をキーボートを使用して入力する(ステップ63b)。キーボードのエンターキーを押すと、ステップ63cでYesとなり、球径Dが制御装置51のメモリに格納される(ステップ63d)。
【0030】
続いて作業者は、設定画面の前画面ボタン56dを押し、図6の(1)のメイン画面に切り替える。メイン画面の検査用球転がしボタン56bを押し、図8のフローに示す球検査用球転がし動作プログラムが実行される。ステップ60a、60d、60dの実行時に図9の第2移動台動作プログラムが実行され、ステップ60b、60c、60e、60gの実行時に図10の第1移動台動作プログラムが実行される。
【0031】
第2移動台動作プログラムで球55を1回転させる場合は、k=1であり、球55を45度回転させる場合は、k=0.125である。
【0032】
図9を使用して例えば第2移動台12の移動により球55を1回転させる場合を説明する。球径Dが呼び出され(ステップ61a)、球径Dおよびk=1により枠の移動量Sが算出される(ステップ61b)。第2移動台の減速比mが呼び出され(ステップ61c)、移動量Sおよび減速比mにより第2移動台12の移動指令量Pが算出される(ステップ61d)。制御装置51から第2駆動回路54へ移動指令量Pが送信され(ステップ61e)、この移動指令量Pに応じた電流が第2駆動回路54から第2モータ47に印加される。図1において、第2モータ47は第1プーリ45および駆動ベルト46を介して第2プーリ44を回転駆動し、第2プーリ44に螺合するネジ軸43が第1移動台13および第2移動台12とともに後ろ方向へ移動する。これによって、球55が前方向へ1回転する。第2モータ47の回転量信号は、常に第2モータ47より第2駆動回路54へ送信され、移動指令量P分だけ第2モータ47が作動すると、第2駆動回路54から制御装置51へ移動完了指令が送信され、ステップ61fがYesとなると、第2移動台12の現在位置Yが第2移動台12の移動量Sを加算した値に書き換えられる(ステップ61g)。
【0033】
第1移動台動作プログラムで球55を1回転させる場合は、j=1であり、球55を90度回転させる場合は、j=0.25である。
【0034】
図10を使用して例えば第1移動台12の移動により球55を90度回転させる場合を説明する。球径Dが呼び出され(ステップ62a)、球径Dおよびj=0.25により枠の移動量Tが算出される(ステップ62b)。第1移動台の減速比nが呼び出され(ステップ62c)、移動量Tおよび減速比nによりパッドの移動指令量Qが算出される(ステップ62d)。制御装置51から第1駆動回路53へ移動指令量Qが送信され(ステップ62e)、この移動指令量Qに応じた電流が第1駆動回路53から第1モータ27に印加される。図1において、第1モータ27は第1プーリ25および駆動ベルト26を介して第2プーリ24を回転駆動し、第2プーリ24に螺合するネジ軸23が第1移動台13とともに左方向へ移動する。これによって、球55が右方向へ1回転する。第1モータ27の回転量信号は、常に第1モータ27より第1駆動回路53へ送信され、移動指令量Q分だけ第1モータ27が作動すると、第1駆動回路53から制御装置51へ移動完了指令が送信され、ステップ61fがYesとなると、第1移動台13の現在位置Xが第1移動台13の移動量Tを加算した値に書き換えられる(ステップ61g)
【0035】
球検査用球転がし動作プログラムに戻り、図8を使用してこの動作プログラムによる動作を説明する。第2移動台12を後ろ方向へ球1回転分移動させると、図11に示す状態となり(ステップ60a)、続いて第1移動台13を左方向へ球1回転分移動させると、図12に示す状態となる(ステップ60b)。第1移動台13を左方向へ球90度回転分移動させ(ステップ60c)、第2移動台12を後ろ方向へ球45度回転分移動させ(ステップ60d)、第1移動台13を右方向へ球90度回転分移動させ(ステップ60e)、第2移動台12を前方向へ球1回転分移動させ(ステップ60f)、第1移動台13を右方向へ球1回転分移動させる(ステップ60g)。
【0036】
図13を使用して球55の目視検査状態を説明する。ステップ60aの開始前は、球55は球55aに示す位置にある。ステップ60aによって球55は前方向へ1回転し、ステップ60a後は球55は球55bに示す位置にあり、縦の2本線間が目視検査済となる。ステップ60bによって球55は右方向へ1回転し、ステップ60b後は球55は球55cに示す位置にあり、横の2本線間が新たな目視完了済となる。球55cには縦横の十字の目視完了の2本線が入っている。
【0037】
ステップ60cによって球55は右方向へ90度回転し、ステップ60c後は球55は球55dに示す位置にある。ステップ60dによって球55は前方向へ45度回転し、ステップ60d後は球55は球55eに示す位置にある。ステップ60eによって球55は左方向へ90度回転し、ステップ60e後は球55は球55fに示す位置にある。球55fには直交する2つの斜め方向の十字に2本線が入っている。球55cの状態から球55が45度回転して球55fの状態になったことが分かる。
【0038】
ステップ60fによって球55は後ろ方向へ1回転し、ステップ60f後は球55は球55gに示す位置にあり、縦の2本線間が新たな目視完了済となる。ステップ60gによって球55は左方向へ1回転し、ステップ60g後は球55は球55hに示す位置にあり、横の2本線間が新たな目視完了済となる。球55hには、直交する2つの斜め方向の十字にさらに縦横の十字が入る。このようにすれば、目視範囲の重なりを最低限にしながら見落としなく球55の全面を効率良く見ることができる。また、枠30を移動させないので、作業者の顔を固定して球55を検査することができ、球55の不具合の見落としが少ない。
【0039】
上下の重なった2箇所を軸に45度回転させる理由について詳細に説明する。球55を前方向に1回転させ、続いて球55を右方向に1回転させると、見た範囲の重なるところが上下の2箇所に出来る。このまま前方向に1回転、右方向に1回転させると、同じところを見ることなり、好ましくない。上下の重なった2箇所を軸に45度回転させてから前方向に1回転、右方向に1回転させると、先ほどと異なるところを見ることができ、球55の全面を見ることが可能となる。前述した右方向に90度回転、前方向に45度回転、左方向に90度回転は、上下の重なった2箇所を軸に直接45度回転させる動作と同じことが得られる動作である。45度回転させる動作を、縦横方向に球55をそれぞれ1回転させる1回目の動作と、横縦方向に球をそれぞれ1回転させる2回目の動作間に入れた。
【0040】
このように上述した第1の実施形態は、前後方向の転がりと、左右方向の転がりがほぼ均一になるので、球55との接触による枠30の摩耗を、前後方向と左右方向とでほぼ均一にできるメリットがある。また、ステップ60bで第1移動台12を左方向へ球1回転分移動させ、ステップ60cで第1移動台12を左方向へ球90度回転分移動させ、ステップ60eで第1移動台12を右方向へ球90度回転分移動させ、ステップ60gで第1移動台12を右方向へ球1回転分移動させているので、球55の接触による枠30の摩耗を右、左とも均一にできる。
【0041】
球検査用球転がし動作が完了すると、作業者は図6の(1)のメイン画面の移動台原点移動ボタン56aを押す。図14の第1移動台原点移動動作プログラムと、図15の第2移動台原点移動動作プログラムが順次実行される。制御装置51でステップ64aからステップ64eまでが高速処理され、続いて、ステップ66aからステップ66eまでが高速処理されるので、実際は第1移動台13および第2移動台12の移動開始が同時に行われたように見える。
【0042】
図14を使用して第1移動台原点移動動作プログラムによる動作を説明する。第1移動台13の現在位置Xが呼び出され(ステップ64a)、現在位置Xにより第1移動台13の移動量Tが算出される(ステップ64b)。第1移動台13の減速比nが呼び出され(ステップ64c)、移動量Tおよび減速比nにより第1移動台13の移動指令量Qが算出される(ステップ64d)。制御装置51から第1駆動回路53へ移動指令量Qが送信され(ステップ64e)、この移動指令量Qに応じた電流が第1駆動回路53から第1モータ27に印加される。図1において、第1モータ27は第1プーリ25および駆動ベルト26を介して第2プーリ24を回転駆動し、第2プーリ24に螺合するネジ軸23が第1移動台13とともに右方向へ移動する。この結果、第1移動台13は図1の右側にある原点へ移動する。
【0043】
図15を使用して第2移動台原点移動動作プログラムによる動作を説明する。第2移動台12の現在位置Yが呼び出され(ステップ66a)、現在位置Yにより第2移動台12の移動量Sが算出される(ステップ66b)。第2移動台12の減速比mが呼び出され(ステップ66c)、移動量Sおよび減速比mにより第2移動台12の移動指令量Pが算出される(ステップ66d)。制御装置51から第2駆動回路54へ移動指令量Pが送信され(ステップ66e)、この移動指令量Pに応じた電流が第2駆動回路54から第2モータ47に印加される。図1において、第2モータ47は第1プーリ45および駆動ベルト46を介して第2プーリ44を回転駆動し、第2プーリ44に螺合するネジ軸43が第1移動台13および第2移動台12とともに前方向へ移動する。この結果、第2移動台12は図1の上側にある原点へ移動する。
【0044】
作業者は、転がる複数の球55を目視し、複数の球55の中から一際異なるものを探す。色、傷等の一際異なるものを発見すると、その場でペン等で球55にマークが入れられる。球55の検査用転がりが完了した時点で、マークの入った球55を異常ボックスへ回収し、マークの入っていない球55を一斉に良品ボックスへ回収する。
【0045】
本発明の第2の実施形態について、図16および図17を使用して説明する。図16は検査用球転がし動作のフロー図であり、図17は球の転がり状態を示す状態図である。第2の実施形態と第1の実施形態の異なる点は、制御装置51に格納されている球検査用球転がし動作プログラムが異なるのみで、後は全て同じである。よって、第2の実施形態では、第1の実施形態の図8に代えて図16を使用し、図13に代えて図17を使用し、第1の実施形態の図1ないし図7、図9、図10をそのまま利用する。
【0046】
図16を使用して球検査用球転がし動作プログラムによる動作を説明する。第1移動台13を左方向へ球1回転分移動させ(ステップ65a)、第2移動台12を後ろ方向へ球45度回転分移動させ(ステップ65b)、第1移動台13を右方向へ球1回転分移動させ(ステップ65c)、第2移動台12を後ろ方向へ球45度回転分移動させ(ステップ65d)、第1移動台13を左方向へ球1回転分移動させ(ステップ65e)、第2移動台12を後ろ方向へ球45度回転分移動させ(ステップ65f)、第1移動台13を右方向へ球1回転分移動させる(ステップ65g)。
【0047】
続いて図17を使用して球55の目視検査状態を説明する。ステップ65aの開始前は、球55iの位置にある。ステップ65aによって球55は右方向へ1回転し、ステップ65a後は球55は球55jに示す位置にあり、横の2本線間が目視検査済となる。ステップ65bによって球55は前方向へ45度回転し、ステップ65b後は球55は球55kに示す位置にある。ステップ65cによって球55は左方向へ1回転し、ステップ65c後は球55は球55mに示す位置にある。ステップ65dによって球55は前方向へ45度回転し、ステップ65d後は球55は球55nに示す位置にある。ステップ65eによって球55は右方向へ1回転し、ステップ65e後は球55は球55pに示す位置にある。球55pには横方向の2本線が入る。ステップ65fによって球55は前方向へ45度回転し、ステップ65f後は球55は球55qに示す位置にある。ステップ65gによって球55は左方向へ1回転し、ステップ65g後は球55は球55rに示す位置にある。球55rには横方向の2本線が入る。
【0048】
球55sは球55rを図17の左方向から見た図であり、直交する2つの斜め方向の十字にさらに縦横の十字が入っている。目視範囲の重なりを最低限にしながら見落としなく球55の全面を効率良く見ていることが分かる。ちなみに、球55sの縦方向の2本線は、ステップ65gで見た範囲であり、球55sの右下斜め方向の2本線は、ステップ65eで見た範囲であり、球55sの横方向の2本線は、ステップ65cで見た範囲であり、球55sの左下斜め方向の2本線は、ステップ65aで見た範囲である。この実施形態も第1の実施形態と同様に、枠30を移動させないので、作業者の顔を固定して球55を検査することができ、球55の不具合の見落としが少ない。
【0049】
本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0050】
上述した第1の実施形態において、ステップ60dで第2移動台12を後ろ方向へ球45度回転分移動させることを述べた。他の実施形態として、第2移動台12を後ろ方向へ球225度(180度+45度)回転分移動させても良い。目視範囲の重なる部分が増えるが、より見落としが無くなる点でメリットがある。
【符号の説明】
【0051】
12:第2移動台、13:第1移動台(移動台)、20:第1駆動装置、30:枠(配置部材)、40:第2駆動装置、51:制御装置、52:入出力装置、55:球

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の球を載置する移動台と、前記複数の球を縦横複数列に配置するとともに水平面内で移動不能に設けた配置部材と、前記移動台を水平面内の直交する2方向のうち一方向に移動させる第1駆動装置と、前記移動台を水平面内の直交する2方向のうち他方向に移動させる第2駆動装置と、前記第1駆動装置および前記第2駆動装置を制御して前記移動台を動かし、前記球に縦転がしおよび横転がしを与える制御装置と、制御装置に球径を入力する入出力装置とからなり、前記制御装置は、入力された球径に応じた前記移動台の移動量を算出する算出手段を有することを特徴とする球検査用転がし装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−101034(P2013−101034A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244475(P2011−244475)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】