説明

球状ヒアルロン酸ゲル粒子の製造方法

【課題】粒径の制御が可能で、均一な球形粒子を有するヒアルロン酸ゲルの簡便な製造方法を提供する。
【解決手段】水系溶媒中において、ヒアルロン酸にカチオン性界面活性剤を作用させ球状粒子とする工程を含むことを特徴とする球状ヒアルロン酸ゲル粒子の製造方法。
前記工程後、前記球状粒子に架橋剤を作用させる工程を含むことが好適である。
また、前記工程後、透析により前記球状粒子を精製する工程を含むことが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゲル、特に製造が簡便で、粒子径の制御が可能な球状ヒアルロン酸ゲル粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高分子を用いた各種ゲル組成物が食品、医薬品、化粧品等各種分野に汎用され、さらに機能的なゲル組成物の開発が試みられている。このような生体に使用され得るゲル組成物は、生体への影響を考慮して一般に天然物ないしはその加工物から形成される。特に近年では、元々細胞外基質や軟骨等に存在し、生体適合性に優れたヒアルロン酸を用いたゲルの医療等への応用が期待されている。また、ヒアルロン酸は1gで6Lの水を吸収・保持できることが知られ、優れた保湿剤として化粧品へ配合することも一般的に行われている。
このようなヒアルロン酸を用いた生体適合性を有するゲルの製造方法として、エマルション中でヒアルロン酸を架橋剤であるトリメタリン酸三ナトリウム(STMP)と反応させ、ヒドロゲルを形成させる方法が報告されている(非特許文献1)。
【非特許文献1】Carbohiydrate Polymers、Vol.57、Issue 1、p.1−6、2004
【非特許文献2】第53回高分子学会年次大会要旨集(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記技術のようにエマルション中においてゲルを形成する場合、有機溶媒の添加が必要であるが、最終的なゲルとするにはこれらを除去しなければならず、製造工程が煩雑になりがちであった。また、同製法では形成されるゲルの粒子径を制御することが難しく、所望する形態のゲルを得られないことがあった。
また、このような製造上の煩雑さを解決しうるゲルの製造方法として、カチオン性界面活性剤であるDTABにより、アニオン高分子であるカルボキシメチルセルロース(CMC)を分子集積し、pH応答性を有する球形の架橋ゲルの合成が可能であるこが開示されている(非特許文献2)。
しかしながら、この方法によるゲル組成物は生体適合性が低く、現在求められている医薬品や化粧品等への適用には不向きなものであった。
本発明は、前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、粒径の制御が可能で、均一な球形粒子を有するヒアルロン酸ゲルの簡便な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するために本発明者らが鋭意検討した結果、水系溶媒中において、生体適合性を有するヒアルロン酸とカチオン性界面活性剤とを作用させることにより均一な球状粒子を形成せしめ、さらに該粒子を架橋剤により架橋させることにより、有機溶媒等を用いずに強固で機能的な球状ゲル粒子を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明にかかる球状ヒアルロン酸ゲル粒子の製造方法は、水系溶媒中において、ヒアルロン酸にカチオン性界面活性剤を作用させ球状粒子とする工程を含むことを特徴とする。
また、前記製造方法において、ヒアルロン酸にカチオン性界面活性剤を作用させ球状粒子とする工程後、さらに前記粒子に架橋剤を作用させる工程を含むことが好適である。
さらに、前記製造方法において、前記球状粒子に架橋剤を作用させる工程後、さらに透析により前記球状粒子を精製する工程を含むことが好適である。
また、前記架橋剤を作用させる工程を静置条件下において行うことが好適である。
【発明の効果】
【0005】
本発明にかかる製造方法によれば、均一な球状をなす、生体適合性に優れたヒアルロン酸ゲル粒子を簡便に得ることができる。また、該製造方法によれば、球状ヒアルロン酸ゲル粒子の粒径を容易に制御し得る。さらに、本発明の製造方法により得られる球状ヒアルロン酸ゲル粒子は安全性が高く、pH応答性及び耐塩性に優れ、食品、医薬品、化粧品等に広く適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の構成をさらに詳細に説明する。
球状ヒアルロン酸粒子の形成
本発明者らがヒアルロン酸の特性について検討したところ、ヒアルロン酸水溶液にカチオン性界面活性剤水溶液を加えることによって起こる相分離を利用して均一なヒアルロン酸の球状粒子が得られることを見出した。このような球状粒子の形成について、予測されるメカニズムについて以下に説明する。
【0007】
ヒアルロン酸水溶液にカチオン性界面活性剤を加えていくと、相分離が起こり系内は白濁化するが、カチオン性界面活性剤の濃度を変化させて透過率変化を測定することで相分離が起こる濃度域を特定することができる。すなわち、カチオン性界面活性剤低濃度域では透過率に変化は見られないが、特定濃度以降で透過率が急激に低下し、相分離が起こっていることを示す。さらにカチオン界面活性剤濃度を上げていくと、透過率の上昇が見られる。この透過率の上昇は、相分離が解けてヒアルロン酸が再溶解状態にあることを表している。
【0008】
上記のようなヒアルロン酸とカチオン性界面活性剤の相互作用については、以下のように考えることができる。
ヒアルロン酸のようなアニオン性高分子とカチオン性界面活性剤の相互作用を考える上で重要なパラメータとして、臨界集合濃度(cac:critical aggregation concentration)が挙げられる。cacは、高分子と界面活性剤との間に相互作用が働き、高分子鎖上に界面活性剤が集合体を形成するのに必要な濃度である。すなわち、ヒアルロン酸とカチオン性界面活性剤の作用において、カチオン性界面活性剤濃度がcac以下であると、ヒアルロン酸とカチオン性界面活性剤の両者の間には弱い静電相互作用がはたらいているものの、両者は単独で存在しているということになる。カチオン性界面活性剤濃度を上げていき、該濃度がcacを超えると、第1段階としてカチオン性界面活性剤分子のヒアルロン酸鎖への吸着が起こる。この駆動力と成っているものは、ヒアルロン酸のカルボキシル基とカチオン性界面活性剤のカチオン基の間に働く静電引力である。さらにカチオン性界面活性剤の濃度を上げると、ヒアルロン酸鎖の親水性が失われると共に、第2段階としてカチオン性界面活性剤分子の集合体形成が始まる。この集合体形成には、同一のヒアルロン酸鎖内、もしくは近傍に存在するヒアルロン酸鎖上のカチオン性界面活性剤分子が関与すると考えられる。これらの比較的近距離に存在するカチオン性界面活性剤分子同士が、疎水性相互作用を駆動力として集合体を形成する。この集合体が、ヒアルロン酸鎖内およびヒアルロン酸鎖間の擬似架橋の働きをすることから、ヒアルロン酸鎖は溶液中で伸びきった状態ではいられなくなり、相分離が起こり、球状粒子が形成される。さらにカチオン性界面活性剤濃度を上げると、後添加されたカチオン性界面活性剤分子がすべてミセル形成に加わるため(ヒアルロン酸のカルボキシル基を使い果たしたため)、ヒアルロン酸鎖上のミセルが大きくなっていく。つまり、ヒアルロン酸粒子の大きさは大きくなっていく。ある程度までは、カチオン性界面活性剤濃度の増加が前記粒子の成長に関与するが、さらに濃度を上げるとミセル同士の相互作用を無視できなくなる。ミセルを形成するカチオン性界面活性剤分子の数が多くなると、カチオン性界面活性剤の正電荷に伴うミセル同士の静電反発が生じるためである。すると、この反発力によってミセル同士が近傍に存在することを嫌い、第3段階として相分離が解けてヒアルロン酸は再び溶解状態に戻る。
【0009】
すなわち、本発明にかかる球状ヒアルロン酸ゲルの製造方法は、水系溶媒中においてヒアルロン酸にカチオン性界面活性剤を添加し、球状粒子を得る工程を含む。上記したように、本発明におけるゲル形成は、両分子間の静電引力とカチオン界面活性剤のミセル形成とを利用したものであるため、従来の製造方法のように有機溶媒を用いたエマルション中で行う必要はなく、水系溶媒、つまりはヒアルロン酸とカチオン性界面活性剤の水溶液を混合することにより達成できる。
【0010】
本発明においてヒアルロン酸は、N−アセチル−D−グルコサミン残基と、D−グルクロン酸残基が交互に結合した直鎖状高分子であり、このような構造を有していれば特に限定することなく用いることができる。ヒアルロン酸は、例えば、鶏冠や他の動物組織からの単離抽出、あるいはストレプト・コッカス属などの微生物を用いた発酵法により得ることができる。また、本発明においては、例えば、ヒアルロン酸の誘導体として、ヒアルロン酸ナトリウム塩、ヒアルロン酸カリウム塩等のヒアルロン酸金属塩や、ヒアルロン酸のヒドロキシル基、カルボキシル基等をエーテル化、エステル化、アミド化、アセタール化、ケタール化させて得られるヒアルロン酸誘導体等を用いても構わない。
また、本発明のヒアルロン酸としては、市販品を用いることもできる。市販のヒアルロン酸としては、例えば、バイオヒアロ12(資生堂社製)、ヒアルロン酸(紀文社製)等が挙げられる。
【0011】
本発明におけるヒアルロン酸の濃度は、水系溶媒中の反応系において0.0001〜0.5重量%であることが好ましい。より好ましくは0.001〜0.35重量%、さらに好ましくは0.01〜0.2重量%である。本発明の方法によれば、低濃度のヒアルロン酸から効率的に球状粒子を得ることが可能であるが、ヒアルロン酸の濃度が高すぎると、均一な攪拌混合が困難となるうえ、粒子が大きくなりすぎてしまい、続く架橋剤による架橋反応の際に反応が進みにくくなることがある。
【0012】
本発明に用いるヒアルロン酸の分子量は特に限定されるものではないが、分子量10万以上、さらには分子量が50万〜300万程度であることが好適である。通常、一般的に用いられるヒアルロン酸はそのほとんどが分子量10万以上であるものの、特別に低分子化した分子量1万程度のヒアルロン酸も存在する。このような分子量1万程度の低分子化ヒアルロン酸を用いると、ヒアルロン酸が水中に均一に分散した溶液状となることがあるが、本発明の製造方法においては、ヒアルロン酸の相分離に適した濃度のカチオン性界面活性剤が添加されていれば問題なく球状ゲル粒子を形成することができる。
【0013】
本発明に適用し得るカチオン性界面活性剤についても、特に制限なく使用することができる。このようなカチオン性界面活性剤を具体的に挙げるならば、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等);アルキルピリジニウム塩(例えば、塩化セチルピリジニウム等);塩化ジステアリルジメチルアンモニウムジアルキルジメチルアンモニウム塩;塩化ポリ(N,N'-ジメチル-3,5-メチレンピペリジニウム);アルキル四級アンモニウム塩;アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩;アルキルイソキノリニウム塩;ジアルキルモリホニウム塩;POE-アルキルアミン;アルキルアミン塩;ポリアミン脂肪酸誘導体;アミルアルコール脂肪酸誘導体;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
本発明においてカチオン性界面活性剤は、球状粒子の形成のみに作用するものであるため、最終的に除去することが好ましい。カチオン性界面活性剤は透析によって容易に除去することができる。
【0014】
カチオン性界面活性剤の濃度は用いる活性剤の種類にもよるが、水系溶媒中の反応系において0.0001〜5重量%であることが好ましい。より好ましくは0.005〜1重量%、さらに好ましくは0.1〜0.5重量%である。カチオン界面活性剤の濃度が低すぎるとヒアルロン酸が相分離に至らず、高すぎるとヒアルロン酸が再溶解してしまうことがある。
【0015】
本発明にかかる製造方法においては、ヒアルロン酸のカルボキシル基に対し、カチオン界面活性剤のカチオン基の電荷の比率が、約1〜5倍となることが好ましい。一般的に、高分子は電荷的中性条件において最も凝集し易いことが知られている。しかしながら、本発明にかかる製造方法の場合、カチオン性界面活性剤がヒアルロン酸に吸着してその親水性を失わせ、なおかつカチオン性界面活性剤同士がミセルを形成するという2段階を経て球状ゲル粒子の形成が起こるため、中性条件ではまだカチオン性界面活性剤が吸着段階にあると考えられる。したがって、前記電荷比率が2〜4倍であることがより好適である。
さらに、上記した範囲内においてカチオン性界面活性剤の濃度を適宜調節することで、球状粒子の粒径を制御することが可能である。すなわち、使用するカチオン性界面活性剤の種類および濃度、またヒアルロン酸との電荷比率により、所望に応じた粒径の粒子を製造し得る。
【0016】
球状ヒアルロン酸粒子の架橋
また、本発明にかかる球状ヒアルロン酸ゲル粒子の製造方法においては、上記の工程によりヒアルロン酸の球状粒子を形成した後、さらに架橋剤を添加して前記粒子を架橋させ、強固なゲル粒子とすることができる。架橋剤の添加は、球状粒子を形成した系をそのまま使用することができる。系から球状粒子を分離して別途架橋剤と反応させてもよいが、生産効率上同じ系を用いることが好ましい。
【0017】
本発明に用いる架橋剤は、ヒアルロン酸の高分子鎖間を化学結合によって架橋し得るものであれば、どのようなものを用いても構わない。
ヒアルロン酸の架橋剤としては、ヒアルロン酸分子の持つカルボキシル基、水酸基、アセトアミド基といった反応性官能基と反応して共有結合を形成し得る官能基を2以上有する多官能性化合物を用いることができる。本発明に適用可能な架橋剤としては、具体的には、1,3−ブタジエンジエポキシド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,5−ヘキサジエンジエポキシド等のアルキルジエポキシ体、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のジグリシジルエーテル体、ジビニルスルホン、エピクロルヒドリン等が挙げられる。これらの中でも、特にジビニルスルホン、1,4−ブタンジオール・ジグリシジルエーテル、及びエチレングリコール・ジグリシジルエーテルを好適に用いることができる。また、本発明においては、2種以上の架橋剤を適宜組み合わせて用いても構わない。
【0018】
前記架橋剤の濃度は用いる架橋剤の種類にもよるが、ヒアルロン酸の球状粒子を含む系において0.000001〜5重量%であることが好ましい。より好ましくは0.00001〜0.5重量%、さらに好ましくは0.0001〜0.05重量%である。
架橋剤の濃度が高くなるに伴い、ヒアルロン酸の球状粒子の粒子径が小さくなる。これは、架橋剤の濃度が高いほど1つの粒子に費やされる架橋剤量が多くなり、架橋密度が上昇するためであると考えられる。したがって、本発明においては、架橋剤の濃度によって球状ヒアルロン酸ゲル粒子の粒子径を制御することも可能である。ただし、架橋剤の濃度が高すぎると、架橋反応が粒子内だけでなく粒子間においても起こり、沈殿が生じてしまうことがあるため好ましくない。
【0019】
本発明にかかる球状ヒアルロン酸ゲル粒子の製造方法においては、前記ヒアルロン酸粒子と、前記架橋剤と、水とを含む混合物を、酸又はアルカリ条件下で混合し、前記ヒアルロン酸の有する反応性官能基と前記架橋剤とを反応させることによって、ヒアルロン酸粒子を構成する高分子鎖間を化学結合により架橋し、架橋した球状ヒアルロン酸ゲルを生成する。
なお、本発明においては、架橋反応時のヒアルロン酸の反応性を高める目的で、塩酸、硫酸等の酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基、あるいはリン酸塩、4級アンモニウム塩等の適当な緩衝液により混合物のpHを適宜調整し、酸又はアルカリ条件下で攪拌混合を行なう。具体的には、例えば、酸条件下においてはpH1〜5、アルカリ条件下においてはpH10〜14となるように混合物のpHを調整することが好適である。架橋反応を前述の球状粒子の形成と同じ系を用いて行う場合は、粒子を形成する工程において系のpH調整を行ってもよい。すなわち、水系溶媒中へヒアルロン酸およびカチオン性界面活性剤に加え、酸や塩基等を溶解してpHを調整しておくことも可能である。
【0020】
また、本発明にかかる製造方法においては、上記架橋反応を静置条件下で行うことが好適である。通常の高分子の架橋技術においては、架橋反応を均一に進めるため攪拌条件下で系に架橋剤を添加することが多いが、本発明による球状ヒアルロン酸粒子の場合、攪拌条件下で架橋剤を添加すると沈殿物を析出することがある。これは、攪拌によりヒアルロン酸粒子と架橋剤の反応頻度およびヒアルロン酸粒子同士の衝突頻度が増大し、粒子内のみならず、粒子間においても架橋反応が起こり、粒子が凝集・沈殿するためであると考えられる。一方、静止した状態で架橋反応を緩やかに進行させれば、前記のような粒子間の架橋を抑え、粒子内のみを架橋することができるため、均一な架橋ヒアルロン酸粒子の分散液を得ることができる。
【0021】
本発明にかかる製造方法において、架橋反応を行う時間は架橋剤の種類や濃度に応じて適宜調整すればよい。すなわち、架橋剤濃度が高い場合、架橋時間を長くするとヒアルロン酸の球状粒子間で架橋が進行してしまい、沈殿が生じることがある。一方、架橋剤の濃度が低い場合、架橋時間が短いと架橋反応が十分に進行しないが、架橋時間を長くすれば架橋ヒアルロン酸粒子を得ることができる。
【0022】
架橋球状ヒアルロン酸粒子の精製
本発明にかかる球状ヒアルロン酸ゲル粒子の製造方法においては、上記の工程によりヒアルロン酸の球状粒子を架橋した後、さらに系を透析して架橋ヒアルロン酸粒子、すなわち本発明の球状ヒアルロン酸ゲル粒子を精製することが好適である。
透析により系に残存したカチオン性界面活性剤及び架橋剤を容易に除去し、球状ヒアルロン酸ゲル粒子のみを得ることができる。
【0023】
上記した本発明にかかる製造方法により得られる球状ヒアルロン酸ゲル粒子は、均一な球状粒子をなしており、生体適合性にすぐれたものである。また、耐塩性が高く、膨潤度にpH応答性を有している。
また、本発明にかかる球状ヒアルロン酸ゲル粒子の製造において、上記した成分の他にも、予め、通常、医薬品、化粧料等に用いられる成分を、本発明の目的及び効果に影響が出ない範囲で適宜配合しても構わない。もしくは、得られた球状ヒアルロン酸ゲル粒子を食品・医薬品・化粧品等の各種製品へ配合することもできる。
本発明による球状ヒアルロン酸ゲル粒子の形成は、上記したようにヒアルロン酸とカチオン性界面活性剤の静電相互作用を利用したものであるため、製品中に配合するゲル粒子の安定性を考慮するならば、本発明によって球状ヒアルロン酸ゲル粒子を製造後、各種製品へ前記ゲル粒子を配合することが好ましい。すなわち、製品へ単にヒアルロン酸及びカチオン活性剤を配合しても、製品中の他の成分による静電相互作用の影響を受けてしまい、ゲル粒子が安定して生成されないことがある。
【0024】
前記球状ヒアルロン酸ゲル粒子はその特性を利用して、pH応答性素材、耐塩性素材、保湿剤として使用することができる。また、本発明のゲルを単層膜とし、皮膚や毛髪のコーティング剤として使用することも可能である。
さらに、生体内で代謝を請けにくく、塩濃度やpHによる膨潤性を利用した、美容整形におけるしわのばし、陥凹、豊胸用の注入剤、従来よりも高い生体内滞留性、潤滑作用、薬理効果を示す変形性関節症治療薬(関節内注入剤)、従来よりも高い保湿作用、涙液内滞留性、薬理効果を示すドライアイ点眼薬、胃潰瘍の予防・治療薬、花粉症予防剤、口腔内乾燥防止剤等への使用が期待できる。
【0025】
また、ゲル粒子の球状内が疎水性であることを利用し、疎水性薬剤またはカチオン性薬剤を粒子内に内包し、ドラッグデリバリーシステム(DDS)のキャリアーとしての利用他、ヒアルロン酸やゲル組成物の応用が可能なあらゆる分野において使用することができる。
以下、本発明の実施例を示して、本発明について更に詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0026】
<カチオン性界面活性剤による球状ヒアルロン酸粒子形成>
下記測定方法にて、ヒアルロン酸水溶液が相分離を生じ、球形粒子を形成するカチオン性界面活性剤の濃度を検討した。結果を図1に示す。
試験方法
2mlマイクロチューブに、ヒアルロン酸0.135重量%、水酸化ナトリウム0.03重量%として、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド(DTAB)を0〜0.35重量%の範囲で変化させた水溶液を調製した。
前記水溶液について、分光光度計(BioSpec−1600:島津製作所製)にて波長550nmにおける可視光透過率強度を室温条件下で測定した。
【0027】
図1に示すように、DTABが低濃度の領域において透過率に変化は見られなかったが、DTAB濃度がおよそ0.2〜0.3重量%になると急激に透過率が低下し、系が白濁した。これはヒアルロン酸が相分離を起したことを示す。すなわち、前記濃度域において、分子間の静電引力によりDTAB分子がヒアルロン酸へ吸着し、且つDTAB分子同士がミセルを形成してヒアルロン酸を凝集させたため、ヒアルロン酸及びDTABがそれぞれ単独に溶解した水溶液が、球状ヒアルロン酸粒子の均一な分散液に変化したと考えられる。
さらに、図1によれば、DTAB濃度が0.3重量%を超えると、再び透過率が上昇した。この結果は、カチオン界面活性剤が高濃度の領域においては、ヒアルロン酸の相分離が解ける、すなわち球状粒子が再溶解したことを示唆している。
さらに、上記の結果から導かれたヒアルロン酸が相分離を起すDTAB濃度である約0.2〜0.3重量%において、ヒアルロン酸のカルボキシル基(アニオン基)とDTABのアンモニウム基(カチオン基)との電荷の比率を算出したところ、アンモニウム基がカルボキシル基の約2倍であった。なお、この電荷比率はカチオン性界面活性剤の種類により1〜5倍になることが分かった。
以上より、本発明にかかる製造方法においては、ヒアルロン酸のカルボキシル基に対し、カチオン界面活性剤のカチオン基の電荷の比率が、約1〜5倍となることが好適である。
【0028】
<ヒアルロン酸粒子の粒径>
表1に示すヒアルロン酸、カチオン性界面活性剤、架橋剤の濃度にて、ヒアルロン酸ゲル粒子を作製し、粒子の形状及び粒径について検討した。ヒアルロン酸ゲル粒子の製造方法は下記のとおりである。
【0029】
ヒアルロン酸ゲルの製造方法
20mlサンプル管に、ヒアルロン酸水溶液、1M水酸化ナトリウム、濃度調整用の蒸留水を加え混合した。これに、攪拌条件の下、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド(DTAB)水溶液を加えて5分間攪拌して相分離させた。さらに架橋剤としてジビニルスルフォン(DVS)を加え、系内が均一になる程度攪拌したら攪拌を止め、静置条件の下架橋反応を行った。架橋反応は、1M塩酸を添加して系内のpHを中性〜弱酸性にすることにより停止させた。その後、遠心分離及び透析によりヒアルロン酸ゲル粒子を得た。
架橋反応終了後における、ゲル粒子の分散液の形状および水中粒径を表1に示す。なお、分散液の形状において、○は沈殿の見られない均一な球状粒子の分散液、×は沈殿の生じた分散液を表す。また、水中粒径は粒子の20℃における流体力学的直径の重量平均の値であり、分布にシングルピークが得られなかった試験例については×とした。
【0030】
(表1)

【0031】
上記表1によれば、ヒアルロン酸濃度を0.135重量%とした試験例においては球状粒子の形成が可能であった一方、0.27重量%とした試験例21〜24においては、単分散の粒子を形成させることができなかった。これは、ヒアルロン酸の濃度の上昇に伴い、粒子の形成に必要なDTAB濃度も上昇させたため、DTAB同士のミセル形成が起こり易くなったことに起因すると考えられる。これにより、DTABによるミセル形成がヒアルロン酸分子内ではなく、ヒアルロン酸分子間で優先的に起こり、相分離が起こりやすくなる。すなわち、ヒアルロン酸濃度が高いほど相分離は起こりやすくなると考えられる。ヒアルロン酸分子間での凝集が優先されるということは、形成される粒子の大きさが大きくなることを意味し、粒子径が大きくなることにつながる。しかしながら、ヒアルロン酸濃度が高いと粒子の大きさが大きくなるとともに、粒子同士の距離も隣接することから、1つの粒子内でのみ架橋反応を進行させることが困難になったと考えられる。
以上より、本発明によれば少量のヒアルロン酸で効率よく球状のゲル粒子を得ることができることが明らかである。
【0032】
また、表1の試験例1〜5によれば、カチオン性界面活性剤であるDTAB濃度が粒子の水中粒径に影響していることが分かる。すなわち、DTABが高濃度になるにしたがい、形成される粒子の粒径は大きくなった。
また、同様のヒアルロン酸濃度において、DTAB濃度に伴う粒径変化をさらに詳細に調査したところ(図2)、DTABの濃度上昇に伴い、形成される粒子の大きさが大きくなるため、粒径も増大することが認められた。
一方、試験例1においては均一な粒径の粒子を得ることができなかった。これは、前述したように、ヒアルロン酸のカルボキシル基に対するDTABのカチオン基の量が十分でなく、ヒアルロン酸の相分離が完全に進行しなかったためであると考えられる。
【0033】
さらに、表1の試験例6〜20に示す結果から、DVSもまた粒子の水中粒径に影響を与えていることが推察された。そこで、ヒアルロン酸濃度0.135重量%、DTAB濃度0.248重量%、架橋時間2時間の条件で、DVS濃度変化に伴う水中粒径の変化を詳細に調査したところ(図3)、DVSの濃度上昇に伴い明らかに粒径が小さくなることが分かった。これはDVS濃度が高いほど1つの粒子に使われるDVS量が多くなり、架橋密度が上がるためであると考えられる。しかしながら、あまりにDVS濃度が高すぎると、架橋反応が粒子内だけでなく粒子間でも起こり始めるため、粒子が凝集して沈殿が生じてしまうと考えられる。
同様に、試験例6〜20より、架橋時間も粒子の粒径に影響していることが分かる。同一のDVSの濃度条件内(試験例6〜10、11〜16、17〜20)で比較すると、架橋時間が長くなるに伴い、粒径が小さくなる傾向が見られた。これは架橋時間が長いほど粒子内の架橋反応が進み、架橋密度が上がるためであると考えられる。このように架橋時間によって粒径の制御が可能である一方、試験例10、11、16、17、20に示すように、架橋時間が短すぎるないしは長すぎた場合は、球状粒子を得ることはできなかった。また、DVSの濃度によって粒子が形成される架橋時間が異なったことから、架橋時間は架橋剤の濃度や種類等により設定され得ると推察される。
【0034】
以上の結果から、本発明の製造方法により、低濃度のヒアルロン酸から、均一な球状ヒアルロン酸ゲル粒子を効率よく容易に得ることができることが明らかになった。また、該ゲル粒子の製造において、ヒアルロン酸、カチオン性界面活性剤、架橋剤の濃度、または架橋時間を適宜調整することにより、様々な粒径の球状ゲル粒子を製造することができることも認められた。したがって、本発明の製造方法による球状ヒアルロン酸ゲル粒子は、その使用目的によって、粒径を容易に制御することが可能である。
【0035】
<球形ヒアルロン酸ゲル粒子の特性>
本発明の製造方法によって得た球形ヒアルロン酸ゲル粒子の特性について試験した。各特性の試験方法は以下のとおりである。また試験に用いた球形ヒアルロン酸ゲル粒子のサンプルは、上記表1に示した試験例8に準じて作製したものを用いた。
【0036】
pH応答性
球形ヒアルロン酸ゲル粒子の製造において、系のpHを変化させた際の動的光散乱法による水中粒径、および電気泳動移動度を測定し、ゲルのpH応答性を評価した。ヒアルロン酸は分子内に多くのカルボキシル基を有するため、pHによってその解離度が大きく変化する。したがって、解離度の変化により粒子の水中粒径及び表面電荷が変化することが予測された。動的光散乱法による水中粒径、および電気泳動移動度の測定方法は以下のとおりである。また、本測定には上記製造方法に準じて作製したヒアルロン酸ゲルを用い、各成分濃度を、ヒアルロン酸濃度0.135重量%、DTAB濃度0.248重量%、DVS濃度0.0065重量%として、粒子を合成する水性溶媒のpHを変化させた。溶媒の調整はNaCl溶液とHCl溶液を用いて行った。
【0037】
(動的光散乱法による水中粒径の測定)
動的光散乱法は、粒子のミクロブラウン運動による散乱光の揺らぎにより粒径を測定する方法である。懸濁液及び溶液中に分散した粒子は並進、回転、屈折などのミクロブラウン運動をしており、その運動は大きな粒子ほど遅い。これを利用し、粒子間相互作用が無視できるような希薄なラテックス中にレーザー光を入射すると、粒子からの散乱光はそれぞれの粒径に対応した揺らぎを生ずる。ピンホール系の光子検出法を用いてこの揺らぎを観測し、光子相関分光法により散乱強度の変動を解析すると、大きな粒子ほど揺らぎの周期が大きく相関時間の長い相関関数が得られる(PAR−IIIs(PHOTON CORRELATER):大塚電子社製による)。この相関関数は並進の拡散係数Dを含んでおり、この値から下記Einstein−Stokesの式を用いることにより流体力学的粒子径(ストークス径)を算出することができる。溶媒のpHと水中粒径の関係を図5に示す。
Einstein−Stokesの式:d=kT/3πηD
(k:ボルツマン定数、T:絶対温度、η:粘性係数)
【0038】
ヒアルロン酸のpKaは3〜4付近であることが知られており、このpHの前後で粒径が大きく変化すると予想される。高pH領域では、カルボキシル基はすべて解離しているため粒子は膨潤し粒径は大きくなる。一方、低pH領域では、カルボキシル基の解離度が低いため粒子は収縮し粒径は小さくなる。このような粒子の膨潤、収縮を引き起こす理由としては、カルボキシル基間に働く静電相互作用と、ゲル内外に働くDonnan浸透圧が考えられる。カルボキシル基が解離状態にあるとき、カルボキシル基間にはクーロン斥力が働くためにゲルは膨潤する。また、ゲル内に荷電基が導入されると、荷電基の対イオンの運動により、外からゲル内部へ水分子が流れ込み、膨潤する。図5に示す結果は、pHの上昇に伴い粒径が増大したことを示しており、前記機構を裏付けていると考えられる。同図の結果は、特にヒアルロン酸のpKa付近で粒径の変化が顕著であることを示している。
【0039】
(電気泳動移動度(EPM)の測定)
EPMの測定は、粒子表面の電荷状態を知る方法のひとつである。電解質溶液中に、電荷を有するコロイド粒子を分散させると、粒子表面はバルク溶液に対して電位をもつ。この系に電場をかけると、粒子は電場から力を受け、粒子のもつ電荷とは逆の電荷をもつ電極の方へ向かって動く。また、同時に粒子はバルク溶液から粘性抵抗を受ける。しばらくすると、粒子が電場から受ける力と粘性抵抗がつりあい、粒子は等速で動くようになる。この移動の速さを測定し、電場の強さで割ることにより粒子のEPMを求めることができる。
コンパクトゼータ電位測定装置(ZEECOM:マイクロテック・ニチオン社製)を用いて各粒子の電気泳動移動度を測定した。粒子分散液をセル内に満たし、これを装置にセットしてピントを合わせた。ここに電圧をかけ静止面に浮遊している粒子の移動度を測定し、次式を用いて電気泳動移動度を算出した。なお、測定溶媒の調整はNaCl溶液とHCl溶液を用いて行った。
電気泳動移動度:μ=v×d/V
(v:移動速度、d:電極間距離、V:電圧)
分散液(溶媒)のpHとEPM測定値の関係を図6に示す。なお、図中のEPM値の符号(+、−)は、帯電を表す。
【0040】
図6によれば、pHの上昇に伴い、電気泳動度(EPM)の絶対値も大きくなっていることが分かる。図中のEPMはすべて負に帯電していることを示したが、これはヒアルロン酸ゲルのカルボキシル基に由来すると考えられる。EPMの増大は、水中粒径と同様、pH3〜4の間で顕著であり、カルボキシル基の解離度に応じた変化を確認することができた。また、pHの変化に伴い粒径も変化するが、この影響はないと考えられる。低pH領域では、粒子は収縮しており、表面の電荷密度が大きくなる。これはEPMの増大を意味する。しかしながら、解離していない状態では電荷密度を考慮する必要はない。そのため、この要因は無視することができ、pHに伴う解離状態の変化のみの影響が結果に反映されていると考えられる。
【0041】
以上の試験により、本発明による球状ヒアルロン酸ゲル粒子は粒子径にpH応答性を示すことが認められた。また、この応答性はヒアルロン酸のpKa付近で顕著であるが、その他pH域においては安定であることが認められた。本発明による球状ヒアルロン酸ゲル粒子のこのような特性を利用すれば、pH応答性素材への応用や、通常ヒアルロン酸の配合が難しい医薬品や化粧品等へ安定的に配合することができると考えられる。
【0042】
操作型電子顕微鏡(SEM)による粒子形の観察
作製した各ラテックス粒子を適当な濃度に希釈し、ポリスチレン基盤上に沈着固定した。これをAuで真空蒸着した後、カーボンテープで試料台に固定した。これを走査型電子顕微鏡(SEM)(XL−30ESEM:NIKON製)により適当な倍率で撮影し、粒子形態及び表面の様子を観察した。得られたSEM写真を図4に示す。
図4に示すSEM写真より、本発明によるヒアルロン酸ゲル粒子が均一な球状を形成していることが認められた。
【0043】
耐塩性
上記したヒアルロン酸ゲル粒子の製造において、NaCl濃度の変化に伴う水中粒径の変化を調べた。各成分濃度は、ヒアルロン酸濃度を0.135重量%、DTAB濃度を0.245重量%とし、DVS濃度を0.026、0.013、0.0065重量%とした場合についてそれぞれ測定した。結果を図7に示す。
また、同様の測定条件において、前記水中粒径を膨潤度とした結果を図8に示す。
【0044】
図7及び8によれば、DVS濃度が低い場合は、添加塩の静電遮蔽効果により著しい粒子の収縮がみられた。一方、DVS濃度が高い場合は、粒径の低下はほとんどみられず、水中とほぼ同じ状態を保持していることが分かった。DVS濃度が高い場合、粒子の架橋密度も上がるため、粒子内部から水分子が流出しても粒子の形があまり変化しないと考えられる。
上記の結果から、本発明による球状ヒアルロン酸ゲル粒子は、塩濃度の変化による影響の少ない、耐塩性に優れたものであることが分かった。さらに、架橋剤の濃度によって粒子の架橋密度を調整すれば、ゲル粒子の粒径とともに耐塩性の制御が可能となる。すなわち、本発明による球状ヒアルロン酸ゲルは、塩成分を含有する医薬品ないし化粧品等へ、高い安定性をもって配合することが可能であると考えられる。
【0045】
<球形ヒアルロン酸ゲル粒子を用いた単層膜の作製>
本発明による球状ヒアルロン酸ゲル粒子の分散液を遠心濃縮し、高濃度分散液を調製した。これを1cm×1cmにカットした高密度アミノ基ガラス基板にスポットし、2時間ほど乾燥させて粒子を基板に固定した。乾燥後、蒸留水で洗浄して第一層以外の粒子を洗い流し、再び一晩乾燥させて単層膜を形成させた。前記単層膜のSEM写真を図9に示す。
【0046】
表面に高密度にアミノ基を有する基盤を用いたため、カルボキシル由来の負電荷を帯びたヒアルロン酸ゲル粒子とアミノ基由来の正電荷を帯びた基板との間に静電引力が働くと考えられる。したがって、高濃度でヒアルロン酸ゲル粒子をスポットした際、一層目の粒子の基板への付着は非常に強いものであった。一方、二層目以降の粒子に関しては、前記相互作用が働かないとともに、粒子間相互作用も有さないため、洗浄によって容易に除去することが可能である。
【0047】
ここで、例えば、ヒアルロン酸ゲル粒子を皮膚外用剤等に応用する際、塗布時に粒子同士が重なった状態であると、使用効率やコスト効率上好ましくない。そのため、粒子を一層に並べることは非常に重要であると考えられる。
以上を考慮すると、本発明によるヒアルロン酸ゲル粒子は、単層膜作成時に除去した二層目以降の粒子を回収・再利用することができる、生産効率上優れたものであると認められる。また、図9に示すSEM写真からも、本発明によるヒアルロン酸ゲル粒子を均一な単層状に並べることが可能であることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】ヒアルロン酸水溶液の透過率に対するDTAB濃度を示すグラフである。
【図2】本発明の球形ヒアルロン酸ゲルの水中粒径に対するDTAB濃度依存性を示すグラフである。
【図3】本発明の球形ヒアルロン酸ゲルの水中粒径に対するDVS濃度依存性を示すグラフである。
【図4】本発明の球形ヒアルロン酸ゲルのSEM写真である。
【図5】本発明の球形ヒアルロン酸ゲルの水中粒径に対するpH依存性を示すグラフである。
【図6】本発明の球形ヒアルロン酸ゲルの電気泳動移動度に対するpH依存性を示すグラフである。
【図7】本発明の球形ヒアルロン酸ゲルの水中粒径にNaCl濃度依存性を示すグラフである。
【図8】本発明の球形ヒアルロン酸ゲルの膨潤度に対するNaCl濃度依存性を示すグラフである。
【図9】本発明の球形ヒアルロン酸ゲルの単層膜のSEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系溶媒中において、ヒアルロン酸にカチオン性界面活性剤を作用させ球状粒子とする工程を含むことを特徴とする球状ヒアルロン酸ゲル粒子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の工程後、前記球状粒子に架橋剤を作用させる工程を含むことを特徴とする球状ヒアルロン酸ゲル粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の工程後、透析により前記球状粒子を精製する工程を含むことを特徴とする球状ヒアルロン酸ゲル粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載の工程を静置条件下において行うことを特徴とする球状ヒアルロン酸ゲル粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−280408(P2008−280408A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124603(P2007−124603)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】