説明

球状ユニバーサルカップリング

一対の球状歯車はCVジョイントの交差するシャフトを接続する。一方の歯車は内歯を有し、他方は外歯を有する。歯車デザインは同心で同一の半径を有する理論的なピッチ球上の大きな円であるピッチ円に基づく。内歯は円錐形状又は球形状を有し、一方、外歯面は接線方向の平坦な延長部を備えた円筒形である。球状歯車はハーフシャフト上で示される。好ましい実施の形態は各歯車上に6つの歯を有し、1つの好ましい実施の形態はまた内歯のためにボールを使用する。負荷の下で高速回転している間、歯車は任意の方向において60°又はそれ以上の連続的な最大範囲にわたって交差することができる。

【発明の詳細な説明】
【関連する出願に対するリファレンス】
【0001】
このPCT出願は2006年10月27日に出願された「SPHERICAL UNIVERSAL COUPLING」という名称の継続中の出願番号第11/553,736号の一部継続特許出願である2007年10月25日に出願された「SPHERICAL UNIVERSAL COUPLING」という名称の継続中の米国特許出願番号第11/924,130号明細書に開示された1又はそれ以上の発明を請求する。上述の出願は参照としてここに組み込む。
【技術分野】
【0002】
本発明はユニバーサルカップリング及び自動車のハーフシャフトに関し、特に、比較的広い連続する角度範囲(例えば60°又はそれ以上)にわたって任意の方向でシャフトの軸線間の交差角度が180°の整合から変化するのを同時に許容しながら、駆動シャフトから被駆動シャフトへ回転を伝達するような方法で2つのシャフトを直接接続するための定速ユニバーサルジョイントに関する。
【背景技術】
【0003】
角度変化を体験しているシャフト間で回転運動を伝達するための周知の歯車無し手段がある。多分、最も知られたこのような装置は自動車の駆動シャフトとホイール軸とを接続するために使用されるユニバーサルジョイントである。このようなユニバーサルジョイントはしばしば一対のヨークにより相互接続された2つの小さな交差軸の古式的な二重ヨーク(カルダン)形として構成される。しかし、このようなヨーク及び軸ジョイントにより接続されたシャフトは各全回転(1回転)にわたって同じ回転率で旋回しない。それ故、シャフト間に形成された瞬間的な角度を二分する平面内にそのそれぞれの中心を常に維持するように駆動及び被駆動シャフトの各1回転中に個々のトラック内で前後に摺動する摺動ボールにより、角度をなすシャフト間の接続地点が提供されるような定速(「CV」)ジョイント(例えばルゼッパ(Rzeppa)及びバーフィールド(Birfield))が開発された。しかし、このようなユニバーサル及びCVジョイントは極めて複雑で、潤滑するのが比較的困難であり、このようなジョイント素子の設計及び製造は世界中の自動車産業に対する決定的に重要な極めて特殊化された秘伝の技術として幅広く認識されている。このユニバーサルジョイント技術はかなり十分に開発されたが、ジョイントは高価であり、極めて精確(例えば±0.0002インチ/0.005mm)に研磨しなければならない大きな表面積のため製造が困難で高価な多くの部品を含む。このようなジョイントは、伝達できる回転速度に関して、特に有効に作動できる範囲の角度の寸法に関して、制限を受ける。
【0004】
幅広く使用されているルゼッパCVジョイントデザインにおいては、たとえば、ジョイントの毎回転について:(a)内部及び外部の子午線方向(湾曲した長手方向)のボール案内溝穴に沿ったかなりの往復摺動作用、及び、(b)所要の球状ボールリテーナの矩形の溝穴を横切るボールの付加的な横方向の摺動作用;(c)ハウジングカップの雄型球状表面に対する及び溝穴付きコア素子の雄型球状直径に対するこれらのデザインにより要求される球状内側レースの摺動が存在する。頻繁なこれらの摺動作用は作動速度及びシャフト角度に比例して増大する熱を生じさせる。さらに、ルゼッパジョイントデザインはまたボール及びそのリテーナを定速面位置内へ強制するために内側及び外側の子午線方向のボール案内溝穴に対してカム修正を必要とする。このようなカム角度はまた、溝穴に沿ったボール運動の一部が純粋な転がり運動ではなく摺動運動として生じることを保証する。
【0005】
既存の商業的なCVジョイントデザインにおける運動制限に関して、ルゼッパ子午線溝穴の漏斗角度(又は組み合わせの内側及び外側カム角度)はボールの押し込み摩擦を回避するために15°よりも大きくする必要があり、したがって、それぞれの内側及び外側のボール案内溝穴はむしろ急激に収斂及び開拡し、妥当に寸法決めされたCVジョイント組立体パッケージに収容できる全体の角度範囲を制限してしまう。
【0006】
新規な形式の「球状」伝動装置を使用するユニバーサルカップリングは米国特許第5,613,914号明細書に開示されている。この特許及び世界中のその多くの対応する特許は種々のデザインの開示されたCVジョイント内へ組み込むことのできるいくつかの異なる可能な歯形状を有する球状歯車を開示している。この球状伝動装置は根本的に異なる歯車幾何学デザインに基づく。すなわち、2つのシャフト間で定速度を伝達するための単一対の歯車の使用は、歯車の一方が内歯を有し、他方が外歯を有するようなデザインにより達成される。2つの歯車のピッチ円は同一の寸法で、事実上同じピッチ球上で大きな円として常に維持される。球状幾何学形状において自明のように、このような大きな円は2つの地点で交差し、交差した大きな円間(即ち2つの歯車のピッチ円間)の球体の表面上に形成された対をなす弓形は球体の表面のまわりで巨大なレムニスケート(「8の字」)を描く。番い合う歯車間で分担される歯接触地点の相対運動が歯車シャフトのすべての相対角度調整においてそれぞれのレムニスケートを描くので、2つのシャフトは定速で回転する。
【0007】
各球状歯車のピッチ円は同じピッチ球上で理論的な大きな円となるように示したが、対の各歯車をそれ自身のそれぞれの理論的なピッチ表面を有するものとして考えることにより、このような球状伝動装置を一層容易に概念化することができ、それによって歯車間の必要な相対運動を許容する。したがって、各球状歯車はまた、各ピッチ球がそのそれぞれの軸線のまわりで独立して回転するのを許容しながら、一致する中心及び実質上同一の半径を有する一対のそれぞれのピッチ球のそれぞれ1つの形としてそれ自身のそれぞれのピッチ表面を有するものとして理論的に考えることができる。それゆえ、歯車対のピッチ円が180°だけ離れた2つの地点(即ち「極」)で互いに有効に交差し、2つのそれぞれのピッチ球の回転軸線がすべての交差角度で2つのピッチ球の一致する中心において常に交差するように、各ピッチ円はまた、これらの実質上同一のピッチ球のそれぞれ1つ上のそれぞれ大きな円となるものと理論的に考えることができる。
【0008】
一対の全寸法の鋼鉄製の歯車を作り、ベンチテストを行ったところ、シャフト間の角度が広い角度範囲(例えば標準の商業的な自動車のCVジョイントにより現在達成されているものよりも一層広い角度範囲)にわたって連続的に変化している間に高速で作動するときに、球状伝動装置が角度接続のために小さな摩擦で実質上真の定速を提供できることを明確に確認した。不運にも、上記米国特許第5,613,914号明細書に開示された球状伝動装置はかなり複雑で、製造が困難であり、商業的なCVジョイントの使用にとって必要な実用性に欠けている。
【0009】
ユニバーサルジョイントは(a)車両の駆動シャフトにおける角度的な相互接続を提供するための相互係止ヨーク(例えばカルダンジョイント)及び(b)車両の旋回及びバウンド駆動ホイールを備えた駆動差動装置の出力シャフトを接続するための自動車のハーフシャフト駆動軸の形として現在使用されている。典型的な商業的ハーフシャフトは一端における2つの異なる形式のユニバーサルジョイント例えばルゼッパユニバーサルジョイント及び他端におけるトリポットユニバーサルジョイントを含む。これらの各ジョイントは複雑で、製造が高価である。ルゼッパユニバーサルジョイントは上述のようにそれぞれの精確に研磨したトラック(軌道)の複合体内で前後に摺動する6つの精確に研磨したボールを使用し、トリポットユニバーサルジョイントは3つの精確に研磨した球状ローラと、直線的に研磨したトラックとを使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,613,914号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
一対の球状歯車はCVジョイントの交差するシャフトを接続する。一方の歯車は内歯を有し、他方は外歯を有する。歯車のデザインは同心で同一の半径を有する理論的なピッチ球上の大きな円であるピッチ円に基づく。内歯は円錐形状又は球形状を有し、一方、外歯の面は接線方向の平坦な延長部を備えた円筒形である。球状歯車はハーフシャフト上で示される。好ましい実施の形態は各歯車上に6つの歯を有し、1つの好ましい実施の形態はまた内歯のためにボールを使用する。負荷の下に高速で回転している間、歯車は任意の方向において60°又はそれ以上の連続的な最大角度にわたって交差することができる。球状歯車のデザインは、製造を一層容易かつ安価にしながら、既存のジョイントよりも軽量だが一層強靭な実用的な商業的CVジョイントを提供する。球状歯車デザインを使用するハーフシャフトも開示する。
【0012】
本発明の一対の球状歯車は車両の駆動シャフトの交差するシャフトを接続するために実質上真の定速ジョイントとして機能する。外側歯車は内歯を有し、対の内側歯は外歯を有し、各々は同心で同一の半径を有する理論的なピッチ球上の大きな円であるそれぞれのピッチ円を有する。しかし、本発明の球状歯車の個々の歯のデザインは上記米国特許第5,613,914号明細書に開示されたデザインとは根本的に異なり;本発明の球状伝動装置の幾何学構造が異なっても、連続する一層小さな球間の接触の地点がすべて歯車の同一のピッチ円の円周上に位置するように、円として配置された複数の個々の一層小さな構造球を使用する。
【0013】
各歯車の歯の各歯面は各歯車のピッチ球であるそれぞれの理論的な大きな球の大きな円上でセンタリングされ、各大きな円の軸線はそのそれぞれの交差する駆動シャフトの軸線と常に整合する。外側歯車の個々の歯の歯面は円錐状か又は球状に形状づけられる。円錐状に形状づけた場合、各円錐面の寸法は円錐のそれぞれの一層小さな構造球のピッチ円に対して接線方向となるように構成され;球状に形状づけた場合、各球状面は好ましくはそのそれぞれの個々の一層小さな構造球と同じ直径を有する内側ボール歯により提供される。
【0014】
外側歯車の歯の各歯面は(i)そのそれぞれの個々の一層小さな構造球の正規の円厚さの半分に等しい半径を備えた円筒状の中央部分と、(ii)歯車を交差させたい連続的な角度の所定の最大角度に応じて中央部分から接線方向に延びる2つのそれぞれの平坦な面延長部と、を有する。好ましい実施の形態は各歯車上で6個のみの歯を使用し、負荷の下において高速で回転している間、歯車は60°又はそれ以上の連続的な最大範囲にわたって交差することができる。[注:当業者なら、ここで開示される球状歯車のジョイントの2つを(二重カルダンユニバーサルジョイントのように)背中合わせに配置することにより、120°又はそれ以上の連続的な最大範囲にわたって交差するシャフトにより定速回転運動を伝達できることを直ちに認識できよう。]
1つの実施の形態においては、本発明の球状歯車CVジョイントはジョイントの1つのシャフト端部上の小さなプランジアダプタと一緒に自動車のハーフシャフトに組み込まれる。ハーフシャフトの別の実施の形態においては、プランジアダプタはカップリングの1つのボール歯歯車のための装着体の一部として組み込まれる。既存の商業的なハーフシャフト組立体と比較して、両方の実施の形態は(a)摺動作用並びにこのような摺動により生じる関連する熱及び磨耗を大幅に減少し、(b)CVハウジングカップの極めて困難な内側湾曲又は傾斜溝の研磨の必要性を排除し、(c)その困難な内側及び外側の球状研磨及び精確なボール溝穴研磨を伴う別個のボールリテーナの必要性を排除し、(d)したがって、別個のボールリテーナを適正に位置決めするためのカム作用溝穴の修正の必要性を排除する。雌型溝穴セット間の運動伝達リンクとして使用されるこの商業的なCVジョイントのボールリテーナ及びボールセットの中間の機能は、素子間の好ましい転がり作用を伴う直接被駆動雄型/雌型幾何学形状と交換される。
【0015】
さらに、本発明のハーフシャフトの実施の形態の各々はプランジ無し外側の及びプランジ付き内側のCVジョイント副組立体の双方において共通デザインの球状歯車素子を使用し、在庫、生産、組立ての複雑さ及びコストを減少させる。
【0016】
ここで開示される定速ジョイントは、たとえば、自動車のエンジンシャフトと車両の駆動ホイールとの間で駆動トルクを伝達するために、または、自動車のエンジンの出力シャフトにピストンロッドを接続することによりエンジンピストン上の接線方向の負荷を減少させるために、等々、シャフトが可変角度で交差している間に、駆動シャフトから被駆動シャフトへ回転を伝達する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】その軸が180°の整合状態で示す、それぞれの軸シャフトを備えた本発明に係る球状歯車CVジョイントの概略部分断面図である。
【図2】180°の整合状態から外れて所定の最大角度x°で交差し、それによってすべての方向において2x°(60°)の連続する全体の角度にわたって角度運動を提供するそれぞれの軸シャフトを示す(図は30°で交差するシャフトを示す)、図1のCVジョイントの第2の図である。
【図3】図3Aはほぼ図2に示す方法で配置された一対の回転する球状歯車の理論的な球状ピッチ表面上の第1の位置での歯接触地点のセットの相対位置を概略的に示す図であり、図3Bは図3Aの位置を通過して1/4回転した第2の位置での歯接触地点のセットを概略的に示す図であり、図3Cは図3Aの位置を通過して1/4回転した第3の位置での歯接触地点のセットを概略的に示す図である。
【図4】図3A、3B、3Cに示す歯接触地点のセットのうちの1つのセット間の相対運動をグラフ的に示す図である。
【図5】図5Aは本発明の実施の形態における一対の球状歯車のための歯形状を決定するための幾何学構成での第1の段階を示す図であり、図5Bは一対の球状歯車のための歯形状を決定するための幾何学構成での第2の段階を示す図であり、図5Cは一対の球状歯車のための歯形状を決定するための幾何学構成での第3の段階を示す図であって、図5Cは外側歯車の1つの歯面の一層詳細な構造を示すために図を明瞭にする拡大図であり、図5Dは一対の球状歯車のための歯形状を決定するための幾何学構成での第4の段階を示す図であって、図5Dはこのような歯デザインを使用する一対の歯車の一部の概略断面図を伴う幾何学構造の組み合わせである。
【図6】図6Aは図1、2の実施の形態の変形例に係る球状対の第1の歯車のデザインの斜視図であり、図6Bは図1、2の実施の形態の変形例に係る球状対の第2の歯車のデザインの斜視図である。
【図7】図6A、6Bに示す本発明のCVジョイントの変形例の分解部品図である。
【図8】軸の軸線間の種々の交差角度での2つの噛み合う歯面の各々上の接触線の相対位置を示す、図7のCVジョイントにおける球状歯車の噛み合う歯により分担される線接触の位置を表すチャートであり、歯面の形状は図の表面上で平坦化され、知覚認識を容易にするように僅かに誇張されている。
【図9】図9Aは図を明瞭にするために第1の歯車の内歯のためのカップ支持体を図示省略した状態での、図7のCVジョイントの第1の図であり、図9Bは図9Aのような噛み合い係合中の同じ時間瞬間での球状歯車の反対側の極から見た、図7のCVジョイントの第2の図である。
【図10】図10Aは第1の歯車の内歯のためにボールを使用する、本発明に係る球状歯車CVジョイントの実施の形態の概略部分断面側面図であって、それぞれの軸シャフトはその軸線が180°の整合状態で示されたものであり、図10Bは面10B−10Bに沿って見たような図10Aの実施の形態の概略部分断面端面図であり、図10Cは明瞭さを改善するために他の部分を図示省略した、図10A、10Bに示す球状対の第2の歯車の斜視図である。
【図11】図10A、10B、10Cに示す本発明のCVジョイントの実施の形態の分解部品図である。
【図12】本発明のCVジョイントがCVジョイント及びハーフシャフト作動のためのスライダの双方として機能するのを許容する図11に示すボール歯の実施の形態の第1の歯車の装着体の変形例の分解部品図である。
【図13】図13Aは図12に示すボール歯の実施の形態の概略部分断面端面図であり、図13Bはカップ状支持体内でのコアハウジングの運動の摺動運動の範囲を表すためのボールを点線で示す、図13Aの面13B−13Bに沿って示すボール歯の実施の形態の概略部分断面側面図である。
【図14】本発明のCVジョイントのみを使用する二重ユニバーサルジョイントを示す概略図である。
【図15】プランジユニットスライダと組み合わせた、各端部において本発明のCVジョイントを備えたハーフシャフトを示す概略図である。
【図16】図16Aは図15のハーフシャフト上の本発明のCVジョイント間に位置した状態のプランジユニットスライダを示す側面図であり、図16Bは図16Aの面16B−16Bに沿ってとった断面図である。
【図17】ハーフシャフトの外側端部でCVジョイントを図11に開示された実施の形態と交換し、ハーフシャフトの内側端部でCVジョイント及びスライダを図12に開示された実施の形態と交換した、図15に示すハーフシャフトの部分を示す概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
球状歯車デザイン
図1及び図2は一対の回転するシャフトを相互接続するための球状歯車を使用する定速ユニバーサルジョイントを示す。図1は第1のシャフト14に固定された一端を有するカップ状支持体内で固定された(内歯58を備えた)外側歯車10の概略部分断面図である。(外歯60を備えた)番いの内側歯車20は回転するように第2のシャフト16に固定される。図1において、シャフト14、16は、そのそれぞれの軸線22、24が180°の整合状態で位置するように示してある。軸線22、24はまた番い合う球状歯車10、20のそれぞれの軸線でもある。
【0019】
球状軸受は適正な噛み合い関係で番い合う歯車10、20を維持する。この実施の形態においては、この球状軸受は(a)好ましくはボルト18によりカップ状支持体12のベースに固定されたセンタリングボール26である内側部材と、(b)歯車20の内部に形成されたハブ28の形をした外側部材と、を有する。外側部材はセンタリングボール26を捕縛し、C形クリップ25によりハブ28内に保持された2つの球状リング27、29を含む。各歯車10、20の同一の理論的なピッチ球の中心点30は球状軸受の内側部材26内で示され、軸線22、24は各々中心点30を通る。
【0020】
図2はシャフト16を図示省略した状態で、図1に示すものと同じ球状歯車構成を示す。しかし、図2においては、シャフト14、16の軸線22、24はそれぞれx°で、即ち、回転力が伝達されている間にシャフト軸線がそこまで可変に交差できるようなある所定の最大シャフト角度x°で、交差している状態で示される。図2に示す実施の形態においては、所定の最大シャフト角度x°は180°の整合から30°であり、それ故、図示の球状歯車対はすべての方向において2x°までのシャフト間の角度交差の連続的な範囲にわたって(即ち、この好ましい実施の形態においては、60°までの範囲にわたって)回転力を伝達するように設計される。
【0021】
歯車20の外歯60は軸線22、24の交差部で中心点30(図1参照)を通る枢動軸線のまわりで枢動する実線として示される。歯車20は第1の方向において角度x°(この実施の形態では30°)で歯車10に関して枢動し、歯車20の内歯60はまた反対方向において角度x°で軸線32のまわりで枢動する仮想線で示され、すべての方向において2x°(この実施の形態では60°)の全運動範囲を提供する。
【0022】
これは、回転力が満足に伝達されている間に歯車対を可変に枢動させることのできる交差の幅広い角度範囲を示す。シャフト軸線間のこのような角度相対運動中、常に、歯車10、20は2つのそれぞれの噛み合い領域で噛み合いを維持し、各噛み合い領域の中心は、歯車のピッチ円がそこで枢動軸線32と交差するような2つのそれぞれの地点のうちの1つに位置し、これについては後にさらに説明する。
【0023】
図1、2に示すCVジョイント構成においては、球状歯車10、20は、そのそれぞれのシャフトが1:1の比で回転するときに互いに関して回転しないような既知の歯車カップリングと同様の方法で機能する。しかし、そのそれぞれのシャフトの角度方位が(図2に示すように)180°の整合から外れるように可変に調整される場合、歯車の歯は、歯車が同じ速度で常に回転する場合でさえ、2つのそれぞれの噛み合い地点で連続的に噛み合ったり噛み合い解除されたりする。これもまた後にさらに説明する。
【0024】
噛み合ったり噛み合い解除されたりする歯車10、20の歯のこの相対運動は図3A、3B、3Cに概略的に示され、これらの図はそれぞれ、軸線22、24がx°の所定の最大角度で交差するときの軸線22、24のまわりでの相対歯車回転の3つの異なる位置を表す。図3A、3B、3Cは、番い合う歯車歯が噛み合ったり噛み合い解除されたりするように運動するときの歯接触地点の4つの異なるそれぞれのセットの相対前進を示す。
図3Aにおいては、内側歯車10上の歯接触地点Aは外側歯車20上の歯接触地点A´と噛み合う;同時に、内側歯車10上の歯接触地点Cは外側歯車20上の歯接触地点C´と噛み合う。図3Bは、歯車が1:1で1/4回転した後の各歯車上の同じ歯接触地点を示し、歯車10の歯車歯接触地点D、B及び歯車20の地点D´、B´はこのとき噛み合い接触する。更なる1/4回転に続き、図3Cに示すように、歯接触地点A、A´とC、C´は再度噛み合うが、図3Aに示すその初期の接触位置から180°の相対位置で噛み合う。
【0025】
図3A、3B、3Cに示す歯接触地点はすべてそのそれぞれの歯車のピッチ円上に位置する;そして、これらのピッチ円は各々、理論的な効果において、同じ球上の各大きな円である(上述の背景技術参照)。幾何学的には、すべての大きな円は180°離れた2つの位置で互いに交差する。球状歯車の運動の説明において、これらの交差地点は「極」と呼ぶ。図4は図3A、3B、3Cに示す歯接触地点のそれぞれのセットの1つのセット間の相対運動をグラフ的に概略的に示す。すなわち、図4は、歯車10、20が一緒に完全1回転するときのそのそれぞれのピッチ円10´、20´に沿った歯接触地点A、A´の運動をトレースしたものである。それぞれのピッチ円は平坦な投影図として示すが、各歯接触地点はレムニスケート様のパターン(「球の表面上の8の字」)をトレースすることが分かろう;ユニバーサルジョイント分野において周知のように、このようなレムニスケート運動は2つの関節的シャフト間の定速度を伝達する場合に本質的なものである。
【0026】
球状歯車歯のデザイン
この球状歯車システムにとって適する歯車歯のデザインパラメータを決定するための他の方法があるが(上述の背景技術参照)、本発明の第1の実施の形態においては、このようなデザインは好ましくは図5A、5B、5C、5Dに示す次の幾何学的構成により行われる:
(1)ここに開示された球状歯車歯のデザインにおける第1の段階は伝動装置分野において周知のものと同じ方法でアプローチされる。すなわち、歯車対のための寸法及び強度仕様は歯車により遂行されるものと期待される用途に従って決定される。たとえば、ここに開示された好ましいCVジョイント歯車は軽トラック自動車の操舵/駆動軸において使用するように設計される。歯車の歯末円(最大直径)は普通伝動装置を作動させなければならない物理的な空間により制限され、ダイヤメトラルピッチは、歯の弦方向厚さ(即ちピッチ円に沿った各歯の弦方向厚さ)が噛み合う歯により担持されるべき最大予測負荷を許容するのに十分となるように、選択しなければならない。これに関し、運動を伝達するために本発明に係る一対の球状歯車を使用する場合に、歯車が同じ寸法の従来の対の歯車の2倍の負荷を取り扱うことができることを覚えておくことが本質的である。すなわち、歯車対が180°離れてセンタリングされた2つの噛み合い領域(極領域)を分担するので、同じ寸法の従来の歯車対のものよりも2倍も多くの噛み合い歯を有する。
【0027】
(2)上述したような各歯のための同心のピッチ球に加えて、本発明は複数の個々の一層小さな構造球を使用する。一層小さな構造球の数は最終の歯車対において望まれる歯の全数に応じて選択され、一層小さな構造球は、連続する一層小さな球間の接点がすべて歯車の同一のピッチ円の円周上に位置するように、円形に配列される。この状態は図5Aに示す第1の構成のパラメータを必要とする。本発明の好ましいデザインにおいては、各歯車は6個のみの歯を有するように設計され、その結果、球状歯車の軸線が180°で整合したときに、すべての12個の歯が完全に噛み合う。それゆえ、この好ましいデザインの構成については、12個の小さな同一の球40は2つの歯車の所定の同一の理論的なピッチ円42の中心30のまわりで円形に配列される。球の直径dは、球が2つの歯車の所定の同一の理論的なピッチ円42に沿って互に正接するように、選択される。上述のように、各歯車のピッチ円は伝動装置を作動させなければならない限られた物理的な空間内に嵌るように寸法決めされた歯車の同一のピッチ球上の大きな円である。各一層小さな球40は1つの大きな歯を表現し、12個の小さな球は、歯車軸線が180°にあるときに完全に噛み合うすべての12個の歯を表現する。[注:当業者なら、一方の歯車の歯が対の他方の歯車の歯とは異なる弦方向の厚さを有するような番い合う歯を備えた歯車対を設計することができることを認識できよう。このようなデザインが望ましい場合、一層小さな構造球の半分は他の半分よりも一層小さいが、異なる寸法の構造球は依然として同様の様式で互に交差し、この場合、連続する一層小さな球の接触地点はすべて歯車の同一のピッチ円の円周上に、すなわち、2つの一層大きい理論的な同心球の大きな円上に同様に位置する。]
(3)構造はピッチ円42の一致する中心に位置する付加的な小さな中央の球44を含み、小さな中央の球44は小さな球40と同じ寸法を有する。
【0028】
(4)中央の球44及び小さな球40の選択された1つを含む構造体は内側歯車の各直線側部の歯の円錐形状の歯面の円錐表面のための頂点角度を決定するために使用される。2つの交差する線46、47は中央の球44の両側に対して接線となるように構成され、各それぞれの接線46、47は、選択された球40がその隣接する球と共有するような2つの接触地点のそれぞれ1つを通る。すなわち、線46は接線地点48を通り、線47は接線地点49を通る。円錐構造50は図5Aに太い実線で示し、円錐構造50は図5Bの頂面図に示す内歯58´の歯面56´、57´の円錐表面の頂点角度52を決定するために使用される。円錐頂点角度52の寸法は交差する線46、47の交差地点cにおいて形成された包含角により決定される。図1、2に示す本発明の好ましい実施の形態においては、この構造体は60°の円錐頂点角度を提供する。
【0029】
(5)図5Aに示す同じ構造体は各歯車歯の正規の弦方向厚さ54を決定するために使用される。この構造体においては、正規の弦方向厚さ54はそのそれぞれの歯車のピッチ線における各選択された一層小さな球40上で、即ち、1つの選択された球40がその隣接する球と共有するような2つのそれぞれの接触地点の各々間で、測定される。この正規の弦方向厚さ54はまた図5Bにおいては内歯58´上で及び図5Cにおいては外歯60上で示される。
【0030】
(6)図5Aに示す構造体はまた歯車対10、20(図1、2参照)により分担される内側球状軸受部材であるセンタリングボール26の最大寸法を決定するために使用される。中央の球44の両側に対して接線となるように構成され、内側歯車の歯の円錐形状の面の頂点角度を決定するために使用される2つの交差する線46、47を再度参照する。線46、47は地点cで交差し、地点cと中心30との間の距離は円59の半径を決定する。円59はセンタリングボール26の最大円周を提供する。
【0031】
(7)球状対の外側歯車の各歯60の構造は図5Cに拡大して示し、歯60それ自体は太い実線で表す:
シリンダ即ち円筒62は歯60の2つの面の各々の中央部分64を提供する。円筒62は一層小さな球40上で測定した正規の弦方向厚さ54を形成する正規の円形厚さの1/2である半径を有する。円筒状中央部分64の各側から、各外歯面は所定の最大角度x°(その範囲で歯車対の作動を期待するような歯車の軸線間の最大交差角度)に応じて変化する平坦な面延長部66を含み、図示の構成においては、所定の最大角度は30°である。もちろん、円筒状の中央部分64の各側に1つずつ、2つの平坦な面延長部66が存在する。
【0032】
各平坦な面延長部66はそのそれぞれの歯面の中心線65からx°で位置するそれぞれの初期の接線地点tにおいて開始し、2x°を決める円筒状の中央部分62の半径方向の線と交差する地点eへ延び、そのため、各平坦な部分の長さt−eは初期の接線地点tを越えて付加的なx°だけ延びる。平坦な面接線延長部66は(点線で示すように)更に延びることができるが、各平坦な面延長部66のx°の長さは、歯車の軸線が最大所定角度で交差するときに完全な線接触を保証するのに十分なものである。好ましくは、図5Cに示すように、平坦な面延長部66の各それぞれの外側端部は先に述べたx°の長さを決める地点eを越えてある所定の小距離で中止する。外歯60の先に述べた歯面の各々は平坦又は図示のように僅かに丸くなることのできる2つのそれぞれの歯端表面68と交差する。
【0033】
(8)外歯の1つの作業面の各接線方向の平坦な延長部を発展させるための構造は図5Cの左側部分に示す。
図3A、3B、3Cの図から認識できるように、歯車20の円形軌道が内側歯車10の円形軌道の面から離れる任意の方向においてある角度で傾斜したとき、外歯の円形軌道は歯車10の面から見た場合に楕円を呈する。また、歯車10の面から垂直に見た場合、外側の基本的な地点は不整合になる(たとえば、図3Aにおいて:地点A、A´及びC、C´が極で噛み合っている間、地点B´、D´は地点B、Dから垂直に見た場合地点B、Dの内側にくる)。それ故、歯車の軸線間の交差角度が180°からずれた場合、外側歯車20のピッチ円は内側歯車10のピッチ円の円弧に関して有効に「楕円弧」となる。
【0034】
図8、9A、9Bを参照して後に更に詳細に説明するが、外歯が内歯と噛み合うように回転するとき、これらの歯は内側歯車の面の上方又は下方のいずれかから楕円弧に沿って近づき、外歯が噛み合いから外れるように回転するとき、これらの歯は反対方向に噛み合いから離れる。外歯が面の下方から入回転する場合、これらの歯は面の上方で出回転する。外歯が内歯の面の上方及び下方で移動する距離は歯車の大きな円であるピッチ円間の交差角度の関数である。
【0035】
外歯が内側歯車の面の下方から楕円に沿って噛み合いのために接近するとき、歯接触が1つの極において各歯面の一方の側で生じ、同じ外歯が内側歯車の面の上方から楕円に沿って噛み合うために接近するとき、同様の歯接触が同じ歯面の他方の側で生じる。図5Cの構造の目的のため、楕円弧が好ましい最大角度x°(30°)におけるものであると仮定する。内側歯車10の面の下方から接近する楕円弧の経路の一部は線aで示し、一方、内側歯車10の面の上方から接近する楕円弧の経路の一部は線bで示す。
【0036】
この構造においては、(歯面の中央部分64を形成する)円筒62の中心は基礎的な円筒62の中心を通る水平線の上方で描かれた複数の付加的な円弧(4つのみのこのような円弧を示す)を形成するように接近線aに沿って移動する。同様に、別の複数の円弧(これまた4つのみのこのような円弧を示す)は基礎的な円筒62の中心を通る水平線の下方で描かれた状態で示す。すべてのこれらの付加的な円弧に対する接線Tは円筒状の中央部分64の各側で平坦な面延長部66の輪郭を決定する。別の方法でこれを述べると、各平坦な面66は初期の接線地点tで開始し、歯車の軸線最大角度x°で交差している場合に半径方向の中心が外側歯車の大きな円であるピッチ円に沿って移動するにつれて円筒状の中央部分64の半径方向の中心の運動線(a又はb)に平行に延びる。
【0037】
図示の構造の理解を容易にするため、延長部66は2x°(60°)の半径方向の線を決める地点eにより示される必要最小長さを越えて小距離だけ続く。この構造においては、平坦な歯の端表面68は僅かに丸くされており、正味の形成製造工程に対する一層従順なデザインを示す。
【0038】
(9)最終の構造については、歯車の半径方向の中央面における内側歯車10及び外側歯車20の部分概略図である図5Dを参照する。上述した方法で構成されたそれぞれの歯車歯は、そのそれぞれの軸線が180°で整合しているときに歯車が完全に噛み合った状態で、示す。2つの外歯60と噛み合う3つの内歯58を示す。先に示したように、すべての歯の作業表面は直線側部を有することが分かろう。外歯60は正規の弦方向厚さ54の長さに等しい直径を有する円58からの延長線56により決定された寸法を備えたスプライン形状を有する。
【0039】
本発明の球状歯車の軸線が180°の整合状態にあるとき、歯車10、20のすべての歯は歯車カップリングの歯と同じ方法で一緒に噛み合う。しかし、上述のように、球状歯車の軸線が180°の整合状態から外れた場合、歯車は各極即ちその2つの分担された噛み合い中心において噛み合ったり噛み合い解除したりするように連続的に運動する。これに関し、球状歯車の好ましい実施の形態においては、実質的なバックラッシは不必要であることを理解すべきである;ただし、もちろん、製造組立て及び潤滑のためにそれぞれの歯車の歯間に公差(例えば0.002インチ/0.05mm)が存在する。また、歯の頂部ランド部は球状のリリーフを具備する。
【0040】
一対の球状歯車の斜視図を図6A、6Bにそれぞれ別個に示す。この実施の形態においては、図6Aにおける第1の(外側の)歯車10´は内側表面を有する基礎的な支持リング70を含み、この表面から、各内歯58´が歯車10´の軸線22´に垂直に延びる。リング70は、歯車10´がカップ支持体と一緒に回転するように固定されるように、第1の歯車10´のためのカップ状支持体(例えば、図11Bのカップ112´参照)の外側と番い係合するように形成されたくぼみ(インデント)付きリム72を有する。この図はこの実施の形態の各内歯58´の各円錐形状の歯面56´、57´の作業表面を境界決めする平坦な歯端表面74を見ることを一層容易にする。このような平坦な端表面は重量を減少させるが、完全だが部分的に中空の円錐(図1、2、7に開示された好ましい実施の形態参照)を形成するように各歯の歯無し面部分を満たすことにより、形成製造を容易にすることができ、付加的な強度を達成することができる。
【0041】
図6Bにおいては、外歯60´は、この実施の形態ではそれぞれのシャフト(例えば図1のシャフト16)を受け入れるためのスプライン開口を一端に備えたハブ28´のまわりでリングとなって装着された第2の(内側の)歯車20´の軸線24´に垂直に延びる。ハブ28´の他端(図示せず)はジョイントのセンタリングボール(例えば図1、2のセンタリングボール26)上に番い嵌合する。この斜視図は円筒状の中央部分64及び各外歯60´の作業歯面を形成する平坦な面延長部66を見ることを一層容易にする。これまた、上述のように、平坦な端表面68は製造を容易にするために丸くすることができる。また注目すべきは、外側歯車の各頂部ランド部の球状リリーフである。
【0042】
図7は図1、2に示す本発明のCVジョイントのデザインの分解部品図を示す。この好ましい実施の形態においては、外側歯車10の歯58は別個に形成され、支持カップ12の壁の予め形成された孔13内に圧入され、一方、内側歯車20の中空の歯60はハブ28の外部のまわりに形成される。上述のように、センタリングボール26はハブ28内でC形クリップ(この図には示さない)により保持された球状リング27、29間に捕縛される。CVジョイントはカップ12のベース内に締結されたボルト18により一緒に保持される。内歯58及び外歯60の双方は金属及び重量を節約するため中空にする。外歯60はハブと一体的に形成することができるか又はハブ上に嵌合される別個のリングとして形成することができる。
【0043】
歯接触パターン
上述した直線側部の歯表面は全体の連続する交差角度中噛み合い全体にわたって比較的長い接触線を生じさせる。この線接触の長さは、歯車の軸線が直線的に整合する場合の完全噛み合いでの接触を示す図5Dにおいて最も容易に見ることができる。当業者なら、この線接触がかなり長いことを認識できよう。たとえば、開示されたような本発明に従って設計された実際のジョイントにおいては、各一層小さな球40は0.75インチ(19mm)の直径を有し、歯車のピッチ円42は2.625インチ(67mm)であり、センタリングボール26は0.9375インチ(24mm)の直径を有し、線接触の長さは0.4375インチ(11mm)であった。
【0044】
歯車の軸線が整合から外れるように移動すると、噛み合いはすべての12個の歯から迅速に移動し、負荷の大半は主に4つの歯により担持される。すなわち、上述のように、球状歯車の軸線が整合から外れるように移動すると、歯車の大きな円であるピッチ円は(例えば、北極及び南極で交差する地球儀上の経度の円のように)180°離れた2つの「極」で交差する。極めて小さな交差角度を除いて、負荷の大半は各極位置で噛み合う各歯車上の2つの歯により分担される。しかし、円滑な遷移が各極において連続するセットの噛み合う内歯及び外歯間に存在するように、十分なオーバーラップ即ち重なりがある。すなわち、歯接触は、歯の後続の対上へ入回転するときに、先行の歯の対から出回転する。
【0045】
交差角度が増大しても、線接触の長さは同じ長さを維持する。線接触パターンは図8に示すチャートにおいて暗い太い線で示し、図8は、歯が極位置を通って移動する瞬間での−30°、−18°、−12°、−6°、0°、+°、+12°、+18°及び+30°における内歯(I)及び外歯(E)の双方のそれぞれの歯面上の接触線の位置を示す。分かるように、線接触は常に内側歯車の外歯の歯面に対して垂直を維持するが、外側歯車の各円錐状の内歯面上で垂直から離れるように傾斜する。歯車間の角度が増大すると、接触線は歯車面のそれぞれの中心から離れるように延びるますます大きな接触領域を通って回転する。各外側歯車面上の線は歯車面に対して垂直を維持するが、それぞれの円錐状の内歯面上の線は、円錐状の歯面の中心から離れるように動くときに、垂直に対してますます傾斜するようになる。図8に示す線は各軸方向の交差角度での接触パターンの外側極限を示し、歯車は歯面の中心から図示の位置へ接触を通して回転する。
【0046】
線接触が1つの極においてそれぞれの歯面上で左方へ運動し、傾斜するとき、これらは反対側の極において正確に同じ方法で右方へ運動し、傾斜する。この最後に述べた事実を理解し難いことがあるので、(a)右回り方向に一緒に回転する一対の球状歯車の理論的な球状ピッチ表面上の歯接触地点のセット間の相対運動を示す図3A、3B、3C及び(b)歯車の軸線が水平から最大角度x°(図示の好ましい実施の形態では30°)で交差し、2x°(図示では60°)の全角度変位を提供する場合のそれぞれの極の近傍で接触する歯車を示す図9A、9Bを再度参照することを提案する。図9A、9Bにおいては、歯車が図示の右回り方向においてそのそれぞれの軸線のまわりで回転し、外歯60が内歯58を駆動しており、外側歯車の歯底円から見たものであると仮定する。[注:図9A、9Bにおいては、外側歯車10(図1、2)の歯のためのカップ状支持体12は図を明瞭にするために図示省略してある。]
図9Aにおいて、内側歯車20の中央の外歯60は、歯60が外側歯車10の面の下方から上昇するときに、1つの極と精確に整合し、これは内歯58との接触から外れるように移動する瞬間の直前を示す。この接触線の位置は矢印76で示す。図9Bは同じ時間的瞬間における図9Aの同じ歯車対を示すが、反対側の極から見た図である。図9Bにおいては、内側歯車20の中央の外歯60はこれまた反対側の極と精確に整合するが、もちろん、外側歯車10の面の上方から下方に移動する状態で示され、これまた内歯58との接触から外れるように移動する瞬間の直前を示す。この後者の接触線の位置は矢印77で示す。
【0047】
図9A、9Bにおいては、各中央に位置する外歯60の頂部ランド部の一部は細い交差ハッチングで示され、これは歯の全体の作業面との整合を示している。一連の暗い直線は図9Aにおける外歯60の作業面の下半分上で現され、同様の一連の直線は図9Bにおける外歯60の作業面の上半分上に見られる。これらの線は図8において先に示した一連の線接触を表し、各極におけるそのそれぞれの噛み合い係合を通して回転するときの歯により分担される接触パターンを示す。これらのそれぞれの接触は各歯面の両側の半部分上で同時に生じ、負荷及び磨耗の双方のバランスを提供する。
【0048】
負荷の大半は各極で噛み合う2つのみの歯により分担されるが、少なくとも4つの歯は常に完全に噛み合い、全負荷は180°だけ離れた少なくとも2つの地点間で常に分割される。たとえば、上述の実施の形態に従って設計された実際のジョイントに戻ると、線接触の長さは0.4375インチ(11mm)である。それ故、全負荷が合計0.875インチ(22mm)となる2つの線にわたって分布されることが重要である。また、歯が両方の歯車の両側で2つの極において同時に噛み合うときに、負荷は歯車上で常に平衡される。
【0049】
背景技術において上述した従来の球状伝動装置からの別の極めて重要な違いにおいては、ここで開示された歯はハイポイド伝動装置と同様の理論的な摺動接触を有しない。これに反して、先に述べた線接触は両方の極における噛み合いを通して回転する。この極めて重要な特徴は潤滑を容易にし、磨耗を減少させる。
【0050】
ボール歯の実施の形態
本発明の別の好ましい実施の形態を図10A、10B、10Cに示し、分解部品図として図11に示す。この更なる実施の形態においては、外側歯車210の内歯は球状歯車対の各それぞれの内歯を提示する(図5Aの構造における)一層小さな球40と同じ直径を有するボール258と交換される。それ故、各内歯車歯258は有効な「球状」歯面を有する。この好ましい実施の形態に対しては、「円錐状」面の内歯58の形成に関係する上述の構成段階は関連しない。しかし、この更なる実施の形態の内側歯車220の外歯260は依然として図5Cに示すように構成され、図10Cにおいて最もよく見ることができる。
【0051】
上述した先の実施の形態の各々におけるように、この実施の形態の球状歯車対は、シャフト222、224のそれぞれの軸線が図10Aに一点鎖線224で示す角度範囲にわたって地点230(球状歯車対の同心の中心)で交差するときに、それぞれの第1及び第2のシャフト214、216の回転を接続するように設計される。図を明瞭にするため第2のシャフト216は図11で図示省略してある。先の実施の形態(例えば図7参照)と同様、ボール内歯258は軸線222と整合する第1のシャフト214の端部に固定されたカップ状支持体212内で位置決めされ、各ボール歯258はカップ状支持体212(図11に明示)に関連するコアハウジング266のそれぞれの孔262内に受け入れられる。また、外歯260は同様に第2のシャフト216の端部に装着される。これまた、シャフト214、216間のすべての交差角度において、ボール内歯258及び外歯260は常に各それぞれの歯車のピッチ円の面内にそれぞれ維持される。上述のように、各それぞれのピッチ円は歯車の理論的な大きなピッチ球の大きな円であり、各ピッチ円の軸線は対の各球状歯車をそこに取り付けるそれぞれの回転可能な素子の軸線と常に整合する。
【0052】
歯車対は最初に、図10Aに示すようにそれぞれの軸線222、224が整合した状態で、装着される。各ボール歯258がそれぞれの孔262内に挿入された後、ボール歯の内側部分は2つの連続する外歯260の歯面間に位置し、その後、孔262がボールリテーナ264で閉じられ、このリテーナは、ボールが歯車のピッチ円上でセンタリングされるように、各ボールの歯面を維持するために適所に締まり嵌め、圧入又はスクリュー止めできる。焼嵌め又はボルト止めされた外側リング270は更なる補強及び安全のためにカップ状支持体212の開いた端部を取り巻く。
【0053】
カップ状支持体212のコアハウジング266は、図10A、10B、10C、11に示す実施の形態に対しては30°であり(任意の方向において60°の合計範囲を提供する)所定の最大角度x°までの軸線222から任意の方向においてシャフト214、216のすべての相対交差角度で定速回転を保証するために、外側球状歯車210及び内側球状歯車220のピッチ球の中心の同心性を維持するように外歯260の頂部ランド部上に形成された球状表面269と番い合う球状表面268を有する。番い合う球状表面268、269は上述の本発明の実施の形態(例えば図7参照)のセンタリングボール26と同じ機能を果たすことを認識できよう。
【0054】
歯/歯の実施の形態のための上述の歯接触パターンとは異なり、ボール内歯258は線接触で外歯260と噛み合わない。代わりに、ボール歯の球状歯表面は伝統的な伝動装置の理論的な点接触から普通生じる許容できる結果である比較的広い接触領域と同様の拡張した接触円領域を生じさせる。
【0055】
図12、13A、13Bは上述のボール/歯の球状ジョイントの変形例を示し、この場合、対の第1の歯車のためのカップ状支持体212´は軸線222´と整合し、ハーフシャフトの一端のためのスライダ/ジョイントの組み合わせとして作用するように修正される。図を明瞭にするため、これら3つの図においては、各球状歯車対のシャフトは図示省略してある。
【0056】
この実施の形態において提供される最も重要な修正はa)軸線222´に平行なカップ状支持体212´の延長部及びb)ハーフシャフトの作動端部間の異なる距離を許容するために支持体212´内の球状歯車対の同心的な中心230´の軸方向の運動のための球状コアハウジング266´の摺動装着である。各ボール歯258´は二重の機能を果たす:球状歯車対の噛み合う歯として作用することに加えて、各ボール歯258´はまたカップ状支持体212´の内側壁に形成されたそれぞれの軸方向のボールトラック(軌道)272´を上下に回転する自由を有する。本発明に従って設計された実際のジョイントにおいては、ボールトラック272´の長さは2インチ(5cm)である。図13Bは通常ではない大量のプランジ運動を必要とする状態を許容できるデザインの変形例を示す。このような普通ではない状態の下では、カップの開いた端部において側壁により制限が生じる可能性があり、すなわち、コアハウジング266´がカップ状支持体212´の底に位置する場合に、CVジョイント歯車対の相対角度調整が±20°に制限される。しかし、漸進的に小さくなる即ち一層標準のプランジ運動要求の場合、本発明のハーフシャフトの内側CVジョイント歯車対の相対角度容量は図示の±20°の限界よりも十分上まで漸進的に増大する。
【0057】
しかし、ボールトラック272´内でのボール歯258´の軸方向の運動が1つのみの機能を有する、すなわち、軸線222´に沿った球状歯車対の同心的な中心の有効位置を変更することに留意しなければならない。ボールトラック272´内でのボール歯258´のこの軸方向の運動は、2つの球状歯車のピッチ円が同じ同心的な中心を常に共有するので、球状伝動装置のボール歯のどんな定速作動でも変更しない。
【0058】
二重CVジョイント
大きなトラックにとって普通のものであるようなセグメント化駆動シャフトは一般にカルダン又はフック(Hooke) ユニバーサルジョイントの組み合わせに接続される。このような従来のカップリングは維持が困難で、寿命が比較的短い。上述のように、当業者なら、二重カルダンユニバーサルジョイントのように本発明の球状歯車ジョイントを背中合わせに配置することにより、定速回転運動を120°又はそれ以上の連続的な最大範囲にわたるシャフトの交差により伝達できることを直ちに認識できよう。このような構成は図14に示し、軸線24´、24´´に沿って位置する第1及び第2のシャフトの端部を接続するために図7に示す本発明の実施の形態の変形例を使用する。図14においては、背中合わせの外側歯車の円錐内歯58´、58´´の相対位置は図を明瞭にするため僅かに修正されている。すなわち、好ましいデザインにおいては、歯58´は正弦効果を相殺するために歯58´´から30°だけ相対的に片寄っている。
【0059】
外歯60´、60´´は枢動軸線32´、32´´のまわりで枢動する実線で示す。外歯60´、60´´はまた反対方向に角度x°で軸線32´、32´´のまわりにおいて枢動する仮想線で示し、すべての方向において4x°(xが30の場合120°)の全運動範囲を提供する。ハブ28´、28´´及び内歯58´、58´´もまた図14に示す。この実施の形態においては、第1のユニバーサルカップリングは第1の素子を介して第2のユニバーサルカップリングに固定的に装着される。これは第1のユニバーサルカップリングから延びる第2の素子と第2のユニバーサルカップリングから延びる第3の素子との間に4x°の連続する運動範囲を提供する。
【0060】
自動車のハーフシャフトにおける使用
ここで図15、16A、16Bを参照する。本発明に係る2つの同一の球状歯車CVジョイントは図15に概略的に示すハーフシャフト100の両端に位置し、「ブーツ」は省略してある(即ち、路面のゴミやホコリからジョイントを保護するために使用される周知のしなやかなカバーは無い)。詳細に上述した方法で、各CVジョイントのそれぞれのカップ状支持体112、112´はカップのベースに固定されたそれぞれのセンタリングボール126、126´を有し、各CVジョイントはすべての方向において0°からx°の所定の最大角度への連続する角度方位にわたって運動するように各それぞれのセンタリングボール126、126´のまわりで嵌合するハブ128、128´を有する。各CVジョイントはまた各カップ状支持体内で固定された内歯(図16Bにおける110´)を備えた第1の球状歯車と、各ハブ(図16Bにおける128´)に固定された外歯(図16Bにおける120´)を備えた第2の球状歯車とを有する。図示の好ましい実施の形態においては、各CVジョイントのハブ128、128´はそれぞれシャフト116の各端部において回転するように接続される。各カップ状支持体112、112´のベースはそれぞれの接続シャフト114、114´の端部を受け入れるためのスプライン開口を有する。
【0061】
図15の概略図は差動装置102及び駆動ホイール104を含む車両の駆動列の端部における自動車のハーフシャフト100を示す。この概略図には示さないが、駆動ホイール104は、駆動ホイール104が操舵のための駆動ホイールの旋回及び地面の変化に応答しての駆動ホイールの上下運動を許容する差動装置102に関して連続する角度方位にわたって運動の自由を有するように、当業界で周知の方法により車両の前部に装着されるものと仮定する。ハーフシャフト100は、車両の駆動列のこれら2つの部分間で生じるすべての瞬間的な相対角度運動中、車両のエンジンから差動装置102を経て駆動ホイール104へ定速回転力を伝達する。
【0062】
当業者なら、運動自在に装着された駆動ホイール104が差動装置102の固定部分に関する角度位置を変えたときに、これらの間の距離が変化することを認識できよう。この変化は大きくない(例えば≦1.0インチ/25mm)が、これを補償しなければならず、この補償は図16A、16Bに拡大して示すスライダ180により達成される。スライダ180は2つの相対運動可能な部材181、182を有し、第1の部材181は第2の部材182内で往復運動するように装着される。部材181はハブ128´に固定され、好ましくはクロスアーム186から懸架された一対のローラ184を有する。ローラ184はそれぞれシャフト116に固定された外側部材182内に形成された一対のそれぞれのトラック188内に乗っている。駆動ホイール104と差動装置102との間の僅かな距離の変化に応答して、スライダ180はローラ184上で前後に運動する。ハーフシャフト100は、後に詳述するように、現在入手できるハーフシャフトよりも優れた多くの重要な利点を有する。
【0063】
図17は図15のハーフシャフト100と同様であるが、上述の本発明の2つのボール/歯の実施の形態を組み込んだ別のハーフシャフト200を示す。すなわち、これら2つの異なる実施の形態はそれぞれシャフト216´の両端に位置する。これまた、この概略図には示さないが、ハーフシャフト200の外側端部(図の左端)は当業界で周知の方法により車両の前部に装着された操舵駆動ホイールに取り付けられ、ハーフシャフト200の内側端部(図の右端)は差動装置に取り付けられ、操舵駆動ホイールは操舵のための駆動ホイールの旋回及び地面の変化に応答しての駆動ホイールの上下運動を許容するために差動装置に関して連続する角度方位にわたって運動の自由を有するものと仮定する。
【0064】
外側のボール/歯の球状歯車CVジョイント274及び内側のボール/歯の球状歯車CVジョイント276´は、そのそれぞれの軸線222、222´がほぼ10°でシャフト216´の軸線224´と交差している状態で、示してある。しかし、上述のように、外側のCVジョイント274の好ましい実施の形態は軸線222の位置から離れる(60°の最大範囲)すべての方向において定速回転を伝達でき、好ましい実施の形態においては、内側のCVジョイント276´は軸線222´の位置から離れる(≧40°−60°の最大範囲)すべての方向において≧20°−30°定速回転を伝達できる。[注:現在は、商業的なハーフシャフトの外側CVジョイントは52°の最大範囲に限られ、一方、商業的なハーフシャフトの内側CVジョイントは23°の最大範囲に限られる。]
両方のCVジョイントの可動部分を保護するために使用されるブーツ装置が同一となることができて、製造、在庫及び点検修理コストの大幅な節約を提供するように、上述のCVジョイントの両方の実施の形態のカップ状支持体212、212´の直径が同一であるという事実にも注意が向けられる。さらに、多分もっと重要なことには、このような大きな範囲のCVジョイントは一層小さな寸法及び一層軽い重量を有し、これらのジョイントは現在商業的に入手できるCVジョイントよりも低価格で製造でき、組立てることができる。
【0065】
ハーフシャフト100(図15)及びハーフシャフト200(図17)は現在商業的に入手できるハーフシャフトよりも優れた多くの重要な利点を有する:
(1)雌型溝穴セット間の運動伝達リンクとして使用される現在の商業的なCVジョイントのボールリテーナ及びボールセットは素子間で好ましい転がり作用を伴う球状歯車カップリングの本発明の直接被駆動雄型/雌型幾何学形状と交換され、それによって(a)摺動作用並びにこのような摺動により生じる関連する熱及び磨耗を大幅に減少させ、(b)CVハウジングカップ内の極めて困難な内側の湾曲又は傾斜溝の研磨の必要性を排除し、(c)その困難な内側及び外側の球状研磨及び精確なボール溝穴研磨を伴う別個のボールリテーナの必要性を排除し、(d)したがって、別個のボールリテーナを適正に位置決めするためのカム作用溝穴の修正の必要性を排除する。
【0066】
(2)本発明の各球状歯車CVジョイントにおける部品の数は一層少なく、部品は複雑ではなく、製造又は組立てについて高価ではない。
(3)それぞれのハーフシャフト100、200は各々両端に実質上同一のカップリングを有し、それによって製造を簡単化し、製造及び交換在庫のための一層小数の異なる部品で済む。
【0067】
(4)本発明のCVジョイントにおける球状歯車の歯がそれぞれの極でのみ接触するので、すべての方位角度での回転に対する摩擦抵抗は従来のハーフシャフトのものよりも顕著に小さく、したがって、角度方位の変化中にハーフシャフト100、200を旋回させるのに必要なトルクを減少させ、組立てを簡単化し、駆動列の効率を増大させる。
【0068】
(5)ハーフシャフト100、200の潤滑は各1回転において2度噛み合い及び噛み合い解除運動をするときの球状歯車の歯の転がり運動により容易化され、噛み合いの比較的小さな摩擦が一層安価な潤滑剤の使用を許容する。
【0069】
本発明の球状歯車は30°の好ましい所定の最大角度を有するものとして説明したが、球状歯車は本発明の精神内で30°以下又は30°以上の所定の最大角度を有することができる。各対の球状歯車の第2の歯車の外歯のための歯形状は、図5Cに示し上述したように、所定の最大角度の関数として変化する。
【0070】
ここで説明し特許請求する球状歯車デザインは自動車のCVジョイント、ユニバーサルジョイント及びハーフシャフトの技術において重要な改善を提供する。
したがって、ここで述べた本発明の実施の形態は本発明の原理の適用の単なる例示であることを理解すべきである。図示の実施の形態の詳細についてのここでの参照は特許請求の範囲を限定する意図のものではなく、それ自体は本発明にとって本質的であると思われる特徴を列挙する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変の角度で交差するそれぞれの軸線のまわりで回転可能な第1の素子及び第2の素子を相互接続するためのユニバーサルカップリングにおいて、
一緒に回転するように上記第1の素子に固定され、円形形状のみを有する長手方向の湾曲を伴って形成された内歯面を各々備えた複数の内歯を有する第1の歯車と;
一緒に回転するように上記第2の素子に固定され、上記内歯と番い噛み合いする複数の外歯を有する第2の歯車であって、上記各外歯が所定の半径を持つ円筒状の中央部分を伴って形成され、また、上記円筒状の中央部分の各側部でそれぞれ形成された所定の幅の2つの平坦な面延長部をも有する外歯面を有する第2の歯車と;
を有する単一対の球状歯車を備え、
上記歯車の各々がそれぞれの大きなピッチ球の形をしたそれぞれのピッチ表面を有し、上記大きなピッチ球が同心で、実質上同一の半径を有し、当該各歯車のピッチ円が当該それぞれの大きなピッチ球の1つ上の大きな円であり、上記ピッチ円が180°だけ離れた2つの極地点で互に有効に交差し;
上記歯車の各それぞれの歯は、各連続する一層小さな球が上記大きなピッチ球の表面上に落ちる接触地点で次の一層小さな球に対して正接するように円として配置された複数の個々の上記一層小さな球の1つ内に形成され、各一層小さな球上の上記接触地点間の距離が各それぞれの歯の正規の弦方向厚さを画定し;
上記素子が2x°の連続的な最大範囲にわたって交差するように、上記軸線が180°から所定の最大角度x°だけ180°とは異なる角度までの連続する範囲にわたって可変的に交差する際に上記歯車が駆動及び被駆動関係で回転しているときに、上記素子の軸線が上記大きなピッチ球の中心において常に交差する;
ことを特徴とするユニバーサルカップリング。
【請求項2】
xが少なくとも30°であることを特徴とする請求項1に記載のユニバーサルカップリング。
【請求項3】
各上記内歯及び各上記外歯の内側部分が中空であることを特徴とする請求項1に記載のユニバーサルカップリング。
【請求項4】
上記ユニバーサルカップリングが上記第1又は第2の素子と第2のユニバーサルカップリングから延びる第3の素子との間に4x°の連続する最大運動範囲を提供するように当該ユニバーサルカップリングと実質上同一の上記第2のユニバーサルカップリングに対して背中合わせに固定的に装着されることを特徴とする請求項1に記載のユニバーサルカップリング。
【請求項5】
各上記内歯面の表面が上記一層小さな球間で分担される上記接触地点においてそのそれぞれの個々の一層小さな球に対して正接し、各当該内歯面の長手方向の湾曲の円形形状が:
i)上記それぞれの個々の一層小さな球の各々の少なくとも1/2の直径に等しい直径を有する球形状;又は
ii)a)上記一層小さな理論的な球及び上記2つの大きな理論的な球に対して中央で同心的に位置する等しい寸法の更なる一層小さな理論的な球;及びb)上記一層小さな中央の球の両側に対して正接するように構成され、かつ当該一層小さな理論的な球がその隣の球と分担するような2つの接触地点のそれぞれ1つを通過する2つの交差する線;を含む構造により決定される円錐頂点角度を有する円錐形状;のいずれかであり、
上記円錐頂点角度が上記交差する線による交差地点で形成される包含角により決定される;
ことを特徴とする請求項1に記載のユニバーサルカップリング。
【請求項6】
各内歯が上記第1の素子の軸線に垂直に延び、各外歯は、各歯車の歯の各歯面が各歯車のピッチ球であるそれぞれの大きな球の大きな円上でセンタリングされるように、上記第2の素子の軸線に垂直に延び、各上記大きな円の軸線が各それぞれの素子の軸線と常に整合することを特徴とする請求項5に記載のユニバーサルカップリング。
【請求項7】
各上記外歯面の上記平坦な面延長部の上記所定の幅が上記最大角度x°に応じて変化し、当該延長部が歯面中心の中心線からx°で位置する初期の接線地点から上記歯面中心の各側に形成され、2x°を決める上記円筒状の中央部分の半径方向の線へ少なくとも延び、それによって、上記歯面中心の各側における各平坦な部分の長さがx°の上記接線地点を越えて付加的なx°だけ延び、各当該平坦な面延長部は、上記歯車の軸線が上記最大角度x°で交差しているときに上記第2の歯車が上記第1の歯車に関して楕円弧に沿って運動する際に、上記初期の接線地点から当該円筒状の中央部分の半径方向の中心の運動線に平行に延びることを特徴とする請求項1に記載のユニバーサルカップリング。
【請求項8】
各外歯面の上記円筒状の中央部分の上記所定の半径が各それぞれの外歯の正規の弦方向厚さの半分に等しいことを特徴とする請求項1に記載のユニバーサルカップリング。
【請求項9】
上記複数の個々の一層小さな球の数は、各上記歯車が6個の歯を有するように、12個であり、各上記内歯面が円錐形で、上記第1の素子の端部に固定されたカップ状支持体内に形成され、さらに、上記カップ状支持体内に装着されたセンタリングボールが設けられ、同センタリングボールが上記大きなピッチ球の上記同心的な中心と上記交差地点との間の距離よりも大きくない半径を有することを特徴とする請求項5に記載のユニバーサルカップリング。
【請求項10】
各上記歯車が6個の歯を有するように、12個の個々の一層小さな球が設けられ、各上記内歯が上記それぞれの個々の一層小さな球の少なくとも半分と同じ直径を有するボールであることを特徴とする請求項6に記載のユニバーサルカップリング。
【請求項11】
各上記ボール内歯は、各それぞれのボール歯面が上記第1の歯車の上記それぞれの大きな球の大きな円の面内で常にセンタリング維持されるように、上記第1の素子の端部に固定されたカップ状支持体内で支持されることを特徴とする請求項10に記載のユニバーサルカップリング。
【請求項12】
上記カップ状支持体がさらに球状表面を備えたコアハウジングを有し;各上記外歯が上記第2の素子の端部に取り付け可能なハブ部分上に装着され;当該外歯の頂部ランド部が180°から上記所定の最大角度x°までの任意の方向における角度運動を許容するように上記コアハウジングの上記球状表面と番う球状表面であることを特徴とする請求項11に記載のユニバーサルカップリング。
【請求項13】
上記内歯及び外歯が180°だけ離れた上記それぞれの極地点において同時に噛み合うことを特徴とする請求項12に記載のユニバーサルカップリング。
【請求項14】
上記内歯及び外歯のそれぞれの対は、上記素子が上記連続的な角度範囲にわたって可変的に交差する際に先の対がすべての角度において常に噛み合いから離れる前に上記対のうちの第2の対が噛み合うように、順々に噛み合うことを特徴とする請求項13に記載のユニバーサルカップリング。
【請求項15】
噛み合う内歯及び外歯の上記対により分担される接触パターンがすべての上記可変の角度にわたって完全線接触であり、上記接触線は、交差角度が上記連続的な範囲にわたって変化する際に上記それぞれの歯車の全歯面を横切って運動することを特徴とする請求項9に記載のユニバーサルカップリング。
【請求項16】
自動車のハーフシャフトの端部にそれぞれ取り付けられる第1のユニバーサルカップリング及び第2のユニバーサルカップリングを有することを特徴とする請求項14に記載の2つのユニバーサルカップリング。
【請求項17】
各上記それぞれのカップリングの上記ハブ部分が上記自動車のハーフシャフトにそれぞれ取り付けられることを特徴とする請求項16に記載のユニバーサルカップリング。
【請求項18】
上記第1のユニバーサルカップリングの上記カップ状支持体が自動車の差動装置に接続可能であり、上記第2のユニバーサルカップリングの上記カップ状支持体が自動車の駆動ホイールに接続可能であることを特徴とする請求項17に記載のユニバーサルカップリング。
【請求項19】
上記ユニバーサルカップリングの中間に位置するスライダをさらに有し、同スライダの全長が上記駆動ホイールの相対運動による当該駆動ホイールと上記差動装置との間の異なる距離を補償するように変化することを特徴とする請求項16に記載のユニバーサルカップリング。
【請求項20】
一方の上記カップリングの上記カップ状支持体が軸方向に延長され、上記球状コアハウジングが上記駆動ホイールの相対運動による当該駆動ホイールと上記差動装置との間の異なる距離を補償するために当該支持体内で軸方向に運動するように摺動自在に装着されることを特徴とする請求項16に記載のユニバーサルカップリング。
【請求項21】
上記スライダが少なくとも1つのローラを有する第1の部材と、上記ローラを番うように受け入れるためのトラックを有する第2の部材とを備え、それによって、当該ローラに沿う当該スライダの運動が上記駆動ホイールの相対運動による当該駆動ホイールと上記差動装置との間の異なる距離を補償するように該スライダの全長を変更することを特徴とする請求項20に記載のユニバーサルカップリング。
【請求項22】
各上記内歯が上記第1の素子の端部に固定されたカップ状支持体内に形成されることを特徴とする請求項1に記載のユニバーサルカップリング。
【請求項23】
各上記内歯が個々に形成され、上記カップ状支持体内に圧入されることを特徴とする請求項22に記載のユニバーサルカップリング。
【請求項24】
センタリングボールが上記カップ状支持体内に装着されることを特徴とする請求項22に記載のユニバーサルカップリング。
【請求項25】
各上記内歯が上記第2の素子の端部に取り付け可能なハブ上に装着されることを特徴とする請求項22に記載のユニバーサルカップリング。
【請求項26】
上記ハブが180°から上記所定の最大角度x°まで任意の方向において角度運動するように上記カップ状支持体上に番い嵌合されることを特徴とする請求項25に記載のユニバーサルカップリング。
【請求項27】
回転可能な入力を同入力に関して瞬間的な角度運動を行うように装着された駆動ホイールに相互接続するための自動車のハーフシャフトにおいて、
ハブがすべての方向において0°からx°の最大角度までの連続的な角度方位にわたって自由に運動するように、番い係合するカップ状支持体及び上記ハブを各々有する1対の実質上同一のユニバーサルカップリングと;
2対の球状歯車であって、各対の一方の歯車が各カップ状支持体内に装着された内歯を有し、各対の他方の歯車が各ハブに固定された外歯を有するような2対の球状歯車と;
上記駆動ホイールの相対運動による当該駆動ホイールと上記回転可能な入力との間の異なる距離を補償するように互に関して可動な部材を有する摺動機構と;
を有し、
各カップリングの上記ハブが上記ハーフシャフトのそれぞれの端部に回転自在にそれぞれ接続され;
一方のカップリングの上記カップ状支持体が上記回転可能な入力に接続可能であり、他方のカップリングの上記カップ状支持体が上記駆動ホイールに接続可能である;
ことを特徴とするハーフシャフト。
【請求項28】
上記摺動機構が少なくとも1つのローラを有する第1の部材と、上記ローラを番うように受け入れるためのトラックを有する第2の部材とを備え、それによって、上記トラックに沿う上記ローラの運動が上記駆動ホイールの相対運動を補償するように当該機構の全長を変更することを特徴とする請求項27に記載のハーフシャフト。
【請求項29】
上記摺動機構の上記部材のうちの一方が一方の上記カップリングの上記ハブに固定されることを特徴とする請求項27に記載のハーフシャフト。
【請求項30】
上記摺動機構が内歯のためのボールを備えた一対の球状歯車を有する一方の上記カップリング内に組み込まれ、上記ボールが上記駆動ホイールと上記回転可能な入力との間の異なる距離を補償するために軸方向に延長されたカップ状支持体内で軸方向の運動を行うように摺動自在に装着された球状コアハウジング内に受け入れられることを特徴とする請求項27に記載のハーフシャフト。
【請求項31】
可変の角度で交差するそれぞれの軸線のまわりで回転可能な第1の素子及び第2の素子を相互接続するための単一対の球状歯車において、
一緒に回転するように上記第1の素子に固定され、円形形状のみを有する長手方向の湾曲を伴って形成された内歯面を各々備えた複数の内歯を有する第1の歯車と;
一緒に回転するように上記第2の素子に固定され、上記内歯と番い噛み合いする複数の外歯を有する第2の歯車であって、各外歯が所定の半径を持つ円筒状の中央部分を伴って形成された外歯面を有し、また、上記円筒状の中央部分の各側部でそれぞれ形成された所定の幅の2つの平坦な面延長部をも有するような第2の歯車と;
を有し、
上記歯車の各々がそれぞれの大きなピッチ球の形をしたそれぞれのピッチ表面を有し、上記大きなピッチ球が同心で、実質上同一の半径を有し、当該各歯車のピッチ円が当該それぞれの大きなピッチ球の1つ上の大きな円であり、上記ピッチ円が180°だけ離れた2つの極地点で互に有効に交差し;
上記歯車の各それぞれの歯は、各連続する一層小さな球が上記大きなピッチ球の表面上に落ちる接触地点で次の一層小さな球に対して正接するように円として配置された12個の個々の上記一層小さな球の1つ内に形成され、各一層小さな球上の上記接触地点間の距離が各それぞれの歯の正規の弦方向厚さを画定し;
上記素子が2x°の連続的な最大範囲にわたって交差するように、上記軸線が180°から所定の最大角度x°だけ180°とは異なる角度までの連続する範囲にわたって可変的に交差する際に上記歯車が駆動及び被駆動関係で回転しているときに、上記素子の軸線が上記大きなピッチ球の中心において常に交差する;
ことを特徴とする歯車。
【請求項32】
各上記内歯が上記それぞれの個々の一層小さな球の少なくとも半分と同じ直径を有するボールであることを特徴とする請求項31に記載の歯車。
【請求項33】
上記ボール内歯がカップ状支持体内でコアハウジング内に装着され、上記外歯がハブ上に装着され、当該外歯の頂部ランド部は、上記球状歯車の歯が噛み合うときに上記コアハウジング上に形成された球状表面と番い係合する球状形状を有することを特徴とする請求項32に記載の歯車。
【請求項34】
各ボール内歯は、同各内歯の球状面が上記第1の歯車のピッチ円上で常に維持されるように、上記コアハウジングの個々の孔内に保持されることを特徴とする請求項33に記載の歯車。
【請求項35】
各ボール内歯がリテーナにより上記孔内に維持されることを特徴とする請求項34に記載の歯車。
【請求項36】
上記カップ状支持体が軸方向に延長され、上記コアハウジングの上記それぞれの孔内で各ボール内歯を維持し、それによって、各ボール内歯の歯面が上記第1の歯車のピッチ球であるそれぞれの大きな球の大きな円上で常にセンタリング維持されている間に、上記カップ支持体内での上記コアハウジングの軸方向の運動を許すように上記ボール歯の回転を許容し、上記大きな円の軸線が上記第1の素子の軸線と常に整合することを特徴とする請求項34に記載の歯車。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5A−5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【公表番号】特表2010−508476(P2010−508476A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534884(P2009−534884)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/082635
【国際公開番号】WO2008/055055
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(501050955)トーヴェック・インコーポレーテッド (9)