説明

球状体吸着装置、球状体搭載装置、球状体吸着方法および球状体搭載方法

【課題】吸着不良を防止する。
【解決手段】複数の吸気口23aが形成された吸着面22aを有する吸着ヘッド11と、通気性シート32d(保持面)で半田ボール300を保持する保持部32と、保持部32を吸着ヘッド11に対して相対的に移動させる移動機構と、移動機構を制御して半田ボール300を保持している通気性シート32dを吸着面22aに近接させた状態を維持しつつ吸着面22aに沿って保持部32を移動させる移動処理を実行する制御部と、保持部32を回動させる回動機構とを備え、保持部32は、通気性シート32dの断面形状が弧状に形成され、制御部は、回動機構を制御して移動処理における保持部32の相対的な移動の向きとは逆向きに予め規定された規定位置を中心として保持部32を回動させる回動処理を移動処理に連動させて実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状体を吸着する球状体吸着装置、その球状体吸着装置を備えて球状体を搭載対象体に搭載する球状体搭載装置、球状体を吸着する球状体吸着方法、およびその球状体吸着方法で吸着している球状体を搭載対象体に搭載する球状体搭載方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の球状体吸着装置として、特開2011−9591号公報において出願人が開示した半田ボール吸着装置が知られている。この半田ボール吸着装置は、吸着ヘッド、収容容器、吸着保持部、駆動機構、整列用プレートおよび制御部などを備えて半田ボールを吸着可能に構成されている。この半田ボール吸着装置では、次のようにして半田ボールの吸着が行われる。まず、吸着保持部が収容容器に収容されている半田ボールを吸着して保持し、次いで、制御部が、駆動機構を制御して、吸着保持部の先端部が吸着ヘッドの吸着面に対向するように吸着保持部を回動させる。続いて、制御部は、駆動機構を制御して整列用プレートの一端側に吸着保持部の先端部を近接させる。この際に、整列用プレート(吸着ヘッドの吸着面)に近接させられた先端部に保持されている半田ボールが吸着ヘッドに供給され、供給された半田ボールが吸着面の吸気口に引き寄せられて、整列用プレートの各挿通孔を通って吸気口に吸着される。次いで、制御部は、駆動機構を制御して、吸着保持部の先端部を整列用プレートに近接させた状態で、整列用プレート(吸着ヘッドの吸着面)に沿って吸着保持部を移動させる。この際に、先端部に保持されている半田ボールが、吸着保持部の移動に伴って徐々に吸着ヘッドの各吸気口に供給されて、各吸気口の縁部に1つずつ吸着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−9591号公報(第6−9頁、第10−14図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記の半田ボール吸着装置には、改善すべき以下の課題がある。すなわち、この半田ボール吸着装置では、半田ボールを保持している吸着保持部の先端部を整列用プレート(吸着ヘッドの吸着面)に沿って移動させることによって半田ボールを吸着ヘッドに供給している。一方、この半田ボール吸着装置では、半田ボールを確実に供給するため、吸着保持部に保持されている半田ボールが整列用プレートに接触するように、バネを用いて吸着保持部を整列用プレート向けて付勢している。つまり、この半田ボール吸着装置では、吸着保持部によって保持されている半田ボールが整列用プレートに向けて押し付けられつつ整列用プレートに沿って移動(つまり、整列用プレートに対して摺動)させられる。このため、この半田ボール吸着装置では、摺動によって半田ボールが摩耗したり変形したりして、その半田ボールが整列用プレートの挿通孔や吸着ヘッドの吸気口に嵌り込んで吸着不良(吸着ミス)が発生するおそれがある。また、摺動によって半田ボールが吸着保持部から脱落(落下)して、例えば、整列用プレートに沿って吸着保持部を移動させる処理の後半において吸着ヘッドに対して供給する半田ボールが不足して、これに起因して吸着不良が発生するおそれもある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、吸着不良を防止し得る球状体吸着装置、球状体搭載装置、球状体吸着方法および球状体搭載方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく請求項1記載の球状体吸着装置は、複数の吸気口が形成された吸着面を有する吸着ヘッドと、先端部の保持面で球状体を保持する保持部と、前記保持部を前記吸着ヘッドに対して相対的に移動させる移動機構と、当該移動機構を制御して前記球状体を保持している前記保持面を前記吸着面に対して相対的に近接させた近接状態を維持しつつ当該吸着面に沿って当該保持部を相対的に移動させる移動処理を実行する制御部とを備えて前記球状体を前記各吸気口に吸着する球状体吸着装置であって、前記保持部を回動させる回動機構を備え、前記保持部は、基端部における予め規定された規定位置を中心として前記回動機構によって回動されると共に、前記保持面の断面形状が前記近接状態における前記吸着面側に向けて突出する弧状に形成され、前記制御部は、前記回動機構を制御して前記移動処理における前記保持部の相対的な移動の向きとは逆向きに前記保持部を回動させる回動処理を当該移動処理に連動させて実行する。
【0007】
また、請求項2記載の球状体吸着装置は、請求項1記載の球状体吸着装置において、前記制御部は、前記移動処理における前記保持部の相対的な移動速度と前記回動処理における前記保持面の周速度とが同じ速度となるように前記移動機構および前記回動機構を制御する。
【0008】
また、請求項3記載の球状体吸着装置は、請求項1または2記載の球状体吸着装置において、前記保持部は、前記保持面の断面形状が前記規定位置を中心とする円周の一部または全部と同じ形状に形成されている。
【0009】
また、請求項4記載の球状体搭載装置は、請求項1から3のいずれかに記載の球状体吸着装置と、前記球状体の吸着が行われる吸着位置と前記球状体が搭載対象体に搭載される搭載位置との間で前記球状体吸着装置の前記吸着ヘッドを搬送する搬送装置とを備えて、前記球状体を前記搭載対象体に搭載する。
【0010】
また、請求項5記載の球状体吸着方法は、複数の吸気口が形成された吸着面を有する吸着ヘッドにおける当該吸着面に対して、球状体を保持している保持部の保持面を相対的に近接させた近接状態を維持しつつ、前記吸着面に沿って当該保持部を相対的に移動させる移動処理を実行し、前記球状体を前記各吸気口に吸着する球状体吸着方法であって、前記保持面の断面形状が前記近接状態における前記吸着面側に向けて突出する弧状に形成された前記保持部を用いて、前記移動処理における前記保持部の相対的な移動の向きとは逆向きに当該保持部の基端部における予め規定された規定位置を中心として当該保持部を回動させる回動処理を当該移動処理に連動させて実行する。
【0011】
また、請求項6記載の球状体吸着方法は、請求項5記載の球状体吸着方法において、前記移動処理における前記保持部の相対的な移動速度と前記回動処理における前記保持面の周速度とが同じ速度となるように前記保持部の移動および回動を行う。
【0012】
また、請求項7記載の球状体吸着方法は、請求項5または6記載の球状体吸着方法において、前記保持面の断面形状が前記規定位置を中心とする円周の一部または全部と同じ形状に形成されている前記保持部を用いる。
【0013】
また、請求項8記載の球状体搭載方法は、請求項5から7のいずれかに記載の球状体吸着方法で前記吸着ヘッドに前記球状体を吸着させ、当該球状体を吸着している前記吸着ヘッドを搭載位置に移動させて、前記球状体を搭載対象体に搭載する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の球状体吸着装置、請求項4記載の球状体搭載装置、請求項5記載の球状体吸着方法、および請求項8記載の球状体搭載方法によれば、保持面の断面形状が弧状に形成された保持部を吸着ヘッドの吸着面に沿って移動させる移動処理に連動させて、保持部の相対的な移動の向きとは逆向きに保持部を回動させる回動処理を実行することにより、保持面に保持されている球状体を、余剰な球状体の吸着を規制するプレートや吸着ヘッドの吸着面に対して摺動しない状態(または、摺動が少なく抑えられた状態)で各吸気口の近傍に供給させることができる。このため、この球状体吸着装置、球状体搭載装置、球状体吸着方法および球状体搭載方法によれば、摺動による球状体の摩耗や変形が確実に防止される結果、摩耗した球状体や変形した球状体がプレートの貫通孔や吸着ヘッドの吸気口に嵌り込むことに起因する吸着不良の発生を確実に防止することができる。また、摺動によって球状体が保持部から脱落(落下)して、移動処理の後半において吸着ヘッドに対して供給する球状体が不足することに起因する吸着不良の発生を確実に防止することができる。
【0015】
また、請求項2記載の球状体吸着装置、請求項4記載の球状体搭載装置、請求項6記載の球状体吸着方法、および請求項8記載の球状体搭載方法によれば、移動処理における保持部の相対的な移動速度と回動処理における保持面の周速度とが同じ速度となるように保持部の移動および回動を行うことにより、保持面に保持されている球状体を、余剰な球状体の吸着を規制するプレートや吸着面に対してほとんど摺動しない状態で各吸気口の近傍に供給することができる。このため、この球状体吸着装置、球状体搭載装置、球状体吸着方法および球状体搭載方法によれば、摺動による球状体の摩耗や変形を確実に防止することができる結果、吸着不良の発生をより確実に防止することができる。
【0016】
また、請求項3記載の球状体吸着装置、請求項4記載の球状体搭載装置、請求項7記載の球状体吸着方法、および請求項8記載の球状体搭載方法によれば、保持面の断面形状が規定位置を中心とする円周の一部と同じ形状に形成された保持部を用いることにより、規定位置から保持面までの距離が一定のため、規定位置と吸着面との距離を一定に維持した状態で移動処理を実行し、これに連動して回動処理を実行することで、保持面における吸着面に最も近い位置から吸着面までの距離を一定に維持することができる。このため、この球状体吸着装置、球状体搭載装置、球状体吸着方法および球状体搭載方法によれば、回動処理の実行時において、保持面に保持されている球状体が余剰な球状体の吸着を規制するプレートや吸着面に対して同じ力で押圧される結果、押圧力が変化することによる球状体の変形等を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】半田ボール搭載装置1の構成を示す構成図である。
【図2】半田ボール吸着装置2の構成を示す構成図である。
【図3】吸着ヘッド11の構成を示す断面図である。
【図4】吸着ヘッド11の底壁22および整列用プレート14の構成を示す断面図である。
【図5】供給部12の構成を示す斜視図である。
【図6】供給部12の構成を示す断面図である。
【図7】供給部12の構成を示す分解斜視図である。
【図8】保持部32の構成を示す断面図である。
【図9】半田ボール搭載装置1の動作を説明する第1の説明図である。
【図10】半田ボール搭載装置1の動作を説明する第2の説明図である。
【図11】半田ボール搭載装置1の動作を説明する第3の説明図である。
【図12】半田ボール搭載装置1の動作を説明する第4の説明図である。
【図13】半田ボール搭載装置1の動作を説明する第5の説明図である。
【図14】半田ボール搭載装置1の動作を説明する第6の説明図である。
【図15】半田ボール搭載装置1の動作を説明する第7の説明図である。
【図16】半田ボール搭載装置1の動作を説明する第8の説明図である。
【図17】半田ボール搭載装置1の動作を説明する第9の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、球状体吸着装置、球状体搭載装置、球状体吸着方法および球状体搭載方法について、添付図面を参照して説明する。
【0019】
最初に、図1に示す半田ボール搭載装置1の構成について説明する。半田ボール搭載装置1は、球状体搭載装置の一例であって、同図に示すように、半田ボール吸着装置2および搬送装置3を備えて、球状体搭載方法に従い、球状体の一例としての微小な球状粒体である半田ボール(マイクロボール)300(図4参照)を搭載対象体としての基板400(基板400に形成された端子401:図17参照)に搭載(載置)可能に構成されている。
【0020】
この場合、半田ボール300は、直径L1(図4参照)が80μm程度の球状に構成されている。また、半田ボール300は、図17に示すように、半田ボール搭載装置1によって基板400に搭載された後に加熱溶融されて略半球状となった状態で基板400の表面(同図に示す端子401)に固着されて基板400上にボールグリッドアレイ(BGA)を構成し、これによって半田搭載済基板(球状体搭載済基板)が製造される。また、このようにして製造された半田搭載済基板には、集積回路等の電子部品(図示せず)が搭載されて、その電子部品における端子が半田搭載済基板における基板400の端子401に固着された半田ボール300を介して端子401に接続され、これによって電子部品搭載済基板が製造される。
【0021】
半田ボール吸着装置2は、球状体吸着装置の一例であって、図2に示すように、吸着ヘッド11、供給部12、吸気装置13、整列用プレート14および制御部15を備えて構成されて、球状体吸着方法に従って半田ボール300を吸着する。
【0022】
吸着ヘッド11は、図3に示すように、一例として、内部空間21を有する中空の箱型に構成されている。また、同図および図4に示すように、吸着ヘッド11における底壁22には、底壁22の外面(吸着面として機能する面であって、以下「吸着面22a」ともいう)に開口すると共に内部空間21と連通する吸気孔23が、底壁22の厚み方向に沿って複数(図4では、そのうちの1個のみを図示している)形成されている。なお、吸着面22aにおける吸気孔23の開口部が吸気口(以下、「吸気口23a」ともいう)に相当する。
【0023】
この場合、図4に示すように、吸気孔23(つまり、吸気口23a)の直径L2は、半田ボール300の直径L1(この例では、80μm)よりも短い40μm程度に規定されている。また、図3に示すように、吸着ヘッド11には、内部空間21の空気を吸気装置13によって吸引するための通気孔24が形成されている。この吸着ヘッド11では、内部空間21の空気が吸気装置13によって吸引されることによって内部空間21が負圧状態となり、それに伴って吸気口23aからの吸気が行われることにより、吸気口23aに半田ボール300を吸着することが可能となっている(図4参照)。
【0024】
供給部12は、図5〜図7に示すように、収容容器31、保持部32、吸引部33、移動機構34および回動機構35(いずれも図2参照)を備えて吸着ヘッド11に対して半田ボール300を供給する供給処理を実行する。また、供給部12は、図外のバネによって整列用プレート14(整列用プレート14の配設位置)に向けて付勢されている。
【0025】
収容容器31は、図7に示すように、容器本体31aと、容器本体31aの両側部に配設された2枚の側壁31bとを備えて、図6に示すように、半田ボール300を収容可能に構成されている。
【0026】
保持部32は、図6に示すように、内部空間32cを有する中空の箱型に構成されている。また、保持部32の先端部32aには、保持面としての通気性シート32dが配設され、基端部32bには、吸気管32eが取り付けられている。この保持部32では、内部空間32cの空気が吸気装置13によって吸引されることによって内部空間32cが負圧状態となり、それに伴って通気性シート32dを介して吸気が行われることにより、収容容器31に収容されている半田ボール300を先端部32a(通気性シート32d)で吸着して保持することが可能となっている(図10参照)。
【0027】
また、この保持部32では、図8に示すように、保持面としての通気性シート32dの断面形状が、通気性シート32dを吸着面22aに近接させた近接状態において吸着面22a側に向けて(同図における上側に)突出する円弧状(弧状の一例)に形成されている。より具体的には、通気性シート32dは、その断面形状が基端部32bに取り付けられている吸気管32eの中心軸(基端部における予め規定された規定位置に相当し、以下「規定位置P」ともいう)を中心とする円(同図に示す円C)の円周の一部(一部または全部の一例)と同じ形状に形成されている。また、保持部32は、上記した規定位置Pを中心として回動可能に構成されている。
【0028】
吸引部33は、図7に示すように、2枚の区画壁33a,33bと収容容器31を構成する2枚の側壁31b,31bとによって形成される吸引経路33c(図6参照)を介して半田ボール300を吸引可能に構成されている。
【0029】
移動機構34は、制御部15の制御に従って供給部12(収容容器31、保持部32および吸引部33)を移動させる。具体的には、移動機構34は、半田ボール300を保持している保持部32の先端部32aが吸着ヘッド11の吸着面22aに対向している状態で、先端部32aが吸着面22aに近接するように供給部12を移動させる。また、移動機構34は、先端部32aを吸着面22aに近接させた近接状態を維持しつつ吸着面22aに沿って供給部12を移動させる。回動機構35は、制御部15の制御に従って規定位置Pを中心として保持部32を回動させる。
【0030】
吸気装置13は、吸着ヘッド11の通気孔24にエアチューブ50(図2参照)を介して繋げられて、吸着ヘッド11における内部空間21の空気を吸引する。また、吸気装置13は、供給部12における保持部32の吸気管32eにエアチューブ50を介して繋げられると共に、供給部12における吸引部33の吸引経路33cにエアチューブ50を介して繋げられて、保持部32における内部空間32cの空気を吸引すると共に、吸引経路33cからの吸気を行う。この場合、吸気装置13は、複数の電磁バルブを備えており、内部空間21の空気の吸引、内部空間32cの空気の吸引、および吸引経路33cからの吸気を個別に行うことが可能に構成されている。
【0031】
整列用プレート14は、吸着ヘッド11による余剰な半田ボール300の吸着を規制する機能を有しており、供給部12の配設位置の上方の位置に配設されている。また、整列用プレート14には、図4に示すように、吸着ヘッド11の吸着面22aと上面14aとが接触(または近接)している装着状態において吸着ヘッド11の吸気口23aに対向する位置に貫通孔14cが形成されている。この場合、貫通孔14cの直径L4は、半田ボール300が通過可能な95μm程度に規定されている。また、同図に示すように、整列用プレート14の厚みL3は、装着状態において吸気口23aに吸着された半田ボール300の先端部が下面14bからやや突出する75μm程度に規定されている。
【0032】
制御部15は、供給部12の移動機構34を制御して、保持部32(供給部12)を移動させる(後述する移動処理を実行する)。また、制御部15は、供給部12の回動機構35を制御して、規定位置Pを回動中心として保持部32を回動させる(後述する回動処理を実行する)。また、制御部15は、吸気装置13による吸気(空気の吸引)を制御する。さらに、制御部15は、搬送装置3による基板400の搬送を制御する。
【0033】
搬送装置3は、半田ボール吸着装置2における制御部15の制御に従い、半田ボール300の吸着が行われる吸着位置(整列用プレート14の配設位置)位置と、半田ボール300を基板400に搭載する位置(基板400の配設位置)との間で、吸着ヘッド11を搬送する。
【0034】
次に、半田ボール搭載装置1を用いて、球状体吸着方法に従って吸着した半田ボール300を基板400に搭載する方法(球状体搭載方法)について、図面を参照して説明する。
【0035】
まず、半田ボール吸着装置2の吸気装置13を作動させ、次いで、図外の操作部に対して開始操作を行う。これに応じて、制御部15が、吸気装置13の電磁バルブを制御して、吸着ヘッド11における内部空間21の空気の吸引、供給部12の保持部32における内部空間32cの空気の吸引、および供給部12の吸引部33における吸引経路33cからの吸気を開始させる。この際に、保持部32における内部空間32cの空気の吸引によって内部空間32cが負圧状態となり、それに伴って通気性シート32dを介して吸気が行われることにより、収容容器31に収容されている半田ボール300が通気性シート32dに吸着されて保持される。
【0036】
また、制御部15は、搬送装置3を制御して、半田ボール300の吸着が行われる吸着位置(整列用プレート14の配設位置)に吸着ヘッド11を搬送し、吸着ヘッド11の吸着面22aと整列用プレート14の上面14aとを接触(近接)させる(図4参照)。
【0037】
続いて、制御部15は、供給部12に対して供給処理を実行させる。具体的には、制御部15は、供給部12の移動機構34を制御して、図9に示すように、通気性シート32dに半田ボール300を保持している保持部32の基端部32bに取り付けられている吸気管32eを回動させることにより、規定位置Pを中心として保持部32を回動させる。
【0038】
次いで、制御部15は、図10に示すように、保持部32の通気性シート32dにおける一方の端部(同図における左側の端部)が整列用プレート14の下面14bにおける一方の端部(同図における左側の端部であって、この位置を以下「移動開始位置」ともいう)に対向した時点で、回動機構35を制御して、保持部32の回動(吸気管32eの回動)を停止させる。
【0039】
続いて、制御部15は、移動機構34を制御して、図11に示すように、吸着ヘッド11の吸着面22aに向けて保持部32(供給部12)を移動させて、通気性シート32dにおける一方の端部を移動開始位置に近接させる。この場合、図外のバネによって供給部12が整列用プレート14に向けて付勢されているため、同図に示すように、通気性シート32dに保持されている半田ボール300が整列用プレート14の下面14bに接触(当接)する。
【0040】
次いで、制御部15は、図12に示すように、移動機構34を制御して、吸着面22aに沿って、例えば同図における右向き(同図に示す矢印Aの向き:保持部の相対的な移動の向き)に保持部32を移動させる処理(以下、吸着面22aに沿って保持部32を移動させる処理を「移動処理」ともいう)を開始させる。また、制御部15は、回動機構35を制御して、移動処理の開始に連動させて吸気管32eを回動させることにより、規定位置P(図10参照)を中心として、移動処理における保持部32の相対的な移動の向きとは逆向き(この例では、通気性シート32dが左向きに移動する向きであって、同図に矢印Bで示す左回り(反時計回り)の向き)に保持部32を回動させる処理(以下、移動処理における保持部32の相対的な移動の向きとは逆向きに保持部32を回動させる処理を「回動処理」ともいう)を開始させる。
【0041】
この場合、制御部15は、移動処理における保持部32の相対的な移動速度Vt(吸着面22aに対する規定位置P(吸気管32eの中心軸の位置)の相対速度)と、保持部32の回動時における通気性シート32dの周速度Vrとが同じ速度となるように移動機構34および回動機構35を制御する。
【0042】
この移動処理および回動処理が開始されることにより、図12に示すように、通気性シート32dに保持されている半田ボール300が吸着面22aに形成されている吸気口23aの近傍に供給される。また、空気の吸引によって吸着ヘッド11の内部空間21が負圧状態となり、これによって各吸気口23aから吸着ヘッド11の内部空間21に空気が流れ込むため、この空気の流れに伴って生じる吸引力により、供給された半田ボール300が吸気口23a引き寄せられて、同図に示すように、整列用プレート14の各貫通孔14cを通って吸気口23aに吸着される。
【0043】
続いて、図13に示すように、移動処理および回動処理が引き次いで行われることにより、各吸気口23aに半田ボール300が1つずつ次々に吸着される。続いて、制御部15は、図14に示すように、通気性シート32dにおける他方の端部(同図における右側の端部)が整列用プレート14の下面14bにおける他方の端部(同図における右側の端部)に位置した時点で、回動機構35を制御して、回動処理を終了させる(なお、この時点では、移動処理は継続させる)。
【0044】
この半田ボール搭載装置1では、上記したように、保持面としての通気性シート32dの断面形状が弧状に形成された保持部32を、吸着面22aに沿って移動させる移動処理を実行し、その移動処理に連動させて、保持部32の相対的な移動の向きとは逆向きに保持部32を回動させる回動処理を実行する。この場合、移動処理に連動させて回動処理を実行することで、通気性シート32dに保持されている半田ボール300が、整列用プレート14に対して摺動しない状態(または、摺動が少なく抑えられた状態)で各吸気口23aの近傍に供給される。このため、この半田ボール搭載装置1では、摺動による半田ボール300の摩耗や変形が防止される結果、摩耗した半田ボール300や変形した半田ボール300が整列用プレート14の貫通孔14cや吸着ヘッド11の吸気口23aに嵌り込むことに起因する吸着不良の発生が確実に防止される。また、摺動によって半田ボール300が保持部32から脱落(落下)して、移動処理の後半において吸着ヘッド11に対して供給する半田ボール300が不足することに起因する吸着不良の発生が確実に防止される。
【0045】
また、この半田ボール搭載装置1では、移動処理における移動速度Vtと回動処理における通気性シート32dの周速度Vrとが同じ速度となるように保持部32の移動および回動が行われる。このため、この半田ボール搭載装置1では、通気性シート32dに保持されている半田ボール300が、整列用プレート14に対してほとんど摺動しない状態で各吸気口23aの近傍に供給される。したがって、この半田ボール搭載装置1では、摺動による半田ボール300の摩耗や変形が確実に防止される結果、吸着不良の発生がより確実に防止される。
【0046】
次いで、制御部15は、移動機構34を制御して、図15に示すように、供給部12を整列用プレート14の下面14bに沿ってさらに移動させる。この際に、同図に示すように、吸引部33の先端部が下面14bに近接した状態で下面14bに沿って移動し、吸引経路33cからの吸気によって余剰な半田ボール300が吸引されて除去される。これにより、供給処理が終了し、各吸気口23aに半田ボール300が吸着される。
【0047】
続いて、制御部15は、搬送装置3を制御して、図16に示すように、吸着ヘッド11が整列用プレート14から離反するように吸着ヘッド11を上向きに移動させ、次いで、搭載位置(半田ボール300が基板400の上方に位置する位置)に吸着ヘッド11を移動させる。
【0048】
続いて、制御部15は、半田ボール300が基板400の上方に位置した時点で、吸気装置13の電磁バルブを制御して、吸着ヘッド11における内部空間21からの空気の吸引を停止させる。この際に、吸気口23aによる吸着が解除され、図17に示すように、基板400における各端子401の上に半田ボール300がそれぞれ搭載される。次いで、制御部15は、搬送装置3を制御して、吸着ヘッド11を初期位置に移動させる。以上により、基板400に対する半田ボール300の搭載が完了する。
【0049】
この場合、この半田ボール搭載装置1では、上記したように、整列用プレート14の貫通孔14cに半田ボール300が嵌り込むことに起因して半田ボール300を吸着していない吸気口23aが存在したり、吸気口23aに半田ボール300が嵌り込んだりする吸着不良が確実に防止されている。このため、この半田ボール搭載装置1では、基板400の端子401に半田ボール300が搭載されない欠陥が生じる事態が確実に防止される。
【0050】
このように、この半田ボール吸着装置2、半田ボール搭載装置1、球状体吸着方法および球状体搭載方法によれば、保持面としての通気性シート32dの断面形状が弧状に形成された保持部32を吸着面22aに沿って移動させる移動処理に連動させて、保持部32の相対的な移動の向きとは逆向きに保持部32を回動させる回動処理を実行することにより、通気性シート32dに保持されている半田ボール300を、整列用プレート14に対して摺動しない状態(または、摺動が少なく抑えられた状態)で各吸気口23aの近傍に供給させることができる。このため、この半田ボール吸着装置2、半田ボール搭載装置1、球状体吸着方法および球状体搭載方法によれば、摺動による半田ボール300の摩耗や変形が確実に防止される結果、摩耗した半田ボール300や変形した半田ボール300が整列用プレート14の貫通孔14cや吸着ヘッド11の吸気口23aに嵌り込むことに起因する吸着不良の発生を確実に防止することができる。また、摺動によって半田ボール300が保持部32から脱落(落下)して、移動処理の後半において吸着ヘッド11に対して供給する半田ボール300が不足することに起因する吸着不良の発生を確実に防止することができる。
【0051】
また、この半田ボール吸着装置2、半田ボール搭載装置1、球状体吸着方法および球状体搭載方法によれば、移動処理における移動速度Vtと回動処理における通気性シート32dの周速度Vrとが同じ速度となるように保持部32の移動および回動を行うことにより、通気性シート32dに保持されている半田ボール300を、整列用プレート14に対してほとんど摺動しない状態で各吸気口23aの近傍に供給することができる。このため、この半田ボール吸着装置2、半田ボール搭載装置1、球状体吸着方法および球状体搭載方法によれば、摺動による半田ボール300の摩耗や変形を確実に防止することができる結果、吸着不良の発生をより確実に防止することができる。
【0052】
また、この半田ボール吸着装置2、半田ボール搭載装置1、球状体吸着方法および球状体搭載方法によれば、保持面としての通気性シート32dの断面形状が規定位置Pを中心とする円周の一部と同じ形状に形成された保持部32を用いることにより、規定位置Pから通気性シート32dまでの距離が一定のため、規定位置Pと吸着面22aとの距離を一定に維持した状態で移動処理を実行し、これに連動して回動処理を実行することで、通気性シート32dにおける吸着面22aに最も近い位置から吸着面22aまでの距離を一定に維持することができる。このため、この半田ボール吸着装置2、半田ボール搭載装置1、球状体吸着方法および球状体搭載方法によれば、回動処理の実行時において、通気性シート32dに保持されている半田ボール300が整列用プレート14に対して同じ力で押圧される結果、押圧力が変化することによる半田ボール300の変形等を確実に防止することができる。
【0053】
なお、球状体吸着装置、球状体搭載装置、球状体吸着方法および球状体搭載方法は、上記の構成および方法に限定されない。例えば、吸着面22aに沿った保持部32の移動速度Vtと保持部32の回動時における通気性シート32dの周速度Vrとが同じ速度となるように移動機構34および回動機構35を制御する構成および方法について上記したが、移動速度Vtおよび周速度Vrが異なる速度でもよく、このように移動機構34および回動機構35を制御する構成および方法を採用することもできる。
【0054】
また、保持面としての通気性シート32dの断面形状を規定位置Pを中心とする円Cの円周の一部と同じ形状に形成した例について上記したが、通気性シート32dの断面形状を円Cの円周の全部と同じ形状に形成した(つまり、保持面の断面形状を円形に形成した)保持部を採用することもできる。また、保持面の断面形状を、回動中心(規定位置P)とは異なる位置を中心とする円の円周の一部または全部と同じ形状に形成した保持部や、保持面の断面形状を、楕円の周の一部または全部と同じ形状に形成した保持部を採用することもできる。
【0055】
また、整列用プレート14を用いる構成および方法について上記したが、整列用プレート14を用いない構成および方法を採用することもできる。
【0056】
さらに、供給処理において、静止状態における吸着ヘッド11の吸着面22a(整列用プレート14の下面14b)に対して保持部32を近接させて吸着面22aに沿って移動させる構成および方法について上記したが、保持部32に対して吸着ヘッド11および整列用プレート14を移動させる構成および方法を採用することもできる。また、供給処理において、吸着ヘッド11および整列用プレート14に対して保持部32を移動させるのと同時に、保持部32に対して吸着ヘッド11および整列用プレート14を移動させる構成および方法を採用することもできる。
【0057】
また、整列用プレート14を用いないときには、静止状態の吸着ヘッド11に対して保持部32を移動させる構成および方法、保持部32に対して吸着ヘッド11を移動させる構成および方法、並びに保持部32および吸着ヘッド11の双方を移動させる構成および方法のいずれも採用することができる。
【0058】
また、上記の例では、移動処理における保持部32の相対的な移動の向きを右向きとし、回動処理における保持部32の回動の向きを左回り(反時計回り)の向きとしたが、これとは逆に、移動処理における保持部32の相対的な移動の向きを左向きとし、回動処理における保持部32の回動の向きを右回り(時計回り)の向きとする構成および方法を採用することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1 半田ボール搭載装置
2 半田ボール吸着装置
3 搬送装置
11 吸着ヘッド
15 制御部
22a 吸着面
23a 吸気口
32 保持部
32a 先端部
32b 基端部
32d 通気性シート
34 移動機構
35 回動機構
300 半田ボール
400 基板
401 端子
C 円
P 規定位置
Vr 周速度
Vt 移動速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吸気口が形成された吸着面を有する吸着ヘッドと、先端部の保持面で球状体を保持する保持部と、前記保持部を前記吸着ヘッドに対して相対的に移動させる移動機構と、当該移動機構を制御して前記球状体を保持している前記保持面を前記吸着面に対して相対的に近接させた近接状態を維持しつつ当該吸着面に沿って当該保持部を相対的に移動させる移動処理を実行する制御部とを備えて前記球状体を前記各吸気口に吸着する球状体吸着装置であって、
前記保持部を回動させる回動機構を備え、
前記保持部は、基端部における予め規定された規定位置を中心として前記回動機構によって回動されると共に、前記保持面の断面形状が前記近接状態における前記吸着面側に向けて突出する弧状に形成され、
前記制御部は、前記回動機構を制御して前記移動処理における前記保持部の相対的な移動の向きとは逆向きに前記保持部を回動させる回動処理を当該移動処理に連動させて実行する球状体吸着装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記移動処理における前記保持部の相対的な移動速度と前記回動処理における前記保持面の周速度とが同じ速度となるように前記移動機構および前記回動機構を制御する請求項1記載の球状体吸着装置。
【請求項3】
前記保持部は、前記保持面の断面形状が前記規定位置を中心とする円周の一部または全部と同じ形状に形成されている請求項1または2記載の球状体吸着装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の球状体吸着装置と、前記球状体の吸着が行われる吸着位置と前記球状体が搭載対象体に搭載される搭載位置との間で前記球状体吸着装置の前記吸着ヘッドを搬送する搬送装置とを備えて、前記球状体を前記搭載対象体に搭載する球状体搭載装置。
【請求項5】
複数の吸気口が形成された吸着面を有する吸着ヘッドにおける当該吸着面に対して、球状体を保持している保持部の保持面を相対的に近接させた近接状態を維持しつつ、前記吸着面に沿って当該保持部を相対的に移動させる移動処理を実行し、前記球状体を前記各吸気口に吸着する球状体吸着方法であって、
前記保持面の断面形状が前記近接状態における前記吸着面側に向けて突出する弧状に形成された前記保持部を用いて、前記移動処理における前記保持部の相対的な移動の向きとは逆向きに当該保持部の基端部における予め規定された規定位置を中心として当該保持部を回動させる回動処理を当該移動処理に連動させて実行する球状体吸着方法。
【請求項6】
前記移動処理における前記保持部の相対的な移動速度と前記回動処理における前記保持面の周速度とが同じ速度となるように前記保持部の移動および回動を行う請求項5記載の球状体吸着方法。
【請求項7】
前記保持面の断面形状が前記規定位置を中心とする円周の一部または全部と同じ形状に形成されている前記保持部を用いる請求項5または6記載の球状体吸着方法。
【請求項8】
請求項5から7のいずれかに記載の球状体吸着方法で前記吸着ヘッドに前記球状体を吸着させ、当該球状体を吸着している前記吸着ヘッドを搭載位置に移動させて、前記球状体を搭載対象体に搭載する球状体搭載方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−84779(P2013−84779A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223787(P2011−223787)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】