球状炭素材、及び同材を用いた蓄電装置、並びに同材の製造方法、球状フェノール樹脂、同樹脂の製造方法
【課題】吸着材、複写機のトナー材、蓄電装置の電極材など種々の用途に供することができる炭素材を提供する。
【解決手段】個々の粒子が互いに独立した球状の活性炭粒子よりなる炭素材であって、その平均粒子径が100nm以上850nm以下であることを特徴とする。
【解決手段】個々の粒子が互いに独立した球状の活性炭粒子よりなる炭素材であって、その平均粒子径が100nm以上850nm以下であることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状炭素材、及び同材を用いた蓄電装置、並びに同材の製造方法、球状フェノール樹脂、同樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素材には、ガス成分や臭い成分の吸着材、有機合成品への添加剤、複写機のトナー材、蓄電装置の電極材など多種の用途があることが知られている。このうち、蓄電装置の電極用炭素材は、特定の層構造を有する黒鉛質(結晶質)のものと、特定の層構造を有しない活性炭質のものとに大別することができる。電解質イオンのインターカレーションを利用する場合には黒鉛質のものが用いられ、吸着を利用する場合には活性炭質のものが用いられる。
【0003】
上記蓄電装置の電極用炭素材の一例が特許文献1に記載されている。それは、平均粒子径1〜10μm、細孔容積1.5cm3/g以下の球状活性炭を電気二重層キャパシタの電極に用いるというものである。その球状活性炭の製法としては、溶媒中で、フェノール類とアルデヒド類を、触媒及び懸濁安定剤の存在下、撹拌しながら加熱・硬化させることにより球状フェノール樹脂を得ること、この球状フェノール樹脂を炭化し賦活させることにより球状活性炭とすることが記載されている。撹拌条件や懸濁安定剤の濃度等の合成条件の変更により粒子径を制御できることも記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、レゾルシノール系ポリマー粒子を前駆体とした直径30〜500nmの超微細球状炭素材について記載されている。また、この球状炭素材は、レゾルシノール/ホルムアルデヒド系共重合体を骨格成分とする層状構造を構成単位とする球状構造体の形態的特徴を有してなるものである。それは、層状構造を構成単位とすることから、黒鉛質の球状炭素材であると認められる。特許文献2に掲載された図1(b)の写真によれば、その球状炭素材は、個々の粒子が分離独立しておらず、粒子同士が部分的に結合したものである。その製法は、塩基性縮合剤の存在下、アルキルアンモニウム塩、アルキルアミンよりなる群から選択された1種以上の界面活性剤と水を特定モル比で混合した溶液に、レゾルシノールモノマーとアルデヒド類の中から選択された1種以上のモノマーを加え、反応させることにより得られる球状の重合体生成物を不活性雰囲気下で焼成するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−143973号公報
【特許文献2】特開2007−39263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている如く、活性炭質の球状炭素材は知られているが、その平均粒子径は1〜10μmであって比較的大きい。また、市販の活性炭は、炭素材を賦活し機械的に粉砕して微細化したものであるため、粒径が大きいだけでなく、不規則な破砕形状(不定形)になっている。そのため、これら従前の活性炭を蓄電装置の電極に用いても、性能の飛躍的な向上は望めない。
【0007】
例えば、電気二重層キャパシタの場合、エネルギー密度の増大(蓄えることができるエネルギー量の増大)のためには、静電容量が大きな活性炭を所定容積内に高密度に充填することが必要になる。活性炭に対するイオンの吸着量で静電容量が決まることから、単位重量あたりの静電容量を増大するためには、有効な表面積を増加させること、並びにミクロポア内部へのイオンの拡散進入を容易にすべく拡散経路を短くすることが重要になる。しかし、活性炭の粒子径が大きいと、それだけ表面積の増大及び拡散経路の短縮に不利になる。また、活性炭が不規則な破砕形状であれば、所定容積に充填しても粒子間の空隙が大きくなり、充填密度は低くなる。つまり、単位体積あたりの静電容量の増大に不利になる。
【0008】
一方、特許文献2に記載されている球状炭素材は、活性炭ではないものの、その粒子径は小さい。しかし、上述の如く個々の粒子が分離独立しておらず、粒子同士が部分的に結合している。従って、これを電極材料として利用するとしても、当該球状炭素材を粉砕する必要がある。そして、粉砕しても、得られる粒子が必ずしも球状になるわけではなく、また、大径粒子も含まれることになるから、上記静電容量及び充填密度の大きな増加を望むことはできない。
【0009】
そこで、本発明は、吸着材、複写機のトナー材など種々の用途に供することができ、また、蓄電装置の電極材として供したときに上記エネルギー密度を増大させることができる炭素材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の観点の一つは、本発明を球状炭素材として具現化したものであり、それは、平均粒子径が100nm以上850nm以下である球状の活性炭粒子よりなることを特徴とする。
【0011】
すなわち、本発明に係る球状炭素材は、活性炭質であって、平均粒子径がサブミクロンオーダで非常に小さく且つ球状であるから、吸着材、複写機のトナー材、蓄電装置の電極材など種々の用途において、製品品質改善を図ることができる。
【0012】
また、本発明の好ましい態様では、上記活性炭粒子が個々に独立した球状粒子になっている。これにより、当該球状炭素材を、機械的粉砕を要することなく、利用することができ、破砕による不定形化を避けることができる。従って、球状炭素材を所定容積に充填して使用する場合の充填密度を高めることができ、製品品質の改善に有利になる。
【0013】
例えば、上記球状炭素材を活物質として用いた蓄電装置にあっては、個々の活性炭粒子の平均粒子径が非常に小さいことから、表面積の増大及び拡散経路の短縮により単位重量当たりの静電容量が大きくなり、また、高密度充填が可能になり、エネルギー密度の増大に有利になる。
【0014】
本発明の別の観点は、上記球状炭素材の製造方法であって、フェノール類と、アルデヒド類と、界面活性剤と、硬化剤と、酸触媒とを混合してなる反応溶液を調製する工程と、上記反応溶液を加熱して重合反応を進めることにより、炭素材前駆体である平均粒子径1μm以下の球状フェノール樹脂を調製する工程と、上記炭素材前駆体を加熱硬化させる工程と、得られた硬化物を加熱して炭素化する工程と、得られた炭素化物を水蒸気賦活する工程とを備えていることを特徴とする。
【0015】
上記重合反応においては、上記反応溶液を例えば75℃以上110℃以下で数時間ないし数十時間攪拌すればよい。上記加熱硬化においては、上記炭素材前駆体(球状フェノール樹脂)の該前駆体を不活性ガス雰囲気下で加熱して110℃以上300℃以下の温度に0.5時間以上5時間以下保持すればよい。上記炭素化においては、上記硬化後の球状フェノール樹脂を不活性ガス雰囲気下で加熱して600℃以上900℃以下に1時間前後保持すればよい。さらに、上記水蒸気賦活においては、上記炭素化物を、飽和水蒸気を含む窒素ガス雰囲気下で加熱して900℃前後の温度に1時間前後保持すればよい。
【0016】
この製造方法により、平均粒子径が100nm以上850nm以下である球状の活性炭粒子よりなる球状炭素材を得ることができる。この製造方法の特徴は界面活性剤及び酸触媒をフェノール樹脂の球状化及び微細化に利用したことにある。
【0017】
すなわち、フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下で縮合重合させると、ノボラックと呼ばれる熱可塑性樹脂が得られることは知られている。しかし、界面活性剤が添加されていない場合、得られるフェノール樹脂は不定形の塊状物となる。これに対して、本発明では、上記縮合重合反応が界面活性剤の各ミセル内で進む。そのために、互いに分離独立した多数の球状フェノール樹脂が得られる。その際、酸触媒の存在により、ミセルサイズが小さくなるため、得られる球状フェノール樹脂の粒子径が小さくなると考えられる。
【0018】
上記酸触媒としては、ハロゲン化水素、硝酸及び硫酸のうちから選ばれる少なくとも一種とすることができる。フェノール類に対する酸触媒の添加割合はモル比で0.01以上0.15以下とすることが好ましい。このモル比が0.01未満になると、上記縮合重合反応が進み難くなり、また、0.15を越えるモル比になると、球状フェノール樹脂を得ることが困難になる。
【0019】
また、上記界面活性剤として、陽イオン性界面活性剤及び陰イオン性界面活性剤の少なくとも一方を用いることが好ましい。
【0020】
本発明の別の観点は、新規な球状のフェノール樹脂であって、平均粒子径が300nm以上1000nm以下であることを特徴とする。この球状フェノール樹脂によれば、これを加熱硬化させ、得られた硬化物を加熱して炭素化し、さらに得られた炭素化物を水蒸気賦活することにより、平均粒子径が100nm以上850nm以下である球状の活性炭粒子よりなる上記球状炭素材を得ることができる。また、この球状フェノール樹脂を電池電極、砥石、フィラー、成形材料等の原料として利用し、関連製品の品質改善を図ることができる。
【0021】
本発明のさらに別の観点は、上記平均粒子径が300nm以上1000nm以下である球状のフェノール樹脂の製造方法であって、フェノール類と、アルデヒド類と、界面活性剤と、硬化剤と、酸触媒との混合溶液を調製する工程と、上記混合溶液を75℃以上110℃以下の熱処理温度に加熱して重合反応を進める工程とを備えていることを特徴とする。
【0022】
先に説明した球状炭素材の製造方法の説明から明らかなように、当該製造方法によれば、平均粒子径が300nm以上1000nm以下である球状のフェノール樹脂を得ることができる。上記重合反応においては、上記反応溶液を例えば75℃以上110℃以下で数時間ないし数十時間攪拌すればよい。上記酸触媒としては、ハロゲン化水素、硝酸及び硫酸のうちから選ばれる少なくとも一種とすることができる。フェノール類に対する酸触媒の添加割合はモル比で0.01以上0.15以下とすることが好ましい。このモル比が0.01未満になると、上記縮合重合反応が進み難くなり、また、0.15を越えるモル比になると、球状フェノール樹脂を得ることが困難になる。また、上記界面活性剤として、陽イオン性界面活性剤及び陰イオン性界面活性剤の少なくとも一方を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
以上のように本発明に係る球状炭素材によれば、平均粒子径が100nm以上850nm以下である球状の活性炭粒子よりなるから、吸着材、複写機のトナー材、蓄電装置の電極材など種々の用途において、製品品質改善を図ることができ、特に上記球状炭素材を蓄電装置の活物質として用いると、エネルギー密度の増大に有利になる。
【0024】
また、本発明に係る球状炭素材の製造方法によれば、フェノール類、アルデヒド類、硬化剤及び酸触媒の混合溶液に界面活性剤を添加し、縮合重合反応によって炭素材前駆体である平均粒子径1μm以下の球状フェノール樹脂を調製し、これを加熱硬化させて炭素化及び水蒸気賦活を行なうようにしたから、平均粒子径が100nm以上850nm以下である球状の活性炭粒子よりなる球状炭素材を得ることができる。
【0025】
また、本発明に係る平均粒子径が300nm以上1000nm以下である球状フェノール樹脂によれば、これを上記球状炭素材の原料とすることができ、或いは電池電極、砥石、フィラー、成形材料等の原料として利用し、関連製品の品質改善を図ることができる。
【0026】
また、本発明に係る球状のフェノール樹脂の製造方法によれば、フェノール類と、アルデヒド類と、界面活性剤と、硬化剤と、酸触媒との混合溶液を調製する工程と、上記混合溶液を75℃以上110℃以下の熱処理温度に加熱して重合反応を進める工程とを備えているから、平均粒子径が300nm以上1000nm以下である球状のフェノール樹脂を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る球状フェノール樹脂の調製法を概略的に示す説明図である。
【図2】ミセル内でフェノール樹脂が重合生成される様子を示す説明図である。
【図3】本発明に係る球状フェノール樹脂の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】酸触媒添加量が異なる球状フェノール樹脂各々の粒度分布を示すグラフ図である。
【図5】酸触媒の種類が異なる球状フェノール樹脂各々の粒度分布を示すグラフ図である。
【図6】界面活性剤の種類が異なる球状フェノール樹脂各々の粒度分布を示すグラフ図である。
【図7】球状フェノール樹脂から球状炭素材を得る本発明に係る調製法を概略的に示す説明図である。
【図8】本発明に係る球状炭素材の走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】従前の粉末炭素材の走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】本発明に係る球状フェノール樹脂、及びこれから得た球状炭素材各々の粒度分布を示すグラフ図である。
【図11】酸触媒のモル比し、球状フェノール樹脂及び球状炭素材各々の平均粒子径との関係を示すグラフ図である。
【図12】本発明に係る球状炭素材SAC及び従前の粉末炭素材AC各々の窒素吸着等温線を示すグラフ図である。
【図13】コイン型電気二重層キャパシタの構造を示す説明図である。
【図14】本発明に係る球状炭素材SAC及び従前の粉末炭素材AC各々の放電電流密度に対する単位重量当たり電極容量を示すグラフ図である。
【図15】本発明に係る球状炭素材SAC及び従前の粉末炭素材AC各々を用いた電気二重層キャパシタの放電電流密度に対する単位体積当たり電極容量を示すグラフ図である。
【図16】本発明に係る球状炭素材SAC及び従前の粉末炭素材AC各々を用いた電池の充放電サイクル試験結果を示すグラフ図である。
【図17】上記電池の20サイクル後の放電容量を比較したグラフ図である。
【図18】上記電池のレート特性の試験結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
<球状フェノール樹脂の調製>
図1に調製方法を概略的に示す。すなわち、界面活性剤と硬化剤とを水中で混合し、これに、フェノール、ホルムアルデヒド及び酸触媒を加えて混合することにより、反応溶液(混合溶液)を調製する。この反応溶液を95℃の温度になるように加熱しながら24時間攪拌する(重合反応)。その後、反応溶液を遠心分離し、得られた生成物を水及びメタノールで洗浄することにより、球状炭素材の前駆体である球状フェノール樹脂を得る。得られた球状フェノール樹脂は、アルゴンガス雰囲気下で加熱して270℃の温度に2時間保持して硬化させる。
【0030】
この場合、図2に示すように、水相において界面活性剤のミセルが形成され、そのミセル内にフェノールが導入され、酸触媒の存在下、縮合重合反応が進行する。このミセル内での重合反応の進行により、球状フェノール樹脂が得られる。また、酸触媒によって、界面活性剤の分散が図れ、その結果、ミセルサイズが小さくなるため、得られる球状フェノール樹脂は粒子径が小さくなる。すなわち、平均粒子径が300nm以上1000nm以下である球状フェノール樹脂を得ることができる。
【0031】
図3は得られた球状フェノール樹脂のSEM(走査型電子顕微鏡)像である。これは、界面活性剤としてCTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム;陽イオン界面活性剤)を用い、酸触媒として塩酸を用い、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを用いたものである。フェノール1モル当たりの添加量は、CTABが0.28モル、塩酸が0.02モル、硬化剤が0.034モルである。図3により、得られる球状フェノール樹脂は高い真球度を有することがわかる。その平均粒子径は0.82μmであった。
【0032】
−酸触媒の添加量の影響−
上記球状フェノール樹脂の調製において、酸触媒(塩酸)の添加量が、得られる球状フェノール樹脂の粒径に与える影響を調べた。原料添加割合は表1に示すとおりである。図4に得られた球状フェノール樹脂の粒度分布(頻度分布)を示す。
【0033】
【表1】
【0034】
塩酸の添加量が多くなるほど、得られる球状フェノール樹脂の粒子径が小さくなっている。また、図4に示すように、塩酸の添加量が多くなるほど、粒子径の分散度が小さくなっている。一方、表1に示すように、塩酸の添加量が多い(モル比で0.18)サンプル5では、球状フェノール樹脂が得られなかった。これは、塩酸の添加量が多くなり過ぎると、界面活性剤(CTAB)の多くがプロトンと結合し、ミセルを形成できなくなるためと考えられる。以上から、酸触媒の添加量によって球状フェノール樹脂の粒子径を制御できることがわかる。
【0035】
−酸触媒の種類の影響−
上記球状フェノール樹脂の調製において、酸触媒の種類が、得られる球状フェノール樹脂の粒径に与える影響を調べた。酸触媒としては、HBr、HI、HNO3及びH2SO4の各無機酸を準備した。原料添加割合は表1のサンプル2と同じである。すなわち、いずれの無機酸も、フェノールに対するモル比は0.02モル%とした。いずれの無機酸を採用した場合でも球状フェノール樹脂を得ることができた。それら球状フェノール樹脂の粒度分布(頻度分布)を、先のサンプル2(酸触媒;塩酸HCl)の結果と共に図5に示す。HBr、HI、HNO3及びH2SO4のいずれにおいても、HClの場合よりも、球状フェノール樹脂の平均粒子径の小さく、また、粒子径の分散度が小さくなっている。以上から、酸触媒の種類で球状フェノール樹脂の粒子径を制御できることがわかる。
【0036】
−界面活性剤の種類の影響−
上記球状フェノール樹脂の調製において、界面活性剤の種類が、得られる球状フェノール樹脂の粒径に与える影響を調べた。すなわち、陰イオン性界面活性剤として、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を準備した。原料添加割合は表1のサンプル2と同じにした。得られた球状フェノール樹脂の粒度分布(頻度分布)を、先のサンプル2(陽イオン性界面活性剤;CTAB)の結果と共に図6に示す。SDSの場合、粒子径はサンプル2のCTABより少し大きくなり、粒子径の分散度も少し大きくなっているものの、陰イオン性界面活性剤でも陽イオン性界面活性剤の場合と同じく、粒子径が比較的小さな球状フェノール樹脂が得られることがわかる。
【0037】
<球状炭素材の調製>
図7は上記調製法で得られた球状フェノール樹脂から球状炭素材を得る調製法を概略的に示す。すなわち、上述の硬化させた球状フェノール樹脂をアルゴンガス雰囲気下で加熱して800℃の温度に1時間保持する。これは球状フェノール樹脂の炭素化処理である。次いで当該炭素化物を飽和水蒸気を含む窒素ガス雰囲気下で加熱して900℃の温度に55分間保持する。これは水蒸気賦活処理である。
【0038】
図8は表1のサンプル2の球状フェノール樹脂に上記炭素化処理及び水蒸気賦活処理を施して得た多数の球状活性炭粒子よりなる球状炭素材のSEM像である。図9は界面活性剤を添加せずに調製した塊状フェノール樹脂に上記炭素化処理及び水蒸気賦活処理を施し、粉砕して得た粉末炭素材のSEM像である。
【0039】
サンプル2の球状フェノール樹脂の場合、炭素化及び水蒸気賦活後も粒子の球形は保持されている。すなわち、個々の活性炭粒子は、互いに分離独立した球状になっている。図10はサンプル2の炭素化前及び炭素化・水蒸気賦活後の粒度分布(頻度分布)である。球状フェノール樹脂は、炭素化・水蒸気賦活によってその粒子径が小さくなり、粒子径の分散度も小さくなっている。炭素化・水蒸気賦活後の平均粒子径は0.33μm(330nm)である。
【0040】
上記サンプル1〜4の球状フェノール樹脂の他に、塩酸のモル比を0.13として上記球状フェノール樹脂の調製法により、平均粒子径0.32μmの球状フェノール樹脂を調製した。そして、サンプル1〜4の球状フェノール樹脂及び平均粒子径0.32μmの球状フェノール樹脂各々から上記調製法によって球状炭素材を得た。それらの炭素化前及び炭素化・水蒸気賦活後の平均粒子径を図11に示す。平均粒子径320nm〜930nmの球状フェノール樹脂から平均粒子径100nm〜400nmの球状炭素材が得られている。なお、図11の各サンプルは上述した条件によって得られた一実施例であり、調製条件が異なる場合(但し、本願請求項4で特定する範囲内)には比較的大きな平均粒子径を有する球状炭素材が得られる。具体的には、図11の各サンプルは最も小さい平均粒子径のものであり、条件によって、図11で示すバーの範囲のものが得られる。最大で850nmであった。以上から、平均粒子径300nm〜1000nmの球状フェノール樹脂から平均粒子径100nm〜850nmの球状炭素材を得ることができることがわかる。
【0041】
−細孔特性−
図8の球状炭素材SAC及び図9の粉末炭素材AC各々について、77.4K(窒素の沸点)に冷却し、窒素ガスを導入して窒素ガスの吸着量を測定した。このとき、導入する窒素ガスの圧力Pを徐々に上げ、窒素ガスの飽和蒸気圧P0で除した値を相対圧P/P0として、各相対圧に対する吸着量をプロットすることにより図12に示す窒素吸着等温線を得た。そして、BET法により各炭素材の比表面積を求め、上記窒素ガス吸着量の測定結果に基いて全細孔容積を求め、BJH法によりメゾポア容積率(全細孔容積に対する細孔径2nm以上50nm未満のメゾポアの容積の割合)を求め、さらに、比表面積および全細孔容積を用いて平均細孔径を求めた。結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
実施形態に係る球状炭素材SACは、従前の破砕によって得られる粉末炭素材ACと略同等の細孔特性を有する。実施形態に係る球状炭素材SACは、球状であるにも拘わらず、その平均粒子径が非常に小さいためと考えられる。
【0044】
<電気二重層キャパシタへの適用>
表2に示すサンプルSAC及びAC各々を電気二重層キャパシタの活物質として用いたときの特性を調べた。図13はコイン型電気二重層キャパシタの構造を示す。同図において、1は集電体、2は電極、3はセパレータ、4は電解液である。集電体1としては白金を用い、セパレータ3としてはPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を用い、電解液4としては1モル濃度のEt4NBF4/PC(テトラエチルアンモニウムテトラフルオロブロマイド)を用いた。そして、電極2は、炭素材(SAC又はAC)95質量%とPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)5質量%との混合体で構成した。
【0045】
そうして、活物質として球状炭素材SACを用いたケース及び粉末炭素材ACを用いたケース各々について、10mAの定電流で電圧3Vまで充電し、次に1〜50mAの定電流下、0Vまで放電し、次式により単位重量当たり電極容量(静電容量)C(g)及び単位体積当たりの電極容量C(v)を求めた。なお、Iは電流値、Δtは電圧降下時間、ΔVは電圧降下値、(M1+M2)は電極2枚分の活物質質量(g)、(V1+V2)は電極2枚分の活物質体積(cm3)である。
【0046】
C(g)=I×Δt/(ΔV×(M1+M2))
C(v)=I×Δt/(ΔV×(V1+V2))
【0047】
まず、電極密度及び電気伝導率は表3に示すとおりである。球状炭素材SACの場合は、電極密度が粉末炭素材ACの場合の約2倍、電気伝導率が粉末炭素材ACの場合の約50倍になっている。
【0048】
【表3】
【0049】
図14は放電電流密度に対する単位重量当たり電極容量を示し、図14は放電電流密度に対する単位体積当たり電極容量を示す。いずれも、球状炭素材SACの方が高い値を示している。特に、図15の単位体積当たり電極容量に関しては、球状炭素材SACは粉末炭素材ACの2倍以上になっている。これは、球状炭素材SACが粉末炭素材ACに比べ、より高密度に充填されたことによるものと認められる。
【0050】
<電池への適用>
図11に示す酸触媒モル比0.04、0.09及び0.13各々の球状炭素材SAC3種(それらのおよその平均粒子径は300nm、200nm、100nmである)と、従前の粉末炭素材AC(平均粒子径5000nm)とについて、各々を負極材料とするコイン電池(CR2032)を作製し、特性を比較した。
【0051】
コイン電池の正極材料はリチウム金属とし、電解液には、プロピレンカーボネート及びジメチルカーボネートの混合溶媒にLi電解質LiPF6を混合した溶液を採用した。そして、1mAの定電流、−3.0〜−0.01Vの電圧範囲で充放電サイクル試験(室温25℃)を行なった。結果を図16に示す。初期充放電効率(=(放電容量/充電容量)×100)を表4に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
本発明に係る球状炭素材SACの場合、従前の炭素材ACに比べて初期充放電効率が高い。また、充放電サイクルの場合、サイクル数が多くなると、放電容量が小さくなるが、その放電容量の低下をみると、本発明に係る球状炭素材SACは、従前の炭素材ACに比べその低下度が小さい。図17は20サイクル後の放電容量を比較したものであり、本発明に係る球状炭素材SACでは、20サイクル後でも大きな放電容量が維持されていることがわかる。また、表4及び図16,17から、球状炭素材SACの平均粒子径が小さくなるほど放電容量が増加することがわかる。
【0054】
−レート特性−
上記本発明に係る3種の球状炭素材SAC及び従前の炭素材ACによる各コイン電池(CR2032)について、1mAの定電流、−3.0〜−0.01Vの電圧範囲でレート(印加電流変更)試験(室温25℃)を行なった。すなわち、放電レート0.5C(2時間率)での放電容量を100%としたときの、放電レートの増大による放電容量維持率の変化を測定した。結果を図18に示す。いずれも、放電レートの増大(印加電流の増大)に伴って放電容量維持率が低下しているものの、本発明に係る3種の球状炭素材SACは従前の炭素材ACに比べて、その放電容量維持率が高い。また、球状炭素材SACの平均粒子径が小さくなるほど放電容量維持率が高くなっている。
【0055】
すなわち、リチウム電池は大電流に弱いとされているところ、本発明に係る球状炭素材SACの場合、その粒子径が小さく、ミクロポア内部へのLiイオンの拡散進入が容易である(拡散経路が短い)ために、大電流になっても、放電容量の維持率が高くなったものと認められる。換言すれば、従前の炭素材ACの場合は、その粒子径が大きいことから、ミクロポア内部へのLiイオンの拡散に時間がかかり、大電流に対応できない、つまり、使用されない炭素材が多くなったものと認められる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
球状炭素材は、吸着材、複写機のトナー材、蓄電装置の電極材など種々の用途がある。また、球状フェノール樹脂は、粒状活性炭、電池電極、砥石、フィラー、成形材料等の原料とすることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 集電体
2 電極
3 セパレータ
4 電解液
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状炭素材、及び同材を用いた蓄電装置、並びに同材の製造方法、球状フェノール樹脂、同樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素材には、ガス成分や臭い成分の吸着材、有機合成品への添加剤、複写機のトナー材、蓄電装置の電極材など多種の用途があることが知られている。このうち、蓄電装置の電極用炭素材は、特定の層構造を有する黒鉛質(結晶質)のものと、特定の層構造を有しない活性炭質のものとに大別することができる。電解質イオンのインターカレーションを利用する場合には黒鉛質のものが用いられ、吸着を利用する場合には活性炭質のものが用いられる。
【0003】
上記蓄電装置の電極用炭素材の一例が特許文献1に記載されている。それは、平均粒子径1〜10μm、細孔容積1.5cm3/g以下の球状活性炭を電気二重層キャパシタの電極に用いるというものである。その球状活性炭の製法としては、溶媒中で、フェノール類とアルデヒド類を、触媒及び懸濁安定剤の存在下、撹拌しながら加熱・硬化させることにより球状フェノール樹脂を得ること、この球状フェノール樹脂を炭化し賦活させることにより球状活性炭とすることが記載されている。撹拌条件や懸濁安定剤の濃度等の合成条件の変更により粒子径を制御できることも記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、レゾルシノール系ポリマー粒子を前駆体とした直径30〜500nmの超微細球状炭素材について記載されている。また、この球状炭素材は、レゾルシノール/ホルムアルデヒド系共重合体を骨格成分とする層状構造を構成単位とする球状構造体の形態的特徴を有してなるものである。それは、層状構造を構成単位とすることから、黒鉛質の球状炭素材であると認められる。特許文献2に掲載された図1(b)の写真によれば、その球状炭素材は、個々の粒子が分離独立しておらず、粒子同士が部分的に結合したものである。その製法は、塩基性縮合剤の存在下、アルキルアンモニウム塩、アルキルアミンよりなる群から選択された1種以上の界面活性剤と水を特定モル比で混合した溶液に、レゾルシノールモノマーとアルデヒド類の中から選択された1種以上のモノマーを加え、反応させることにより得られる球状の重合体生成物を不活性雰囲気下で焼成するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−143973号公報
【特許文献2】特開2007−39263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている如く、活性炭質の球状炭素材は知られているが、その平均粒子径は1〜10μmであって比較的大きい。また、市販の活性炭は、炭素材を賦活し機械的に粉砕して微細化したものであるため、粒径が大きいだけでなく、不規則な破砕形状(不定形)になっている。そのため、これら従前の活性炭を蓄電装置の電極に用いても、性能の飛躍的な向上は望めない。
【0007】
例えば、電気二重層キャパシタの場合、エネルギー密度の増大(蓄えることができるエネルギー量の増大)のためには、静電容量が大きな活性炭を所定容積内に高密度に充填することが必要になる。活性炭に対するイオンの吸着量で静電容量が決まることから、単位重量あたりの静電容量を増大するためには、有効な表面積を増加させること、並びにミクロポア内部へのイオンの拡散進入を容易にすべく拡散経路を短くすることが重要になる。しかし、活性炭の粒子径が大きいと、それだけ表面積の増大及び拡散経路の短縮に不利になる。また、活性炭が不規則な破砕形状であれば、所定容積に充填しても粒子間の空隙が大きくなり、充填密度は低くなる。つまり、単位体積あたりの静電容量の増大に不利になる。
【0008】
一方、特許文献2に記載されている球状炭素材は、活性炭ではないものの、その粒子径は小さい。しかし、上述の如く個々の粒子が分離独立しておらず、粒子同士が部分的に結合している。従って、これを電極材料として利用するとしても、当該球状炭素材を粉砕する必要がある。そして、粉砕しても、得られる粒子が必ずしも球状になるわけではなく、また、大径粒子も含まれることになるから、上記静電容量及び充填密度の大きな増加を望むことはできない。
【0009】
そこで、本発明は、吸着材、複写機のトナー材など種々の用途に供することができ、また、蓄電装置の電極材として供したときに上記エネルギー密度を増大させることができる炭素材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の観点の一つは、本発明を球状炭素材として具現化したものであり、それは、平均粒子径が100nm以上850nm以下である球状の活性炭粒子よりなることを特徴とする。
【0011】
すなわち、本発明に係る球状炭素材は、活性炭質であって、平均粒子径がサブミクロンオーダで非常に小さく且つ球状であるから、吸着材、複写機のトナー材、蓄電装置の電極材など種々の用途において、製品品質改善を図ることができる。
【0012】
また、本発明の好ましい態様では、上記活性炭粒子が個々に独立した球状粒子になっている。これにより、当該球状炭素材を、機械的粉砕を要することなく、利用することができ、破砕による不定形化を避けることができる。従って、球状炭素材を所定容積に充填して使用する場合の充填密度を高めることができ、製品品質の改善に有利になる。
【0013】
例えば、上記球状炭素材を活物質として用いた蓄電装置にあっては、個々の活性炭粒子の平均粒子径が非常に小さいことから、表面積の増大及び拡散経路の短縮により単位重量当たりの静電容量が大きくなり、また、高密度充填が可能になり、エネルギー密度の増大に有利になる。
【0014】
本発明の別の観点は、上記球状炭素材の製造方法であって、フェノール類と、アルデヒド類と、界面活性剤と、硬化剤と、酸触媒とを混合してなる反応溶液を調製する工程と、上記反応溶液を加熱して重合反応を進めることにより、炭素材前駆体である平均粒子径1μm以下の球状フェノール樹脂を調製する工程と、上記炭素材前駆体を加熱硬化させる工程と、得られた硬化物を加熱して炭素化する工程と、得られた炭素化物を水蒸気賦活する工程とを備えていることを特徴とする。
【0015】
上記重合反応においては、上記反応溶液を例えば75℃以上110℃以下で数時間ないし数十時間攪拌すればよい。上記加熱硬化においては、上記炭素材前駆体(球状フェノール樹脂)の該前駆体を不活性ガス雰囲気下で加熱して110℃以上300℃以下の温度に0.5時間以上5時間以下保持すればよい。上記炭素化においては、上記硬化後の球状フェノール樹脂を不活性ガス雰囲気下で加熱して600℃以上900℃以下に1時間前後保持すればよい。さらに、上記水蒸気賦活においては、上記炭素化物を、飽和水蒸気を含む窒素ガス雰囲気下で加熱して900℃前後の温度に1時間前後保持すればよい。
【0016】
この製造方法により、平均粒子径が100nm以上850nm以下である球状の活性炭粒子よりなる球状炭素材を得ることができる。この製造方法の特徴は界面活性剤及び酸触媒をフェノール樹脂の球状化及び微細化に利用したことにある。
【0017】
すなわち、フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下で縮合重合させると、ノボラックと呼ばれる熱可塑性樹脂が得られることは知られている。しかし、界面活性剤が添加されていない場合、得られるフェノール樹脂は不定形の塊状物となる。これに対して、本発明では、上記縮合重合反応が界面活性剤の各ミセル内で進む。そのために、互いに分離独立した多数の球状フェノール樹脂が得られる。その際、酸触媒の存在により、ミセルサイズが小さくなるため、得られる球状フェノール樹脂の粒子径が小さくなると考えられる。
【0018】
上記酸触媒としては、ハロゲン化水素、硝酸及び硫酸のうちから選ばれる少なくとも一種とすることができる。フェノール類に対する酸触媒の添加割合はモル比で0.01以上0.15以下とすることが好ましい。このモル比が0.01未満になると、上記縮合重合反応が進み難くなり、また、0.15を越えるモル比になると、球状フェノール樹脂を得ることが困難になる。
【0019】
また、上記界面活性剤として、陽イオン性界面活性剤及び陰イオン性界面活性剤の少なくとも一方を用いることが好ましい。
【0020】
本発明の別の観点は、新規な球状のフェノール樹脂であって、平均粒子径が300nm以上1000nm以下であることを特徴とする。この球状フェノール樹脂によれば、これを加熱硬化させ、得られた硬化物を加熱して炭素化し、さらに得られた炭素化物を水蒸気賦活することにより、平均粒子径が100nm以上850nm以下である球状の活性炭粒子よりなる上記球状炭素材を得ることができる。また、この球状フェノール樹脂を電池電極、砥石、フィラー、成形材料等の原料として利用し、関連製品の品質改善を図ることができる。
【0021】
本発明のさらに別の観点は、上記平均粒子径が300nm以上1000nm以下である球状のフェノール樹脂の製造方法であって、フェノール類と、アルデヒド類と、界面活性剤と、硬化剤と、酸触媒との混合溶液を調製する工程と、上記混合溶液を75℃以上110℃以下の熱処理温度に加熱して重合反応を進める工程とを備えていることを特徴とする。
【0022】
先に説明した球状炭素材の製造方法の説明から明らかなように、当該製造方法によれば、平均粒子径が300nm以上1000nm以下である球状のフェノール樹脂を得ることができる。上記重合反応においては、上記反応溶液を例えば75℃以上110℃以下で数時間ないし数十時間攪拌すればよい。上記酸触媒としては、ハロゲン化水素、硝酸及び硫酸のうちから選ばれる少なくとも一種とすることができる。フェノール類に対する酸触媒の添加割合はモル比で0.01以上0.15以下とすることが好ましい。このモル比が0.01未満になると、上記縮合重合反応が進み難くなり、また、0.15を越えるモル比になると、球状フェノール樹脂を得ることが困難になる。また、上記界面活性剤として、陽イオン性界面活性剤及び陰イオン性界面活性剤の少なくとも一方を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
以上のように本発明に係る球状炭素材によれば、平均粒子径が100nm以上850nm以下である球状の活性炭粒子よりなるから、吸着材、複写機のトナー材、蓄電装置の電極材など種々の用途において、製品品質改善を図ることができ、特に上記球状炭素材を蓄電装置の活物質として用いると、エネルギー密度の増大に有利になる。
【0024】
また、本発明に係る球状炭素材の製造方法によれば、フェノール類、アルデヒド類、硬化剤及び酸触媒の混合溶液に界面活性剤を添加し、縮合重合反応によって炭素材前駆体である平均粒子径1μm以下の球状フェノール樹脂を調製し、これを加熱硬化させて炭素化及び水蒸気賦活を行なうようにしたから、平均粒子径が100nm以上850nm以下である球状の活性炭粒子よりなる球状炭素材を得ることができる。
【0025】
また、本発明に係る平均粒子径が300nm以上1000nm以下である球状フェノール樹脂によれば、これを上記球状炭素材の原料とすることができ、或いは電池電極、砥石、フィラー、成形材料等の原料として利用し、関連製品の品質改善を図ることができる。
【0026】
また、本発明に係る球状のフェノール樹脂の製造方法によれば、フェノール類と、アルデヒド類と、界面活性剤と、硬化剤と、酸触媒との混合溶液を調製する工程と、上記混合溶液を75℃以上110℃以下の熱処理温度に加熱して重合反応を進める工程とを備えているから、平均粒子径が300nm以上1000nm以下である球状のフェノール樹脂を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る球状フェノール樹脂の調製法を概略的に示す説明図である。
【図2】ミセル内でフェノール樹脂が重合生成される様子を示す説明図である。
【図3】本発明に係る球状フェノール樹脂の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】酸触媒添加量が異なる球状フェノール樹脂各々の粒度分布を示すグラフ図である。
【図5】酸触媒の種類が異なる球状フェノール樹脂各々の粒度分布を示すグラフ図である。
【図6】界面活性剤の種類が異なる球状フェノール樹脂各々の粒度分布を示すグラフ図である。
【図7】球状フェノール樹脂から球状炭素材を得る本発明に係る調製法を概略的に示す説明図である。
【図8】本発明に係る球状炭素材の走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】従前の粉末炭素材の走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】本発明に係る球状フェノール樹脂、及びこれから得た球状炭素材各々の粒度分布を示すグラフ図である。
【図11】酸触媒のモル比し、球状フェノール樹脂及び球状炭素材各々の平均粒子径との関係を示すグラフ図である。
【図12】本発明に係る球状炭素材SAC及び従前の粉末炭素材AC各々の窒素吸着等温線を示すグラフ図である。
【図13】コイン型電気二重層キャパシタの構造を示す説明図である。
【図14】本発明に係る球状炭素材SAC及び従前の粉末炭素材AC各々の放電電流密度に対する単位重量当たり電極容量を示すグラフ図である。
【図15】本発明に係る球状炭素材SAC及び従前の粉末炭素材AC各々を用いた電気二重層キャパシタの放電電流密度に対する単位体積当たり電極容量を示すグラフ図である。
【図16】本発明に係る球状炭素材SAC及び従前の粉末炭素材AC各々を用いた電池の充放電サイクル試験結果を示すグラフ図である。
【図17】上記電池の20サイクル後の放電容量を比較したグラフ図である。
【図18】上記電池のレート特性の試験結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
<球状フェノール樹脂の調製>
図1に調製方法を概略的に示す。すなわち、界面活性剤と硬化剤とを水中で混合し、これに、フェノール、ホルムアルデヒド及び酸触媒を加えて混合することにより、反応溶液(混合溶液)を調製する。この反応溶液を95℃の温度になるように加熱しながら24時間攪拌する(重合反応)。その後、反応溶液を遠心分離し、得られた生成物を水及びメタノールで洗浄することにより、球状炭素材の前駆体である球状フェノール樹脂を得る。得られた球状フェノール樹脂は、アルゴンガス雰囲気下で加熱して270℃の温度に2時間保持して硬化させる。
【0030】
この場合、図2に示すように、水相において界面活性剤のミセルが形成され、そのミセル内にフェノールが導入され、酸触媒の存在下、縮合重合反応が進行する。このミセル内での重合反応の進行により、球状フェノール樹脂が得られる。また、酸触媒によって、界面活性剤の分散が図れ、その結果、ミセルサイズが小さくなるため、得られる球状フェノール樹脂は粒子径が小さくなる。すなわち、平均粒子径が300nm以上1000nm以下である球状フェノール樹脂を得ることができる。
【0031】
図3は得られた球状フェノール樹脂のSEM(走査型電子顕微鏡)像である。これは、界面活性剤としてCTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム;陽イオン界面活性剤)を用い、酸触媒として塩酸を用い、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを用いたものである。フェノール1モル当たりの添加量は、CTABが0.28モル、塩酸が0.02モル、硬化剤が0.034モルである。図3により、得られる球状フェノール樹脂は高い真球度を有することがわかる。その平均粒子径は0.82μmであった。
【0032】
−酸触媒の添加量の影響−
上記球状フェノール樹脂の調製において、酸触媒(塩酸)の添加量が、得られる球状フェノール樹脂の粒径に与える影響を調べた。原料添加割合は表1に示すとおりである。図4に得られた球状フェノール樹脂の粒度分布(頻度分布)を示す。
【0033】
【表1】
【0034】
塩酸の添加量が多くなるほど、得られる球状フェノール樹脂の粒子径が小さくなっている。また、図4に示すように、塩酸の添加量が多くなるほど、粒子径の分散度が小さくなっている。一方、表1に示すように、塩酸の添加量が多い(モル比で0.18)サンプル5では、球状フェノール樹脂が得られなかった。これは、塩酸の添加量が多くなり過ぎると、界面活性剤(CTAB)の多くがプロトンと結合し、ミセルを形成できなくなるためと考えられる。以上から、酸触媒の添加量によって球状フェノール樹脂の粒子径を制御できることがわかる。
【0035】
−酸触媒の種類の影響−
上記球状フェノール樹脂の調製において、酸触媒の種類が、得られる球状フェノール樹脂の粒径に与える影響を調べた。酸触媒としては、HBr、HI、HNO3及びH2SO4の各無機酸を準備した。原料添加割合は表1のサンプル2と同じである。すなわち、いずれの無機酸も、フェノールに対するモル比は0.02モル%とした。いずれの無機酸を採用した場合でも球状フェノール樹脂を得ることができた。それら球状フェノール樹脂の粒度分布(頻度分布)を、先のサンプル2(酸触媒;塩酸HCl)の結果と共に図5に示す。HBr、HI、HNO3及びH2SO4のいずれにおいても、HClの場合よりも、球状フェノール樹脂の平均粒子径の小さく、また、粒子径の分散度が小さくなっている。以上から、酸触媒の種類で球状フェノール樹脂の粒子径を制御できることがわかる。
【0036】
−界面活性剤の種類の影響−
上記球状フェノール樹脂の調製において、界面活性剤の種類が、得られる球状フェノール樹脂の粒径に与える影響を調べた。すなわち、陰イオン性界面活性剤として、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を準備した。原料添加割合は表1のサンプル2と同じにした。得られた球状フェノール樹脂の粒度分布(頻度分布)を、先のサンプル2(陽イオン性界面活性剤;CTAB)の結果と共に図6に示す。SDSの場合、粒子径はサンプル2のCTABより少し大きくなり、粒子径の分散度も少し大きくなっているものの、陰イオン性界面活性剤でも陽イオン性界面活性剤の場合と同じく、粒子径が比較的小さな球状フェノール樹脂が得られることがわかる。
【0037】
<球状炭素材の調製>
図7は上記調製法で得られた球状フェノール樹脂から球状炭素材を得る調製法を概略的に示す。すなわち、上述の硬化させた球状フェノール樹脂をアルゴンガス雰囲気下で加熱して800℃の温度に1時間保持する。これは球状フェノール樹脂の炭素化処理である。次いで当該炭素化物を飽和水蒸気を含む窒素ガス雰囲気下で加熱して900℃の温度に55分間保持する。これは水蒸気賦活処理である。
【0038】
図8は表1のサンプル2の球状フェノール樹脂に上記炭素化処理及び水蒸気賦活処理を施して得た多数の球状活性炭粒子よりなる球状炭素材のSEM像である。図9は界面活性剤を添加せずに調製した塊状フェノール樹脂に上記炭素化処理及び水蒸気賦活処理を施し、粉砕して得た粉末炭素材のSEM像である。
【0039】
サンプル2の球状フェノール樹脂の場合、炭素化及び水蒸気賦活後も粒子の球形は保持されている。すなわち、個々の活性炭粒子は、互いに分離独立した球状になっている。図10はサンプル2の炭素化前及び炭素化・水蒸気賦活後の粒度分布(頻度分布)である。球状フェノール樹脂は、炭素化・水蒸気賦活によってその粒子径が小さくなり、粒子径の分散度も小さくなっている。炭素化・水蒸気賦活後の平均粒子径は0.33μm(330nm)である。
【0040】
上記サンプル1〜4の球状フェノール樹脂の他に、塩酸のモル比を0.13として上記球状フェノール樹脂の調製法により、平均粒子径0.32μmの球状フェノール樹脂を調製した。そして、サンプル1〜4の球状フェノール樹脂及び平均粒子径0.32μmの球状フェノール樹脂各々から上記調製法によって球状炭素材を得た。それらの炭素化前及び炭素化・水蒸気賦活後の平均粒子径を図11に示す。平均粒子径320nm〜930nmの球状フェノール樹脂から平均粒子径100nm〜400nmの球状炭素材が得られている。なお、図11の各サンプルは上述した条件によって得られた一実施例であり、調製条件が異なる場合(但し、本願請求項4で特定する範囲内)には比較的大きな平均粒子径を有する球状炭素材が得られる。具体的には、図11の各サンプルは最も小さい平均粒子径のものであり、条件によって、図11で示すバーの範囲のものが得られる。最大で850nmであった。以上から、平均粒子径300nm〜1000nmの球状フェノール樹脂から平均粒子径100nm〜850nmの球状炭素材を得ることができることがわかる。
【0041】
−細孔特性−
図8の球状炭素材SAC及び図9の粉末炭素材AC各々について、77.4K(窒素の沸点)に冷却し、窒素ガスを導入して窒素ガスの吸着量を測定した。このとき、導入する窒素ガスの圧力Pを徐々に上げ、窒素ガスの飽和蒸気圧P0で除した値を相対圧P/P0として、各相対圧に対する吸着量をプロットすることにより図12に示す窒素吸着等温線を得た。そして、BET法により各炭素材の比表面積を求め、上記窒素ガス吸着量の測定結果に基いて全細孔容積を求め、BJH法によりメゾポア容積率(全細孔容積に対する細孔径2nm以上50nm未満のメゾポアの容積の割合)を求め、さらに、比表面積および全細孔容積を用いて平均細孔径を求めた。結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
実施形態に係る球状炭素材SACは、従前の破砕によって得られる粉末炭素材ACと略同等の細孔特性を有する。実施形態に係る球状炭素材SACは、球状であるにも拘わらず、その平均粒子径が非常に小さいためと考えられる。
【0044】
<電気二重層キャパシタへの適用>
表2に示すサンプルSAC及びAC各々を電気二重層キャパシタの活物質として用いたときの特性を調べた。図13はコイン型電気二重層キャパシタの構造を示す。同図において、1は集電体、2は電極、3はセパレータ、4は電解液である。集電体1としては白金を用い、セパレータ3としてはPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を用い、電解液4としては1モル濃度のEt4NBF4/PC(テトラエチルアンモニウムテトラフルオロブロマイド)を用いた。そして、電極2は、炭素材(SAC又はAC)95質量%とPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)5質量%との混合体で構成した。
【0045】
そうして、活物質として球状炭素材SACを用いたケース及び粉末炭素材ACを用いたケース各々について、10mAの定電流で電圧3Vまで充電し、次に1〜50mAの定電流下、0Vまで放電し、次式により単位重量当たり電極容量(静電容量)C(g)及び単位体積当たりの電極容量C(v)を求めた。なお、Iは電流値、Δtは電圧降下時間、ΔVは電圧降下値、(M1+M2)は電極2枚分の活物質質量(g)、(V1+V2)は電極2枚分の活物質体積(cm3)である。
【0046】
C(g)=I×Δt/(ΔV×(M1+M2))
C(v)=I×Δt/(ΔV×(V1+V2))
【0047】
まず、電極密度及び電気伝導率は表3に示すとおりである。球状炭素材SACの場合は、電極密度が粉末炭素材ACの場合の約2倍、電気伝導率が粉末炭素材ACの場合の約50倍になっている。
【0048】
【表3】
【0049】
図14は放電電流密度に対する単位重量当たり電極容量を示し、図14は放電電流密度に対する単位体積当たり電極容量を示す。いずれも、球状炭素材SACの方が高い値を示している。特に、図15の単位体積当たり電極容量に関しては、球状炭素材SACは粉末炭素材ACの2倍以上になっている。これは、球状炭素材SACが粉末炭素材ACに比べ、より高密度に充填されたことによるものと認められる。
【0050】
<電池への適用>
図11に示す酸触媒モル比0.04、0.09及び0.13各々の球状炭素材SAC3種(それらのおよその平均粒子径は300nm、200nm、100nmである)と、従前の粉末炭素材AC(平均粒子径5000nm)とについて、各々を負極材料とするコイン電池(CR2032)を作製し、特性を比較した。
【0051】
コイン電池の正極材料はリチウム金属とし、電解液には、プロピレンカーボネート及びジメチルカーボネートの混合溶媒にLi電解質LiPF6を混合した溶液を採用した。そして、1mAの定電流、−3.0〜−0.01Vの電圧範囲で充放電サイクル試験(室温25℃)を行なった。結果を図16に示す。初期充放電効率(=(放電容量/充電容量)×100)を表4に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
本発明に係る球状炭素材SACの場合、従前の炭素材ACに比べて初期充放電効率が高い。また、充放電サイクルの場合、サイクル数が多くなると、放電容量が小さくなるが、その放電容量の低下をみると、本発明に係る球状炭素材SACは、従前の炭素材ACに比べその低下度が小さい。図17は20サイクル後の放電容量を比較したものであり、本発明に係る球状炭素材SACでは、20サイクル後でも大きな放電容量が維持されていることがわかる。また、表4及び図16,17から、球状炭素材SACの平均粒子径が小さくなるほど放電容量が増加することがわかる。
【0054】
−レート特性−
上記本発明に係る3種の球状炭素材SAC及び従前の炭素材ACによる各コイン電池(CR2032)について、1mAの定電流、−3.0〜−0.01Vの電圧範囲でレート(印加電流変更)試験(室温25℃)を行なった。すなわち、放電レート0.5C(2時間率)での放電容量を100%としたときの、放電レートの増大による放電容量維持率の変化を測定した。結果を図18に示す。いずれも、放電レートの増大(印加電流の増大)に伴って放電容量維持率が低下しているものの、本発明に係る3種の球状炭素材SACは従前の炭素材ACに比べて、その放電容量維持率が高い。また、球状炭素材SACの平均粒子径が小さくなるほど放電容量維持率が高くなっている。
【0055】
すなわち、リチウム電池は大電流に弱いとされているところ、本発明に係る球状炭素材SACの場合、その粒子径が小さく、ミクロポア内部へのLiイオンの拡散進入が容易である(拡散経路が短い)ために、大電流になっても、放電容量の維持率が高くなったものと認められる。換言すれば、従前の炭素材ACの場合は、その粒子径が大きいことから、ミクロポア内部へのLiイオンの拡散に時間がかかり、大電流に対応できない、つまり、使用されない炭素材が多くなったものと認められる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
球状炭素材は、吸着材、複写機のトナー材、蓄電装置の電極材など種々の用途がある。また、球状フェノール樹脂は、粒状活性炭、電池電極、砥石、フィラー、成形材料等の原料とすることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 集電体
2 電極
3 セパレータ
4 電解液
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が100nm以上850nm以下である球状の活性炭粒子よりなることを特徴とする球状炭素材。
【請求項2】
請求項1において、
上記活性炭粒子が個々に独立した球状粒子になっていることを特徴とする球状炭素材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の球状炭素材を活物質として用いたことを特徴とする蓄電装置。
【請求項4】
平均粒子径が100nm以上850nm以下である球状の活性炭粒子よりなる球状炭素材の製造方法であって、
フェノール類と、アルデヒド類と、界面活性剤と、硬化剤と、酸触媒との混合溶液を調製する工程と、
上記混合溶液を75℃以上110℃以下の熱処理温度で反応させることにより、炭素材前駆体である平均粒子径1μm以下の球状フェノール樹脂を調製する工程と、
上記炭素材前駆体を110℃以上300℃以下の温度雰囲気で硬化させる工程と、
得られた硬化物を600℃以上800℃以下の温度雰囲気で炭素化する工程と、
得られた炭素化物を水蒸気賦活する工程とを備えていることを特徴とする球状炭素材の製造方法。
【請求項5】
請求項4において、
上記酸触媒が、ハロゲン化水素、硝酸及び硫酸のうちから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする球状炭素材の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は請求項5において、
上記フェノール類に対する上記酸触媒の添加割合をモル比で0.01以上0.15以下とすることを特徴とする球状炭素材の製造方法。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6のいずれか一において、
上記界面活性剤として、陽イオン性界面活性剤及び陰イオン性界面活性剤の少なくとも一方を用いることを特徴とする球状炭素材の製造方法。
【請求項8】
平均粒子径が300nm以上1000nm以下である球状のフェノール樹脂。
【請求項9】
平均粒子径が300nm以上1000nm以下である球状のフェノール樹脂の製造方法であって、
フェノール類と、アルデヒド類と、界面活性剤と、硬化剤と、酸触媒との混合溶液を調製する工程と、
上記混合溶液を75℃以上110℃以下の熱処理温度に加熱して重合反応を進める工程とを備えていることを特徴とする球状のフェノール樹脂の製造方法。
【請求項10】
請求項9において、
上記酸触媒が、ハロゲン化水素、硝酸及び硫酸のうちから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする球状のフェノール樹脂の製造方法。
【請求項11】
請求項9又は請求項10において、
上記フェノール類に対する上記酸触媒の添加割合をモル比で0.01以上0.15以下とすることを特徴とする球状のフェノール樹脂の製造方法。
【請求項12】
請求項9乃至請求項11のいずれか一において、
上記界面活性剤として、陽イオン性界面活性剤及び陰イオン性界面活性剤の少なくとも一方を用いることを特徴とする球状のフェノール樹脂の製造方法。
【請求項1】
平均粒子径が100nm以上850nm以下である球状の活性炭粒子よりなることを特徴とする球状炭素材。
【請求項2】
請求項1において、
上記活性炭粒子が個々に独立した球状粒子になっていることを特徴とする球状炭素材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の球状炭素材を活物質として用いたことを特徴とする蓄電装置。
【請求項4】
平均粒子径が100nm以上850nm以下である球状の活性炭粒子よりなる球状炭素材の製造方法であって、
フェノール類と、アルデヒド類と、界面活性剤と、硬化剤と、酸触媒との混合溶液を調製する工程と、
上記混合溶液を75℃以上110℃以下の熱処理温度で反応させることにより、炭素材前駆体である平均粒子径1μm以下の球状フェノール樹脂を調製する工程と、
上記炭素材前駆体を110℃以上300℃以下の温度雰囲気で硬化させる工程と、
得られた硬化物を600℃以上800℃以下の温度雰囲気で炭素化する工程と、
得られた炭素化物を水蒸気賦活する工程とを備えていることを特徴とする球状炭素材の製造方法。
【請求項5】
請求項4において、
上記酸触媒が、ハロゲン化水素、硝酸及び硫酸のうちから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする球状炭素材の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は請求項5において、
上記フェノール類に対する上記酸触媒の添加割合をモル比で0.01以上0.15以下とすることを特徴とする球状炭素材の製造方法。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6のいずれか一において、
上記界面活性剤として、陽イオン性界面活性剤及び陰イオン性界面活性剤の少なくとも一方を用いることを特徴とする球状炭素材の製造方法。
【請求項8】
平均粒子径が300nm以上1000nm以下である球状のフェノール樹脂。
【請求項9】
平均粒子径が300nm以上1000nm以下である球状のフェノール樹脂の製造方法であって、
フェノール類と、アルデヒド類と、界面活性剤と、硬化剤と、酸触媒との混合溶液を調製する工程と、
上記混合溶液を75℃以上110℃以下の熱処理温度に加熱して重合反応を進める工程とを備えていることを特徴とする球状のフェノール樹脂の製造方法。
【請求項10】
請求項9において、
上記酸触媒が、ハロゲン化水素、硝酸及び硫酸のうちから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする球状のフェノール樹脂の製造方法。
【請求項11】
請求項9又は請求項10において、
上記フェノール類に対する上記酸触媒の添加割合をモル比で0.01以上0.15以下とすることを特徴とする球状のフェノール樹脂の製造方法。
【請求項12】
請求項9乃至請求項11のいずれか一において、
上記界面活性剤として、陽イオン性界面活性剤及び陰イオン性界面活性剤の少なくとも一方を用いることを特徴とする球状のフェノール樹脂の製造方法。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図3】
【図8】
【図9】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図3】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−213571(P2011−213571A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184382(P2010−184382)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 刊行物名;第36回炭素材料学会 年会要旨集 発行者;炭素材料学会 発行日:平成21年11月30日
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 刊行物名;第36回炭素材料学会 年会要旨集 発行者;炭素材料学会 発行日:平成21年11月30日
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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