説明

球状粉体及びそれを含有する化粧料

【課題】環境に優しく、簡便で低コストな方法にて、粒子径および形態の制御が可能な球状酸化亜鉛粉体を製造し、この球状酸化亜鉛粉体を表面被覆した疎水性が付与された球状粉体を提供し、この球状粉体を配合することによって、使用感の優れた化粧料を提供する。
【解決手段】水溶性亜鉛化合物とグリコールとアミン化合物とを混合し、50℃〜100℃でソフト溶液反応を行うことにより製造され、一次粒子が5〜200nmの球状粒子が集積し、20〜5000nmの球状を形成している球状酸化亜鉛粉体、又は、該球状酸化亜鉛粉体を300℃〜1500℃で焼成した球状酸化亜鉛粉体を用いて、その球状酸化亜鉛粉体の表面に、ポリシロキサン、アルキルアルコキシシラン化合物、アルキルチタネート化合物及びフッ素化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物で被覆処理して球状粉体を得る。また、この球状粉体を化粧料に配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状酸化亜鉛粉体に疎水性の化合物を表面被覆してなる球状粉体及びその球状粉体を含有する化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、酸化亜鉛粉体が、例えば日焼け止め剤やファンデーション、アイシャドウ、口紅などのメイクアップ化粧料において、紫外線遮蔽剤として、またカバー力などを付与するために用いられている。また、球状の粒子は、皮膚に塗布した時に感触を向上させることを目的として用いられている。更に、表面に小さな凹凸を付与された粒子は、ソフトフォーカス性を向上させることを目的として用いられている。また、酸化亜鉛粉体はフィラーなどの工業用途としても使用され、剛性の付与や制振効果の付与、表面平滑性の付与などを目的として配合されている。
【0003】
これら化粧品やフィラーなどに用いられる酸化亜鉛の粒子としては、粒子の形状及び粒子径が均一なもの、表面に小さな凹凸を付与することによって高いソフトフォーカス性が付与されたもの、さらには高い紫外線遮蔽効果をもつものが求められている。
【0004】
しかしながら、現在用いられている酸化亜鉛の粒子は、粒子径の制御が困難であり、粒度分布に幅があるものがほとんどで、形態も不均一である。また、単分散した状態ではなく、粒子が複数重なり合った凝集体を形成しており、酸化亜鉛の特性を十分に発揮できないという問題点がある。また、酸化亜鉛は特に皮膚に塗布した時の感触が悪いなどの問題点がある。このため、粒子径や形態を球状に制御でき、皮膚に塗布した時の感触が良く、紫外線遮蔽効果の高い酸化亜鉛の粒子を提供することが求められている。
【0005】
一方、酸化亜鉛粉体の製造方法については、各種の方法が知られている。一般的には、乾式法としてフランス法と呼ばれる製造方法が知られている。この方法は、熔融させた金属亜鉛をレトルトの中で約1000℃に加熱し、発生する亜鉛蒸気を空気で酸化させ、これを送風機で空冷管に送って冷却し、サイクロン及びバグフィルターで分離、捕集する方法である。一方、湿式法としては、ドイツ法が知られている。この方法は、硫酸亜鉛または塩化亜鉛の水溶液にソーダ灰溶液を加えてできる白色の塩基性炭酸亜鉛の沈殿を水洗乾燥後焼成して製造する方法である。しかし、これらの方法で作製された酸化亜鉛はサイズが不均一であるという問題点がある。また、高温での処理が必要になるため、環境に与える影響があるとともに、反応装置がコスト高になるという問題点がある。
【0006】
また、球状の酸化亜鉛を合成する方法としては、ミスト焼成法と呼ばれる方法が知られている。しかしながら、この方法では中空体ができやすく、かつ球状の粒子を得ることが困難である。
【0007】
特許文献1においては、低温希薄亜鉛蒸気を酸素と接触させることによって、球状の酸化亜鉛粒子を製造する方法が提案されている。しかしながら、この方法では、高温の亜鉛溶湯に不活性ガスを吹き込むことによって亜鉛蒸気を発生させる必要がある。また、その亜鉛蒸気には毒性があるという問題点もある。
【0008】
また、特許文献2においては、有機亜鉛化合物を用いた球状酸化亜鉛の合成方法が提案されている。しかしながら、この方法では焼成時の温度を高く設定する必要がある。また、出発原料に有機亜鉛化合物を使用しているため、焼成課程に有毒ガスが発生する恐れがある。さらに得られる酸化亜鉛の収率が低く、しかも他の形状の酸化亜鉛との混在化でしか得ることができないという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭63−288914号公報
【特許文献2】特開平11−49516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、環境に優しく、簡便で低コストな方法にて、形態を球状に制御でき、同時に粒子径の制御もでき、かつ粒子表面に小さな凹凸を付与することが可能な球状酸化亜鉛粉体を製造できるようにし、この球状酸化亜鉛粉体をポリシロキサン、アルキルシラン化合物、アルキルチタネート化合物、フッ素化合物などの化合物で表面被覆することにより疎水性が付与された球状粉体を提供し、併せてその球状粉体を配合することによって、紫外線遮蔽効果が高く、ソフトフォーカス性に優れ、使用感の優れた化粧料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明者らは鋭意研究した結果、水溶性亜鉛化合物とグリコールとアミン化合物を用い、ソフト溶液反応にて、粒子が球状に制御され、粒子径を均一に制御することが可能な球状酸化亜鉛粉体の製造方法を見出した。
また、上記製造方法にて得られた球状酸化亜鉛粉体を300℃から1500℃にて焼成処理しても良く、この焼成処理を行うことにより、比表面積を制御し、吸油量や結晶性更には触媒活性を制御することができる。
さらに、得られた球状酸化亜鉛粉体にポリシロキサン、アルキルシラン化合物、アルキルチタネート化合物、フッ素化合物などの化合物で表面被覆することにより、疎水性を有する球状粉体を得ることができ、また、これらの球状粉体を化粧料に配合することによって、紫外線遮蔽効果やソフトフォーカス性に優れ、更に使用感の優れた化粧料を提供することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
要するに、第1発明による球状粉体は、
水溶性亜鉛化合物とグリコールとアミン化合物とを混合し、50℃〜100℃でソフト溶液反応を行うことにより製造され、一次粒子が5〜200nmの球状粒子が集積し、20〜5000nmの球状を形成している球状酸化亜鉛粉体、又は、該球状酸化亜鉛粉体を300℃〜1500℃で焼成した球状酸化亜鉛粉体を用いて、その球状酸化亜鉛粉体の表面に、下記一般式(1)で示されるポリシロキサン、下記一般式(2)で示されるアルキルアルコキシシラン化合物、下記一般式(3)で示されるアルキルチタネート化合物、下記一般式(4)、下記一般式(5)又は下記一般式(6)で示されるフッ素化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物で被覆処理したことを特徴とするものである。
【化1】

(式中、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数である。また、R〜Rは水素、アルキル基、アルコキシル基又はフェニル基であり、同一であっても異なっていても良い。)
Si(OR ・・・・・(2)
(式中、R及びRは炭素数が1以上の飽和炭化水素基である。)
(RCOO)Ti(OR ・・・・・(3)
(式中、R及びRは炭素数が1以上の飽和炭化水素基である。また、a及びbはそれぞれ1〜3の整数であり、a+b=4の関係を有する。なお、ここで示されるアルキル基は直鎖状又は分岐状であって、単一鎖長のものであっても複合鎖長のものであっても良い。)
CF(CFCHCHSi(OR ・・・・・(4)
(式中、Rは炭素数が1以上の飽和炭化水素基であり、nは1以上の整数である。)
【化2】

(式中、nは4以上の整数、mは1又は2であり、Mは1価の金属イオン、アンモニウム塩又はジエタノールアミン塩である。)
【化3】

(式中、nは4以上の整数、Mは1価の金属イオン、アンモニウム塩又はジエタノールアミン塩である。)
【0013】
上記球状酸化亜鉛粉体の製造に際しては、亜鉛化合物、グリコール及びアミン化合物以外に、pHを調整するために、水酸化ナトリウムなどを加えても構わない。また、上述のように球状酸化亜鉛粉体を、300℃〜1500℃で焼成することにより、比表面積を1〜100m/gの範囲に入るように調整され、結晶性の向上や、触媒活性の低減、吸油量を制御することができる球状酸化亜鉛粉体を合成することができる。
【0014】
また、第2発明による化粧料は、前記第1発明の球状粉体を含有したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
第1発明によれば、亜鉛とグリコールとアミン化合物と水の割合は、混合物全体を100質量%とするとき、亜鉛の割合が0.01〜10.0質量%、グリコールの割合が10〜50質量%、アミン化合物の割合が2〜20質量%、水の割合が40〜80質量%の範囲内になるように調整し、50℃〜100℃での温度条件下で10分〜5時間ソフト溶液反応を行うことにより、粒子が球状に制御されるとともに、粒子径が均一に制御され、一次粒子径が5〜200nmの球状粒子が集積し、20〜5000nmの球状粒子を得ることができる。
【0016】
また、上記球状酸化亜鉛粉体を300℃〜1500℃にて焼成することにより、比表面積、結晶性、吸油量および触媒活性を制御された球状酸化亜鉛粉体を得ることができる。こうして、上記球状酸化亜鉛粉体、又は、該球状酸化亜鉛粉体を300℃〜1500℃で焼成した球状酸化亜鉛粉体を用いて、その表面に、ポリシロキサン、アルキルシラン化合物、アルキルチタネート化合物、フッ素化合物などの疎水性を示す化合物で被覆することで、疎水性を有する球状粉体を得ることができる。
【0017】
また、第2発明によれば、第1発明の球状粉体を化粧料に配合することにより、紫外線遮蔽効果、ソフトフォーカス性、感触に優れ、触媒活性が抑えられ、経時安定性に優れた化粧料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】製造実施例1にて得られた球状酸化亜鉛を透過型電子顕微鏡及び走査型電子顕微鏡にてそれぞれ観察した写真(a)(b)
【図2】製造実施例2にて得られた球状酸化亜鉛を走査型電子顕微鏡にて観察した写真
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明による球状粉体及びそれを含有する化粧料の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
本発明の球状酸化亜鉛粉体の一次粒子径は5〜200nm程度であり、その一次粒子が集積し、20〜5000nmの球状酸化亜鉛を形成している。ここで、集積した球状粒子の粒子径は反応の条件によって制御することができる。また、本発明の球状酸化亜鉛粉体の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察し、任意の20個の一次粒子の直径を計測し、その平均値を算出することによって測定することができる。
【0021】
本発明の球状酸化亜鉛は、次のようにして製造される。すなわち、亜鉛とグリコールとアミン化合物と水の割合を、混合物全体を100質量%とするとき、亜鉛の割合が0.01〜10.0質量%、グリコールの割合が10〜50質量%、アミン化合物の割合が2〜20質量%、水の割合が40〜80質量%の範囲内になるように混合する。その後、50℃〜100℃、10分〜5時間の条件にて反応させ、水洗、ろ過、乾燥、粉砕を行うことにより、球状の酸化亜鉛粉体を得る。加熱反応中は、目的の粒子サイズにするために、攪拌を行っても構わない。
【0022】
前記水溶性亜鉛化合物としては、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、塩化亜鉛などを用いることができる。
グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ピナコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のアルキレングリコールや、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール等の脂環式グリコール類や、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート等のグリコール類のモノエーテル及びモノエステル等の誘導体等が挙げられる。このうち、エチレングリコールが特に好ましい。
アミン化合物としては、アンモニア、エチルアミン、エタノールアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ヘキサメチレンテトラミンなどが挙げられる。このうち、トリエタノールアミンが特に好ましい。
亜鉛に対する、グリコールおよびアミン化合物の配合量は、全体を100質量%とした時、亜鉛0.01〜10質量%、グリコール10〜50質量%、アミン化合物2〜20%の範囲で混合することが好ましいが、好ましくは、亜鉛0.1〜5質量%、グリコール20〜40質量%、アミン化合物5〜10質量%の範囲である。
【0023】
前記反応における反応温度は50℃〜100℃で行うのが好ましいが、最も良い条件としては70℃以上である。また、オートクレーブやマイクロ波水熱法などの反応方法を用いることによって100℃以上の高温で行っても構わない。しかし、反応装置が高価であるため、一般的に使用されている反応装置で反応が可能な100℃以下での反応とするのが好ましい。
【0024】
上記方法にて得られた球状酸化亜鉛粉体を焼成する際の焼成条件としては、300℃〜1500℃の温度範囲で行うのが好ましい。より好ましくは、400℃〜800℃の範囲である。焼成温度が300℃未満の場合においても、X線回折にて分析を行った結果、酸化亜鉛の結晶構造であることが確認できるが、400℃以上で焼成することによって、結晶の配向性が向上し、結晶中での酸素欠陥などの欠陥が減少する。また、紫外線遮蔽効果も長波長側の波長から紫外線を遮蔽することができる。一方、1500℃よりも高い温度になると、高温での処理となり、環境への負荷が増大し、形状も酸化亜鉛が融解し球状を維持できない。
【0025】
次に、本発明に係る疎水性の球状酸化亜鉛粉体について説明する。
本発明において、球状酸化亜鉛粉体がファンデーションやサンスクリーン剤として利用される場合、皮膚に塗布したあと、耐水性が必要となるため、これら粉体に疎水性を付与する必要がある。粉体に疎水性を付与するには、ポリシロキサン、アルキルシラン化合物、アルキルチタネート化合物、フッ素化合物などの化合物で粉体の表面が被覆される。また、上記の化合物以外にも、従来公知の各種の表面処理を施すことができる。なお、これらの処理は複数組み合わせることも可能である。
【0026】
具体的な表面被覆有機化合物としては、シリコン系化合物として、メチルハイドロジエンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、アクリルシリコン共重合体が挙げられ、アルキルシラン系として、n−オクチルトリエトキシシランが、アルキルチタネート系として、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートが、フッ素系として、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエトキシシランなどが挙げられる。
【0027】
また、疎水性化合物を表面被覆する処理方法としては、被覆処理される顔料を適当なミキサー中で撹拌し、表面被覆する化合物を液滴下あるいはスプレー噴霧にて加えた後、一定時間高速強撹拌する。その後、撹拌を続けながら80〜200℃に加熱熟成させることによって、反応表面被覆処理を行う方法が一般的である。又は、表面被覆する化合物をエタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール等のアルコール類、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系有機溶剤、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の極性有機溶剤などに溶解させておき、この溶液に撹拌中に化粧料用顔料を添加撹拌した後、有機溶剤を完全に蒸発除去し、その後、80〜200℃に加熱熟成させることにより、表面被覆処理を行う方法等も挙げられる。
【0028】
また、混合分散方法としては、溶液の濃度や粘度などに応じて適当な方法を選択することができる。好適な例としては、ディスパー、ヘンシェルミキサー、レディゲミキサー、ニーダー、V型混合機、ロールミル、ビーズミル、2軸混練機等の混合機よる方法や、水溶液と顔料を加熱空気中に噴霧して水分を一気に除去するスプレードライの方法などを選択することができる。また、粉砕を行う場合においては、ハンマーミル、ボールミル、サンドミル、ジェットミル等の通常の粉砕機を用いることができる。これらいずれの粉砕機によっても同等の品質のものが得られるため、特に限定されるものではない。
この場合、顔料の表面被覆処理に用いられる化合物である成分の質量比は、被覆処理される顔料に対して0.5〜30質量%である。前記質量比が0.5質量%未満であるとロングラスティング効果と肌への均一な付着性が充分でなく、30質量%を越えると感触が非常に油っぽく湿った感じとなり、化粧料としては適さない。
【0029】
また、本発明の表面被覆された球状酸化亜鉛粉体(球状粉体)を配合する化粧料の形態は特に限定されないが、ファンデーション、サンスクリーン、美容液、化粧水、口紅、美容クリーム、洗顔剤、香水、口内清涼剤、口臭予防剤、うがい剤、歯磨き、入浴剤、制汗剤、石鹸、シャンプー、リンス、ボディーソープ、ボディーローション、デオドラント剤、ヘアクリーム剤、色白剤、美肌剤、育毛剤などが挙げられる。
【0030】
また、本発明の球状粉体が配合される化粧料においては、その球状粉体以外に、通常の化粧料に用いられる油剤、粉体(顔料、色素、樹脂)、フッ素化合物、樹脂、界面活性剤、粘剤、防腐剤、香料、保湿剤、生理活性成分、塩類、溶媒、キレート剤、中和剤、pH調整剤等の成分を同時に配合することができる。ここで、前記粉体としては、例えば、赤色104号、赤色201号、黄色4号、青色1号、黒色401号等の色素、黄色4号アルミニウムレーキ、黄色203号バリウムレーキ等のレーキ色素、ナイロンパウダー、シルクパウダー、ウレタンパウダー、テフロンパウダー(テフロン:登録商標)、シリコンパウダー、セルロースパウダー、シリコンエラストマー等の高分子、黄酸化鉄、赤色酸化鉄、黒酸化鉄、酸化クロム、カーボンブラック、群青、紺青等の有色顔料、酸化チタン、酸化セリウム等の白色顔料、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン等の体質顔料、雲母チタン等のパール顔料、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム等の金属塩、シリカ、窒化ホウ素等の無機粉体、微粒子酸化チタン、微粒子酸化鉄、アルミナ処理微粒子酸化チタン、シリカ処理微粒子酸化チタン、ベントナイト、スメクタイト等が挙げられる。これらの粉体の形状、大きさに特に制限はない。また、これらの粉体は従来公知の各種の表面処理が施されていてもいなくても構わない。表面処理の例としては、例えばアクリルシリコン処理、メチルハイドロジェンポリシロキサン処理、シリコーンレジン処理、オクチルトリエトキシシラン処理、N−アシル化リジン処理、有機チタネート処理、シリカ処理、アルミナ処理、セルロース処理、パーフルオロポリエーテル処理、フッ素化シリコーンレジン処理など親水性、親油性、撥水性の各種の処理を用いることが可能である。前記油剤としては、例えばセチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール、イソステアリン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸等の脂肪酸、グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、ミリスチン酸ミリスチン、ラウリル酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸イソプロピル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、モノステアリン酸グリセリン、フタル酸ジエチル、モノステアリン酸エチレングリコール、オキシステアリン酸オクチル等のエステル類、流動パラフィン、ワセリン、スクワラン等の炭化水素、ラノリン、還元ラノリン、カルナバロウ等のロウ、ミンク油、カカオ油、ヤシ油、バーム核油、ツバキ油、ゴマ油、ヒマシ油、オリーブ油等の油脂、エチレン・α−オレフィン・コオリゴマー等が挙げられる。また、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、フルオロアルキル・ポリオキシアルキレン共変性オルガノポリシロキサン、アルキル変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン、アモジメチコン、アミノ変性オルガノポリシロキサン、シリコンゲル、アクリルシリコン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコンRTVゴム等のシリコン化合物、パーフルオロポリエーテル、フッ化ピッチ、フルオロカーボン、フルオロアルコール、フッ素化シリコーンレジン等のフッ素化合物が挙げられる。また、前記界面活性剤としては、例えばアニオン型界面活性剤、カチオン型界面活性剤、ノニオン型界面活性剤、べタイン型界面活性剤を用いることができる。前記溶媒としては、精製水、エタノール、軽質流動イソパラフィン、低級アルコール、エーテル類、LPG、フルオロカーボン、N−メチルピロリドン、フルオロアルコール、パーフルオロポリエーテル、代替フロン、揮発性シリコン等が挙げられる。
【実施例】
【0031】
次に、本発明による球状粉体及びそれを含有する化粧料の具体的な実施例について説明する。なお、本発明は以下に述べる実施例に限定されるものではない。以下、球状粉体を調製する実施例を「製造実施例」と称し、この粉体を用いて化粧料を調製する実施例を単に「実施例」と称することとする。
【0032】
(製造実施例1)
硝酸亜鉛6水和物14.87gに水を加え、全量が500mlになるように溶解した。その溶液に、エチレングリコール250gを添加した後、トリエタノールアミン62.5gを加え攪拌した。その後、2℃/分の昇温速度にて90℃にまで加温し、90℃に到達してから1時間90℃を保持した。その後、水洗、ろ過、乾燥を行い、一次粒子径が20nmで、球状に集積した状態で、300nmの球状酸化亜鉛を得た。
製造実施例1で得られた、球状酸化亜鉛を透過型電子顕微鏡(TEM)と走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した写真が図1(a)(b)に示されている。図1に示すように、得られた球状酸化亜鉛粉体の一次粒子は20nm程度で、その集積体としての球状酸化亜鉛の粒子は300nm程度であった。
【0033】
(製造実施例2)
硝酸亜鉛6水和物29.56gに水を加え、全量が500mlになるように溶解した。その溶液に、エチレングリコール250gを添加した後、トリエタノールアミン75gを加え攪拌した。その後、2℃/分の昇温速度にて90℃にまで加温し、90℃に到達してから1時間90℃を保持した。その後、水洗、ろ過、乾燥を行い、2000nmの球状酸化亜鉛を得た。
製造実施例2で得られた、球状酸化亜鉛を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した写真が図2に示されている。図2に示すように、得られた球状酸化亜鉛粉体の粒子は2000nm程度であった。
【0034】
(製造実施例3)
製造実施例1にて得られた球状酸化亜鉛を400℃での条件で熱処理を行い、球状酸化亜鉛粉体を得た。
【0035】
(製造実施例4)
製造実施例3にて得られた球状酸化亜鉛に、メチルハイドロジェンポリシロキサンにて表面被覆処理を施した。
ヘンシェルミキサーに製造実施例3で得られた球状酸化亜鉛1000質量部を入れ、続いてメチルハイドロジェンポリシロキサン20.4質量部をイソプロピルアルコール125質量部に溶解させた溶液を滴下混合し、板状ベーマイトと良く混合した。その後、ヘンシェルミキサー内を加熱及び減圧し、イソプロピルアルコールを除去した。処理された粉体をヘンシェルミキサーから取り出し、粉砕して加熱処理を行い、シリコン化合物が2質量%処理された球状酸化亜鉛を得た。
【0036】
製造実施例4で得られた表面処理された球状酸化亜鉛をシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング株式会社製 SF8417)にて20質量%になるように混合し、フーバーマーラーにて100rpm、3回の条件で分散させた。その分散体を石英板の上に塗布し、アプリケーターを用い膜厚0.025mmの塗膜を作製し、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製 HR−100)を用いてソフトフォーカス性を測定した。さらに、5cm×8cmの石英板の上にトランスポアテープを貼り、上記方法にて分散させた分散体0.08gをテープ上に均一に塗布した。その後15分間放置した後、SPFアナライザー(Labsphere社製 UV−1000S)を用いて、Sun Protection Factor(SPF)およびProtection grade of UVA(PA)の測定を行った。また、比較品として、市販されている一次粒子径が100〜200nmで、比表面積が10m/gの酸化亜鉛に上記シリコン処理の方法で同様に表面処理したものを用いた。その結果が表1に示されている。表1に示すように、本発明にて得られた表面処理された球状酸化亜鉛粉体のソフトフォーカス性においては、透過率及びその透過率に占める拡散透過光率も高く、ソフトフォーカス性に優れていることが分かる。また、SPFおよびPAの測定結果においても、市販品(比較品)と比較したところ、高い紫外線遮蔽効果があることが分かった。
【0037】
【表1】

【0038】
(実施例1)
〔サンスクリーンの製造〕
表2に示される処方と下記製造方法に従いパウダーファンデーションを調製した。なお、表中の配合量の単位は質量%である。
【表2】

製造方法:
成分AおよびBをそれぞれ80℃にて混合し、均一に分散したのを確認した後、30℃まで冷却する。冷却後成分Bを成分Aにホモミキサーにて攪拌しながら少しずつ添加し、均一になるまで良く混合し、球状酸化亜鉛粉体配合サンスクリーンを得た。
【0039】
(比較例1)
製造実施例4で製造されたシリコン処理球状酸化亜鉛の代わりに、シリコン処理された市販されている酸化亜鉛を用いた他は全て実施例1と同様にして製品を得た。
【0040】
実施例1及び比較例1で作製した化粧料について、女性パネラー10名によって、使用感に関する官能評価試験を実施した。試験はアンケート形式で実施し、各項目に0点から5点の間の点数をつけ、0点は評価が悪い、5点は評価が優れるとして数値化し、結果を全パネラーの平均点として表した。従って、点数が高い程評価が優れていることを示す。この評価結果が表3に示されている。
【0041】
【表3】

【0042】
表3の結果より、実施例1は比較例1よりも、使用感、化粧持ち、肌の透明感全てにおいて優れる結果となっていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、一次粒子径が5〜200nmの粒子が集積し、20〜5000nmの球状を形成している球状酸化亜鉛粉体を提供することが可能であり、また、その球状酸化亜鉛粉体に疎水性化合物を表面被覆した粉体を配合することにより、肌へ塗布した時の使用感、透明感、化粧持ちが優れた化粧料を提供することが可能であるので、ファンデーション、アイシャドウ、ほほ紅、口紅などのメイクアップ化粧料あるいはサンスクリーン化粧料に用いて好適であり、産業上の利用可能性が大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性亜鉛化合物とグリコールとアミン化合物とを混合し、50℃〜100℃でソフト溶液反応を行うことにより製造され、一次粒子が5〜200nmの球状粒子が集積し、20〜5000nmの球状を形成している球状酸化亜鉛粉体、又は、該球状酸化亜鉛粉体を300℃〜1500℃で焼成した球状酸化亜鉛粉体を用いて、その球状酸化亜鉛粉体の表面に、下記一般式(1)で示されるポリシロキサン、下記一般式(2)で示されるアルキルアルコキシシラン化合物、下記一般式(3)で示されるアルキルチタネート化合物、下記一般式(4)、下記一般式(5)又は下記一般式(6)で示されるフッ素化合物から選ばれる1種又は2種以上の化合物で被覆処理したことを特徴とする球状粉体。
【化4】

(式中、mは1以上の整数であり、nは0以上の整数である。また、R〜Rは水素、アルキル基、アルコキシル基又はフェニル基であり、同一であっても異なっていても良い。)
Si(OR ・・・・・(2)
(式中、R及びRは炭素数が1以上の飽和炭化水素基である。)
(RCOO)Ti(OR ・・・・・(3)
(式中、R及びRは炭素数が1以上の飽和炭化水素基である。また、a及びbはそれぞれ1〜3の整数であり、a+b=4の関係を有する。なお、ここで示されるアルキル基は直鎖状又は分岐状であって、単一鎖長のものであっても複合鎖長のものであっても良い。)
CF(CFCHCHSi(OR ・・・・・(4)
(式中、Rは炭素数が1以上の飽和炭化水素基であり、nは1以上の整数である。)
【化5】

(式中、nは4以上の整数、mは1又は2であり、Mは1価の金属イオン、アンモニウム塩又はジエタノールアミン塩である。)
【化6】

(式中、nは4以上の整数、Mは1価の金属イオン、アンモニウム塩又はジエタノールアミン塩である。)
【請求項2】
請求項1に記載の球状粉体を含有することを特徴とする化粧料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−193119(P2012−193119A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56191(P2011−56191)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(391015373)大東化成工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】