説明

球状蛍光体、波長変換型太陽電池封止材、太陽電池モジュール及びこれらの製造方法

【課題】太陽電池モジュールにおける光利用効率を向上させ、発電効率を安定的に向上させることを可能にする球状蛍光体、これを含む波長変換型太陽電池封止材、これを用いた太陽電池モジュール、及び、これらの製造方法を提供する。
【解決手段】蛍光物質と透明材料とを含有する球状蛍光体において、前記透明材料が、ビニル化合物含有組成物を懸濁重合し球状としたものであり、さらに前記ビニル化合物含有組成物が、脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体を含有する球状蛍光体、この球状蛍光体と封止樹脂とを含む光透過性の樹脂組成物層を備える波長変換型太陽電池封止材、太陽電池セルと前記太陽電池セルの受光面上に配置された前記封止材とを備える太陽電池モジュール、およびこれらの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状蛍光体、これを用いた波長変換型太陽電池封止材、これを用いた太陽電池モジュール、及び、これらの製造方法に関するものである。さらに詳しくは、発電に寄与しない波長域の光を発電に寄与する波長域の光に波長変換することにより発電効率を高くしうる太陽電池モジュール、それに用いる波長変換型太陽電池封止材、及びこれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のシリコン結晶太陽電池モジュールは以下のような構成である。表面の保護ガラス(カバーガラスともいう)は耐衝撃性を重んじて強化ガラスが用いられており、封止材(通常、エチレンビニルアセテートコポリマーを主成分とする樹脂、充填材ともいう)との密着性をよくするために、片面はエンボス加工による凹凸模様が施されている。
【0003】
また、その凹凸模様は内側に形成されており、太陽電池モジュールの表面は平滑である。また保護ガラスの下側には太陽電池セル及びタブ線を保護封止するための封止材及びバックフィルムが設けられている(例えば、非特許文献1参照)。
蛍光物質(発光材料ともいう)を用い、太陽光スペクトルのうち、発電に寄与しない紫外域または赤外域の光を波長変換することにより、発電に寄与しうる波長域の光を発光する層を太陽電池受光面側に設ける手法は、多数提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、蛍光物質である希土類錯体を、封止材中に含有させる方法の提案がされている(例えば、特許文献2参照)。
また従来から、太陽電池用透明封止材として熱硬化性を付与したエチレン−酢酸ビニル共重合体が広く用いられている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−328053号公報
【特許文献2】特開2006−303033号公報
【特許文献3】特開2003−51605号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】濱川圭弘編「太陽光発電」―最新の技術とシステム―、2000年、株式会社シーエムシー
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1にある、発電に寄与しない光を発電に寄与しうる波長域の光に波長変換する波長変換層には蛍光物質が含有されている。この蛍光物質は一般的に形状が大きいため、蛍光物質を含有する波長変換層を介すると太陽光は太陽電池セルまで十分届かず、発電に寄与しない光の割合が増加する。その結果、波長変換層により紫外域の光を可視域の光に変換しても、入射した太陽光に対する発電される電力の割合(発電効率)が予測したほどに向上しないという課題がある。
【0008】
また、特許文献3に記載の方法では、希土類錯体は、封止材として広く用いられているエチレンビニルアセテート(EVA)と共に加水分解しやすく、たちまち劣化してしまい、波長変換能が喪失する。また、希土類錯体はEVA中で凝集しやすく、生成した凝集体が励起波長光を散乱させ、太陽電池セルまで光が十分に到達しなくなるという問題がある。
【0009】
本発明は上記のような問題を改善しようとするもので、太陽電池モジュールにおける光利用効率を向上させ、発電効率を安定的に向上させることを可能にする球状蛍光体、これを用いた波長変換型太陽電池封止材、これを用いた太陽電池モジュール、及び、これらの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、蛍光物質と、透明材料と、を含む球状蛍光体おいて、透明材料中に脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体を含有させることによって、球状蛍光体の発光(蛍光)特性が向上することを見出した。また、該球状蛍光体を用いることにより、入射した太陽光のうち太陽光発電に寄与しない光を発電に寄与する波長へ変換するとともに、耐湿性及び耐熱性に優れ、分散性が良く且つ入射した太陽光を蛍光物質が散乱させることなく、太陽電池セルへ効率よく導入できることを見出し、本発明を完成するに至った。さらに、蛍光物質として希土類金属錯体を用いる場合に、蛍光物質の湿度に対する耐性を、より向上することができる。
【0011】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)蛍光物質と、透明材料と、を含有する球状蛍光体において、前記透明材料が、ビニル化合物含有組成物を懸濁重合し球状としたものであり、さらに前記ビニル化合物含有組成物が、脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体を含有することを特徴とする球状蛍光体。
(2)前記蛍光物質が、有機蛍光体又は希土類金属錯体である前記(1)に記載の球状蛍光体。
(3)前記蛍光物質が、希土類金属錯体である前記(1)に記載の球状蛍光体。
(4)前記蛍光物質が、ユーロピウム錯体である前記(3)に記載の球状蛍光体。
(5)前記ビニル化合物含有組成物のビニル化合物が、(メタ)アクリル酸系誘導体を懸濁重合して得られる樹脂であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の球状蛍光体。
(6)前記透明材料の屈折率が、前記蛍光物質よりも低く、1.4以上である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の球状蛍光体。
【0012】
(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の球状蛍光体と、封止樹脂と、を含む光透過性の樹脂組成物層を備える波長変換型太陽電池封止材。
(8)前記樹脂組成物層中の前記球状蛍光体の含有率が、0.0001〜10質量%である前記(7)に記載の波長変換型太陽電池封止材。
(9)前記樹脂組成物層以外の光透過性層をさらに備える前記(7)または(8)に記載の波長変換型太陽電池封止材。
(10)前記樹脂組成物層および前記樹脂組成物層以外の光透過性層からなるm個の層を備え、且つ、前記m個の層のそれぞれの屈折率を、光入射側から順にn、n、・・・、n(m−1)、nとした場合に、n≦n≦・・・≦n(m−1)≦nの関係を満たす前記(9)に記載の波長変換型太陽電池封止材。
【0013】
(11)太陽電池セルと、前記太陽電池セルの受光面上に配置された前記(7)〜(10)のいずれかに記載の波長変換型太陽電池封止材と、を備える太陽電池モジュール。
【0014】
(12)蛍光物質、ビニルモノマー及び、前記蛍光物質と配位可能な配位化合物が溶解または分散された組成物を、懸濁重合する工程を有する前記(1)〜(6)のいずれかに記載の球状蛍光体の製造方法。
【0015】
(13)前記(1)〜(6)のいずれかに記載の球状蛍光体を準備する工程と、前記球状蛍光体を封止樹脂に混合または分散させた樹脂組成物を調製する工程と、前記樹脂組成物をシート状に形成し、光透過性の樹脂組成物層を作製する工程と、を有する波長変換型太陽電池封止材の製造方法。
【0016】
(14)前記(7)〜(10)のいずれかに記載の波長変換型太陽電池封止材を準備する工程と、前記波長変換型太陽電池封止材を太陽電池セルの受光面側に配置する工程と、を有する太陽電池モジュールの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、太陽電池モジュールにおける光利用効率を向上させ、発電効率を安定
的に向上させることを可能にする球状蛍光体、これを用いた波長変換型太陽電池封止材、これを用いた太陽電池モジュール、及び、これらの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】屈折率の異なる界面における光の屈折の一例を示す概念図である。
【図2】屈折率の波長依存性の一例を示す概念図である。
【図3】本発明にかかる球状蛍光体と入射光の関係の一例を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<球状蛍光体およびその製造方法>
本発明の球状蛍光体は、蛍光物質と、これを内包する透明材料と、を有してなる。
前記球状蛍光体は、例えば、波長変換型太陽電池封止材を構成する波長変換性の樹脂組成物層に含有させて用いられる。例えば、シリコン結晶太陽電池では、太陽光のうち400nmよりも短波長、1200nmよりも長波長の光が有効に利用されず、太陽光エネルギーのうち約56%がこのスペクトルミスマッチにより発電に寄与しない。本発明は、耐湿性、耐熱性に優れ、分散性が良く、濃度消光を抑制した特定の形状の蛍光体を用いることで、波長変換によって、効率よく且つ安定的に太陽光を利用することにより、スペクトルミスマッチを克服しようというものである。さらに蛍光物質としての希土類金属錯体の利用効率を最大限に高め、実効的な発光効率を向上させようというものであり、これにより高価な希土類錯体を極僅かな量に抑え、発電に寄与することができる。
【0020】
本発明においては、蛍光物質が母材としての透明材料に包含されつつ球体の形状となっている。このように蛍光物質が透明材料の球体に閉じ込められていることにより、蛍光物質の能力を最大限に発揮させうるものである。このことを、図面を参照しながら説明する。図1に示すように、光が高屈折媒質から低屈折媒質へ進むとき、この界面では、その相対的な屈折率に応じて、全反射が起こる。この現象を積極的に応用したものの代表的な例として、光ファイバー、光導波路、半導体レーザーなど各種光学機器がある。全反射が起こる条件は、下式で表される臨界角θcよりも入射角が大きいときに起こる。
θ = sin−1(n/n
【0021】
一方、物質は固有の屈折率をもつが、これは進入する光の波長に対して依存性がある。媒質が透明材料の場合でも、進入光が長波長から短波長になるにしたがい屈折率が大きくなる。特に物質がある特定波長で吸収をもつとき、その波長近傍で屈折率が大きくなる。
さらに蛍光物質においては、吸収波長(励起波長)において基底状態から励起状態への遷移が起こり、基底状態に戻るときに蛍光(発光ともいう)として、エネルギーを放出する。すなわち、ある蛍光物質を透明材料に均一に混合することにより、屈折率の分布を、母材である透明材料(例えば、透明樹脂)よりも、特にその励起波長域において高めることができる。
【0022】
この様子を概念的に図2に示す。図中、実線は母材である透明樹脂の屈折率分布、破線は、これに蛍光物質を含有させたときの屈折率分布を表す。特に屈折率に関して、球体母材である透明材料、蛍光物質、さらに媒質(封止樹脂)を適宜選択することにより、図2のように球体内の屈折率を励起波長域では媒質(封止樹脂)よりも大きく、発光波長域では媒質(封止樹脂)よりも小さくしうる相互関係を得ることができる。
【0023】
このような状況では、励起波長域において光は、高屈折率である球体内に進入しやすくなるが、球体内においては、球体外の封止樹脂の屈折率が低いために球体内全反射により球体外へ出にくくなり、球体内部で全反射を繰り返す。このため球体内に含有される蛍光物質は、励起光の利用効率が高くなると考えることができる。一方、発光波長域では、球体の屈折率と球体外に充填されている媒質(例えば、封止樹脂)との屈折率の差が大きくないため、光が球体外へ容易に放出されることになる。この様子を概念的に図3に示す。
このように蛍光物質を含有する粒子を球状に構成することにより、結果として、高価な蛍光物質を僅かな量で用いた場合でも、十分な量の波長変換された発光が得られることになる。
【0024】
なお、蛍光物質は光散乱を引き起こしやすく、目的とする波長変換による発電効率の向上効果が十分に得られなくなってしまう場合がある。具体的には、蛍光物質は励起波長を吸収するため、励起波長域での屈折率も高くなり光散乱が起こりやすくなる。さらに蛍光物質が凝集した場合には、光散乱がさらに大きくなる。しかしながら、蛍光物質が透明材料(好ましくは、蛍光物質よりも低屈折率の透明材料)に内包されることにより、蛍光物質と封止樹脂との屈折率の差に起因する光散乱を効果的に抑制することができる。
【0025】
ところで、蛍光物質を含有する球状蛍光体を製造する際、蛍光物質と、それを包含する透明材料との相互作用により、蛍光物質自身が有する発光(蛍光)特性を、十分に発現しない場合がある。
そこで、本発明の球状蛍光体では、透明材料の構成成分であるビニル化合物中に、脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸系誘導体を含有させることによって、球状蛍光体の発光(蛍光)特性が向上し、充分な波長変換機能を呈する球状蛍光体が得られる。よって本発明の球状蛍光体を用いる太陽電池モジュールは、光利用効率が向上し、発電効率が安定的に向上すると考えられる。
【0026】
さらに、蛍光物質として希土類錯体など、耐湿性の低い物質を用いる場合、これを透明材料(好ましくは、耐湿性の透明材料)の球体内に閉じ込めることにより、耐湿性をより向上することもできる。
【0027】
本発明の球状蛍光体は、太陽電池モジュールに好適に使用できることは勿論のこと、その他にも、波長変換型農業用資材、発光ダイオード励起の各種光学機器、表示機器、レーザー励起の各種光学機器、表示機器になどに応用可能で、本発明は、用途を限定するものではない。
以下では、球状蛍光体に用いる材料について説明する。
【0028】
(蛍光物質)
本発明に用いられる蛍光物質は、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、励起波長が500nm以下であって発光波長がそれよりも長い波長である蛍光物質であることが好ましく、通常の太陽電池で利用可能な波長域外の光を、太陽電池で利用可能な波長域に変換可能な化合物であることがより好ましい。
蛍光物質として具体的には例えば、有機蛍光体、無機蛍光体、および希土類金属錯体を好ましく挙げることができる。中でも波長変換効率の観点から、有機蛍光体および希土類金属錯体の少なくとも1種であることが好ましく、希土類金属錯体であることがより好ましい。
【0029】
−無機蛍光体−
前記無機蛍光体としては、例えば、YS:Eu、Mg、Tiの蛍光粒子、Er3+イオンを含有した酸化フッ化物系結晶化ガラス、酸化ストロンチウムと酸化アルミニウムからなる化合物に希土類元素のユウロピウム(Eu)とジスプロシウム(Dy)を添加したSrAl:Eu、Dyや、SrAl1425:Eu、Dyや、CaAl:Eu、Dyや、ZnS:Cu等の無機蛍光材料を挙げることができる。
【0030】
−有機蛍光体−
前記有機蛍光体としては、例えば、シアニン系色素、ピリジン系色素、ローダミン系色素等の有機色素、BASF社製のLumogen F Violet570、同Yellow083、同Orange240、同Red300、田岡化学工業株式会社製の塩基性染料Rhodamine B、住化ファインケム株式会社製のSumiplast Yellow FL7G、Bayer社製のMACROLEX Fluorescent Red G、同Yellow10GN等の有機蛍光体を挙げることができる。
【0031】
−希土類金属錯体−
前記希土類金属錯体を構成する金属としては、発光効率の観点から、ユーロピウムおよびサマリウムの少なくとも一方であることが好ましく、ユーロピウムであることがより好ましい。
また前記希土類金属錯体を構成する配位子としては、希土類金属に配位可能であれば特に制限はなく、用いる金属に応じて適宜選択することができる。中でも発光効率の観点から、有機配位子であることが好ましく、ユーロピウムおよびサマリウムの少なくとも1方と錯体を形成可能な有機配位子であることが好ましい。
【0032】
本発明では、配位子を限定するものではないが、中性配位子である含窒素有機化合物、含窒素芳香族複素環式化合物、およびホスフィンオキサイドから選ばれる少なくとも1種含有していることが好ましい。
また希土類錯体のアニオン性配位子として、一般式:RCOCHRCOR(式中、はアリール基、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アラルキル基またはそれらの置換体を、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アラルキル基またはアリール基を、Rはアリール基、アルキル基、クロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アラルキル基またはそれらの置換体をそれぞれ示す)で表わされるβ−ジケトン類又はカルボン酸類を含有してもよい。
【0033】
β−ジケトン類としては、具体的にはアセチルアセトン、パーフルオロアセチルアセトン、ベンゾイル−2−フラノイルメタン、1,3−ビス(3−ピリジル)−1,3−プロパンジオン、ベンゾイルトリフルオロアセトン、ベンゾイルアセトン、5−クロロスルフォニル−2−テノイルトリフルオロアセトン、ジ(4−ブロモ)ベンゾイルメタン、ジベンゾイルメタン、d,d−ジカンフォリルメタン、1,3−ジシアノ−1,3−プロパンジオン、p−ビス(4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロ−1,3−ヘキサンジノイル)ベンゼン、4,4′−ジメトキシジベンゾイルメタン、2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン、ジナフトイルメタン、ジピバロイルメタン、ビス(パーフルオロ−2−プロポキシプロピオニル)メタン、1,3−ジ(2−チエニル)−1,3−プロパンジオン、3−(トリフルオロアセチル)−d−カンファー、6,6,6−トリフルオロ−2,2−ジメチル−3,5−ヘキサンジオン、1,1,1,2,2,6,6,7,7,7−デカフルオロ−3,5−ヘプタンジオン、6,6,7,7,8,8,8−ヘプタフルオロ−2,2−ジメチル−3,5−オクタンジオン、2−フリルトリフルオロアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、3−(ヘプタフルオロブチリル)−d−カンファー、4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロ−1−(2−チエニル)−1,3−ヘキサンジオン、4−メトキシジベンゾイルメタン、4−メトキシベンゾイル−2−フラノイルメタン、6−メチル−2,4−ヘプタンジオン、2−ナフトイルトリフルオロアセトン、2−(2−ピリジル)ベンズイミダゾール、5,6−ジヒドロキシ−,10−フェナントロリン、1−フェニル−3−メチル−4−ベンゾイル−5−ピラゾール、1−フェニル−3−メチル−4−(4−ブチルベンゾイル)−5−ピラゾール、1−フェニル−3−メチル−4−イソブチリル−5−ピラゾール、1−フェニル−3−メチル−4−トリフルオロアセチル−5−ピラゾール、3−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−2,4−ペンタンジオン、3−フェニル−2,4−ペンタンジオン、3−[3′,5′−ビス(フェニルメトキシ)フェニル]−1−(9−フェナンチル)−1−プロパン−1,3−ジオン、5,5−ジメチル−1,1,1−トリフルオロ−2,4−ヘキサンジオン、1−フェニル−3−(2−チエニル)−1,3−プロパンジオン、3−(t−ブチルヒドロキシメチレン)−d−カンファー、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン、1,1,1,2,2,3,3,7,7,8,8,9,9,9−テトラデカフルオロ−4,6−ノナンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、4,4,4−トリフルオロ−1−(2−ナフチル)−1,3−ブタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−オクタンジオン、2,2,6−トリメチル−3,5−ヘプタンジオン、2,2,7−トリメチル−3,5−オクタンジオン、4,4,4−トリフルオロ−1−(チエニル)−1,3−ブタンジオン(TTA)、1−(p−t−ブチルフェニル)−3−(N−メチル−3−ピロール)−1,3−プロパンジオン(BMPP)、1−(p−t−ブチルフェニル)−3−(p−メトキシフェニル)−1,3−プロパンジオン(BMDBM)、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン、べンゾイルアセトン、ジべンゾイルアセトン、ジイソブチロイルメタン、ジビパロイルメタン、3−メチルペンタン−2,4−ジオン、2,2−ジメチルペンタン−3,5−ジオン、2−メチル−1,3−ブタンジオン、1,3−ブタンジオン、3−フェニル−2,4−ペンタンジオン、1,1,1−トリフロロ−2,4−ペンタンジオン、1,1,1−トリフロロ−5,5−ジメチル−2,4−ヘキサンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、3−メチル−2,4−ペンタンジオン、2−アセチルシクロペンタノン、2−アセチルシクロヘキサノン、1−ヘプタフロロプロピル−3−t−ブチル−1,3−プロパンジオン、1,3−ジフェニル−2−メチル−1,3−プロパンジオン、または1−エトキシ−1,3−ブタンジオン等が挙げられる。
【0034】
希土類錯体の中性配位子の含窒素有機化合物、含窒素芳香族複素環式化合物、ホスフィンオキサイドとしては、たとえば、1,10−フェナントロリン、2−2′−ビピリジル、2−2′−6,2″−ターピリジル、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2−(2−ピリジル)ベンズイミダゾール、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリ−n−ブチルホスフィンオキサイド、トリ−n−オクチルホスフィンオキサイド、トリ−n−ブチルホスフェート等が挙げられる。
【0035】
上記のような配位子を有する希土類錯体として、中でも波長変換効率の観点から、例えば、Eu(TTA)Phen、Eu(BMPP)Phen、Eu(BMDBM)Phen、等を好ましく利用できる。
Eu(TTA)Phenの製造法は、例えば、Masaya Mitsuishi,Shinji Kikuchi,Tokuji Miyashita,Yutaka Amano,J.Mater.Chem.2003,13,285−2879に開示されている方法を参照できる。
【0036】
本発明においては、蛍光物質として、特にユーロピウム錯体を用いることで、高い発電効率を有する太陽電池モジュールを構成することができる。ユーロピウム錯体は、紫外線域の光を高い波長変換効率で赤色の波長域の光に変換し、この変換された光が太陽電池セルにおける発電に寄与する。
【0037】
本発明の球状蛍光体における蛍光物質の含有量としては特に制限はなく、その目的や蛍光物質の種類に応じて適宜選択できるが、発電効率の観点から、球状蛍光体の全質量に対して0.001〜1質量%であることが好ましく、0.01〜0.5質量%であることがより好ましい。
【0038】
(透明材料)
本発明において前記蛍光物質は、前記透明材料に含有されている。本発明においては透明とは、光路長1cmにおける波長400〜800nmの光の透過率が90%以上であることをいう。
前記透明材料としては、透明であれば特に制限はなく、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の樹脂類を挙げることができる。中でも光散乱抑制の観点から、アクリル樹脂、メタクリル樹脂であることが好ましい。前記樹脂を構成するモノマー化合物としては特に制限はないが、光散乱抑制の観点から、ビニル化合物であることが好ましい。
【0039】
また前記蛍光物質を前記透明材料に含有させ、形状を球状にする方法としては、例えば、前記蛍光物質をモノマー化合物に溶解、あるいは分散処理してビニル化合物含有組成物を調製し、これを重合(乳化重合または懸濁重合)することにより調製することができる。具体的には、例えば、蛍光物質およびビニル化合物を含む混合物を調製し、これを媒体(例えば、水系媒体)中に乳化または分散して、乳化物または懸濁物を得る。これを例えば、ラジカル重合開始剤を用いて乳化物または懸濁物に含まれるビニル化合物を重合(乳化重合または懸濁重合)することで、蛍光物質が含有された球状樹脂粒子として球状蛍光体を構成することができる。
本発明においては、発電効率の観点から、蛍光物質およびビニル化合物を含む混合物を調製し、これを媒体(例えば、水系媒体)中に分散して懸濁物を得て、これを例えば、ラジカル重合開始剤を用いて懸濁物に含まれるビニル化合物を重合(懸濁重合)することで、蛍光物質が含有された球状樹脂粒子として球状蛍光体を構成することが好ましい。
【0040】
(ビニル化合物)
本発明においてビニル化合物とは、エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であれば特に制限はなく、重合反応した際にビニル樹脂、特にアクリル樹脂またはメタクリル樹脂になり得るアクリルモノマー、メタクリルモノマー、アクリルオリゴマー、メタクリルオリゴマー等を特に制限なく用いることができる。本発明において好ましくは、アクリルモノマー、およびメタクリルモノマー等が挙げられる。
【0041】
アクリルモノマー、およびメタクリルモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、これらのアルキルエステルが挙げられ、またこれらと共重合し得るその他のビニル化合物を併用してもよく、1種単独でも、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0042】
アクリル酸アルキルエステル、およびメタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸無置換アルキルエステルおよびメタクリル酸無置換アルキルエステル;ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、トリレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステルとの反応物、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとシクロヘキサンジメタノールと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステルとの反応物等);これらのアルキル基に水酸基、ポキシ基、ハロゲン基等が置換したアクリル酸置換アルキルエステルまたはメタクリル酸置換アルキルエステル;等が挙げられる。
【0043】
また、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルと共重合し得るその他のビニル化合物としては、アクリルアミド、アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。これらのビニルモノマーは、1種単独でも、2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
本発明における脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸系誘導体とは、例えば、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−(ジシクロペンテニルオキシ)エチルアクリレート、2−(ジシクロペンテニルオキシ)エチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、t−ブチルシクロヘキシルメタクリレート等が挙げられる。
【0045】
本発明におけるビニル化合物としては、形成される樹脂粒子の屈折率が所望の値になるように適宜選択することが好ましく、アクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0046】
(ラジカル重合開始剤)
本発明においてはビニル化合物を重合させるためにラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。ラジカル重合開始剤としては、特に制限なく通常用いられるラジカル重合開始剤を用いることができる。例えば、過酸化物等が好ましく挙げられる。具体的には、熱により遊離ラジカルを発生させる有機過酸化物やアゾ系ラジカル開始剤が好ましい。
【0047】
有機過酸化物としては例えば、イソブチルパーオキサイド、α,α′ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−s−ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ(エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、サクニックパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイル)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、4−メチルベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、m−トルオノイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサノン、2,2−ビス(4,4−ジブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、α,α′ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシ、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等を使用することができる。
【0048】
アゾ系ラジカル開始剤としては、たとえば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、商品名V−60、和光純薬工業株式会社製)、2,2′−アゾビス(2−メチルイソブチロニトリル)(商品名V−59、和光純薬工業株式会社製)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(商品名V−65、和光純薬工業株式会社製)、ジメチル−2,2′−アゾビス(イソブチレート)(商品名V−601、和光純薬工業株式会社製)、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(商品名V−70、和光純薬工業株式会社製)などが挙げられる。
【0049】
ラジカル重合開始剤の使用量は、前記ビニル化合物の種類や形成される樹脂粒子の屈折率等に応じて適宜選択することができ、通常用いられる使用量で使用される。具体的には例えば、ビニル化合物に対して0.01〜2質量%で使用することができ、0.1〜1質量%で使用することが好ましい。
【0050】
本発明における透明材料の屈折率について特に制限はないが、光散乱抑制の観点から、前記蛍光物質の屈折率よりも低いことが好ましく、前記蛍光物質の屈折率よりも低く、且、後述する封止樹脂の屈折率との比が1に近いことがより好ましい。封止樹脂の屈折率は1.4〜1.5程度であることから、前記透明材料の屈折率は1.4以上であることが好ましい。また、一般に、蛍光物質の屈折率は1.5よりも大きいことから、前記透明材料の屈折率は1.4〜1.5であることがより好ましい。
【0051】
また前記球状蛍光体は、蛍光物質の励起波長では分散媒となる封止樹脂よりも屈折率が高く、発光波長では封止樹脂よりも屈折率が低いことが好ましい。かかる態様であることにより、励起波長域における光の利用効率がさらに向上する。
【0052】
(ラジカル捕捉剤)
本発明におけるラジカル捕捉剤は、上記のラジカル開始剤に由来する蛍光物質の劣化を充分に抑制し、所望の蛍光物質を含有した球状蛍光体が得られるものであれば特に制限されるものではなく、通常のヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤、ヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤、リン系ラジカル捕捉剤、イオウ系ラジカル捕捉剤等を使用することができる。
【0053】
ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤としては例えば、1,2,2,6,6,−ペンタメチルピペリジニルメタクリレート、2,2,6,6,−テトラメチルピペリジニルメタクリレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物、N,N′,N′′,N′′′−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、シクロヘキサンと過酸化N−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの反応生成物と2−アミノエタノールとの反応生成物(例えば、TINUVIN 152、BASFジャパン株式会社製)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジン)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。
【0054】
ヒンダードフェノール系ラジカル捕捉剤としては例えば、2−t−ブチル−4−メトキシフェノール、3−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン及びテトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。
【0055】
リン系ラジカル捕捉剤としては例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(ノニルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(ジノニルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルトリス(ノニルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルトリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト及びトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等が挙げられる。
【0056】
イオウ系ラジカル捕捉剤としては例えば、ジラウリル3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3′−チオジプロピオネート、N−シクロヘキシルチオフタルイミド及びN−n−ブチルベンゼンスルホンアミド等が挙げられる。
【0057】
上記ラジカル捕捉剤のなかでも、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤を用いることが透明材料の着色を抑制する観点から好ましく、(メタ)アクリロイル基を有するヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤であることがより好ましい。このようにラジカル捕捉剤の分子内に(メタ)アクリロイル基を有することで、前記透明材料を構成するためのモノマーとともにラジカル捕捉剤が重合し、透明材料にラジカル捕捉剤が組み込まれる。これにより、透明材料にラジカル補足剤が固定化されてラジカル捕捉剤の移動が抑制され、透明材料からラジカル補足剤がブリードアウトすることを抑制する。
【0058】
これらのラジカル捕捉剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、これらラジカル捕捉剤の含有量は、ラジカル重合の進行を妨げず、球状蛍光体が得られ、透明性・屈折率等の諸特性が損なわれない範囲で使用される。具体的には例えば、ビニル化合物に対して0.01〜5質量%で含有させることができ、0.1〜2質量%で含有させることが好ましい。
【0059】
<球状蛍光体の製造方法>
前記蛍光物質およびラジカル捕捉剤を前記透明材料に含有させつつ形状を球状にして、球状蛍光体を製造する方法としては、例えば、前記蛍光物質およびラジカル捕捉剤を前記モノマー化合物に溶解、あるいは分散処理して組成物を調製し、これを重合(乳化重合または懸濁重合)することにより調製することができる。具体的には、例えば、蛍光物質、ラジカル捕捉剤およびビニル化合物を含む混合物を調製し、これを媒体(例えば、水系媒体)中に乳化または分散して、乳化物または懸濁物を得る。これを例えば、ラジカル重合開始剤を用いて乳化物または懸濁物に含まれるビニル化合物を重合(乳化重合または懸濁重合)することで、蛍光物質が含有された球状樹脂粒子として球状蛍光体を構成することができる。
【0060】
本発明においては、発電効率の観点から、蛍光物質およびビニル化合物を含む混合物を調製し、これを媒体(例えば、水系媒体)中に分散して懸濁物を得て、これを例えば、ラジカル重合開始剤を用いて懸濁物に含まれるビニル化合物を重合(懸濁重合)することで、蛍光物質が含有された球状樹脂粒子として球状蛍光体を構成することが好ましい。
【0061】
本発明の球状蛍光体の平均粒子径は、光利用効率向上の観点から1μm〜600μmであることが好ましく、5μm〜300μmであることがより好ましく、10μm〜250μmであることが特に好ましい。
球状蛍光体の平均粒子径は、レーザー回折法を用いて測定され、重量累積粒度分布曲線を小粒径側から描いた場合に、重量累積が50%となる粒子径に対応する。レーザー回折法を用いた粒度分布測定は、レーザー回折散乱粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター社製、LS13320)を用いて行なうことができる。
【0062】
<波長変換型太陽電池封止材>
本発明の波長変換型太陽電池封止材は、太陽電池モジュールの光透過性層の一つとして用いられ、波長変換能を有する光透過性の樹脂組成物層の少なくとも1層を備える。前記樹脂組成物層は、前記球状蛍光体の少なくとも1種と、封止樹脂(好ましくは、透明封止樹脂)の少なくとも1種とを含み、前記球状蛍光体が封止樹脂中に分散されている。
波長変換型太陽電池封止材が、前記球状蛍光体を含む樹脂組成物層を備えることで、太陽電池モジュールにおける光透過性層の一つとして用いられる場合に、その光利用効率を向上させ、発電効率を安定的に向上させることができる。
【0063】
光の散乱は、球状蛍光体の屈折率と、封止樹脂の屈折率との比に相関する。具体的には、光の散乱は、球状蛍光体の屈折率と封止樹脂との屈折率との比が「1」に近ければ、球状蛍光体の粒子径の影響が小さくなり、また、光の散乱も小さいものとなる。特に本発明の波長変換型太陽電池封止材を太陽電池モジュールの波長変換型の光透過層として適用する場合、太陽電池セルに感度のある波長領域、すなわち400〜1200nmにおける屈折率の比が「1」に近いことが好ましい。一方、球状蛍光体内において、励起波長域の光の全反射を効率的に起こすためには、球状蛍光体の屈折率は、励起波長域において媒質である封止樹脂の屈折率よりも高くなることが好ましい。
【0064】
以上のような要請から、例えば、蛍光物質としてユーロピウム錯体(Eu(TTA)Phen、Eu(BMPP)Phen、Eu(BMDBM)Phenなど)、透明材料(球体母材料)としてポリメタクリル酸メチル、封止樹脂として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を用いることで、励起波長、発光波長の観点、さらには太陽電池の感度の観点から特に良好な屈折率の相互関係を与えうる。
しかし、本発明においては、蛍光物質、透明材料、および封止樹脂のそれぞれの屈折率における相互の関係が上記条件を満たすように、それぞれを適宜選択すれば、上記組み合わせのみに限定されるものではない。
【0065】
本発明の波長変換型太陽電池封止材が備える波長変換性の樹脂組成物層中の上記球状蛍光体の好ましい配合量は、不揮発分総量に対し、0.0001〜10質量%である。0.0001質量%以上とすることで発光効率が向上する。また、10質量%以下とすることで入射光の散乱により発電効果に抑制され、発電効果がより向上する。
【0066】
(封止樹脂)
本発明における波長変換性の樹脂組成物層は、封止樹脂(透明封止樹脂)を含む。封止樹脂としては、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、および熱可塑性樹脂等が好ましく用いられる。
従来から、太陽電池用透明封止材として用いられている樹脂は、上述の特許文献3にあるように、熱硬化性を付与したエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が広く用いられているが、本発明においてはこれに限定されるものではない。
【0067】
波長変換型太陽電池封止材用樹脂組成物の分散媒樹脂(透明封止樹脂)に光硬化性樹脂を用いる場合、光硬化性樹脂の樹脂構成や光硬化方法は特に制限はない。例えば、光ラジカル開始剤による光硬化方法では、波長変換型太陽電池封止材用樹脂組成物は、上記球状蛍光体の他、(A)光硬化性樹脂、(B)架橋性モノマー及び(C)光により遊離ラジカルを生成する光開始剤等を含む分散媒樹脂からなる。
【0068】
ここで(A)光硬化性樹脂としては、アクリル酸またはメタクリル酸及びこれらのアルキルエステルと、これらと共重合し得るその他のビニルモノマーを構成モノマーとして共重合してなる共重合体が用いられる。これらの共重合体は、単独でも2種類以上を組み合わせて用いることもできる。アクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸無置換アルキルエステルまたはメタクリル酸無置換アルキルエステルや、これらのアルキル基に水酸基、エポキシ基、ハロゲン基等が置換したアクリル酸置換アルキルエステル及びメタクリル酸置換アルキルエステル等が挙げられる。
【0069】
また、アクリル酸またはメタクリル酸やアクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルと共重合しうるその他のビニルモノマーとしては、アクリルアミド、アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。これらのビニルモノマーは、単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、(A)成分の分散媒樹脂の重量平均分子量は、塗膜性及び塗膜強度の点から10,000〜300,000であることが好ましい。
【0070】
(B)架橋性モノマーとしては、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物(例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(エチレン基の数が2〜14のもの)、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(プロピレン基の数が2〜14のもの)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAトリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAデカオキシエチレンジ(メタ)アクリレート等);グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を付加して得られる化合物(例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート等);多価カルボン酸(例えば、無水フタル酸)と水酸基及びエチレン性不飽和基を有する物質(例えば、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)とのエステル化物;ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、トリレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステルとの反応物、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとシクロヘキサンジメタノールと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステルとの反応物等);等を挙げることができる。
【0071】
特に好ましい(B)架橋性モノマーとしては、架橋密度や反応性を制御しやすいという意味において、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレートが挙げられる。なお、上記化合物は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0072】
後述するように、特に波長変換型太陽電池封止材あるいは、その下層(太陽電池セルに接する側)の屈折率を高くする場合には、(A)光硬化性樹脂及び/または(B)架橋性モノマーに、臭素、イオウ原子を含んでいることが有利である。臭素含有モノマーの例としては、第一工業製薬株式会社製、ニューフロンティアBR−31、ニューフロンティアBR−30、ニューフロンティアBR−42M等が挙げられる。イオウ含有モノマー組成物としては、三菱瓦斯化学株式会社製、IU−L2000、IU−L3000、IU−MS1010が挙げられる。ただし、本発明で使用される臭素、イオウ原子含有モノマー(それを含む重合物)は、ここに挙げたものに限定されるものではない。
【0073】
(C)光開始剤としては、紫外線または可視光線により遊離ラジカルを生成する光開始剤が好ましく、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、ベンジルジメチルケタール(BASFジャパン株式会社製、IRGACURE(イルガキュア)651)、ベンジルジエチルケタール等のベンジルケタール類、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のキサントン類、あるいはヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASFジャパン株式会社製、IRGACURE(イルガキュア)184)、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ビトロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(メルク社製、ダロキュア1116)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(メルク社製、ダロキュア1173)等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0074】
また、(C)光開始剤として使用しうる光開始剤としては、例えば、2,4,5−トリアリルイミダゾール二量体と2−メルカプトベンゾオキサゾール、ロイコクリスタルバイオレット、トリス(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)メタン等との組み合わせも挙げられる。また、それ自体では光開始性はないが、前記物質と組み合わせて用いることにより全体として光開始性能のより良好な増感剤系となるような添加剤、例えば、ベンゾフェノンに対するトリエタノールアミン等の三級アミンを用いることができる。
【0075】
また、熱硬化性の封止樹脂を用いる場合には、前記(C)光開始剤を熱開始剤に変更すればよい。
(C)熱開始剤としては、熱により遊離ラジカルを発生させる有機過酸化物が好ましく、例えば前述の有機過酸化物を使用することができる。
【0076】
上記はアクリル系の光硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂についての例示であるが、通常用いられるエポキシ系の光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂も、本発明の波長変換型太陽電池封止材の分散媒樹脂として用いることができる。ただし、エポキシの硬化はイオン性であるため、上記球状蛍光体あるいは蛍光物質である希土類金属錯体が影響を受ける場合があり、劣化等を引き起こしうるため、アクリル系樹脂を用いることがより好ましい。
【0077】
波長変換型太陽電池封止材用樹脂組成物の分散媒樹脂に、加熱または加圧により流動する熱可塑性樹脂を用いる場合、例えば、天然ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、ポリイソプレン、ポリ−1,2−ブタジエン、ポリイソブテン、ポリブテン、ポリ−2−ヘプチル−1,3−ブタジエン、ポリ−2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、ポリ−1,3−ブタジエン等の(ジ)エン類、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルヘキシルエーテル、ポリビニルブチルエーテル等のポリエーテル類、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピオネート等のポリエステル類、ポリウレタン、エチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリスルホン、フェノキシ樹脂、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリ−2−エチルヘキシルアクリレート、ポリ−t−ブチルアクリレート、ポリ−3−エトキシプロピルアクリレート、ポリオキシカルボニルテトラメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリドデシルメタクリレート、ポリテトラデシルメタクリレート、ポリ−n−プロピルメタクリレート、ポリ−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ−2−ニトロ−2−メチルプロピルメタクリレート、ポリ−1,1−ジエチルプロピルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート等のポリ(メタ)アクリル酸エステルが分散媒樹脂として使用可能である。
【0078】
これらの熱可塑性樹脂は、必要に応じて2種以上共重合してもよいし、2種類以上をブレンドして使用することも可能である。
【0079】
さら上記樹脂との共重合成分として、エポキシモノマー、ウレタンアクリレート、ポリーテルアクリレート、ポリエステルアクリレート等を使うこともできる。特に接着性の点から、ウレタンアクリレート、エポキシモノマー、ポリエーテルアクリレートが優れている。
【0080】
エポキシモノマーとしては、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、アリルアルコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル等の(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。
【0081】
エポキシモノマー等のように分子内に水酸基を有するポリマは接着性向上に有効である。これらの共重合樹脂は、必要に応じて、2種以上併用することができる。これら樹脂の軟化温度は、取扱い性から200℃以下が好ましく、150℃以下がさらに好ましい。太陽電池ユニットの使用環境温度が通常は80℃以下であることと加工性を考慮すると、上記樹脂の軟化温度は特に好ましくは80〜120℃である。
【0082】
熱可塑性樹脂を分散媒樹脂として用いた場合の、その他の樹脂組成物の構成は、上記球状蛍光体を含有させれば特に制限はないが、通常用いられる成分、例えば、可塑剤、難燃剤、安定剤等を含有させることが可能である。
本発明の波長変換型太陽電池封止材の分散媒樹脂としては、上記のように、光硬化性、熱硬化性、熱可塑性と、特に樹脂を制限するものではないが、特に好ましい樹脂として、従来の太陽電池用封止材として広く利用されているエチレン−酢酸ビニル共重合体に熱ラジカル開始剤を配合した組成が挙げられる。
【0083】
本発明の波長変換型太陽電池封止材は、球状蛍光体と封止樹脂とを含む波長変換性の樹脂組成物層のみから構成されていてもよいが、これに加えて前記樹脂組成物層以外の光透過層をさらに有することが好ましい。
前記樹脂組成物層以外の光透過層としては、例えば、前記波長変換性の樹脂組成物層から球状蛍光体を除いた光透過性層を挙げることができる。
本発明の波長変換型太陽電池封止材が複数の光透過性層から構成される場合、少なくともその入射側の層よりも同程度かあるいは高屈折であることが好ましい。
詳細には、m個の光透過性層を、光入射側から順に層1、層2、・・・、層(m−1)、層mとし、またそれぞれの層の屈折率を順にn、n、・・・、n(m−1)、nとした場合に、n≦n≦・・・≦n(m−1)≦nが成り立つことが好ましい。
【0084】
本発明の波長変換型太陽電池封止材の屈折率としては特に制限はないが、好ましくは1.5〜2.1とし、好ましくは1.5〜1.9とする。また本発明の波長変換型太陽電池封止材が複数の光透過層からなる場合、波長変換型太陽電池封止材の全体の屈折率が前記範囲内であることが好ましい。
【0085】
本発明の波長変換型太陽電池封止材は、太陽電池セルの受光面上に配置されることが好ましい。そうすることで、太陽電池セル受光表面のテクスチャー構造、セル電極、タブ線等を含めた凹凸形状に隙間なく追従できる。
本発明の波長変換型太陽電池封止材は、取り扱いの簡便さの点からシート状であることが好ましい。
【0086】
<波長変換型太陽電池封止材の製造方法>
本発明の波長変換型太陽電池封止材の製造方法は、(1)前記球状蛍光体を準備する工程と、(2)前記球状蛍光体および前記ラジカル捕捉剤を封止樹脂に混合または分散させた樹脂組成物を調製する工程と、(3)前記樹脂組成物をシート状に形成し、光透過性の樹脂組成物層を作製する工程と、を有する。その他の工程を有していてもよい。
【0087】
−球状蛍光体の準備工程−
球状蛍光体を準備する工程では、前記球状蛍光体を購入して準備しても、或いは上記方法により製造して準備してもよい。
【0088】
−樹脂組成物の調製工程−
前記球状蛍光体および前記ラジカル捕捉剤を封止樹脂に混合または分散し、樹脂組成物を調製する方法としては、通常用いられる方法を特に制限なく用いることができる。球状蛍光体が封止樹脂に均一に分散するよう、ロールミキサなどで混練してもよい。
【0089】
−シート形成工程−
前記樹脂組成物をシート状に形成し、光透過性の樹脂組成物層を作製する方法として通常用いられる方法を特に制限なく用いることができる。封止樹脂として熱硬化性樹脂を用いる場合には、例えば、加熱したプレス機を用いて半硬化状態のシートに形成することができる。
樹脂組成物層の厚みは、1μm以上1000μm以下とすることが好ましく、10μm以上800μm以下とすることがより好ましい。
【0090】
<太陽電池モジュール>
本発明は、上記波長変換型太陽電池封止材を備える太陽電池モジュールもその範囲とする。本発明の波長変換型太陽電池封止材は、太陽電池セルと、この太陽電池セルの受光面上に配置された前記波長変換型太陽電池封止材と、を備える。これにより発電効率が向上する。
本発明の波長変換型太陽電池封止材は、例えば、複数の光透過性層と太陽電池セルとを有する太陽電池モジュールの、光透過性層の一つとして用いられる。
【0091】
本発明において、太陽電池モジュールは、例えば、反射防止膜、保護ガラス、波長変換型太陽電池封止材、太陽電池セル、バックフィルム、セル電極、タブ線等の必要部材から構成される。これらの部材の中で、光透過性を有する光透過性層としては、反射防止膜、保護ガラス、本発明の波長変換型太陽電池封止材、太陽電池のSiNx:H層及びSi層等が挙げられる。
【0092】
本発明において、上記で挙げられる光透過性層の積層順は、通常、太陽電池モジュールの受光面から順に、必要により形成される反射防止膜、保護ガラス、本発明の波長変換型太陽電池封止材、太陽電池セルのSiNx:H層、Si層となる。
【0093】
即ち、本発明の波長変換型太陽電池封止材において、あらゆる角度から入り込む外部光が反射損失少なく、効率よく太陽電池セル内に導入するために、波長変換型太陽電池封止材の屈折率が、該波長変換型太陽電池封止材より光入射側に配置される光透過性層、すなわち、反射防止膜、保護ガラス等の屈折率より高く、且つ該波長変換型太陽電池封止材の反光入射側に配置される光透過性層、すなわち、太陽電池セルのSiNx:H層(「セル反射防止膜」ともいう)及びSi層等の屈折率よりも低くすることが好ましい。
【0094】
具体的には、波長変換型太陽電池封止材より光入射側に配置される光透過性層、すなわち、反射防止膜の屈折率は、1.25〜1.45、保護ガラスの屈折率は、通常1.45〜1.55程度のものが用いられる。該波長変換型太陽電池封止材の反光入射側に配置される光透過性層、すなわち、太陽電池セルのSiNx:H層(セル反射防止膜)の屈折率は、通常1.9〜2.1程度及びSi層等の屈折率は、通常3.3〜3.4程度のものが用いられる。以上のことより、本発明の波長変換型太陽電池封止材の屈折率を好ましくは1.5〜2.1とし、より好ましくは1.5〜1.9とする。
【0095】
本発明の波長変換型太陽電池封止材に前述の球状蛍光体を用いることで、太陽電池モジュールの発電効率が向上する。球状蛍光体は光散乱を抑えて発電に寄与しうる波長域の光に波長変換し、この変換された光が太陽電池セルで発電に寄与する。
【0096】
<太陽電池モジュールの製造方法>
本発明の波長変換型太陽電池封止材となる、シート状の樹脂組成物を用いて、太陽電池
セル上に波長変換型太陽電池封止材を形成し、太陽電池モジュールを製造する。
具体的には、通常のシリコン結晶太陽電池モジュールの製造方法と同様であり、通常の封止材シートに代えて、本発明の波長変換型太陽電池封止材(特に好ましくはシート状)を用いる。
【0097】
一般的にシリコン結晶系太陽電池モジュールは、まず、受光面であるカバーガラスの上にシート状の封止材(多くは、エチレン−酢酸ビニル共重合体を熱ラジカル開始剤で、熱硬化型にしたもの)を載せる。本発明では、ここで用いられる封止材に代えて、本発明の波長変換型太陽電池封止材を用いる。
【0098】
次に、タブ線で接続されたセルを載せ、さらにシート状の封止材(ただし本発明では、受光面側のみで波長変換型太陽電池封止材を用いればよく、この裏面に関しては、従来のものでも構わない)を載せ、さらにバックシートを載せて、太陽電池モジュール専用の真空加圧ラミネータを用いてモジュールとする。
【0099】
このとき、ラミネータの熱板温度は、封止材が軟化、溶融し、セルを包み込み、さらに硬化するのに必要な温度となっており、通常、120〜180℃、多くは、140〜160℃でこれらの物理変化、化学変化が起こるように設計されている。
【0100】
本発明の波長変換型太陽電池封止材は、太陽モジュールとする前の状態のもの、具体的には硬化性樹脂を用いた場合は、半硬化状態をいう。なお、半硬化状態の波長変換型太陽電池封止材と、硬化した後(太陽モジュール化した後)の波長変換型太陽電池封止材との屈折率は大きくは変わらない。
【実施例】
【0101】
以下に、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0102】
(実施例1)
<蛍光物質の合成>
<P3PyP〔1−フェニル−3−(3−ピリジル)−1,3−プロパンジオン〕の合成>
水素化ナトリウム1.92g(0.08mol)を秤取し、窒素雰囲気下、脱水テトラヒドロフラン45.0mlを加えた。激しく攪拌しながら、アセトフェノン4.81g(0.04mol)及びニコチン酸メチル6.58g(0.048mol)を脱水テトラヒドロフラン50.0mlに溶解させた溶液を1時間かけて滴下した。その後、窒素気流下8時間還流させた。これを室温(25℃、以下同様)に戻し、純水20.0gを加え、更に3N塩酸14.0mlを加えた。有機層を分離し、減圧下で濃縮した。濃縮物を再結晶し、P3PyPを6.20g(収率69%)得た。
【0103】
<Eu(P3PyP)の合成>
上記のように合成したP3PyP 504.6mg(2.24mmol)をメタノール25.0gに分散させた。この分散液に、水酸化ナトリウム112.0mg(2.80mmol)をメタノール10.0gに溶解させた溶液を加え、1時間攪拌した。
次いで、256.5mg(0.7mmol)の塩化ユーロピウム(III)6水和物をメタノール5.0gに溶解した溶液を滴下した。室温で1時間、油浴中(60℃)にて2時間攪拌した後、生成した沈殿物を吸引濾過し、メタノールにて洗浄した。乾燥することでEu(P3PyP)を得た。
【0104】
<球状蛍光体の作製>
上記の蛍光物質Eu(P3PyP) 16.5mg(0.04mmol、対モノマー0.05質量%)、1,10−フェナントロリン(Phen)9.0mg(0.10mmol)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) (V−65)214.3mg(0.86mmol)をジシクロペンタニルメタクリレート(FA−513M、日立化成工業株式会社製)4.29g、メタクリル酸メチル(MMA)33.86g、ジエチレングリコールジメタクリレート(FA−121M、日立化成工業株式会社製)4.29g、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジニルメタクリレート(FA−711MM、日立化成工業株式会社製)0.43gを秤取し、この溶液をミックスローターにて攪拌混合した。
【0105】
上記で得られたモノマー溶液を、ポリビニルアルコール0.42gを含んだ300.00gの水溶液に投入した。この懸濁液を、攪拌羽根にて350rpmで攪拌しながら、室温にて窒素バブリングした後、窒素気流下、50℃に昇温後、4時間この温度で重合した。その後、残存するラジカル開始剤を消失させる為に、さらに、80℃に昇温し、2時間攪拌し反応を完結させて、室温に戻した。生成した球状蛍光体を濾別し、純水で充分に洗浄した後、60℃で乾燥して、球状蛍光体を得た。
【0106】
(実施例2)
実施例1と同様の方法で、但し、FA−513Mの添加量を12.86g、MMAの添加量を25.29gに変えて、球状蛍光体を得た。
【0107】
(実施例3)
実施例1と同様の方法で、但し、FA−513Mの添加量を17.14g、MMAの添加量を21.00gに変えて、球状蛍光体を得た。
【0108】
(実施例4)
実施例1と同様の方法で、但し、FA−513Mの添加量を33.86g、MMAの添加量を4.29gに変えて、球状蛍光体を得た。
【0109】
(実施例5)
実施例1と同様の方法で、但し、FA−513Mの添加量を38.14gに変えて、MMAの添加を無しにして、球状蛍光体を得た。
【0110】
(実施例6)
実施例1と同様の方法で、但し、FA−513Mに変えて、イソボニルメタクリレート(IB−X、共栄社化学株式会社製)を12.86g添加して、MMAの添加量を25.29gに変えて、球状蛍光体を得た。
【0111】
(実施例7)
実施例1と同様の方法で、但し、FA−513Mに変えて、シクロヘキシルメタクリレート(CH、共栄社化学株式会社製)を12.86g添加して、MMAの添加量を25.29gに変えて、球状蛍光体を得た。
【0112】
(実施例8)
実施例1と同様の方法で、但し、FA−513Mに変えて、t−ブチルシクロヘキシルメタクリレート(TBCHMA、日油株式会社製)を12.86g添加して、MMAの添加量を25.29gに変えて、球状蛍光体を得た。
【0113】
(実施例9)
実施例1と同様の方法で、但し、FA−513Mに変えて、ジシクロペンタニルアクリレート(FA−513A、日立化成工業株式会社製)を12.86g添加して、MMAの添加量を25.29gに変えて、球状蛍光体を得た。
【0114】
(実施例10)
<蛍光物質の合成>
<FTP〔1−(4−フルオロフェニル)−3−(2−チエニル)−1,3−プロパンジオン〕の合成>
水素化ナトリウム0.96g(0.04mol)を秤取し、窒素雰囲気下、脱水テトラヒドロフラン22.5mlを加えた。激しく攪拌しながら、2−アセチルチオフェン2.52g(0.02mol)及び4−フルオロ安息香酸メチル3.70g(0.024mol)を脱水テトラヒドロフラン12.5mlに溶解させた溶液を1時間かけて滴下した。その後、窒素気流下8時間還流させた。これを室温(25℃)に戻し、純水10.0gを加え、更に3N塩酸5.0mlを加えた。有機層を分離し、減圧下で濃縮した。濃縮物を再結晶し、FTPを2.83g(収率57%)得た。
【0115】
<Eu(FTP)3Phenの合成>
上記のように合成したFTP556.1mg(2.24mmol)、1,10−フェナントロリン(Phen)151.4mg(0.84mmol)をメタノール25.0gに分散させた。この分散液に、水酸化ナトリウム112.0mg(2.80mmol)をメタノール10.0gに溶解させた溶液を加え、1時間攪拌した。
次いで、256.5mg(0.7mmol)の塩化ユーロピウム(III)6水和物をメタノール5.0gに溶解した溶液を滴下した。室温で2時間攪拌した後、生成した沈殿物を吸引濾過し、メタノールにて洗浄した。乾燥することでEu(FTP)3Phenを得た。
【0116】
<球状蛍光体の作製>
上記の蛍光物質Eu(FTP)Phen 21.5mg(0.04mmol、対モノマー0.05質量%)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) (V−65)214.3mg(0.86mmol)、FA−513M 38.14g、FA−121M 4.29g、FA−711MM 0.43gを秤取し、この溶液をミックスローターにて攪拌混合した。
【0117】
上記で得られたモノマー溶液を、ポリビニルアルコール0.42gを含んだ300.00gの水溶液に投入した。この懸濁液を、攪拌羽根にて350rpmで攪拌しながら、室温にて窒素バブリングした後、窒素気流下、50℃に昇温後、4時間この温度で重合した。その後、残存するラジカル開始剤を消失させる為に、さらに、80℃に昇温し、2時間攪拌し反応を完結させて、室温に戻した。生成した球状蛍光体を濾別し、純水で充分に洗浄した後、60℃で乾燥して、Eu(FTP)Phenを含有する球状蛍光体を得た。
【0118】
(実施例11)
実施例11と同様の方法で、但し、FA−513Mの添加量を17.14gに変えて、MMAを21.00g添加して、球状蛍光体を得た。
【0119】
(実施例12)
<蛍光物質の合成>
<3Py2TP〔1−(3−ピリジル)−3−(2−チエニル)−1,3−プロパンジオン〕の合成>
水素化ナトリウム1.92g(0.08mol)を秤取し、窒素雰囲気下、脱水テトラヒドロフラン45.0mlを加えた。激しく攪拌しながら、2−アセチルチオフェン5.05g(0.04mol)及びニコチン酸メチル6.58g(0.048mol)を脱水テトラヒドロフラン50.0mlに溶解させた溶液を1時間かけて滴下した。その後、窒素気流下8時間還流させた。これを室温(25℃)に戻し、純水20.0gを加え、更に3N塩酸16.0mlを加えた。有機層を分離し、減圧下で濃縮した。濃縮物を再結晶し、3Py2TPを7.10g(収率77%)得た。
【0120】
<Eu(3Py2TP)の合成>
上記のように合成した3Py2TP518.1mg(2.24mmol)をメタノール25.0gに分散させた。この分散液に、水酸化ナトリウム112.0mg(2.80mmol)をメタノール10.0gに溶解させた溶液を加え、1時間攪拌した。
次いで、256.5mg(0.7mmol)の塩化ユーロピウム(III)6水和物をメタノール5.0gに溶解した溶液を滴下した。室温で1時間、油浴中(60℃)にて2時間攪拌した後、生成した沈殿物を吸引濾過し、メタノールにて洗浄した。乾燥することでEu(3Py2TP)を得た。
【0121】
<球状蛍光体の作製>
上記の蛍光物質Eu(3Py2TP) 16.9mg(0.04mmol、対モノマー0.05質量%)、Phen 9.0mg(0.10mmol)、V−65 214.3mg(0.86mmol)、FA−513M 38.14g、FA−121M 4.29g、FA−711MM 0.43gを秤取し、この溶液をミックスローターにて攪拌混合した。
【0122】
上記で得られたモノマー溶液を、上記実施例11と同様の方法にて、蛍光物質Eu(3Py2TP)Phenを含有する球状蛍光体を得た。
【0123】
(比較例1)
実施例1の<球状蛍光体の作製>において、FA−513Mに代え、MMAを用いて作製したこと以外は、実施例1と同様にして球状蛍光体を作製した。
【0124】
(比較例2)
実施例11の<球状蛍光体の作製>において、FA−513Mに代え、MMAを用いて作製したこと以外は、実施例11と同様にして球状蛍光体を作製した。
【0125】
(比較例3)
実施例13の<球状蛍光体の作製>において、FA−513Mに代え、MMAを用いて作製したこと以外は、実施例13と同様にして球状蛍光体を作製した。
【0126】
<球状蛍光体特性(発光量子効率、発光強度)評価>
測定は、発光量子効率測定装置として、システムエンジニアリング株式会社QEMS−2000を用いて実施した。試料に405nmの励起光を照射し、試料のフォトルミネッセンスにより放出されたフォトン数の合計を、試料によって吸収された励起光のフォトン数の合計で割った値として、発光量子効率を測定した。また、その発光スペクトルより積分区間550nm〜750nmでのフォトン数の合計を発光強度とした。
【0127】
【表1】

【0128】
【表2】

【0129】
【表3】

【0130】
表1及び2に示されるように、脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体を、透明樹脂中に含有させることによって、球状蛍光体の発光量子効率、並びに発光強度が向上していることが分かる。
また、表3より、蛍光物質を変更した場合においても、球状蛍光体の特性が向上していることが分かる。
【0131】
<波長変換型太陽電池封止材用樹脂組成物の調製>
透明封止樹脂(分散媒樹脂)として東ソー株式会社製のエチレン−酢酸ビニル樹脂、ウルトラセン634を100g、アルケマ吉富株式会社製の過酸化物熱ラジカル開始剤を用い、ルペロックス101を1.3g、日本化成株式会社製の架橋剤、TAIC(トリアリルイソシアネート)を2.00g、東レ・ダウコーニング株式会社製のシランカップリング剤、SZ6030を0.5g、および実施例1の球状蛍光体を3.00g含む混合物を、90℃に調整したロールミキサで混練し、波長変換型太陽電池封止材用樹脂組成物を得た。
【0132】
<波長変換型太陽電池封止材シートの作製>
上記で得られた波長変換型太陽電池封止材用樹脂組成物を約30g、離型シートに挟み、0.6mm厚ステンレス製スペーサーを用い、熱板を90℃に調整したプレスを用い、シート状にした。得られたシート状の波長変換型太陽電池封止材の屈折率は1.5であった。
【0133】
<裏面用太陽電池封止材シートの作製>
上記、波長変換型太陽電池封止材シートの作製において、波長変換型太陽電池封止材用樹脂組成物の代わりに、球状蛍光体を含まない他は上記と同様にして調製した樹脂組成物を用いて、上記と同様の方法で裏面用太陽電池封止材シートを作製した。
【0134】
<波長変換型太陽電池モジュールの作製>
保護ガラスとしての強化硝子(旭硝子株式会社製、屈折率1.5)の上に、上記波長変換型太陽電池封止材シートを載せ、その上に、起電力を外部に取り出せるようにした太陽電池セルを受光面が下になるように載せ、さらに裏面用太陽電池封止材シート、バックフィルムとしてPETフィルム(東洋紡株式会社製、商品名:A−4300)を載せ、真空ラミネータを用いて、ラミネートして、波長変換型太陽電池モジュールを作製した。
尚、用いた太陽電池セルには屈折率1.9のセル反射防止膜が形成されている。
【0135】
<太陽電池特性の評価>
擬似太陽光線として、ソーラーシミュレータ(ワコム電創社製、WXS−155S−10、AM1.5G)を用い、電流電圧特性をI−Vカーブトレーサー(英弘精機社製、MP−160)を用いて、JIS−C8914に準拠して、モジュール封止前のセルの状態の短絡電流密度Jscと、モジュール封止後の短絡電流密度Jscとを、それぞれ測定し、その差(ΔJsc)をとって評価した。その結果、ΔJscは0.478mA/cmであった。
【0136】
<発光高温高湿耐性の評価>
上記<波長変換型太陽電池モジュールの作製>と同様な方法で、保護ガラスとして5cm×10cm×1mmの青板ガラスを用いて、その上に上記波長変換型太陽電池封止材シートを載せ、バックフィルムとしてPETフィルム(東洋紡株式会社製、商品名:A−4300)を載せ、真空ラミネータを用いて、ラミネートし、これを試験片とした。
アズワン株式会社製ハンディーUVランプSLUV−4を用いて365nmの光をこの試験片に照射し、赤色発光の有無を観察した。さらにこの試験片を85℃、85%相対湿度に調整された恒温恒湿槽に入れ、適当な時間をおいて、上記と同様にして赤色発光の有無を観察した。その結果、2500時間まで発光が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光物質と、透明材料と、を含有する球状蛍光体において、前記透明材料が、ビニル化合物含有組成物を懸濁重合し球状としたものであり、さらに前記ビニル化合物含有組成物が、脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸誘導体を含有することを特徴とする球状蛍光体。
【請求項2】
蛍光物質が、有機蛍光体又は希土類金属錯体である請求項1に記載の球状蛍光体。
【請求項3】
蛍光物質が、希土類金属錯体である請求項1に記載の球状蛍光体。
【請求項4】
蛍光物質が、ユーロピウム錯体である請求項3に記載の球状蛍光体。
【請求項5】
ビニル化合物含有組成物のビニル化合物が、(メタ)アクリル酸系誘導体を懸濁重合して得られる樹脂である請求項1〜4のいずれかに記載の球状蛍光体。
【請求項6】
透明材料の屈折率が、前記蛍光物質よりも低く、1.4以上である請求項1〜5のいずれかに記載の球状蛍光体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の球状蛍光体と、封止樹脂と、を含む光透過性の樹脂組成物層を備える波長変換型太陽電池封止材。
【請求項8】
樹脂組成物層中の球状蛍光体の含有率が、0.0001〜10質量%である請求項7に記載の波長変換型太陽電池封止材。
【請求項9】
樹脂組成物層以外の光透過性層をさらに備える請求項7または8に記載の波長変換型太陽電池封止材。
【請求項10】
樹脂組成物層および前記樹脂組成物層以外の光透過性層からなるm個の層を備え、且つ、前記m個の層のそれぞれの屈折率を、光入射側から順にn、n、・・・、n(m−1)、nとした場合に、n≦n≦・・・≦n(m−1)≦nの関係を満たす請求項9に記載の波長変換型太陽電池封止材。
【請求項11】
太陽電池セルと、前記太陽電池セルの受光面上に配置された請求項7〜10のいずれかに記載の波長変換型太陽電池封止材と、を備える太陽電池モジュール。
【請求項12】
蛍光物質、ビニルモノマー及び、前記蛍光物質と配位可能な配位化合物が溶解または分散された組成物を、懸濁重合する工程を有する請求項1〜6のいずれかに記載の球状蛍光体の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜6のいずれかに記載の球状蛍光体を準備する工程と、前記球状蛍光体を封止樹脂に混合または分散させた樹脂組成物を調製する工程と、前記樹脂組成物をシート状に形成し、光透過性の樹脂組成物層を作製する工程と、を有する波長変換型太陽電池封止材の製造方法。
【請求項14】
請求項7〜10のいずれかに記載の波長変換型太陽電池封止材を準備する工程と、前記波長変換型太陽電池封止材を太陽電池セルの受光面側に配置する工程と、を有する太陽電池モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−87243(P2013−87243A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230641(P2011−230641)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】