説明

球状ICタグ

【課題】中空の球状容器内部に少なくとも半導体チップ及びループ状アンテナを備えるICタグを収容する球状ICタグにおいて、リーダライタとなす角度によって無線通信特性がばらつく問題を解消する。
【解決手段】球状ICタグ10は、ループ状アンテナ11面が重力方向に対し一定の角度をなすように中空容器17内で回動する機構を備え、回動する機構は、底面に錘を有するICタグが中空容器17内に収容した液体18の液面に浮遊し、前記液面が重力方向に対し垂直となる効果を利用したもの、もしくはジャイロ機構である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信頼性の高い無線通信が可能なICタグ、特に球状のICタグに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁場の交流磁界成分に基づく電磁誘導効果を利用して、物品等の識別管理を行うRFID(Radio Frequency identification)システムによる物品管理方式が、多くの分野で活用されている。従来から多用されてきたバーコード管理に比べて、格納できるデータ量が多く、データの書き換え及び追加が可能な点で優れている。このRFID管理方式では、ICタグと呼ばれるトランスポンダと、これと機能上の対をなすリーダライタとを基本的な構成要素としており、ICタグ自体は、半導体チップとこれに接続されたループ状アンテナから構成されている。
【0003】
半導体チップは、リーダライタ間の無線通信制御とメモリー内のデータ管理を担い、一方、ループ状アンテナには、リーダライタからの交流磁界によってアンテナに誘導される電力を半導体チップに供給する役割と情報を送受信するという機能がある。
【0004】
上記基本構成を有するICタグは、適用される用途に応じて種々の形状の物体内部に埋設して使用されており、例えば、シート状、カード状、コイン状などの平面形状、あるいは球状、キーホルダー状などの立体的形状のものまである。
【0005】
とりわけ、球状のICタグは、多数の物品とともに容器内に収容され、当該容器内の物品の出所識別及び流通管理情報の記録に利用される一方、その形状の特殊性からゲーム娯楽用のボール内部に収容されて使用されている。ICタグの無線通信機能を用いてボールの軌跡をトレースすることで、球技の進行管理ないしは勝敗を電子的に判別するために活用され、特に、球技は多様性に富むこともあって、球状ICタグの格好の適用分野となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
たとえば、プラスチック製のゴルフボールの内部には、図2(a)に示すように、中心部に半導体チップ12と、これに電気的に接続するループ状のアンテナ11を備えるICタグが収容され、リーダライタと無線通信することで、たとえばゴルフボールの位置情報、ホールへの落下情報がリーダライタを介して取得できる。この方式はゴルフボール以外にも、ボーリングゲーム、ビリヤードゲームなど各種のゲームに広く適用されている。
【特許文献1】特許第3925354号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、図2(a)で示す従来型の球状ICタグにあっては、ループ状のアンテナ11は主として製造上の理由で平面的であるために、リーダライタとの無線通信性能が安定しないという問題がある。というのはリーダライタとの無線通信特性は、リーダライタから放射される電磁場の交流磁場成分がループ状アンテナのループ内部を貫通する磁束量によって決まり、これはループ状アンテナとリーダライタの距離及びアンテナ面同士のなす角度に依存するからである。ボールが回転する場合のように、なす角度が時間的に変動する場合には、ループ状アンテナに誘起される電力も変動し、無線通信特性もそれに応じて変動する。
【0008】
この角度変化に対する対策として、平面ループ状アンテナ11を、図2(b)で示すよう
な8の字様に捻れた立体形状のアンテナにする技術が開示されている(特許文献1参照)。このような形状とすることでリーダライタからの交流磁場の方向とループ状アンテナの交差角度は、ある有限の角度が保証されることになる。この方法によって、球状体内部に複数のアンテナを配置するという煩わしさはなく、無線通信上の死角の問題についても一定の改善はなされたが、単に8の字形状にするだけでは、リーダライタとなす角度によって無線通信特性がばらつくという問題が依然として残っていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、この状況に鑑みてなされたもので、請求項1の発明は、中空の球状容器内部に、少なくとも半導体チップ及びループ状アンテナを備えるICタグを収容する球状ICタグにおいて、前記球状ICタグは、前記ICタグのループ状アンテナ面が重力方向に対し垂直となるように前記中空容器内で回動する機構を備えたことを特徴とする球状ICタグである。
【0010】
この構成であると、球状容器の内側でループ状アンテナ面は回転可動となるため、重力方向に対しループ状アンテナ面が同じ姿勢を維持できるようになる。
【0011】
請求項2の発明は、前記回動する機構が、底面に錘を有するICタグが中空容器内に収容した液体の液面に浮遊し、前記液面が重力方向に対し垂直となる効果を利用したのであることを特徴とする請求項1記載の球状ICタグである。
【0012】
請求項3の発明は、前記回動する機構が、ジャイロ機構であることを特徴とする球状ICタグである。
【0013】
上記二つの発明は、ICタグの姿勢維持の方法として、2種類を選択したものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ICタグのループ状アンテナ面は重力の作用により、重力方向に対し常に一定の姿勢をとることになる。その姿勢で無線通信するのに好適な範囲にリーダライターを設置することで、球状ICタグがどのように傾こうとアンテナ面はリーダライターと同じ角度をなすため、死角がなくなり安定した無線通信が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、発明の実施の形態の一例を図面1及び同2を使用して説明する。
【0016】
図1(a)は、本発明になる球状ICタグの内部構成の一例を模式的に示すものである。球状体17はプラスチックのモールド成型体あるいはゴム等からなる密閉空間をなし、容積の半分程度が絶縁性液体18で満たされ、その液面中央付近に、半導体チップ12が保持されループ状アンテナ11(以下、単にアンテナと記す)が形成されたICタグ(基板)が浮遊している様子を示すものである。絶縁性液体18としては石油系オイル、シリコンオイルなどから選択するが、ICタグの重量と容積を考慮してICタグが十分な浮力を得るように、また球内を速やかに容易に動けるように密度と粘度から最適な液体を決める。ICタグ(基板)の裏面には錘(図示せず)が固着しており、これが重力方向を規定することになる。
【0017】
以上の構成であるので、球状体が回転しても液面は常に重力方向に垂直であるので、ICタグは錘を下向きにした状態で液面にアンテナ11面を平行にして浮遊することになる。したがって、アンテナ面はリーダライタとは常に有限の交差角度を維持するので無線通信性能が回転によって大きく変動することがない。
【0018】
別の姿勢制御法としてジャイロ機構を採用した。ICタグに好適なジャイロ機構の一例を図1(b)に示す。これは直径方向を回転軸として自転可能なリング二つを組み合わせて球状体内部(図示せず)に固定したもので、球がどの方向へ傾いても、中央のアンテナ11面が重力方向と一定角度をなすようにしたものである。内側の第1のリング15は、リング支持棒16が外側の第2のリング14をガイドとして該リングに沿って移動可能なため、第2のリング15の中心を軸として回動可能である。且つ第1のリング15は、リング支持棒16を軸として回動することもできる。
【0019】
この構成であると、球がどのように傾こうと、ICタグには錘19が連結してあるのでこれが常に重力方向を向くように作用する結果。アンテナ11面は重力方向に対し同じ姿勢をとることになる。したがって、アンテナ11面とリーダライタのなす交差角度は常に同じになる。アンテナ面と重力方向のなす角度は、一般に90度の垂直とするが必ずしもこれに限定される必要はない
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明になる球状ICタグの内部構造を模式的に説明する断面斜視図。(a)液体表面にICタグを浮遊させる型。(b)ジャイロ機構を採用した一例。
【図2】従来型の球状ICタグの構成を模式的に説明する断面斜視図。(a)平面状ループ状アンテナ、(b)8の字状アンテナ。
【符号の説明】
【0021】
10・・・・球状ICタグ
11・・・・(ループ)アンテナ
12・・・・半導体チップ
13・・・・8の字状ループ状アンテナ
14・・・・第2のリング
15・・・・第1のリング
16・・・・支持棒
17・・・・球状体
18・・・・液体
19・・・・錘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の球状容器内部に、少なくとも半導体チップ及びループ状アンテナを備えるICタグを収容する球状ICタグにおいて、前記球状ICタグは前記ICタグのループ状アンテナ面が重力方向に対し一定の角度をなすように前記中空容器内で回動する機構を備えたことを特徴とする球状ICタグ。
【請求項2】
前記回動する機構が、底面に錘を有するICタグが中空容器内に収容した液体の液面に浮遊し、前記液面が重力方向に対し垂直となる効果を利用したのであることを特徴とする請求項1に記載の球状ICタグ。
【請求項3】
前記回動する機構が、ジャイロ機構であることを特徴とする請求項1に記載の球状ICタグ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−230491(P2009−230491A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75378(P2008−75378)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】