説明

球転がし用パネルおよび球転がし遊具

【課題】乳幼児の視力や記憶力等を発達させることができる球転がし用パネルおよび球転がし遊具を提供する。
【解決手段】球転がし用パネル10は、パネル10の表面11aに設けられた第1球転がし用通路21〜23と、パネルの裏面11bに設けられ、第1球転がし通路21〜23からの球を転がす第2球転がし通路24〜26と、パネルの表面11a側に設けられ、第2球転がし通路24〜26からの球を転がす第3球転がし通路27〜29とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は球転がし用パネルおよび球転がし遊具に関し、特に、乳幼児の知的発達を促す球転がし用パネルおよび球転がし遊具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、知的玩具としても使用され、かつ、幼児の成長とともに使用形態を変化させる遊具としても使用できる幼児用椅子が、たとえば、特開平8−33539号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
同公報によれば、幼児に最初は積木として与えたブロックを収納する収納箱として使用し、幼児が遊ばなくなった後は幼児用の机や椅子の脚として用い、さらに脚にブロックを継ぎ足すことによって幼児の成長に合わせて机や椅子の高さを変えることができる、幼児用椅子を開示している。
【特許文献1】特開平8−33539号公報(要約等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乳幼児の発達段階に応じた使用ができる収納容器としては上記のようなものがあった。上記のような遊具であれば、ブロックを用いて知的な能力の訓練が可能である。しかしながら、乳幼児の他の能力も合わせてバランスよく発達させるのが好ましいが、従来の遊具では、ブロックを用いた形状の認識能力の訓練しかできなかった。
【0005】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、乳幼児の視力や記憶力等を発達させることができる球転がし用パネルおよび球転がし用パネルを含む立方体遊具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
まず、この発明の原理について説明する。動いているものを連続的に追える能力である「追視」能力は、新生児にも見られる。そして、これは次第に滑らかになり、追視できる速度もだんだん速くなる。追視するものの運動と眼球運動の時間的遅れは、1ヶ月児で200m秒、2〜3ヶ月で100m秒未満、5ヶ月児になると、予測して物を見ることができるようになり、すなわち物の運動より先を見ることができるようになると報告されている。
【0007】
また、記憶には、いつ何をしていた、のようなエピソード記憶、信号機の色、言語といった意味記憶、靴の履き方、エレベータの押しボタンといった手続き記憶などといった記憶のほかに、ワーキングメモリという間近なことを覚えておく記憶がある。たとえば、一度視覚に入ったものが隠れて反対側や別のところから出てくるであろうことを予測する能力である。発明者らは、この追視能力やワーキングメモリ能力を訓練できるということに着目して、この訓練用のパネルを発明した。
【0008】
この発明に係る球転がし用パネルは、パネルの一方面に設けられた第1球転がし用通路と、パネルの他方面に設けられ、第1球転がし通路からの球を転がす第2球転がし通路と、パネルの一方面側に設けられ、第2球転がし通路からの球を転がす第3球転がし通路とを含む。
【0009】
パネルの一方面に設けられた球転がし通路から球を転がすと、一旦パネルの他方面に行くため見失うが、しばらくすると、再度、最初の面側の球転がし通路に現れる。乳幼児はこの動作を見ることによって、追視能力、および、ワーキングメモリを発達させることができる。
【0010】
好ましくは、第2球転がし通路における球の転がり時間を制御する制御部材を含む。
【0011】
さらに好ましくは、球転がし用パネルに設けられる球転がし通路の総数は奇数である。
【0012】
この発明の他の局面においては、球転がし遊具は、上記した球転がし用パネルを一面として含む六面を有する。
【0013】
好ましくは、立方体の球転がし用パネルが設けられていない面、およびその対向面には、両面を貫通する貫通孔が設けられている。
【0014】
さらに好ましくは、貫通孔は、貫通孔が設けられる対向する面のそれぞれの一辺の中央部を通るように設けられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。図1はこの発明の一実施形態における、球転がし用パネルを示す図である。図1(A)は全体構成を示す斜視図であり、図1(B)は図1(A)において、矢印B-Bから見た、球転がし用パネルの一方面の正面図であり、図1(C)は1(A)において、矢印C方向から見た、球転がし用パネルの側面図である。図1を参照して、球転がし用パネル10は、パネル本体11とパネル本体11を支持するサポート12とを含む。なお、パネル本体11の手前側を表面側11aとよび、その反対側を裏面側11bとよぶ。パネル本体11には開口14,15,16,17が上から下に向かってジグザグ状に設けられている。開口14には、その下端部を中心に図中矢印(図1(A))で示す方向に開閉可能な開口板21が設けられている。図1(A)においては、この開口板21が開いた状態を示す。また、開口板21にはその上に球を載置可能な円形状の溝21aが設けられている。開口15には、その下端部を中心に図中矢印(図1(C))で示すように、相互に反対方向に開閉可能な開口板23,24とが設けられている。同様に、開口16には、その下端部を中心に図中矢印で示すように相互に反対方向に開閉可能な開口板26,27が設けられ、開口17には、その下端部を中心に図中で示す方向に開閉可能な開口板29が設けられている。なお、開口板23,24が水平に開かれたとき、開口板23,24で構成される面は平面となる。この場合、多少開口板23から開口板24側へ傾斜がついているのが好ましい。開口板26,27についても同様である。パネル本体11の表面11aには、開口板21,23,27,29が開かれて水平になったとき、開口板21と開口板23、および、開口板27と開口板29とをそれぞれ接続する傾斜板22、28が設けられている。同様に、パネル本体11の裏面11bには、開口板24,26が開かれて水平になったとき、開口板24と開口板26とを接続する傾斜板25が設けられている。それぞれの開口板および傾斜板21〜29の中央部には、その上に球30が位置したときに、その球30を保持、またはガイドするための凹部または溝21a〜29aが設けられている。そのため、図1(B)に示すように、球30を一番上の開口板21の凹部21aに載置して、そこから球を傾斜板22に押すと、球は傾斜板22、開口板23,24、傾斜板25、開口板26,27、傾斜板28を経て最下部の開口板29の凹部29aまで転がる。
【0016】
なお、開口板21、傾斜板22および開口板23が第1球転がし用通路を形成し、開口板24、傾斜板25および開口板26が第2球転がし用通路を形成し、開口板27、傾斜板28および開口板29が第3球転がし用通路を形成する。
【0017】
図2は開口14に設けられた開口板21の取り付け状態を示す図である。図2を参照して、開口板21は開口14の下部に設けられた軸21bを中心として図中矢印で示すように回動可能である。また、パネル本体の開口14の近傍には、開口板21が水平状態になったときに、開口板21をその位置に保持するためのストッパ18が設けられている。なお、他の開口についても同様である。
【0018】
乳幼児はこの球転がし用パネルの表面11a側で球を一番上の開口板21におき、そこから傾斜板に沿って球を転がす。球は傾斜板22を転がって、開口板23,24を経て裏面11b側に行く。その後、傾斜板25、開口板26,27を経て、再度表面11a側に現れて、傾斜板28に沿って転がり、最終的に開口板29上で停止する。
【0019】
乳幼児は、当初は、手前側で球が転がっているうちは球に興味を持つが、球が裏側へ行って見えなくなると興味を示さなくなる。そして、他のあそびに入ってしまう。しかしながら、そのうちに、球が再び表面側に現れることに気が付いて、それを待つようになる。このようにして、乳幼児の、動いているものを連続的に追う能力である「追視」を訓練できる。
【0020】
なお、球が裏面側へ消えた後に、再び表面側に現れるまでの時間を調整できるように制御部材を設けてもよい。このようにすれば、その時間を調整することによって、よりきめの細かい「追視」の訓練が可能になる。この制御部材としては、裏面側の傾斜板25の角度を可変にする角度調整製部材とか、傾斜板25のガイド溝25aに貼り付ける摩擦係数の大きな部材であってもよい。また、球の大きさや重さや材質や表面形状を変えてもよい。
【0021】
また、この構成を用いて、一度隠れて見えなくなったものが反対側や別のところから出てくるであろうことを予測し、覚えておく時間である、ワーキングメモリの訓練に用いてもよい。
【0022】
なお、上記実施の形態においては、開口板を開口から開閉自在に設けたが、これに限らず、開口板は水平に固定されていてもよい。
【0023】
また、上記実施の形態においては、傾斜板は固定されている場合について説明したが、これに限らず、傾斜板もパネル本体に対して開閉自在に設けてもよい。
【0024】
次にこの発明の他の実施の形態について説明する。図3および図4はこの発明の他の実施の形態を示す図である。図3(A)はこの実施の形態における球転がしパネル50の全体構成を示す斜視図であり、図3(B)は図3(A)において、矢印B方向から見た、球転がし用パネルの表面51a側の正面図であり、図3(C)はその反対側の矢印C方向から見た裏面51b側の正面図であり、図4は、図3(A)においてIVで示す方向から見た側面図である。図3および図4を参照して、この実施の形態においては、球転がし用パネル50には先の実施の形態と同様に4つの開口54〜57が設けられている。そのうち、一番上の開口54と、一番下の開口57のみに通常は開口54,57を塞ぐ壁であるが、使用時に図中矢印方向に回動されることによって水平となる開口板61,71が設けられている。開口板61に連続する、表面51a側の板62、傾斜板63、開口板64,65、傾斜板66,開口板67,68、傾斜板69、開口板70は、図示のように固定されている。これらの点以外については、先の実施の形態と基本的に同様である。したがって、各板の中央部には先の実施の形態と同様に溝61a〜71aが設けられている。また、開口板61,71の取り付け状態は図2と同様である。
【0025】
この実施の形態において、表面51a側で遊ぶ時は、開口板61,71は開口54,57を閉じる壁となる。この状態が図3(B)である。この場合、乳幼児は上記した実施の形態と同様の遊びができる。
【0026】
この実施の形態において、裏面51b側で遊ぶ時は、開口板61,71が水平状態にある。この状態が図3(C)である。この場合、乳幼児は、まず開口54に球があることを認識するが、球が動き出すと、それが表面51a側に移動するため、消えてしまう。しばらくすると、開口55に現れて傾斜板66を経て開口56で再度消える。その後しばらくすると、再度開口57の開口板71上に現れる。この場合の球の動きは、表面側のものと全く異なるため、乳幼児は興味を持って両面を使って遊びながら、「追視」や「ワーキングメモリ」の訓練が可能になる。
【0027】
次に、この発明のさらに他の実施の形態について説明する。図5はこの発明の他の実施の形態を示す、球転がし用パネルを含む球転がし遊具の斜視図である。図5を参照して、球転がし遊具40は立方体の遊具であって、その一つの面に上記した球転がし用パネル10が設けられている。なお、ここでは、図3および図4に示すように、開口板および傾斜板は固定されているとともに、開口板に沿って縦方向のガイド板が設けられていてもよい。
【0028】
また、この遊具40の球転がし用パネルの設けられていない面は全て板等で覆われているのが好ましい。そのうちの一組の対向する面41,42にはその一つの辺43の中央部に半円形状の開口部44が設けられている。したがって、球45をこの開口部44から転がすと、図示のない反対側の開口部から現れる。その結果、この立体遊具の開口部44を用いて、球転がし用パネルと同様の乳幼児の目の訓練が可能になる。
【0029】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の一実施形態における球転がし用パネルを示す図である。
【図2】開口板の詳細を示す図である。
【図3】この発明の他の実施形態における球転がし用パネルを示す図である。
【図4】他の実施の形態に係る球転がし用パネルの側面図である。
【図5】球転がし用パネルを一面に含む立体遊具の斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
10,50 球転がし用パネル、11 パネル本体、12 サポート、14,15,16,17 開口、21、23,24,26,27,29 開口板、22,25,28 傾斜板、30 球、40 球転がし遊具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球転がし用パネルであって、
前記パネルの一方面に設けられた第1球転がし用通路と、
前記パネルの他方面に設けられ、前記第1球転がし通路からの球を転がす第2球転がし通路と、
前記パネルの一方面側に設けられ、前記第2球転がし通路からの球を転がす第3球転がし通路とを含む、球転がし用パネル。
【請求項2】
前記第2球転がし通路における球の転がり時間を制御する制御部材を含む、請求項1に記載の球転がし用パネル。
【請求項3】
前記球転がし用パネルに設けられる前記球転がし通路の総数は奇数である、請求項1または2に記載の球転がし用パネル。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の球転がし用パネルを一面として含む六面を有する立方体形状の球転がし遊具。
【請求項5】
前記立方体の前記球転がし用パネルが設けられていない面、およびその対向面には、両面を貫通する貫通孔が設けられている、請求項4に記載の球転がし遊具。
【請求項6】
前記貫通孔は、前記貫通孔が設けられる対向する面のそれぞれの一辺の中央部を通るように設けられる、請求項5に記載の球転がし遊具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−34348(P2009−34348A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201289(P2007−201289)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(390006231)アップリカ育児研究会アップリカ▲葛▼西株式会社 (97)
【Fターム(参考)】