球転がし遊具
【課題】凹部の形成された盤面上で球を転がして遊ぶための遊具であって、球が盤面を時間をかけて転がること、球の進路がプレイヤーの想定外に変化すること、及び球の静止位置が凹部又はその近傍であることを実現できるものを提供する。
【解決手段】球転がし遊具10は、1つ以上の球5とこの球5が転動する盤面3とを備えている。盤面3は、大凹部35と該大凹部35よりも外周側に配置された球5よりも小径の小凹部36とを有する円形平板状の収束域31と、収束域31の外周を包囲する平面視環状を成し収束域31へ向けて下る傾きを有する導入域33と、導入域33と収束域31との間を滑らかに接続する平面視環状を成し導入域33の内周縁部分と比較して大きな角度で収束域31へ向けて下る傾きを有する加速域32とを備えている。
【解決手段】球転がし遊具10は、1つ以上の球5とこの球5が転動する盤面3とを備えている。盤面3は、大凹部35と該大凹部35よりも外周側に配置された球5よりも小径の小凹部36とを有する円形平板状の収束域31と、収束域31の外周を包囲する平面視環状を成し収束域31へ向けて下る傾きを有する導入域33と、導入域33と収束域31との間を滑らかに接続する平面視環状を成し導入域33の内周縁部分と比較して大きな角度で収束域31へ向けて下る傾きを有する加速域32とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盤面上で球を転がして遊ぶことのできる遊具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、盤面上で球を転がして遊ぶことのできる遊具が知られている。このような遊具は、一般に、穴(又は孔)や特定の範囲などが形成された盤面と球とを備えている。例えば、特許文献1に記載されたボールゲーム玩具は、間隔をおいて設けられた複数の穴を有する基盤と、基盤の中央に立設された小柱体と、基盤の縁に形成された環状突縁と、基盤の穴に入るボール(球)と、環状突縁に設けられたボール転がし台とを備えている。このボールゲーム玩具は、複数の穴のそれぞれに点数が設定されており、ボール転がし台を用いて小柱体に当たるように基盤上へボールを転がし入れて、ボールが入った穴に設定された点数で得点を競う遊び方ができる。
【0003】
また、特許文献2では、2つの小孔が底部に穿設されたすり鉢部材を備えたアナログ抽選装置が示されている。これに加え、すり鉢部材に球の速度を減速させるような凹凸や、球と干渉して球の進行方向を変化させる干渉体を設けることも示されている。上記アナログ抽選装置は、小孔のうちプレイヤーにより選択された一方が当選小孔とされ、すり鉢部材の内面へ投入された球が当選小孔に入るか否かの勝負を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−101931号公報
【特許文献2】特開2004−65931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1及び特許文献2に記載された遊具は、いずれも複数のプレイヤーが得点を競って遊べるように考えられている。したがって、各プレイヤーが遊びを楽しむためには、(i)プレイヤーが楽しめる時間を長くするために、球が盤面を時間をかけて転がること、(ii)プレイヤーを飽きさせないために、球の進路がプレイヤーの想定外に変化すること、(iii)プレイヤーの集中を維持させるために、球の静止位置が穴又はその近傍であることの、上記(i)〜(iii)の要件を少なくとも満たすことがよい。
【0006】
特許文献1のボールゲーム玩具では、周縁部から盤面の略中央に向けて投入された球は、小柱体に当接して進行方向を変えて周縁部へ向かい、周縁部に設けられた穴に収まる。このボールゲーム玩具では、球は小柱体や環状突縁に当接するものの球の進路はプレイヤーの想定の範囲内である。さらに、必ずしも盤面の周囲の穴又はその近傍で球が静止するとは限らない。したがって、上記ボールゲーム玩具は、上記(ii)及び(iii)の要件を満たさない。
【0007】
また、特許文献2のアナログ抽選装置では、すり鉢状の盤面の周縁部へ投入された球は、盤面上を渦巻き状に落ちながら移動して、盤面の略中央の低い位置に設けられた小孔に収まる。このアナログ抽選装置では、球は必ずすり鉢状の盤面の底に移動するので、各投球で球の進路は似たものとなる。したがって、上記アナログ抽選装置は、上記(ii)の要件を満たさない。
【0008】
なお、上記アナログ抽選装置では、パンチングメタルのような穴の開いた板状材で盤面を形成したり、円形状の中心から半径方向に延びた複数本の溝を盤面に設けたりすることによって、盤面に凹凸が設けられている。しかし、この凹凸は、小孔へ辿り着くまでの導入過程で球の速度を減速させて時間を稼ぐためのものであって、球の進路を変化させるためのものではない。
【0009】
上記に鑑み、本発明では、プレイヤーが凹部の形成された盤面上で球を転がして球を凹部に入れて遊ぶための遊具であって、(i)球が盤面を時間をかけて転がること、(ii)球の進路がプレイヤーの想定外に変化すること、(ii)球の静止位置が凹部又はその近傍であることの、上記(i)〜(iii)の要件を少なくとも満たすものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る球転がし遊具は、円形状であって、この円の少なくとも外周部に配置された複数の小凹部、並びにこの複数の小凹部のうち最も外周側に位置するものよりも内周側に配置された1つ以上の大凹部を有する収束域と、この収束域の外周を包囲する環形状であって、収束域へ向けて下る傾きを有する導入域とが形成された盤面と、小凹部の開口よりも大きな径を有する1つ以上の球とを備えているものである。ここで、小凹部とは盤面に開口する穴、孔又は窪みなどの盤面からの凹形状部のことをいい、大凹部とは小凹部よりも大きな開口面積で盤面に開口する穴、孔又は窪みなどの盤面からの凹形状部のことをいう。
【0011】
上記構成の球転がし遊具では、小凹部の開口の径は球の径よりも小さいので、球の進路に小凹部があっても、球が十分に減速されていない場合は、球は小凹部に嵌らずに該小凹部の縁に当接して減速しつつ進路を変更する。球は大凹部からも小凹部と同様の影響を受けるが、大凹部は小凹部よりも大きい開口を有するので、小凹部と比較して球が嵌る確率が高い。上記構成の球転がし遊具を用いて、盤面の導入域に球を導入して接線方向へ向けて転がせば、球は導入域を周回しながら内周側へ移動して収束域へ至る。このように接線方向と半径方向中心向きの速度を持って収束域に入った球は、小凹部及び大凹部からの影響を受けて減速しつつその進行方向を変化させながら揺れるように移動して収束域の小凹部、大凹部又はその周辺で静止する。この球転がし遊具では、球は導入域を周回移動し、収束域でも揺れるように移動するので、球は十分な時間をかけて盤面を転がる。また、この球転がし遊具では、収束域への球の進入位置に加え収束域で小凹部及び大凹部が球へ与える影響が不確定要素となるので、球の進路はプレイヤーの想定外に変化する。したがって、球を盤面へ転がしたプレイヤーがその球の挙動をコントロールしたり静止位置を意図的に選択したりすることは難しく、高い遊技性を備えることができる。しかも、球は収束域へ接線方向と半径方向中心向きの速度を持って進入するので、球は小凹部や大凹部からの影響を受けて減速しつつ進路を変更するものの収束域の中央部へ向かい、最終的には収束域において小凹部或いは大凹部又はその近傍で静止する。以上の通り、球転がし遊具によれば、(i)球が盤面を時間をかけて転がるのでプレイヤーが楽しめる時間が長く、(ii)球の進路がプレイヤーの想定外に変化するのでプレイヤーを飽きさせることがなく、(iii)球の静止位置が凹部又はその近傍であるのでプレイヤーの集中を維持させることができる。よって、本発明に係る球転がし遊具は高い遊技性を備えることができる。
【0012】
前記球転がし遊具において、前記盤面は、前記導入域と前記収束域との間を滑らかに接続する環形状であって、導入域の内周縁部分よりも大きな傾きで収束域へ向けて下る傾きを有する加速域が形成されていることがよい。かかる構成によれば、導入域を回りながら内周側の加速域へ進入した球は、加速域で一気に半径方向中心向きへ加速され、速やかに収束域へ至る。この加速域を通過する球の動きは、まるで収束域へ吸い寄せられるかのように見え、球の動きの観察を楽しむことができる。更に、球を確実に収束域で収束させることができる。
【0013】
前記球転がし遊具において、前記導入域は、半径方向の縦断面形状に下1/4円弧部分を有することがよい。このような導入域の形状により、導入域を回転する時間を稼ぐことができる。また、導入域を回りながら該導入域の内周側に至った球は十分に減速された状態で加速域へ進入するので、まるで収束域へ吸い寄せられるかのように見える球の動きの観察を楽しむことができる。
【0014】
前記球転がし遊具において、前記大凹部の開口は前記球よりも大きな径を有することがよい。これにより、球の進路上に大凹部が存在するときこの大凹部に球が収まる確率が高くなり、大凹部と小凹部とが球に与える影響に明らかな違いを設けることができる。
【0015】
前記球転がし遊具において、前記大凹部及び前記小凹部の開口縁の角は丸められている又は面取りされていることがよい。これにより、盤面に触れるプレイヤーの手指を傷つけることがない。また、球が大凹部及び小凹部に嵌りやすく且つ脱出しやすくなる。
【0016】
前記球転がし遊具において、前記大凹部と前記小凹部は、前記収束域の全体にわたって分散していることがよい。これにより、収束域へ進入してきた球が凹部から影響を受ける率が高くなり、が凹部から影響を受けやすくなる。
【0017】
前記球転がし遊具において、前記盤面は、前記導入域の外周縁から内方へ向けて突出し、該導入域の少なくとも一部と上下に対向する返しを備えていることがよい。これにより、盤面から外方へ飛び出そうとする球を、返しに当接させて盤面内に返すことができる。
【0018】
前記球転がし遊具において、前記盤面は、前記大凹部又は前記小凹部に挿入できる基部を有する障害物を着脱可能に備えていることがよい。盤面に更なる障害物を設けることによって、盤面を転動する球の動きをより複雑なものとすることができる。また、複数のプレイヤーが球転がし遊具で遊ぶときには、他のプレイヤーが転がした球の進路を妨害するように障害物を配置して、より遊技性を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る球転がし遊具では、球は導入域を周回移動し、収束域でも揺れるように移動するので、球は十分な時間をかけて盤面を転がる。また、この球転がし遊具では、収束域への球の進入位置に加え収束域で小凹部及び大凹部が球へ与える影響が不確定要素となるので、球の進路はプレイヤーの想定外に変化する。したがって、球を盤面へ転がしたプレイヤーがその球の挙動をコントロールしたり静止位置を意図的に選択したりすることは難しい。しかも、球は収束域へ接線方向と半径方向中心向きの速度を持って進入するので、球は小凹部や大凹部からの影響を受けて減速しつつ進路を変更するものの収束域の中央部へ向かい、最終的には収束域において小凹部或いは大凹部又はその近傍で静止する。以上の通り、本発明に係る球転がし遊具は高い遊技性を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る球転がし遊具の全体的な構成を示した斜視図である。
【図2】盤の平面図である。
【図3】図2におけるIII−III断面矢視図である。
【図4】球を説明する図であり(a)は小球の図、(b)は大球の図である。
【図5】小凹部を説明する図であり(a)は平面図、(b)は側断面図である。
【図6】大凹部を説明する図であり(a)は平面図、(b)は側断面図である。
【図7】盤面上の凹部同士の関係を説明する図である。
【図8】盤面上の球の挙動の一例を説明するための盤面と球の平面図であり(a)は球の導入時、(b)は球の加速時、(c)は球の収束時をそれぞれ示している。
【図9】盤面に複数の球を転がした場合の或1つの球の軌跡の一例を示す盤面の平面図である。
【図10】凹部が球の進路に与える影響のパターンを説明するための凹部と球の側面図であり(a)は球同士が衝突する様子、(b)は球が凹部の開口縁で跳ね返る様子、(c)は球が凹部を飛び越える様子をそれぞれ示している。
【図11】凹部が球の進路に与える影響のパターンを説明するための盤面の一部と球の平面図である。
【図12】障害物としての挿し棒を挿設した凹部の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0022】
[球転がし遊具の構造]
まず、本発明の実施の形態に係る球転がし遊具の全体的な構造を説明する。図1は本発明の実施の形態に係る球転がし遊具の全体的な構成を示した斜視図、図2は盤の平面図、図3は図2におけるIII−III断面矢視図である。図1〜3に示すように、球転がし遊具10は、1つ以上の球5と、この球5が転動する上向きの盤面3が形成された盤7とを備えている。
【0023】
球5は、ガラス、合成樹脂、木、又は金属などの素材で構成された球体である。この球5は中空であってもよいし中実であってもよい。さらに、球転がし遊具10が備える球5の形状は1種類に限定されず、径が異なる複数の種類の球5を備えてもよい。本実施の形態に係る球転がし遊具10では、基本球となる小球51とこれよりも径の大きい大球52との、大小2種類の球5を備えている。図4に示すように、小球51の直径d4は大球52の直径d5よりも小さく、例えば、市販されている直径15mmのビー玉を小球51として、市販されている直径25mmのビー玉を大球52としてそれぞれ採用することができる。
【0024】
盤7は、基台部材71と盤部材72の2つの部材で構成されている。基台部材71は、上面に平鉢状の凹みが形成された短円柱ブロック形状を有し、平鉢状の凹みの略中央部分には円形の溝71aが形成されている。そして、盤部材72は円板形状を有し、基台部材71の上面の円形の溝71aに嵌め込まれている。したがって、盤7の上面には基台部材71の上面と盤部材72の上面とにより平鉢状の凹みが形成されており、この平鉢状の凹みの表面が盤面3となっている。
【0025】
盤面3は、平面視円形状の収束域31と、この収束域31の外周を包囲する平面視環形状の導入域33と、収束域31と導入域33とを滑らかに接続する平面視環形状の加速域32とを備えている。つまり、盤面3は内周側から収束域31、加速域32、及び導入域33の順にそれぞれ異なる機能を備えた範囲が形成されている。本実施の形態に係る盤面3では、収束域31の外径は300mmであり、加速域32の内径は300mmであって外径は340mmであり、導入域33の内径は340mmであって外径は550mmである。つまり、収束域31及び導入域33と比較して加速域32の幅は極端に狭い。
【0026】
収束域31は、盤面3を転がる球5が収束する範囲であって、球5が収まる(入る)複数の凹部34が形成されている。この複数の凹部34には、盤面3に開口する複数の小凹部36と、この小凹部36よりも大きな開口面積で盤面3に開口する1つ以上の大凹部35との、開口面積の異なる少なくとも2種類の凹部34が含まれている。これらの凹部34の開口縁は、丸められているか、或いは、面取りされている。これにより、盤面3に触れるプレイヤーの手指を尖った凹部34の開口で怪我させるおそれがなく、凹部34の開口縁が尖っているときと比較して球5が凹部34に入りやすく且つ凹部34より脱出しやすくなる。なお、凹部34は盤面3からの凹形状部であればよく、孔、穴、溝、及び窪みなどのうちいずれか一種類、或いはこれらのうち複数種類の組み合わせとすることができる。
【0027】
図5は小凹部を説明する図であり(a)は平面図、(b)は側断面図である。また、図6は大凹部を説明する図であり(a)は平面図、(b)は側断面図である。図5及び図6に示すように、本実施の形態に係る大凹部35と小凹部36は共に開口が円形の穴として形成されている。そして、小凹部36の直径d1は、基本球である小球51の直径d4よりも小さい。例えば、小球51の直径d4が15mmであるとき、小凹部36の直径d1は8mmとすることができる。このような小球51と小凹部36との関係において、小球51の進路上に小凹部36が存在するとき、小球51は小凹部36に収まることはできるが、小球51の径と比較して小凹部36の径が小さいので小球51は小凹部36から零れる確率が高い。同様に大球52の進路上に小凹部36が存在するとき、大球52が小凹部36から零れる確率は小球51よりも高い。
【0028】
一方、大凹部35の直径d3は、小凹部36の直径d1及び基本球である小球51の直径d4以上であって、大球52の直径d5よりも小さい。ここでは大凹部35は、皿穴形状と円柱穴形状とを上下に組み合わせた形状の穴であって、皿穴形状部分では開口の直径d3から深さに比例して径が縮小し、径が最小の直径d2となったところから下方は円柱穴形状部分となっている。このような大凹部35として、例えば、小球51の直径d4が15mmであり大球52の直径d5が25mmであるときに、開口の直径d3を15mmとし最小の直径d2を8mmとすることができる。このような小球51と大凹部35との関係において、小球51の進路上に大凹部35が存在するとき、小球51は大凹部35の開口縁に当接して該大凹部35から零れることもあるが、小球51の径と比較して大凹部35の径は大きいので減速された小球51は大凹部35に収まる確率が高い。また、大球52の進路上に大凹部35が存在するとき、大球52が大凹部35に収まる確率は小球51よりも低い。なお、大凹部35、小凹部36、小球51、及び大球52の大きさの関係は上記に限定されないが、上述したように大凹部35、小凹部36、小球51、及び大球52の大きさの関係を定めれば、大凹部35と小凹部36が球5の進路に与える影響の差異を明らかとすることができる。
【0029】
本実施の形態に係る収束域31では、該収束域31と同心円上に配置された10個の小凹部36から成る第一のサークル、同じく5個の大凹部35と5個の小凹部36から成る第二のサークル、同じく7個の小凹部36から成る第三のサークル、同じく7個の大凹部35と14個の小凹部36から成る第四のサークル、同じく12個の小凹部36から成る第五のサークル、同じく12個の大凹部35と24個の小凹部36から成る第六のサークルの、径の異なる6のサークルが収束域31の中央に設けられた1個の大凹部35を中心として番号の小さい順に内周部分から外周部分にわたって配置されている。このように環状に配置された複数の凹部34によって盤面3に模様が形成されており、盤7には球転がし遊具としてだけでなくインテリアとしての意匠性が備えられている。
【0030】
収束域31には、原則として、少なくとも外周部に配置された複数の小凹部36と、この複数の小凹部36のうち最も外周側に位置するものよりも内周側に配置された1つ以上の大凹部35が存在すればよい。これにより、収束域31の外周縁から内周側に向かって進入してきた球5は、小凹部36からの影響を受けて減速したり進路を変化させたりしながら更に内周側へ移動し、大凹部35へ収まることとなる。但し、上記第六のサークルのように、収束域31の最も外周部に配置された複数の小凹部36に混じって大凹部35が存在していてもかまわない。
【0031】
なお、収束域31に設けられる凹部34の数は多い方が球5の進路に影響を与える要素が増えるので望ましい。但し、図7に示すように、或第1の凹部34Aに収まった第1の球5Aと、第1の凹部34Aに隣接する或第2の凹部34Bに収まった第2の球5Bとの間を、第3の球5Cが通り抜けることができるように、第1の凹部34Aと第2の凹部34Bの離間距離d6が定められなければならない。また、複数の凹部34は収束域31の一部分に偏って配置されてよいが、上記のように多数の凹部34が収束域31に分散して配置されていれば球5が凹部34から影響を受けやすくなるので望ましい。さらに、収束域31に進入した球5は外周部分から内方へ向けて移動するので、収束域31の特に外周部分に多くの小凹部36を設けることが望ましい。
【0032】
導入域33は、盤面3の外周帯を形成しており、球5が盤面3へ初めに導入される部分である。導入域33の、盤面3の中心を中心とする円周の半径方向(以下、単に「半径方向」という)の断面、即ち、収束域31の中心を通る縦断面は、収束域31へ向けて下る下1/4円弧部分(曲線部分)とその下端に連続する略水平線部分とで形成されている。下1/4円弧部分の上部により形成される面は、収束域31へ向けて下る急峻な斜面であるので、これ以上外周側への球5の移動を阻止する外周壁として機能する。また、下1/4円弧部分の中部により形成される面は、収束域31へ向けて緩やかに下る傾きを有している。さらに、下1/4円弧部分の下部により形成される面は、略水平線部分で形成される水平面と連続しており、収束域31へ向けて下る僅かな傾きを有している。
【0033】
加速域32は、収束域31と導入域33とを滑らかに接続する斜面であって、導入域33の内周縁にある球5を内周側へ向けて加速しつつ収束域31へ搬送する。このために加速域32は、導入域33の内周縁部分と比較して大きな角度で収束域31へ向けて下る傾きを有している。なお、本実施の形態において、収束域31と加速域32は盤部材72に設けられ、導入域33は基台部材71に設けられている。基台部材71に対して盤部材72を別の物と取り替えれば、異なる凹部34の形状又は配置を有する収束域31の盤面3を安価且つ簡易に実現することができる。
【0034】
また、盤7の上面には、盤面3の導入域33に導入された球5が導入域33の外周縁から上方へ飛び出さないようにするための返し73が設けられている。この返し73は、盤面3の導入域33の外周縁から内方へ向けて庇状に略水平に突出するように基台部材71に一体的に形成されており、導入域33の少なくとも一部と上下に対向する面を有している。なお、返し73の内周側への突出幅は、盤面3の導入域33の外周縁から上方へ飛び出そうとする球5を跳ね返すことができる程度であれば十分であり、突出幅が過度に大きいと導入域33への球5の導入が困難となる。
【0035】
[球5の挙動]
ここで、上記構成の盤面3を転がる球5の挙動について説明する。以下では、盤面3に複数の球5を転がした場合の、盤面3を転がる球5の挙動について説明する。図8は球の挙動を説明するための盤面と球の平面図であり(a)は球の導入時、(b)は球の加速時、(c)は球の収束時をそれぞれ示している。また、図9は盤面に複数の球を転がした場合の或1つの球の軌跡の一例を示す盤面の平面図である。図9では、球5の軌跡500を太線で示している。
【0036】
図8(a)及び図9に示すように、盤面3の導入域33の外周部分(即ち、下1/4円部分)に複数の球5を導入し、盤面3の中心を中心とする円周に接した接線方向(以下、単に「接線方向」という)へ転がす。これらの球5は接線方向の速度成分を有するが、加速された球5が導入域33へ導入されてもよいし、導入域33へ導入された球5が加速されてもよい。球5を導入域33へ導入して接線方向へ転がす手法として、例えば、球5を指でつまんで盤面3へ落下させる手法、球5を手で握って接線方向へ投げ出す手法、球5を握った手を盤面3に近づけて掌を上向き又は下向きにして開いて球5を盤面3へ落とす手法、球5を盤面3に静置させて指で弾く又は手指でかき混ぜる手法などがある。
【0037】
上記のように、盤面3の導入域33において接線方向の速度成分を有する球5は、転がりながら接線方向へ移動し、環状の導入域33をぐるぐると回る。特に、導入域33の縦断面形状は曲線となっているので、球5は導入域33を比較的時間をかけて内周側へ移動する。同時に複数の球5が転がっている場合には、球5の進路は他の球5と当接することによって影響を受ける。なお、導入域33に転がされた球5は、接線方向の速度成分のみならず、接線方向と直角な方向、即ち、半径方向の速度成分や、上下方向の速度成分を持っていてもよい。上方への速度成分を有する球5は、盤面3の外周縁部から外方へ飛び出そうとするが、返し73に当接して跳ね返り下方への速度成分を持って盤面3へ戻る。
【0038】
そして、盤面3の導入域33を転がる球5は、盤面3との摩擦や空気抵抗などにより減速するとともに、重力によって導入域33の内周側へ移動する。そして、球5が導入域33の内周縁を超えて加速域32へ入ると、図8(b)に示すように、球5は加速域32の傾きにより半径方向中心向きへ一気に加速され、速やかに収束域31へ移動する。加速域32の幅は導入域33及び収束域31と比較して十分に小さく、導入域33の内周部分に至った球5の接線方向の速度は小さいので、導入域33の内周部分まで移動してきた球5が、まるで収束域31へ吸い寄せられるように見える。特に、本実施の形態に係る導入域33の内周部分は略水平面となっており、導入域33の内周縁まで移動してきた球5の接線方向の速度成分及び半径方向の速度成分は導入域33に導入された当初と比較して十分に小さくなっている。したがって、加速域32で球5が半径方向中心向きへ加速されると、球5の接線方向の速度成分よりも半径方向の速度成分が大きくなり、導入域33では盤面3の外周部分を回っていた球5は収束域31では中央へ向けて移動する。
【0039】
加速域32で半径方向中心向きへ加速されて収束域31へ移動してきた球は、半径方向中心向きの速度成分と、接線方向への速度成分とを有している。このように速度を持って収束域31へ入った球5の挙動は、凹部34及び他の球5からの影響を受けて複雑に変化する。図10は凹部が球の進路に与える影響のパターンを説明するための凹部と球の側面図であり(a)は球同士が衝突する様子、(b)は球が凹部の開口縁で跳ね返る様子、(c)は球が凹部を飛び越える様子をそれぞれ示しており、図11は凹部が球の進路に与える影響のパターンを説明するための盤面の一部と球の平面図である。なお、図11において(a)(b)(c)と付された球5の動きは、図10(a)(b)(c)にそれぞれ対応している。
【0040】
図10(a)及び図11に示すように、凹部34に収まって静止している第1の球5Aが存在する場合、この第1の球5Aに移動している第2の球5が当接すると、第2の球5は跳ね返ってその進行方向が変化する。このとき、第2の球5が第1の球5Aに当接することによって、第1の球5Aが凹部34から抜け出したり、第1の球5Aと入れ替わって第2の球5が凹部34に収まったりすることもあり得る。このように凹部34に収まっている第1の球5に限らず、収束域31上を移動している第3の球5に当接して、移動している第2の球5の進行方向が変化することもある。
【0041】
また、移動している球5の進路上に凹部34が存在しても、球5が十分に減速されていない場合や、球5の進路が凹部34の中心からずれている場合などには、図10(b)及び図11に示すように球5に進路が凹部34の開口縁に沿って曲がったり、図10(c)及び図11に示すように球5が凹部34の開口縁にはねられて凹部34を飛び越えたりすることがある。なお、球5は半径方向中心向きの速度成分と接線方向の速度成分とを有しているので、凹部34の開口縁に沿って進路を曲げた球5や、凹部34を飛び越えた球5は、収束域31の中心へ向かって移動していく。
【0042】
上記のようにして、収束域31に進入した球5は、凹部34、凹部34に収まった他の球、及び収束域31上を移動している他の球などから影響を受けて、進路を複雑に変更しながら減速し、図8(c)に示すように、やがていずれかの凹部34に収まるか盤面3上で静止する。収束域31に設けられた凹部34の数が多いほど球5の進路に影響を与える要素が増えることとなり、収束域31における球5の軌跡は、まるでブラウン運動する微粒子のように揺らいで不規則で複雑なものとなる。
【0043】
上述したように、導入域33が収束域31へ向けて下る傾きを有すること、加速域32で収束域31へ向けて加速されること、収束域31に複数の凹部34が設けられていることにより、盤面3の導入域33に導入された球5は必ず収束域31に収束する。つまり、導入域33に導入された球5の速度やプレイヤーの技量などに関係なく、球5は収束域31へ集まっていずれかの凹部34又はその近傍で静止する。よって、球5が凹部34になかなか収まらずにプレイヤーが退屈するような事態が発生せず、プレイヤーの集中を維持させることができる。
【0044】
さらに、球転がし遊具10では、収束域31への球5の進入位置に加え、収束域31で小凹部36及び大凹部35が球へ与える影響が不確定要素となるので、球5を盤面3へ転がしたプレイヤーがその球5の挙動をコントロールしたり収束位置(静止位置)を意図的に選択したりすることは難しい。特に、収束域31に設けられた小凹部36は、球5が収まるための凹部というよりも球5の進路に影響を与えるための凹部としての役割が大きく、小凹部36に影響を受けることによって球5の軌跡は揺らいで複雑なものとなる。このように盤面3での球5の進路はプレイヤーの想定外に変化するので、プレイヤーを飽きさせることがない。上述の通り、本実施の形態に係る球転がし遊具10は、高い遊技性を備えた遊具となっている。
【0045】
[球転がし遊具10を用いた遊び方の例]
以下では、上記球転がし遊具10を用いた遊び方の例を説明する。但し、球転がし遊具10を用いた遊び方は以下に限定されるものではなく、球を触ったり球を転がしたりして遊ぶ、球が成す模様を楽しんで遊ぶ、球を並べて遊ぶ、球で凹部を狙って遊ぶ、というような多種多様な遊び方ができる。
【0046】
球転がし遊具10を用いた遊び方の第1例を説明する。プレイヤーは、1つ又は複数の球5を盤面3で転がす。プレイヤーは、盤面3の球5の動きを観察したり、球5が発生する音を聴いたり、球5によって盤面3に形成される模様を観察したりして、遊ぶことができる。また、このような球5の動きを占いなどに利用することもできる。
【0047】
球転がし遊具10を用いた遊び方の第2例として、複数のプレイヤーが点数を競う遊び方を説明する。球転がし遊具10の盤面3の収束域31に設けられた各凹部34に予め点数が設定されている。例えば、中央の大凹部35は10点、その周囲の大凹部35は5点、小凹部36は2点、というように順次各凹部34に点数が設定されている。第1のプレイヤーは、定められた数(単数又は複数)の球5を盤面3で転がす。そして、球5が収まっている凹部34に設定された点数を合計したものを第1のプレイヤーの得点とする。盤面3上の球を全て取り除き、次のプレイヤーが、第1のプレイヤーと同様に定められた数の球5を盤面3で転がして得点を得る。そして全てのプレイヤーの得点を比較し、得点の多いプレイヤー、又は、予め定められた点数と同じ或いはそれに最も近い得点のプレイヤーの勝ちとする。
【0048】
球転がし遊具10を用いた遊び方の第3例は、上記第2例のバリエーションである。第1のプレイヤーが盤面3で球5を転がしたあと、その球5を取り除かずに、第2のプレイヤーが盤面3で球5を転がす。ここで各プレイヤーが転がした球を識別することができるように、プレイヤー毎に転がす球5の色を変えることが好ましい。既に盤面3に存在する第1のプレイヤーが転がした球5は、第2のプレイヤーが転がした球5の障害となり、第2のプレイヤーが転がした球5と第1のプレイヤーが転がした球5とが、凹部34の取り合いをすることとなる。そして、全てのプレイヤーが盤面3で球5を転がしたあと、各プレイヤーの転がした球5が収まっている凹部34に設定された点数を合計したものを各プレイヤーの得点とし、この得点の多いプレイヤー、又は、予め定められた点数と同じ或いはそれに最も近い得点のプレイヤーの勝ちとする。
【0049】
球転がし遊具10を用いた遊び方の第4例は、盤面3の中央に設けられた大凹部35を複数のプレイヤーで取り合う遊び方である。複数のプレイヤーが同時に又は順番に盤面3で球5を転がす。そして、盤面3の中央に設けられた大凹部35に球5が収まったプレイヤーを勝ちとする。このとき、他のプレイヤーが転がした球5の進路を妨害するために、障害物としての挿し棒74を凹部34に挿設することもできる。図12に示すように、挿し棒74は、凹部34内に挿入できる基部74aと、盤面3から上方へ突出する柱部74bとが一体的に形成された棒状部材であって、その基部74aを盤面3の凹部34へ挿脱することができる。この挿し棒74を所望の凹部34に挿設すれば、挿し棒74の柱部74bは球5の進路に影響を与える障害物となり、球5の動きをより複雑なものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
上記実施の形態に係る球転がし遊具は数人のプレイヤーが囲んで遊べる程度の規模が想定されているが、キーホルダーなどの携帯できる程度の規模のものや、或いは、大人数で囲んで遊べる球技場のような規模のものとすることもできる。
【符号の説明】
【0051】
3 盤面
31 収束域
32 加速域
33 導入域
34 凹部
35 大凹部
36 小凹部
5 球
51 小球
52 大球
7 盤
71 基台部材
72 盤部材
73 返し
74 挿し棒
10 球転がし遊具
【技術分野】
【0001】
本発明は、盤面上で球を転がして遊ぶことのできる遊具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、盤面上で球を転がして遊ぶことのできる遊具が知られている。このような遊具は、一般に、穴(又は孔)や特定の範囲などが形成された盤面と球とを備えている。例えば、特許文献1に記載されたボールゲーム玩具は、間隔をおいて設けられた複数の穴を有する基盤と、基盤の中央に立設された小柱体と、基盤の縁に形成された環状突縁と、基盤の穴に入るボール(球)と、環状突縁に設けられたボール転がし台とを備えている。このボールゲーム玩具は、複数の穴のそれぞれに点数が設定されており、ボール転がし台を用いて小柱体に当たるように基盤上へボールを転がし入れて、ボールが入った穴に設定された点数で得点を競う遊び方ができる。
【0003】
また、特許文献2では、2つの小孔が底部に穿設されたすり鉢部材を備えたアナログ抽選装置が示されている。これに加え、すり鉢部材に球の速度を減速させるような凹凸や、球と干渉して球の進行方向を変化させる干渉体を設けることも示されている。上記アナログ抽選装置は、小孔のうちプレイヤーにより選択された一方が当選小孔とされ、すり鉢部材の内面へ投入された球が当選小孔に入るか否かの勝負を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−101931号公報
【特許文献2】特開2004−65931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1及び特許文献2に記載された遊具は、いずれも複数のプレイヤーが得点を競って遊べるように考えられている。したがって、各プレイヤーが遊びを楽しむためには、(i)プレイヤーが楽しめる時間を長くするために、球が盤面を時間をかけて転がること、(ii)プレイヤーを飽きさせないために、球の進路がプレイヤーの想定外に変化すること、(iii)プレイヤーの集中を維持させるために、球の静止位置が穴又はその近傍であることの、上記(i)〜(iii)の要件を少なくとも満たすことがよい。
【0006】
特許文献1のボールゲーム玩具では、周縁部から盤面の略中央に向けて投入された球は、小柱体に当接して進行方向を変えて周縁部へ向かい、周縁部に設けられた穴に収まる。このボールゲーム玩具では、球は小柱体や環状突縁に当接するものの球の進路はプレイヤーの想定の範囲内である。さらに、必ずしも盤面の周囲の穴又はその近傍で球が静止するとは限らない。したがって、上記ボールゲーム玩具は、上記(ii)及び(iii)の要件を満たさない。
【0007】
また、特許文献2のアナログ抽選装置では、すり鉢状の盤面の周縁部へ投入された球は、盤面上を渦巻き状に落ちながら移動して、盤面の略中央の低い位置に設けられた小孔に収まる。このアナログ抽選装置では、球は必ずすり鉢状の盤面の底に移動するので、各投球で球の進路は似たものとなる。したがって、上記アナログ抽選装置は、上記(ii)の要件を満たさない。
【0008】
なお、上記アナログ抽選装置では、パンチングメタルのような穴の開いた板状材で盤面を形成したり、円形状の中心から半径方向に延びた複数本の溝を盤面に設けたりすることによって、盤面に凹凸が設けられている。しかし、この凹凸は、小孔へ辿り着くまでの導入過程で球の速度を減速させて時間を稼ぐためのものであって、球の進路を変化させるためのものではない。
【0009】
上記に鑑み、本発明では、プレイヤーが凹部の形成された盤面上で球を転がして球を凹部に入れて遊ぶための遊具であって、(i)球が盤面を時間をかけて転がること、(ii)球の進路がプレイヤーの想定外に変化すること、(ii)球の静止位置が凹部又はその近傍であることの、上記(i)〜(iii)の要件を少なくとも満たすものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る球転がし遊具は、円形状であって、この円の少なくとも外周部に配置された複数の小凹部、並びにこの複数の小凹部のうち最も外周側に位置するものよりも内周側に配置された1つ以上の大凹部を有する収束域と、この収束域の外周を包囲する環形状であって、収束域へ向けて下る傾きを有する導入域とが形成された盤面と、小凹部の開口よりも大きな径を有する1つ以上の球とを備えているものである。ここで、小凹部とは盤面に開口する穴、孔又は窪みなどの盤面からの凹形状部のことをいい、大凹部とは小凹部よりも大きな開口面積で盤面に開口する穴、孔又は窪みなどの盤面からの凹形状部のことをいう。
【0011】
上記構成の球転がし遊具では、小凹部の開口の径は球の径よりも小さいので、球の進路に小凹部があっても、球が十分に減速されていない場合は、球は小凹部に嵌らずに該小凹部の縁に当接して減速しつつ進路を変更する。球は大凹部からも小凹部と同様の影響を受けるが、大凹部は小凹部よりも大きい開口を有するので、小凹部と比較して球が嵌る確率が高い。上記構成の球転がし遊具を用いて、盤面の導入域に球を導入して接線方向へ向けて転がせば、球は導入域を周回しながら内周側へ移動して収束域へ至る。このように接線方向と半径方向中心向きの速度を持って収束域に入った球は、小凹部及び大凹部からの影響を受けて減速しつつその進行方向を変化させながら揺れるように移動して収束域の小凹部、大凹部又はその周辺で静止する。この球転がし遊具では、球は導入域を周回移動し、収束域でも揺れるように移動するので、球は十分な時間をかけて盤面を転がる。また、この球転がし遊具では、収束域への球の進入位置に加え収束域で小凹部及び大凹部が球へ与える影響が不確定要素となるので、球の進路はプレイヤーの想定外に変化する。したがって、球を盤面へ転がしたプレイヤーがその球の挙動をコントロールしたり静止位置を意図的に選択したりすることは難しく、高い遊技性を備えることができる。しかも、球は収束域へ接線方向と半径方向中心向きの速度を持って進入するので、球は小凹部や大凹部からの影響を受けて減速しつつ進路を変更するものの収束域の中央部へ向かい、最終的には収束域において小凹部或いは大凹部又はその近傍で静止する。以上の通り、球転がし遊具によれば、(i)球が盤面を時間をかけて転がるのでプレイヤーが楽しめる時間が長く、(ii)球の進路がプレイヤーの想定外に変化するのでプレイヤーを飽きさせることがなく、(iii)球の静止位置が凹部又はその近傍であるのでプレイヤーの集中を維持させることができる。よって、本発明に係る球転がし遊具は高い遊技性を備えることができる。
【0012】
前記球転がし遊具において、前記盤面は、前記導入域と前記収束域との間を滑らかに接続する環形状であって、導入域の内周縁部分よりも大きな傾きで収束域へ向けて下る傾きを有する加速域が形成されていることがよい。かかる構成によれば、導入域を回りながら内周側の加速域へ進入した球は、加速域で一気に半径方向中心向きへ加速され、速やかに収束域へ至る。この加速域を通過する球の動きは、まるで収束域へ吸い寄せられるかのように見え、球の動きの観察を楽しむことができる。更に、球を確実に収束域で収束させることができる。
【0013】
前記球転がし遊具において、前記導入域は、半径方向の縦断面形状に下1/4円弧部分を有することがよい。このような導入域の形状により、導入域を回転する時間を稼ぐことができる。また、導入域を回りながら該導入域の内周側に至った球は十分に減速された状態で加速域へ進入するので、まるで収束域へ吸い寄せられるかのように見える球の動きの観察を楽しむことができる。
【0014】
前記球転がし遊具において、前記大凹部の開口は前記球よりも大きな径を有することがよい。これにより、球の進路上に大凹部が存在するときこの大凹部に球が収まる確率が高くなり、大凹部と小凹部とが球に与える影響に明らかな違いを設けることができる。
【0015】
前記球転がし遊具において、前記大凹部及び前記小凹部の開口縁の角は丸められている又は面取りされていることがよい。これにより、盤面に触れるプレイヤーの手指を傷つけることがない。また、球が大凹部及び小凹部に嵌りやすく且つ脱出しやすくなる。
【0016】
前記球転がし遊具において、前記大凹部と前記小凹部は、前記収束域の全体にわたって分散していることがよい。これにより、収束域へ進入してきた球が凹部から影響を受ける率が高くなり、が凹部から影響を受けやすくなる。
【0017】
前記球転がし遊具において、前記盤面は、前記導入域の外周縁から内方へ向けて突出し、該導入域の少なくとも一部と上下に対向する返しを備えていることがよい。これにより、盤面から外方へ飛び出そうとする球を、返しに当接させて盤面内に返すことができる。
【0018】
前記球転がし遊具において、前記盤面は、前記大凹部又は前記小凹部に挿入できる基部を有する障害物を着脱可能に備えていることがよい。盤面に更なる障害物を設けることによって、盤面を転動する球の動きをより複雑なものとすることができる。また、複数のプレイヤーが球転がし遊具で遊ぶときには、他のプレイヤーが転がした球の進路を妨害するように障害物を配置して、より遊技性を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る球転がし遊具では、球は導入域を周回移動し、収束域でも揺れるように移動するので、球は十分な時間をかけて盤面を転がる。また、この球転がし遊具では、収束域への球の進入位置に加え収束域で小凹部及び大凹部が球へ与える影響が不確定要素となるので、球の進路はプレイヤーの想定外に変化する。したがって、球を盤面へ転がしたプレイヤーがその球の挙動をコントロールしたり静止位置を意図的に選択したりすることは難しい。しかも、球は収束域へ接線方向と半径方向中心向きの速度を持って進入するので、球は小凹部や大凹部からの影響を受けて減速しつつ進路を変更するものの収束域の中央部へ向かい、最終的には収束域において小凹部或いは大凹部又はその近傍で静止する。以上の通り、本発明に係る球転がし遊具は高い遊技性を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る球転がし遊具の全体的な構成を示した斜視図である。
【図2】盤の平面図である。
【図3】図2におけるIII−III断面矢視図である。
【図4】球を説明する図であり(a)は小球の図、(b)は大球の図である。
【図5】小凹部を説明する図であり(a)は平面図、(b)は側断面図である。
【図6】大凹部を説明する図であり(a)は平面図、(b)は側断面図である。
【図7】盤面上の凹部同士の関係を説明する図である。
【図8】盤面上の球の挙動の一例を説明するための盤面と球の平面図であり(a)は球の導入時、(b)は球の加速時、(c)は球の収束時をそれぞれ示している。
【図9】盤面に複数の球を転がした場合の或1つの球の軌跡の一例を示す盤面の平面図である。
【図10】凹部が球の進路に与える影響のパターンを説明するための凹部と球の側面図であり(a)は球同士が衝突する様子、(b)は球が凹部の開口縁で跳ね返る様子、(c)は球が凹部を飛び越える様子をそれぞれ示している。
【図11】凹部が球の進路に与える影響のパターンを説明するための盤面の一部と球の平面図である。
【図12】障害物としての挿し棒を挿設した凹部の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0022】
[球転がし遊具の構造]
まず、本発明の実施の形態に係る球転がし遊具の全体的な構造を説明する。図1は本発明の実施の形態に係る球転がし遊具の全体的な構成を示した斜視図、図2は盤の平面図、図3は図2におけるIII−III断面矢視図である。図1〜3に示すように、球転がし遊具10は、1つ以上の球5と、この球5が転動する上向きの盤面3が形成された盤7とを備えている。
【0023】
球5は、ガラス、合成樹脂、木、又は金属などの素材で構成された球体である。この球5は中空であってもよいし中実であってもよい。さらに、球転がし遊具10が備える球5の形状は1種類に限定されず、径が異なる複数の種類の球5を備えてもよい。本実施の形態に係る球転がし遊具10では、基本球となる小球51とこれよりも径の大きい大球52との、大小2種類の球5を備えている。図4に示すように、小球51の直径d4は大球52の直径d5よりも小さく、例えば、市販されている直径15mmのビー玉を小球51として、市販されている直径25mmのビー玉を大球52としてそれぞれ採用することができる。
【0024】
盤7は、基台部材71と盤部材72の2つの部材で構成されている。基台部材71は、上面に平鉢状の凹みが形成された短円柱ブロック形状を有し、平鉢状の凹みの略中央部分には円形の溝71aが形成されている。そして、盤部材72は円板形状を有し、基台部材71の上面の円形の溝71aに嵌め込まれている。したがって、盤7の上面には基台部材71の上面と盤部材72の上面とにより平鉢状の凹みが形成されており、この平鉢状の凹みの表面が盤面3となっている。
【0025】
盤面3は、平面視円形状の収束域31と、この収束域31の外周を包囲する平面視環形状の導入域33と、収束域31と導入域33とを滑らかに接続する平面視環形状の加速域32とを備えている。つまり、盤面3は内周側から収束域31、加速域32、及び導入域33の順にそれぞれ異なる機能を備えた範囲が形成されている。本実施の形態に係る盤面3では、収束域31の外径は300mmであり、加速域32の内径は300mmであって外径は340mmであり、導入域33の内径は340mmであって外径は550mmである。つまり、収束域31及び導入域33と比較して加速域32の幅は極端に狭い。
【0026】
収束域31は、盤面3を転がる球5が収束する範囲であって、球5が収まる(入る)複数の凹部34が形成されている。この複数の凹部34には、盤面3に開口する複数の小凹部36と、この小凹部36よりも大きな開口面積で盤面3に開口する1つ以上の大凹部35との、開口面積の異なる少なくとも2種類の凹部34が含まれている。これらの凹部34の開口縁は、丸められているか、或いは、面取りされている。これにより、盤面3に触れるプレイヤーの手指を尖った凹部34の開口で怪我させるおそれがなく、凹部34の開口縁が尖っているときと比較して球5が凹部34に入りやすく且つ凹部34より脱出しやすくなる。なお、凹部34は盤面3からの凹形状部であればよく、孔、穴、溝、及び窪みなどのうちいずれか一種類、或いはこれらのうち複数種類の組み合わせとすることができる。
【0027】
図5は小凹部を説明する図であり(a)は平面図、(b)は側断面図である。また、図6は大凹部を説明する図であり(a)は平面図、(b)は側断面図である。図5及び図6に示すように、本実施の形態に係る大凹部35と小凹部36は共に開口が円形の穴として形成されている。そして、小凹部36の直径d1は、基本球である小球51の直径d4よりも小さい。例えば、小球51の直径d4が15mmであるとき、小凹部36の直径d1は8mmとすることができる。このような小球51と小凹部36との関係において、小球51の進路上に小凹部36が存在するとき、小球51は小凹部36に収まることはできるが、小球51の径と比較して小凹部36の径が小さいので小球51は小凹部36から零れる確率が高い。同様に大球52の進路上に小凹部36が存在するとき、大球52が小凹部36から零れる確率は小球51よりも高い。
【0028】
一方、大凹部35の直径d3は、小凹部36の直径d1及び基本球である小球51の直径d4以上であって、大球52の直径d5よりも小さい。ここでは大凹部35は、皿穴形状と円柱穴形状とを上下に組み合わせた形状の穴であって、皿穴形状部分では開口の直径d3から深さに比例して径が縮小し、径が最小の直径d2となったところから下方は円柱穴形状部分となっている。このような大凹部35として、例えば、小球51の直径d4が15mmであり大球52の直径d5が25mmであるときに、開口の直径d3を15mmとし最小の直径d2を8mmとすることができる。このような小球51と大凹部35との関係において、小球51の進路上に大凹部35が存在するとき、小球51は大凹部35の開口縁に当接して該大凹部35から零れることもあるが、小球51の径と比較して大凹部35の径は大きいので減速された小球51は大凹部35に収まる確率が高い。また、大球52の進路上に大凹部35が存在するとき、大球52が大凹部35に収まる確率は小球51よりも低い。なお、大凹部35、小凹部36、小球51、及び大球52の大きさの関係は上記に限定されないが、上述したように大凹部35、小凹部36、小球51、及び大球52の大きさの関係を定めれば、大凹部35と小凹部36が球5の進路に与える影響の差異を明らかとすることができる。
【0029】
本実施の形態に係る収束域31では、該収束域31と同心円上に配置された10個の小凹部36から成る第一のサークル、同じく5個の大凹部35と5個の小凹部36から成る第二のサークル、同じく7個の小凹部36から成る第三のサークル、同じく7個の大凹部35と14個の小凹部36から成る第四のサークル、同じく12個の小凹部36から成る第五のサークル、同じく12個の大凹部35と24個の小凹部36から成る第六のサークルの、径の異なる6のサークルが収束域31の中央に設けられた1個の大凹部35を中心として番号の小さい順に内周部分から外周部分にわたって配置されている。このように環状に配置された複数の凹部34によって盤面3に模様が形成されており、盤7には球転がし遊具としてだけでなくインテリアとしての意匠性が備えられている。
【0030】
収束域31には、原則として、少なくとも外周部に配置された複数の小凹部36と、この複数の小凹部36のうち最も外周側に位置するものよりも内周側に配置された1つ以上の大凹部35が存在すればよい。これにより、収束域31の外周縁から内周側に向かって進入してきた球5は、小凹部36からの影響を受けて減速したり進路を変化させたりしながら更に内周側へ移動し、大凹部35へ収まることとなる。但し、上記第六のサークルのように、収束域31の最も外周部に配置された複数の小凹部36に混じって大凹部35が存在していてもかまわない。
【0031】
なお、収束域31に設けられる凹部34の数は多い方が球5の進路に影響を与える要素が増えるので望ましい。但し、図7に示すように、或第1の凹部34Aに収まった第1の球5Aと、第1の凹部34Aに隣接する或第2の凹部34Bに収まった第2の球5Bとの間を、第3の球5Cが通り抜けることができるように、第1の凹部34Aと第2の凹部34Bの離間距離d6が定められなければならない。また、複数の凹部34は収束域31の一部分に偏って配置されてよいが、上記のように多数の凹部34が収束域31に分散して配置されていれば球5が凹部34から影響を受けやすくなるので望ましい。さらに、収束域31に進入した球5は外周部分から内方へ向けて移動するので、収束域31の特に外周部分に多くの小凹部36を設けることが望ましい。
【0032】
導入域33は、盤面3の外周帯を形成しており、球5が盤面3へ初めに導入される部分である。導入域33の、盤面3の中心を中心とする円周の半径方向(以下、単に「半径方向」という)の断面、即ち、収束域31の中心を通る縦断面は、収束域31へ向けて下る下1/4円弧部分(曲線部分)とその下端に連続する略水平線部分とで形成されている。下1/4円弧部分の上部により形成される面は、収束域31へ向けて下る急峻な斜面であるので、これ以上外周側への球5の移動を阻止する外周壁として機能する。また、下1/4円弧部分の中部により形成される面は、収束域31へ向けて緩やかに下る傾きを有している。さらに、下1/4円弧部分の下部により形成される面は、略水平線部分で形成される水平面と連続しており、収束域31へ向けて下る僅かな傾きを有している。
【0033】
加速域32は、収束域31と導入域33とを滑らかに接続する斜面であって、導入域33の内周縁にある球5を内周側へ向けて加速しつつ収束域31へ搬送する。このために加速域32は、導入域33の内周縁部分と比較して大きな角度で収束域31へ向けて下る傾きを有している。なお、本実施の形態において、収束域31と加速域32は盤部材72に設けられ、導入域33は基台部材71に設けられている。基台部材71に対して盤部材72を別の物と取り替えれば、異なる凹部34の形状又は配置を有する収束域31の盤面3を安価且つ簡易に実現することができる。
【0034】
また、盤7の上面には、盤面3の導入域33に導入された球5が導入域33の外周縁から上方へ飛び出さないようにするための返し73が設けられている。この返し73は、盤面3の導入域33の外周縁から内方へ向けて庇状に略水平に突出するように基台部材71に一体的に形成されており、導入域33の少なくとも一部と上下に対向する面を有している。なお、返し73の内周側への突出幅は、盤面3の導入域33の外周縁から上方へ飛び出そうとする球5を跳ね返すことができる程度であれば十分であり、突出幅が過度に大きいと導入域33への球5の導入が困難となる。
【0035】
[球5の挙動]
ここで、上記構成の盤面3を転がる球5の挙動について説明する。以下では、盤面3に複数の球5を転がした場合の、盤面3を転がる球5の挙動について説明する。図8は球の挙動を説明するための盤面と球の平面図であり(a)は球の導入時、(b)は球の加速時、(c)は球の収束時をそれぞれ示している。また、図9は盤面に複数の球を転がした場合の或1つの球の軌跡の一例を示す盤面の平面図である。図9では、球5の軌跡500を太線で示している。
【0036】
図8(a)及び図9に示すように、盤面3の導入域33の外周部分(即ち、下1/4円部分)に複数の球5を導入し、盤面3の中心を中心とする円周に接した接線方向(以下、単に「接線方向」という)へ転がす。これらの球5は接線方向の速度成分を有するが、加速された球5が導入域33へ導入されてもよいし、導入域33へ導入された球5が加速されてもよい。球5を導入域33へ導入して接線方向へ転がす手法として、例えば、球5を指でつまんで盤面3へ落下させる手法、球5を手で握って接線方向へ投げ出す手法、球5を握った手を盤面3に近づけて掌を上向き又は下向きにして開いて球5を盤面3へ落とす手法、球5を盤面3に静置させて指で弾く又は手指でかき混ぜる手法などがある。
【0037】
上記のように、盤面3の導入域33において接線方向の速度成分を有する球5は、転がりながら接線方向へ移動し、環状の導入域33をぐるぐると回る。特に、導入域33の縦断面形状は曲線となっているので、球5は導入域33を比較的時間をかけて内周側へ移動する。同時に複数の球5が転がっている場合には、球5の進路は他の球5と当接することによって影響を受ける。なお、導入域33に転がされた球5は、接線方向の速度成分のみならず、接線方向と直角な方向、即ち、半径方向の速度成分や、上下方向の速度成分を持っていてもよい。上方への速度成分を有する球5は、盤面3の外周縁部から外方へ飛び出そうとするが、返し73に当接して跳ね返り下方への速度成分を持って盤面3へ戻る。
【0038】
そして、盤面3の導入域33を転がる球5は、盤面3との摩擦や空気抵抗などにより減速するとともに、重力によって導入域33の内周側へ移動する。そして、球5が導入域33の内周縁を超えて加速域32へ入ると、図8(b)に示すように、球5は加速域32の傾きにより半径方向中心向きへ一気に加速され、速やかに収束域31へ移動する。加速域32の幅は導入域33及び収束域31と比較して十分に小さく、導入域33の内周部分に至った球5の接線方向の速度は小さいので、導入域33の内周部分まで移動してきた球5が、まるで収束域31へ吸い寄せられるように見える。特に、本実施の形態に係る導入域33の内周部分は略水平面となっており、導入域33の内周縁まで移動してきた球5の接線方向の速度成分及び半径方向の速度成分は導入域33に導入された当初と比較して十分に小さくなっている。したがって、加速域32で球5が半径方向中心向きへ加速されると、球5の接線方向の速度成分よりも半径方向の速度成分が大きくなり、導入域33では盤面3の外周部分を回っていた球5は収束域31では中央へ向けて移動する。
【0039】
加速域32で半径方向中心向きへ加速されて収束域31へ移動してきた球は、半径方向中心向きの速度成分と、接線方向への速度成分とを有している。このように速度を持って収束域31へ入った球5の挙動は、凹部34及び他の球5からの影響を受けて複雑に変化する。図10は凹部が球の進路に与える影響のパターンを説明するための凹部と球の側面図であり(a)は球同士が衝突する様子、(b)は球が凹部の開口縁で跳ね返る様子、(c)は球が凹部を飛び越える様子をそれぞれ示しており、図11は凹部が球の進路に与える影響のパターンを説明するための盤面の一部と球の平面図である。なお、図11において(a)(b)(c)と付された球5の動きは、図10(a)(b)(c)にそれぞれ対応している。
【0040】
図10(a)及び図11に示すように、凹部34に収まって静止している第1の球5Aが存在する場合、この第1の球5Aに移動している第2の球5が当接すると、第2の球5は跳ね返ってその進行方向が変化する。このとき、第2の球5が第1の球5Aに当接することによって、第1の球5Aが凹部34から抜け出したり、第1の球5Aと入れ替わって第2の球5が凹部34に収まったりすることもあり得る。このように凹部34に収まっている第1の球5に限らず、収束域31上を移動している第3の球5に当接して、移動している第2の球5の進行方向が変化することもある。
【0041】
また、移動している球5の進路上に凹部34が存在しても、球5が十分に減速されていない場合や、球5の進路が凹部34の中心からずれている場合などには、図10(b)及び図11に示すように球5に進路が凹部34の開口縁に沿って曲がったり、図10(c)及び図11に示すように球5が凹部34の開口縁にはねられて凹部34を飛び越えたりすることがある。なお、球5は半径方向中心向きの速度成分と接線方向の速度成分とを有しているので、凹部34の開口縁に沿って進路を曲げた球5や、凹部34を飛び越えた球5は、収束域31の中心へ向かって移動していく。
【0042】
上記のようにして、収束域31に進入した球5は、凹部34、凹部34に収まった他の球、及び収束域31上を移動している他の球などから影響を受けて、進路を複雑に変更しながら減速し、図8(c)に示すように、やがていずれかの凹部34に収まるか盤面3上で静止する。収束域31に設けられた凹部34の数が多いほど球5の進路に影響を与える要素が増えることとなり、収束域31における球5の軌跡は、まるでブラウン運動する微粒子のように揺らいで不規則で複雑なものとなる。
【0043】
上述したように、導入域33が収束域31へ向けて下る傾きを有すること、加速域32で収束域31へ向けて加速されること、収束域31に複数の凹部34が設けられていることにより、盤面3の導入域33に導入された球5は必ず収束域31に収束する。つまり、導入域33に導入された球5の速度やプレイヤーの技量などに関係なく、球5は収束域31へ集まっていずれかの凹部34又はその近傍で静止する。よって、球5が凹部34になかなか収まらずにプレイヤーが退屈するような事態が発生せず、プレイヤーの集中を維持させることができる。
【0044】
さらに、球転がし遊具10では、収束域31への球5の進入位置に加え、収束域31で小凹部36及び大凹部35が球へ与える影響が不確定要素となるので、球5を盤面3へ転がしたプレイヤーがその球5の挙動をコントロールしたり収束位置(静止位置)を意図的に選択したりすることは難しい。特に、収束域31に設けられた小凹部36は、球5が収まるための凹部というよりも球5の進路に影響を与えるための凹部としての役割が大きく、小凹部36に影響を受けることによって球5の軌跡は揺らいで複雑なものとなる。このように盤面3での球5の進路はプレイヤーの想定外に変化するので、プレイヤーを飽きさせることがない。上述の通り、本実施の形態に係る球転がし遊具10は、高い遊技性を備えた遊具となっている。
【0045】
[球転がし遊具10を用いた遊び方の例]
以下では、上記球転がし遊具10を用いた遊び方の例を説明する。但し、球転がし遊具10を用いた遊び方は以下に限定されるものではなく、球を触ったり球を転がしたりして遊ぶ、球が成す模様を楽しんで遊ぶ、球を並べて遊ぶ、球で凹部を狙って遊ぶ、というような多種多様な遊び方ができる。
【0046】
球転がし遊具10を用いた遊び方の第1例を説明する。プレイヤーは、1つ又は複数の球5を盤面3で転がす。プレイヤーは、盤面3の球5の動きを観察したり、球5が発生する音を聴いたり、球5によって盤面3に形成される模様を観察したりして、遊ぶことができる。また、このような球5の動きを占いなどに利用することもできる。
【0047】
球転がし遊具10を用いた遊び方の第2例として、複数のプレイヤーが点数を競う遊び方を説明する。球転がし遊具10の盤面3の収束域31に設けられた各凹部34に予め点数が設定されている。例えば、中央の大凹部35は10点、その周囲の大凹部35は5点、小凹部36は2点、というように順次各凹部34に点数が設定されている。第1のプレイヤーは、定められた数(単数又は複数)の球5を盤面3で転がす。そして、球5が収まっている凹部34に設定された点数を合計したものを第1のプレイヤーの得点とする。盤面3上の球を全て取り除き、次のプレイヤーが、第1のプレイヤーと同様に定められた数の球5を盤面3で転がして得点を得る。そして全てのプレイヤーの得点を比較し、得点の多いプレイヤー、又は、予め定められた点数と同じ或いはそれに最も近い得点のプレイヤーの勝ちとする。
【0048】
球転がし遊具10を用いた遊び方の第3例は、上記第2例のバリエーションである。第1のプレイヤーが盤面3で球5を転がしたあと、その球5を取り除かずに、第2のプレイヤーが盤面3で球5を転がす。ここで各プレイヤーが転がした球を識別することができるように、プレイヤー毎に転がす球5の色を変えることが好ましい。既に盤面3に存在する第1のプレイヤーが転がした球5は、第2のプレイヤーが転がした球5の障害となり、第2のプレイヤーが転がした球5と第1のプレイヤーが転がした球5とが、凹部34の取り合いをすることとなる。そして、全てのプレイヤーが盤面3で球5を転がしたあと、各プレイヤーの転がした球5が収まっている凹部34に設定された点数を合計したものを各プレイヤーの得点とし、この得点の多いプレイヤー、又は、予め定められた点数と同じ或いはそれに最も近い得点のプレイヤーの勝ちとする。
【0049】
球転がし遊具10を用いた遊び方の第4例は、盤面3の中央に設けられた大凹部35を複数のプレイヤーで取り合う遊び方である。複数のプレイヤーが同時に又は順番に盤面3で球5を転がす。そして、盤面3の中央に設けられた大凹部35に球5が収まったプレイヤーを勝ちとする。このとき、他のプレイヤーが転がした球5の進路を妨害するために、障害物としての挿し棒74を凹部34に挿設することもできる。図12に示すように、挿し棒74は、凹部34内に挿入できる基部74aと、盤面3から上方へ突出する柱部74bとが一体的に形成された棒状部材であって、その基部74aを盤面3の凹部34へ挿脱することができる。この挿し棒74を所望の凹部34に挿設すれば、挿し棒74の柱部74bは球5の進路に影響を与える障害物となり、球5の動きをより複雑なものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
上記実施の形態に係る球転がし遊具は数人のプレイヤーが囲んで遊べる程度の規模が想定されているが、キーホルダーなどの携帯できる程度の規模のものや、或いは、大人数で囲んで遊べる球技場のような規模のものとすることもできる。
【符号の説明】
【0051】
3 盤面
31 収束域
32 加速域
33 導入域
34 凹部
35 大凹部
36 小凹部
5 球
51 小球
52 大球
7 盤
71 基台部材
72 盤部材
73 返し
74 挿し棒
10 球転がし遊具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形状であって、この円の少なくとも外周部に配置された複数の小凹部、並びにこの複数の小凹部のうち最も外周側に位置するものよりも内周側に配置された1つ以上の大凹部を有する収束域と、この収束域の外周を包囲する環形状であって、収束域へ向けて下る傾きを有する導入域とが形成された盤面と、
小凹部の開口よりも大きな径を有する1つ以上の球とを備えている、球転がし遊具。
【請求項2】
前記盤面は、前記導入域と前記収束域との間を滑らかに接続する環形状であって、導入域の内周縁部分よりも大きな傾きで収束域へ向けて下る傾きを有する加速域が形成されている、請求項1に記載の球転がし遊具。
【請求項3】
前記導入域は、半径方向の縦断面形状に下1/4円弧部分を有している、請求項2に記載の球転がし遊具。
【請求項4】
前記大凹部の開口は前記球よりも大きな径を有している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の球転がし遊具。
【請求項5】
前記大凹部及び前記小凹部の開口縁の角は丸められている又は面取りされている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の球転がし遊具。
【請求項6】
前記大凹部と前記小凹部は、前記収束域の全体にわたって分散している、請求項1〜5のいずれか一項に記載の球転がし遊具。
【請求項7】
前記盤面は、前記導入域の外周縁から内方へ向けて突出し、該導入域の少なくとも一部と上下に対向する返しを備えている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の球転がし遊具。
【請求項8】
前記盤面は、前記大凹部又は前記小凹部に挿入できる基部を有する障害物を着脱可能に備えている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の球転がし遊具。
【請求項1】
円形状であって、この円の少なくとも外周部に配置された複数の小凹部、並びにこの複数の小凹部のうち最も外周側に位置するものよりも内周側に配置された1つ以上の大凹部を有する収束域と、この収束域の外周を包囲する環形状であって、収束域へ向けて下る傾きを有する導入域とが形成された盤面と、
小凹部の開口よりも大きな径を有する1つ以上の球とを備えている、球転がし遊具。
【請求項2】
前記盤面は、前記導入域と前記収束域との間を滑らかに接続する環形状であって、導入域の内周縁部分よりも大きな傾きで収束域へ向けて下る傾きを有する加速域が形成されている、請求項1に記載の球転がし遊具。
【請求項3】
前記導入域は、半径方向の縦断面形状に下1/4円弧部分を有している、請求項2に記載の球転がし遊具。
【請求項4】
前記大凹部の開口は前記球よりも大きな径を有している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の球転がし遊具。
【請求項5】
前記大凹部及び前記小凹部の開口縁の角は丸められている又は面取りされている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の球転がし遊具。
【請求項6】
前記大凹部と前記小凹部は、前記収束域の全体にわたって分散している、請求項1〜5のいずれか一項に記載の球転がし遊具。
【請求項7】
前記盤面は、前記導入域の外周縁から内方へ向けて突出し、該導入域の少なくとも一部と上下に対向する返しを備えている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の球転がし遊具。
【請求項8】
前記盤面は、前記大凹部又は前記小凹部に挿入できる基部を有する障害物を着脱可能に備えている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の球転がし遊具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−200293(P2011−200293A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67955(P2010−67955)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(302022588)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(302022588)
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