説明

理容鋏

【課題】鋏使用者の好みや使い方に合わせて指環部の刀体柄部における位置、柄部に対して直交する軸方向を中心とした回動方向の角度、前記軸方向から傾いた傾斜角度の調整を、非常に簡単な構造で実現する。
【解決手段】端部に指環部を備えた一対の刀体をX状に交叉させ、両刀体を貫通する枢結ボルト及び締付ナットで交叉部を枢結してなる理容鋏に於いて、指環部6を刀体から分離して形成すると共に、指環部を分離した柄部5における指環連結個所に磁石部51を設けると共に、分離指環部6の連結部位(装着突部61)を磁気吸着部材で形成し、分離指環部6を磁気吸着で柄部5に連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、理容鋏に関するものである。
【背景技術】
【0002】
理容鋏の基本的構成は、周知のとおり一対の刀体をX状に交叉させ、両刀体を貫通する軸孔を穿設し、該軸孔に挿通した枢結軸で交叉部を枢結してなるものである。操作部分は通常指環構造となっており、刀体と一体に形成されている。
【0003】
ところで理容鋏においては、鋏使用者の好みや使い方に合わせて指環部の刀体柄部に対する位置(枢結軸からの遠近距離位置・他方指環部との相対的位置)や、角度(柄部に対して直交する軸を中心とした回動方向)の調整を可能としたり、更には指環部の傾斜回動を可動とする構造が、従前より提案されている。
【0004】
例えば特許文献1(実開平2−43970号公報)には、同一平面上に配置される親指用指輪部と薬指用指輪部では使い難いとして、親指用指環部の連結柄部に長孔を設けると共に、前記長孔を貫通する係着ボルトで親指用指環部を止着しているもので、長孔によって係着ボルトの位置調整を行い、係着ボルトを軸にして所望の角度まで回動させて、当該位置で固定するようにしている。
【0005】
また特許文献2(実開平2−25968号公報)には、前記の長孔に替えて細溝で連結した軸孔を設けて、指環部の位置調整と角度調整を行うようにしている。
【0006】
更に特許文献3(実開平1−178877号公報)には、起伏による位置調整用の回動体と、回動体に角度調整用に回動自在としたU状保持アームとを備え、前記のU状保持アームに指環部を傾斜(柄部に対して直交する軸からの傾斜)自在に枢着して、指環部の位置調整と角度調整と傾斜調整を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平2−43970号公報。
【特許文献2】実開平2−25968号公報。
【特許文献3】実開平1−178877号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
指輪部の位置調整や角度調整を行う手段は、前記特許文献1,2に開示されているが、いずれも移動及び回動の調整には、係着ボルトの操作が必要であり、使用中に位置や角度を変更調整は煩瑣な作業となる。而も前記文献に開示されている構造は傾斜調整ができない。
【0009】
また特許文献3に開示されている構造は、位置調整及び角度調整の他に傾斜調整も可能であるが、回動軸構造を三軸方向に設ける必要があり、製造が面倒である。
【0010】
そこで本発明は、非常に簡単な構造で位置調整、角度調整、傾斜調整等を実現できる新規な理容鋏を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る理容鋏は、端部に指環部を備えた一対の刀体をX状に交叉させ、両刀体を貫通する枢結ボルト及び締付ナットで交叉部を枢結してなる理容鋏に於いて、少なくとも一方の指環部を刀体から分離して形成すると共に、指環部を分離した柄部における指環連結個所に磁石部を設けると共に、分離指環部の連結部位を磁気吸着部材で形成してなることを特徴とするものである。
【0012】
而して分離指環部の連結部位を磁石部に吸着させて連結すると、分離指環部は刀体と一体となり、鋏操作が可能となり理容に供されるもので、特に吸着に際して吸着形態(角度)を選択することで、容易に角度調整が可能となるものである。
【0013】
また本発明(請求項2)の理容鋏は、前記の磁石部を複数縦列して設けることで、何れかの磁石部を選択することで位置調整が可能となるものである。
【0014】
更に本発明(請求項3)の理容鋏は、特に磁石部を柄部に埋設すると共に、磁石部中心に球面状凹部を設けると共に、分離指環部における連結部位に前記球面状凹部に対応する装着突部を突設してなるものである。
【0015】
而して、球面状凹部に装着突部を当接することで、両者が吸着されると共に、分離指環部がいずれの角度及び傾斜状態でも、球面状凹部と装着突部は密着するので、角度調整及び傾斜調整が容易に実現する。
【0016】
更に本発明(請求項4)の理容鋏は、特に磁石部を柄部に埋設すると共に、磁石部中心に装着穴を設けると共に、分離指環部における連結部位に前記装着穴に対応する装着軸を突設してなるもので、装着穴に装着軸を挿入にして磁気吸着させると、分離指環部の位置ずれを防ぐことができると共に、分離指環部は装着軸を中心に回動吸着することで、角度調整を行うことができるものである。
【0017】
また特に前記発明(請求項4)において、特に装着穴を装着軸が遊挿できる大きさに形成し、分離指環部の連結部位を、装着軸を中心とし、多段傾斜面からなる膨出面に形成すると、多段傾斜面の何れかと磁石面が吸着して、前記の角度調整と相まって傾斜調整も行うことができるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の構成は上記のとおりで、分離指環部の柄部との連結に磁気吸着を採用してなるものであるから、ネジ操作や枢結構造を採用することなく簡単な構造で分離指環部を所望態様(角度、傾斜)で連結することができたものである。また柄部における磁石部を複数設けると、吸着すべき磁石部の選択で分離指環部の連結位置調整も可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一実施形態の全体斜視図。
【図2】同要部拡大斜視図で、(イ)は分離状態を示し、(ロ)及び(ハ)は装着状態を示す。
【図3】同吸着連結部分の説明図(位置調整の説明図)。
【図4】同図(角度調整の説明)。
【図5】同図(傾斜調整の説明)。
【図6】同第二実施形態の要部拡大斜視図。
【図7】同吸着連結部分の調整説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に本発明の実施形態について説明する。図1乃至5は本発明の第一の実施形態を示したもので、この理容鋏は、通常の理容鋏と同様に、一対の刀体1,1aをX状に交叉させ、両刀体を貫通する枢結ボルト2及び締付ナット3で交叉部を枢結してなるもので、一方の刀体1の端部には、指環部(中指・薬指用)4を刀体1と一体に形成し、他方刀体1aの端部は柄部5を刀体1aと一体に形成し、他方刀体1aが備えるべき指環部(親指用)は、分離指環部6としてなるものである。
【0021】
柄部5には、柄部5が備えるべき指環部の形成面側に、複数の磁石部51を、適宜間隔をおいて複数縦列して埋設したもので、各磁石部51は、相応に強力に磁気を備えるようにし、各々の中央に球面状凹部52を設けたものである。
【0022】
分離指環部6は、適宜大きさのリング体で、全体を磁気吸着材質で形成するか、或いは前記の柄部5に連結する部位を磁気吸着材質で形成するもので、連結部位は、前記の球面状凹部52と密着する外形状(半球状)の装着突部61を設けたものである。
【0023】
而して分離指環部6の装着突部61を何れかの磁石部51の球面状凹部52を選択して当接させると、分離指環部6は、磁気吸着によって柄部5に連結されることになる。
【0024】
従って縦列した磁石部51の何れかの球面状凹部52を選択(柄部5に添う方向の移動調整)によって分離指環部6の連結位置(枢結軸からの遠近距離・固定指環部4との相対的位置)を調整できることになる(図3参照)。
【0025】
また分離指環部6は、柄部5に対して直交する方向を軸(図4の軸A)とした場合に、前記軸Aを中心に任意に回動して、所望の回動角度で磁気吸着させることができるので、分離指環部6の取付角度を任意に、且つ容易に調整できるものである。
【0026】
更に球面状凹部52と装着突部61が同一の球状面に形成されているので、分離指環部6を傾斜(A軸から傾斜)させて磁石部51に吸着させることで傾斜調整が可能となるものである。
【0027】
従って非常に簡単な操作で、使用者の使い易い状態に分離指環部6を柄部5に連結することができるもので、当該状態で理容に供されるものである。
【0028】
次に本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態は、図6,7に示すように、前記の実施形態と異なる柄部5aと分離指環部6aの組み合わせで構成される。
【0029】
柄部5aは、複数の磁石部51aを、適宜間隔をおいて複数縦列して埋設すると共に、各磁石部51a中央に半球状の装着穴52aを設けたものである。
【0030】
分離指環部6aは、適宜大きさのリング体で、全体を磁気吸着材質で形成するか、或いは前記の柄部5aに連結する部位を磁気吸着材質で形成するもので、連結部位61aの中心を前記装着穴52aに遊挿され得る大きさの装着軸62に形成してなり、特に連結部位61aは、装着軸62を中心とした膨出面に形成してなるもので、前記膨出面は、多段傾斜面に形成したものである。
【0031】
而して分離指環部6aの装着軸62を何れかの磁石部51aの装着穴52aを選択して装着すると、連結部位61aが磁石部51aに磁気吸着して、柄部5aに連結されることになる。従って磁石部51aの選択によって分離指環部6aの連結位置を調整できることになる。
【0032】
また分離指環部6aは、装着軸62を中心に任意に回動することができ、特に柄部5aと直交する軸方向(A軸方向)で回動させて、所望の回動角度で分離指環部6aを磁気吸着させることで、分離指環部6aの取付角度を任意に、且つ容易に調整できるものである。
【0033】
更に装着穴52a内で装着軸62を傾けさせることで、連結部位61aの膨出多段傾斜面のいずれかを磁石面に吸着させることで傾斜調整が可能となるものである。
【0034】
従って非常に簡単な操作で、使用者の使い易い状態に分離指環部6aを柄部5aに連結することができるもので、当該状態で理容に供されるものである。
【0035】
また本発明は前記の実施形態に限定されるものではなく、連結部位61aを多段傾斜面とせずに膨出曲面に形成すると、やや不安定であるが、傾斜角度調整が連続的になされるものである。
【0036】
更に傾斜角度調整を考慮しないのであれば、装着穴52aを、装着軸62が密挿される長軸孔に形成すると共に、連結部位61aを平面状に形成すると、装着穴52aの選択装着と、装着軸62を中心に回動させることで、位置調整及び角度調整を実現できる分離指環部構造とすることができる。
【0037】
また分離指環部を一方の刀体のみとせずに、両刀体ともに分離指環部を採用しても良い。
【符号の説明】
【0038】
1,1a 刀体
2 枢結ボルト
3 締付ナット
4 指環部(中指・薬指用)
5,5a 柄部
51,51a 磁石部
52 球面状凹部
52a 装着穴
6,6a 分離指環部
61 装着突部(連結部位)
61a 連結部位(膨出傾斜面)
62 装着軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に指環部を備えた一対の刀体をX状に交叉させ、両刀体を貫通する枢結ボルト及び締付ナットで交叉部を枢結してなる理容鋏に於いて、少なくとも一方の指環部を刀体から分離して形成すると共に、指環部を分離した柄部における指環連結個所に磁石部を設けると共に、分離指環部の連結部位を磁気吸着部材で形成してなることを特徴とする理容鋏。
【請求項2】
柄部に、適宜間隔をおいて複数の磁石部を縦列して設ける請求項1記載の理容鋏。
【請求項3】
磁石部を柄部に埋設すると共に、磁石部中心に球面状凹部を設けると共に、分離指環部における連結部位に前記球面状凹部に対応する装着突部を突設してなる請求項1又は2記載の理容鋏。
【請求項4】
磁石部を柄部に埋設すると共に、磁石部中心に装着穴を設けると共に、分離指環部における連結部位に前記装着穴に対応する装着軸を突設してなる請求項1又は2記載の理容鋏。
【請求項5】
装着穴を装着軸が遊挿できる大きさに形成し、分離指環部の連結部位を、装着軸を中心とし、多段傾斜面からなる膨出面に形成してなる請求項4記載の理容鋏。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−78672(P2011−78672A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234965(P2009−234965)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(591130102)株式会社シゲル工業 (5)
【Fターム(参考)】