説明

琥珀由来のVEGF産生促進剤及び琥珀由来のVEGF産生促進剤を含む製剤又は化粧料若しくは頭髪・頭皮用化粧料

【課題】本願発明は、新規VEGF産生促進剤を調製することを課題とする。更に、本願発明は、琥珀から低級アルコール抽出により調製されたVEGF産生促進剤の使用方法及び用途を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、琥珀から低級アルコールで抽出する工程を含む方法で抽出した抽出物を含むVEGF産生促進剤、琥珀から低級アルコールで抽出する工程を含む方法で抽出した抽出物を含むVEGF産生促進剤を含有する頭髪・頭皮用化粧料及び頭髪・頭皮用外用薬を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、血管新生促進に係る技術分野に関する。より具体的には、本願発明は、頭髪・頭皮用化粧剤等の化粧料、育毛剤、養毛剤、創傷治癒促進や肌色改善等の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
琥珀とは、主にマツ属植物の樹脂が長期間地下に埋没し凝結してできた化石で、主に樹脂、精油、コハク酸等を含む。そしてエタノールやジエチルエーテル或いはベンゼンに少量溶ける(非特許文献1)。琥珀そのものを装飾工芸品、宝石、絶縁材料に用いたり、琥珀の削りカスをお香にするなどの用途のほかに、19世紀頃にはキズ薬などに使用されてきた(非特許文献2)。
【0003】
近年では、琥珀粉末を化粧品に配合し、肌感触を改善する技術(特許文献1、2、16及び17)、琥珀の抽出物を皮膚外用剤に配合する技術(特許文献3及び4)、琥珀抽出画分中の皮膚ターンオーバー促進因子を利用する技術(特許文献5)、琥珀の抽出物中の皮膚のスキンファーミング効果を利用する技術(特許文献6)、琥珀抽出画分中のヒアルロン酸産生促進因子を利用する技術(特許文献7) などが報告されている。また、琥珀粉末を化粧品に配合し、変退を防止する旨の技術(特許文献16、17)、琥珀粉末を化粧品に配合し、成熟した人の皮膚に若者の色艶を回復する旨の技術(特許文献18、19) も既に紹介されている。さらに、琥珀の熱水抽出物に毛乳頭細胞増殖促進作用があることが報告されている(特許文献20)。
【0004】
一方、血管新生(angiogenesis) とは、元々ある血管から新しい血管を形成する現象である。最初に血管内皮前駆細胞が発生、集合、接着し、原始血管叢を形成する(脈管形成、vasculogenesis) 。そしてそこから血管の融合、嵌入、発芽、退縮といった血管新生の過程が生じる。この血管新生を促進する主要な因子が血管内皮細胞増殖因子(VEGF (Vascular endothelial growth factor))である。VEGFは、脈管新生及び血管新生に関与する一群の糖タンパク質であり、血管の最内面を構成する血管内皮細胞の分裂や遊走、分化を刺激し、微小血管の血管透過性を亢進させる働きを持つ。
【0005】
なお、VEGF産生もしくは血管新生の促進について、HB-EGFの関与をうかがわせる報告(非特許文献9,12,13,及び14)がされている。
【0006】
VEGFには、新たな血管を形成することにより血流を改善し、創傷治癒促進効果や肌色改善効果があり、さらには育毛・養毛効果等があるとされている。特に育毛・養毛効果においては、毛包周囲のVEGFの産生が増加すると、血管新生が促進されて成長期の毛髪に必要な栄養が効率よく供給され、育毛・養毛促進効果に繋がることが知られている(非特許文献3)。また、毛包における外毛根鞘細胞、及び毛乳頭細胞がVEGFを発現する旨の論文(非特許文献4、及び5) や、外毛根鞘でのVEGF合成量を増加させると毛包のサイズが増大すると共に、作られる毛の直径も太くなる旨の論文(非特許文献3) が報告されている。このことから、育毛・養毛にはVEGFの産生及び血管新生が重要である。
【0007】
現在までに知られている育毛・養毛効果等に応用し得るようなVEGF産生促進剤としては、ミノキシジル(非特許文献6)、ユーカリエキス(非特許文献7)、シロバナルーピン豆抽出物(非特許文献8)、ローヤルゼリー(特許文献8)、オランダガラシ抽出物(特許文献9)、ミカン属植物の花の水蒸気蒸留水、並びに果汁(特許文献10)、シイタケ、エチナシ、プルーン、モヤシ、アマチャヅルの抽出物(特許文献11及び12)、タコノキ属植物抽出物(特許文献13及び14)、クロレラの抽出物並びにユズの果実の抽出物(特許文献15) 等が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3725848号
【特許文献2】特開2004-083478
【特許文献3】特許第4034839号
【特許文献4】特開2001-131048
【特許文献5】特開2007-314522
【特許文献6】特開2008-189669
【特許文献7】特開2008-266260
【特許文献8】特開2003-192541
【特許文献9】特開2003-313134
【特許文献10】特開2003-313136
【特許文献11】特許第4324349号
【特許文献12】特開2004-035443
【特許文献13】特許第4050560号
【特許文献14】特開2004-043393
【特許文献15】特開2006-282597
【特許文献16】特許第3741429号
【特許文献17】特開2004-083477
【特許文献18】特表2003-500429
【特許文献19】特開2005-206613
【特許文献20】特開2010-235551
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】中薬大辞典 第二巻 上海科学技術出版社(江蘇新医学院「中薬大辞典」編集部)小学館編)
【非特許文献2】K.Kaiserling Pathloge, 22(4), 285-286 (2001).
【非特許文献3】Kiichiro Yano, et al. Journal of Clinical Investigation, 107, 409-417 (2001).
【非特許文献4】Souad Lachgar, et al. The Journal of Investigative Dermatology, 106, 17-23 (1996).
【非特許文献5】Urszula Kozlowska, et al. Archives of Dermatological Research, 290(12), 661-668 (1998).
【非特許文献6】S. Lachgar, British Journal of Dermatology, 138, 407-411 (1998).
【非特許文献7】森脇繁, 他 Fragrance Journal, 35(12), 22-27 (2007).
【非特許文献8】C. Lenaers, et al. Fragrance Journal, 35(12), 69-72 (2007).
【非特許文献9】Kozo Nakai, Kozo Yoneda, Tetsuya Moriue, JunskeIgarashi, Hiroaki Kosaka and YasuoKubota, HB-EGF-induced VEGF production and eNOS activation depend on both PI3 kinase and MAP kinasein HaCaT cells, Journal of Dermatological Science, 55, 170-178 (2009).
【非特許文献10】渋谷正史 編, 血管研究の最前線に迫る, p39, 羊土社 (2000).
【非特許文献11】化学同人編集部編、新版 続 実験を安全に行うために、p54、化学同人、(1987).
【非特許文献12】Veela B. Mehta and Gail E. Besner, HB-EGF promotes angiogenesis in endothelial cells via PI3-kinase and MAPK signaling pathways, Growth Factors, 25(4), 253-263 (2007).
【非特許文献13】Veela B. Mehta, Yu Zhou, Andrei Radulescu and Gail E. Besner, HB-EGF stimulates eNOSexpression and nitric oxide production and promotes eNOSdependent angiogenesis, Growth Factors, 26(6), 301-315 (2008).
【非特許文献14】Burak M. Arkonac, Lauren C. Foster, Nicholas E. S. Sibinga, Cam Patterson, KaihuaLai, Jer-Chia Tsai, Mu-En Lee, Mark A. Perrella and Edgar Haber, Vascular Endothelial Growth Factor Induces Heparin-binding Epidermal Growth Factor-like Growth Factor in Vascular Endothelial Cells, The Journal of Biological Chemistry, 273, 4400-4405 (1998).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願発明は、新規VEGF産生促進剤を調製することを課題とする。
更に、本願発明は、琥珀から低級アルコール抽出により調製されたVEGF産生促進剤の使用方法及び用途を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者等は、新規なVEGF産生促進剤を探索していたところ、琥珀抽出物をカラムクロマトグラフィー又は二相分離により分画した特定の画分から、VEGF産生促進剤を見出して本願発明を完成させたものである。
【発明の効果】
【0012】
本願発明は、琥珀成分中から、新規なVEGF産生促進する成分を含有する組成物等の新規なVEGF産生促進剤を提供するという極めて優れた効果を奏する。また、本発明に係る新規なVEGF産生促進剤はエタノールに溶解するため、ざらつき感を与えることなく化粧品に配合できる。更に、本願発明の新規なVEGF産生促進剤の製造方法は、40℃程度〜室温のエタノールに約1か月浸漬するだけなので、高エネルギーを発する機材を用意しなくても調製できて簡便である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】HaCaTを用いたF2画分及びN画分のVEGFA-mRNA発現確認 controlサンプルにおけるGAPDH-mRNA発現量に対するVEGFA-mRNA発現量の比を100としたときの、試料添加サンプルにおけるGAPDH-mRNA発現量に対するVEGFA-mRNA発現量の比を算出し示した。
【図2−1】HaCaTでのHB-EGF中和抗体の中和活性確認 GAPDH-mRNA発現量に対するVEGFA-mRNA発現量の比を100としたときの、試料添加サンプルにおけるGAPDH-mRNA発現量に対するVEGFA-mRNA発現量の比を算出し示した。なお、αHB-EGFは抗ヒト HB-EGF 中和抗体(R&D SYSTEMS社製) を、IgG goatは無免疫性ヤギ抗体(シグマ社製) を示す。また、HB-EGFは、PBSに100μg/mLになるよう溶解した組換えヒトHB-EGF (R&D SYSTEMS社製)を示す。
【図2−2】HaCaTでのHB-EGF中和抗体を用いたF2画分及びN画分のVEGFA-mRNA発現確認
【図3】管腔形成(チューブフォーメーション)アッセイによる血管新生促進確認 37℃で6時間培養後の生育状況を写真で示す。
【図4】管腔形成(チューブフォーメーション)アッセイ(図3)による血管新生促進確認 controlサンプルにおける定量結果を100としたときの、試料添加サンプルにおける血管の総面積(AREA)、血管の総延長(LENGTH)、血管の総分岐点の数(JOINT)、一本一本の血管の長さの平均(PATH)の値を算出し示した。
【図5】F2画分並びにN画分のHB-EGF非依存的管腔形成(チューブフォーメーション)促進活性の確認 37℃で6時間培養後の生育状況を写真で示す。
【図6】F2画分並びにN画分のHB-EGF非依存的管腔形成(チューブフォーメーション)促進活性の確認 37℃で6時間培養後の生育状況を血管新生定量ソフトウェアver. 2.0 (クラボウ社製) を用いて解析した結果を示す。controlサンプルにおける定量結果を100としたときの、試料添加サンプルにおけるAREA、LENGTH、JOINT、PATHの値を算出し示した。
【図7】マウス皮膚に塗布したF2画分及びN画分による表皮層におけるVEGF産生促進能の確認。
【図8−1】マウス皮膚に塗布したF2画分及びN画分による毛成長促進活性の確認 塗布開始25日目に写真撮影。
【図8−2】マウス皮膚に塗布したF2画分及びN画分による毛成長促進活性の確認 毛成長スコアによる評価を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.はじめに
1−1 . 琥珀とは主にマツ属植物の樹脂が長期間地下に埋没し凝結してできた化石で、主に樹脂、精油、コハク酸等を含む。エタノールやジエチルエーテル或いはベンゼンに少量溶ける(非特許文献1)。琥珀そのものを装飾工芸品、宝石、絶縁材料に用いたり、琥珀の削りカスをお香にするなどの用途のほかに、19世紀頃にはキズ薬などに使用されていた(非特許文献2)。さらに老化に伴う種種の病気に対する防止効果が言い伝えられてきた(ヤマノビューティメイトHP http://www.yamanobeautymate.com)。
【0015】
1−2.VEGF(血管内皮細胞増殖因子)
VEGFは、血管新生を促進する作用を持つ脈管新生及び血管新生に関与する一群の糖タンパク質であり、細胞分裂や遊走、分化を刺激し、微小血管の血管透過性を亢進させる働きを持つ。VEGFファミリーには、VEGFA、VEGFB、VEGFC、VEGFD、VEGFE、などが含まれる。本発明に係る新規VEGF産生促進剤のうちF2画分並びにN画分を培養ヒト由来不死化表皮角化細胞に投与し、GeneChipRによる網羅的な遺伝子発現解析を行ったところ、F2画分によってcontrolと比較してVEGFA-mRNA発現量が1355%に上昇したのに対し、VEGFB-mRNA並びにVEGFC-mRNA発現量は変化しなかった。一方、N画分はVEGFA-mRNA発現量を3767%、VEGFB-mRNA発現量を281%、VEGFC-mRNA発現量を311%上昇させた。VEGFD及びVEGFE-mRNA発現量の変化については調べていない。VEGFファミリーの中で主として血管新生に働くのがVEGFA及びVEGFEであり、VEGFBはVEGFAよりも血管新生促進活性が1/10かそれ以下と非常に弱く、単球走化作用などに関与し、VEGFC及びVEGFDはリンパ管内皮細胞の増殖に関与している(非特許文献10)。そこで、以下本発明では血管新生活性が一番強いVEGFAに着目した。
【0016】
ヒトのVEGFAには、オルタナティブスプライシング(Alternative splicing)により、アミノ酸数が121個 (VEGFA121)、165個 (VEGFA165)、189個 (VEGFA189)、206個 (VEGFA206)の4種類の主要なスプライシング多型が存在している。
【0017】
VEGFには、新たな血管を形成することにより血流が改善し、それによる創傷治癒促進効果や肌色改善効果、さらには育毛・養毛効果等がある。
【0018】
2.琥珀から抽出したVEGF産生促進剤の調製方法
本願発明の琥珀から抽出したVEGF産生促進剤としては、琥珀から抽出した抽出物であってVEGF産生促進能を有する成分を含有する琥珀抽出物、該琥珀抽出物の粗精製物、および該琥珀抽出物から精製した組成物が包含される。本願発明においては、特に、琥珀から抽出したVEGF産生促進剤及びその調製方法が提供される。
【0019】
具体的には、本願発明のVEGF産生促進剤には、以下の2−1.及び2−2.でそれぞれ説明される(1)VEGF産生促進能を有する成分を含有する琥珀からの抽出物の調製、及び(2)VEGF産生促進能を有する成分を含有する、琥珀からの抽出物の粗精製物及び該抽出物を精製した組成物が包含される。
【0020】
2−1.琥珀から抽出したVEGF産生促進剤の調製
皮膚細胞に働きかけて、活性化させる組成物として、VEGF産生促進剤を琥珀から抽出することにより調製することができる。該抽出物もVEGF産生促進剤として用いることができる。
【0021】
本願発明のVEGF産生促進能を有する成分を含有する抽出物を琥珀から抽出する方法には、琥珀から低級アルコールで抽出する工程を含んでいる。より具体的には、本願発明は、少なくとも、琥珀から有効成分としてVEGF産生促進能を有する成分を含有する抽出物(組成物)を低級アルコールで抽出する工程を含み、好適には、抽出の前処理工程として、琥珀を粉砕する工程、及び、必要に応じて、粉砕された琥珀を疎水性有機溶媒で洗浄処理する工程が含まれる。また、本願発明には、前記琥珀から低級アルコールで抽出する工程により抽出された抽出物を炭化水素結合型シリカゲルカラムで分画する工程を含めることもできる。
【0022】
以下に工程について説明する。
(i)前処理工程
琥珀を溶媒抽出しやすいように、適宜な大きさまで粉砕する。粉砕手段としては、やすり、ジェットミル粉砕機を用いることができる。また、琥珀を宝石として加工する際に出る切りくずを粉砕したものなどを用いることもできる。粉砕する大きさは特に限定されないが、溶媒による抽出効率から見て、例えば、平均粒径が100μmまで、好適には、10〜30μm程度とすることができる。粉砕した琥珀を、必要に応じ、疎水性有機溶媒で、洗浄する。疎水性有機溶媒としては、ヘキサン、ベンゼン、クロロホルム又はこれらの混合物等を用いることができる。この洗浄は、省略することもできる。
【0023】
(ii)抽出工程
琥珀又は前記前処理工程で粉砕若しくは粉砕及び洗浄された琥珀を低級アルコールに浸漬して抽出物を得ることができる。例えば、琥珀又は前記前処理工程で粉砕若しくは粉砕及び洗浄された琥珀を微温もしくは室温で低級アルコールに長期間浸漬して抽出物を得る。具体的には、琥珀又は前記前処理工程で粉砕若しくは粉砕及び洗浄された琥珀を、例えば25℃から50℃の温度で、低級アルコールに、7日以上、好適には15日以上浸漬することにより抽出物を得る。浸漬する時間の上限は特に限定されないが、製造効率の観点から例えば3ヶ月以下とすることできる。より具体的には、例えば、エタノールの場合には、琥珀又は前記前処理工程で粉砕若しくは粉砕及び洗浄された琥珀を、25℃から50℃の温度で7日以上、好適には40℃で約1ヶ月(15日から30日間)浸漬することにより抽出物を得る。抽出物は、濃縮し、乾固すると、茶褐色あめ状の乾固物となる。なお、低級アルコールとしては、炭素数1〜5の直鎖状、分岐状、環状のアルコールであれば特に限定されず、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール又はこれらの混合物などを用いることができる。
【0024】
このようにして得られた抽出物は、VEGF産生促進能を有する成分を含有する組成物として使用できるが、以下に記載するように、更に粗精製、又は精製することもできる。
【0025】
なお、本抽出物は、ヘパリン結合性表皮増殖因子様因子(HB-EGF(Heparin-binding EGF-like growth factor))並びにヒアルロン酸合成酵素3(HAS3(Hyaluronic acid synthase))産生促進活性を有する成分も含有し、HB-EGF産生促進活性並びにHAS産生促進活性を有する組成物としても使用できる。また、本抽出物は、皮膚の乾燥防止剤、保湿剤、シワ防止剤としても使用できる。
【0026】
2−2.VEGF産生促進能を有する成分を含有する抽出物からの粗精製物又は該抽出物から精製した組成物の調製
上記2−1.で得られた(ii)VEGF産生促進能を有する成分を含有する抽出物を、カラムクロマトグラフィー又は二相分離により分画し、粗精製物又は精製した組成物を得ることができる。
【0027】
2−2−1.カラムクロマトグラフィーによる分画
(i)カラムクロマトグラフィー分画工程
得られた抽出物(乾固物)を、低級アルコール、例えば、エタノールに溶かし、炭化水素化学結合型シリカゲル、例えばオクタデシルシリル化したシリカゲルを担体としたカラムクロマトグラフィーを行うことにより、溶出液を分画することができる。特に、最初に溶出される無色透明な液(例えば、全溶出量の1〜5体積%)の次に溶出される、濃黄色透明な液でかつ乾固したとき濃黄色あめ状になる画分(例えば、全溶出量の10〜15体積%)は、保存安定性に優れ、VEGF産生促進能を有している。
【0028】
本画分を、琥珀からのVEGF産生促進能を有する成分を含有する組成物の粗精製物として使用できる。また、本分画は、乾固して又は適切な溶媒、例えば低級アルコール、具体的にはエタノールに溶解して使用できる。このような抽出物の粗精製物は、保存においても非常に安定である。なお、本粗精製物には、HB-EGF並びにHAS3産生促進活性をも有している。前記カラムクロマトグラフィーにより精製した抽出物の粗精製物には、以下の実施例におけるF2画分も含まれる。
【0029】
(ii)吸着カラムクロマトグラフィーによる精製
また、吸着カラムクロマトグラフィーにより、更に精製することができる。
具体的には、吸着カラムクロマトグラフィーとしては、シリカゲルを担体としたカラムクロマトグラフィーを用いることができる。溶出溶媒としては、例えば、ベンゼン、酢酸エチルの混合液を溶媒として、具体的には、ベンゼン:酢酸エチル=50:1で溶出することができる。このように精製したものを、VEGF産生促進能を有する成分を含有する、琥珀抽出物から精製した組成物として用いることができる。
【0030】
2−2−2.二相分離による分画
(i)水溶成分除去
上記2−1.により得られた琥珀の低級アルコール抽出物(乾固物)を、適宜な有機溶媒を用いて、水相と有機溶媒相の二相で更に分画することができる。有機溶媒としては、例えば、低級エーテル、具体的には、ジメチルエーテル又はジエチルエーテルが挙げられる。該有機溶媒に、得られた琥珀の低級アルコール抽出物を溶解し、溶け残った成分を除去する。次に、琥珀抽出物を溶解した有機溶媒を水で洗浄する。具体的には、純水、例えば、超純水製造装置で製造された超純水を添加し、水溶性成分を取り除く。必要に応じて、純水を用いる水溶性成分の除去を3〜5度繰り返す。
【0031】
(ii)中性画分(N画分)
その後、酸性の水溶液及び塩基性の水溶液を、必要に応じ、複数回添加し、混合することにより、それぞれ塩基性の水溶性成分及び酸性の水溶性成分を、最終的に着色成分が除かれるまで、除去する。まず酸性の水溶液で3〜5回洗浄し、次に、塩基性の水溶液で、複数回洗浄し、琥珀抽出物を溶解した有機溶媒の着色が除かれるまで、洗浄することが望ましい。酸性の水溶液としては、例えば、pH3.0の希塩酸、塩基性の水溶液としては、例えば、pH12.0の水酸化ナトリウム水溶液を用いることができる。最後に純水で洗浄する。
【0032】
水溶成分が除去された琥珀抽出物溶解有機溶媒から有機溶媒を揮発させ、VEGF産生を促進する組成物を得ることができる。前記二相分離による組成物には、以下の実施例における中性画分(N画分)も含まれる。
【0033】
上記中性画分は、VEGF産生促進能を有する成分を含有する琥珀抽出物からの粗精製物又は該抽出物から精製した組成物として用いることができる。
【0034】
2−3.VEGF産生促進能の確認
本願発明の琥珀抽出物の粗精製物又は該抽出物から精製した組成物がVEGF産生促進能を有することは、例えば、これらを培養細胞に投与して、VEGFA-mRNAの発現を測定することにより確認することができる。或いは、管腔形成(チューブフォーメーション)アッセイで確認できる。具体的には、本願発明の琥珀抽出物の粗精製物又は該抽出物から精製した組成物を細小血管内皮細胞培養用の培地を用いて、血管内皮細胞を培養し、血管新生促進作用があるか否かを確認することができる。
【0035】
或いは、鶏胚漿尿膜法(chorioallantoicmembrane assay 法、CAM法)、ウサギ角膜法、マウス背部皮下法(dorsal air sac 法、DAS法)を用いることもできる。さらに、試料を、マウス皮膚に塗布し、抗VEGF抗体を用いて、表皮層におけるVEGF産生促進能の確認することもできる。
【0036】
更に、本願発明のVEGF産生促進能を有する成分を含有する抽出物の粗精製物又は該抽出物から精製した組成物が、従来公知のVEGF産生促進能を有するものとは異なることを、例えば次のようにして示すことができる。
【0037】
上記したVEGF産生促進能の確認方法において、公知のVEGF産生促進能を有する組成物に対する抗体などのアンタゴニストを、本願発明の抽出物の粗精製物又は該抽出物から精製した組成物と共に培養細胞に投与して、VEGF産生促進能が変化するか否かを見ることにより確認することができる。
【0038】
本願発明の琥珀由来のVEGF産生促進能を有する粗精製物又は該抽出物から精製した組成物は、新規なVEGF産生促進能を有する成分を含有するものであることが確認できた。
【0039】
2−4.育毛効果、養毛効果の確認
育毛効果、養毛効果、及び/又は発毛効果は、例えば、横山大三郎、油化学、44(4)、266-273 (1995).、足立邦明、香粧会誌、19(1)、20-24 (1995).、或いは、児林昇、薬学誌、113(10)、718-724 (1993)に記載の方法により、確認することができる。より具体的には、例えば、マウス背部を電気バリカンで部分的に刈毛し、シェーバーでさらに剃毛する。馴化飼育した後、試料を、剃毛部位に繰り返し塗布する。一定期間後、被毛の成長を目視し、育毛効果、養毛効果、及び/又は発毛効果を確認することができる。
【0040】
本願発明の琥珀由来のVEGF産生促進能を有する粗精製物又は該抽出物から精製した組成物が育毛作用、養毛作用及び/又は発毛効果を有していることが確認された。
【0041】
3.琥珀から抽出した養毛剤及び/又は育毛剤
本願発明には、琥珀から低級アルコールを用いて抽出した、VEGF産生促進成分を含む養毛剤及び/又は育毛剤が包含される。本願発明の養毛剤及び/又は育毛剤を琥珀から抽出する方法には、琥珀から低級アルコールで抽出する工程を含んでいる。より具体的には、本願発明は、少なくとも、琥珀から有効成分として養毛作用及び/又は育毛作用を有する成分を含有する抽出物(組成物)を低級アルコールで抽出する工程を含み、好適には、抽出の前処理工程として、琥珀を粉砕する工程、及び、必要に応じて、粉砕された琥珀を疎水性有機溶媒で洗浄処理する工程が含まれる。また、本願発明には、前記琥珀から低級アルコールで抽出する工程により抽出された抽出物を炭化水素結合型シリカゲルカラムで分画する工程を含めることもできる。
【0042】
本願発明には、琥珀から抽出した、養毛剤及び/又は育毛剤としては、上記2−2−1.カラムクロマトグラフィーによる分画、及び/又は2−2−2.二相分離による分画より琥珀から抽出して調製された組成物を包含する。
【0043】
養毛剤及び/又は育毛剤全体を100とした場合に、0.0001〜50質量%程度添加することができる。
例えば、上記した2−2−1.カラムクロマトグラフィーによる分画、及び/又は2−2−2.二相分離による分画、いずれについても、養毛剤及び/又は育毛剤全体を100とした場合に、0.001〜5.0質量%程度、より好ましくは、0.001〜1.0質量%添加することができる。具体的には、F2画分及び/又はN画分を、養毛剤及び/又は育毛剤全体を100とした場合に、0.001〜1.0質量%程度添加することができる。
【0044】
4.医薬製剤又は化粧料若しくは頭髪・頭皮用化粧料
本願発明のVEGF産生促進剤、具体的には、例えば、VEGF産生促進能を有する成分を含有する琥珀からの抽出物、その粗精製物又は該抽出物から精製した組成物は、適切な賦形剤を用いて、例えば、医薬製剤又は化粧料とすることができる。例えば、VEGF産生促進能を有する成分を含有する抽出物並びにその粗精製物又は該抽出物から精製した組成物は、乳糖、シリカゲル、結晶セルロース、又はデンプンなどの添加物に吸収させることで、粉体化して製剤とすることもできる。
【0045】
本願発明の医薬製剤又は化粧料には、これらで通常用いられる添加剤を添加することができるが、例えば、牛血清アルブミン、卵白アルブミン、ミルクカゼインなどのタンパク質、マルトース、スクロース、トレハロースなどの糖類、ヘパリン、キトサン、アルギン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、カルボキシメチルセルロースなどの多糖類などを安定化剤として添加することもできる。
【0046】
さらに、増粘剤としては例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、デキストラン、ヒアルロン酸ナトリウム等の水溶性多糖類等が挙げられる。油相の増粘剤として、各種脂肪酸や油脂類等が挙げられる。
【0047】
保存剤としては例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のアルキルパラベン等が挙げられる。
【0048】
4−1.頭髪・頭皮用化粧料
本願発明の琥珀から低級アルコールを用いて抽出したVEGF産生促進剤、具体的には、例えば、VEGF産生促進能を有する成分を含有する琥珀から抽出した抽出物、その粗精製物又は該抽出物から精製した組成物は、化粧料(好ましくは、頭髪・頭皮用化粧料)又は皮膚外用薬(好ましくは、頭髪・頭皮用外用薬)に添加することができる。より具体的には、本願発明の琥珀から低級アルコールを用いて抽出したVEGF産生促進剤を含有する化粧料又は皮膚外用薬は、皮膚外用剤として使用することができる。また、上記3.記載の琥珀から低級アルコールを用いて抽出した育毛剤及び又は養毛剤は、化粧料(好ましくは、頭髪・頭皮用化粧料)又は皮膚外用薬(好ましくは、頭髪・頭皮用外用薬)に添加することができる。
【0049】
本発明の琥珀抽出物は乾固された状態又は適宜な溶媒に溶解した状態、例えば、エタノールで溶解した状態で、化粧料に添加することができる。本発明の抽出組成物の含有量は、化粧料全体を100とした場合に、0.0001〜50質量%程度添加することができる。
【0050】
例えば、上記した2−2−1.カラムクロマトグラフィーによる分画、及び/又は2−2−2.二相分離による分画、いずれについても、化粧料全体を100とした場合に、0.001〜5.0質量%程度、好より好ましくは、0.001〜1.0質量%添加することができる。具体的には、F2画分及び/又はN画分を、化粧料全体を100とした場合に、0.001〜1.0質量%程度添加することができる。
【0051】
本発明の琥珀から抽出したVEGF産生促進剤が添加された化粧料は、その剤形は問わず、乳液,クリーム,軟膏,溶液,ゲル等の剤形や、パック,ローション,パウダー,スティック等が挙げられる。本発明の化粧料には、化粧料の原料として通常用いられるその他の添加剤成分を適宜含有させることができる。また、本発明の化粧料には、通常化粧料原料として用いられるその他の基剤成分を含有させることができる。基剤成分としては、液体油脂(オリーブ油等),固体油脂(シア脂等),ロウ類(ミツロウ等),炭化水素油(流動パラフィン,パラフィン,ワセリン等),高級脂肪酸(ステアリン酸等),高級アルコール(セタノール等),合成エステル油(ミリスチン酸オクチルドデシル等),シリコーン類(メチルポリシロキサン等)等の油性成分,各種の界面活性剤,金属イオン封鎖剤,水溶性高分子(カルボキシビニルポリマー等),増粘剤,各種の粉末成分,香料,水等が挙げられる。
【0052】
4−2.皮膚外用薬
本発明の琥珀から抽出したVEGF産生促進剤は、また、皮膚外用薬(好ましくは、頭髪・頭皮用外用薬)に添加することもできる。
【0053】
皮膚外用薬としては、液状、ペースト状、クリーム状、軟膏状、パウダー状、貼付剤など種々の形態に製造できる。さらに皮膚外用薬には、他の通常添加される成分、例えば、鉱物油、高級アルコール、動植物油、ワックス類、シリコーン油などの油剤、保湿剤、湿潤剤、水溶性高分子、低級アルコール、水、抗酸化剤、pH調整剤、色素、顔料、防腐殺菌剤、消炎剤などの薬効剤、キレート剤などを添加することもできる。
【0054】
皮膚外用薬全体を100とした場合に、0.0001〜50質量%程度添加することができる。
例えば、上記した2−2−1.カラムクロマトグラフィーによる分画、及び/又は2−2−2.二相分離による分画、いずれについても、皮膚外用薬全体を100とした場合に、0.001〜5.0質量%程度、より好ましくは、0.001〜1.0質量%添加することができる。具体的には、F2画分及び/又はN画分を、皮膚外用薬全体を100とした場合に、0.001〜1.0質量%程度添加することができる。
【実施例】
【0055】
[実施例1]
<琥珀エタノール抽出物の調製>
ロシア・バルト海沿岸産琥珀を100メッシュ程度にまで粉砕し、10gをヘキサン100mLに浸漬し、室温で一週間放置後、ろ紙(No. 2) でろ過し、ろ液は廃棄した。ろ取した粉末をエタノール100mLに浸漬し、40℃の水浴上あるいは恒温機内に一週間放置した後、ろ紙(No. 2) でろ過し、ろ液は暗所で保管した。ろ取した粉末はエタノール50mLに浸漬し、アルミホイル等でフタをして40℃の水浴上あるいは恒温機内に一週間放置した後、ろ紙(No. 2) で再度ろ過した。ろ物をさらに50mLのエタノールに浸漬することを2回繰り返し、ろ過後、ろ液をすべて合わせた。これをわずかに温めながら(38℃程度) エバポレーターで濃縮、乾固し、茶褐色であめ状のエタノール抽出物約1.3gを得た。
【0056】
<F2画分の調製>
このエタノール抽出物0.4gをエタノール2mLに溶かし、オクタデシルシリル化シリカゲル(和光純薬工業社製 ワコーゲル100C18) 11gを担体とし、メタノール(和光純薬工業社製 試薬特級)を溶媒としたカラムクロマトグラフィー(カラムサイズ: 2.2cm i.d.×4.7cm) を行い、溶出液を分取した。全溶出液の量が132mlであるうち、最初の5mlの無色透明な液の後に溶出された濃黄色透明である画分(採取量17mL) を集め、エバポレーターで乾固し、濃黄色透明なあめ状画分を330mg得た。この画分をF2とした。
【0057】
<中性(N)画分の調製>
またF2とは別に、エタノール抽出物0.5gをジエチルエーテル(国産化学社製 試薬特級) 20mLに溶かし、溶け残ったものをろ過して除去した後、ろ液を100mL分液ロート(SIBATA社製) に入れ、超純水製造装置(日本ミリポア社製)から採取した超純水5mLを加えて、栓をして振り混ぜ、時々コックを開いて内圧を戻しながら、平衡に達するまで1分程度振り混ぜて抽出した。その後2層に分離するまで5分程静置し、下層を抜いた。再び超純水5mLを分液ロートに加えて抽出し、下層を抜く作業を2回繰り返した。その後、あらかじめ超純水18mLに塩酸(シグマ社製 試薬特級) 2μLを加えて調製しておいたpH 3.0 希塩酸を5mL分液ロートに加えて抽出し、下層を抜く作業を3回繰り返した。そして、超純水5mLを分液ロートに加えて抽出し、下層を抜いた。その後、あらかじめ超純水62mLに水酸化ナトリウム(関東化学社製) 45mgを加えて調製しておいたpH 12.0 水酸化ナトリウム水溶液を5mL分液ロートに加えて抽出し、下層を抜く作業を3回繰り返した。通常、抽出回数は3〜5回で充分に分配できると言われているが(非特許文献11)、pH 12.0 水酸化ナトリウム水溶液を加えて洗浄する際、1回目の下層と3回目の下層が同程度の色(薄黄色)をしていたため、まだ十分に分配できていないと判断し、下層に色がつかなくなるまで12回程度繰り返した。この時、振り混ぜると2層に分離できなくなることがあったが、その際は少量の塩化ナトリウム(和光純薬社 試薬特級)を加えるか、一夜放置するか、分液ロートの中身を取り出して遠心機(KUBOTA社製) で遠心して分離させた。最後に、超純水5mLを分液ロートに加えて抽出し、下層を抜いた。分液ロートに残ったエーテル層を集め、エバポレーターで乾固し、薄黄色固体の画分を105mg得た。この画分をNとした。
【0058】
[実施例2]
<F2画分及びN画分のGeneChipRによる遺伝子解析でのVEGFA遺伝子の発現確認>
ダルベッコ変性イーグル培地(DMEM) (インビトロジェン社製) に5%ウシ血清(FETAL BOVINE SERUM) (EQUITECH-BIO社製) と1%防腐剤(Penicillin-Streptomycin Glutamine) (インビトロジェン社製) を添加した培養液(以下、DMEM培地とする)に、ヒト由来不死化表皮角化細胞(以下HaCaTとする) を2.64×106コ/ mLの濃度で懸濁し、あらかじめDMEM培地を13mL入れておいた直径15cmのディッシュ(Nunc社製) に2mLずつ播種し、95%空気‐5%炭酸ガスの下、37℃で24時間培養した。培養上清を吸引除去後、フェノールレッド不含ダルベッコ変性イーグル培地(インビトロジェン社製) に1%防腐剤(Penicillin-Streptomycin Glutamine) (インビトロジェン社製)を入れた培養液(以下無血清培地とする) を15mLずつディッシュに入れ、さらに48時間培養した。培養上清を吸引除去後、フェノールレッド不含ダルベッコ変性イーグル培地(インビトロジェン社製) に0.1%ウシ血清アルブミン(EQUITECH-BIO社製) と1%防腐剤(Penicillin-Streptomycin Glutamine) (インビトロジェン社製)を入れた培養液(以下、処理用培地とする) を10mL加えた。そこへ、終濃度30μg/ mLになるようエタノールに溶解したF2画分(由来琥珀: 平成14年4月入荷分) 及びN画分(由来琥珀: 平成18年5月入荷) をそれぞれ処理用培地に混ぜたものを(エタノール終濃度: 0.33%)、5mLずつ滴下した。また、処理用培地にエタノール終濃度0.33%になるようエタノールを添加した培養液を処理したものをcontrolとした。これらのディッシュを95%空気‐5%炭酸ガスの下、37℃で24時間培養した。
【0059】
これらをRNA精製キットRNeasy Mini Kit(QIAGEN社製) を用いて、固定及び総RNAを抽出した(産物を以下、total RNAとする) 。total RNA量は分光光度計(Nano Drop) を用いて260nmにおける吸光度により求めた。このtotal RNAをGeneChipR Eukaryotic Poly-A RNA Control Kit(AFFYMETRIX社製) 、GeneChipR Exoression 3’-Amplification One-Cycle cDNA Synthesis Kit(AFFYMETRIX社製) 、GeneChipR Sample Cleanup Module(AFFYMETRIX社製) 、GeneChipR Exoression 3’-Amplification Reagents (AFFYMETRIX社製) を用い、Affymetrix社が推奨するプロトコルに準じてBiotin-Labeledした相補的RNA(以下、cRNAとする) を調製した。GeneChipR Hybridazation Oven 640(Affymetrix社製) にてcRNAをGeneChipRにハイブリダイゼーションした後、GeneChipR Fluidics Station 450(Affymetrix社製) で洗浄し、染色後GeneChipR Scanner 3000(Affymetrix社製) で蛍光強度を読み取った。マイクロアレイデータ解析ソフトウェア GeneSpring GX Ver. 9. 0. 5 (アジレント・テクノロジー社製) を用い、得られた画像データを元に発光量の割合を測定し、controlサンプルのVEGFA-mRNA発現量を100とした時のVEGFA-mRNA発現量、VEGFB-mRNA発現量並びにVEGFC-mRNA発現量の比を算出した。
結果を表1に示した。
【0060】
【表1】

(表1 ヒト不死化表皮角化細胞(HaCaT)を用いたF2画分及びN画分のGeneChipRによるVEGFA、VEGFB並びにVEGFCのmRNA発現変化)
【0061】
HaCaTにF2画分を終濃度30μg/ mLになるよう処理し、24時間培養した場合、controlサンプルと比較してVEGFA-mRNA発現量が1355%発現上昇したのに対し、VEGFB-mRNA及びVEGFC-mRNA発現量は変化しなかった。またN画分を同様に処理した場合はVEGFA-mRNA発現量が3767% VEGFB-mRNA発現量が281%、VEGFC-mRNA発現量が311%発現上昇することが示唆された。従って、F2画分及びN画分は有意なVEGFA-mRNA発現上昇能を有することが示唆された。
【0062】
[実施例3]
<HaCaTを用いたF2画分及びN画分のVEGFA-mRNA発現確認>
DMEM培地に、HaCaTを1.56×106コ/ mLの濃度で懸濁し、あらかじめDMEM培地を4.49mL入れておいた直径6cmのディッシュ(CORNING社製) に512μLずつ播種し、95%空気‐5%炭酸ガスの下、37℃で24時間培養した。培養上清を吸引除去後、無血清培地を5mLずつディッシュに入れ、さらに48時間培養した。培養上清を吸引除去後、処理用培地を3.75mL加えた。そこへ終濃度6、9、12、25μg/ mLになるようエタノールに溶解したF2画分及びN画分をそれぞれ処理用培地に混ぜたもの(エタノール終濃度: 0.25%)を、1.25mLずつ滴下した。また、処理用培地にエタノール終濃度0.25%になるようエタノールを添加した培養液を処理したものをcontrolとした。これらのディッシュを95%空気‐5%炭酸ガスの下、37℃で6時間培養した。
【0063】
これらを上記の実施例2に示した方法でtotal RNAを抽出し、total RNA量を求めた。次いでこのtotal RNAを元に、PrimeScriptTM RT reagent Kit(TaKaRa社製)を用い、添付文書に従ってRT反応を行った。さらにSYBRR Premix Ex TaqTM II(TaKaRa社製)を用い、添付文書に従って反応液を調製した。この反応液をquantitative RT-PCR法によりVEGFA及び内部標準であるGAPDHの各プライマー(インビトロジェン社製) を用いて反応させた。controlサンプルにおけるGAPDH-mRNA発現量に対するVEGFA-mRNA発現量の比を100としたときの、試料添加サンプルにおけるGAPDH-mRNA発現量に対するVEGFA-mRNA発現量の比を算出した。
【0064】
結果を図1に示した。HaCaTにF2画分を終濃度25μg/ mLになるよう処理し、6時間培養した場合、controlサンプルと比較して577%、またN画分を同様に処理した場合は433%と、有意なVEGFA-mRNA発現上昇能を有することが確認された。また、F2画分及びN画分は、濃度依存的にVEGFA-mRNA発現を上昇させることがわかった。
【0065】
[実施例4]
<HaCaTでのHB-EGF中和抗体を用いたF2画分及びN画分のVEGFA-mRNA発現確認>
DMEM培地に、HaCaTを1.46×106コ/ mLの濃度で懸濁し、あらかじめDMEM培地を760μL入れておいた直径3.5cmのディッシュ(ファルコン社製) に240μLずつ播種し、95%空気‐5%炭酸ガスの下、37℃で24時間培養した。培養上清を吸引除去後、無血清培地を1mLずつディッシュに入れ、さらに48時間培養した。培養上清を吸引除去後、処理用培地を710μL加えた。そこへ終濃度25μg/ mLになるようエタノールに溶解したF2画分及びN画分を処理用培地に混ぜたもの (エタノール終濃度: 0.25%)を、それぞれ250μLずつ滴下した。また、処理用培地にエタノール終濃度0.25%になるようエタノールを添加した培養液を処理したものをcontrolとした。さらに、終濃度10μg/mLになるようPBSに溶解した抗ヒト HB-EGF 中和抗体(R&D SYSTEMS社製) (以下、αHB-EGFとする) を40μL滴下した。陰性controlとして、αHB-EGFの代わりに無免疫性ヤギ抗体(シグマ社製) とPBSを用いた。また、αHB-EGFの中和活性があることを確かめるため、PBSに100μg/mLになるよう溶解した組換えヒトHB-EGF (R&D SYSTEMS社製) (以下HB-EGFタンパクとする)をあらかじめ濃度20μg/mLになるようエタノールで希釈し、終濃度50ng/mLになるよう処理用培地に混ぜたものを250μLずつ滴下した。これらのディッシュを95%空気‐5%炭酸ガスの下、37℃で6時間培養した。
【0066】
これらを上記の実施例2に示した方法でtotal RNAを抽出し、total RNA量を求めた。次いで、上記の実施例3に示した方法でquantitative RT-PCR法によりVEGFA及びGAPDHの各プライマーを用いて反応させた。controlサンプルにおけるGAPDH-mRNA発現量に対するVEGFA-mRNA発現量の比を100としたときの、試料添加サンプルにおけるGAPDH-mRNA発現量に対するVEGFA-mRNA発現量の比を算出した。
【0067】
結果を図2−1及び2−2に示した。HaCaTにHB-EGFタンパクを終濃度50ng/mLになるよう処理し、6時間培養した場合PBS処理サンプル、無免疫性ヤギ抗体処理サンプルと比較して、αHB-EGF処理サンプルの結果でVEGFA-mRNAの発現亢進能が有意に抑えられたことから、使用したαHB-EGFは中和活性を有しているということがわかった。これに対して、HaCaTにF2画分及びN画分をそれぞれ終濃度25μg/ mLになるよう処理し、6時間培養した場合、PBS処理サンプル、無免疫性ヤギ抗体処理サンプルと比較して、αHB-EGF処理サンプルの結果に有意な変化はなく、VEGFA-mRNA発現亢進能を有することが確認され、F2画分及びN画分によるVEGFA-mRNA発現亢進はHB-EGFを介さないことがわかった。また、実施例3においてF2画分を終濃度25μg/mLになるよう処理し、6時間培養した場合は、controlサンプルと比較して577%の亢進、またN画分を同様に処理した場合は433%の亢進が認められたが、同条件にPBSを加えた今回のサンプルではF2画分は127%、N画分は181%と、それぞれ亢進率に違いが見られた。これは、細胞のコンディションの違いによるものであると考えられる。
【0068】
[実施例5]
<管腔形成(チューブフォーメーション)アッセイによる血管新生促進確認>
ヒト細小血管内皮細胞培養用低血清培地(以下、MCDB131とする) (シグマ社製) に5%ウシ血清(FETAL BOVINE SERUM) (EQUITECH-BIO社製) と0.01μg/mLFibroblast Growth Factor (PEPROTEC社製) を添加した培養液(以下、MCDB131培地とする)でヒト皮膚微小血管内皮細胞 (以下HMVECとする) を95%空気‐5%炭酸ガスの下、37℃で培養した。実験にはBD MatrigelTM Basement Membrane Matrix Growth Factor Reduced, Phenol Red Free(BD社製) (以下、マトリゲルとする) を96 穴 プレート (ファルコン社製) に50μL /wellずつ分注し、37℃で1時間コートしたものを使用した。培養しておいたHMVECを1.0×105コ/ mLの濃度でMCDB131に1%ウシ血清と0.01μg/mL Fibroblast Growth Factorを添加した培養液(以下、MCDB131飢餓培地とする) に懸濁し、あらかじめマトリゲルをコートしておいた96 穴 プレートに50μLずつ播種した。そこへ終濃度15、25μg/ mLになるようエタノールに溶解したF2画分並びにN画分をそれぞれMCDB131飢餓培地に混ぜた培養液を(エタノール終濃度: 0.25%)、50μLずつ滴下した。また、MCDB131飢餓培地にエタノール終濃度0.25%になるようエタノールを添加した培養液を処理したものをcontrolとした。このプレートを95%空気‐5%炭酸ガスの下、37℃で6時間培養した。解析には、血管新生定量ソフトウェアver. 2.0 (クラボウ社製) を用いた。controlサンプルにおける定量結果を100としたときの、試料添加サンプルにおける血管の総面積(以下、AREAとする)、血管の総延長(以下、LENGTHとする)、血管の総分岐点の数(以下、JOINTとする)、一本一本の血管の長さの平均(以下、PATHとする)の値を算出した。
【0069】
結果を図3及び4に示した。HMVECにF2画分を終濃度15μg/ mLになるよう処理し、6時間培養した場合、controlサンプルと比較してAREAが198%、LENGTHが233%、JOINTが533%、PATHが319%、またN画分を同様に処理した場合はAREAが198%、LENGTHが220%、JOINTが495%、PATHが296%と、有意な血管新生促進活性を含有することが確認された。
【0070】
[実施例6]
<F2画分並びにN画分のHB-EGF非依存的管腔形成(チューブフォーメーション)促進活性の確認>
MCDB131培地でHMVECを95%空気‐5%炭酸ガスの下、37℃で培養した。実験にはマトリゲルを48穴 プレート (ファルコン社製) に150μL /穴ずつ分注し、37℃で1時間コートしたものを使用した。HMVECを1.0×105コ/ mLの濃度でMCDB131飢餓培地に懸濁し、あらかじめマトリゲルをコートしておいた48穴プレートに150μLずつ播種した。そこへ終濃度15μg/ mLになるようエタノールに溶解したF2画分並びにN画分をそれぞれMCDB131飢餓培地に混ぜた培養液 (エタノール終濃度: 0.25%)を、150μLずつ添加した。また、MCDB131飢餓培地にエタノール終濃度0.25%になるようエタノールを添加した培養液を処理したものをcontrolとした。さらに、終濃度10μg/mLになるようPBSに溶解したαHB-EGFを6μL添加した。陰性controlとして、αHB-EGFの代わりに無免疫ヤギ抗体(シグマ社製) とPBSを用いた。また、αHB-EGFの中和活性があることを確かめるため、PBSに100μg/mLになるよう溶解したHB-EGFタンパクをあらかじめ濃度2.0μg/mLになるようPBSで希釈し、終濃度5ng/mLになるよう処理用培地に混ぜたものを150μLずつ添加した。このプレートを95%空気‐5%炭酸ガスの下、37℃で6時間培養した。解析には、血管新生定量ソフトウェアver. 2.0 (クラボウ社製) を用いた。controlサンプルにおける定量結果を100としたときの、試料添加サンプルにおけるAREA、LENGTH、JOINT、PATHの値を算出した。
【0071】
結果を図5、6に示した。HMVECにHB-EGFタンパクを終濃度5ng/mLになるよう処理し、6時間培養した場合、PBS処理サンプル(A-2)及び無免疫ヤギ抗体処理サンプル(C-2)と比較して、αHB-EGF処理サンプル(B-2)は、A-1 vs A-2、C-1 vs C-2でみられる血管新生促進が抑えられていた(B-1 vs B-2)ことから、使用したαHB-EGFは中和活性を有していることが確認された。これに対して、HMVECにF2画分及びN画分をそれぞれ終濃度15μg/ mLになるよう処理し、6時間培養した場合は、PBS処理サンプル(それぞれA-3、A-4)、無免疫ヤギ抗体処理サンプル(それぞれC-3、C-4)と比較して、αHB-EGF処理(それぞれB-3、B-4)による有意な抑制は見られず、F2画分及びN画分による血管新生促進能がHB-EGF活性を中和した状態でも確認され、F2画分及びN画分による血管新生促進はHB-EGFを介さないことがわかった。
【0072】
[実施例7]
<マウス皮膚に塗布したF2画分及びN画分による表皮層におけるVEGF産生促進能の確認>
6週齢のC3Hマウス(日本SLC社)を購入し、1週間馴化飼育した後、背部を除毛剤(カネボウ社製)で除毛した(約2.5 cm×4.0 cm)。一晩馴化飼育した後、F2画分並びにN画分をそれぞれ5 mg/dayあるいは10mg/dayの容量になるようエタノールに溶解したサンプル(25 mg/mLあるいは50 mg/mL)を200μLずつ除毛部位に塗布した。controlとしてはエタノール200μLを同様に塗布した。これを1週間あたり5回塗布(月曜日から金曜日までは24時間ごと5回、土曜日と日曜日は休み)を3週繰り返し、計21日間塗布した。なお、1群につき2匹ずつ用いた。
【0073】
マウス背部皮膚組織を採取し、4%パラホルムアルデヒド水溶液に4℃にて一晩浸漬することにより固定した。常法に従いエタノールで脱水した後、キシレンで置換し、最終的にパラフィン切片に加工した。この切片のパラフィンをキシレンで洗浄後、あらかじめ95℃に加熱しておいた0.1Mクエン酸緩衝液(pH6.0) に浸漬して10分間インキュベーションした。放冷後、PBS緩衝液で洗浄し、3%過酸化水素水に浸漬して室温で10分間インキュベーションした。PBS緩衝液で洗浄後、1.5%ヤギ正常血清(VECTOR社製、VECTASTAIN Elite ABC Rabbit IgG kitに添付)-PBS緩衝液と室温で1時間インキュベーションすることによりブロッキングした後この液を除去し、次いで1.5%ヤギ正常血清-PBS緩衝液中に終濃度0.2μg/mlになるよう希釈した抗ヒトVEGF捕獲抗体(Peprotech社製、Mini Elisa Development Kitに添付、以下αVEGFとする)と4℃で一晩インキュベーションした。陰性controlとしては同濃度の無免疫ウサギ抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories社製、以下IgG rabbitとする)を使用した。 PBS緩衝液で洗浄後、VECTASTAIN Elite ABC Rabbit IgG kitのプロトコルに従ってビオチン標識抗ウサギ抗体と室温で30分インキュベーションし、次いでHRP標識ストレプトアビジンと室温で30分間インキュベーションした。PBS緩衝液で洗浄後、DAB PEROXIDASE SUBSTRATE KIT(VECOR社製)のプロトコルに従ってジアミノベンジジン溶液と室温で9分間インキュベーションした。超純水で洗浄後、マイヤー・ヘマトキシリン液(武藤化学社製)に20秒間浸漬し、精製水で洗浄後、0.1M四ホウ酸ナトリウム緩衝液(pH8.5)に1分浸漬し、精製水で洗浄した。その後、常法に従いエタノール及びキシレンで洗浄し、乾燥後にHistological Mounting Medium(national diagnotics社製)で封入し、顕微鏡下で観察し、撮影した。
【0074】
結果を図7に示した。αVEGFを用いてヒトVEGFを茶色に染色したとき、エタノールで処理したcontrolマウス皮膚組織(A-1)では茶色の染色像がほとんど認められなかったのに対し、F2画分及びN画分を5 mg/dayの容量で処理したマウス皮膚組織(それぞれA-2、A-3)では、表皮層において茶色の染色像が認められた。同様の結果は10 mg/dayの容量で処理したマウス皮膚組織においても観察された。また、陰性controlとしてIgG rabbitを用いた群(B-1、B-2、B-3)では、いずれにおいても茶色の染色像は認められなかった。以上の結果から、F2画分及びN画分はin vivoにおいて表皮ケラチノサイトから産生されるVEGF量を増大させる活性を含有していることがわかった。
【0075】
[実施例8]
<マウス皮膚に塗布したF2画分及びN画分による毛成長促進活性の確認>
5週齢のC3Hマウス(日本SLC社)を購入し、2週間馴化飼育した後、背部を電気バリカン(スライヴ社製)で刈毛(約2.5 cm×4.0 cm)し、シェーバー(ダイエー社製)でさらに剃毛した。一晩馴化飼育した後、F2画分並びにN画分をそれぞれ2 mg/dayあるいは5 mg/dayの容量になるようエタノールに溶解したサンプル(10 mg/mLあるいは25 mg/mL)を200μLずつ、剃毛部位に塗布した。controlとしてエタノール200μLを同様に塗布した。また、陽性controlとしてミノキシジル(シグマアルドリッチジャパン社製)を2 mg/dayになるようエタノールに溶解した1%溶液(10 mg/mL)を200μL同様に塗布した。これを1週間あたり5回塗布(月曜日から金曜日までは24時間ごと5回、土曜日と日曜日は休み)を3.5週繰り返し、計24日間塗布した。なお、1群につき3匹ずつ用いた。被毛の成長は、塗布開始25日目に肉眼観察・写真撮影、及び毛成長スコアにて評価した。なお、毛成長スコアは目視的に0:ほとんど毛の成長が認められない状態、1:産毛が生えた状態、2:正常な毛の見た目0〜10%回復した状態、3:正常な毛の見た目10〜20%回復した状態、4:正常な毛の見た目20〜30%回復した状態、5:正常な毛の見た目30〜40%回復した状態、6:正常な毛の見た目40〜50%回復した状態、7:正常な毛の見た目50〜60%回復した状態、8:正常な毛の見た目60〜70%回復した状態、9:正常な毛の見た目70〜80%回復した状態、10:正常な毛の見た目80〜100%回復した状態を設定し,各マウスの毛成長スコアを求めた。
【0076】
結果を図8−1及び図8−2に示した。controlとしてエタノールを塗布した対照群では、ほとんど毛の成長が認められなかったのに対し、F2画分を2 mg/dayの容量になるようエタノールに溶解したサンプル(10 mg/mL)を塗布した群では、明らかな毛成長が観察された。同様に、N画分を2 mg/dayの容量になるようエタノールに溶解したサンプル(10 mg/mL)を塗布した群においても、毛成長が観察された。さらに、F2画分並びにN画分は、濃度依存的に毛成長を促進することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本願発明は、VEGF産生促進成分を含む頭髪・頭皮用化粧料などの化粧料製造や、さらには同成分を含む育毛・養毛剤の製造、或いは、創傷治癒促進剤や肌色改善剤等の医薬の製造に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
琥珀から低級アルコールで抽出する工程を含むVEGF産生促進剤の製造方法。
【請求項2】
琥珀を粉砕後疎水性有機溶媒により洗浄する工程、低級アルコールで抽出する工程、及びカラムクロマトグラフィーで分画する工程を含む、VEGF産生促進剤の製造方法。
【請求項3】
カラムクロマトグラフィーが、炭化水素が化学結合したシリカゲルを充填剤とする、請求項2項記載の方法。
【請求項4】
琥珀を粉砕後疎水性有機溶媒により洗浄する工程、低級アルコールで抽出する工程、及び二相分離により分画する工程を含むVEGF産生促進剤の製造方法。
【請求項5】
前記二相分離により分画する工程が、低級エーテル及び水相による二相分離により分画する工程であって、水相に酸性の水溶液及び塩基性の水溶液を用いて、それぞれ塩基性の水溶性成分及び酸性の水溶性成分を除去して中性画分を得る工程を含む請求項4記載の方法。
【請求項6】
低級アルコールでの抽出を微温ないし室温で7日以上行なう請求項1〜5いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
疎水性有機溶媒が、ベンゼン、ヘキサン及びクロロホルムからなる群から選択される1種以上の有機溶媒である請求項2〜6いずれか1項に記載のVEGF産生促進剤の製造方法。
【請求項8】
低級アルコールが、エタノール、メタノール、プロパノールもしくはブタノール又はこれらのアルコールからなる群から選ばれる2種以上のアルコール混合物である請求項1〜7いずれか1項記載の方法。
【請求項9】
琥珀から抽出した抽出物を含むVEGF産生促進剤。
【請求項10】
請求項1〜8いずれか1項に記載の方法により得られるVEGF産生促進剤。
【請求項11】
請求項9又は10記載のVEGF産生促進剤を含む養毛剤又は育毛剤。
【請求項12】
請求項9又は10に記載のVEGF産生促進剤を含有する頭髪・頭皮用化粧料。
【請求項13】
請求項9又は10に記載のVEGF産生促進剤を含有する頭髪・頭皮用外用薬。
【請求項14】
琥珀から低級アルコールで抽出する工程を含む方法で抽出した抽出物を含む養毛剤又は育毛剤。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【公開番号】特開2011−256164(P2011−256164A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106743(P2011−106743)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】