説明

環境に配慮した粘着テープ紙及びそれから作られた粘着テープ

【課題】本発明は、リサイクルされたセルロース繊維を含む含浸された紙支持体を有する粘着テープ用の紙、並びにそのような粘着テープ用の紙及び粘着層を含む粘着テープに関する。
【解決手段】リサイクルされたセルロース繊維は、若干粉砕され、長繊維軟材セルロースのグループに主に由来する。必要に応じて粘着テープ紙は分離層及び結合剤層を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクルされたセルロース繊維を含む、含浸された紙支持体を有する粘着テープのための紙(粘着テープ紙)、そのような粘着テープ紙を含む粘着テープ、並びに粘着テープ紙及び粘着テープを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックが含浸され、一面に粘着層を有し、かつ反対の面に粘着剥離層を有する、伸張可能な紙支持体で作られた粘着テープが長い間知られてきた。これらの粘着テープは、厚紙又はプラスチックで作られた芯に巻きつけられ、筒状に形成される。ここで、粘着テープ紙の粘着剥離層(分離層として、又は「剥離コーティング」として示されることがある)は、粘着層に直接接触する。分離層の粘着剥離効果は、使用される特定の粘着剤の粘着力と一致する。結果的に、粘着テープロールの個々の層は互いに強く粘着され、層が自発的に離れて、粘着テープロールがばらばらにならないようにする。他方で、分離層への粘着剤の粘着は、それがロールから剥がされるとき、粘着テープが裂けるのに十分なほど強くはない。そのような粘着テープは、例えば独国特許第3835507号明細書に記載される。
【0003】
これらの粘着テープは、電子部品の製造及び加工において、及び密封包装のために、塗装及び仕上げの間、マスキング物品として主に使用される。使用されると、粘着テープは捨てられ、廃棄物として燃やされ、又は廃棄物処分場に行き着く。環境の観点からみると、特に、もしも粘着テープの製造に関して一次原材料、例えば一次セルロース、が紙支持体として使用されている場合、これは最適な措置ではない。
【0004】
粘着紙テープの環境への負担を改善するために、それらを廃棄紙リサイクルに供することが試された。しかしながら、それらの構造上の理由で、廃棄紙加工の間、粘着紙テープの殆どからセルロース繊維を回収することはできない。粘着紙テープは、プラスチックフィルムのように振舞う。それらは廃棄紙加工において排除され、やはり廃棄物処分場に行き着くか、又は燃やされる。
【0005】
あるレベル以上に高い品質の、及び高価なセルロース繊維の少なくとも一部を回収するために、過去にある程度の取り組みがなされている。
【0006】
例えば、独国特許第4211510号明細書は、再生及び印刷が可能な粘着包装テープを記述する。この場合、長繊維硫酸セルロースから作られた標準サイズのクラフト紙が紙支持体として使用され、紙支持体はクルパック(Clupak)法により作られた。したがって、紙支持体の含浸を省略することができる。含浸が省略されるので、廃棄紙加工の間、セルロース繊維の少なくとも一部は回収され得る。しかしながら、この粘着テープの欠点は、紙支持体が廃棄紙加工において溶解されるとき、粘着層が粉砕され、パルプから完全には取り出されないことである。紙製造のさらなる工程において、その後これらの粘着剤残渣は、それらが孔や粘着性の堆積物を形成して紙ウェブが裂ける原因となるため、製造の妨げとなる。
【0007】
さらに、紙支持体の含浸は、粘着包装テープに関してそうであるように、使用後に、貼付された対象物からどのような残渣も残すことなく取り除かれる必要がない粘着テープに関してのみ省略され得る。塗装及び仕上げのための粘着テープは、通常対象物に非常に強く粘着して、もしも粘着テープの引裂きが試される場合には、非含浸紙支持体が裂けるようにする。割裂又は剥離は、それが粘着層及び粘着テープ紙の一部が貼付された対象物に残るように取り除かれるとき、粘着テープ紙がそれ自身裂けること、すなわち粘着テープと平行に、を意味する。これはもちろん望ましくない。
【0008】
さらに環境に優しい粘着テープを得るために用いる、考え得る他の方法は、高価で、かつ品質が高い一次原材料をリサイクルされた原材料で置き換えること、例えば粘着テープ紙の場合、一次セルロースをリサイクルされたセルロース繊維で置き換えること、であるかもしれない。結果的に、この使い捨て物品、すなわち粘着紙テープ、に関して、木を伐採し加工することはもはや必要ではない。
【0009】
独国特許第4404045号明細書は、この方向性での検討を行っている。この刊行物は、リントローラとして使用するための粘着テープを記述し、支持体テープはリサイクルされた廃棄紙で完全に作られている。この刊行物は、リサイクルされた廃棄紙で作られた紙の内部強度が小さく、したがって粘着テープの支持体としての使用には一般的に適さないことを指摘している。独国特許第4404045号明細書に記載の発明は、非常に弱い粘着剤が同時に使用されるので、可能であるにすぎない。この粘着剤は糸くずやほこりを付着するが、例えば紙支持体の後ろ側やテーブルには非常に弱く粘着するのみである。独国特許第4404045号明細書の教示によれば、付着する粘着剤の粘着力は一般的に支持体テープ(紙支持体)の内部強度と比較して小さいといえる。これは、粘着テープの層がリントローラから巻き出されるとき、その小さな内部強度に起因して、紙支持体が割れたり裂けたりすることを回避するよう働く。独国特許第4404045号明細書は、使用されるリサイクルセルロースの種類、又は粘着テープ紙の製造工程のどちらについても議論していない。この教示による粘着テープは、工業的利用には完全に不向きである。粘着剤は殆どの表面に対して確実に粘着するにはあまりにも弱い。一方で、もしも粘着剤の粘着力が増加された場合、一つ以上の層を巻き出そうとするとき、その非常に小さな内部強度のため、粘着剤は、粘着テープ紙の後ろ側に過剰に粘着し、粘着テープは裂けるだろう。たとえ粘着テープ層をロールから剥がすことが可能であったとしても、今度は貼付された物品からそれを引き離すことが容易ではないだろう。その小さな内部強度が理由でこの段階で同様に割裂するためである。
【0010】
特開平6−248244号公報は粘着テープのための剥離紙を記述し、この剥離紙も同様に、特にリサイクルされた廃棄紙から構成されてよい。この刊行物は、使用される廃棄紙繊維の種類及び製造工程のどちらも特定していない。この剥離紙は、非常に強い粘着剤が僅かしか粘着せず、その結果非常に少ない労力で再度取り除かれうる、シリコーン化合物で作られた分離層を有する。内部強度はこの結合において通常重要ではない。しかしながら、粘着テープ紙とは対照的に、剥離紙はその後物品に粘着される粘着剤で覆われていない。それらはむしろ使用前の粘着テープの粘着剤に対する保護層として働く。粘着テープが物品に粘着される前に、剥離紙は粘着剤から剥がされる。そのような剥離紙自体が粘着剤で覆われたと仮定すると、記述される剥離紙の内部強度は、何ら残渣を残さず貼付された物品から完全にそれを取り除くには、またもや非常に小さい。内部強度又は割裂抵抗は、紙ウェブを二つの個別の層に分割するために克服されなくてはならない力である。
【0011】
このように、電子部品の製造及び加工での塗装及び仕上げにおけるマスキング物品として、及び例えば粘着性包装テープとして使用可能である、幾つかの優れた機械的性質を同時に有する環境に優しい粘着テープに対する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】独国特許第3835507号明細書
【特許文献2】独国特許第4211510号明細書
【特許文献3】独国特許第4404045号明細書
【特許文献4】特開平6−248244号公報
【特許文献5】独国特許第4019680号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、例えば独国特許第3835507号明細書に記載される従来の粘着テープと比較して環境に優しく、かつさらに電子部品の製造及び加工での塗装及び仕上げにおけるマスキング物品として、及び粘着性包装テープとしての使用に適する、要求される強度及び弾力を有する、粘着紙テープ及びそれに使用可能な粘着テープ紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、含浸された紙支持体を含み、紙支持体がリサイクルされたセルロース繊維を含むことにより特徴付けられる粘着テープ用の紙によって、本発明により達成される。粘着テープ紙の有利な実施形態は、請求項2〜11から得られる。そのような粘着テープ紙及び粘着層を含む粘着テープは、請求項12の主題である。
【0015】
ここで、請求項1のプリアンブルは独国特許第3835507号明細書の教示を反映している。本発明の有利な実施形態は他の請求項に記載される。
【0016】
意外なことに、発明者らは、リサイクルされたセルロース繊維を含む含浸紙支持体を含む粘着テープ紙が、前記出願に関連し、品質が高い一次セルロースで作られた粘着テープ紙とほぼ同様の機械的性質を有することを見出した。これは、専門家の観点からも予測できなかった。これは、それらの短い繊維長さ(例えば廃棄紙に由来するリサイクルされたセルロース繊維は、上述の用途分野に関して粘着テープ紙において使用可能であるためは、非常に強度が小さいだろう)に基づいて予測されねばならなかったためである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明による粘着テープ(特に粘着紙テープ)は、リサイクルされたセルロース繊維を含む含浸紙支持体を含み、その少なくとも一面に粘着層を備える。粘着層をより良好に固定するために、粘着剤が塗布される前に、粘着テープ紙は結合剤でさらに被覆されてよい。もしも塗布された粘着剤が感圧性粘着剤であり、粘着テープ紙の一面のみに粘着剤を備える場合、粘着テープ紙の他の側に粘着剥離分離層を備えることが有利である。柔軟性及び平滑性を高めるために、粘着剤がコーティングされる前に、含浸された粘着テープ紙をカレンダ成形することができる。
【0018】
本明細書では「リサイクルされた」セルロース繊維という用語を、「回収された」セルロース繊維の同意語として使用する。これらのセルロース繊維は、例えば廃棄紙から回収される。含浸紙支持体中のリサイクルされたセルロース繊維の量は、そこに含まれる全セルロース繊維(すなわち、リサイクルされたセルロース繊維+リサイクルされていない、すなわち一次のセルロース繊維)に基づいて、好ましくは>50%であり、より好ましくは≧90%、及びさらに好ましくは≧95%である。特に好ましい実施形態によれば、本発明による粘着性テープ紙において、含浸された紙支持体はリサイクルされたセルロース繊維のみを含み、一次セルロース繊維(すなわちリサイクルされていないセルロース繊維)を含まない。
【0019】
本発明によれば、特に適するリサイクルされたセルロース繊維は、2000年7月の「European list of standard grades of recovered papers(CEPI/B.I.R.) and their qualities」によるアンサイズグループ4廃棄紙グレード(クラフトグレード)から回収されたものであると証明されている。好ましい廃棄紙グレードはティッシュペーパ、ティッシュクラフト紙、及び硫酸ボードである。これらの廃棄紙グレードは、高強度、及びそこに含まれるセルロース繊維の粉砕叩解度の低さによって特徴付けられる。それらは特に多量の軟材(例えば、トウヒ、松等)セルロース繊維を含む。軟材セルロース繊維は、広葉樹から作られたセルロース繊維と比較して、一般的に非常に長い繊維長を有する。したがって、本発明による粘着テープ紙の強度に関して、リサイクルされたセルロース繊維が長繊維軟材セルロース繊維であることが有利である。
【0020】
本発明により使用されるリサイクルされたセルロース繊維は、有利には下記表に示される性質を有する。これらの性質を測定するために、単位面積あたりの質量が70g/mである、及び検討対象であるリサイクルされたセルロース繊維100%からなる試験用シートが、ラピッド−コーセン法により製造された。
【0021】
ラピッド−コーセン法による製造方法が、以下に詳細に記述される。検討されるセルロースは、循環空気乾燥チャンバにおいて、4時間、105℃で乾燥された。このように乾燥されたセルロース24gは、その後の対応する粉砕による粉末化のために、水道水の添加によって、2000mlの体積のセルロース−水に増大された。その後懸濁液は粉砕容器に供給される。粉砕は、容器内容物温度15から20℃で、正確に25分間、3000rpmのプロペラ回転速度で実行される。試験用シートを形成するために実施されるサンプリングの際、セルロース懸濁液中のセルロース繊維の分布状態は、非常に均一でなくてはならない。これは、適切な混合ベッセルを用いた良好な混合により実現される。例えば、パルプ懸濁液はディストリビュータに移送されてよい。その後、混合物は水道水を用いて、セルロース−水体積が9000mlとなるまで、希釈される。その後ディストリビュータが運転され、懸濁液は1リットルの測定シリンダ内部に充填されるまで、少なくとも2分間、10分間を超えずに混合される。
【0022】
ラピッド−コーセンシート形成及び乾燥システムが、実際の試験用シートの作成及びその乾燥に使用される。このシステムは、例えばカウチローラ(直径(102−130mm)、長さ(240−260mm)、重さ(3±0.2kg);側面が厚さ20mmのフェルト製)を備える。
【0023】
単位面積あたりの望ましい重さとして70g/mを有して、約800mlの結果物であるパルプ懸濁液が1リットルの測定シリンダ内に充填される。ラピッド−コーセンシート形成及び乾燥システムの充填チャンバが、水で満たされる。約4−5リットルの水を含む充填チャンバ内部に空気が圧入され、パルプ懸濁液が注入される。5秒間渦を起こさせ、空気供給は停止され、水は可能な限り迅速に吸引される。その後、空気がシートを通って10分間吸引される。紙のカバーシートがウェブシート上の中心に配置される。カウチローラは、2秒間シート上にさらなる圧力をかけることなく、二つの相互に直交する方向に後退及び前進される。シート形成スクリーンは支持体スクリーンから取り除かれ、ひっくり返され、その端部は湿ったシート及びカバーシートが落ちるように水平なベース上に少し斜めに叩きつけられた。カウチング後遅くとも1分で、カバーシート上に置かれた湿ったシートが乾燥機の支持スクリーン上に配置される。他のカバーシートが湿ったシートの上部に配置され、その後乾燥機はすぐに閉じられ、真空ポンプを用いて排気される。乾燥段階は約96℃で8−10分、95kPaの不完全真空で実施される。
【0024】
本願において、その性質が検討対象であるセルロース繊維からこのような方法で製造された試験シートは、ラピッド−コーセン法により形成された試験用シートと呼ばれる。
【0025】
ラピッド−コーセン法に関連する標準規格はDIN EN ISO 5269−2である。
【0026】
特に有益な方法で本発明により使用されるリサイクルされたセルロース繊維は、下記表に示される性質を有する(ラピッド−コーセン法による試験用シート形成;試験用シート重さ70g/m)。
【0027】
【表1】

【0028】
紙支持体は、既知の従来技術によるリサイクルされたセルロース繊維を含む紙パルプから作られ、場合により紙パルプ中に存在する汚れの粒子は従来の選別機により取り除かれる。紙パルプ内で、リサイクルされたセルロース繊維の量は上述のとおりであり、すなわちそこに含まれる全セルロース繊維に基づいて、好ましくは>50%であり、より好ましくは≧90%、及びさらに好ましくは≧95%である。紙パルプが、2000年7月の「European list of standard grades of recovered paper(CEPI/B.I.R.) and their qualities」によるアンサイズグループ4廃棄紙グレード(クラフト含有グレード)からなることが特に好ましい。紙パルプは、粘着テープ紙の製造と共通する粉砕ユニットで、一次的な、長繊維の軟材硫酸セルロースを粉砕するのに必要とされるエネルギーインプットの40−80%だけで、より好ましくは50−70%である最大エネルギーインプットで、好ましくは粉砕される。粉砕は紙支持体の強度を高めるのに有利である。必要に応じて、湿潤強度向上剤、保持剤、フィラー及び/又は染料等、紙の製造と共通する添加剤を有する紙パルプを提供することがさらに可能である。
【0029】
紙支持体の紙ウェブは、さらに高い伸縮性又は伸長性が与えられてよい。これは、例えばウェットクレーピング、ドライクレーピング、クルパック法によって実行されてよいが、これらの例示に限定されない。付加的な伸縮性を有する紙ウェブを提供する全ての工程が、紙支持体の製造に適する。
【0030】
ウェットクレーピング法において、シリンダ表面に付着する湿潤ウェブは、抄紙機内でシリンダに隣接するスクレーパを用いてすぐに取り除かれる。クレーピングシリンダの駆動速度と、それに続く移送及び乾燥ユニットの速度との間の差は2から50%に調製されてよく、紙ウェブがこの量によって「クレープ」されるように(すなわち、微細な波型の形成に起因してこの量によって短くされるように)する。
【0031】
ドライクレーピング法は、クレーピングが抄紙機の外側で行われることを除いては、同じ原理に従って働く。既に乾燥されている紙は、クレーピング装置に供給される前に濡らされる。
【0032】
クルパック法においては、既に濡れている紙ウェブがロータリーローラと回転弾性ウェブ、通常はゴムブランケット、との間に挿入される。結果的に、非常に平滑な表面と共に、紙の伸長性が得られる。
【0033】
このように製造された紙支持体は単位面積あたりの重さが、30−100g/m、好ましくは35−60g/m、破断伸びが2−20%、好ましくは5−15%、乾燥状態での長手方向の破断強度が25−100N/15mm、好ましくは25−60N/15mm、乾燥状態での横方向の破断強度が20−80N/15mm、好ましくは10−20N/15mm、割裂強度が少なくとも1.7N/15mm、好ましくは少なくとも2.5N/15mm、及び厚みが0.05−0.150mm、好ましくは0.100−0.120mmである。
【0034】
紙支持体は実質的に含浸される。これは紙支持体が含浸剤で浸漬されることを意味する。含浸と、単なる表面的なコーティングとは区別されなくてはならない。含浸は本発明の粘着テープ紙、及び、必要な強度及び柔軟性を有する、それで作られた粘着テープを提供するのに必要であり、後続のコーティングに対して非吸収性の基盤を形成する。適切な含浸剤はポリマー懸濁液、ポリマー溶液、又はそれらの混合物である。
【0035】
ポリマー懸濁液で考えると、例えばアクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、アクリロニトリルブタジエンゴム、アクリル酸エステル−スチレンコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、スチレンブタジエンゴム、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、天然ゴム、又はそれらの混合物から作られる水性懸濁液である。
【0036】
適切なポリマー溶液は、例えばポリビニルアルコール水溶液、澱粉水溶液、フェノール樹脂のメタノール溶液、エポキシ樹脂のメタノール溶液、又はそれらの混合物である。
【0037】
本発明による特に適切な含浸剤は、−30℃から+10℃の間、好ましくは−10℃から+5℃の間のガラス転移温度を有する水性スチレン−ブタジエンゴム懸濁液である。含浸剤の量は、含浸される紙支持体の重さに基づき、乾燥懸濁液が5wt%から50wt%の間、好ましくは10wt%から20wt%の間である。
【0038】
様々な添加剤及び/又はフィラーが含浸剤に添加されてよい。添加剤の例として、染料、架橋剤、疎水化剤、撥油剤、親水化剤、又はそれらの混合物が挙げられる。例えば、カオリン、二酸化チタン、滑石、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素、又はそれらの混合物がフィラーとして使用されてよい。
【0039】
粘着テープ紙の特別な実施形態として、分離層が含浸紙支持体の一つの面に設けられる。この分離層は、例えばアクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、アクリル酸−スチレンコポリマー、スチレンブタジエンゴム、長鎖脂肪酸及び/又は脂肪族アルコール誘導体、パラフィン、シリコーン化合物、又はそれらの混合物に基づく水性懸濁液を塗布することによって製造されてよい。この関係で使用される成分の混合比の結果として、分離層の効果は多数の様々な添加剤と匹敵し得る。乾燥後の塗布量(乾燥コーティング量)は1−5g/m、好ましくは2−3g/mである。
【0040】
本発明による粘着テープ紙の他の実施形態は、結合剤層を形成するための、分離層を持たない含浸紙支持体の側、すなわち粘着テープの製造において粘着剤で被覆される側、の結合剤の塗布から得られる。結合剤は、好ましくは天然ラテックス、アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリル酸エステル、又はそれらの混合物に基づく水性懸濁液からなる。乾燥後の塗布量(乾燥コーティング量)は1−5g/m、好ましくは1−2g/mである。
【0041】
含浸剤及び分離層の両方並びに結合剤は、様々な添加剤及び/又はフィラーと混合されてよい。添加剤の例として、染料、架橋剤、疎水化剤、撥油剤、親水化剤、又はそれらの混合物が挙げられる。例えば、カオリン、二酸化チタン、滑石、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素、又はそれらの混合物がフィラーとして使用されてよい。
【0042】
紙支持体の含浸及び含浸された紙支持体のコーティングは、特定の目的に合わせて設計された含浸及びコーティング機内で、抄紙機の内部又は外部のどちらかで行われてよい。適切な含浸法は、例えばサイズプレス、浸漬含浸、発泡含浸、ロール含浸、又は噴霧である。適切なコーティング法は、例えばロールドクター、ドクターブレード、エアブラシ、又はローラ塗布である。
【0043】
表面の平滑さ及び柔軟性を向上するために、分離層及び/又は結合剤でコーティングされた含浸紙をカレンダ成形することが可能である。ここで、本発明による粘着テープ紙は、割裂圧力30−300N/mm、好ましくは50−150N/15mmで、スチールローラとゴムローラとからなる一対のローラの隙間を通過し、分離層の側がスチールローラと接触することが好ましい。カレンダ温度は20℃から70℃の間、好ましくは60℃から70℃の間である。
【0044】
粘着テープを製造するために、本発明による粘着テープ紙も粘着層を備える。もしも粘着テープ紙が分離層を有する場合、粘着剤は反対側に塗布される。使用される粘着剤は、感圧性粘着剤、又は溶媒、好ましくは水を用いる湿潤化により、若しくは加熱により活性化される粘着剤のどちらかであってよい。当技術分野の粘着紙テープに関して知られる全てのタイプの粘着剤が考えられる。適切な粘着剤の選択は、本発明による粘着テープの使用目的に依存する。塗布される粘着剤の重さは、20g/mから50g/mの間、好ましくは30g/mから35g/mの間の範囲である。
【0045】
試験法

DIN EN ISO 536による単位面積あたりの重量

支持圧力20N及び測定表面200mmを有するDIN EN ISO 534による厚み

DIN EN ISO 1924−2による長手方向及び横方向における、乾燥状態の破断強度

DIN EN ISO 1924−2による長手方向及び横方向における、乾燥状態の破断伸び

破断長さ: R=1000×F/(m×b×g)
R=破断長さ
=DIN EN ISO 1924−2による長手方向における、乾燥状態の破断強度
=DIN EN ISO 536による単位面積当たりの質量
b=試験片の幅(mm)
g=9.81m/s

DIN ISO 8787による長手方向及び横方向における吸引高さ

4紙シートサンプルパッケージでの、DIN EN 21974によるエルメンドルフによる引裂抵抗

DIN ISO 5267−1ショッパーリグラーによる叩解度

割裂強度:
【0046】
約52mmの幅及び約200mmの長さを有するストリップが、予め23℃でかつ相対湿度50%で24時間調整済みの粘着テープ紙サンプルから切り出される。ここで200mmの長さを有する側は、紙の走行方向に平行に伸びる。幅50mm、及び長さ約150mmの粘着試験テープScotch2836のストリップが、その後このサンプルに貼り付けられる。粘着試験テープは、粘着試験テープに関して最も強い粘着を有する、検討対象である粘着テープ紙サンプルの一側に粘着される。その後、検討対象である粘着テープ紙及び粘着試験テープの複合体は、重さ4.5kg及び幅50mmを有するスチールローラを用いてプレスすることにより接合される。スチールローラは、付加的な圧力を与えることなく、複合体の上を手動で2回転がされる(後ろに1回、前に1回)。その後、15mmの幅と、全体の長さを有する二つのストリップが、この複合体から切り出される。粘着試験テープは、検討対象である粘着テープ紙がサンプルの全幅にわたって分離されるように検討対象である粘着テープ紙が突出する、二つの側部のうち一つから手で剥がされる。もしも検討対象である粘着テープ紙上の粘着試験テープの粘着が弱く、かつ割裂強度が非常に高い場合、検討対象である粘着テープ紙は、かみそりの刃で注意深く切り、その後粘着試験テープによって更に分離されなくてはならない。割裂強度は、以下の設定を有する、Zwick社のロールタイプZ0.5万能試験機で測定される。
測定レンジ 0.5F
プログラム割裂強度
速度300mm/min
クランプ距離50mm
フォワードパス20mm
試験距離80mm
【0047】
手で取り除かれたScotch2836粘着試験テープは、引張試験機の上方クランプに固定される。試験される粘着テープ紙は、複合体が引張方向に関して90°の角度で突出するように、万能試験機の下方クランプに固定される。測定の間、割裂が試験される粘着テープ紙の中央で起こり、個々の繊維が紙表面から引き出されるだけではないように、注意が必要である。割裂が中央で起こっていない測定結果は無視され、やり直される。測定されるのは、紙を割裂するのに要求される平均の力である。結果は、二つの別個の測定からの平均値である。
【0048】
例1(実施例)
粘着テープベース紙を製造するために、ティッシュクラフト紙グレードの、茶色の、C.A.Lensing Entsorgung GmbHの100%廃棄紙が、ティッシュクラフト紙、茶/白の名で、使用された。この廃棄紙グレードのセルロース繊維は、以下の性質を有していた(DIN EN ISO 5269−2によるラピッド−コーセン法により製造された試験用シートで測定され、試験用シートの重さは70g/m)。
【0049】
【表2】

【0050】
紙ウェブは、抄紙機において、上述の廃棄紙から、通常どおりに作られた。粉砕中のエネルギー入力は10kWh/100kg繊維質量であった。紙ウェブは、クレーピングシリンダ上に湿潤状態のままで移送され、そこから独国特許第4019680号明細書に記載されるようなスクレーパによって移動され、その後乾燥シリンダによって乾燥された。このように製造された粘着テープベース紙(紙支持体)は以下の性質を有する。
単位面積当たりの重さ 48.8g/m
厚み 0.127mm
長手方向の乾燥状態における破断強度 39.7N/15mm
横方向の乾燥状態における破断強度 16.9N/15mm
長手方向の乾燥状態における破断伸び 7.0%
横方向の乾燥状態における破断伸び 11.6%
長手方向の吸引高さ 20mm
横方向の吸引高さ 25mm
全体としての吸引高さ 45mm
【0051】
粘着テープ紙の紙支持体はその後、Polymerlatex社から入手可能である、Litex SX 1009グレードの水性スチレンブタジエンゴム懸濁液を備える浸漬含浸に浸され、その後乾燥された。ゴムのガラス転移温度は−6℃である。含浸重さは乾燥後5g/mであり、これは繊維量に基づき、10.2%の割合に相当する。
【0052】
他の工程段階において、含浸された紙は、Rohm and Haas社のPrimal R253からなる3g/mの分離層で一面をコーティングされ、反対の面をCentrotrade社のGraftex49からなる結合剤でコーティングされた。この紙は、各コーティング段階の後で完全に乾燥された。
【0053】
最後に、含浸され、かつコーティングされた粘着テープ紙は、スチールローラとゴムローラとの間で、割裂圧力50N/mm及び温度70℃で、カレンダ成形された。この場合、分離層の側がスチールローラと接触した。
【0054】
このように製造された含浸され、かつコーティングされた粘着テープ紙の性質は、表1に示される。
【0055】
例2(比較例)
粘着テープベース紙を製造するために、Interconti ECF 90の名称でCanfor社から入手可能である、NBSKグレードセルロースが使用された。このセルロースグレードの繊維は以下の性質を有していた(DIN EN ISO 5269−2によるラピッド−コーセン法により製造された試験用シートで測定され、試験用シートの重さは70g/m)。
【0056】
【表3】

【0057】
紙ウェブは、抄紙機において、上述のセルロースから、通常どおりに作られた。粉砕中のエネルギー入力は17kWh/100kg繊維質量であった。紙ウェブは、クレーピングシリンダ上に湿潤状態のままで移送され、そこから独国特許第4019680号明細書に記載されるようなスクレーパによって移動され、その後乾燥シリンダによって乾燥された。このように製造された粘着テープベース紙は以下の性質を有していた。
【0058】
湿潤クレープ状紙ウェブは、このように製造された従来法によるセルロースパルプから作られた。これは、以下の性質を有していた。
【0059】
単位面積当たりの重さ 41g/m
厚み 0.100mm
長手方向の乾燥状態における破断強度 38N/15mm
横方向の乾燥状態における破断力 16N/15mm
長手方向の乾燥状態における破断時の伸び 13%
横方向の乾燥状態における破断時の伸び 5%
長手方向の吸引高さ 30mm
横方向の吸引高さ 45mm
全体としての吸引高さ 75mm
【0060】
このように製造された紙ウェブは、その後Polymerlatex社から入手可能である、Litex 1009グレードの水性スチレンブタジエンゴム懸濁液を備える浸漬含浸によって含浸された。ゴムのガラス転移温度は−4℃である。含浸重さは乾燥後15g/mであり、これは繊維量に基づき、40%の割合に相当する。
【0061】
他の工程段階において、含浸された紙は、Rohm and Haas社のPrimal R253からなる3g/mの分離層で一面をコーティングされ、反対の面をCentrotrade社のGraftex49からなる結合剤1g/mでコーティングされた。この紙は、各コーティング段階の後で完全に乾燥された。
【0062】
このように製造された粘着テープ紙の性質が表1に示される。
【0063】
【表4】

【0064】
二つの例の比較によって、リサイクルされたセルロース繊維の使用にもかかわらず、本発明による粘着テープ紙(例1)が、高品質一次セルロース(例2)で作られた粘着テープ紙とほぼ同じ性質を有し、その結果従来意図される用途の全てに適することが、明らかになる。長手方向の乾燥状態における破断時の伸びの相違は、クレーピング段階の装置の設定から来るものであり、繊維用途の相違に起因しない。予期されるように、本発明による紙の割裂強度(例1)は、高品質一次セルロース(例2)を含む紙と比較して低い。しかしながら、意外にも、さらなる加工及び使用の間に生じる要求に適合する程度に十分高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含浸された紙支持体を含み、前記紙支持体がリサイクルされたセルロース繊維を含むことを特徴とする、粘着テープ用の紙。
【請求項2】
前記リサイクルされたセルロース繊維が軟材セルロース繊維であることを特徴とする、請求項1に記載の粘着テープ用の紙。
【請求項3】
前記リサイクルされたセルロース繊維が、CEPI/B.I.R.−標準グレードのEuropean Listによるグループ4のアンサイズ廃棄紙グレードに由来することを特徴とする、請求項1又は2に記載の粘着テープ用の紙。
【請求項4】
前記リサイクルされたセルロース繊維の粉砕度が、50°Schopper Riegler未満であることを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載の粘着テープ用の紙。
【請求項5】
リサイクルされたセルロース繊維100%からなる試験用シートが、単位面積当たりの重さが70g/mであり、ラピッド−コーセン法により形成され、乾燥状態における破断強度が少なくとも35N/15mmであり、且つ/又は吸引高さが0mmを超えることを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載の粘着テープ用の紙。
【請求項6】
前記含浸された紙支持体の割裂強度が1.7N/15mmを超えることを特徴とする、請求項1から5の何れか一項に記載の粘着テープ用の紙。
【請求項7】
前記紙支持体の一面が分離層を備えることを特徴とする、請求項1から6の何れか一項に記載の粘着テープ用の紙。
【請求項8】
前記紙支持体が、分離層とは反対の側に結合剤層を有することを特徴とする、請求項7に記載の粘着テープ用の紙。
【請求項9】
カレンダ成形されることを特徴とする、請求項7又は8に記載の粘着テープ用の紙。
【請求項10】
スチールローラとゴムローラとの間で、割裂圧力30−300N/mmで、かつ20℃から70℃の間の温度で、カレンダ成形されることを特徴とする、請求項9に記載の粘着テープ用の紙。
【請求項11】
前記含浸された紙支持体中のリサイクルされたセルロース繊維の量は、そこに含まれる全セルロース繊維に基づいて、>50%であり、好ましくは≧90%であることを特徴とする、請求項1から10の何れか一項に記載の粘着テープ用の紙。
【請求項12】
請求項1から11の何れか一項に記載の粘着テープ用の紙、及び粘着層を含む、粘着テープ。
【請求項13】
リサイクルされたセルロース繊維、及び任意に紙製造のための添加剤を含む紙パルプを粉砕し、紙支持体ウェブに加工し、前記紙支持体ウェブはその後含浸される、請求項1に記載の粘着テープ用の紙の製造方法。
【請求項14】
請求項1から11の何れか一項に記載の粘着テープ用の紙の上に、特に請求項8に記載の結合剤層の上に、粘着剤を塗布する段階を含む、粘着テープの製造方法。
【請求項15】
粘着テープの製造における、請求項1から11の何れか一項に記載の粘着テープ用の紙の使用。

【公開番号】特開2011−226051(P2011−226051A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−94900(P2011−94900)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(511100969)ネーナー・ゲスナー・ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】