説明

環境マネージメントシステム、その方法及びプログラム

【課題】既存で定量化されている工事積算システムにおける歩掛データや積算データを効率的に利用し、簡易かつ簡便に環境影響評価データを自動生成し、環境影響評価書(表)を出力する環境マネージメントシステムを提供する。
【解決手段】環境マネージメントシステム100は、歩掛マスタ112や資源別環境マスタ114等が格納されている記憶手段110と、評価対象工事の情報を入力する入力手段120と、評価対象工事に含まれる各要素およびそれらの数量を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成手段125と、環境側面データおよび環境影響データを含む環境影響評価データを前記演算手段を使用して生成する環境評価データ生成手段130と、前記環境影響評価データを編集し環境影響評価表として出力する出力手段135等から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設関連の会社を対象とした環境マネージメントシステム、その方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
環境マネージメントシステムは、国際規格ISO14001およびこれに則った日本工業規格JISQ14001(非特許文献1を参照されたい)などで新しく規定されて出現した環境管理手法で、環境監査、環境パフォーマンス評価、環境ラベル、ライフサイクルアセスメントなど、環境マネジメントを支援する様々な手法に関する規格から構成されている。これらは経営面での管理手法について定めているものであり、具体的な対策の内容や水準を定めるものではなく、かなりの程度、個々の事業者に委ねられている。また、ISO14001規格は、計画、実施及び運用、点検及び是正処置、経営層による見直し、という、プラン(計画)−ドゥー(実行)−チェック(点検)−アクション(見直し)から成るいわゆるデミングサイクルで構成されるものであり、ISO14001の求めるマネージメントシステムでは、このサイクルの実施が求められている。
従って、この環境ISOに準拠(登録審査及び維持審査に合格)するためには、事業活動のすべてを網羅して、環境に対する影響を算出・評価しなければならないが、手計算でも、コンピュータを用いるにしても、手際よく、定量的に処理する方法を模索しているのが現状である。このような状況において、企業が独自にISO関連の書類を整えその登録を受けることは非常に困難であり、一般的には、専門のISOコンサルタントに依頼し、環境評価に関する書類を作成してもらう必要があった。さらに、このISOは一定の周期で維持審査があり、上述したデミングサイクルを常時実践し続け、環境影響評価表を作成する必要があった。
ところで、建設会社では、施工する工事に関して環境に影響を及ぼす要素(典型的なものは工事用重機による騒音や排出ガスなど)が多数存在し、これらの各要素の影響を考慮した環境影響評価表を作成する必要があるが、1つの工事であっても様々な多数の要素(工程)から構成されており、さらに、建設会社では多数の工事を抱えているのが通常であるため、多数の工事の各要素の環境影響を適切に評価した環境影響評価表を作成するのは非常に労力や時間がかかるものであった。
【非特許文献1】JISQ14001「環境マネージメントシステム―仕様及び利用の手引」(1996年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した諸問題に鑑みて、本発明は、建設関連の会社を対象とした環境マネージメントシステムであって、より詳細には、既に存在し、定量化されている建設工事積算システムにおける歩掛データや積算データを効率的に利用して、人手やコストをかけずに簡易かつ簡便に環境影響評価データを自動生成し、このデータを編集した環境影響評価書(表)を出力する環境マネージメントシステムを提供することを目的とする。
【0004】
また、従来の建設業界では、いわゆる歩掛を用いた積算方式(積み上げ)を使って歩掛積算テーブルを構築し、或いは標準的な積算テーブルを用いて、これに適合した工事単位を工事名称として使用し、単価計算や入札などを行ってきていた。しかしながら、諸官庁によって、コストの削減、価格の透明性などを目的として、工事を構成する個々の要素の単価を積み上げずに、包括的な施工対象の工事別のユニットプライス型積算方式(施工単価形式)を用いた入札・受注の形態に変化してきている。このようなユニットプライス形式とは、発注者と受注者の取引価格をベースに、工事目的物の施工単価(ユニットプライス)を調査・決定する方式である。具体的には、例えば、工事目的物の工事名称がアスファルト舗装工(車道部)、契約単位が200m、その値段が2千万円などの形式である。本発明は、今後、広く使われるであろうユニットプライス形式の積算方式でも、簡易かつ簡便に環境影響評価データを自動生成し、このデータを編集した環境影響評価書(表)を出力する環境マネージメントシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した諸課題を解決すべく、本発明による環境マネージメントシステムは、
複数の工事の名称、および前記複数の工事の各々に含まれる各要素(工程)の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、工事(に含まれる各要素)に関連する各資源別(例えば、クラムシェル、バックホウなどの建設機械別)に環境側面情報およびそれに関連付けられた環境影響情報が規定されている資源別環境マスターテーブルとが格納されている記憶手段と、
少なくとも工事名称を含む評価対象工事の情報(例えば、工事名称(工種)=バックホウ掘削など)を入力する入力手段と、
前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象工事の情報に基づき、前記評価対象工事に含まれる各要素(及び、望ましくはそれらの標準的な数値情報)を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成手段と、
前記生成された内訳データに基づき、前記資源別環境マスターテーブルを参照して、環境側面データおよび環境影響データを含む環境影響評価データを前記演算手段を使用して生成する環境評価データ生成手段と、
前記環境影響評価データを編集し環境影響評価表として出力する出力手段(プリンタ、またはCRTなど)と、
を含むことを特徴とする。
本発明によれば、評価対象工事の簡易な情報を提供するだけで、歩掛マスターテーブルのデータを利用することによって、その工事に関連する各要素の環境影響評価データを自動的に労力や人手をかけずに自動的に生成し、環境影響評価データを含む環境影響評価表を出力することができるようになる。また、対象工事に関する数値情報が与えられてなくても、対象工事を標準的な数量の工事と仮定して、これに含まれる各要素に対する標準的な歩掛データの数値を使用して数値情報を付加することもできる。このように、本発明によれば、ISOコンサルタントなどの助けを得ずに簡易かつ自動的に環境影響評価表を作成することが可能となる。
【0006】
また、本発明による環境マネージメントシステムは、
複数のユニットプライス形式の工事の名称、および前記複数のユニットプライス形式の工事の各々に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、工事に関連する各資源別の環境側面情報およびそれに関連付けられた環境影響情報が規定されている資源別環境マスターテーブルとが格納されている記憶手段と、
少なくともユニットプライス形式の工事名称を含む評価対象工事の情報を入力する入力手段と、
前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象工事の情報に基づき、前記評価対象工事に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成手段と、
前記生成された内訳データに基づき、前記資源別環境マスターテーブルを参照して、環境側面データおよび環境影響データを含む環境影響評価データを前記演算手段を使用して生成する環境評価データ生成手段と、
前記環境影響評価データを編集し環境影響評価表として出力する出力手段と、
を含むことを特徴とする。
本発明によれば、ユニットプライス形式で入力された評価対象工事の情報であっても、ユニットプライス形式で記述された、或いはユニットプライス形式の工事名称に関連付けられた各要素を含む各テーブルを参照して、簡易かつ自動的に環境影響評価表を作成することが可能となる。このように、歩掛テーブルはユニットプライス形式でも使用することが可能であり、即ち、過去のデータを有効に活用することが可能である。
【0007】
また、本発明による環境マネージメントシステムは、
前記評価対象工事の情報は、その数量(例えば、工事名称がバックホウ掘削である場合は、数量(工事規模)=100mなど、或いは対象工事に含まれる各要素(工程)の各数値情報)をも含み、
前記内訳データ生成手段は、前記評価対象工事に含まれる各要素の少なくとも一部に対しては、それらの数量をも含む内訳データを演算手段を使用して生成する、
ことを特徴とする。
本発明によれば、与えられた数値情報を利用することによって、より詳細かつ適切な環境影響評価データを作成することが可能となる。
【0008】
また、本発明による環境マネージメントシステムは、
前記記憶手段は、実際に受注した、工事の名称(通常の積み上げ方式の工事名称、または、ユニットプライス形式の工事名称)、および前記工事に含まれる各要素の単位数量あたりの実数値からなるカスタマイズされた統計情報を含む建設積算データテーブルをも含み、
前記内訳データ生成手段は、
前記評価対象工事に含まれる各要素と、前記建設積算データテーブルに含まれる前記カスタマイズされた統計情報内の各要素とを比較して、合致する要素が所定の閾値(例えば、合致する要素の数や割合)を超える場合は、前記建設積算データテーブルをも参照して、前記評価対象工事の情報に基づき、前記内訳データを生成する、
ことを特徴とする。
本発明によれば、当該評価対象工事に対して、自社内の実数値に対応してカスタマイズされた統計情報が十分にある場合は、カスタマイズ統計情報を含む「建設積算テーブル」を使い、十分にない場合は、標準統計情報を含む「歩掛マスターテーブル」を使うという判定動作を自動的に行うことができるため、より適切かつ正確な環境影響評価データを生成することが可能となる。即ち、カスタマイズされた統計情報の蓄積度に応じて、評価対象工事別に標準統計情報を使うべきかカスタマイズ統計情報を使うべきかを自動的に判定できるため、非常に適正かつ正確な環境影響評価ができる。或いは、この閾値の設定次第では、強制的に一方のデータテーブルを使う設定にすることもでき、閾値の設定変更によって、異なるデータテーブルから作成された2種類の評価表を作成して比較するなどが簡単に可能である。
【0009】
さらにまた、本発明による環境マネージメントシステムは、
前記環境影響情報のうちの少なくとも一部は、発生可能性の数値情報、および結果重大性の数値情報も関連付けられており、
前記環境評価データ作成手段は、前記発生可能性の数値情報、および前記結果重大性の数値情報を含む前記環境評価データを作成する、
ことを特徴とする。
本発明によれば、環境影響評価を数値情報によって定量的に評価することが可能となる、
【0010】
さらにまた、本発明による環境マネージメントシステムは、
前記記憶手段は、環境規制の法規を含む環境関連法規テーブルをも含み、
前記環境評価データ作成手段は、前記環境関連法規テーブルを参照して、前記環境影響データのうち、環境規制の法規の規制があるものについては、対応する法規を当該環境影響データに関連付ける、
ことを特徴とする。
本発明によれば、環境影響データのうち法規制のあるものを当該法規(例えば、騒音規制法などの騒音に関する法律・条例、振動規制法など)に関連付けることによって、企業の環境関連のコンプライアンス(法令遵守)活動をより容易にすることができる。
【0011】
さらにまた、本発明による環境マネージメントシステムは、
外部システムから、(従来の積み上げ方式或いはユニットプライス形式の)工事の名称および前記工事に含まれる各要素の実数値を含む、実際の工事データをネットワークを介して受信する受信手段と、
前記受信した実際の工事データに基づき、前記記憶手段に格納されている前記建設積算データテーブルを更新する更新手段をも含む、
ことを特徴とする。
本発明によれば、実際の工事データ(いわゆる工事日報、工事週報、工事月報など)を定期的に受信しこれに基づき、カスタマイズされた統計情報を含む建設積算テーブルをさらに適切かつ正確なものになるようカスタマイズすることができ、これによって、環境影響評価データをさらに適切かつ正確なものにすることが可能である。
【0012】
さらにまた、本発明による環境マネージメントシステムは、
工事の名称、および前記工事に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、前記工事に関連する各資源別(クラムシェル、バックホウなどの建設機械別)に環境側面情報およびそれに関連付けられた環境影響情報が規定されている資源別環境マスターテーブルとが格納されている記憶手段と、
外部システム(建設に関する諸データを含む、建設積算システム、携帯端末、携帯電話など)から、工事の名称を少なくとも含む評価対象工事の情報をネットワーク(有線或いは無線のネットワーク)を介して受信する手段と、
前記受信した評価対象工事の情報に基づき、前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記工事に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成手段と、
前記生成された内訳データに基づき、前記資源別環境マスターテーブルを参照して、環境側面データおよび環境影響データを含む環境影響評価データを前記演算手段を使用して生成する環境評価データ生成手段と、
前記環境影響評価データを編集し環境影響評価表として出力する出力手段(プリンタ、CRTなど)と、
を含むことを特徴とする。
或いは、本発明による環境マネージメントシステムは、
複数のユニットプライス形式の工事の名称、および前記複数のユニットプライス形式の工事に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、前記工事に関連する各資源別の環境側面情報およびそれに関連付けられた環境影響情報が規定されている資源別環境マスターテーブルとが格納されている記憶手段と、
外部システムから、ユニットプライス形式の工事の名称を少なくとも含む評価対象工事の情報をネットワークを介して受信する手段と、
前記受信した評価対象工事の情報に基づき、前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記工事に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成手段と、
前記生成された内訳データに基づき、前記資源別環境マスターテーブルを参照して、環境側面データおよび環境影響データを含む環境影響評価データを前記演算手段を使用して生成する環境評価データ生成手段と、
前記環境影響評価データを編集し環境影響評価表として出力する出力手段と、
を含むことを特徴とする。
【0013】
建設会社では、多数の工事に関する詳細なデータを含む建設積算(建設情報管理)システムを導入して、通常の積み上げ方式であってもユニットプライス形式であっても、工事に含まれる詳細な工程(要素)、その各工程の詳細な単価などの蓄積情報を持つデータベース(さらに、標準統計情報を含む歩掛マスターテーブル、当該会社にカスタマイズされた統計情報を含む建設積算データテーブルも含まれている。)を保持している場合が多い。本発明は、建設業界ではこのような建設積算システムが導入されている場合があることに着目し、この建設積算システム(本システムから見て外部にあるシステムであるため便宜上「外部システム」と呼ぶ。)に蓄積されているデータを利用することによって、当該建設会社の工事関連の環境影響評価データを自動的に生成することを可能にする。従って、建設会社に建設積算システムが導入されており必要な工事関連データが存在すればこのデータをそのまま利用することによって、人手をかけずに環境影響評価データ(環境影響評価書、環境影響評価表など)を自動的に作成することが可能となる。
【0014】
さらにまた、本発明による環境マネージメントシステムは、
前記記憶手段は、実際に受注した、工事の名称、および前記工事に含まれる各要素の単位数量あたりの実数値からなるカスタマイズされた統計情報を含む建設積算データテーブルをも含み、
前記内訳データ生成手段は、
前記評価対象工事に含まれる各要素と、前記建設積算データテーブルに含まれる前記カスタマイズされた統計情報内の各要素とを比較して、合致する要素が所定の閾値を超える場合は、前記建設積算データテーブルをも参照して、前記選択された評価対象工事およびその数量に基づき、前記内訳データを生成する、
ことを特徴とする。
【0015】
上述したように本発明の解決手段をシステム(装置)として説明してきたが、本発明はこれらに実質的に相当する方法、プログラム、プログラムを記録した記憶媒体としても実現され得るものであり、本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。なお、下記のプログラムや方法の各ステップは、データの処理においては必要に応じて、CPU、DSPなどの演算処理装置を使用するものであり入力したデータや加工・生成したデータなどを磁気テープ、HDDなどの記憶装置に格納するものである。
【0016】
例えば、本発明を方法として実現させると、本発明による環境マネージメント方法は、
複数の工事の名称、および前記複数の工事の各々に含まれる各要素(工程)の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、工事(に含まれる各要素)に関連する各資源別(例えば、クラムシェル、バックホウなどの建設機械別)に環境側面情報およびそれに関連付けられた環境影響情報が規定されている資源別環境マスターテーブルと記憶手段に格納する格納ステップと、
少なくとも工事名称を含む評価対象工事の情報(例えば、工事名称(工種)=バックホウ掘削など)を入力する入力ステップと、
前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象工事の情報に基づき、前記評価対象工事に含まれる各要素(及び、望ましくはそれらの標準的な数値情報)を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成ステップと、
前記生成された内訳データに基づき、前記資源別環境マスターテーブルを参照して、環境側面データおよび環境影響データを含む環境影響評価データを前記演算手段を使用して生成する環境評価データ生成ステップと、
前記環境影響評価データを編集し環境影響評価表として出力する出力ステップ(プリンタ、またはCRTなど)と、
を含むことを特徴とする。
また、本発明による環境マネージメント方法は、
複数のユニットプライス形式の工事の名称、および前記複数のユニットプライス形式の工事の各々に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、工事に関連する各資源別の環境側面情報およびそれに関連付けられた環境影響情報が規定されている資源別環境マスターテーブルとを記憶手段に格納する格納ステップと、
少なくともユニットプライス形式の工事名称を含む評価対象工事の情報を入力する入力ステップと、
前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象工事の情報に基づき、前記評価対象工事に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成ステップと、
前記生成された内訳データに基づき、前記資源別環境マスターテーブルを参照して、環境側面データおよび環境影響データを含む環境影響評価データを前記演算手段を使用して生成する環境評価データ生成ステップと、
前記環境影響評価データを編集し環境影響評価表として出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする。
或いは、本発明をプログラムとして実現させると、本発明による環境マネージメントプログラムは、
環境マネージメント方法をコンピュータに実行させるための方法であって、
複数の工事の名称、および前記複数の工事の各々に含まれる各要素(工程)の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、工事(に含まれる各要素)に関連する各資源別(例えば、クラムシェル、バックホウなどの建設機械別)に環境側面情報およびそれに関連付けられた環境影響情報が規定されている資源別環境マスターテーブルと記憶手段に格納する格納ステップと、
少なくとも工事名称を含む評価対象工事の情報(例えば、工事名称(工種)=バックホウ掘削など)を入力する入力ステップと、
前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象工事の情報に基づき、前記評価対象工事に含まれる各要素(及び、望ましくはそれらの標準的な数値情報)を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成ステップと、
前記生成された内訳データに基づき、前記資源別環境マスターテーブルを参照して、環境側面データおよび環境影響データを含む環境影響評価データを前記演算手段を使用して生成する環境評価データ生成ステップと、
前記環境影響評価データを編集し環境影響評価表として出力する出力ステップ(プリンタ、またはCRTなど)と、
を含むことを特徴とする。
また、本発明による環境マネージメント方法をコンピュータに実行させるための環境マネージメントプログラムは、
複数のユニットプライス形式の工事の名称、および前記複数のユニットプライス形式の工事の各々に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、工事に関連する各資源別の環境側面情報およびそれに関連付けられた環境影響情報が規定されている資源別環境マスターテーブルとを記憶手段に格納する格納ステップと、
少なくともユニットプライス形式の工事名称を含む評価対象工事の情報を入力する入力ステップと、
前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象工事の情報に基づき、前記評価対象工事に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成ステップと、
前記生成された内訳データに基づき、前記資源別環境マスターテーブルを参照して、環境側面データおよび環境影響データを含む環境影響評価データを前記演算手段を使用して生成する環境評価データ生成ステップと、
前記環境影響評価データを編集し環境影響評価表として出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以降、諸図面を参照しつつ、本発明の実施態様を詳細に説明する。
図1は、本発明による環境マネージメントシステムの基本的な構成を示すブロック図である。図に示すように、本発明による環境マネージメントシステム100は、記憶手段110、入力手段120、内訳データ生成手段125、環境評価データ生成手段130、出力手段135、受信手段140、及び更新手段145を具える。環境マネージメントシステム100は、インターネット、WAN、LAN、有線・無線電話回線網などのネットワーク200を介して端末122、建設積算システムやPDA、携帯機器、携帯電話などの外部システム250と接続されている。また、端末122の一部は本システム100に直接ローカルで接続されている。
【0018】
記憶手段(装置)110は、複数の工事の名称、および前記複数の工事の各々に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブル112と、工事に関連する各資源別の環境側面情報およびそれに関連付けられた環境影響情報が規定されている資源別環境マスターテーブル114とを格納している。さらに、記憶手段110は、実際に受注した、工事の名称、および前記工事に含まれる各要素の単位数量あたりの実数値からなるカスタマイズされた統計情報を含む建設積算データテーブル116をも含む。
【0019】
なお、本発明での評価対象工事の工事名称の入力形式は、大別して、従来からある積み上げ方式での工事名称と、ユニットプライス形式での工事名称との2つが想定される。ここで、目的工事であるユニットプライス形式で規定された工事名称は、従来の積み上げ方式と同じ名称のものも想定され、このような場合には、歩掛マスターテーブルなどの各種テーブルは、従来からある積み上げ式の積算方式で構築されたものであっても何ら問題なく使用可能である。しかしながら、工事名称が、ユニット定義などによって異なったり、より包括的なものになったりしている場合などに適切に対応するために、「ユニットプライス型積算方式に準拠した工事名称」と、これに含まれる各要素との関連付けを再設定することが望ましい。さらに、両方式が併用可能になるように、工事名称にはユニットプライス形式であることを示すフラグ、或いは通常の積み上げ形式のものであることを示すフラグを設けることが好適である。この場合には、後述の入力手段120で評価対象工事を入力する際にもユニットプライス形式を示すフラグを付加することによって、ユニットプライス形式での入力であることを示す。
【0020】
ユニットプライス型積算方式では、目的工事に含まれる個々の要素(工程)、例えば、建設資材や燃料などの単価や数量などには着目しないため、基本的には歩掛積算テーブルを作成する必要はない。しかしながら、ユニットに含まれる各要素に基づきユニットプライスを決定するときの根拠や社内での原価管理などのために歩掛積算テーブルを構築する必要性がある。さらに、環境影響評価データを算出するためには、歩掛積算テーブル上に構築されている各要素の情報が必須である。そこで、本発明によるシステムでは、従来からある歩掛積算テーブルに構築されているこれらの要素のデータを継承して有効利用を図るものである。
【0021】
入力手段120は、ローカル接続された、或いはネットワークを介して接続された端末122を介して評価対象工事(環境影響評価の対象となる工事)の名称およびその数量を入力する。
内訳データ生成手段125は、記憶手段110に格納されている前記歩掛マスターテーブル112を参照して、前記入力された評価対象工事の名称およびその数量に基づき、前記評価対象工事に含まれる各要素およびそれらの数量を含む内訳データを演算手段(MPU,CPUなど。図示せず)を使用して生成する。さらに、内訳データ生成手段125は、評価対象工事に含まれる各要素と、建設積算データテーブル116に含まれるカスタマイズされた統計情報内の各要素とを比較して、合致する要素が所定の閾値を超える場合は、建設積算データテーブル116をも参照して、評価対象工事およびその数量に基づき、内訳データを生成することもできる。
環境評価データ生成手段130は、前記生成された内訳データに基づき、前記資源別環境マスターテーブル114を参照して、環境側面データおよび環境影響データを含む環境影響評価データを演算手段を使用して生成する。即ち、内訳データに含まれる情報と合致する情報が環境側面データの項目に含まれる場合は、その項目を抽出し、さらにこの項目に関連付けられている環境影響データの項目も抽出して環境影響データとする。
【0022】
例えば、内訳データが表1に示すような内容を含む場合は、歩掛コードB0001、B0002をキーとして表2のような環境側面データを検索し、同じキーB0001、B0002を持つものを探し出し、該当項目から環境影響評価データを抽出する。
【表1】


【表2】

【0023】
出力手段135は、環境影響評価データを編集し環境影響評価表(書)として端末122に出力したり、或いは、エクセルなどの表計算アプリケーションに準拠したファイルとして出力したり、さらにはプリンタ(図示せず)に印刷したりする。
【0024】
受信手段140は、外部システム250から、工事の名称および前記工事に含まれる各要素の実数値を含む、「実際の工事データ」をネットワーク200を介して受信する。
更新手段145は、受信した実際の工事データに基づき、記憶手段110に格納されている前記建設積算データテーブル116を更新する。
或いは、本システム100は、入力手段の代わりに、受信手段140を使って、外部システム250から、評価対象工事の名称および前記工事に含まれる各要素の実数値を含む「評価対象工事データ」をネットワーク200を介して受信することもできる。このように外部システムから評価対象工事データを受信する構成をとれば、何ら人手を介さずに既存の外部システム上に構築された建設関連データを有効活用して、煩雑で膨大な労力がかかる環境影響評価表を容易かつ自動的に作成することが可能となる。
【0025】
図2は、本発明による環境マネージメントシステムにおける処理ステップの一例を詳細に説明するフローチャートである。図に示すように、ステップS10では、参照するデータベースとして、手動或いは所定の閾値を用いて歩掛マスターテーブルを使うか積算データテーブルを使うかを選択する。
歩掛マスターテーブルを参照することが選択された場合は、複数の階層のうちどの階層(階層は、後で詳細に説明する。)でデータを集約するのかを選択する(S12a)。次に、建設積算管理システムなどのような外部システムなどから供給された省庁一覧表から評価対象工事が関連する所望の省庁に対応した歩掛データテーブルを選択し(S14a)、この選択した省庁の下の階層にある工種リストから1つの工種(図の例では土工)を選び出す。選ばれた工種の下の階層にある種別リストから1つの種別(図の例では機械土工(土砂))を選び出し、さらに、この選んだ種別の下の階層にある規格リストから1つの規格(この図の例ではブルドーザ掘削押土)を評価対象工事として選択する。
或いは、工種の選択以降は、その選択で表示される一覧から対象でない項目を除外することによって非表示にしたり、生成された内訳データの一覧から対象でない項目を除外することによって非表示にしたりすることもできる。この非表示設定は、記憶しておき、次回の選択時に自動的に除外して非表示にする構成をとることも可能である。
或いは、評価対象工事の情報は、別途、工事の名称及びその数量を直接的に入力したり、外部システムから評価対象工事の情報を受信したりすることもできる。この評価対象工事の情報に基づき、選択した省庁用の歩掛マスターテーブルを参照して、前記評価対象工事に含まれる各要素および望ましくはそれらの数量を含む内訳データを演算手段を使用して生成する(S16a)。
【0026】
積算データテーブル(即ち、ある企業、団体などの実際の工事データに基づきカスタマイズされているデータテーブル)を参照することが選択された場合は、ステップ12aと同様に複数の階層のうちどの階層でデータを集約するのかを選択する(S12b)。次に、外部システムなどから得られる受注工事一覧表から所望の評価対象工事を選択するが(S14b)、このとき、選択した評価対象工事に適した積算データテーブルも自動的に選択される。或いは、評価対象工事の情報については、別途、工事の名称及びその数量を直接的に入力したり、外部システムから評価対象工事の情報を受信したりすることもできる。予め入力或いは受信してある評価対象工事の情報に基づき、選択した工事に対応した積算データテーブルをも参照(基本的には歩掛マスターテーブルを参照する)して、前記評価対象工事に含まれる各要素および望ましくはそれらの数量を含む内訳データを演算手段を使用して生成する(S16b)。
なお、評価対象工事の情報は、ユニットプライス形式で入力することも可能であり、例えば各省庁や機関によって発表されているユニットプライス規定集や定義集に準拠した形式、具体的には、工事名称としてのユニット区分=表層(車道部)、契約単位として施行面積=200m3(工事区分=舗装、工種=舗装工、種別=アスファルト舗装工)などの形式で入力することもできる。
【0027】
ステップS16a,16bで作成された内訳データは、一旦、記憶装置に格納しておく(S18)。
生成された内訳データに基づき、資源別環境マスターテーブル、環境側面テーブル、或いは関連法規データベースを参照して、環境側面データおよび環境影響データを含む環境影響評価データを前記演算手段を使用して生成する(S20)。生成された環境影響評価データは、一旦、記憶装置に格納しておく(S22)。
その後、環境影響評価データを編集し、環境影響評価表(或いは、環境目的・達成計画書、著しい環境側面リストなど)として出力する(S24)。
【0028】
図3は、上述したステップS12aにおける階層の指定、および、評価対象工事に適応した歩掛データベース(マスターテーブル)を指定するための画面インターフェイスの一例を示す図である。図に示すように、工種(最も大雑把で高レベルの階層であり、例えば、土工(土木工事)など)、種別(中間の階層であり、例えば、機械土工など)、規格(最も詳細で低レベルの階層、即ち、最も詳細な階層の工事の名称であり、例えば、ブルドーザ掘削押土など)の3階層があり、ユーザは、画面内の所望の階層のラジオボタンを選択する。また、この例では歩掛データベースは省庁別に設けられており、ユーザは、評価対象工事の歩掛データベースとして最適なものを「省庁名」をキーとして選択する。
【0029】
図4は、評価対象工事に対応する所望の歩掛データベースを選択するための画面インターフェイスの一例を示す図である。図に示すように、省庁として国土交通省が選択され、工種として土工、種別として機械土工(土砂)、規格としてブルドーザ掘削押土が選択されている。図中の右側で、さらに、詳細なレベルでの選択も可能である。
【0030】
図5は、工種(a)、種別(b)、規格(c)の各階層を選択したときに、内訳データを集約(グループ化)するときのグループ(項目)の一例を示す図である。階層を選択した場合は、図に示すような階層下のグループに内訳データは集約されることとなる。
【0031】
図6は、評価対象工事を選択するための画面インターフェイスの一例を示す図である。ユーザは、工事情報ツリー(リスト)から分類別にグループ化されたものから1つの分類(この図の例では旧建設省発注工事)を選択し、その下の階層のリストから1つのグループ(この図の例では環境用工事)を選択し、さらにその下の階層のリストから1つのカテゴリ(この図の例では環境用工事1)を選択する(図6a)。このようにして、評価対象工事を選択するが、本システムは、1つの工事のみならず複数の工事をも選択することも可能である。
このような選択の下で、さらに、選択されたカテゴリである「環境用工事1」において、さらに以下のような幾つかの階層(レベル)で抽出条件(図の例では、工事全体、レベル1〜5)を規定することもできる(図6b)。
【0032】
図7は、積算工事データベース内の所望の建設積算データテーブルにアクセスするための画面インターフェイスの一例である。図6で選択された評価対象工事の「環境用工事1」には、これに対応する積算工事データベースが関連付けられており、評価対象工事を選択すると、このような関連付けられた建設積算データテーブルが呼び出され、後続処理である内訳データ作成でこのテーブルが利用される。
或いは、選択された評価対象工事と同様の種類の要素を含むその他の積算工事データベースのデータテーブルを代用することもできる。
【0033】
図8は、資源別環境マスターテーブルの一例を示す図である。図に示すように、資源別環境マスターテーブルは資源分類(建設機械損料−13欄など)で分類されており、この図では、右側に、バックホウに関する環境側面情報(騒音、振動など)およびそれに関連付けられた環境影響情報(土壌汚染、住環境悪化など)が表示されている。
【0034】
図9は、本発明による環境マネージメントシステムによって生成された環境影響評価データを示す図である。この環境影響評価データは、生成された内訳データに基づき、図8に示した資源別環境マスターテーブルを参照して生成されたものである。例えば、図9では、「バックホウ掘削積込」を評価対象工事として含み、この工事に含まれる各要素(工程)のうちの要素「バックホウ」については、符号9Aで示す「騒音」という環境側面及びその環境影響を表示するものである。これらの環境側面と環境影響は、図8の符号8Aで示す「騒音」に関連付けられている「住環境悪化」という環境影響の諸データに基づき生成されたものである。
なお、図9は、従来の積み上げ方式の積算システムに準拠する形式で評価対象工事を入力することによって作成したものであるが、ユニットプライス方式に準拠する形式で評価対象工事を入力することによっても同様の表を作成できる。
【0035】
図10は、積算データテーブルの使用歩掛によって環境影響評価データを編集(グループ化)する過程を示す図である。図に示すように、評価対象工事としてA工事、B工事、C工事があり、これらの工事には、少なくとも1つの具体的な工事名称及びその数量が含まれる(図10a)。これらの工事名称に対応する歩掛の索引が積算データテーブルにあるため、本システムは、積算データテーブルを参照することによって(図10b)、土工、及び、コンクリート工という大分類からその下層をなす小分類でグループ化された環境影響評価表を作成することができる(図10c)。
【0036】
図11は、本システムによって実際に作成した上水道工事に関する環境影響評価表を示す図である。本発明による環境マネージメントシステムによれば、図に示すような、環境影響評価表を環境ISOコンサルタントなどのサポートなしで、さらには何ら人手をかけずに自動的に作成することが可能である。
【0037】
これまで、説明してきた実施例では、主として工事関連の「会社全体」即ち全社レベルを対象として環境影響評価を行うシステムとして説明してきた。しかしながら、本発明による環境マネージメントシステムは、組織や会社などにおける「現場別」での環境影響評価を行うことに適した構成にカスタマイズすることも可能であり、下記に現場別影響評価の手法を詳細に説明する。
図12は、図2に示した、環境マネージメントシステムにおける処理ステップの変形例(現場別の処理例)を詳細に説明するフローチャートである。図に示すように、外部システムなどから得られる受注工事一覧表から所望の評価対象工事を選択するが(P14)、このとき、選択した評価対象工事に適した積算データテーブルも自動的に選択される。或いは、評価対象工事の情報については、別途、工事の名称及びその数量を直接的に入力したり、外部システムから評価対象工事の情報を受信したりすることもできる。予め入力或いは受信してある評価対象工事の情報に基づき、ステップP14で選択した工事に対応した積算データテーブルをも参照(基本的には歩掛マスターテーブルを参照する)して、前記評価対象工事に含まれる各要素および望ましくはそれらの数量を含む内訳データを演算手段を使用して生成する(P16)。
【0038】
ステップP16で作成された内訳データは、一旦、記憶装置に格納しておく(P18)。
ここで、予め、当該現場が属する会社の全体を対象とした環境影響評価データ(以下、「全社用−環境影響評価データ」と呼ぶ。)を用意しておく。生成された内訳データに基づき、資源別環境マスターテーブル、環境側面テーブル、或いは関連法規データベース、さらには、上記の「全社用−環境影響評価データ」を参照して、環境側面データおよび環境影響データを含む新たな「現場別−環境影響評価データ」を前記演算手段を使用して生成する(P20)。このとき、「内訳データ」、「資源別環境マスターテーブル」、及び「全社用−環境影響評価データ」は、建設積算システムで使用されている単価コードを含んでいるため、この単価コードのマッチング処理を行い合致したデータを抽出して「現場別−環境影響評価データ」とすることが好適である。さらに、抽出条件として、初期環境調査で「著しい環境側面」に特定されたものは抽出しないといった設定にすることもできる。
生成された「現場別―環境影響評価データ」は、一旦、記憶装置に格納しておく(P22)。その後、環境影響評価データを編集し、現場別−環境影響評価表(或いは、環境目的・達成計画書、著しい環境側面リストなど)として出力する(P24)。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の効果をまとめると以下のようになる。そもそも、定量化と迅速化が難しい環境マネージメントシステムに対して現実的な手段を提供できる。また、環境マネージメントシステムは、時系列的にデータの蓄積と評価精度を上げてゆくことが望ましいが、本発明は蓄積や経験の少ない初期段階から成熟段階まで、概算的評価と詳細評価を比較しながら、発展する手段を提供できる。
また、実際の工事の進捗に応じて工事日報データを反映させることにより、さらに定量的に環境影響評価ができるようになる。また、その工事日報データを携帯通信端末(携帯電話、通信機能を具えたPDAなど)からサーバーに毎日送信することにより自動的にデータを集積することにより、さらに迅速かつ正確な環境影響評価ができるようになる。
特に、ユニットプライス形式の積算方式は、今後、急速に普及することが予想されるものであり、ユニットプライス形式での包括的な工事目的物とその数量とを入力することによって、迅速かつ正確な危険源評価が簡便に達成できる利点は大きい。
【0040】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることを留意されたい。例えば、各部材、各手段、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の部材、手段、ステップなどを1つに組み合わせたり或いは分割したりすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明による環境マネージメントシステムの基本的な構成を示すブロック図である。
【図2】本発明による環境マネージメントシステムにおける処理ステップの一例を詳細に説明するフローチャートである。
【図3】上述したステップS12aにおける階層の指定、および、評価対象工事に適応した歩掛データベース(マスターテーブル)を指定するための画面インターフェイスの一例を示す図である。
【図4】評価対象工事に対応する所望の歩掛データベースを選択するための画面インターフェイスの一例を示す図である。
【図5】工種(a)、種別(b)、規格(c)の各階層を選択したときに、内訳データを集約(グループ化)するときのグループ(項目)の一例を示す図である。
【図6】評価対象工事を選択するための画面インターフェイスの一例を示す図である。
【図7】積算工事データベース内の所望の建設積算データテーブルにアクセスするための画面インターフェイスの一例である。
【図8】資源別環境マスターテーブルの一例を示す図である。
【図9】本発明による環境マネージメントシステムによって生成された環境影響評価データを示す図である。
【図10】積算データテーブルの使用歩掛によって環境影響評価データを編集(グループ化)する過程を示す図である。
【図11】本システムによって実際に作成した上水道工事に関する環境影響評価表を示す図である。
【図12】図2に示した、環境マネージメントシステムにおける処理ステップの変形例(現場別の処理例)を詳細に説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
100 環境マネージメントシステム
110 記憶手段
112 歩掛マスターテーブル
114 資源別環境マスターテーブル
116 建設積算データテーブル
120 入力手段
122 端末
125 内訳データ生成手段
130 環境評価データ生成手段
135 出力手段
140 受信手段
145 更新手段
200 ネットワーク
250 外部システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境マネージメントシステムであって、
複数の工事の名称、および前記複数の工事の各々に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、工事に関連する各資源別の環境側面情報およびそれに関連付けられた環境影響情報が規定されている資源別環境マスターテーブルとが格納されている記憶手段と、
少なくとも工事名称を含む評価対象工事の情報を入力する入力手段と、
前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象工事の情報に基づき、前記評価対象工事に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成手段と、
前記生成された内訳データに基づき、前記資源別環境マスターテーブルを参照して、環境側面データおよび環境影響データを含む環境影響評価データを前記演算手段を使用して生成する環境評価データ生成手段と、
前記環境影響評価データを編集し環境影響評価表として出力する出力手段と、
を含むことを特徴とする環境マネージメントシステム。
【請求項2】
環境マネージメントシステムであって、
複数のユニットプライス形式の工事の名称、および前記複数のユニットプライス形式の工事の各々に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、工事に関連する各資源別の環境側面情報およびそれに関連付けられた環境影響情報が規定されている資源別環境マスターテーブルとが格納されている記憶手段と、
少なくともユニットプライス形式の工事名称を含む評価対象工事の情報を入力する入力手段と、
前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象工事の情報に基づき、前記評価対象工事に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成手段と、
前記生成された内訳データに基づき、前記資源別環境マスターテーブルを参照して、環境側面データおよび環境影響データを含む環境影響評価データを前記演算手段を使用して生成する環境評価データ生成手段と、
前記環境影響評価データを編集し環境影響評価表として出力する出力手段と、
を含むことを特徴とする環境マネージメントシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の環境マネージメントシステムにおいて、
前記評価対象工事の情報は、その数量をも含み、
前記内訳データ生成手段は、前記評価対象工事に含まれる各要素の少なくとも一部に対しては、それらの数量をも含む内訳データを演算手段を使用して生成する、
ことを特徴とする環境マネージメントシステム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の環境マネージメントシステムにおいて、
前記記憶手段は、実際に受注した、工事の名称、および前記工事に含まれる各要素の単位数量あたりの実数値からなるカスタマイズされた統計情報を含む建設積算データテーブルをも含み、
前記内訳データ生成手段は、
前記評価対象工事に含まれる各要素と、前記建設積算データテーブルに含まれる前記カスタマイズされた統計情報内の各要素とを比較して、合致する要素が所定の閾値を超える場合は、前記建設積算データテーブルをも参照して、前記評価対象工事の情報に基づき、前記内訳データを生成する、
ことを特徴とする環境マネージメントシステム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の環境マネージメントシステムにおいて、
前記環境影響情報のうちの少なくとも一部は、発生可能性の数値情報、および結果重大性の数値情報も関連付けられており、
前記環境評価データ作成手段は、前記発生可能性の数値情報、および前記結果重大性の数値情報を含む前記環境評価データを作成する、
ことを特徴とする環境マネージメントシステム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の環境マネージメントシステムにおいて、
前記記憶手段は、環境規制の法規を含む環境関連法規テーブルをも含み、
前記環境評価データ作成手段は、前記環境関連法規テーブルを参照して、前記環境影響データのうち、環境規制の法規の規制があるものについては、対応する法規を当該環境影響データに関連付ける、
ことを特徴とする環境マネージメントシステム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の環境マネージメントシステムにおいて、
外部システムから、工事の名称および前記工事に含まれる各要素の実数値を含む、実際の工事データをネットワークを介して受信する受信手段と、
前記受信した実際の工事データに基づき、前記記憶手段に格納されている前記建設積算データテーブルを更新する更新手段をも含む、
ことを特徴とする環境マネージメントシステム。
【請求項8】
環境マネージメントシステムであって、
複数の工事の名称、および前記複数の工事に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、前記工事に関連する各資源別の環境側面情報およびそれに関連付けられた環境影響情報が規定されている資源別環境マスターテーブルとが格納されている記憶手段と、
外部システムから、工事の名称を少なくとも含む評価対象工事の情報をネットワークを介して受信する手段と、
前記受信した評価対象工事の情報に基づき、前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記工事に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成手段と、
前記生成された内訳データに基づき、前記資源別環境マスターテーブルを参照して、環境側面データおよび環境影響データを含む環境影響評価データを前記演算手段を使用して生成する環境評価データ生成手段と、
前記環境影響評価データを編集し環境影響評価表として出力する出力手段と、
を含むことを特徴とする環境マネージメントシステム。
【請求項9】
環境マネージメントシステムであって、
複数のユニットプライス形式の工事の名称、および前記複数のユニットプライス形式の工事に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、前記工事に関連する各資源別の環境側面情報およびそれに関連付けられた環境影響情報が規定されている資源別環境マスターテーブルとが格納されている記憶手段と、
外部システムから、ユニットプライス形式の工事の名称を少なくとも含む評価対象工事の情報をネットワークを介して受信する手段と、
前記受信した評価対象工事の情報に基づき、前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記工事に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成手段と、
前記生成された内訳データに基づき、前記資源別環境マスターテーブルを参照して、環境側面データおよび環境影響データを含む環境影響評価データを前記演算手段を使用して生成する環境評価データ生成手段と、
前記環境影響評価データを編集し環境影響評価表として出力する出力手段と、
を含むことを特徴とする環境マネージメントシステム。
【請求項10】
請求項8または9に記載の環境マネージメントシステムにおいて、
前記評価対象工事の情報は、その数量をも含み、
前記内訳データ生成手段は、前記評価対象工事に含まれる各要素の少なくとも一部に対しては、それらの数量をも含む内訳データを演算手段を使用して生成する、
ことを特徴とする環境マネージメントシステム。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の環境マネージメントシステムにおいて、
前記記憶手段は、実際に受注した、工事の名称、および前記工事に含まれる各要素の単位数量あたりの実数値からなるカスタマイズされた統計情報を含む建設積算データテーブルをも含み、
前記内訳データ生成手段は、
前記評価対象工事に含まれる各要素と、前記建設積算データテーブルに含まれる前記カスタマイズされた統計情報内の各要素とを比較して、合致する要素が所定の閾値を超える場合は、前記建設積算データテーブルをも参照して、前記評価対象工事の情報に基づき、前記内訳データを生成する、
ことを特徴とする環境マネージメントシステム。
【請求項12】
環境マネージメント方法であって、
複数の工事の名称、および前記複数の工事の各々に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、工事に関連する各資源別の環境側面情報およびそれに関連付けられた環境影響情報が規定されている資源別環境マスターテーブルとを記憶手段に格納する格納ステップと、
少なくとも工事名称を含む評価対象工事の情報を入力する入力ステップと、
前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象工事の情報に基づき、前記評価対象工事に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成ステップと、
前記生成された内訳データに基づき、前記資源別環境マスターテーブルを参照して、環境側面データおよび環境影響データを含む環境影響評価データを前記演算手段を使用して生成する環境評価データ生成ステップと、
前記環境影響評価データを編集し環境影響評価表として出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする環境マネージメント方法。
【請求項13】
環境マネージメント方法であって、
複数のユニットプライス形式の工事の名称、および前記複数のユニットプライス形式の工事の各々に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、工事に関連する各資源別の環境側面情報およびそれに関連付けられた環境影響情報が規定されている資源別環境マスターテーブルとを記憶手段に格納する格納ステップと、
少なくともユニットプライス形式の工事名称を含む評価対象工事の情報を入力する入力ステップと、
前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象工事の情報に基づき、前記評価対象工事に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成ステップと、
前記生成された内訳データに基づき、前記資源別環境マスターテーブルを参照して、環境側面データおよび環境影響データを含む環境影響評価データを前記演算手段を使用して生成する環境評価データ生成ステップと、
前記環境影響評価データを編集し環境影響評価表として出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする環境マネージメント方法。
【請求項14】
環境マネージメント方法をコンピュータに実行させるための環境マネージメントプログラムであって、
複数の工事の名称、および前記複数の工事の各々に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、工事に関連する各資源別の環境側面情報およびそれに関連付けられた環境影響情報が規定されている資源別環境マスターテーブルとを記憶手段に格納する格納ステップと、
少なくとも工事名称を含む評価対象工事の情報を入力する入力ステップと、
前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象工事の情報に基づき、前記評価対象工事に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成ステップと、
前記生成された内訳データに基づき、前記資源別環境マスターテーブルを参照して、環境側面データおよび環境影響データを含む環境影響評価データを前記演算手段を使用して生成する環境評価データ生成ステップと、
前記環境影響評価データを編集し環境影響評価表として出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする環境マネージメントプログラム。
【請求項15】
環境マネージメント方法をコンピュータに実行させるための環境マネージメントプログラムであって、
複数のユニットプライス形式の工事の名称、および前記複数のユニットプライス形式の工事の各々に含まれる各要素の単位数量あたりの標準数値からなる標準統計情報を含む歩掛マスターテーブルと、工事に関連する各資源別の環境側面情報およびそれに関連付けられた環境影響情報が規定されている資源別環境マスターテーブルとを記憶手段に格納する格納ステップと、
少なくともユニットプライス形式の工事名称を含む評価対象工事の情報を入力する入力ステップと、
前記歩掛マスターテーブルを参照して、前記入力された評価対象工事の情報に基づき、前記評価対象工事に含まれる各要素を含む内訳データを演算手段を使用して生成する内訳データ生成ステップと、
前記生成された内訳データに基づき、前記資源別環境マスターテーブルを参照して、環境側面データおよび環境影響データを含む環境影響評価データを前記演算手段を使用して生成する環境評価データ生成ステップと、
前記環境影響評価データを編集し環境影響評価表として出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする環境マネージメントプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−59333(P2006−59333A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205770(P2005−205770)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(501263809)株式会社コンピュータシステム研究所 (26)