説明

環境制御システムの供給予冷器バイパス

【課題】予冷器が使用する加圧空気の量及び予冷器の重量を低減する圧縮機ブリード空気供給システムを提供する。
【解決手段】環境制御システム6のための圧縮機ブリード空気38を冷却する予冷器7は、冷却空気57の供給源と流体連通し且つ圧縮機ブリード空気38を冷却する空気間熱交換器56を含む。ブリード空気供給源と環境制御システムとの間の可変バイパスバルブ74は、熱交換器の周りに圧縮機ブリード空気をバイパスする。冷却空気は、可変ファン空気バルブ76によって調整されるファン空気33の一部とすることができる。ブリード空気供給源は、低圧ブリード空気供給源と高圧ブリード空気供給源118との間で選択可能とすることができる。方法は、低圧供給源からのみの圧縮機ブリード空気を流すステップと航空機の進入又はロイター中に1エンジン停止状態時にブリード空気の最小レベルの圧力に適合するよう推力レベルを増大させるステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的に、環境制御システム(ECS)に関し、より具体的には、航空機環境制御システムへのガスタービンエンジン圧縮機空気供給に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機搭載の環境制御システム(ECS)は、客室及び乗務員用の空気を調整するため、並びに冷却を必要とする航空電子工学機器及び/又は他の機器を冷却するのに広く使用されている。一部の環境制御システムは、航空機ガスタービンエンジン又は補助出力ユニットの圧縮機から加圧空気を抽気する。典型的な閉ループECSにおいて、作動流体は、圧縮機、中間冷却器、圧縮機を駆動するタービン、並びに冷却される機器又は容積から熱を抽出する熱交換器の間の閉ループを循環する。
【0003】
ブリード空気は、予冷器を通過して送給されるブリード空気の温度及び圧力を調節し、水加圧、ウィング及びエンジン氷結防止、液圧ポンプ、客室加温用トリム空気、及び同様のものなど、航空機の空気圧サービスに適合させるようにする。エンジンブリード空気は、高圧(HP)又は低圧(LP)エンジン圧縮機セクション又は段の何れかから流入する。LP空気は、高出力設定運転中に使用され、HP空気は降下及び他の低出力設定運転中に使用される。通常、HPバルブの制御は自動的に行われる。低エンジン推力運転中、HPバルブは開放され、高圧空気がシステムに動力を供給することができる。推力が増大すると、HPバルブは自動的に閉鎖され、LPチェックバルブが開放されてブリード空気を供給し、低圧空気がシステムに動力を供給できるようになる。
【0004】
エンジンブリード空気は、空気供給予冷器を通じて配送される。予冷器は、クロスフローの空気間熱交換器であり、エンジンファン空気を冷却媒体として使用する。ファン空気は、予冷器の底部に取り付けられたファン空気調節バルブを通じて予冷器に送られる。ファン空気調節バルブは、ファン空気圧力及び温度センサからの制御空気圧力及び温度に基づいて予冷器への空気流を調節する。
【0005】
予冷されたECS用空気は、空気調整パックを通って進み、本質的に乾燥した滅菌の無塵調整空気を航空機客室に提供する。次いで、この調整空気は、所定量の客室再循環空気と混合されて航空機客室に送給される。予冷器の下流側で得られるトリム空気が加わり、航空機客室に好適な快適レベルまで調整空気を加温することができる。
【0006】
5:1又はそれ以上の高バイパス比の最新のターボファンエンジンは、良好な燃料消費量を有するが、ECSに利用できる加圧空気は少なくなる。ECS用のブリード空気の抽出は、燃料消費量上不利な結果となり、予冷器の重量も同様である。典型的な予冷器は、当該技術分野において「one engine out(1エンジン停止)」の重積載保持エンジン運転条件と呼ばれるものに合わせたサイズにされる。この条件は、1エンジン停止状態の満載の航空機で、ロイター又は進入飛行条件で使用される可能性があるような、比較的低RPM又は出力レベルで運転しているエンジンにおけるものである。
【0007】
この設計飛行条件は、エンジン停止に起因して正常な運転条件の2倍の加圧ブリード空気が必要となり、従って、燃料消費量が増大するだけでなく、より大型で重量のある予冷器が必要となる可能性がある。燃料コストの高騰並びにより効率的なエンジン設計の開発と相まって、ECS予冷器が使用する加圧空気の量及びECS予冷器の重量を低減することが極めて望ましい。
【発明の概要】
【0008】
ガスタービンエンジン圧縮機ブリード空気供給システムは、ブリード空気供給源からの圧縮機ブリード空気を冷却し、環境制御システムと供給流れ連通して動作可能に接続された圧縮機供給空気予冷器を含む。予冷器は、冷却空気の供給源と流体連通し且つ圧縮機ブリード空気を冷却するよう動作可能な空気間熱交換器を含む。可変バイパスバルブが、ブリード空気供給源と環境制御システムとの間に配置される。該可変バイパスバルブは、熱交換器の周りに圧縮機ブリード空気の少なくとも一部をバイパスするよう動作可能である。
【0009】
ブリード空気供給源は、高圧圧縮機の第1の段と最後の段との間に配置される低圧ブリード空気供給源とすることができ、冷却空気は、ガスタービンエンジンからのファン空気の一部とすることができ、可変ファン空気バルブを冷却空気の供給源と熱交換器との間に配置することができる。ブリード供給源は、低圧ブリード空気供給源と高圧ブリード空気供給源との間で選択可能とすることができる。低圧ブリード空気供給源及び高圧ブリード空気供給源が、ガスタービンエンジン高圧圧縮機の中間段及び最後の段とすることができる。
【0010】
より詳細な実施形態は、低圧ブリード空気供給源及び高圧ブリード空気供給源に接続され且つ選択的に流れ連通したブリード空気入口ラインを含み、ブリード空気入口ラインが、圧縮機ブリード空気を冷却するため空気間熱交換器において熱交換器冷却回路に接続され且つ流れ連通している。ブリード空気出口ラインは、熱交換器冷却回路を環境制御システムに接続する。可変バイパスバルブが、ブリード空気入口ラインとブリード空気出口ラインとの間のブリード空気バイパスライン内に配置されたバイパススロットルバルブである。高圧ブリード遮断バルブが、高圧ブリード空気供給源とブリード空気入口ラインとの間の高圧ブリードラインに配置され、電子制御装置は、バイパススロットルバルブ及び可変ファン空気バルブに制御可能に接続される。電子制御装置は、高圧ブリード遮断バルブに制御可能に接続される。
【0011】
予冷器は、熱交換器の周りに圧縮機ブリード空気をバイパスするため統合可変予冷器バイパスを含む統合予冷器とすることができる。低圧ブリード空気供給源及び高圧ブリード空気供給源と接続され且つ選択的に流れ連通したブリード空気入口ラインはまた、統合可変予冷器バイパスのディフューザと接続され且つ流れ連通している。ディフューザは、圧縮機ブリード空気の少なくとも一部を冷却するため空気間熱交換器と選択的に流れ連通し且つ統合予冷器内のバイパスダクトと選択的に流れ連通している。熱交換器及びバイパスダクトは、並流関係にあり、且つ統合予冷器の排出出口と流れ連通している。ブリード空気出口ラインは、排出出口を環境制御システムに接続し、可変バイパスバルブが、熱交換器とブリード空気入口ラインとの間に配置されたバイパスドアを含む。電子制御装置は、可変バイパスバルブ及び可変ファン空気バルブに制御可能に接続することができる。
【0012】
2つ又はそれ以上の航空機ガスタービンエンジンと内部に環境制御システムとを含む航空機は、ガスタービンエンジン圧縮機ブリード空気供給システムを組み込む。各航空機ガスタービンエンジンは、直列流れ連通した状態で、ファン、高圧圧縮機、環状燃焼器、高圧圧縮機に動力を供給する高圧タービン、ファンに動力を供給する低圧タービンを含む。環状ナセルがファンを囲み、コアカウルは、高圧圧縮機、燃焼器、及び高圧タービンを囲む。環状バイパスダクトは、環状ナセルとコアカウルとの間に半径方向に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】航空機の環境制御システム用の予冷器及び予冷器バイパスを備えた圧縮機ブリード空気供給システムを有するガスタービンエンジンの軸方向断面概略図。
【図2】図1に示す、圧縮機ブリード空気供給システムの断面概略図。
【図3】図1に示す圧縮機ブリード空気供給システム及びウィング氷結防止システムの拡大概略図。
【図4】バイパスドアが開放位置にある、代替の予冷器及び代替の予冷器バイパスの概略図。
【図5】バイパスドアが閉鎖位置にある、図4に示す代替の予冷器及び代替の予冷器バイパスの概略図。
【図6】代替の圧縮機ブリード空気供給システムの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1には、航空機8のウィング4に装着された例示的なターボファン航空機ガスタービンエンジン10が概略的に示されている。エンジン10は、長手方向又は軸方向中心軸線の周りで軸対称であり、航空機8のウィング又は胴体に好適に装着される。エンジンは、下流側に直列流れ連通した状態で、ファン14、低圧又はブースタ圧縮機16、HP圧縮機18、環状燃焼器20、高圧タービン(HPT)22、及び低圧(LPT)タービン24を含む。典型的な航空機8は、2つ又はそれ以上のエンジン10を有する。
【0015】
環状ナセル26は、ファン14の周りを囲み、ブースタ圧縮機16の周りを後方に延びる環状バイパスダクト28を定める。第1の駆動シャフト30は、HPT22をHP圧縮機18に接続し、第2の駆動シャフト32は、LPT24をファン14及びブースタ圧縮機16に接続する。コアエンジン15は通常、下流側に直列流れ連通した状態で、高圧圧縮機18、環状燃焼器20、及びHPT22を含む。
【0016】
図1及び3を参照すると、運転中、周囲空気34がエンジンの入口に流入し、ファン14によってその一部が加圧されてファン空気33となり、その大部分31は、バイパスダクト28を通って排出されて推進推力の大部分を提供する。ファンを通過するファン空気33の第1の部分35は、ブースタ圧縮機16に流入し、その複数の軸方向段において更なる圧縮サイクルを受け、複数の軸方向段におけるHP圧縮機18に追加の圧縮がもたらされる。
【0017】
ファン空気33の加圧された第1の部分35は、HP圧縮機18から圧縮機吐出空気37として排出され、燃焼器20内で燃料と好適に混合されて高温の燃焼ガス36を生成するようにする。HPT22において高温燃焼ガス36からエネルギーが抽出され、第1の駆動シャフト30を駆動し、HP圧縮機18に動力を供給する。LPT24におい燃焼ガスから追加のエネルギーが抽出され、第2のシャフト32を駆動してファン14及びブースタ圧縮機16に動力を供給する。
【0018】
図1、2、及び3に全体的に示されるのは、航空機8内の環境制御システム6であり、圧縮機ブリード空気供給システム42によってブリード空気38が供給される。圧縮機ブリード空気供給システム42は、圧縮機空気供給予冷器7を含み、圧縮機ブリード空気38を冷却するのに用いることができる。電子制御装置48は、圧縮機ブリード空気供給システム42の作動を制御するのに用いられる。電子制御装置48は、FADEC又は航空機飛行制御装置と一般に呼ばれる全自動デジタルエンジン制御装置のような、エンジン上に配置することができる。電子制御装置48は、圧縮機ブリード空気供給システム42に組み込まれた種々のバルブの完全又は部分的な開閉を制御するのに使用される。
【0019】
予冷器7は、ファン空気33の一部として図示されている冷却空気57の供給源と流体連通した空気間熱交換器56を含む。熱交換器56は、環状バイパスダクト28と流れ連通して好適に装着される。予冷器7はまた、可変予冷器バイパス9を含み、これを用いて熱交換器56の周りの圧縮機ブリード空気38をバイパスすることができる。
【0020】
空気間熱交換器56は、ナセル26を支持するストラット63の基部においてコアエンジン15を囲むコアカウル61内部に配置され、バイパスダクト28と好適に流れ連通して図示される。コアカウル61内の好適な入口スクープ又はドア65は、電子制御装置48により制御される可変ファン空気バルブ76として作動する。可変ファン空気バルブ76は、冷却空気57を調整し、熱交換器56を通って下流側に送る。次いで、冷却空気57は、出口チャンネル66を通じて運ばれ、ナセル26の後縁69においてファン出口68の上流側のバイパスダクト28に冷却空気57を戻す。
【0021】
熱交換器56は、バイパスダクト28からのファン空気33の一部を用いてHP圧縮機18からの圧縮機ブリード空気38を冷却するのに使用される。次に、冷却ブリード空気38が環境制御システム6に流れてそこで使用される。圧縮機ブリード空気38は、HP圧縮機18の2つの別個の段のうちの1つから抽気される。本明細書では、HP圧縮機18の中圧又は低圧段70から比較的低圧のブリード空気58が抽気されるように図示されている。本明細書で示される比較的高圧のブリード空気60は、HP圧縮機18の最後の段として本明細書で示されている高圧段72から抽気される。本明細書で示される比較的高圧のブリード空気は、圧縮機吐出圧力(CDP)空気である。
【0022】
本明細書で示されるHP圧縮機18の低圧ブリード空気段は、HP圧縮機18の第4の段S4であるが、他の段を用いることもできる。HP圧縮機18の中間段は、本明細書では、HP圧縮機18の第1の段S1と最後の段SCDPとの間の段として定義される。中間段及び最後のSCDPは、圧縮機ブリード空気38の低圧及び高圧ブリード空気供給源116、118としての役割を果たす。可変予冷器バイパス9は、低圧及び高圧ブリード空気供給源116、118と環境制御システム6との間に配置される可変バイパスバルブ74を含む。
【0023】
低圧及び高圧ブリード空気供給源116、118の一方は、比較的低圧又は高圧のブリード空気85、60をブリード空気入口ライン44に運び、ここで低圧又は高圧のブリード空気85、60はそれぞれ、圧縮機ブリード空気38として圧縮機供給空気予冷器7に運ばれる。低圧及び高圧ブリード遮断バルブ104、112は、低圧及び高圧段70、72それぞれとブリード空気入口ライン44との間の低圧及び高圧ブリードライン102、108に配置される。低圧及び高圧ブリード遮断バルブ104、112は、低圧及び高圧ブリードライン102、108を個別に開閉することができる。
【0024】
低圧ブリード遮断バルブ104は、通常、高圧ブリード遮断バルブ112が開放されたときには閉鎖されるよう設計された一方向チェックバルブである。高圧ブリード遮断バルブ112は、電子制御装置48により制御される。高圧ブリード遮断バルブ112は、圧縮機ブリード空気38の圧力が電子制御装置48内の制御ロジックに要求される最小値よりも低いときに、該電子制御装置48により開放される。圧縮機ブリード空気38の圧力は、調節遮断バルブ54(PRSOV)に組み込まれるような圧力センサにより測定することができる。
【0025】
ブリード空気入口ライン44は、空気間熱交換器56内の熱交換器冷却回路100に接続され、要求時に圧縮機ブリード空気38を冷却するようにする。圧力調節遮断バルブ54(PRSOV)は、低圧及び高圧ブリード遮断バルブ104、112と熱交換器56との間のブリード空気入口ライン44内に動作可能に配置され、熱交換器冷却回路100に流入する圧縮機ブリード空気38の入口圧力を調整するようにする。圧力調節遮断バルブ54は、入口圧力を例えば30〜45psigの範囲に維持する。PRSOVは通常、自己圧力センサを有し、圧力調整遮断バルブ54を遮断する範囲は、電子制御装置48により制御される。
【0026】
熱交換器冷却回路100及び空気間熱交換器56の周りのバイパスライン110は、ブリード空気入口ライン44から、熱交換器冷却回路100からのブリード空気出口ライン114まで延びる。ブリード空気出口ライン114は、熱交換器冷却回路100及び圧縮機供給空気予冷器7を環境制御システム6に接続する。バイパスライン110は、圧力調整遮断バルブ54と熱交換器冷却回路100との間のブリード空気入口ライン44に接続される。バイパスライン110は、空気間熱交換器56と環境制御システム6との間のブリード空気出口ライン114に接続される。バイパスライン110により、圧縮機ブリード空気38の一部又は全ては、熱交換器冷却回路100及び空気間熱交換器56の周りを流れ、又はバイパスすることが可能になる。
【0027】
ブリード空気出口ライン114は、圧縮機ブリード空気38を圧縮機供給空気予冷器7から環境制御システム6に搬送又は流すよう動作可能である。ブリード空気出口ライン114は、本明細書ではまた、ウィングの氷結を防止する圧縮機ブリード空気38の比較的暖かい部分を提供するため航空機ウィング氷結防止システム50に動作可能に接続されて示されている。
【0028】
可変予冷器バイパス9は、熱交換器56をバイパスしてブリード空気入口ライン44をブリード空気出口ライン114に接続するブリード空気バイパスライン110を含む。可変予冷器バイパス9は更に、ブリード空気入口ライン44とブリード空気出口ライン114との間のブリード空気バイパスライン110に配置されるバイパススロットルバルブ78として、図1〜5に示す可変バイパスバルブ74を含む。バイパススロットルバルブ78は、ブリード空気バイパスライン110内のバイパスブリード空気流80を調整するよう動作可能である。バイパススロットルバルブ78はまた、熱交換器冷却回路100に流入する圧縮機ブリード空気38の冷却空気部分88と、ブリード空気バイパスライン110に流入するバイパスブリード空気流80との間の圧縮機ブリード空気38の分割を制御する。熱交換器冷却回路100を通る抵抗と、バイパススロットルバルブ78により提供される可変抵抗とによって、バイパススロットルバルブ78が調整されるのに応じて分割が変化するよう制御される。バイパススロットルバルブ78は、電子制御装置48により制御される。
【0029】
温度センサ82は、ブリード空気バイパスライン110の下流側のブリード空気出口ライン114に動作可能に接続され、環境制御システム6に運ばれる前の圧縮機ブリード空気38の予冷器出口温度T2を測定する。温度センサ82は、電子制御装置48に接続され、コントローラは、温度センサ82によって測定された温度に部分的に基づいてバイパススロットルバルブ78を用いてブリード空気バイパスライン110内のバイパスブリード空気80を開閉又はスロットル調節する。任意選択の圧力センサ84は、ブリード空気バイパスライン110の下流側のブリード空気出口ライン114に動作可能に接続され、予冷器出口圧力を測定することができ、これを用いて圧縮機供給空気予冷器7前後の圧力差を測定することができる。
【0030】
温度センサ82はまた、電子制御装置48によって使用され、温度センサ82によって測定された予冷器出口温度T2に部分的に基づいて可変ファン空気バルブ76を制御し、開閉又はスロットル調整する。電子制御装置48は、バイパススロットルバルブ78及び可変ファン空気バルブ76を制御して作動させ、予冷器出口温度T2を所定又は所要の範囲に維持する。予冷器出口温度T2の例示的な範囲は、400〜450°Fである。
【0031】
圧縮機ブリード空気供給システム42の機能は、環境制御システム6(ECS)及び任意選択的に航空機ウィング氷結防止システム50に圧縮機ブリード空気38を供給することである。圧縮機ブリード空気38は、正常及び異常動作条件下で環境制御システム及び任意選択的に航空機ウィング氷結防止要件に適合するよう十分な流量及び温度で供給されなければならない。
【0032】
予冷器7の空気間熱交換器56は、極めて重量のある機器要素であり、予冷器バイパス9によって、より小型で軽量の空気間熱交換器56を使用することが可能になる。従来の予冷器熱交換器は、CDP空気の熱及び圧力に耐えるためにインコネル製であったが、本明細書で開示される予冷器熱交換器は、アルミニウム又はチタンから構成することができる。本明細書で開示される種々のラインは、航空機及び航空機ガスタービンエンジン産業で呼ばれているような金属パイプ又はダクトである。
【0033】
図3を参照すると、航空機の正常な巡航運転中、環境制御システム6において使用される圧縮機ブリード空気38は、低圧ブリード空気58からのみ取得され、本明細書ではHP圧縮機18の第4の段S4から抽気されるように示されており、CDP空気を用いるよりも燃料消費量の点でより安価である。低圧ブリード空気58の流量が不十分であると電子制御装置48が判定した場合、高圧ブリード遮断バルブ112を開放して、低圧ブリード遮断バルブ104を閉鎖させるようにする。電子制御装置48は、バイパススロットルバルブ78及び可変ファン空気バルブ76を作動させ、予冷器出口温度T2を所定又は所要の範囲に維持する。
【0034】
図4及び5には、予冷器コアとも呼ばれる熱交換器56の周りに圧縮機ブリード空気38をバイパスするための統合可変予冷器バイパス92を含む、統合予冷器90が示される。ブリード空気入口ライン44は、空気間熱交換56に通じたディフューザ64に接続され、要求時に圧縮機ブリード空気38を冷却するようにする。ハウジング94は、バイパスダクト96と熱交換器56とを部分的に境界付ける。バイパスダクト96及び熱交換器56は、並流関係にあり、統合予冷器90の排出出口67に排出される。ブリード空気出口ライン114は、排出出口67を環境制御システム6に接続する。可変バイパスバルブ74は、熱交換器56に対する入口98を開閉するよう動作可能なバイパスドア106である。バイパスドア106は、バイパスダクト96に流入し熱交換器56の周囲にバイパスする圧縮機ブリード空気38のバイパス部分124を調整又は制御する。バイパスドア106は、圧縮機ブリード空気38の冷却部分122として表される熱交換器56を通過する圧縮機ブリード空気38の量を制御する。バイパスドア106は、図4及び図5はそれぞれ開放位置と閉鎖位置で示されている。
【0035】
図6に示されるのは、代替の単一供給源圧縮機ブリード空気供給システム120である。単一供給源圧縮機ブリード空気供給システム120は、圧縮機ブリード空気38の単一の低圧供給源のみを使用し、該圧縮機ブリード空気38は、本発明ではHP圧縮機18の第4の段として示されているHP圧縮機18の中間段又は低圧ブリード空気段から提供されるが、別の段を使用することもできる。エンジンは、CDP又は他の比較的高圧のブリード空気が図1〜5に示す圧縮機ブリード空気供給システム42用の第2の供給源として使用される場合に必要とされるよりも高い推力レベルで作動する。これは通常、エンジンの1つが停止し、空港付近で着陸待機している場周経路におけるような、着陸進入又はロイター時などの重積載保持エンジン運転条件時に起こることになる。
【0036】
例えば、HP圧縮機18の第4の段のような、圧縮機ブリード空気38の単一の低圧供給源からの圧縮機ブリード空気38の圧力が所定レベル又は最小レベルを下回る場合には、航空機のパイロット又はオペレータは、ECS用のCDP空気を用いるよりも、単一の低圧供給源からの圧縮機ブリード空気38の適正又は所要レベルの圧力に適合するよう十分にエンジン10の推力レベルを増大させることができる。圧縮機ブリード空気38の圧力は、調整遮断バルブ(PRSOV)に組み込まれているような圧力センサにより測定することができる。
【0037】
圧縮機供給空気予冷器7及びより詳細には空気間熱交換器56をサイズ調整する設計条件は、満載航空機における1エンジン停止の重積載保持エンジン運転条件である。
【0038】
本明細書では本発明の好ましく例示的な実施形態であると考えられるものについて説明してきたが、当業者であれば、本明細書の教示から本発明の他の修正が明らかになる筈であり、従って、全てのこのような修正は、本発明の技術思想及び技術的内に属するものとして特許請求の範囲において保護されることが望まれる。従って、本特許により保護されることを望むものは,特許請求の範囲に記載し且つ特定した発明である。
【符号の説明】
【0039】
4 ウィング
6 環境制御システム
7 圧縮機供給空気予冷器
8 航空機
9 予冷器バイパス
10 航空機ガスタービンエンジン
12 中心軸線
14 ファン
15 コアエンジン
16 低圧orブースタ圧縮機
18 高圧圧縮機
20 環状燃焼器
22 高圧タービン
24 低圧タービン
26 環状ナセル
28 環状バイパスダクト
30 第1の駆動シャフト
31 大部分
32 第2の駆動シャフト
33 ファン空気
34 周囲空気
35 第1の部分
36 高温燃焼ガス
37 圧縮機吐出空気
38 圧縮機ブリード空気
42 圧縮機ブリード空気供給システム
44 ブリード空気入口ライン
48 電子制御装置
50 航空機ウィング氷結防止システム
54 圧力調整遮断バルブ
56 熱交換器
57 冷却空気
58 ブリード空気
60 高圧ブリード空気
61 コアカウル
63 ストラット
64 ディフューザ
65 ドア
66 出口チャンネル
67 排出出口
68 ファン出口
69 後縁
70 低圧段
72 高圧段
74 可変バイパスバルブ
76 ファン空気バルブ
78 バイパススロットルバルブ
80 バイパスブリード空気流
82 温度センサ
84 圧力センサ
85 低圧ブリード空気
88 冷却空気部分
90 統合予冷器
92 統合可変予冷器バイパス
94 ハウジング
96 バイパスダクト
98 入口
100 熱交換器冷却回路
102 低圧ブリードライン
104 低圧ブリード遮断バルブ
106 バイパスドア
108 高圧ブリードライン
110 ブリード空気バイパスライン
112 高圧ブリード遮断バルブ
114 ブリード空気出口ライン
116 低圧ブリード空気供給源
118 高圧ブリード空気供給源
120 単一の供給源圧縮機ブリード空気供給システム
122 冷却部分
124 バイパス部分
S1 第1の段
S4 中間段/第4の段
SCDP 最後の段
T2 予冷器出口温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジン圧縮機ブリード空気供給システム(42)であって、
ブリード空気供給源(116)からの圧縮機ブリード空気(38)を冷却し、環境制御システム(6)と供給流れ連通して動作可能に接続された圧縮機供給空気予冷器(7)を備え、該圧縮機供給空気予冷器(7)が、冷却空気(57)の供給源と流体連通し且つ前記圧縮機ブリード空気(38)を冷却するよう動作可能な空気間熱交換器(56)を含み、
前記圧縮機ブリード空気供給システム(42)が更に、
前記ブリード空気供給源(116)と前記環境制御システム(6)との間に配置され、前記熱交換器(56)の周りに前記圧縮機ブリード空気(38)の少なくとも一部をバイパスするよう動作可能な可変バイパスバルブ(74)を備える、ガスタービンエンジン圧縮機ブリード空気供給システム(42)。
【請求項2】
前記ブリード空気供給源が、圧縮機(18)の第1の段(S1)と最後の段(SCDP)との間に配置される低圧ブリード空気供給源(116)であり、前記冷却空気は、ガスタービンエンジン(10)からのファン空気(33)の一部であり、前記圧縮機ブリード空気供給システム(42)が更に、前記冷却空気(57)の供給源と前記熱交換器(56)との間に配置される可変ファン空気バルブ(76)を備える、請求項1に記載のガスタービンエンジン圧縮機ブリード空気供給システム(42)。
【請求項3】
前記ブリード供給源が、前記低圧ブリード空気供給源(116)と高圧ブリード空気供給源(118)との間で選択可能である、請求項2に記載のガスタービンエンジン圧縮機ブリード空気供給システム(42)。
【請求項4】
前記高圧ブリード空気供給源(118)が前記高圧ブリード空気供給源(118)の最後の段(SCDP)である、請求項3に記載のガスタービンエンジン圧縮機ブリード空気供給システム(42)。
【請求項5】
ガスタービンエンジン圧縮機ブリード空気供給システム(42)であって、
ブリード空気供給源(116)からの圧縮機ブリード空気(38)を冷却し、環境制御システム(6)と供給流れ連通して動作可能に接続された圧縮機供給空気予冷器(7)を備え、前記ブリード供給源が、ガスタービンエンジン高圧圧縮機(18)の低圧ブリード空気供給源(116)と高圧ブリード空気供給源(118)との間で選択可能であり、前記予冷器(7)が、冷却空気(57)の供給源と流体連通し且つ前記圧縮機ブリード空気(38)を冷却するよう動作可能な空気間熱交換器(56)を含み、
前記圧縮機ブリード空気供給システム(42)が更に、
前記ブリード空気供給源(116)と前記環境制御システム(6)との間に配置され、前記熱交換器(56)の周りに前記圧縮機ブリード空気(38)の少なくとも一部をバイパスするよう動作可能な可変バイパスバルブ(74)を備える、ガスタービンエンジン圧縮機ブリード空気供給システム(42)。
【請求項6】
前記高圧圧縮機(18)が、第1の段(S1)及び最後の段(SCDP)と、これらの間にある中間段(S4)とを含み、低圧ブリード空気供給源(116)と高圧ブリード空気供給源(118)が中間段(S4)と最後の段(SCDP)であり、前記冷却空気が、ガスタービンエンジン(10)からのファン空気(33)の一部であり、前記圧縮機ブリード空気供給システム(42)が更に、前記冷却空気(57)の供給源と前記熱交換器(56)との間に配置される可変ファン空気バルブ(76)を備える、請求項5に記載のガスタービンエンジン圧縮機ブリード空気供給システム(42)。
【請求項7】
前記低圧ブリード空気供給源(116)及び高圧ブリード空気供給源(118)に接続され且つ選択的に流れ連通したブリード空気入口ライン(44)を更に備え、該ブリード空気入口ライン(44)が、前記圧縮機ブリード空気(38)を冷却するため前記空気間熱交換器(56)において熱交換器冷却回路(100)に接続され且つ流れ連通しており、
前記圧縮機ブリード空気供給システム(42)が更に、
前記熱交換器冷却回路(100)を前記環境制御システム(6)に接続するブリード空気出口ライン(114)を備え、前記可変バイパスバルブ(74)が、前記ブリード空気入口ライン(44)と前記ブリード空気出口ライン(114)との間のブリード空気バイパスライン(110)内に配置されたバイパススロットルバルブ(78)である、請求項6に記載のガスタービンエンジン圧縮機ブリード空気供給システム(42)。
【請求項8】
前記高圧ブリード空気供給源(118)と前記ブリード空気入口ライン(44)との間の高圧ブリードライン(108)に配置される高圧ブリード遮断バルブ(112)と、
前記バイパススロットルバルブ(78)、前記可変ファン空気バルブ(76)、及び高圧ブリード遮断バルブ(112)に制御可能に接続された電子制御装置(48)と、
を更に備える、請求項7に記載のガスタービンエンジン圧縮機ブリード空気供給システム(42)。
【請求項9】
前記予冷器(7)が、前記熱交換器(56)の周りに前記圧縮機ブリード空気(38)をバイパスするため統合可変予冷器バイパス(92)を含む統合予冷器(90)であり、前記圧縮機ブリード空気供給システム(42)が更に、
前記低圧ブリード空気供給源(116)及び前記高圧ブリード空気供給源(118)と接続され且つ選択的に流れ連通したブリード空気入口ライン(44)を備え、前記ブリード空気入口ライン(44)がディフューザ(64)に接続され且つ流れ連通しており、前記ディフューザ(64)が、前記圧縮機ブリード空気(38)の少なくとも一部を冷却するため前記空気間熱交換器(56)と選択的に流れ連通し且つ前記統合予冷器(90)内のバイパスダクト(96)と選択的に流れ連通しており、前記熱交換器(56)及び前記バイパスダクト(96)が、並流関係にあり且つ前記統合予冷器(90)の排出出口(67)と流れ連通しており、
前記圧縮機ブリード空気供給システム(42)が更に、
前記排出出口(67)を前記環境制御システム(6)に接続するブリード空気出口ライン(114)を備え、前記可変バイパスバルブ(74)が、前記熱交換器(56)と前記ブリード空気入口ライン(44)との間に配置されたバイパスドア(106)を含む、請求項6に記載のガスタービンエンジン圧縮機ブリード空気供給システム(42)。
【請求項10】
前記高圧ブリード空気供給源(118)と前記ブリード空気入口ライン(44)との間で高圧ブロードライン(108)に配置された高圧ブリード遮断バルブ(112)と、
前記可変バイパスバルブ(74)、前記可変ファン空気バルブ(76)、及び高圧ブリード遮断バルブ(112)に制御可能に接続された電子制御装置(48)と、
を更に備える、請求項9に記載のガスタービンエンジン圧縮機ブリード空気供給システム(42)。
【請求項11】
航空機(8)の環境制御システム(6)に圧縮機ブリード空気(38)を供給する方法であって、
高圧HP圧縮機(18)の第1の段(S1)と最後の段(SCDP)との間に位置する中間圧又は低圧段(70)である単一の低圧供給源から抽気される低圧ブリード空気(58)を流すステップと、
航空機の進入又はロイター中に1エンジン停止状態の航空機運転条件を検出するステップと、
前記単一の低圧供給源からの圧縮機ブリード空気(38)の所定又は算出最小レベルの圧力に適合するよう十分にエンジン(10)の推力レベルを増大させるステップと、
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−180086(P2012−180086A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−39536(P2012−39536)
【出願日】平成24年2月27日(2012.2.27)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】