説明

環境情報提供装置、環境情報提供装置連携システム、環境情報提供方法、および、表示装置

【課題】客の意志によって店舗において生じる環境負荷を低減することができる店舗を実現する。
【解決手段】本発明に係る環境情報提供装置10は、店舗の部屋1の気温を調節する複数の空気調節装置4a〜4dの電力を測定する電力測定部12と、測定された電力に基づき、部屋1を複数のゾーンに分割した各ゾーンについて、該ゾーンの気温を調節するために空気調節装置4a〜4dによって生じる環境負荷を示す環境負荷量を求める環境負荷量決定部14と、各ゾーンの気温の情報を取得する環境状態情報取得部15と、各ゾーンの環境負荷量と各ゾーンの気温の情報とを部屋1の利用者に提示する制御を行う表示制御部18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エリアをゾーンに分け、ゾーン毎の環境状態の情報と環境負荷の情報とを利用者に提示する環境情報提供装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題が取りざたされ、店舗等の建物においても省エネへの取り組みが重要事項となっている。客が来店する店舗における、空調設備に関する省エネ技術として、例えば以下のものがある。
【0003】
特許文献1には、係員が顧客に対応する係員ゾーンおよび商品が置かれる商品ゾーンが同一空間に配された店舗を空調する空気調和機において、前記係員ゾーンの環境を検知してその係員ゾーンの快適性指標値を求め、前記商品ゾーンの環境を検知してその商品ゾーンの快適性指標値を求め、これら快適性指標値に可変式の重み付けを加えて総合快適性指標値を求め、この総合快適性指標値が目標快適性指標値となるように前記空気調和機を制御する技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、店舗内に所定時間以上滞在している店舗内常駐者が快適と感じる常駐者快適環境条件と、店舗内に所定時間以下滞在している店舗内流動者が快適と感じる流動者快適環境条件と、を含む環境条件のそれぞれに所定の重み付けを行って算出された店舗内最適環境条件に基づいて空調装置の運転状態を制御する技術が開示されている。
【0005】
特許文献3には、外食店舗を機能毎に分割した複数のエリアにそれぞれ設置され、各エリアの環境状態を計測する環境センサと、複数のエリアにそれぞれ設置され、各エリアの環境状態を調整する設備機器を制御する制御機器と、環境センサから取得した各エリアの環境状態の情報を基に、各エリアの設備機器を制御するための制御信号を生成して制御機器に送信する店舗サーバとを有し、各エリアに特化した制御を行う、外食店舗におけるエネルギー管理システムが開示されている。
【0006】
特許文献4には、空気調和装置と複数のゾーンの照明器具を制御する室内用電気機器の制御装置が開示されている。この空気調和装置は、導入する外気を空調処理し給気ファンにより各ゾーンへ送る1台の外調機と、該外調機から各ゾーンへ送られる外気量を可変にする給気ダンパーと、各ゾーンから排気ファンにより排出する空気量を可変にする排気ダンパと、各ゾーンの空気を空気調和して各ゾーンへ戻す1台の空調機とを備える。また、マイクロコンピュータとコントローラからなる制御手段は、着席者数0のゾーンの両ダンパを全閉にし、着席者数1以上のゾーンの必要外気導入量が着席者数に応じた値になるように該ゾーンの両ダンパーの開度を制御し、各ゾーンの必要外気導入量の総和により求める全体の外気導入量に応じて両ファンの回転数を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−263994号公報(2004年9月24日公開)
【特許文献2】特開2007−147190号公報(2007年6月14日公開)
【特許文献3】特開2007−162982号公報(2007年6月28日公開)
【特許文献4】特開2001−027438号公報(2001年1月30日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年では、盛んに行われる環境問題に関する啓蒙活動のせいもあり、環境活動に関心を持つ人の数は増え続けている。それゆえ、店舗に来店する客には、そうした環境活動に貢献したいという意志を持つ客が少なからず存在する。しかしながら、上記従来の技術では、店舗において、来店する客の意志で環境負荷を低減することができなかった。
【0009】
特許文献1および特許文献2に記載の発明は、店員が感じる快適性と来店客が感じる快適性とを考慮し、店舗の環境が両者が最適と感じる環境の中間になるよう空調を制御する発明である。店舗全体の温度等の環境を画一的に制御するため、個々の客の好みに応じた環境(環境負荷が小さい環境)を提供することはできない。
【0010】
特許文献3に記載の発明は、例えば店舗の客席エリアの温湿度の情報を基に、客席エリアの空調を制御する発明である。客席エリアの温湿度等を画一的に制御するため、個々の客の好みに応じた環境(環境負荷が小さい環境)を提供することはできない。
【0011】
特許文献4に記載の発明は、例えば1つの部屋を分けた各ゾーンに対し、当該ゾーンにおける着席者数に応じて当該ゾーンに導入する外気の量を変化させる発明である。着席者が0のゾーンの空調を行うといった無駄を省くことができるため、エネルギー消費を低減することはできるが、着席者の好みに応じた環境(環境負荷が小さい環境)を提供することはできない。
【0012】
これからの社会活動において、地球環境を鑑み、二酸化炭素排出量およびエネルギー消費を低減することは必須の事項である。しかしながら、店舗において、エネルギー消費を抑え、それによるコスト削減のみで経営を持続させることはできない。店舗の経営においては、エネルギー消費の低減と、客が満足する環境の実現とを両立させることが重要である。客が満足する環境を実現することは、店舗における集客率の向上に繋がる。人がいない閑散とした店舗において空気調節を行うことは非効率的な、無駄なエネルギー消費であり、店舗の集客率または着席率が高くなれば、店舗における空気調節は効率がよい、有効的なエネルギー消費ということになる。その上で、店舗と客との双方が環境活動に貢献できる環境作りが必要となる。それゆえ、環境活動に貢献したいという意志を持つ客が、環境活動に参加できる店舗を実現すること、および、そのような意志を持たない客も、環境活動に参加したくなる店舗を実現することが重要である。
【0013】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、客の意志によって店舗において生じる環境負荷を低減することができる店舗を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る環境情報提供装置は、上記の課題を解決するために、所定のエリアの環境状態を調節する電気機器の電力値または電流値を取得する電力取得部と、上記エリアを複数のゾーンに分割した各ゾーンについて、上記電気機器によって生じる環境負荷を示す環境負荷量を求める環境負荷量決定部と、各ゾーンの環境状態の情報を取得する環境状態情報取得部と、各ゾーンの環境負荷量と各ゾーンの環境状態の情報とを提示する制御を行う提示制御部とを備えることを特徴としている。
【0015】
また、本発明に係る環境情報提供方法は、上記の課題を解決するために、所定のエリアの環境状態を調節する電気機器の電力値または電流値を取得する電力取得ステップと、上記エリアを複数のゾーンに分割した各ゾーンについて、上記電気機器によって生じる環境負荷を示す環境負荷量を求める環境負荷量決定ステップと、各ゾーンの環境状態の情報を取得する環境状態情報取得ステップと、各ゾーンの環境負荷量と各ゾーンの環境状態の情報とを提示する提示ステップとを含むことを特徴としている。
【0016】
上記環境状態は、例えば、温度、湿度、風速、塵濃度、照明の明るさ、またはBGMの音量のうち、少なくともいずれか1つを示す。
【0017】
上記の構成によれば、所定のエリアの各ゾーンの環境状態の情報および各ゾーンについて生じる環境負荷を示す環境負荷量の情報を、上記エリアの利用者に提供することができる。そのため、利用者は、環境状態と環境負荷とを考慮して、環境状態に満足がいく範囲でできるだけ環境負荷の小さいゾーンを利用するといった判断を行うことができる。それゆえ、利用者の意志によって環境負荷を低減することができる。
【0018】
また、上記環境負荷は、消費電力、所定の期間における消費電力量、上記消費電力量に基づいて算出される電気料金、あるいは、上記消費電力または上記消費電力量に基づいて算出される二酸化炭素排出量を示してもよい。
【0019】
また、上記エリアの利用者から、該利用者が滞在するゾーンの環境状態を変更する指示を受け付ける環境状態変更部を備える構成であってもよい。
【0020】
上記の構成によれば、利用者が滞在するゾーンの環境状態に満足していない場合でも、該ゾーンの環境状態を利用者の好みの環境状態に変更することができる。
【0021】
また、上記環境状態情報取得部は、各ゾーンの環境状態の測定値を取得する、または、各ゾーンの調節される環境状態の目標値を上記電気機器から取得することにより、各ゾーンの環境状態の情報を取得してもよい。
【0022】
ここで、環境状態の目標値は、例えば空気調節装置の設定温度である。
【0023】
また、上記環境負荷量決定部は、上記ゾーンに対応する上記電気機器を特定し、該電気機器の電力値または電流値に応じた量を該ゾーンの環境負荷量としてもよい。
【0024】
また、各ゾーンについて、上記電気機器の出力の内、該ゾーンの環境状態の調節のために使用される割合を設定する寄与設定部を備え、上記環境負荷量決定部は、各ゾーンについて、各電気機器の上記取得された電力値または電流値に、該ゾーンの環境状態の調節のために使用される上記割合を乗じることにより、上記環境負荷量を求める構成であってもよい。
【0025】
上記の構成によれば、例えば、各ゾーンと電気機器とが1対1に対応していない場合においても、各ゾーンについての環境負荷量を求めることができる。
【0026】
また、各ゾーンの上記環境負荷量に応じて、該ゾーンに滞在する利用者に対して付与する特典を決定する特典決定部を備える構成であってもよい。
【0027】
上記の構成によれば、利用者が滞在するゾーンの環境負荷量に応じて利用者に特典を付与することで、利用者に積極的に環境負荷の小さいゾーンを利用させることができる。よって、環境負荷をより低減することができる。
【0028】
また、上記提示制御部は、上記特典決定部が決定した特典を示す情報を提示する制御を行ってもよい。
【0029】
上記の構成によれば、利用者は、利用するゾーンに応じた特典を確認することができる。
【0030】
また、上記エリアの利用者が滞在するゾーンを特定するゾーン決定部を備える構成であってもよい。
【0031】
本発明に係る環境情報提供装置連携システムは、複数の環境情報提供装置と、上記複数の環境情報提供装置と通信可能に接続された情報処理装置とを備える環境情報提供装置連携システムであって、上記の課題を解決するために、上記環境情報提供装置は、所定のエリアの環境状態を調節する電気機器の電力値または電流値を取得する電力取得部と、上記電気機器によって生じる環境負荷を示す環境負荷量を求める環境負荷量決定部とを備え、上記環境負荷量を上記情報処理装置に送信し、上記情報処理装置は、上記複数の環境情報提供装置から受信した上記環境負荷量を比較してそれぞれの上記環境負荷量を評価し、各環境負荷量の評価結果を対応する各環境情報提供装置に送信し、上記環境情報提供装置は、受信した上記環境負荷量の評価結果を提示する制御を行う提示制御部を備えることを特徴としている。
【0032】
上記の構成によれば、エリアAの利用者は、他のエリアと比較したエリアAの環境負荷量の評価を確認することができる。それにより、利用者自身がエリアAの環境負荷の低減に貢献している効果を認識することができる。そのため、利用者はより環境負荷の低減に積極的に協力するようになる。
【0033】
本発明に係る表示装置は、上記の課題を解決するために、所定のエリアを複数のゾーンに分割した各ゾーンの環境状態の情報と、各ゾーンの環境状態を調節する電気機器によって生じる環境負荷を示す環境負荷量とを、各ゾーンについて表示することを特徴としている。
【0034】
上記の構成によれば、所定のエリアの各ゾーンの環境状態の情報および各ゾーンについて生じる環境負荷を示す環境負荷量の情報を、上記エリアの利用者に提供することができる。そのため、利用者は、環境状態と環境負荷とを考慮して、環境状態に満足がいく範囲でできるだけ環境負荷の小さいゾーンを利用するといった判断を行うことができる。それゆえ、利用者の意志によって環境負荷を低減することができる。
【0035】
また、上記ゾーンに滞在する利用者に対して付与する、該ゾーンの環境負荷量に応じた特典を示す情報を表示する構成であってもよい。
【0036】
上記の構成によれば、利用者は、利用するゾーンに応じた特典を確認することができる。よって、利用者に積極的に環境負荷の小さいゾーンを利用させることができる。それゆえ、環境負荷をより低減することができる。
【0037】
また、上記エリアの利用者が滞在するゾーンを指示する入力を受け付ける入力装置を備える構成であってもよい。
【0038】
また、各ゾーンに対応する座席の着席状況を示す情報を表示する構成であってもよい。
【0039】
なお、上記環境情報提供装置は、一部をコンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記各部として動作させることにより上記環境情報提供装置をコンピュータにて実現させる制御プログラム、および上記制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0040】
以上のように、本発明によれば、所定のエリアを複数のゾーンに分割した各ゾーンの環境状態の情報および各ゾーンについて生じる環境負荷を示す環境負荷量の情報を、上記エリアの利用者に提供することができる。そのため、利用者は、環境状態と環境負荷とを考慮して、環境状態に満足がいく範囲でできるだけ環境負荷の小さいゾーンを利用するといった判断を行うことができる。それゆえ、利用者の意志によって上記エリアの環境負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施の形態に係る環境情報提供装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態を適用する店舗の部屋を示す見取り図である。
【図3】表示装置が表示画面に表示する内容の例を示す図である。
【図4】ゾーン分割の例を示す店舗の部屋を示す見取り図である。
【図5】表示装置が表示画面に表示する内容の他の表示例を示す図である。
【図6】環境情報提供装置における特典決定および環境負荷量等の情報の表示を行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の他の実施の形態に係る環境情報提供装置の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明のさらに他の実施の形態に係る環境情報提供装置連携システムの構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の一実施の形態のシステムの全体構成の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。本発明は、店舗の環境状態および環境負荷の情報を客に提供する装置に関する。環境状態としては、温度、湿度、風速、または塵濃度を示す空気環境状態、および、照明の明るさを示す照明環境状態、および、BGM(バックグランドミュージック)の音量を示す音楽環境状態等を挙げることができる。また以下では、特に断りのない限り、外気温が店舗内の気温より高い夏場の空気調節(冷房)を例として説明する。
【0043】
[実施の形態1]
<システムの全体構成>
図9は、本実施の形態のシステムの全体構成の概要を示す図である。店舗には店舗サーバが設置されており、店舗サーバは環境情報提供装置10と環境管理装置とを含む。環境情報提供装置10は、客用の表示装置22の表示を制御する。環境管理装置は、店員用の表示装置の表示を制御する。また、環境情報提供装置10は、ウェブサーバ59と通信を行う。来店した客は、客用の表示装置22の表示を参照する、または、ウェブサーバ59に公開された情報を携帯電話等の情報端末を用いて参照することにより、環境活動に関する情報を得ることができる。また、店員は、店員用の表示装置の表示を参照することにより、環境活動に関する情報を得ることができる。チェーン店である複数の店舗の店舗サーバは、複数の店舗を統括する本部に設置された本部サーバに接続されている。本部の管理者は、本部サーバに集められた各店舗サーバからの環境活動に関する情報を得ることができる。
【0044】
本発明は、客が利用する情報を提供するものであり、以下では環境情報提供装置10について主に説明する。
【0045】
<店舗の構成>
図2は、本実施の形態を適用する店舗の部屋(エリア)1を示す見取り図である。例として、部屋1に複数のテーブル2a〜2gと接客カウンター3とが配置されている飲食店の店舗を考える。各テーブル2a〜2gには客(利用者)が着席する座席が設けられている。出入口の側に設けられた接客カウンター3は、料金の支払い等を行う所である。
【0046】
部屋1の天井には、4つの空気調節装置(電気機器)4a〜4d(図2の見取り図に投影して示す)が設置されている。これら4つの空気調節装置4a〜4dは、独立して動作可能であり、調節された空気を供給することにより、周囲の空間の温度、湿度、塵(煙)濃度、および二酸化炭素濃度等を調節することが可能である。なお、空気調節装置4a〜4dが供給する空気の方向を図2に矢印で示している。また、部屋1には、3つの温度計5a〜5cが設置されている。
【0047】
また、接客カウンター3には、環境情報提供装置(図示せず)が設置されている。環境情報提供装置は、表示装置22に接続されており、来店した客は表示装置22の表示画面に表示された内容を参照することができる。また、表示画面にはタッチパネルが備えられており、環境情報提供装置は、タッチパネルを介して客または店員による入力を受け付けることができる。
【0048】
本実施の形態では、空気調節装置4a〜4dの設定温度等は個別に設定され、部屋1内の気温は場所によって異なるように調節される。そして、環境情報提供装置は、部屋1を複数のゾーンに分割して、各ゾーンについての環境状態(例えば気温)および環境負荷(例えば消費電力)の情報を、客に提供する。図2において、点線はゾーンの分割を示す。例えば、図2に示す例では、部屋1を3つのゾーンz1〜z3に分割している。各ゾーンz1〜z3は、仕切りなどで仕切られているわけではなく、仮想的に空間を分割したものである。また、部屋1には、各ゾーンz1〜z3に対応して3つの温度計5a〜5cが設置されている。なお、空気調節装置4a・4bは対応するゾーンz1の空気調節に主に寄与し、空気調節装置4cは対応するゾーンz2の空気調節に主に寄与し、空気調節装置4dは対応するゾーンz3の空気調節に主に寄与する。
【0049】
<環境情報提供装置の利用方法>
図3は、表示装置22が表示画面30に表示する内容の例を示す図である。表示画面30には、部屋1の概略的な見取り図を用いたゾーンの分割を示す座席情報31が表示される。図3に示す例では、部屋1はゾーンz1〜z3に分割されており、ゾーンz1は「エコロジー席」、ゾーンz2は「リラックス席」、ゾーンz3は「クール席」という識別名が付されている。また、座席情報31には、各テーブルおよび座席の配置とテーブル(または座席)の空席情報とが示されている。白抜きの丸は空席を示し、黒塗りの丸は使用中の座席を示す。
【0050】
表示画面30には、各ゾーンz1〜z3の気温、および各ゾーンの空気調節(冷房)のための空気調節装置4a〜4d(図2)の二酸化炭素排出量を示す情報32が示されている。なお、二酸化炭素排出量は、各ゾーンに対応する空気調節装置の消費電力(または所定の期間の消費電力量)に所定の係数をかけることで算出することができる。また、情報32に示される二酸化炭素排出量は、各ゾーンに含まれる座席数(またはテーブル数)で規格化して、座席(またはテーブル)当たりの二酸化炭素排出量に換算している。なお、各ゾーンz1〜z3の気温および二酸化炭素排出量は、色またはシンボル等の絵または文字を用いて表現してもよく、例えば、座席情報31の各ゾーンの背景を気温に応じて変化する色で表示してもよく、感覚的にわかりやすいように、二酸化炭素排出量を「微少」「少」「中」「多」等の文字で表示してもよい。
【0051】
ここで、例えば、「リラックス席」のゾーンz2は、対応する空気調節装置4cの設定温度が中程度(26℃)に設定されているゾーンであり、一般的な冷房の下、客が快適に長時間過ごすことができるゾーンである。また、「クール席」のゾーンz3は、対応する空気調節装置4dの設定温度が低め(24℃)に設定されているゾーンであり、冷房のための消費電力が大きく、すなわち二酸化炭素排出量が多く、環境負荷が大きいゾーンである。「クール席」は、涼しい環境を好む客、または短時間しか滞在しない客に適した座席である。また、「エコロジー席」のゾーンz1は、対応する空気調節装置4a・4b(図2)の設定温度が高め(28℃)に設定されているゾーンであり、冷房のための消費電力が小さく、すなわち二酸化炭素排出量が少なく、環境負荷が小さいゾーンである。「エコロジー席」は、環境活動に貢献したいと考える客に適した座席である。なお、設定温度ではなく、空気調節の風量等を変えることによって各ゾーンz1〜z3の環境状態を異ならせてもよい。
【0052】
来店した客は、表示画面30を参照することにより、各座席の空席状況、各座席(またはゾーン)の気温、および各座席(またはゾーン)の空気調節による環境負荷を認識することができる。また、客は、表示画面30に設けられたタッチパネルに触れて座席情報31に示される空席を選択することで、自身が着席する席を指定して環境情報提供装置10に入力することができる。
【0053】
環境情報提供装置10は、指定された座席が含まれるゾーンの環境負荷に応じて、当該客に付与する特典を決定し、その特典を表示画面30に表示する。例えば、「エコロジー席」のゾーンに滞在する客は、店舗の消費電力の低減に貢献し店舗の環境活動にも貢献するので、特典として「10%割引」を客に付与する。また、「リラックス席」のゾーンに滞在する客には、特典として「5%割引」を客に付与し、「クール席」のゾーンに滞在する客には特典は付与しない。このようにゾーンの環境負荷が小さいほど大きな特典を付与すれば、客は環境負荷の小さいゾーンを選択して環境活動に参加しやすくなる。なお、客は、その座席によって得られる特典を確認し、再度異なる座席を指定して環境情報提供装置10に入力することもできる。また、環境情報提供装置10は、客による座席の指定がない場合にもその時々の環境負荷に応じて特典を随時決定(更新)し、各ゾーンz1〜z3の特典を表示画面30に表示していてもよい。
【0054】
座席を指定した客は、その座席に着席して注文および飲食をする。なお、指定した座席の環境情報提供装置10への入力、および客の座席への誘導は、店員が行ってもよい。また、店員は客の注文内容をその客(または座席、テーブル)と結びつけて環境情報提供装置10へ入力する。
【0055】
客が飲食を終えて退店するとき、店員は環境情報提供装置10に、客(または座席、テーブル)を指定して退店処理を指示する。環境情報提供装置10は、指定された客の滞在したゾーンに応じて着席時に決定した特典と、料金とを示す情報を店員に提示する。特典および料金は紙に印刷して出力してもよいし、店員用の表示画面に表示してもよい。店員は、提示された特典および料金に基づいて客から料金を徴収する。なお、環境情報提供装置10は、「10%割引」等の特典を適用した後の料金を店員に提示してもよい。
【0056】
<環境情報提供装置の構成>
図1は、本実施の形態に係る環境情報提供装置10の構成を示すブロック図である。環境情報提供装置10は、ゾーン設定部11と、電力測定部(電力取得部)12と、寄与設定部13と、環境負荷量決定部14と、環境状態情報取得部15と、ゾーン決定部16と、特典決定部17と、表示制御部(提示制御部)18と、注文入力部19と、精算処理部20と、出力部21とを備える。環境情報提供装置10は、空気調節装置4a〜4dと、温度計5a〜5cと、表示装置22とに接続されている。
【0057】
ゾーン設定部11は、店舗の部屋1(図2)の間取り(形状、広さ、および座席の配置)の情報を有し、部屋1を仮想的に複数のゾーンに分割する。ゾーン分割については、店員の指示を受け付け、受け付けた指示に基づいて行ってもよいし、データベース(図示せず)にあらかじめ登録されたゾーン分割の設定例(ゾーン分割のパターン)の情報を取得し、取得した設定例に基づいて行ってもよい。なお、各ゾーンは、テーブルまたは座席を単位として分割されてもよい。言い換えれば、ゾーン設定部11は、各テーブルまたは各座席について、いずれのゾーンに属するかを決定する。また、ゾーン設定部11は、店員の指示またはゾーン分割の設定例の情報に基づき、各ゾーンにゾーンの識別名を対応付ける。ゾーン設定部11は、設定したゾーン分割設定の情報(各テーブルまたは各座席がいずれのゾーンに含まれるかの情報)を寄与設定部13およびゾーン決定部16に出力する。
【0058】
電力測定部12は、空気調節装置4a〜4dの電力または電流を測定することにより、各空気調節装置4a〜4dの消費電力を測定する。なお、空気調節装置4a〜4dの消費電力を測定する電力計を環境情報提供装置10の外部に設け、電力測定部12が電力計から各空気調節装置4a〜4dの電力値または電流値を取得する構成であってもよい。電力測定部12は、各空気調節装置4a〜4dの消費電力の情報を、環境負荷量決定部14に出力する。
【0059】
寄与設定部13は、各ゾーンについて、各空気調節装置4a〜4dの空調出力の内、該ゾーンの気温(環境状態)の調節のために使用される割合を特定する。例えば、ゾーンz2は、2つのテーブル2d・2eと、1つの空気調節装置4cとを含む。ここで、空気調節装置4cの空調出力は、主にこの2つのテーブル2d・2eを含むゾーンz2の空気調節に寄与すると考えられる。例えば、店員は、各空気調節装置の空調出力が、いずれのテーブル(または座席)の空間の空気調節に寄与するのかを特定し、あらかじめデータベース等に入力しておく。例えば、店員は、空気調節装置4cの空調出力の50%は、テーブル2dの周囲の空間の空気調節に寄与し、残りの50%はテーブル2eの周囲の空間の空気調節に寄与するという情報をデータベースに登録する。同様に、店員は、空気調節装置4dの空調出力の50%は、テーブル2fの周囲の空間の空気調節に寄与し、残りの50%はテーブル2gの周囲の空間の空気調節に寄与するという情報をデータベースに登録する。また、ゾーンz1は、3つのテーブル2a〜2cと、2つの空気調節装置4a・4bとを含む。そこで、店員は、空気調節装置4aの空調出力の2/3は、テーブル2aの周囲の空間の空気調節に寄与し、残りの1/3は、テーブル2bの周囲の空間の空気調節に寄与するという情報をデータベースに登録する。同様に、店員は、空気調節装置4bの空調出力の2/3は、テーブル2cの周囲の空間の空気調節に寄与し、残りの1/3は、テーブル2bの周囲の空間の空気調節に寄与するという情報をデータベースに登録する。上記の割合は一例であり、各空気調節装置の出力の各テーブルを含む空間への寄与の割合は、空気調節装置の配置および風向、および、テーブルまたは座席の配置等に応じて、適宜設定すればよい。また、あらかじめ各空気調節装置の消費電力と各位置での気温との因果関係を、実験等から求めておいてもよい。上記の情報を用いて、寄与設定部13は、例えば、ゾーンz1の空気調節に寄与する、各空気調節装置の出力の割合を求める、すなわち、ゾーンz1に含まれる3つのテーブル2a〜2cの周囲の空間の空気調節に寄与する各空気調節装置4a〜4dの出力の割合から、寄与設定部13は、ゾーンz1の空気調節に関して、空気調節装置4aの出力の100%、空気調節装置4bの出力の100%、空気調節装置4cの出力の0%、および空気調節装置4dの出力の0%が寄与していると設定する。寄与設定部13は、各ゾーンについての各空気調節装置の出力の寄与の割合の情報を、環境負荷量決定部14に出力する。
【0060】
なお、空気調節装置等の電気機器の配置は、必ずしもゾーンの配置と一致している必要はない。図4は、ゾーン分割の例を示す店舗の部屋40を示す見取り図である。図中の矢印は、冷房の風向および風量の例を示す。部屋40の天井には、2つの空気調節装置4g・4hが設置されている。ゾーン設定部11は、この部屋40を、3つのゾーンz4・z5・z6に分割してもよい。各ゾーンz4・z5・z6には同数の座席が配置されているとする。ゾーンz5は、2つの空気調節装置4g・4hによって空気調節される。そこで、店員は、例えば、空気調節装置4gの空調出力の50%は、ゾーンz5の空間の空気調節に寄与し、残りの50%は、ゾーンz4の空間の空気調節に寄与するという情報をデータベースに登録してもよい。同様に、店員は、空気調節装置4hの空調出力の50%は、ゾーンz5の空間の空気調節に寄与し、残りの50%は、ゾーンz6の空間の空気調節に寄与するという情報をデータベースに登録してもよい。これに基づき、寄与設定部13は、例えば、ゾーンz4の空気調節に関して、空気調節装置4gの出力の50%が寄与していると設定し、ゾーンz5の空気調節に関して、空気調節装置4gの出力の50%および空気調節装置4hの50%が寄与していると設定し、ゾーンz6の空気調節に関して、空気調節装置4hの出力の50%が寄与していると設定する。
【0061】
環境負荷量決定部14(図1)は、各ゾーンについて、該ゾーンの気温を調節するために空気調節装置によって消費される電力(環境負荷)を示す環境負荷量を求める。具体的には、例えば、電力測定部12が測定した直近の10分間の平均の消費電力が、空気調節装置4aでは50W、空気調節装置4bでは150W、空気調節装置4cでは300W、空気調節装置4dでは400Wであったとする。この場合、空気調節装置4aの50Wの100%と、空気調節装置4bの150Wの100%を足して、ゾーンz1の空気調節にかかる消費電力は200Wであると求められる。同様に、ゾーンz2の空気調節にかかる消費電力は300W、ゾーンz3の空気調節にかかる消費電力は400Wであると求められる。環境負荷量決定部14は、各ゾーンの空気調節にかかる消費電力に、所定の係数(排出係数)を乗じることで二酸化炭素排出量に換算する。排出係数は、電気事業者毎に異なる値である。ここでは、排出係数として0.5(kg−CO2/kWh)を用いる。すなわち、ゾーンz1の空気調節による二酸化炭素排出量は100g/h、ゾーンz2の空気調節による二酸化炭素排出量は150g/h、ゾーンz3の空気調節による二酸化炭素排出量は200g/hとなる。環境負荷量決定部14は、このように求めた各ゾーンについての二酸化炭素排出量を、環境負荷量として特典決定部17および表示制御部18に出力する。なお、環境負荷量決定部14は、環境負荷量として消費電力または所定の期間の消費電力量を特典決定部17および表示制御部18に出力してもよい。または、環境負荷量決定部14は、消費電力または二酸化炭素排出量等の数値の大きさを表す情報(例えば「微少」「少」「中」「多」)を環境負荷量として出力してもよく、または、消費電力または二酸化炭素排出量等に応じて環境への貢献度合いを求め、その情報(例えば「エコ貢献度10」「エコ貢献度5」「エコ貢献度1」)を環境負荷量として出力してもよい。
【0062】
環境状態情報取得部15は、温度計5a〜5cに接続されており、温度計5a〜5cが測定した各ゾーンの気温の情報を取得する。環境状態情報取得部15は、取得した各ゾーンの気温の情報を、表示制御部18に出力する。なお、部屋1に配置する温度計の数はゾーンに対応していなくてもよく、もっと多くの温度計を設置して、各位置における気温の情報を測定してもよい。なお、環境状態情報取得部15は、測定された気温を取得するのではなく、環境状態の情報として、各空気調節装置4a〜4dから設定温度(気温の目標値)を取得してもよい。すなわち、図3の表示画面30において、測定した気温の代わりに設定温度を表示させてもよい。
【0063】
表示制御部18は、入力されたゾーン分割設定の情報と、各ゾーンについての環境負荷量と、各ゾーンの気温の情報とを、図3に示すようにレイアウトして表示するよう、表示装置22を制御する。なお、ゾーン分割設定の情報は、ゾーン設定部11から寄与設定部13および環境負荷量決定部14を経由して表示制御部18に入力される。客は、表示装置22の表示画面30(図3)に表示された各ゾーンについての環境負荷量と、各ゾーンの気温の情報とを参照することができ、気温と環境負荷量との兼ね合いを考慮して着席する座席(滞在するゾーン)を決定することができる。また、表示制御部18は、着席状況を記憶するデータベース(図示せず)から着席状況の情報を取得し、表示装置22に着席状況を表示させる。
【0064】
ゾーン決定部16は、客による座席の指定の入力を受け付け、客が着席する座席を特定する。客による入力は、表示装置18に備えられたタッチパネルから行ってもよいし、キー等を備える他の入力装置から行ってもよい。また、客が着席した座席を店員が確認し、店員がゾーン決定部16に入力してもよい。ゾーン決定部16は、特定した座席(またはテーブル、ゾーン)の情報を特典決定部17に出力する。また、ゾーン決定部16は、特定した座席が「空席」から「着席」になったことを示す情報を、着席状況を記憶するデータベースに出力する。
【0065】
特典決定部17は、各ゾーンの二酸化炭素排出量に応じて、ゾーン決定部16によって特定された座席を利用する客に付与する特典を決定する。例えば、特典決定部17には、二酸化炭素排出量とそれに対応する特典とを示すデータがあらかじめ登録されている。例えば、特典決定部17は、二酸化炭素排出量が170g/h以上の場合は特典なし、二酸化炭素排出量が170g/h未満かつ140g/h以上の場合は「5%割引」の特典を付与、二酸化炭素排出量が140g/h未満かつ110g/h以上の場合は「7%割引」の特典を付与、二酸化炭素排出量が110g/h未満の場合は「10%割引」の特典を付与、というように、滞在するゾーンの環境負荷量に応じて客に付与する特典を決定する。特典決定部17は、決定した特典の情報を、表示制御部18および精算処理部20に出力する。
【0066】
また、特典決定部17は、例えば、各ゾーンの環境負荷量を比較して、環境負荷量が小さい順に、あらかじめ決められた特典を付与してもよい。例えば、環境負荷量が最も小さいゾーンの客には「10%割引」の特典を付与、2番目に小さいゾーンの客には「5%割引」の特典を付与、3番目に小さいゾーンの客には特典なし、としてもよい。
【0067】
また、特典決定部17は、例えば、環境負荷量として所定の期間(例えば1時間)の消費電力量を受け取り、各ゾーンの消費電力量を電気料金に換算する。なお、この電気料金は、各座席またはテーブルの数で規格化されていてもよい。そして、あらかじめ設定された基準となる電気料金に対する各ゾーンの電気料金の差額に応じて、客の飲食料金に対する値引き(例えば、電気料金の差額の50%の値引き)を特典として決定してもよい。なお、所定の期間の消費電力量は、実際に測定して積算したものでもよく、測定した現在の電力に所定の期間を乗じて予測の消費電力量を計算したものでもよい。
【0068】
なお、客が先に接客カウンターで代金を支払ってから座席に着席する形態の店舗では、客に座席(ゾーン)に応じた特典を付与するために、代金支払い時に客または店員が、客が着席する座席を指定し、客が割引後(特典決定部17が決定した特典を適用した後)の代金の支払いを終えた後に、店員が客を指定された座席まで誘導するようにしてもよい。あるいは、代金を支払って着席した客の座席を、店員がゾーン決定部16に入力し、特典決定部17が当該客に特典として付与するポイントを決定してもよい。このポイントは、例えば、当該店舗またはチェーン展開する他の店舗において、サービスと引き替えに利用可能なポイントである。
【0069】
表示制御部18は、ゾーン決定部16が特定した座席(客が指定した座席)を利用する客に付与する特典として、特典決定部17が決定した特典の情報を、表示装置22の表示画面30に表示させることにより、客に特典の情報を提示する。なお、客は、この特典の情報を確認して、他の座席を指定して他の座席の特典を表示画面30に表示させることもできる。
【0070】
また、特典決定部17は、例えば1分毎に、環境負荷量に応じて全てのゾーンの特典を決定し、表示制御部18は、1分毎に、全てのゾーンの特典を更新して表示させる構成であってもよい。この場合、客は、表示画面30に表示される全てのゾーンの気温と環境負荷と特典とをまとめて比較して、滞在する座席を選択することができる。
【0071】
ゾーン決定部16に入力された座席に客が着席した後、店員が注文をとる。店員は、客の注文内容をその客の識別情報(客自身の識別情報、または客が着席している座席またはテーブルの情報)と結びつけて環境情報提供装置10の注文入力部19に入力する。
【0072】
注文入力部19は、店員からの注文内容と客の識別情報との入力を受け付け、記憶する。また、注文入力部19は、店員から退店処理の指示の入力を受け付ける。退店処理の指示が入力されると、注文入力部19は、注文内容と客の識別情報とを精算処理部20に出力する。
【0073】
精算処理部20は、注文内容に応じて料金を計算する。注文内容とその価格はデータベースにあらかじめ登録しておけばよい。精算処理部20は、計算した料金の情報と特典決定部17が決定した特典の情報とを出力部21に出力する。また、精算処理部20は、客の識別情報が示す座席が「着席」から「空席」になったことを示す情報を、着席状況を記憶するデータベースに出力する。
【0074】
出力部21は、計算された料金の情報と特典の情報とを用紙(伝票等)に印刷して出力する。店員は、用紙に印刷された料金の情報と特典の情報とに基づき最終的な料金を計算して客から徴収する。
【0075】
なお、精算処理部20は、「10%割引」等の特典を適用したあとの料金を算出し、出力部21に出力してもよい。出力部21は、店員用の表示装置に特典を適用したあとの料金を表示してもよい。また、出力部21は「10%割引」等の特典をクーポンとして発行し、次回の来店時に利用できる形態としてもよい。
【0076】
このように、本実施の形態では、電力測定部12が測定した電力に基づき、特典決定部17がゾーンの環境負荷量に応じてリアルタイムに特典を決定する。それゆえ、客に提示する環境負荷の情報および特典は、各ゾーンの空気調節のために生じる実際の環境負荷を反映したものとすることができる。そのため、客は、実際に環境負荷が小さい環境状態の座席(またはゾーン)を適切に選択することができ、店舗の環境活動に確実に貢献することができる。よって、店舗は、客主導による環境活動を実現することができる。また、本実施の形態によれば、例えば強い冷房を好む客にも適した環境状態およびその情報を提供できるため、客の満足度を高めることにより、店舗の集客率を高めることができ、空気調節等のエネルギー消費を効果的なものにすることができる。
【0077】
また、上記の例では店舗の1つの部屋を複数のゾーンに分割する場合について説明したが、これに限らず、環境情報提供装置は、建物の特定のエリアを複数のゾーンに分割して各ゾーンの環境状態および環境負荷の情報を提供してもよい。また、環境情報提供装置は、例えば、建物のひと繋がりの空間の一部のエリアを複数のゾーンに分割し、当該エリアのみの環境状態および環境負荷の情報を提供するものでもよい。
【0078】
また、店舗内のエリアをゾーン分割する構成に限らず、店舗外のエリアをゾーン分割して、各ゾーンの環境状態を調節する電気機器の環境負荷の情報を提供してもよい。例えば、環境情報提供装置は、飲食店の建物に隣接する、該飲食店のテラス席(エリア)をゾーン分割し、ゾーン毎に照明およびBGMの音量等の環境状態の調節に必要な消費電力の情報を提供してもよい。
【0079】
また、本発明に係る環境情報提供装置は、路線バスまたは客船等の移動体に適用することもできる。例えば、客船の、複数の客が滞在する客室(エリア)をゾーン分割し、各ゾーン毎に気温等の環境状態の情報と空気調節装置等の環境負荷の情報とを提供してもよい。
【0080】
また、店舗において食器を洗う行為においても環境負荷は生じる。客がマイカップ(マイ箸)等の個人所有の食器等を持ち込んだ場合、店舗において生じる環境負荷を小さくすることができる。そこで、客が個人所有の食器等を使用する場合(店舗の特定の食器を使用しない場合)の環境負荷の低減量を、環境負荷の低減量を記憶したデータベースから環境負荷量決定部14が取得し、特典決定部17に出力してもよい。特典決定部17は、ゾーンの環境負荷量と、個人所有の食器等を使用することによる環境負荷の低減量とを組み合わせて客に付与する特典を決定してもよい。なお、客が個人所有の食器等を使用するか否かの情報の入力は、ゾーン決定部16が受け付けてもよい。
【0081】
<環境情報の他の表示例>
図5は、表示装置が表示画面30に表示する内容の他の表示例を示す図である。なお、この表示例は冬場の店舗において暖房をした例である。図5の例においては、店舗内部の気温分布を、各位置の気温の高さに応じたバーの高低で表現している。また、気温を表すバーは、気温に応じて異なる色で表示される。また、空気調節による風が強い位置について、バーを揺らせて動画表示することで、各位置の風の強さ(空気調節の風量)を表現する。店舗内には、各位置に応じた気温および風量を測定する測定装置が配置されている。客が、タッチパネルによって店舗内部の任意の位置を選択すると、表示装置は、選択した位置(ゾーン)の気温(例えば28℃)と選択した位置の空席情報と付与される特典(10%割引)の情報とを表示する。
【0082】
なお、店舗における空席の数をまとめて表示してもよいし、各ゾーン毎の空席の数を表示してもよい。また、時々刻々と変化する気温分布の変化を、温度を感じさせる色合いの揺らぎによって表現してもよい。
【0083】
また、表示画面に、店舗内部の一部の様子を写真・動画等の画像で表示してもよい。また、店舗内部の気温分布を色等で表現してもよい。また、表示画面に、外気温を同時に表示することによって、店舗内の気温との差をわかりやすくすることができる。また、表示画面に、過去の所定の期間における店舗の空気調節装置の全体の消費電力量と、それに対する店舗が定めた消費電力量の目標値に対する差分(または目標値自体)とを表示してもよい。目標値との差分を表示することで、客は、店舗における環境活動への一体感を感じることができ、より環境負荷の低減に貢献しようという意識を高めることができる。
【0084】
このような表示装置は、店舗の外に配置されてもよく、また、表示画面を、店舗とは離れたデジタルサイネージ等に配信してもよい。店舗外において、店舗の空席状況、気温分布、環境負荷、および特典を表示することが、環境活動に貢献したいという意志を持つ客に対する効果的な宣伝になる。また、そのような意志を持たない客に対しても、環境活動への興味を引き起こすことが可能になる。
【0085】
また、各テーブルに表示装置を設け、それぞれのテーブルの周囲の気温および環境負荷等の情報をテーブルの表示装置に表示させてもよい。
【0086】
また、環境情報の提示は表示画面による表示に限らない。例えば、環境負荷の大きさおよび気温を表すアイコンを、投影装置から空席のテーブル上に投影することによって、客に情報を提示してもよい。また、客が着席している座席か空席かをカメラで撮像した画像から認識し、空席のテーブルにのみアイコンを投影してもよい。また、投影するアイコンの色、形を気温、環境負荷、または時刻等によって変化させてもよい。
【0087】
また、店舗の入口等に座席マップを示したパネルを設置し、客がパネルに設けられた座席を選択するボタンを押すと、音声または音の種類によって、気温および環境負荷等の情報を客に提示してもよい。
【0088】
また、透過型ディスプレイによって環境情報を提示してもよい。例えば、店舗の入口に、透過型ディスプレイを配置し、客が透過型ディスプレイ越しに店舗内を見渡せるように構成してもよい。客が所定の位置に立って透過型ディスプレイを見た場合に、その方向にある店舗内のゾーンの気温等の情報が店舗の様子と重なって見えるように、透過型ディスプレイは気温等の情報を表示する。この構成によれば、客は一目で店舗内の実際の状況と、そのゾーンの気温、環境負荷等とを確認することができる。
【0089】
<制御フロー>
次に、環境情報提供装置10において、特典決定および環境負荷量等の情報の表示を行う処理の流れについて図6を用いて説明する。図6は、環境情報提供装置10における特典決定および環境負荷量等の情報の表示を行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0090】
ゾーン設定部11(図1)は、部屋を仮想的に複数のゾーンに分割する(S1)。ゾーン設定部11は、設定したゾーン分割設定の情報を寄与設定部13およびゾーン決定部16に出力する。
【0091】
寄与設定部13は、各ゾーンについて、各空気調節装置4a〜4dの空調出力の内、該ゾーンの気温の調節のために使用される割合を特定する(S2)。寄与設定部13は、各ゾーンについての各空気調節装置の出力の寄与の割合の情報を、環境負荷量決定部14に出力する。
【0092】
電力測定部12は、空気調節装置4a〜4dの電力または電流を測定することにより、各空気調節装置4a〜4dの消費電力を測定する(S3)。電力測定部12は、各空気調節装置4a〜4dの消費電力の情報を、環境負荷量決定部14に出力する。
【0093】
環境負荷量決定部14は、各ゾーンについて、該ゾーンの気温を調節するために空気調節装置によって消費される電力から二酸化炭素排出量を求める(S4)。環境負荷量決定部14は、求めた各ゾーンについての二酸化炭素排出量を、環境負荷量として特典決定部17および表示制御部18に出力する。
【0094】
環境状態情報取得部15は、温度計5a〜5cが測定した各ゾーンの気温の情報を取得する(S5)。環境状態情報取得部15は、取得した各ゾーンの気温の情報を、表示制御部18に出力する。
【0095】
ゾーン決定部16は、客による座席の指定の入力を受け付け、客が着席する座席を特定する(S6)。ゾーン決定部16は、特定した座席の情報を特典決定部17に出力する。
【0096】
特典決定部17は、各ゾーンの二酸化炭素排出量に応じて、ゾーン決定部16によって特定された座席を利用する客に付与する特典を決定する(S7)。特典決定部17は、決定した特典の情報を、表示制御部18に出力する。
【0097】
表示制御部18は、各ゾーンについての環境負荷量と、各ゾーンの気温の情報と、特典決定部17が決定した特典の情報とを表示装置22に表示させる(S8)。
【0098】
[実施の形態2]
本実施の形態では、メンバーズカードに記憶された情報からゾーンを決定する構成について説明する。なお、説明の便宜上、実施の形態1にて説明した図面と同じ機能を有する部材・構成については、同じ符号を付記し、その詳細な説明を省略する。なお、店舗の構成は、図2に示す構成において環境情報提供装置10が環境情報提供装置50に代わる他は同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0099】
<環境情報提供装置の構成>
図7は、本実施の形態に係る環境情報提供装置50の構成を示すブロック図である。環境情報提供装置50は、ゾーン設定部11と、電力測定部12と、寄与設定部13と、表示制御部18と、環境負荷量決定部51と、環境状態情報取得部52と、ゾーン決定部53と、特典決定部54と、通信部(提示制御部、条件入力部)55と、空気調節装置制御部(電気機器制御部)56と、環境負荷予測部57と、特典予測部58とを備える。環境情報提供装置50は、空気調節装置4a〜4dと、温度計5a〜5cと、表示装置22と、ウェブサーバ59とに接続されている。ゾーン設定部11、電力測定部12、寄与設定部13、および表示制御部18の構成は、実施の形態1と同様である。
【0100】
環境負荷量決定部51は、実施の形態1と同様に、各ゾーンについて、該ゾーンの気温を調節するために空気調節装置によって消費される電力を示す環境負荷量として、消費電力を換算した二酸化炭素排出量を求める。環境負荷量決定部51は、各ゾーンについての二酸化炭素排出量を環境負荷量として表示制御部18および通信部55に出力する。
【0101】
環境状態情報取得部52は、実施の形態1と同様に、温度計5a〜5cに接続されており、温度計5a〜5cが測定した各ゾーンの気温の情報を取得する。環境状態情報取得部52は、取得した各ゾーンの気温の情報を、表示制御部18および通信部55に出力する。
【0102】
ゾーン決定部53は、客が携帯するメンバーズカードに記憶された情報から、客が着席する座席を特定する。メンバーズカードは、客に対して発行される記憶装置付きカードであり、あらかじめ客の好みの環境状態を示す情報がゾーン優先度として登録されている。客の好みの環境状態を示す情報とは、例えば「なるべく環境負荷の小さい座席がよい」、「冷房は26℃以下で、なるべく環境負荷の小さい座席がよい」等、客が着席する座席(またはゾーン)の優先度を示す情報である。来店した客は、自身が携帯するメンバーズカードの情報を、店舗に設置されたカードリーダー(図示せず)に読み取らせる。ゾーン決定部53は、カードリーダーからゾーン優先度の情報を取得し、例えば空席の中からなるべく環境負荷の小さい座席を選択し、客が着席する(客を誘導する)座席として特定する。また、メンバーズカードには、客を識別する客識別情報(客を特定するID番号等)が記憶されており、ゾーン決定部53は、メンバーズカードから客識別情報を取得する。ゾーン決定部53は、特定した座席の情報および客識別情報を、表示制御部18および特典決定部54に出力する。
【0103】
表示制御部18は、ゾーン決定部53が特定した座席を示す情報と、該座席(または座席を含むゾーン)の気温および環境負荷量の情報とを、表示画面に表示する。店員は、ゾーン決定部53が特定した座席に客を誘導する。なお、このメンバーズカードは、同じチェーンの他店舗でも利用することができ、メンバーズカードを提示すれば客は常に好みの環境状態のゾーン(座席)を利用することができる。なお、各ゾーンに対応する複数の札(タグ)を接客カウンターに用意しておき、客にそれを選択させることで誘導の目安としてもよい。
【0104】
特典決定部54は、各ゾーンの二酸化炭素排出量に応じて、ゾーン決定部53によって特定された座席を利用する客に付与する特典を決定する。特典決定部54は、例えば、環境負荷量に応じて、客識別情報が示す客に対して付与するポイント(特典)を決定する。このポイントは、例えば、当該店舗またはチェーン展開する他の店舗において、サービスと引き替えに利用可能なポイントである。特典決定部54は、決定した特典の情報およびゾーン決定部53によって特定された座席の情報を、客識別情報と対応付けて通信部55に出力する。
【0105】
通信部55は、特典決定部54から入力された特典の情報を、客識別情報と対応付けてウェブサーバ59に送信する。例えば、ウェブサーバ59は、登録された客(メンバーズカードを発行した客)に付与した累積ポイントを記憶している。ウェブサーバ59は、客識別情報に示される客の累積ポイントに、特典決定部54から入力されたポイントを加算した結果を、該客の累積ポイントとして記憶する。
【0106】
着席した客は、ウェブサーバ59が提供するサイトに携帯電話等の携帯ネット端末を用いてアクセスすることで、自身に付与されている累積ポイントおよび最近付与されたポイントと、着席している座席の現在の気温および環境負荷の情報とを確認することができる。例えば、メンバーズカードに、該客専用ウェブページのアドレスを示す二次元バーコードが描かれており、客は携帯電話で二次元バーコードを読み取って該客専用ウェブページにアクセスする。
【0107】
通信部55は、該客の累積ポイントおよび最近付与されたポイントと共に、該客が着席している座席(ゾーン決定部53によって特定された座席)の現在の気温および環境負荷量の情報を、該客専用ウェブページに表示するようウェブサーバ59を制御する。
【0108】
また、ウェブサーバ59は、客専用ウェブページにおいて、客が滞在しているゾーンの空気調節の設定温度を変更する指示を受け付ける。例えば、客専用ウェブページには、ゾーンの設定温度を「1℃上げる」「1℃下げる」というボタンが表示されており、客は、自身が滞在するゾーンの気温を下げたいと思った場合、「1℃下げる」ボタンを選択して、空気調節の設定温度を1℃低くする指示をウェブサーバ59に送信することができる。
【0109】
通信部(環境状態変更部)55は、ウェブサーバ59から、客の空気調節の設定温度を変更する指示を取得し、設定温度を変更する指示を該客が着席している座席(ゾーン決定部53によって特定された座席)の情報と共に空気調節装置制御部56に出力する。
【0110】
空気調節装置制御部56は、ウェブサーバ59から入力された客が着席している座席を含むゾーンの気温を変更するよう各空気調節装置4a〜4dを制御する。具体的には、該ゾーンの気温を低くするように、該ゾーンの空気調節に寄与する空気調節装置の設定温度を変更する。空気調節装置制御部56は、該客が着席している座席の情報を特典決定部54に出力する。
【0111】
特典決定部54は、空気調節装置の設定温度の変更があったゾーンの座席について、改めて環境負荷量決定部51から環境負荷量を取得し、客に付与する特典を変更する。
【0112】
なお、客による設定温度の変更を可能にする上記構成では、1人の客の変更指示が他の客の座席の環境状態および特典に影響を及ぼすことが考えられる。そのため、ゾーンの分割は、座席(またはテーブル)を単位として行われていることが好ましい。また、通信部55が、ウェブサーバ59に、客の設定温度の変更指示を、客専用ウェブページ等で同じ他の客に伝達させ、他の客の承認が得られた場合に、通信部55が、空気調節の設定温度を変更する指示を空気調節装置制御部56に出力する構成であってもよい。また、空気調節装置制御部56が、空気調節装置の風向または風量を変更することにより、設定温度の変更指示を出した客の座席における体感温度が変わるようにしてもよい。また、変更指示により近い気温の空席を、客専用ウェブページ等で紹介してもよい。また、実際には設定温度を変更せずに、設定温度を変更した旨を、客専用ウェブページ等で変更指示をした客に伝えてもよい。こうすることで、いわゆる偽薬効果によって、客は涼しく(または暖かく)感じることがある。
【0113】
また、ウェブサーバ59は、客専用ウェブページにおいて、客が滞在しているゾーンの環境状態のシミュレーションを行う指示を受け付ける。例えば、客は、ウェブサーバ59に、該ゾーンの気温を25℃に調節するときのシミュレーションを行う指示を入力する。
【0114】
通信部(条件入力部)55は、ウェブサーバ59から、入力されたシミュレーション条件(「該ゾーンの気温を25℃に調節する」)と、現在の該ゾーンの気温の情報とを取得し、環境負荷予測部57に出力する。
【0115】
環境負荷予測部57は、通信部55から入力されたシミュレーション条件に基づいて、該ゾーンの気温を25℃に調節した場合の、空気調節装置4a〜4dによって生じる環境負荷量を予測する。
【0116】
具体的には、環境負荷予測部57は、電力測定部12および環境状態情報取得部15から所定の時間毎に、店舗の、外気温、各ゾーンの気温、および各空気調節装置4a〜4dの電力量を取得する。環境負荷予測部57は、外気温および各ゾーンの気温を説明変数とし、各空気調節装置4a〜4dの電力量を目的変数として、回帰分析またはニューラルネットワークによって学習を行っておく。そして、通信部55からシミュレーション条件が入力されたとき、環境負荷予測部57は、学習結果を用いて、現在の当該ゾーンの気温とシミュレーション条件に示される目標気温(25℃)との差に応じた必要電力量を予測する。環境負荷予測部57は、予測した必要電力量またはその二酸化炭素排出量への換算値を環境負荷予測量として特典予測部58と通信部55とに出力する。
【0117】
特典予測部58は、入力された環境負荷予測量から、該ゾーンの気温をシミュレーション条件のものに変更した場合の特典を予測し、通信部55に出力する。
【0118】
通信部55は、シミュレーション条件において予測した環境負荷予測量と、予測した特典とを、ウェブサーバ59の客専用ウェブページに表示させる。
【0119】
なお、ウェブサーバ59には、携帯電話でアクセスする形態に限らず、各テーブルに情報端末装置を配置して、情報端末装置が各テーブルの気温、環境負荷量、および特典を表示してもよい。また、客は、情報端末装置から設定温度の変更またはシミュレーション条件の入力を行う構成でもよい。
【0120】
また、店舗外から携帯電話で、または店舗の外に設置された情報端末装置等でウェブサーバ59にアクセスして、現在の各ゾーンの気温、環境負荷量、および特典を確認できるようにウェブサーバ59を構成してもよい。また、店舗外から携帯電話で、または店舗の外に設置された情報端末装置等でウェブサーバ59にアクセスして、特定の座席を指定して上記のシミュレーションを行ってもよい。
【0121】
なお、ウェブサーバ59は、特典として、該客専用ウェブページから電子クーポンをダウンロードできるようにしてもよい。客は、該客専用ウェブページにアクセスしてウェブサーバ59から電子クーポンを携帯電話にダウンロードし、次回の来店時に携帯電話の画面に表示させて電子クーポンを利用してもよい。
【0122】
また、特典決定部54は、着席状況を記憶するデータベース(図示せず)から、各時間帯における着席状況を示すデータを取得して蓄積してもよい。客が少ない店舗において空気調節を行うことは、非効率的な、無駄なエネルギー消費と言うことができる。そこで、平均して店舗内の客が少ない時間帯がある場合、特典決定部54は、該時間帯において付与するポイントを2倍に設定してもよい。特典決定部54は、例えば全てのゾーンにおいて、該時間帯において得られる特典が増加する(ポイントが2倍になる)という情報を、通信部55に出力する。
【0123】
通信部55は、ウェブサーバ59に、該時間帯において得られるポイントが2倍になるという情報を、客専用ウェブページを介して客に提示させる。これにより、店舗は、該時間帯の着席率を高めることができ、空気調節等にかかるエネルギー消費を効果的なものにすることができる。
【0124】
また、例えば、店舗の月ごとの二酸化炭素排出量の上限が定められている場合に、月末近くになってこのままでは目標を達成できそうにないことが判明した場合、店舗としては空気調節を弱くする(冷房の設定温度を高くする)といった対策をとることが考えられる。ただし、客足を遠ざけないために同時に空気調節を弱くするゾーンに対して特典を増加させることが考えられる。その際に、環境情報提供装置50が、客のメンバーズカードから好みの環境状態の情報を収集していれば、「気温が高めのゾーン」を好む客を抽出して、「所定の期間に、設定温度を2℃上げる代わりに、ポイントが3倍になる」ことを示す情報を、客専用ウェブページまたは電子メール等によって客に配信することができる。
【0125】
また、ウェブサーバ59は、客専用ウェブページにおいて、客が着席している座席の気温等に関するアンケートを収集して、環境情報提供装置50に送信してもよい。現在店舗を利用している客から環境状態に関する意見を収集することで、より正確な意見を得ることができる。また、「温度が高くてもよい(冷房が弱くてもよい)」と回答する客が多ければ、店舗の管理者または店員は温度が高いゾーンを拡大するという判断を行うことができる。
【0126】
[実施の形態3]
本実施の形態では、複数の店舗の環境活動の情報を、複数の店舗で共有する構成について説明する。なお、説明の便宜上、実施の形態1にて説明した図面と同じ機能を有する部材・構成については、同じ符号を付記し、その詳細な説明を省略する。
【0127】
<環境情報提供装置連携システムの構成>
図8は、本実施の形態に係る環境情報提供装置連携システム60の構成を示すブロック図である。環境情報提供装置連携システム60は、ネットワーク61を介して接続される、環境情報提供装置62と環境情報提供装置63と情報処理装置64とを含む。本実施の形態では、環境情報提供装置連携システム60は、複数の環境情報提供装置62・63を含む。環境情報提供装置62は、店舗Aに配置され、店舗Aの環境情報等を客に提供するものであり、環境情報提供装置63は、別の店舗Bに配置され、店舗Bの環境情報等を客に提供するものである。情報処理装置64は、ネットワーク61を通じてサーバとして機能するものである。なお、情報処理装置64は、例えば他の店舗Cに配置され、店舗Cの環境情報等を客に提供する環境情報提供装置としての機能を兼ねていてもよい。
【0128】
環境情報提供装置62が備える、ゾーン設定部11、電力測定部12、寄与設定部13、環境負荷量決定部14、環境状態情報取得部15、ゾーン決定部16、特典決定部17、表示制御部18、注文入力部19、精算処理部20、および出力部21の構成は、実施の形態1(図1)と同様であるので、その詳細な説明は省略する。なお、本実施の形態では環境情報提供装置63の構成は、環境情報提供装置62と同様であるが、異なっていてもよい。
【0129】
環境情報提供装置62・63は、所定の期間のそれぞれの店舗の各ゾーンまたは全ゾーンの合計の環境負荷量(消費電力量、または二酸化炭素排出量等)の情報を、情報処理装置64に送信する。なお、環境情報提供装置62・63は、所定の期間のそれぞれの店舗全体の環境負荷量の情報を、情報処理装置64に送信してもよい。
【0130】
情報処理装置64は、各環境情報提供装置62・63から収集した環境負荷量の情報を比較し、各店舗の環境活動の評価(環境負荷量の評価)を行う。情報処理装置64は、店舗Aの環境活動の評価結果を、店舗Aの環境情報提供装置62に送信する。評価結果は、例えば、他店舗Bと比べた店舗Aの環境活動の実績を示す情報である。他店舗Bと比べた店舗Aの環境活動の実績を示す情報は、例えば、「店舗Bより店舗Aの二酸化炭素排出量が少なかった」、「店舗Bより店舗Aの来客数当たりの二酸化炭素排出量が少なかった」、「全てのチェーン店の中で二酸化炭素排出量が1位(一番少ない)だった(順位付け)」といったことを示す情報である。
【0131】
環境情報提供装置62は、受信した店舗Aの環境活動の実績を示す情報を、店舗Aに配置された(または店舗外に配置された)表示装置22に表示する。客は、店舗Aの環境活動の実績を示す情報を参照することで、例えば店舗Aが環境活動に貢献していることを認識することができ、店舗Aの環境活動に協力する(環境負荷の小さい座席を選択する)ことにより積極的になれる。
【0132】
最後に、環境情報提供装置10・50・62・63の各ブロック、特にゾーン設定部11、電力測定部12、寄与設定部13、環境負荷量決定部14・51、環境状態情報取得部15・52、ゾーン決定部16・53、特典決定部17・54、表示制御部18、注文入力部19、精算処理部20、空気調節装置制御部56、環境負荷予測部57、特典予測部58、通信部55は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPU(central processing unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0133】
すなわち、環境情報提供装置10・50・62・63は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである環境情報提供装置10・50・62・63の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記環境情報提供装置10・50・62・63に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU(microprocessor unit))が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0134】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM(compact disc read-only memory)/MO(magneto-optical)/MD(Mini Disc)/DVD(digital versatile disk)/CD−R(CD Recordable)等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM(erasable programmable read-only memory)/EEPROM(electrically erasable and programmable read-only memory)/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0135】
また、環境情報提供装置10・50・62・63を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN(local area network)、ISDN(integrated services digital network)、VAN(value-added network)、CATV(community antenna television)通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE(institute of electrical and electronic engineers)1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL(asynchronous digital subscriber loop)回線等の有線でも、IrDA(infrared data association)やリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR(high data rate)、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0136】
本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明は、店舗における環境情報提供装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0138】
1、40 部屋(エリア)
2a〜2g テーブル
3 接客カウンター
4a〜4d、4g〜4h 空気調節装置(電気機器)
5a〜5c 温度計
10、50、62、63 環境情報提供装置
11 ゾーン設定部
12 電力測定部(電力取得部)
13 寄与設定部
14、51 環境負荷量決定部
15、52 環境状態情報取得部
16、53 ゾーン決定部
17、54 特典決定部
18 表示制御部(提示制御部)
19 注文入力部
20 精算処理部
21 出力部
22 表示装置
30 表示画面
55 通信部(提示制御部、環境状態変更部、条件入力部)
56 空気調節装置制御部(電気機器制御部)
57 環境負荷予測部
58 特典予測部
59 ウェブサーバ
60 環境情報提供装置連携システム
61 ネットワーク
64 情報処理装置
z1〜z6 ゾーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のエリアの環境状態を調節する電気機器の電力値または電流値を取得する電力取得部と、
上記エリアを複数のゾーンに分割した各ゾーンについて、上記電気機器によって生じる環境負荷を示す環境負荷量を求める環境負荷量決定部と、
各ゾーンの環境状態の情報を取得する環境状態情報取得部と、
各ゾーンの環境負荷量と各ゾーンの環境状態の情報とを提示する制御を行う提示制御部とを備えることを特徴とする環境情報提供装置。
【請求項2】
上記環境負荷は、消費電力、所定の期間における消費電力量、上記消費電力量に基づいて算出される電気料金、あるいは、上記消費電力または上記消費電力量に基づいて算出される二酸化炭素排出量を示すことを特徴とする請求項1に記載の環境情報提供装置。
【請求項3】
上記環境状態は、温度、湿度、風速、塵濃度、照明の明るさ、またはBGMの音量のうち、少なくともいずれか1つを示すことを特徴とする請求項1または2に記載の環境情報提供装置。
【請求項4】
上記エリアの利用者から、該利用者が滞在するゾーンの環境状態を変更する指示を受け付ける環境状態変更部を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の環境情報提供装置。
【請求項5】
上記環境状態情報取得部は、各ゾーンの環境状態の測定値を取得する、または、各ゾーンの調節される環境状態の目標値を上記電気機器から取得することにより、各ゾーンの環境状態の情報を取得することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の環境情報提供装置。
【請求項6】
上記環境負荷量決定部は、上記ゾーンに対応する上記電気機器を特定し、該電気機器の電力値または電流値に応じた量を該ゾーンの環境負荷量とすることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の環境情報提供装置。
【請求項7】
各ゾーンについて、上記電気機器の出力の内、該ゾーンの環境状態の調節のために使用される割合を設定する寄与設定部を備え、
上記環境負荷量決定部は、各ゾーンについて、各電気機器の上記取得された電力値または電流値に、該ゾーンの環境状態の調節のために使用される上記割合を乗じることにより、上記環境負荷量を求めることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の環境情報提供装置。
【請求項8】
各ゾーンの上記環境負荷量に応じて、該ゾーンに滞在する利用者に対して付与する特典を決定する特典決定部を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の環境情報提供装置。
【請求項9】
上記提示制御部は、上記特典決定部が決定した特典を示す情報を提示する制御を行うことを特徴とする請求項8に記載の環境情報提供装置。
【請求項10】
上記エリアの利用者が滞在するゾーンを特定するゾーン決定部を備えることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の環境情報提供装置。
【請求項11】
複数の環境情報提供装置と、上記複数の環境情報提供装置と通信可能に接続された情報処理装置とを備える環境情報提供装置連携システムであって、
上記環境情報提供装置は、所定のエリアの環境状態を調節する電気機器の電力値または電流値を取得する電力取得部と、上記電気機器によって生じる環境負荷を示す環境負荷量を求める環境負荷量決定部とを備え、上記環境負荷量を上記情報処理装置に送信し、
上記情報処理装置は、上記複数の環境情報提供装置から受信した上記環境負荷量を比較してそれぞれの上記環境負荷量を評価し、各環境負荷量の評価結果を対応する各環境情報提供装置に送信し、
上記環境情報提供装置は、受信した上記環境負荷量の評価結果を提示する制御を行う提示制御部を備えることを特徴とする環境情報提供装置連携システム。
【請求項12】
所定のエリアの環境状態を調節する電気機器の電力値または電流値を取得する電力取得ステップと、
上記エリアを複数のゾーンに分割した各ゾーンについて、上記電気機器によって生じる環境負荷を示す環境負荷量を求める環境負荷量決定ステップと、
各ゾーンの環境状態の情報を取得する環境状態情報取得ステップと、
各ゾーンの環境負荷量と各ゾーンの環境状態の情報とを提示する提示ステップとを含むことを特徴とする環境情報提供方法。
【請求項13】
所定のエリアを複数のゾーンに分割した各ゾーンの環境状態の情報と、各ゾーンの環境状態を調節する電気機器によって生じる環境負荷を示す環境負荷量とを、各ゾーンについて表示することを特徴とする表示装置。
【請求項14】
上記ゾーンに滞在する利用者に対して付与する、該ゾーンの環境負荷量に応じた特典を示す情報を表示することを特徴とする請求項13に記載の表示装置。
【請求項15】
上記エリアの利用者が滞在するゾーンを指示する入力を受け付ける入力装置を備えることを特徴とする請求項13または14に記載の表示装置。
【請求項16】
各ゾーンに対応する座席の着席状況を示す情報を表示することを特徴とする請求項13から15のいずれか一項に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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