説明

環境活動促進システム

【課題】環境活動促進システムにおいて、システム利用者へのポイント還元と、外部機関への寄付等を通じて社会貢献との両立を図る。
【解決手段】環境活動促進システムは、システム利用者が実施したポイント付与対象活動に応じてポイントを付与する環境活動促進システムであって、システム利用者登録手段と、ポイント付与登録手段と、環境活動登録手段と、ポイント集計分析手段と、ポイント配分手段と、ポイント還元登録手段と、電子マネー還元手段とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織に属するシステム利用者がポイント付与対象環境活動を実施した場合に、当該実施されたポイント付与対象活動に応じてポイントを付与し、該付与されたポイントのうち所定の割合をシステム利用者に対して電子マネーとして還元すると共に、付与されたポイントのうち残りを外部機関に対して所定の物品又は金銭として提供する環境活動促進システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小売店などの商業施設において顧客の購買意欲を刺激するために、製品等の購入時に、後日、金銭の代わりに(又は金銭と共に)使用可能なポイントを、購入金額や購入製品の種類に応じて付与するポイント付与システムが利用されている(特許文献1を参照)。この種のポイント付与システムは、一般的には、店舗毎に採用されているケースが多いが、特許文献2には、複数の店舗間で横断的にポイントを付与又は使用することにより、利便性をより向上させたポイント付与システムに関する技術が開示されている。
【0003】
ここで、環境省、経済産業省及び総務省はグリーン家電普及促進事業として、このようなポイント付与システムを、環境に配慮した製品(例えば、地上デジタル放送対応テレビや、省エネ仕様のエアコン及び冷蔵庫など)を購入した顧客に対して、エコポイントを付与するエコポイント付与システムに適用することにより、環境保護の推進を行っている。このエコポイント付与システムでは、顧客は環境に配慮した製品を購入することによって、後日、付与されたポイントを他の製品を取得する際に使用できるというメリットを享受することができるため、環境に配慮した製品への購買意欲が向上し、結果として、環境保護への貢献度もまた向上することとなる。一方で、環境に配慮した製品の流通が活発化することによって、製品の製造メーカもこのような環境に配慮した製品の研究開発への投資が増大し、社会全体として環境フレンドリーな社会構築が推進される。
【0004】
このような環境保護を考慮したポイント付与システムは、例えば特許文献3に示すように、民間企業への導入も検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3378865号公報
【特許文献2】特許4394316号公報
【特許文献3】特開2002−215751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献3では、ポイントが付与されるためには環境に配慮した製品の購入が条件となっている。そのため、製品の購入を伴わない環境活動に対してはポイント付与の対象とならないという技術的問題点がある。具体的に説明すると、ボランティア清掃、エコ検定の取得、エコ通勤、植樹イベントへの参加及びマイボトルの持参など、環境活動には製品の購入を伴わない活動が多岐にわたって含まれるが、上記システムではこれらの環境活動を行った者に対してはポイントを付与することができない。
【0007】
また、環境活動の推進は企業などの組織において日々努力がなされているが、社員の環境保護に対するモチベーションの更なる向上のための他の方法を模索している状況にある。特に近年、企業などの営利組織において取得した利益の一部を、環境関連団体などの外部機関に還元することによって、営利組織が積極的に環境社会に貢献することが求められている実情がある。
【0008】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、組織に属するシステム利用者がポイント付与対象環境活動を実施した場合に、当該実施されたポイント付与対象活動に応じてポイントを付与し、該付与されたポイントのうち所定の割合を前記システム利用者に対して電子マネーとして還元すると共に、前記付与されたポイントのうち残りを外部機関に対して所定の物品又は金銭として提供する環境活動促進システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の環境活動促進システムは上記課題を解決するために、組織に属するシステム利用者がポイント付与対象環境活動を実施した場合に、当該実施されたポイント付与対象活動に応じてポイントを付与する環境活動促進システムであって、前記システム利用者を識別するためのシステム利用者識別情報を登録するためのシステム利用者登録手段と、前記ポイント付与対象環境活動を行うにあたり付与されるポイント数及びポイントが付与されるための条件を登録するためのポイント付与登録手段と、前記システム利用者が実施した前記ポイント付与対象環境活動の内容を登録するための環境活動登録手段と、前記環境活動登録手段によって登録された前記ポイント付与対象環境活動の内容に基づいて、付与された前記ポイントを集計分析するためのポイント集計分析手段と、付与された前記ポイントを、前記システム利用者に対して電子マネーとして還元するために使用するポイントと、外部機関に対して所定の物品又は金銭として提供するために使用されるポイントとに所定の割合で配分するポイント配分手段と、前記配分されたポイントのうち、前記システム利用者に対して電子マネーとして還元するために使用するポイントを、前記システム利用者に電子マネーとして還元する際の換算レートを登録するためのポイント還元登録手段と、前記登録された換算レートに基づいて算出された電子マネーを、前記システム利用者に還元する電子マネー還元手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の環境活動促進システムの一態様では、前記電子マネー還元手段は、電子マネーを発行する第3者が保有するサーバとの電子商取引により、前記システム利用者に電子マネーを還元することを特徴とする。
【0011】
本発明の環境活動促進システムの他の態様では、前記所定の割合を規定する重み付け係数を登録するための重み付け登録手段を更に備えることを特徴とする。この場合、前記重み付け係数は、ゲーム理論の均衡点を用いて設定してもよい。
【0012】
本発明の環境活動促進システムの他の態様では、前記システム利用者に還元される電子マネーの総額と、前記外部機関に提供される所定の物品又は金銭の提供の総額との和は、予め規定された前記組織の還元費用総額上限値以下になるように設定されており、当該還元費用総額上限値は、前記組織の利益、前記システム利用者の活動によって付与されるポイントの予想数と現実に付与されたポイント数との差分、及び前記システム利用者当たりの最大還元金額の少なくとも一つに基づいて設定されていることを特徴とする。
【0013】
尚、前記システム利用者の各々に還元される電子マネーの金額は、所定の閾値以下に制限されていてもよい。
【0014】
本発明の環境活動促進システムの他の態様では、前記システム利用者に還元される電子マネーの金額は、前記システム利用者が獲得したポイント数と、前記組織の利益から前記システム利用者が獲得したポイント数の中央値又は平均値の一方との差に基づいて設定されることを特徴とする。
【0015】
本発明の環境活動促進システムの他の態様では、前記還元された電子マネーの有効期限の残り期間が第1の期間より短くなった場合に、当該電子マネーの還元先である前記システム利用者に対してその旨を通知する電子マネー未取得通知手段を更に備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の環境活動促進システムの他の態様では、前記還元された電子マネーが前記システム利用者によって第2の期間内に取得されなかった場合、当該電子マネーを前記外部機関に寄付することを特徴とする。
【0017】
本発明の環境活動促進システムの他の態様では、前記電子マネーを福利厚生費として経理処理する経理処理手段を更に備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の環境活動促進システムの他の態様では、環境活動登録手段は、インターネットを介してアクセス可能な携帯情報端末を利用して、前記システム利用者が実施した前記ポイント付与対象環境活動の内容を登録することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、企業などの組織に属するシステム利用者(社員個人であってもよいし、部や課などの社内組織であってもよい)が行った環境活動に対してポイントを付与し、そのポイント総計の一部を電子マネーとして、環境活動を実施したシステム利用者自身に還元することによってシステム利用者の環境活動への参加意識を向上させることができると共に、ポイント総計の残りを環境団体や地域貢献企業などの外部機関に所定の物品又は金銭として提供することにより、組織の環境社会に対する貢献を実現することができる。本発明では特に、ポイントが付与される環境活動に製品の購入を伴う必要がないため、非常に多岐にわたる環境活動を取り扱うことができ、環境社会に対する組織の貢献度を効果的に向上させることができる。
【0020】
また、付与されたポイントのうちシステム利用者に電子マネーとして還元する割合と外部組織に還元する割合との比率を、環境活動の自動的な集計分析結果に基づいて設定することができる。これにより、集計分析結果に応じて組織の置かれている状況(例えば、組織の利益など)に則した配分で、環境活動を行ったシステム利用者への還元と、外部機関を通じた社会貢献とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】環境活動促進システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】システム利用者登録処理において、システム利用者に関する情報が格納される利用者テーブルの一例である。
【図3】ポイント付与登録処理において、ポイント付与対象環境活動に関するデータが格納されるポイントマスタテーブルの一例である。
【図4】重み付け登録処理において、重み付け係数Wを格納した重み付けマスタテーブルの一例である。
【図5】環境活動入力・表示処理において、システム利用者が実施したポイント付与対象環境活動の内容を入力する環境活動テーブルの一例である。
【図6】ポイント集計・分析処理において集計・分析された本システムの運用結果が格納されるポイントテーブルの一例である。
【図7】ポイント還元登録処理において算出結果が格納されるポイント還元マスタテーブルの一例である。
【図8】ポイント還元送信処理においてシステム利用者への還元ポイント数が格納されるポイント還元送信履歴テーブルの一例である。
【図9】少人数の特定のシステム利用者の集計ポイントが他のシステム利用者に比べて突出して多い場合における、システム利用者番号毎の集計ポイントの分布の一例である。
【図10】図9の場合における修正ポイント及び差額ポイントを具体的に示したものである。
【図11】差額ポイントを集計ポイントの中央値に基づいて算出した場合における集計ポイントの分布の一例である。
【図12】電子マネー取得方法登録処理において各種データが格納される電子マネー取得IDテーブルの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【実施例】
【0023】
<1.システム全体の構成>
まず、図1を参照して、本実施例に係る環境活動促進システムの概要について説明する。図1は、本実施例に係る環境活動促進システムの全体構成を示すブロック図である。本実施例における環境活動促進システムでは、本発明に係る組織の一例として企業を取り扱い、当該企業に所属する社員の各々をシステム利用者の一例として取り扱う。
【0024】
環境活動促進システムはサーバ管理者が取り扱うメインサーバ10を中心に構成されている。サーバ管理者は、環境活動促進システムを導入した企業において、メインサーバ10の管理業務を職務とする担当者であり、環境活動促進システムの運用管理において、メインサーバ10に対して各種指示を行う者である。尚、サーバ管理者本人もシステム利用者として、以下に説明する環境活動を行ってもよい。
【0025】
メインサーバ10は主に制御装置(図不示)及び記憶装置(図不示)からなる。制御装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の演算処理装置及びRAM(Random Access Memory)等のバッファメモリを備え、メインサーバ10の動作全体を制御することが可能に構成された制御ユニットである。制御装置は、記憶装置に記憶されたアプリケーションを実行することにより、メインサーバ10は本発明に係る環境活動促進システムの一例として機能する。メインサーバ10には、Webサーバとしても機能するようにソフトウェアが予め導入されており、システム利用者などのサーバ管理者以外の者がインターネットを介してアクセスできるように構成されている。即ち、システム利用者などのサーバ管理者以外の者から見ると、本環境活動促進システムは、Webアプリケーションとして動作する。
【0026】
メインサーバ10は、システム利用者登録手段11、ポイント付与登録手段12、重み付け登録手段13、テーブル初期化手段14、環境活動登録手段15、ポイント集計分析手段16、ポイント還元登録手段17、ポイント還元送信手段18、電子マネー取得方法登録手段19、電子マネー取得方法表示手段20及び電子マネー未取得通知手段21からなる。尚、ポイント還元送信手段18、電子マネー取得方法登録手段19及び電子マネー取得方法表示手段20は、一体的にまとまって、本発明に係る「電子マネー還元手段」として機能する。これらの各手段は、サーバ管理者からの命令に応じて、以下に説明する処理の各段階において適宜呼び出される。
【0027】
メインサーバ10にはデータベース30が接続されており、当該データベース30に対してデータの格納又は出力を制御するためのデータベース管理システム用ソフトウェアがメインサーバ10に予め導入されている。データベース30はメインサーバ10の各手段に対応するように、利用者テーブル31、ポイントマスタテーブル32、重み付けマスタテーブル33、環境活動テーブル35、ポイントテーブル36、ポイント還元マスタテーブル37、ポイント還元送信履歴テーブル38及び電子マネー取得IDテーブル39からなる。
【0028】
尚、メインサーバ10にはキーボードやマウスなどの入力手段(図不示)が接続されており、システム管理者は当該入力手段を介して、データベース30に対して各種データの入力を行うことができる。
【0029】
本実施例において、システム利用者は環境活動促進システムを利用する者であり、サーバ管理者と同じ組織(例えば、同一企業など)又は何らかの関連性のある組織(例えば、子会社、兄弟会社、グループ内企業など)に属する、例えば社員個人や社内組織(例えば、部署、課又はプロジェクトチームなど)である。システム利用者は、自身の行った環境活動の内容をメインサーバ10に申告する際に使用する端末50を有している。また、環境活動を実施した結果として還元される電子マネーを取得するための電子マネー決済カード60を保有している。
【0030】
経営部門は、サーバ管理者及びシステム利用者が所属する組織の経営層に相当し、経営者個人であってもよいし、企業の経営管理部門などの複数の人員からなる部署であってもよい。尚、経営部門自体もシステム利用者として、以下に説明する環境活動を行ってもよいことは言うまでもない。
【0031】
尚、本実施例では、サーバ管理者、システム利用者及び経営部門が同じ企業に属する場合について説明を進めるが、一部機能を外部委託した場合など、本システムの運用管理が可能な形態に幅広く適用できることは言うまでもない。
【0032】
金融機関は、本環境活動促進システムの運用にあたって、電子マネーを取り扱う際に電子商取引を行う金融機関であり、例えば銀行、金融カード会社、又は消費者金融などの各種金融機関である。
<2.環境活動促進システムの動作>
【0033】
次に、引き続き図1を参照しつつ、本実施例に係る環境活動促進システムの動作例について、処理毎に順次説明する。
<2−1.システム利用者登録処理>
【0034】
まずサーバ管理者は、本システムを利用するシステム利用者の各々を識別するためのシステム利用者識別情報を、入力手段を介して入力し、当該データを利用者テーブル31に格納するように、メインサーバ10に指示する(ステップ1)。この時、メインサーバ10は、システム利用者登録手段11として機能し、当該処理をシステム利用者登録処理と称することとする。
【0035】
ここで、図2は、システム利用者登録処理において、システム利用者識別情報が格納される利用者テーブル31の一例である。利用者テーブル31には、システム利用者識別情報を構成する項目として、「システム利用者番号」、「利用者名」、「パスワード」、「登録年月日」及び「権限」の項目が設けられている。ここで、「パスワード」は、システム利用者が本システムを利用するにあたって、他人のなり済ましを防止するために設定される暗号であり、システム利用者自身が設定可能なパスワードである。パスワードは、典型的には、本システムの起動時や、以下に説明する各種処理が実行されるタイミング毎に入力を求めるようにすることで、本システムのセキュリティを向上させる役割を有している。尚、パスワードは利用者自身が変更可能であることが望ましく、典型的には、本システムへの初回アクセス時にはサーバ管理者から通知された初期パスワードを入力することとし、次回以降のアクセス時には、利用者自身が変更した変更パスワードを用いることによって利用者認識をするとよい。また、「権限」の項目は、システム利用者番号に対応する者がシステム管理者或いはシステム利用者のいずれの権限を有するのかを判別するための項目である。
<2−2.ポイント付与登録処理>
【0036】
再び図1に戻って、続いてサーバ管理者は、システム利用者が実施した場合にポイント付与の対象となる環境活動(以下、適宜「ポイント付与対象環境活動」と称する)に関する情報を入力し、当該データをポイントマスタテーブル32に格納するように、メインサーバ10に指示する(ステップ2)。この時、メインサーバ10は、ポイント付与登録手段12として機能し、当該処理をポイント付与登録処理と称することとする。
【0037】
ここで、図3は、ポイント付与登録処理において、ポイント付与対象環境活動に関するデータが格納されるポイントマスタテーブル32の一例である。ポイントマスタテーブル32には、「ポイント付与対象活動」、「単位ポイント」、「活動単位」、「適用対象」、「適用条件1」及び「適用条件2」の項目が設けられている。ここで、「ポイント付与対象活動」の項目は、システム利用者が実施した場合にポイント付与の対象となる具体的な活動名である。本実施例では、ポイント付与対象活動として、エコ検定の取得、ボランティア清掃、昼休み清掃活動、植樹イベント、エコキャップ、環境家計簿(ガス/電気/水道/ガソリン)、環境配慮型設計、マイボトル使用、マイ箸活動、エコドライブ及びエコ通勤が設定されているが、その他の環境活動も適宜含めてよい。
【0038】
ポイントマスタテーブル32の「単位ポイント」の項目は、ポイント付与対象活動を単位数だけ行った場合に付与されるポイント数が格納される。「活動単位」の項目はポイント付与対象活動の活動単位である。「適用対象」の項目は、ポイント付与対象活動の種類に応じて、当該活動の対象となるものが社員個人なのか、それとも社内組織なのかを分類するための項目である。「適用条件1」及び「適用条件2」の項目は、環境活動の種類によってはポイント付与時に特有な条件が考えられるため、そのような場合には個別に設定できるように設けられた項目であり、このような項目を設けることにより、本システムでは多種多様な環境活動をポイント付与対象活動として取り扱うことができる。
【0039】
ここで、環境活動促進システムを効果的に運用するにあたって、各ポイント付与対象活動に対する単位ポイントを適切に設定するために考慮すべき事項を具体的に説明する。
【0040】
まず、最初の考慮事項として、ポイント付与対象環境活動を単位数だけ実施した場合に得られる環境負荷低減量がある。環境活動促進システムは、システム利用者の環境活動への参加を促進することによって、環境社会への貢献を一つの目的としている。そのため、環境負荷低減に効果が大きい活動に対しては、単位ポイントを大きく設定することにより、当該活動に対するシステム利用者の参加意欲を掻き立てることができる。その結果、貢献度の大きい環境活動への積極的な参加を促すことができるため、上記目的を効率的に達成することが期待できる。
【0041】
ここで、環境負荷低減量の典型例としては、二酸化炭素の発生低減量が考えられる。山田国広:「一億人の環境家計簿」(1996)には、各種エネルギー源(電気、都市ガス、灯油、重油、ガソリン、廃油、廃プラスチックなど)に対する単位消費量当たりの二酸化炭素発生量、家電・情報機器の単位使用時間当たりの二酸化炭素量発生量等が記載されており、これらを環境負荷低減量として取り扱うことができる。例えば、ポイント付与対象環境活動としてエコキャップを想定する場合には、エコキャップ1個当たりの重さを2gとすると、当該参考文献には、廃プラスチックの1kgの廃棄物燃焼による二酸化炭素発生量が0.700kgであるので、これをリサイクルにより低減できるものと考えて、エコキャップ1個当たり1.4gの二酸化炭素発生量を低減できるものと考える。一方、環境活動としてエコ検定取得のように直接的に二酸化炭素発生量の低減に結びつかない環境活動をポイント付与対象環境活動として扱う場合には、平均的な日本人の個人的エネルギー消費により年間発生させる二酸化炭素発生量が1.33ton/年人とされていることに着目し、エコ意識によって1%の低減効果が得られると仮定する。その結果、エコ検定を1回取得する際に13kgの二酸化炭素発生量を低減できると推定することができる。このように推定される環境負荷低減量に基づいて単位ポイントを設定することにより、環境保護への貢献を効果的に促進することができる。
【0042】
単位ポイントを設定する際のもう一つの考慮事項として、ポイント付与対象環境活動の実施難易度がある。一般的に、ポイント付与対象環境活動は多岐に亘っており、その種類によってシステム利用者にとっての実施難易度は異なる。例えば、ポイント付与対象環境活動のなかには、二酸化炭素低減には大きく寄与するものの、実施難易度が高いために、逆に二酸化炭素低減にはあまり寄与しない環境活動から、実施難易度が低い環境活動まで広く含まれている。システム利用者に対して環境活動を推進するためには、このような二酸化炭素低減量や実施難易度を反映して、システム利用者にとって参加意欲を感じさせるようなポイント付与を行う必要がある。そこで、二酸化炭素低減量や実施難易度によってポイント付与対象環境活動の種類毎に係数を設定し、単位ポイントを次式
単位ポイント = 活動単位実施した場合の二酸化炭素低減量 × 係数 (1)
によって設定する方法が考えられる。
【0043】
尚、本システムの導入直後(又は運用開始時)は、事前に社員に対して実験計画法に基づいて各ポイント付与対象環境活動に対して係数のパターン表を作成し、システム利用者に対して公表することにより、環境活動への参加意欲を高めるとよい。そして、本システムの導入後の実績が形成された後は、良好な実績が得られた期間に用いていた係数を採用するなど、過去の結果を反映させて係数を設定してもよい。また、恣意的に特定のポイント付与対象環境活動への参加を促進したい場合には、当該環境活動に対応する係数を大きくすることで、当該特定のポイント付与対象活動についてシステム利用者の参加意識を恣意的に高めることもできる。
<2−3.重み付け登録処理>
【0044】
再び図1に戻って、続いてサーバ管理者は、システム利用者がポイント付与対象環境活動を実施することによって付与されたポイントのうち、システム利用者自身に対し還元する割合である重み付け係数Wを入力し、重み付けマスタテーブル33に格納するように、メインサーバ10に指示する(ステップ3)。ここで、重み付け係数Wは次式により定義されるものとする。
重み付け係数W = システム利用者自身へのポイントの還元数/付与ポイントの総数 (2)
この時、メインサーバ10は、重み付け登録手段13として機能し、当該処理を重み付け登録処理と称することとする。
【0045】
ここで、重み付け係数Wの設定方法について、本システムが運用されている状況を、次の5つの特徴を有するゲームと解して説明する。尚、当該ゲームでは、企業の社員であるシステム利用者をプレイヤー、重み付け係数Wをプレイヤーたる社員が所属する企業全体の利得と仮定して説明する。
I.プレイヤーが独立に意思決定を行う非協力ゲームである。
II.企業をプレイヤーに含めない非ゼロサムゲームである。
III.Wの最大化がプレイヤーの目標であり、この目標を達成するためにいずれの活動に参加するかを選択することが各プレイヤーの戦略となる。
IV.他のプレイヤーの戦略や利得などが確実には分からない情報不完備ゲームである。
V.毎年行う繰り返しゲームである。
【0046】
この種のゲームでは、予め定められたルールに基づいて、各プレイヤーが考え得る複数の戦略毎に利得Wを算出し、その中からリスクが最小、且つ、利得Wが最大になる戦略を選択することとなる。本実施例では、予め定められるルールとして、各プレイヤーに対してポイント付与対象環境活動毎の単位ポイントの一覧表を開示することによって、当該表を見たプレイヤーがポイント付与対象環境活動を実施してポイントを累積し、利得Wが増加するというルールにのっとってゲームが進行すると仮定して考察する。
【0047】
ここで、変数として、活動実施種類比率RAと参加者比率RPを導入する。活動実施種類比率RAは、数あるポイント付与対象活動のうち実際にシステム利用者によって実施されたポイント付与対象活動の占める割合であり、次式により定義される。
活動実施種類比率RA = 実施されたポイント付与対象活動の数/ポイント付与対象活動の総数 (3)
また、参加者比率RPは、本環境活動促進システムのシステム利用者の総数のうち、実際に何らかのポイント付与対象環境活動に参加したシステム利用者の占める割合であり、次式により定義される。
参加利用者比率RP = 参加したシステム利用者数/システム利用者の総数 (4)
【0048】
ここで、図4は、重み付け登録処理において、重み付け係数Wが格納された重み付けマスタテーブル33の一例である。尚、図4(a)は表形式で表した例であり、(b)はダイアグラム形式で表した例である。重み付けマスタテーブル33には、活動実施種類比率RA及び参加者比率RPの値に応じて、重み付け係数Wが予め設定されている。図4の例では、活動実施種類比率RAと参加者比率RPがそれぞれ増加するに従い、重み付け係数Wが増加するように設定されており、最大の重み付け係数Wを0.5としている。
【0049】
重み付けマスタテーブル33に格納されている重み付け係数Wは、定期又は不定期なタイミングで見直されてもよい。具体的な見直し方法としては、例えば、次のような方法での見直しが考えられる。
I.システムの運用当初など、システム利用者の増加を促進する必要がある場合、重み付け係数Wを全体的に増加させ、システム利用者に対して本環境活動促進システムへの参加意欲をより積極的にアピールするように見直す。
II.過去のシステム運用実績がある場合には、システムの運営結果が良好であった年度の重み付け係数Wの重み付けマスタテーブルを採用するように見直す。
III.図4に示した重み付けマスタテーブルの例では、活動実施種類比率RAと参加者比率RPが共に小さいと重み付け係数Wが小さくなるように設定されている。この場合、後述する還元費用総額がポイントの還元対象となる少数のシステム利用者に還元されるため、システム利用者一人当たりに配分される還元金額が大きくなる傾向になる。このような状況下では、当該傾向を認知したシステム利用者は、ポイントの還元をより多く得るべくポイント付与対象環境活動に積極的に参加しようとすると予想される。このような状況を意図的に作り出すことによって、環境活動の実施意欲を促進するように重み付け係数Wを見直すとよい。これは、一般的に非ゼロ和ゲームにおいては、どのプレイヤーについても、他のプレイヤーが同じ戦略を取り続ける限り、自分だけ戦略を変更しても利得が改善できない点(ナッシュ均衡点)が存在することを無意識的に認識していることを利用したものである。
【0050】
以上のように設定された重み付けマスタテーブル33の内容(即ち、重み付け係数W)は、システム運用に先立って、又は運用期間中に社員に適宜開示することにより、システム利用者の環境活動への参加を促す効果が得られる。
<2−4.システム初期化処理>
【0051】
再び図1に戻って、システム管理者は、データベース30のうち以降の各処理において使用する環境活動テーブル35、ポイントテーブル36、ポイント還元マスタテーブル37、ポイント還元送信履歴テーブル38、電子マネー取得IDテーブル39を初期化するように、メインサーバ10に指示する(ステップ4)。この時、メインサーバ10は、システム初期化手段14として機能し、当該処理をシステム初期化処理と称することとする。なおポイント還元送信履歴テーブル38は履歴保管のため初期化するテーブルから除外しておいてもよい。
<2−5.環境活動登録処理>
【0052】
続いて、システム利用者は、自身が行ったポイント付与対象環境活動の活動内容を、端末50を用いて、データベース30のうち環境活動テーブル35に格納すべく、インターネットを介して接続されたメインサーバ10に指示する(ステップ5)。この時、メインサーバ10は、環境活動登録手段15として機能し、当該処理を環境活動登録処理と称することとする。
【0053】
端末50は、実際にポイント付与対象環境活動を実施するシステム利用者が所有する端末である。システム利用者がポイント付与対象環境活動を実施した場合には、システム利用者は、端末50を介して、実施したポイント付与対象環境活動の内容を入力することにより、インターネットを介して環境活動テーブル35にその内容を格納する。尚、端末50の具体的な形態としては、例えばデスクトップ型パソコン、ノート型パソコン、携帯電話等であってもよい。またメインサーバ10には、インターネットのほか、電話回線、LANなど各種の通信形態を利用して接続してもよいことは、言うまでもない。
【0054】
ここで図5は、環境活動入力・表示処理において、システム利用者が実施したポイント付与対象環境活動の内容が格納される環境活動テーブル35の一例である。環境活動テーブル35には、「システム利用者番号」、「ポイント付与対象環境活動」、「活動数量」、「ポイント」、「ガス低減量(m)」、「電力低減量(kWH)」、「水道低減量(m)」、「その他」、「環境活動開始日」、「環境活動終了日」及び「ポイント登録年月日」の項目が設けられている。尚、ポイント付与の対象となる環境活動の種類に特有の項目が存在する場合には、「その他」の項目に個別に入力することにより対応するとよい。
【0055】
尚、環境活動テーブルにシステム利用者が入力する際には、環境活動証左として写真等を添付可能にしてもよい。また入力手段として、例えば、VPN(Virtual Private Network)を利用したWebアクセス可能な携帯情報端末も利用可能としておくことにより、環境活動を行った現場からシステム利用者が直接的に入力可能とすると、より一層効果的である。
<2−6.ポイント集計分析処理>
【0056】
再び図1に戻って、サーバ管理者は、ステップ1からステップ5において各種データが格納された各種テーブル(具体的には、利用者テーブル31、ポイントマスタテーブル32、重み付けマスタテーブル33及び環境活動テーブル35)を参照し、本システムの運用結果を集計分析するようにメインサーバ10に指示する(ステップ6)。この時、メインサーバ10は、ポイント集計分析手段16として機能し、当該処理をポイント集計分析処理と称することとする。
【0057】
メインサーバ10は集計分析したシステムの運用結果を、データベース30のうちポイントテーブル36に格納する。ここで図6は、ポイント集計分析処理において集計分析された本システムの運用結果が格納されるポイントテーブル36の一例である。ポイントテーブル36には、「システム利用者番号」、「ポイント付与対象活動」、「累積ポイント」及び「最新ポイント登録年月日」の項目が設けられている。図6の例では、システム利用者番号及びポイント付与対象活動毎に累積ポイントと、最新のポイント登録年月日が格納されている。ここで、ポイントテーブルにおける累計ポイントは、ポイント付与対象活動及びシステム利用者毎に、次式により算出される。
累積ポイント = 単位ポイント × 活動数量 (5)
尚、単位ポイントはポイントマスタテーブル32(図3を参照)、活動数量は環境活動テーブル35(図5を参照)から読み出すとよい。また、図6の例ではシステム利用者番号及びポイント付与対象活動毎の累積ポイントと、最新のポイント登録年月日とを集計分析しているが、その他に、企業全体、部署単位、課単位でのポイント付与総数や、ポイント付与対象活動の種類毎のポイント付与総数など、データベース30の各種テーブルが有するパラメータ毎に多様な集計分析をしてもよい。
【0058】
尚、ポイントテーブル36に格納された集計分析結果は、システム利用者が所有する端末50の表示画面や、システム利用者が所属する企業に設置された共有モニタなどの表示画面などに表示することによって、システム利用者に対して累積ポイントを視覚的に認識させることによって、環境意識の向上を促進させるとよい。その際、企業全体での総獲得ポイント、平均獲得ポイントなども同時に表示すると、より一層環境活動の意識向上につながるため好ましい。
【0059】
尚、ポイント集計分析処理において得られた運用結果は、例えばワードやエクセルなどの帳票形式で出力可能にしてもよい。この場合、特に、ポイント付与対象環境活動の種類が環境家計簿、エコドライブ又はエコ通勤などについては、活動数に基づいて環境負荷低減量(二酸化炭素などの温室効果ガス、窒素酸化物などの大気汚染物質、油などの水質汚濁物質の低減量)や、省エネ(エネルギー換算)、省資源(水、燃料、紙などの物量)などについて、数値的な数値を自動的に算出することによって、環境への貢献度を数値的に把握でき、当初の計画値と実績値の比較や目標の達成度を容易に把握することができるので、より一層効果的である。尚、このような環境負荷換算は、例えば前述の文献(山田国広:「一億人の環境家計簿」(1996))に記載されている数値を使用することができる。特に本実施例では、これらの運用結果を帳票形式で経営部門に出力することによって、トップダウン形式で運用結果を、企業全体に反映させることができるため、より効果的である。
【0060】
尚、ポイント付与対象活動が環境家計簿や環境配慮型設計の場合については、ステップ5においてシステム利用者が実施したポイント付与対象活動を入力する際に、固有のデータ項目や詳細データ項目(例えば、ガスの種類、家電機器の種類など)を入力することによって、より詳細な環境負荷低減分析を行ってもよい。
<2−7.ポイント還元登録処理>
【0061】
続いて図1に戻って、システム管理者は、ポイント集計分析処理(ステップ6)における集計分析結果に基づいて、付与されたポイントの総数と、システム利用者に還元する費用である還元費用総額を算出し、データベース30のうちポイント還元マスタテーブル37に格納するようにメインサーバ10に指示する(ステップ7)。この時、メインサーバ10は、ポイント還元登録手段17及びポイント配分手段として機能し、当該処理をポイント還元登録処理と称することとする。
【0062】
ここで図7は、ポイント還元登録処理において算出結果が格納されるポイント還元マスタテーブル37の一例である。ポイント還元マスタテーブル37には、「ポイント還元数」、「還元費用総額」及び「登録年月日」の項目が設けられている。ここで、「ポイント還元数」は付与されたポイントの総数であり、還元費用総額はシステム利用者への還元費用総額である。還元費用総額の算出方法の具体例を以下に説明する。
【0063】
近年、企業などの営利組織に対して、地球環境・エネルギー問題の解決のための社会的責任投資(SRI;Social Responsibility Investment)をすべきという傾向が高まっている。そのための手段として、本環境活動促進システムでは、組織は自身が獲得した利益のうち一定割合を環境関連団体又は地域貢献活動団体などの外部機関に還元することによって、社会的責任投資を行う一方で、組織に属する社員等が効率的な社業遂行を行った結果達成される地球環境負荷低減に対して、その貢献度に応じて社員自身に対して企業の利益を還元することによって、間接的な社会貢献を行うこともできる。このようなシステムでは、上述の2種類の手法に対してバランスよく利益を還元することによって、企業の社会貢献を達成する必要がある。
【0064】
組織に属するシステム利用者に対して組織の得た利益を還元する際に、仮に、特定の一部のシステム利用者に対してのみ多額のポイントが還元されてしまうと、環境活動への貢献という本システムの本来の意義が損なわれてしまうおそれがある。また、システム利用者は実質的にポイント付与対象環境活動を無制限に行うことができるが、組織において、環境活動に対する還元に割り当てることができる金額(例えば、企業の場合は年間予算)には現実として限度がある。そこで、本システムでは、組織が還元し得る金額の上限値としての還元費用総額上限値M3と、システム利用者1人当たりの付与ポイント上限値としての最大個人ポイント計画値を設定している。
【0065】
以下に還元費用総額の算出のための全還元費用額M4の算出方法を具体的に説明する。
まず、組織の利益のうち還元金額が占める割合である利益還元率をR1、環境負荷低減還元率をR2、ポイント金額換算値をMとし、組織の利益から還元される還元金額M1、地球環境負荷低減に対する還元金額M2及び還元費用総額上限値M3、環境活動に対する全還元費用額M4を、それぞれ次式により定義する。
M1 = 企業の利益 × R1 (6)
M2 = Max{0.0,(実施ポイント総数 − 計画ポイント総数)×R2}× M (7)
M3 = システム利用者の総数 × 最大個人ポイント計画値× M (8)
M4 = Min{M1 + M2,M3} (9)
尚、(7)式における「実施ポイント総数」はシステム利用者が環境活動を実施することによって付与されたポイント数であり、「計画ポイント総数」は企業が予め計画値として予想したポイント数である。
【0066】
ここで、具体的な計算例を示すと、例えば、社員であるシステム利用者が所属する組織として社員数が6名、年度当たりの企業利益が6,000,000円、利益還元率R1が1/20、環境負荷低減還元率R2が1/2、ポイント金額換算値が1円/ポイント、計画ポイント総数が100,000ポイント、実施ポイント総数が150,000ポイント、最大個人ポイント計画値を70,000ポイントであるケースを想定すると、全還元費用額M4は(9)式により、
M4 = Min(300,000+25,000,420,000)=325,000円 (10)
と、算出される。
【0067】
図7に示す「還元費用総額」は、全還元費用額M4と、重み付け係数Wを勘案して決定する。例えば、RA=6/10、RP=4/6の場合には、図4に示す重み付けマスタテーブルより重み付け係数Wは0.4である。従って、還元費用総額M0は、次式により算出される。
M0 = 全還元費用額M4 × 重み付け係数W =130,000円 (11)
そして、外部機関への提供可能額は、全還元費用額M4からシステム利用者への還元金額であるM0を差し引くことによって、次式のように算出される。
325,000 − 130,000 = 195,000円 (12)
<2−8.ポイント還元送信処理>
【0068】
再び図1に戻って、続いてサーバ管理者は、システム利用者への還元ポイント数をポイント還元送信履歴テーブル38に格納すると共に、経営部門が所有する取引サーバ70に送信するように、メインサーバ10に指示する(ステップ8)。この時、メインサーバ10は、ポイント還元送信手段18として機能し、当該処理をポイント還元送信処理と称することとする。
【0069】
ここで、図8は、ポイント還元送信処理においてシステム利用者への還元ポイント数が格納されるポイント還元送信履歴テーブル38の一例である。ポイント還元送信履歴テーブル38には、「システム利用者番号」、「送信ポイント」、「ポイント登録年月日」及び「送信年月日」の項目がある。「送信ポイント」の項目には、ポイントテーブル36からシステム利用者番号毎にポイントを累積集計した結果(以下、適宜「集計ポイント」と称する)が格納される。そして、当該内容が取引サーバ70に送信された後、送信年月日が「送信年月日」の項目に格納される。
【0070】
続いて、ポイント還元送信処理によって送信されたデータを受信した取引サーバ70は、当該データから金融サーバ80に送信するための取引ファイルを作成し、金融サーバ80に対して送信する(ステップ9)。取引ファイルのレコード仕様はポイント還元送信履歴テーブル38と同じであるが、送信ポイントは次に示す換算値により算出されたポイント値となっていることが異なっている。即ち、まずポイント還元マスタテーブル37の「ポイント還元数」、「還元費用総額」を読み出して換算値を計算する。
換算値 = 還元費用総額/ポイント還元数 (13)
ポイント還元送信履歴テーブル38のレコードを順次読み出し、次式で送信ポイントの換算を行い、取引ファイルのレコードを作成する。
取引ファイルの送信ポイント = 換算値 × ポイント還元送信履歴ファイルの送信ポイント (14)
【0071】
ここで、取引サーバ70及び金融サーバ80間の取引は、一般的な電子商取引の手続きに基づいてなされる。本実施例では特に、金融サーバ80は、インターネットに接続されており、取引ファイルを取引サーバ70から受信すると、当該取引ファイル中の送信ポイント数に対応する費用請求を取引サーバ70に対して行い、組織側が当該請求金額を支払うことにより、ポイント相当分の電子マネー又はサービスポイントをシステム利用者が保有する電子決済カードに入れるように構成されている。ここでは、システム利用者が保有する電子決済カードに電子マネー又はサービスポイントを取得できる方法として、組織側が請求金額を支払った後に、システム利用者自身のみしか使用できない取得IDが金融機関から通知され、その取得IDを入力することにより、システム利用者が該当する電子マネー又はサービスポイントを取得できるように構成されている。尚、電子決済カードの代わりに電子決済機能を保有する携帯電話を使用してもよい。
【0072】
尚、本環境活動促進システムでは、電子マネーやポイントサービスなどの金銭的内容を取り扱うため、実際のシステム開発・運用においては特にセキュリティ面については特に配慮する必要があるが、これらは一般的な金融取引関連システムにおいて勘案すべき事項であるため、その詳細な説明は本願では省略することとする。
【0073】
尚、上記の一連の処理の実行途中でエラーがあった場合には、例えば実行前の状態をバックアップとして保管しておき、これを用いたリカバリ処理により実行前の状態に復帰するようにしておくとよい。尚、ポイント還元送信処理は、典型的には、1回/年度の頻度で行われるとよい。
【0074】
ここで、計画時と実績時に活動参加者が大きく異なった場合、活動参加者が不利益を被ったり、企業が想定以上の金額を負担したりするおそれがあるという問題がある。当該問題に対する解決方法の一例を、以下に説明する。
【0075】
少人数の特定のシステム利用者の集計ポイントが他のシステム利用者に比べて突出して多い場合、集計ポイントに比例するように単純に算出してしまうと、当該少数の特定のシステム利用者にのみに利益が還元されてしまいかねない。例えば、図9のような集計結果になった場合、システム利用者番号がs06−002とs06−009のシステム利用者にのみ還元が大きくなってしまう。
【0076】
このような問題に対して、集計ポイントが突出したシステム利用者に対しては個人当たりの上限ポイントを設定するという対策を行うことができる。例えば、個人当たりの上限ポイントを3,000ポイントと設定すると、10人のシステム利用者が所属する企業全体で想定すべき総ポイント数は、3,000×10=30,000ポイントとなる。図10はこの上限ポイントを設定することによって修正された集計ポイント(以下、適宜「修正ポイント」と称する)、及び集計ポイントと修正ポイントとの差分(以下、適宜「差額ポイント」と称する)を具体的に示したものである。図10に示すように、システム利用者番号がs06−002とs06−009のシステム利用者に対する還元量が抑えられている。
【0077】
また、もう一つの問題として、企業が予め想定しているポイント数と修正ポイント合計との差分(上記例では、30,000―16,200=13,800)が大きい場合、この残りポイントをどのようにシステム利用者に分配すべきかという問題がある(以下、この分配されるポイントを適宜「分配ポイント」と称することとする)。仮にポイント超過者のみに差額ポイントの割合で還元してしまうと、最終的な各システム利用者の獲得ポイントが、算定ポイント(=修正ポイント+分配ポイント)となるため、図10に示すように、システム利用者番号がs06−002とs06−009のシステム利用者についてのみ算定ポイントが大きく、他のシステム利用者に対して不公平感を与えてしまう。
【0078】
このような問題に対して、差額ポイントを集計ポイントの中央値(上記例では700)に基づいて算出することにより、差額ポイントを次式
差額ポイント = Max{0,集計ポイント − 中央値} (13)
から算出するとよい。(13)式に基づいて分配ポイントと算定ポイントを算出した結果を図11に示す。図11に示すように、中央値付近のポイント保有者にも分配することになり、ポイント超過者のみに分配される場合に比べて、分布がなだらかになるため前述の不公平感を緩和することができる。尚、上記説明では中央値を採用したが、代わりに平均値を使用してもよい。
<2−9.電子マネー取得方法登録処理>
【0079】
再び図1に戻り、サーバ管理者は、金融機関から送信された取引IDファイルに基づいて、電子マネー取得IDテーブル39に当該取引IDファイルに対応する情報を格納するようにメインサーバ10に指示する(ステップ9)。この時、メインサーバ10は、電子マネー取得方法登録手段19として機能し、当該処理を電子マネー取得方法登録処理と称することとする。
【0080】
ここで、図12は、電子マネー取得方法登録処理において各種データが格納される電子マネー取得IDテーブル39の一例である。電子マネー取得IDテーブル39には、「システム利用者番号」、「電子マネー取得ID」、「電子マネー」、「取得期限」、「取得年月日」及び「アクセス年月日」の項目があり、それぞれの項目には金融機関から送信された取引IDファイルに基づいて対応するデータが格納される。
<2−10.電子マネー取引方法表示処理>
【0081】
再び図1に戻って、システム利用者は電子マネー取得IDテーブル39から、当該システム利用者に対応するシステム利用者番号の行に格納された各種情報を読み取るようにメインサーバ10に指示する(ステップ10)。このように指示すると、例えばシステム利用者に対応する電子マネー取得IDが取得期限とともに画面表示される。
<2−11.電子マネーの取得>
【0082】
その後利用者は、例えば金融機関の端末機において電子マネー取得IDを入力することによって、自身の保有する電子マネーカードにある電子マネー又はサービスポイントを取得し、使用することができる(ステップ11)。
<2−12.電子マネー未取得通知処理>
【0083】
電子マネー取得IDテーブル39にあるように、システム利用者が取得する電子マネーに取得期限がある場合には、サーバ管理者は、メインサーバ10が電子マネー取得期限の一定期間前に、当該システム利用者に対して取得期限を通知させるようにメインサーバ10に指示する(ステップ12)。この時、メインサーバ10は、電子マネー未取得通知手段21として機能し、当該処理を電子マネー未取得通知処理と称することとする。
【0084】
また、当該通知に関わらず電子マネーの取得が行われなかった場合、サーバ管理者は、電子マネーの取得期限の経過によって失効するに先立ち、当該電子マネーを外部機関に寄付するようにメインサーバ10に指示してもよい。この場合、失効する電子マネーが外部機関への寄付として、環境社会に貢献できるため無駄が生じなく、好ましい。
【0085】
以上説明したように、本実施例に係る環境活動促進システムによれば、企業などの組織に属するシステム利用者(社員個人であってもよいし、部や課などの社内組織であってもよい)が行った環境活動に対してポイントを付与し、そのポイント総計の一部を電子マネーとして、環境活動を実施したシステム利用者自身に還元することによってシステム利用者の環境活動への参加意識を向上させることができると共に、ポイント総計の残りを環境団体や地域貢献企業などの外部機関に所定の物品又は金銭として提供することにより、組織の環境社会に対する貢献を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、組織に属するシステム利用者がポイント付与対象環境活動を実施した場合に、当該実施されたポイント付与対象活動に応じてポイントを付与し、該付与されたポイントのうち所定の割合をシステム利用者に対して電子マネーとして還元すると共に、付与されたポイントのうち残りを外部機関に対して所定の物品又は金銭として提供する環境活動促進システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0087】
10 メインサーバ、 30 データベース、 50 端末、 60 電子マネー決済カード、 70 取引サーバ、 80 金融サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織に属するシステム利用者がポイント付与対象環境活動を実施した場合に、当該実施されたポイント付与対象活動に応じてポイントを付与する環境活動促進システムであって、
前記システム利用者を識別するためのシステム利用者識別情報を登録するためのシステム利用者登録手段と、
前記ポイント付与対象環境活動を行うにあたり付与されるポイント数及びポイントが付与されるための条件を登録するためのポイント付与登録手段と、
前記システム利用者が実施した前記ポイント付与対象環境活動の内容を登録するための環境活動登録手段と、
前記環境活動登録手段によって登録された前記ポイント付与対象環境活動の内容に基づいて、付与された前記ポイントを集計分析するためのポイント集計分析手段と、
付与された前記ポイントを、前記システム利用者に対して電子マネーとして還元するために使用するポイントと、外部機関に対して所定の物品又は金銭として提供するために使用されるポイントとに所定の割合で配分するポイント配分手段と、
前記配分されたポイントのうち、前記システム利用者に対して電子マネーとして還元するために使用するポイントを、前記システム利用者に電子マネーとして還元する際の換算レートを登録するためのポイント還元登録手段と、
前記登録された換算レートに基づいて算出された電子マネーを、前記システム利用者に還元する電子マネー還元手段と
を備えることを特徴とする環境活動促進システム。
【請求項2】
前記電子マネー還元手段は、電子マネーを発行する第3者が保有するサーバとの電子商取引により、前記システム利用者に電子マネーを還元することを特徴とする請求項1に記載の環境活動促進システム。
【請求項3】
前記所定の割合を規定する重み付け係数を登録するための重み付け登録手段を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の環境活動促進システム。
【請求項4】
前記重み付け係数は、ゲーム理論の均衡点を用いて設定されることを特徴とする請求項3に記載の環境活動促進システム。
【請求項5】
前記システム利用者に還元される電子マネーの総額と、前記外部機関に提供される所定の物品又は金銭の提供の総額との和は、予め規定された前記組織の還元費用総額上限値以下になるように設定されており、
当該還元費用総額上限値は、前記組織の利益、前記システム利用者の活動によって付与されるポイントの予想数と現実に付与されたポイント数との差分、及び前記システム利用者当たりの最大還元金額の少なくとも一つに基づいて設定されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の環境活動促進システム。
【請求項6】
前記システム利用者に還元される電子マネーの金額は、前記システム利用者が獲得したポイント数と、前記組織の利益から前記システム利用者が獲得したポイント数の中央値又は平均値の一方との差に基づいて設定されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の環境活動促進システム。
【請求項7】
前記還元された電子マネーの有効期限の残り期間が第1の期間より短くなった場合に、当該電子マネーの還元先である前記システム利用者に対してその旨を通知する電子マネー未取得通知手段を更に備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の環境活動促進システム。
【請求項8】
前記還元された電子マネーが前記システム利用者によって第2の期間内に取得されなかった場合、当該電子マネーを前記外部機関に寄付することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の環境活動促進システム。
【請求項9】
前記電子マネーを福利厚生費として経理処理する経理処理手段を更に備えることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の環境活動促進システム。
【請求項10】
環境活動登録手段は、インターネットを介してアクセス可能な携帯情報端末を利用して、前記システム利用者が実施した前記ポイント付与対象環境活動の内容を登録することを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の環境活動促進システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−3558(P2012−3558A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138730(P2010−138730)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000236089)菱日エンジニアリング株式会社 (4)