説明

環境浄化方法及び環境浄化装置

【課題】次亜塩素酸水溶液をウイルスや細菌の殺傷または不活化に対してより有効に活用可能な環境浄化方法及び環境浄化装置を提供する。
【解決手段】酸性の次亜塩素酸水溶液L1からなる第1霧化微粒子を生成する第1霧化部2Aと、アルカリ性の次亜塩素酸水溶液L2からなる第2霧化微粒子を生成する第2霧化部2Bとを備えた環境浄化装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内などに存在する人体に有害なウイルスや細菌を殺傷または不活化させる環境浄化方法及び環境浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の環境浄化技術に関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献1がある。この特許文献1には、貯水タンクからポンプで送られた水溶液を噴霧するノズル部を備えた空気浄化装置が記されており、ノズル部から噴霧された水滴を静電霧化などの原理で更に微細化する機構として、電極対がノズル部の近くに備えられている。また、除菌、抗ウイルス効果を有する物質の一つとして次亜塩素酸イオンを含む種々の物質が例として挙げられている。
【0003】
また、この種の環境浄化技術に関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献2がある。この特許文献2には、塩素を有効成分とする殺菌水について書かれ、次亜塩素酸水溶液の塩素成分は水素イオン濃度によって、強酸性側のCl、酸性側のHOCl、アルカリ性側のOClの3つの形態をとること、この中で酸性側のHOClの形態が最も殺菌力が強いことなどが記されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−212588号公報(0070段落、請求項13、図1)
【特許文献2】特開平10−024294号公報(0003段落)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記された環境浄化装置では、単に次亜塩素酸イオンを用いるとの記載が見られるのみで、どのような水素イオン濃度(pH)の次亜塩素酸水溶液がウイルスや細菌の殺傷または不活化に有効かという点について未解決であった。
【0006】
また、特許文献2には、アルカリ性側の次亜塩素酸水溶液(OClの形態)よりも酸性側の次亜塩素酸水溶液(HOClの形態)の方が強い殺菌力を持ち好ましいことが記されているが、家庭の室内などの実際の生活空間環境には様々な揮発性有機物が飛散しているために、単に酸性側の次亜塩素酸水溶液を使用したのでは、HOClがこれらの有機物によって消耗して、十分な効力が奏されないという傾向が見られた。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上に例示した従来技術による環境浄化装置が与える課題に鑑み、次亜塩素酸水溶液を細菌やウイルスの殺傷または不活化に対してより有効な環境浄化方法及び環境浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による環境浄化方法の第1特徴構成は、酸性の次亜塩素酸水溶液からなる第1霧化微粒子とアルカリ性の次亜塩素酸水溶液からなる第2霧化微粒子とを被処理空間に供給する点にある。
【0009】
同様に、本発明による環境浄化装置の第1特徴構成は、酸性の次亜塩素酸水溶液からなる第1霧化微粒子を生成する第1霧化部と、アルカリ性の次亜塩素酸水溶液からなる第2霧化微粒子を生成する第2霧化部とを備えている点にある。
【0010】
本発明の第1特徴構成による環境浄化方法及び環境浄化装置では、酸性の次亜塩素酸水溶液からなる第1霧化微粒子とアルカリ性の次亜塩素酸水溶液からなる第2霧化微粒子という、性質の異なる2種類の次亜塩素酸水溶液の霧化微粒子を環境空間または非処理物体の表面近傍に浮遊させることが可能となる。特許文献2を援用して既に説明したごとく、酸性の次亜塩素酸水溶液は非解離形のHOClを多く含有し、アルカリ性の次亜塩素酸水溶液は解離形のOCl(いわゆる次亜塩素酸イオン)多く含有する。この傾向は、これら各水溶液を霧化して微粒子となした状態においても引き継がれるものと考えられる。
【0011】
非解離形のHOClは電気的に中性であるため細胞の形質膜の脂質二重層を容易に透過することができ、生命活動に必須となる細胞内部の核酸(RNA、DNA)や酵素あるいは組織に酸化作用を及ぼすので、細菌などの生細胞や芽胞、ウイルスに対して顕著な殺傷または不活性化作用を有する。他方、解離形のOClは上記脂質二重層を透過できないため、非解離形のHOClと比べて殺菌作用には劣る。しかしながら、家庭用洗浄・漂白剤等の主成分として用いられ、汚れあるいは匂いの成分を迅速に分解して洗浄・消臭効果を発揮する事実からも明らかな通り、有機物との反応性は非常に高い。従って、HOClが主体的と考えられる酸性の第1霧化微粒子は、細菌やウイルスを死滅ないし不活性化する効果には非常に優れているが、処理対象となる環境空間の有機物濃度(特に揮発性有機成分濃度)が高い場合には、前述のごとく、細菌やウイルスを攻撃する前に有機物と反応して消耗し、十分な効果が発揮できない場合がある。他方、OClが主体的と考えられるアルカリ性の第2霧化微粒子は、殺菌作用には劣るものの有機物との反応性においてはHOClをはるかに凌駕する。
【0012】
そこで、本発明のごとく、この2種類の次亜塩素酸水溶液の霧化微粒子を組み合わせて被処理空間に供給すると、アルカリ性の第2霧化微粒子が酸性の第1霧化粒子よりも優先的に被処理空間中の有機物と反応してこれを分解し減少させるので、酸性の第1霧化粒子は空間中の有機物との反応による消耗が抑制され、細菌ないしウイルスに対する殺傷ないし不活性化効果をより有効に発揮できるようになる。その結果、酸性の次亜塩素酸水溶液のみを使用する場合と比較して、細菌やウイルスに対する殺菌または不活性化の効果をより長期間にわたって継続することができるようになる。また、アルカリ性の次亜塩素酸水溶液併用の効果により、空間の消臭効果をより高めることができる。
【0013】
因みに、酸性の次亜塩素酸水溶液とアルカリ性の次亜塩素酸水溶液とを一つの容器内で混合させれば、中和反応が生じて両者ともに中性の次亜塩素酸水溶液に変じてしまうが、本発明のように2種類の次亜塩素酸水溶液の霧化微粒子を個別に大気中に放散した場合は、各霧化微粒子の空間密度が小さいため、容易に中性化されず、酸性の次亜塩素酸水溶液とアルカリ性の次亜塩素酸水溶液という2種類の霧化微粒子が空間内に一定時間に亘って存在することができる。
【0014】
また、本発明の第1特徴構成による環境浄化方法及び環境浄化装置では、アルカリ性の次亜塩素酸水溶液からなる第2霧化微粒子の作用により、対象とする環境空間が消臭されるため、微生物のキャリアとしての昆虫や小動物が臭気によって同環境空間に誘引される現象を抑制できる。その結果、昆虫や小動物が媒介する微生物が同環境空間に接近し難くなる。
【0015】
さらに、アルカリ性の次亜塩素酸水溶液は、酸性の次亜塩素酸水溶液よりも殺菌作用は劣るが、他方で、酸性の次亜塩素酸水溶液にはない付着・酵素タンパク質不活性化メカニズムによってウイルスの感染価を減少させる働きを有する。その結果、酸性の次亜塩素酸水溶液とアルカリ性の次亜塩素酸水溶液という2種類の霧化微粒子を対象とする環境空間に供給することは、同空間に存在するウイルスに対して殺菌(不活化)と感染価の低減という2つの作用を同時に付与することとなり、薬剤耐性型のウイルスの発現を抑制できるため、インフルエンザ等の感染予防対策としても有効となる。
【0016】
本発明による環境浄化方法の他の特徴構成は、前記第1霧化微粒子と前記第2霧化微粒子の供給比率を調節する比率制御工程を有する点にある。また、本発明による環境浄化装置の他の特徴構成は、第1霧化部が供給する第1霧化微粒子と第2霧化部が供給する第2霧化微粒子との供給比率を調節する比率制御手段を有する点にある。
【0017】
酸性の次亜塩素酸水溶液とアルカリ性の次亜塩素酸水溶液との細菌やウイルスに対する作用は、細菌やウイルスの種類によって異なる傾向があるため、環境浄化に際して最も効果的な両水溶液の構成比は、対象とする環境空間に存在する細菌やウイルスの種類などによって異なる。本構成であれば、対象とする細菌やウイルスの種類、或いは、被処理物体の表面性状などに応じて、第1霧化微粒子と第2霧化微粒子の供給比率を調節することで、環境空間に存在する細菌やウイルスを効果的に殺菌(不活化)できる。
【0018】
本発明による環境浄化方法の他の特徴構成は、前記第1霧化微粒子または前記第2霧化微粒子について、微粒子の粒径及び微粒子を被処理空間に吐出するための吐出風速との少なくとも一方を制御する点にある。
【0019】
酸性の次亜塩素酸水溶液及びアルカリ性の次亜塩素酸水溶液ともに、霧化微細粒子を排出する空気に含まれる二酸化炭素を吸収してpHが酸性寄りに変化する傾向がある。しかし、本構成であれば、霧化微細粒子の粒径を大きめに制御する、或いは、微粒子を吐出するための吐出風速を小さめに制御することで、空気に含まれる二酸化炭素との反応が抑制され、細菌やウイルスに対する殺菌(不活化)効果を維持可能な範囲で、吐出に基づくpH変化を抑制することができる。
【0020】
本発明による環境浄化方法の他の特徴構成は、前記第1霧化微粒子の粒径を前記第2霧化微粒子の粒径のよりも大きくした状態で供給する粒径制御工程を有する点にある。
【0021】
酸性の次亜塩素酸水溶液である第1霧化微粒子中に主要に存在するHOClは揮発し易いため、空間中を漂っている間に蒸発して、大気中に移行し易く、他方、アルカリ性の次亜塩素酸水溶液である第2霧化微粒子中に存在するOClはイオンとして水溶液中に安定に存在するため揮発し難いという傾向がある。そこで、本構成では、第1霧化微粒子の粒径を第2霧化微粒子粒径よりも大きくした状態で供給することで、HOClの消失を抑制し、殺菌作用の低下を防ぐことができる。
【0022】
本発明による環境浄化方法の他の特徴構成は、前記第1霧化微粒子と前記第2霧化微粒子の供給は、各霧化微粒子を被処理空間に向けて吐出する噴霧工程からなり、前記第1霧化微粒子の吐出風速を前記第2霧化微粒子の吐出風速よりも小さくした状態で吐出する吐出風速制御工程を有する点にある。
【0023】
本構成であれば、第1霧化微粒子の噴霧速度を前記第2霧化微粒子粒径の噴霧速度よりも小さくした状態で噴霧することで、第1霧化微粒子に含まれるHOClの揮発による消失を抑制し、殺菌作用の低下を防ぐことができる。
【0024】
本発明による環境浄化方法の他の特徴構成は、前記第1霧化微粒子と前記第2霧化微粒子の供給は、各霧化微粒子を被処理空間に向けて噴霧する噴霧工程からなり、少なくとも前記第2霧化微粒子は二酸化炭素を除去した気体によって吐出される点にある。
【0025】
アルカリ性の次亜塩素酸水溶液は酸性の次亜塩素酸水溶液よりも更に二酸化炭素を吸収してpHが酸性寄りに変化する傾向が強い。本構成であれば、少なくともアルカリ性の次亜塩素酸水溶液からなる第2霧化微粒子については、二酸化炭素を含まない気体によって噴霧されるので、第2霧化微粒子の二酸化炭素との反応が抑制される。
【0026】
本発明による環境浄化装置の他の特徴構成は、単一の次亜塩素酸含有原料を収納した原料容器と、前記原料容器内の次亜塩素酸含有原料から、酸性の次亜塩素酸水溶液とアルカリ性の次亜塩素酸水溶液とを同時に生成する次亜塩素酸水溶液の調製装置を備えている点にある。
【0027】
本構成であれば、市販の次亜塩素酸ナトリウム溶液など単一の次亜塩素酸含有原料を原料容器に収納することで、酸性の次亜塩素酸水溶液とアルカリ性の次亜塩素酸水溶液とが同時に生成されるので、作業者などが酸性の次亜塩素酸水溶液及びアルカリ性の次亜塩素酸水溶液を調製するために、市販の次亜塩素酸ナトリウムを一定割合の水で希釈する、及び、市販の次亜塩素酸ナトリウムを一定割合の酸性溶液で所定レベルまで中和する等の操作が不要となる。
【0028】
本発明による環境浄化装置の他の特徴構成は、前記第1霧化部は、酸性の次亜塩素酸水溶液を収納した第1液槽と、前記第1液槽の次亜塩素酸水溶液を霧化する第1霧化機構とを備え、
前記第2霧化部は、アルカリ性の次亜塩素酸水溶液を収納した第2液槽と、前記第2液槽の次亜塩素酸水溶液を霧化する第2霧化機構とを備える点にある。
【0029】
本構成であれば、市販の次亜塩素酸ナトリウムを一定割合の水で希釈したものをアルカリ性の次亜塩素酸水溶液として用い、同様に、市販の次亜塩素酸ナトリウムを一定割合の酸性溶液で所定レベルまで中和したものを酸性の次亜塩素酸水溶液として用いることで、装置の構成としては、このように調製済みの次亜塩素酸水溶液を収納する第1及び第2液槽と、各次亜塩素酸水溶液を所定の速度で霧化する2つの霧化機構とを設ければよいので、本発明による環境浄化装置を非常に安価に構成することができる。
【0030】
本発明による環境浄化装置の他の特徴構成は、前記第1霧化部が供給する前記第1霧化微粒子と前記第2霧化部が供給する前記第2霧化微粒子との供給比率を調節する比率制御手段を有する点にある。
【0031】
本構成であれば、対象とする細菌やウイルスの種類、或いは、被処理物体の表面性状などに応じて、第1霧化微粒子と第2霧化微粒子の供給比率を調節することで、環境空間に存在する細菌やウイルスを効果的に殺菌(不活化)できる。
【0032】
本発明による環境浄化装置の他の特徴構成は、前記第1霧化部及び前記第2霧化部の少なくとも一方は、生成される霧化微粒子の粒径を調節する粒径制御手段を備えている点にある。
【0033】
酸性の次亜塩素酸水溶液及びアルカリ性の次亜塩素酸水溶液ともに、霧化微細粒子を排出する空気に含まれる二酸化炭素を吸収してpHが酸性寄りに変化する傾向がある。しかし、本構成であれば、粒径制御手段によって霧化微細粒子の粒径を大きめに制御することで、空気に含まれる二酸化炭素と霧化微粒子の反応を抑制できるので、細菌やウイルスに対する殺菌(不活化)効果を維持可能な範囲で、吐出に基づくpH変化を抑制することができる。
【0034】
本発明による環境浄化装置の他の特徴構成は、前記第1霧化部及び前記第2霧化部は超音波霧化装置を備えている点にある。
【0035】
本構成であれば、他の霧化機構を用いる場合に比して、霧化微粒子をミクロンオーダーの微細な粒径にし易いため、霧化微粒子の空中での浮遊時間を長くでき、殺菌(不活化)作用が強化及び持続化される。また、超音波振動子の周波数を変更することで、生成される霧化微粒子の粒径を比較的自在に調整することが可能となる。
【0036】
本発明による環境浄化装置の他の特徴構成は、前記第1霧化部及び前記第2霧化部の少なくとも一方は、生成される霧化微粒子の吐出風速を調節する吐出風速制御手段を備えている点にある。なお、吐出風速とは生成された霧化微粒子を環境空間に向けて吐出させるための気流の風速を指す。
【0037】
本構成であれば、吐出風速制御手段によって吐出風速を小さめに制御することで、空気に含まれる二酸化炭素と霧化微粒子の反応を抑制できるので、細菌やウイルスに対する殺菌(不活化)効果を維持可能な範囲で、噴霧に基づくpH変化を抑制することができる。
【0038】
本発明による環境浄化装置の他の特徴構成は、前記第1霧化部と前記第2霧化部は各霧化微粒子の噴霧方向を調節する偏向手段を有する点にある。
【0039】
本構成であれば、偏向手段によって各霧化微粒子の噴霧方向を適宜調節することで、各霧化微粒子を広い環境空間に均一に分散させること、或いは、或る霧化微粒子を特定の領域に偏在させる等の使用方法を実施可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る環境浄化装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示す環境浄化装置の制御構成を装置断面構造とともに示す図である。
【図3】粒径指示値と周波数設定値との関係を与える参照テーブルの概念図である。
【図4】粒径指示値、風量指示値及び周波数設定値の関係を与える参照テーブルの概念図である。
【図5】霧化量設定操作部を第1霧化部及び第2霧化部に対し独立に設ける例を示す模式図である。
【図6】霧化量設定操作部を第1霧化部及び第2霧化部に対し共用化する構成の一例を示す模式図である。
【図7】菌の生存率の減少を示すグラフ(有効塩素の消失小)である。
【図8】菌の生存率の減少を示すグラフ(有効塩素の消失大)である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示す環境浄化装置30は、本発明に係る環境浄化装置の一実施形態であり、環境空間に対して、そこに存在するウイルスや細菌を殺傷または不活化させる作用をもたらすことを目的とする。環境空間の例としては特に限定されないが、一般の家庭或いはレストランを含む諸施設の室内、同室内にある種々の器具や設備類などが含まれる。
【0042】
図1の環境浄化装置30は、次亜塩素酸水溶液の霧化微粒子を環境空間に噴霧することで細菌やウイルスを殺傷または不活化させる形態をとるが、特に、弱酸性の次亜塩素酸水溶液からなる第1霧化微粒子と、アルカリ性の次亜塩素酸水溶液からなる第2霧化微粒子との2種類の次亜塩素酸水溶液を同時に噴霧することを特徴としている。
そのために、環境浄化装置30は、酸性の次亜塩素酸水溶液L1からなる第1霧化微粒子を生成して噴霧する第1霧化部2Aと、アルカリ性の次亜塩素酸水溶液L2からなる第2霧化微粒子を生成して噴霧する第2霧化部2Bとを有する。
【0043】
環境浄化装置30は、第1霧化部2Aは、酸性の次亜塩素酸水溶液(pHは約6.0)を収納した第1液槽3Aと、第1液槽3Aの次亜塩素酸水溶液L1を霧化して、得られた第1霧化微粒子を環境空間に噴霧する第1霧化機構4Aとを有する。
同様に、第2霧化部2Bは、アルカリ性の次亜塩素酸水溶液L2(pHは約10.0)を収納した第2液槽3Bと、第2液槽3Bの次亜塩素酸水溶液L2を霧化して、得られた第2霧化微粒子を環境空間に噴霧する第2霧化機構4Bとを有する。
【0044】
第1霧化部2Aと第2霧化部2Bとは単一の函状の霧化装置本体1に設けられており、第1液槽3Aと第2液槽3Bとは霧化装置本体1の内部で左右に隣接配置されている。第1液槽3Aに収納する酸性の次亜塩素酸水溶液L1は例えばpH4.5〜6.5の範囲であればよく、第2液槽3Bに収納するアルカリ性の次亜塩素酸水溶液L2は例えばpH8.0〜10.0の範囲であればよい。
【0045】
図2に例示するように、第1霧化機構4A及び第2霧化機構4Bは、液槽3A,3Bの底部と連通した容器状の加振部6と、加振部6の下面に取り付けられた超音波振動子7(超音波霧化装置の一例)と、超音波振動子7の働きによって加振部6の次亜塩素酸水溶液L1,L2の表面から発生する第1、第2霧化微粒子を外部に噴霧する噴霧機構8とで構成されている。
なお、超音波振動子7の表面は、ガラス、セラミック、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、プラスチック、金属めっき皮膜から選ばれた1種以上の皮膜層で被覆されている。
【0046】
各噴霧機構8は、加振部6の上方に上下方向に延設された固定案内筒9と、固定案内筒9の上端部に回転自在に外嵌設置された回転体10とを有する。回転体10は、固定案内筒9に外嵌された回転筒部11と、回転筒部11の上端から横向きに延設された吐出管部12とを有する。第1液槽3Aと第2液槽3Bの壁面の一部には、モータM1によって外気を霧化装置本体1の内部に吸引する送風ファン13Fが配置されている。
送風ファン13Fによって吸引された外気は、加振部6に流入した後、加振部6の次亜塩素酸水溶液L1,L2の表面から発生する第1、第2霧化微粒子を、固定案内筒9及び吐出管部12の排出口12aを介して外部に吐出させる。
【0047】
吐出管部12は、霧化装置本体1の上面付近に配置されたモータM2の回転駆動力に基づいて、所望の方向にZ軸回りで回動操作可能になっている。回転筒部11の外周に設けられた入力ギヤ11aは、モータM2の回転軸に固定されたピニオンギヤP1と噛合している。
【0048】
霧化装置本体1の内部には、モータM1,M2の駆動制御などを実施する制御装置14が内装されている。制御装置14は、例えばマイコンあるいはハードウェアロジック等で構成され、第1霧化部2Aと第2霧化部2Bの各部の動作を各々個別に制御する第1制御ユニット14Aと第2制御ユニット14Bとを有する(制御装置14がマイコンで構成される場合は、各制御ユニット14A,14Bはソフトウェア的に実現される)。
【0049】
送風ファン13Fを駆動するモータM1はモータドライバM1Dを介して、また、噴霧方向を調節するモータM2はモータドライバM2Dを介して、振動子7は駆動アンプ7A、発振回路7S及び周波数設定部7Fを介して、それぞれ対応する制御ユニット14A,14Bに接続されている。
【0050】
また、制御装置14には、第1霧化部2Aと第2霧化部2Bとの個々の霧化量を設定するための霧化量設定部20A,20B、ファン13Fによる送風量(ひいては吐出風速)を設定するための風量設定部21A,21B、発生する霧化微粒子の粒径を設定するための粒径設定部22A,22B、及び、各霧化微粒子の吐出方向を個別に調節する偏向設定部23A,23Bが接続されている。
【0051】
各設定部は、図1に例示するように、霧化装置本体1の前面や上面などに設けられた回転つまみ状の霧化量設定操作部20a,20b、風量設定操作部21a,21b、粒径設定操作部22a,22b、偏向設定操作部23a,23bと、それら各設定操作部からの入力情報から設定入力信号を生成するための設定入力信号生成部(不図示;例えば信号電源に接続された可変抵抗や、スイッチ入力回数に応じて記憶値を増減させるカウンタなど)とを備えて構成される。なお、前記設定操作部は、回転つまみに限らず、スライドつまみ、あるいはモメンタリスイッチなど様々な形態で設けることができる。
【0052】
各制御ユニット14A,14Bは、振動駆動制御部16A,16B、周波数制御部17A,17B、風量制御部18A,18B及び偏向制御部19A,19Bを有する。振動駆動制御部16A,16Bは、霧化量設定部20A,20Bからの設定入力値を参照して、第1霧化機構4A及び第2霧化機構4Bの各振動子7による霧化量が設定値に対応する値となるように、駆動アンプ7Aの動作を制御する機能を実現する。霧化量は振動子7の駆動振幅(つまり、駆動アンプ7Aのゲイン)あるいは駆動デューティ比(PWM制御の場合)により変更することができる。本実施形態では、霧化量設定部20A,20Bにより第1霧化機構4A及び第2霧化機構4Bの各霧化量を独立に変更設定可能であり、ひいては、第1霧化微粒子と第2霧化微粒子の供給比率を調節することができる。すなわち、霧化量設定部20A,20B及び振動駆動制御部16A,16Bは互いに協働して比率制御手段を構成していることが明らかである。
【0053】
図1及び図5に示すように、第1霧化部機構4Aと第2霧化機構4Bとの各々に対して独立した霧化量設定操作部20a,20bとして構成してもよいが、図6に示すように、第1霧化部2Aと第2霧化部2Bとの間で共用化されたスライド摘み状の霧化量設定操作部20cとして構成してもよい。この場合、霧化量設定操作部20cのスライド操作位置に応じて第1霧化機構4A(酸性)及び第2霧化機構4B(アルカリ性)の霧化量比率(つまり、供給比率)が変更されることとなる。この図では、霧化量設定操作部20cを左端に移動させれば、第1霧化機構4A(酸性)の霧化量比率が100%となり、霧化量設定操作部20cを中央に配置すれば、第1霧化機構4A(酸性)と第2霧化機構4B(アルカリ性)の霧化量比率が半々になる。
【0054】
なお、スライド摘み状などの共用化された霧化量設定操作部20cを用い、霧化量を駆動アンプ7Aのゲインで調整する場合、第1霧化機構4A側のゲインをg1、第2霧化機構4B側のゲインをg2として、操作部20cの操作位置に関わらずg1+g2の値が一定値gとなるように制御を行なうことが可能である。また、駆動デューティ比で調整する場合は、第1霧化機構4A側のデューティ比をη1、第2霧化機構4B側のデューティ比をη2として、η1+η2の値が一定値η(例えば1)となるように制御を行なうことが可能である。このようにすると、第1霧化部2Aと第2霧化部2Bの合計霧化量をおおむね一定に保ちつつ、2種の霧化微粒子の供給比率を変更することが可能となる。この場合、第1霧化部2Aと第2霧化部2Bの合計霧化量を変更するための回転つまみ状などの操作部(不図示)を、共用化された霧化量設定操作部20cとは別に設けることができる。
【0055】
次に、周波数制御部17A,17Bは、粒径設定部22A、22Bによる粒径指示値を参照して、振動子7の周波数を設定された粒径値に対応する値となるように変更設定する。周波数の変更により、第1霧化部2A及びと第2霧化部2Bによる第1及び第2霧化微粒子の平均粒径を変更することができる。すなわち、周波数制御部17A,17Bは、粒径設定部22A、22Bと協働して粒径制御手段を構成している。具体的には、振動子7の周波数が高くなるほど霧化微粒子の粒径は小さくなる傾向となる。各粒径指示値dに対応する周波数設定値fは、例えば図3に示すような参照テーブル(あるいは関係式でもよい)の形で与えることができる。
【0056】
また、風量制御部18A,18Bは、風量設定部21A,21Bによる風量指示値を参照して、送風ファン13Fを駆動するモータM1の回転速度を変更することで、第1及び第2霧化微粒子の吐出風速を個別に調節する。風量制御部18A,18Bは風量設定部21A,21Bと協働して吐出風速制御手段を構成している。偏向制御部19は、モータM2の回転駆動に基づいて各霧化微粒子の噴霧方向を個別に調節する役割を果たし、偏向制御手段を構成する。
【0057】
なお、駆動振動制御部16A,16B及び周波数制御部17A,17Bによる振動子7の駆動条件(駆動振幅、デューティ比及び周波数)が同じであっても、風量設定部21A,21Bにより吐出風速が変更されると、第1霧化部2A及びと第2霧化部2Bによる第1及び第2霧化微粒子の平均粒径が変化する場合がある。この場合、図4に示すように、周波数設定値fを粒径指示値dと風量設定値wとの双方を変数とする二次元パラメータテーブルとして与えておき、風量設定値wも加味して周波数を決定するように構成できる。この場合は、吐出風速制御手段も粒径制御手段の一部を構成しているとみることができる。さらに、駆動振動制御部16A,16Bによる振動子7の振幅の制御が霧化微粒子の平均粒径に影響を及ぼす場合があり、例えば、振幅を増加させて風量を減少させた場合と、振幅を低減して風量を増加させた場合では、後者のほうが平均粒径は大きくなる可能性がある。
【0058】
なお、風量の変更を行わない使用形態の場合は風量設定部21A,21Bを省略することも可能である。この場合、風量制御部18A,18Bは、固定的に設定された風量値を維持するように、例えば、モータM1の回転速度が一定となるように制御を行えばよい。また、粒径設定部22A、22Bによる粒径制御を行なう場合も、図2のテーブルを用いれば十分である。
【0059】
制御装置14に設けられた駆動振動制御部16A,16B、周波数制御部17A,17B、風量制御部18A,18B及び偏向制御部19A,19Bによる制御内容は、例えば制御装置14がマイコンであれば、フラッシュメモリ等の記憶手段に記憶された各制御部の機能を担うソフトウェアの内容に規定される。また、その制御パラメータの設定値は、制御装置14と接続されたPCや書き込みツールを用いて、作業者が入力を行うことにより、対象とする環境空間の特性や使用目的に合わせて適宜設定・変更することができる。一例として、偏向制御部19が、第1霧化機構4Aの排出口12aと第2霧化機構4Bの排出口12aとを、常に異なる方向に向けながら噴霧方向を定期的に左右に変化させるように駆動する構成とすれば、第1霧化微粒子(酸性)と第2霧化微粒子(アルカリ性)との遭遇機会が更に減少するので、両霧化微粒子による作用が長く継続される。
【0060】
(有効塩素の変化について)
図7、8に示す殺菌作用の確認実験の結果から理解されるように、第1霧化微粒子(酸性)に主に含まれるHOClは揮発性が高いので、空中を漂う間に蒸発して大気中に移行する傾向が強く、同霧化微粒子が壁や床に付着する頃には有効塩素の60〜90%が消失している。他方、第2霧化微粒子(アルカリ性)に主に含まれるOClは水溶液中にイオンの形態で安定的に存在するため揮発性が低く、同霧化微粒子が壁や床に付着する際の有効塩素の消失率は10〜30%に留まる。
【0061】
因みに、有効塩素濃度2ppmで調製した酸性の次亜塩素酸水溶液(pH6.0)とアルカリ性の次亜塩素酸水溶液(pH10)を10μm以下の平均粒径となるように霧化した場合、有効塩素の消失割合は酸性の溶液が90%、アルカリ性の溶液が60%であったが、20μm以下の粒径で霧化した場合は、酸性の溶液が45%、アルカリ性の溶液が30%であった。
【0062】
したがって、特に壁や床など空中以外での殺菌や不活化を主な目的とする場合には、第1霧化微粒子(酸性)における有効塩素の消失を抑制するために、粒径制御手段(周波数制御部17等)を、第1霧化微粒子(酸性)の粒径を第2霧化微粒子(アルカリ性)の粒径よりも大きくした状態で供給するように設定するとよい。
【0063】
(pHの変化について)
第1霧化微粒子(酸性)及び第2霧化微粒子(アルカリ性)のいずれにおいても、吐出管部12から霧化微細粒子を排出する空気に含まれる二酸化炭素を吸収してpHが変化するが、変化の度合いは2つの霧化微粒子の間で異なる。例えば、酸性の次亜塩素酸水溶液(pH6.0)とアルカリ性の次亜塩素酸水溶液(pH10)を同じ粒径(平均粒径10μm以下)で霧化し、且つ、同じ吐出風速で供給した場合、酸性の次亜塩素酸水溶液のpH変化は6.0→5.3という変化レベルに留まるが、アルカリ性の次亜塩素酸水溶液のpH変化は10.0→7.2と顕著であり、アルカリ性の特長が失われる傾向がある。
したがって、吐出風速制御手段(風量制御部18)は、特にアルカリ性の次亜塩素酸水溶液の吐出に基づくpH変化が抑制されるように、原則として、第2霧化微粒子の吐出風速を第1霧化微粒子粒径の吐出風速よりも小さくした状態で吐出するように設定するとよい。
【0064】
また、アルカリ性の次亜塩素酸水溶液の吐出に基づくpH変化を抑制する目的で、第2霧化微粒子は空気ではなく、二酸化炭素が除去された気体、または窒素など二酸化炭素を含まない気体によって噴霧する形態で実施すれば更に有効である。
因みに、有効塩素濃度2ppmで調製した酸性の次亜塩素酸水溶液(pH6.0)とアルカリ性の次亜塩素酸水溶液(pH10)を平均粒径10μm以下の霧化微粒子として霧化し空中に排出した場合、pH変化の度合いは排出用の気体によって異なることが以下のように確認された。排出用の気体として乾燥空気と窒素ガスを比較すると、乾燥空気では、酸性水溶液のpHは6.0→5.3と変化し、アルカリ性水溶液のpHは10.0→7.2と変化したが、窒素ガスでは、酸性水溶液のpHは6.0→pH5.5と変化し、アルカリ性水溶液のpHは10.0→8.7と変化した。このように、排出用の気体として窒素ガスを用いることでpH変化を抑制できることが確認された。
【実施例1】
【0065】
(殺菌作用の確認実験)
図7及び図8は、有効塩素濃度2ppmに調製した酸性(pH6.0)の次亜塩素酸水溶液L1とアルカリ性(pH10.0)の次亜塩素酸水溶液L2とを平均粒径が10μm以下の霧化微粒子として霧化し、固体表面に付着した大腸菌に接触させた時の菌の生残率の減少を示す。
【0066】
図7は有効塩素の消失が小さい場合(L1の塩素消失率:10%、L2の塩素消失率:5%)を示し、図8は有効塩素の消失が大きい場合(L1の塩素消失率:90%、L2の塩素消失率:60%)を示す。
図7の結果は、酸性の次亜塩素酸水溶液L1とアルカリ性の次亜塩素酸水溶液L2とが略同じ有効塩素濃度であれば、前述したように、酸性の次亜塩素酸水溶液L1の方が強力な殺菌効果を示すことを示す。他方、図8の結果は、有効塩素が90%と大幅に消失した酸性の次亜塩素酸水溶液L1の殺菌効果は、有効塩素の消失率が60%であるアルカリ性の次亜塩素酸水溶液L2よりも小さいこと示す。
すなわち、有効塩素濃度があまり減少しない状態で霧化方法を行えば、酸性の次亜塩素酸水溶液L1の方がアルカリ性の次亜塩素酸水溶液L2よりも強力な殺菌効果を示すことになる。
【0067】
〔別実施形態〕
〈1〉上記の実施形態からモータM2によって吐出管部12を回転操作する回転機構を省略することも可能である。また、第1霧化部2Aと第2霧化部2Bとから発生した2種類の霧化微粒子を共通の単一の吐出管部12から噴霧する形態で実施してもよい。さらに、送風ファン13Fによって吐出する機構を省略して、加振部6で生じた2種類の霧化微粒子が室内の気流などによって自然に浮遊、分散される形態で実施することも可能である。
【0068】
〈2〉図1に示すように、対象とする環境空間の湿度を検出する湿度センサ24を環境浄化装置30の構成の一部として設け、制御装置14の粒径制御手段(周波数制御部17)や吐出風速制御手段(風量制御部18)が、同センサによって検出された湿度の値に応じて駆動する構成とすることも可能である。この場合、湿度の検出値が高いほど、粒径制御手段は霧化微粒子の粒径が大きくなるように制御すればよく、また、吐出風速制御手段は吐出風速が小さくなるように制御するとよい。
【0069】
〈3〉各液槽3A,3Bに収納された次亜塩素酸水溶液の温度を10℃から60℃の温度範囲で制御する温度制御機構を設けてもよい。この構成は、温度を高めることで殺菌効果及び消臭効果を増強させることができるとともに、二酸化炭素の吸収を抑制することを可能とする。さらに、環境空間の気温及び固体表面の温度によっては、霧化微粒子の継続的噴霧により結露を生じることがあるため、温度制御によって霧化微粒子の蒸発速度を調節することで、結露の発生を回避することができるなどの点で有利である。具体例を図1に示す。すなわち、第1液槽3Aないし第2液槽3B内に液温センサ25とヒータ27を配置するとともに、ヒータ27を、ヒータ駆動部28を介して制御装置14に接続する。また、制御装置14には温度設定部29を設ける。この温度設定部9にて例えば上記温度範囲で液温設定値を入力することにより、制御装置14はヒータ駆動部28に対し、液温センサ25からの出力信号をセンサアンプ26で増幅して検出された検出温度が液温設定値に近づくように、ヒータ27への出力調整制御指令を行う。
【0070】
〈4〉調製された弱酸性の次亜塩素酸水溶液とアルカリ性の次亜塩素酸水溶液とを各液槽3A,3Bに注入する構成ではなく、市販の次亜塩素酸ナトリウム溶液など単一の高濃度の次亜塩素酸含有原料を収納するための単一の原料容器を設け、この原料容器内の次亜塩素酸含有原料から、酸性の次亜塩素酸水溶液とアルカリ性の次亜塩素酸水溶液とを同時に生成する次亜塩素酸水溶液の調製装置を設けた構成としてもよい。この調製装置としては、本願の出願人と同じ出願人によって出願された特開2006−192419号公報、特開2007−326050号公報などに開示された液体混合技術の一部を適用することができる。
【0071】
〈5〉第1及び第2霧化機構4A,4Bは超音波振動子を用いた霧化機構に限らず、例えば、毛細管現象によって搬送部材内を搬送される液体が、同搬送部材の端部と対向配置された対向電極によって印加された高電圧によって、高帯電の霧化微粒子として対向電極側に向けて放出される静電霧化機構、或いは、液体が通過可能な毛細管の開放端付近に圧搾空気を当てることで、霧化微粒子を形成する空気式霧化機構などを用いてもよい。
【0072】
〈6〉酸性の第1霧化微粒子を噴霧する第1霧化部2Aと、アルカリ性の第2霧化微粒子を噴霧する第2霧化部2Bとを一体化せず、対象とする環境空間の互いに分離された箇所に分離配置した構成で実施することも可能である。この場合も制御装置のみ共通化させ、有線または無線のLAN(ローカル・エリア・ネットワーク)などによって第1霧化部2Aと第2霧化部2Bを個別に駆動させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
酸性の次亜塩素酸水溶液からなる第1霧化微粒子とアルカリ性の次亜塩素酸水溶液からなる第2霧化微粒子とを生成する第2霧化部とを被処理空間に供給することで、ウイルスや細菌の殺傷または不活化に対してより有効な環境浄化方法及び環境浄化装置として利用できる。
【符号の説明】
【0074】
1 霧化装置本体
1a 吸気孔
2A 第1霧化部
2B 第2霧化部
3A 第1液槽
3B 第2液槽
4A 第1霧化機構
4B 第2霧化機構
6 加振部
7 超音波振動子(超音波霧化装置、粒径制御手段)
8 噴霧機構
10 回転体
11 回転筒部
12 吐出管部
12a 排出口
13F 送風ファン(吐出風速制御手段)
14 制御装置
16 振動駆動制御部(比率制御手段)
17 周波数制御部(粒径制御手段)
18 風量制御部(吐出風速制御手段)
19 偏向制御部
20 霧化量設定部(比率制御手段)
21 送風量設定部(吐出風速制御手段)
22 粒径設定部(粒径制御手段)
23 偏向設定部
30 環境浄化装置
L1 次亜塩素酸水溶液(酸性)
L2 次亜塩素酸水溶液(アルカリ性)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性の次亜塩素酸水溶液からなる第1霧化微粒子と、アルカリ性の次亜塩素酸水溶液からなる第2霧化微粒子とを被処理空間に供給する環境浄化方法。
【請求項2】
前記第1霧化微粒子と前記第2霧化微粒子の供給比率を調節する比率制御工程を有する請求項1に記載の環境浄化方法。
【請求項3】
前記第1霧化微粒子または前記第2霧化微粒子について、微粒子の粒径及び噴霧速度の少なくとも一方を制御する請求項1または2に記載の環境浄化方法。
【請求項4】
前記第1霧化微粒子の粒径を前記第2霧化微粒子の粒径よりも大きくした状態で供給する粒径制御工程を有する請求項3に記載の環境浄化方法。
【請求項5】
前記第1霧化微粒子と前記第2霧化微粒子の供給は、各霧化微粒子を被処理空間に向けて吐出する噴霧工程からなり、前記第1霧化微粒子の吐出風速を前記第2霧化微粒子の吐出風速よりも小さくした状態で吐出する吐出風速制御工程を有する請求項3記載の環境浄化方法。
【請求項6】
前記第1霧化微粒子と前記第2霧化微粒子の供給は、各霧化微粒子を被処理空間に向けて噴霧する噴霧工程からなり、少なくとも前記第2霧化微粒子は二酸化炭素を除去した気体によって噴霧される請求項1から5のいずれか一項に記載の環境浄化方法。
【請求項7】
酸性の次亜塩素酸水溶液からなる第1霧化微粒子を生成する第1霧化部と、アルカリ性の次亜塩素酸水溶液からなる第2霧化微粒子を生成する第2霧化部とを備えた環境浄化装置。
【請求項8】
単一の次亜塩素酸含有原料を収納した原料容器と、前記原料容器内の次亜塩素酸含有原料から、酸性の次亜塩素酸水溶液とアルカリ性の次亜塩素酸水溶液とを同時に生成する次亜塩素酸水溶液の調製装置を備えている請求項7に記載の環境浄化装置。
【請求項9】
前記第1霧化部は、酸性の次亜塩素酸水溶液を収納した第1液槽と、前記第1液槽の次亜塩素酸水溶液を霧化する第1霧化機構とを備え、
前記第2霧化部は、アルカリ性の次亜塩素酸水溶液を収納した第2液槽と、前記第2液槽の次亜塩素酸水溶液を霧化する第2霧化機構とを備える請求項7または8に記載の環境浄化装置。
【請求項10】
前記第1霧化部が供給する前記第1霧化微粒子と前記第2霧化部が供給する前記第2霧化微粒子との供給比率を調節する比率制御手段を有する請求項7から9のいずれか一項に記載の環境浄化装置。
【請求項11】
前記第1霧化部及び前記第2霧化部の少なくとも一方は、生成される霧化微粒子の粒径を調節する粒径制御手段を備えている請求項7から10のいずれか一項に記載の環境浄化装置。
【請求項12】
前記第1霧化部及び前記第2霧化部は超音波霧化装置からなる請求項7から11のいずれか一項に記載の環境浄化装置。
【請求項13】
前記第1霧化部及び前記第2霧化部の少なくとも一方は、生成される霧化微粒子の吐出風速を調節する吐出風速制御手段を備えている請求項7から12のいずれか一項に記載の環境浄化装置。
【請求項14】
前記第1霧化部と前記第2霧化部は各霧化微粒子の噴霧方向を調節する偏向機構を有する請求項7から13のいずれか一項に記載の環境浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−152278(P2011−152278A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15805(P2010−15805)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 研究集会名 日本防菌防黴学会 2009年度若手の会 主催者名 日本防菌防黴学会 開催日 平成21年12月11日 〔刊行物等〕 発行者名 日本防菌防黴学会 刊行物名 日本防菌防黴学会 2009年度若手の会講演予稿集 発行年月日 平成21年12月11日
【出願人】(504457913)株式会社シージーアイ (3)
【出願人】(591060980)岡山県 (96)
【Fターム(参考)】