説明

環境測定装置及び環境測定方法

【課題】環境測定装置において、圧電抵抗型カンチレバーセンサを用いる場合に、周辺環境の気体や液体の検出又は測定の精度を向上させることができるようにする。
【解決手段】環境測定装置を、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1と、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1の印加電圧をon/offが繰り返されるように制御し、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1の印加電圧をonにしている期間に検出又は測定された圧電抵抗型カンチレバーセンサ1の圧電抵抗値に基づいて周辺環境の気体又は液体を検出又は測定する制御演算部5とを備えるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境測定装置及び環境測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気中の揮発性有機化合物(VOCs:Volatile Organic Compounds)が人間の健康に大きな影響を及ぼすことが懸念されている。大気中に存在するVOCsがたとえ極微量であっても、人が継続的に曝露され、蓄積することによって、いろいろな健康被害を及ぼす恐れがある。
そこで、VOCs対策を行なうために、まず生活環境においてVOCsを検出又は測定し、その存在を把握することが必要となる。
【0003】
VOCsは大気中に含まれる量が極微量であるため、VOCsを検出又は測定するためのセンサは、高感度・高精度であり、リアルタイムで検出又は測定が可能であることが必要となる。このような条件を満たすセンサとして、QCM(Quartz Crystal Microbalance)センサが用いられている。
また、周辺環境の気体や液体を検出又は測定するのに、圧電抵抗型カンチレバーセンサが用いられている。圧電抵抗型カンチレバーセンサを用いる場合、センサ周辺の気体や液体の濃度に応じてカンチレバーが撓み、この撓みの大きさに応じて圧電抵抗値が変化するため、この圧電抵抗値を検出又は測定することで、周辺環境の気体や液体を検出又は測定するようになっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】A. Kooser et.al, ”Gas sensing using embedded piezoresistive microcantilever sensors”, Sensors and Actuators B, 99, pp.474-479 (2004)
【非特許文献2】R. Yang et.al, “A chemisorption-based microcantilever chemical sensor for the detection of trimethylamine”, Sensors and Actuators B, 145, pp.474-479 (2010)
【非特許文献3】H. Seo et.al, ”Detection of formaldehyde vapor using mercaptophenol-coated piezoresistive cantilevers”, Sensors and Actuators B, 126, pp.522-526 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、生活環境などの周辺環境の気体(例えばVOCs)や液体を検出又は測定する場合には、比較的広い範囲で、かつ、継続的に検出又は測定することが必要となる。このため、検出又は測定する場所を選ばないような小型なものであることが必要となる。また、小型化を図ることで、簡便に周辺環境の気体や液体の検出又は測定が可能となる。
そこで、周辺環境の気体や液体を検出又は測定する環境測定装置において、高感度・高精度でリアルタイムに検出又は測定を可能とし、さらに、小型化、簡便化を図るべく、上述の圧電抵抗型カンチレバーセンサを用いることが考えられる。
【0006】
しかしながら、圧電抵抗型カンチレバーセンサを用いる場合、圧電抵抗値を検出又は測定するのにカンチレバーセンサに電圧を印加するため、自己発熱効果によってセンサの温度が上昇し、これに応じて圧電抵抗体の本来の圧電抵抗値が減少してしまう。これにより、カンチレバーの撓みの大きさに応じた圧電抵抗値として検出又は測定される圧電抵抗値に誤差が生じてしまうことになる。
【0007】
そこで、環境測定装置及び環境測定方法において、圧電抵抗型カンチレバーセンサを用いる場合に、周辺環境の気体や液体の検出又は測定の精度を向上させることができるようにしたい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本環境測定装置は、圧電抵抗型カンチレバーセンサと、圧電抵抗型カンチレバーセンサの印加電圧をon/offが繰り返されるように制御し、圧電抵抗型カンチレバーセンサの印加電圧をonにしている期間に検出又は測定された圧電抵抗型カンチレバーセンサの圧電抵抗値に基づいて周辺環境の気体又は液体を検出又は測定する制御演算部とを備えることを要件とする。
【0009】
本環境測定方法は、圧電抵抗型カンチレバーセンサの印加電圧をon/offが繰り返されるように制御し、圧電抵抗型カンチレバーセンサの印加電圧をonにしている期間に検出又は測定された圧電抵抗型カンチレバーセンサの圧電抵抗値に基づいて周辺環境の気体又は液体を検出又は測定することを要件とする。
【発明の効果】
【0010】
したがって、本環境測定装置及び環境測定方法によれば、圧電抵抗型カンチレバーセンサを用いる場合に、周辺環境の気体や液体の検出又は測定の精度を向上させることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態にかかる環境測定装置の構成を示す模式図である。
【図2】第1実施形態にかかる環境測定装置に含まれるカンチレバーセンサを説明するための模式図である。
【図3】第1実施形態にかかる環境測定装置に含まれるカンチレバーセンサ及びホイートストンブリッジ回路を説明するための模式図である。
【図4】本発明の課題を説明するための図である。
【図5】第1実施形態にかかる環境測定装置の動作(測定方法)を説明するための図である。
【図6】(A)、(B)は第1実施形態にかかる環境測定装置の動作(測定方法)を説明するための図である。
【図7】周辺環境の特定ガスの濃度が急激に変化した場合の課題を説明するための図である。
【図8】(A)は測定間隔が大きい場合(センサon期間Δt≦センサoff期間Δt)のセンサ熱量の変化を示す図であり、(B)は測定間隔(off期間)が小さい場合(センサon期間Δt>センサoff期間Δt)のセンサ熱量の変化を示す図である。
【図9】第1実施形態にかかる環境測定装置に含まれるカンチレバーセンサの構成を示す模式的平面図である。
【図10】(A)〜(H)は第1実施形態にかかる環境測定装置に含まれるカンチレバーセンサの製造方法を説明するための模式的断面図である。
【図11】第1実施形態にかかる環境測定装置による測定プロセス(環境測定方法)を説明するためのフローチャートである。
【図12】第1実施形態にかかる環境測定装置による測定プロセス(環境測定方法)を説明するための図である。
【図13】第1実施形態にかかる環境測定装置による測定結果を示す図である。
【図14】第2実施形態にかかる環境測定装置の構成を示す模式図である。
【図15】第3実施形態にかかる環境測定装置の構成を示す模式図である。
【図16】第4実施形態にかかる環境測定装置の構成を示す模式図である。
【図17】第4実施形態にかかる環境測定装置による測定プロセス(環境測定方法)を説明するためのフローチャートである。
【図18】第4実施形態にかかる環境測定装置による各センサのon/offタイミングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面により、本発明の実施の形態にかかる環境測定装置及び環境測定方法について説明する。
[第1実施形態]
まず、第1実施形態にかかる環境測定装置及び環境測定方法について、図1〜図13を参照しながら説明する。
【0013】
本実施形態にかかる環境測定装置は、図2及び図3に示すような圧電抵抗型カンチレバーセンサ1を備え、これを用いて周辺環境の気体や液体を検出又は測定するものである。特に、本環境測定装置は、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1を用いて、周辺環境の雰囲気中(大気中)に含まれる特定ガス(例えばVOCs)の有無又は濃度を検出又は測定するものである。なお、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1は、環境測定用カンチレバーセンサ、あるいは、カンチレバーガスセンサともいう。また、環境測定装置は濃度測定装置ともいう。以下、「検出又は測定」をまとめて「測定」という場合がある。
【0014】
ここで、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1は、カンチレバー2と、カンチレバー2に設けられた圧電抵抗体3とを備える。なお、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1を、圧電抵抗体付きカンチレバー、圧電抵抗型カンチレバーセンサ素子ともいう。ここでは、カンチレバー2に、特定ガス、即ち、被測定ガスの分子を吸着しうる膜(感応膜;図示せず)が塗布されている。なお、感応膜は、測定対象となる気体や液体を吸着しうる膜であれば良い。
【0015】
このように、環境測定装置において圧電抵抗型カンチレバーセンサ1を用いる場合、図2に示すように、センサ周辺の特定ガスの濃度に応じてカンチレバー2が撓み、この撓みの大きさに応じて圧電抵抗体3の圧電抵抗値が変化する。このため、この圧電抵抗値を検出又は測定することで、周辺環境の特定ガスを検出又は測定することができる。つまり、周辺環境の特定ガスの濃度に応じてカンチレバー2の表面上に塗布された感応膜への特定ガスの吸着率、即ち、カンチレバー2の表面の被覆率が変化する。そして、カンチレバー2の表面の被覆率に応じてカンチレバー2の表面張力が変化して、カンチレバー2が変位する。このカンチレバー2の変位によってカンチレバー2上に形成された圧電抵抗体3の抵抗値が変化する。このため、この圧電抵抗体3の抵抗値の変化を検出又は測定することで、周辺環境の特定ガスを検出又は測定することができる。なお、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1は、圧電抵抗測定型カンチレバーセンサともいう。
【0016】
本環境測定装置は、カンチレバー2の撓みによる圧電抵抗値の微量な変化を高感度に検出又は測定することができるように、図3に示すように、ホイートストンブリッジ回路4を備え、この回路4内の1つのブリッジ抵抗を圧電抵抗型カンチレバーセンサ1で置き換えた構成になっている。なお、ホイートストンブリッジ回路4に代えて、カンチレバー2の撓みによる圧電抵抗値の微量な変化を高感度に検出又は測定することができるブリッジ回路を用いても良い。
【0017】
つまり、本実施形態では、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1は、ホイートストンブリッジ回路4に接続されている。そして、ホイートストンブリッジ回路4の2点間(A−B間)の電圧値を検出又は測定することで、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1の圧電抵抗値を検出又は測定することができるようになっている。つまり、上述のカンチレバー2上に形成された圧電抵抗体3の抵抗値の変化を、ホイートストンブリッジ回路4の2点間(A−B間)の電圧値の変化によって検出又は測定することができるようになっている。
【0018】
このように、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1及びホイートストンブリッジ回路4を用いる場合、センサ素子自体が極小であり、測定機構が単純であるため、装置を極めてコンパクトにすることができる。例えば、VOCsを検出又は測定する場合、従来のQCMセンサを用いるのと比較して、装置を極めてコンパクトにすることができる。
このため、環境測定装置において圧電抵抗型カンチレバーセンサ1を用いることで、高感度・高精度でリアルタイムに周辺環境の特定ガスを検出又は測定することが可能となり、さらに、小型化、簡便化を図ることができる。これにより、比較的広い範囲で、かつ、継続的に、周辺環境の特定ガスの検出又は測定を行なうことが可能となる。
【0019】
ここで、ホイートストンブリッジ回路4の2点間(A−B間)の電圧値、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1の圧電抵抗値、周辺環境の特定ガスの濃度値には、以下のような関係がある。
まず、ホイートストンブリッジ回路4の2点間(A−B間)の電圧値は、以下のようにして、第1カンチレバーセンサ1の圧電抵抗値に換算することができる。
【0020】
ここでは、図3に示すように、ホイートストンブリッジ回路4を構成するブリッジ抵抗12の抵抗値をR、R、R、Rとする。また、電圧計8によって測定されるホイートストンブリッジ回路4のA−B間の電圧値をeとする。また、電圧源9によってホイートストンブリッジ回路4のC−D間に印加される電圧値をVとする。
電圧源9によってホイートストンブリッジ回路4のC−D間に印加される電圧値Vと、電圧計8によって測定されるホイートストンブリッジ回路4のA−B間の電圧値eとの関係を、ブリッジ抵抗12の抵抗値R〜Rを使って表すと、次式(1)のようになる。
【0021】
【数1】

【0022】
第1カンチレバーセンサ1の圧電抵抗値である抵抗値RがΔRだけ変化したとすると、次式(2)に示すようになる。
【0023】
【数2】

【0024】
これをΔRについて整理すると、次式(3)のようになる。
【0025】
【数3】

【0026】
=R=R=R=Rとすると、次式(4)のようになる。
【0027】
【数4】

【0028】
この式(4)の電圧値−抵抗値変換式を用いて、第1ホイートストンブリッジ回路4のA−B間の電圧値を、第1カンチレバーセンサ1の圧電抵抗値に換算することができる。
次に、上述のようにして求めた第1カンチレバーセンサ1の圧電抵抗値は、以下のようにして、周辺環境の特定ガスの濃度値に換算することができる。
ここでは、カンチレバーの曲率半径をrとし、カンチレバーの厚さをtとし、ポアソン率をνとし、ヤング率をEとし、表面張力の変化をΔσとすると、カンチレバーの曲率1/rは、次式(5)で表される。
【0029】
【数5】

【0030】
よって、カンチレバーの長さをlとすると、カンチレバーの開放端の変位ΔZは、次式(6)で表される。
【0031】
【数6】

【0032】
また、圧電抵抗体の長さをλとし、ゲージ定数をKとすると、次式(7)の関係が成り立つ。
【0033】
【数7】

【0034】
上記式(6)、(7)より、ΔZを消去すると、次式(8)が得られる。
【0035】
【数8】

【0036】
ここで、αは、カンチレバーの形状、材料によって一意に決まる定数である。また、表面張力の値は表面被覆率に関係した値であり、さらに表面被覆率は測定対象となる特定ガスの濃度値に関係した値である。このため、測定対象となる特定ガスの濃度値は、表面張力の値に関係した値となる。したがって、上記式(8)のΔR/Rの値は、測定対象となる特定ガスの濃度値に関係した値となる。なお、吸着特性は、表面の状態、感応膜と測定対象となる特定ガスの種類によって異なるため、それに応じて、実際に特定ガスの濃度値に変換するための式も異なるものとなる。
【0037】
このようにして、第1カンチレバーセンサ1の圧電抵抗値を、周辺環境の特定ガスの濃度値に換算することができる。
ところで、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1を用いる場合、圧電抵抗値を検出又は測定するために圧電抵抗型カンチレバーセンサ1に電圧を印加すると、自己発熱効果によってセンサの温度が上昇し、これに応じて圧電抵抗体3の本来の圧電抵抗値(基準圧電抵抗値)が減少してしまう。これにより、カンチレバー2の撓みの大きさに応じた圧電抵抗値として検出又は測定される圧電抵抗値に誤差が生じてしまうことになる。
【0038】
ここで、図4は、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1に電圧(バイアス)を印加した場合に、カンチレバーセンサ1が発生し、蓄積する熱量(センサの熱量)及びカンチレバーセンサ1から検出又は測定される圧電抵抗値(センサの圧電抵抗値)の経時的な変化を示している。
図4に示すように、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1に電圧を印加すると、自己発熱効果によるセンサの熱量は、電圧印加開始時からの時間の経過とともに、緩やかに上昇する。このセンサ熱量の上昇、即ち、センサ温度の上昇に伴って、センサ1の圧電抵抗値は、センサ1に備えられる圧電抵抗体3の本来の圧電抵抗値から時間の経過とともに減少してしまう。この結果、カンチレバー2の撓みの大きさに応じた圧電抵抗値として検出又は測定される圧電抵抗値に誤差が生じてしまうことになる。
【0039】
一方、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1に電圧を印加した直後は、自己発熱効果の影響が小さい。このため、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1に電圧を印加した直後のセンサ1の圧電抵抗値を検出又は測定すれば、センサ1に備えられる圧電抵抗体3の本来の圧電抵抗値に近い値が得られる。このように、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1に電圧を印加した直後は、圧電抵抗体3の本来の圧電抵抗値がそれほど変化しないため、カンチレバー2の撓みの大きさに応じた圧電抵抗値を高精度で検出又は測定することができる。
【0040】
そこで、本実施形態では、図5に示すように、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1に印加する電圧(センサ電圧)のon/offを繰り返し、印加電圧をonにしている期間に圧電抵抗型カンチレバーセンサ1の圧電抵抗値を検出又は測定するようにしている。つまり、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1に印加する電圧をon/offし、印加電圧をonにしている比較的短い期間に1回だけ圧電抵抗型カンチレバーセンサ1の圧電抵抗値を検出又は測定するようにした、間欠的測定方法を採用している。なお、このような間欠的測定に用いるカンチレバーセンサ1を、間欠的測定カンチレバーセンサという。
【0041】
この場合、センサ1の熱量は、図5に示すように、印加電圧をonにしている期間に上昇し、印加電圧をoffにしている期間に下降することになる。つまり、印加電圧のon/offに応じて、センサ1の熱量の上昇/下降が繰り返されることになる。
この印加電圧をonにしている期間のセンサ1の熱量の上昇に伴って、センサ1の圧電抵抗値は減少するものの、印加電圧をonにする期間が比較的短いため、それほど大きくは減少しない。このため、印加電圧をonにしている期間に検出又は測定されるセンサ1の圧電抵抗値は、カンチレバー2の撓みの大きさに応じた圧電抵抗値となり、高精度なものとなる。
【0042】
また、この場合、センサ1の圧電抵抗値は、印加電圧のon/offに応じた時間間隔をあけて検出又は測定されることになる。このため、図6(B)に示すように連続的に変化する特定ガスの濃度を、図6(A)に示すように、印加電圧のon/offに応じた時間間隔をあけて検出又は測定することになる。このように、印加電圧をonにしたままセンサ1の圧電抵抗値を連続的に検出又は測定する場合と比較して、印加電圧をon/offして時間間隔をあけてセンサ1の圧電抵抗値を検出又は測定する場合は、検出又は測定される圧電抵抗値はとびとびの値となり、その数は少なくなるが、連続的に変化する特定ガスの濃度を検出又は測定することは可能である。例えば、印加電圧のon/offの時間間隔を短くすることで、印加電圧をonにしたままセンサ1の圧電抵抗値を連続的に検出又は測定する場合と同様に、特定ガスの濃度変化を検出又は測定することができる。
【0043】
このため、本環境測定装置は、図1に示すように、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1の印加電圧をon/offが繰り返されるように制御し、印加電圧をonにしている期間に検出又は測定された圧電抵抗型カンチレバーセンサ1の圧電抵抗値に基づいて周辺環境の気体又は液体(ここでは特定ガス)を検出又は測定する制御演算部5を備える。
このため、本環境測定方法では、まず、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1の印加電圧をon/offが繰り返されるように制御する。次に、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1の印加電圧がonの間に検出又は測定された圧電抵抗型カンチレバーセンサ1の圧電抵抗値に基づいて周辺環境の特定ガスを検出又は測定する。
【0044】
ところで、上述のような間欠的測定方法を採用する場合、図7に示すように、周辺環境の特定ガスの濃度が、検出又は測定する時間間隔(測定間隔)よりも短い時間で急激に変化したときには対応するのが難しい。
つまり、周辺環境の特定ガスの濃度が測定間隔よりも短い時間で急激に変化した場合、センサ1の圧電抵抗値に基づいて検出又は測定される特定ガスの濃度変化は、実際の特定ガスの濃度変化と異なるものとなってしまい、ずれが生じてしまう。
【0045】
一方、周辺環境の特定ガスの濃度は、周囲の温度、湿度、風向き、あるいは、天候以外の多くの要因によって、短時間で大きく変動する。このため、短時間の急激な変化にも対応できるようにしたい。
このような短時間の急激な変化にも対応できるように、印加電圧をoffにする期間を短くすることで測定間隔を短くして、特定ガスの濃度を密に検出又は測定することが考えられる。
【0046】
ここで、図8(A)は、印加電圧をonにする期間(センサon期間)よりも印加電圧をoffにする期間(センサoff期間)が長い場合、即ち、測定間隔が長い場合のセンサの熱量(温度)の時間変化を示す図である。また、図8(B)は、印加電圧をonにする期間よりも印加電圧をoffにする期間が短い場合、即ち、測定間隔が短い場合のセンサの熱量(温度)の時間変化を示す図である。なお、図8(A),(B)中、網掛けを付している部分は印加電圧がonになっている期間を表している。
【0047】
ここでは、印加電圧をonにする期間Δtは、センサ1の温度が上昇する期間、即ち、センサ1が加熱される期間である。このため、センサ加熱期間ともいう。この期間をセンサ電圧印加時間ともいう。また、印加電圧をoffにする期間Δtは、センサ1の温度が下降する期間、即ち、発熱したセンサ1が冷却される期間である。このため、センサ冷却期間ともいう。
【0048】
まず、図8(A)に示すように、印加電圧をonにする期間に対して印加電圧をoffにする期間が長い場合、センサ加熱期間Δtよりもセンサ冷却期間Δtが長くなる。このため、印加電圧をoffにしている期間にセンサ1は十分に冷却されるため、印加電圧をonにした場合の自己発熱効果の影響が小さく、印加電圧をonにしている期間に、カンチレバー2の撓みの大きさに応じた圧電抵抗値を高精度で検出又は測定することができる。
【0049】
これに対し、短時間の急激な変化にも対応できるように、図8(B)に示すように、印加電圧をonにする期間よりも印加電圧をoffにする期間を短くすると、センサ加熱期間Δtよりもセンサ冷却期間Δtが短くなる。このため、印加電圧をoffにしている期間にセンサ1は十分に冷却されず、熱が蓄積していくことになる。この結果、時間の経過とともに、センサ1の熱量は上昇していき、これに伴って、センサ1の圧電抵抗値が減少していく。これにより、カンチレバー2の撓みの大きさに応じた圧電抵抗値として検出又は測定される圧電抵抗値に大きな誤差が生じてしまうことになる。
【0050】
そこで、測定精度を高くし、かつ、急激な濃度変化にも対応できるようにするために、本実施形態では、図1に示すように、複数(ここでは5つ)の圧電抵抗型カンチレバーセンサ1を備えるセンサ素子6を用いている。なお、図1中、上から順に、第1カンチレバーセンサ、第2カンチレバーセンサ、第3カンチレバーセンサ、第4カンチレバーセンサ、第5カンチレバーセンサという。また、ここでは5つのカンチレバーセンサ1を備えるものとしているが、センサ1の数はこれに限られるものではない。そして、本実施形態では、制御演算部5が、複数の圧電抵抗型カンチレバーセンサ1の印加電圧をonにする期間がずれるように制御するようになっている(図12参照)。
【0051】
ここでは、複数の圧電抵抗型カンチレバーセンサ1は、同一の構成とし、また、印加電圧をonにする期間及び印加電圧をoffにする期間も同一にし、on/offのタイミングを少しずつずらすようにしている(図12参照)。ここでは、複数の圧電抵抗型カンチレバーセンサ1の印加電圧をonにする期間が互いに重ならないようにタイミングがずらされている。そして、上述のように、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1の圧電抵抗値は、印加電圧をonにしている期間に検出又は測定される。このため、それぞれのセンサ1の圧電抵抗値が順番に検出又は測定され、これらの圧電抵抗値に基づいて、連続的に変化する特定ガスの濃度が検出又は測定されることになる。
【0052】
以下、本環境測定装置について、図1、図3、図9、図10を参照しながら、より具体的に説明する。
本環境測定装置は、図1、図3及び図9に示すように、複数の圧電抵抗型カンチレバーセンサ1と、複数のホイートストンブリッジ回路4と、切替装置7と、電圧計8と、電圧源(ここでは直流電圧源)9と、制御演算部5とを備える。
【0053】
本実施形態では、複数の圧電抵抗型カンチレバーセンサ1、及び、これらの圧電抵抗型カンチレバーセンサ1のそれぞれに接続されている複数のホイートストンブリッジ回路4は、図1及び図9に示すように、一体的に形成されたセンサ素子6として構成される。
なお、複数のカンチレバーセンサ1をマルチ化したものを、マルチカンチレバーセンサという。また、第1カンチレバーセンサに接続されるホイートストンブリッジ回路を第1ホイートストンブリッジ回路といい、第2カンチレバーセンサに接続されるホイートストンブリッジ回路を第2ホイートストンブリッジ回路といい、第3カンチレバーセンサに接続されるホイートストンブリッジ回路を第3ホイートストンブリッジ回路といい、第4カンチレバーセンサに接続されるホイートストンブリッジ回路を第4ホイートストンブリッジ回路といい、第5カンチレバーセンサに接続されるホイートストンブリッジ回路を第5ホイートストンブリッジ回路という。
【0054】
ここでは、センサ素子6は、図9に示すように、一の圧電抵抗型カンチレバーセンサ1と、これに接続された一のホイートストンブリッジ回路4とを含む複数のセンサユニット10(図9中、破線で囲まれている部分参照)を備える。複数のセンサユニット10は、同一基板上に並列に形成されている。
各センサユニット10は、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1に備えられるカンチレバー2上に形成された圧電抵抗体3と、これに配線11によって接続された3つのブリッジ抵抗12とから構成されるホイートストンブリッジ回路4が同一基板上に形成された構成になっている。
【0055】
次に、このセンサ素子6の製造方法について、図10を参照しながら説明する。
まず、カンチレバー部分の作製プロセスについて説明する。
図10(A),(B)に示すように、Si基板13とSi層14との間にSiO層15を挟んだSOI(silicon on insulator)基板のSi層14を、例えばメカニカルな方法又はケミカルな方法によって薄くする。ここでは、Si基板13は、例えばp型Si(100)基板であって、抵抗率は約10〜約15Ω/□である。
【0056】
次に、図10(C)に示すように、薄くされたSi層14の表面上の圧電抵抗体3を形成する領域に例えばボロンをイオン注入した後、アニール処理を行なう。これにより、Si層14の表面上に圧電抵抗体3を形成する。
次いで、図10(D)に示すように、表面にSi層16を堆積させた後、圧電抵抗体3に接続される電極17を形成する領域のSi層16をエッチングして、コンタクトホール18を形成する。
【0057】
そして、カンチレバーの先端部となる領域をマスクした後、図10(E)に示すように、コンタクトホール18を含む領域に、例えばAlを蒸着して、電極17を形成する。
次に、図10(F)に示すように、表面全体及び基板裏面のカンチレバー2の支持部となる領域にマスク19を形成する。
次いで、図10(G)に示すように、Si基板13をその裏面側から例えばTMAH溶液やKOH溶液などでエッチングして、カンチレバー2の支持部となる部分以外のSi基板13を除去する。
【0058】
そして、図10(H)に示すように、先端などの不要部分をエッチングによって除去する。
このようにして、カンチレバー部分を作製する。
本実施形態では、このような方法で、複数のカンチレバー部分を同時に作製する。つまり、複数の圧電抵抗型カンチレバーセンサ1を同時に作製する。これにより、極めて高い精度で特性が揃った複数の圧電抵抗型カンチレバーセンサ1を作製することができる。このように、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1を用いることで、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術によって、同じ特性の複数のセンサ1を作製することができる。
【0059】
次に、カンチレバー部分以外の3つのブリッジ抵抗部分の作製プロセスについて説明する。
本実施形態では、カンチレバー部分以外の3つのブリッジ抵抗部分を、上述のカンチレバー2上の圧電抵抗体3の形成工程[図10(A)〜(E)参照]と同様の工程によって、上述のカンチレバー2上の圧電抵抗体3の形成と同時に形成する。そして、カンチレバー部分の圧電抵抗体3とブリッジ抵抗部分のブリッジ抵抗とが相互に接続されるように配線11を形成する。
【0060】
このようにして、図9に示すように、カンチレバー部分と、カンチレバー部分以外の3つのブリッジ抵抗部分とを備えるセンサ素子6が、同一基板上に形成される。つまり、一の圧電抵抗型カンチレバーセンサ1と、これに接続された一のホイートストンブリッジ回路4とを含む複数のセンサユニット10(図9中、破線で囲まれている部分参照)を備えるセンサ素子6が作製される。
【0061】
特に、カンチレバー部分に形成される圧電抵抗体3と、3つのブリッジ抵抗部分に形成される抵抗体とを、同一形状、同一特性とし、3つのブリッジ抵抗部分は撓まないようにすることで、R=R=R=R=Rとすることができ、ホイートストンブリッジ回路4のA−B間の電圧値を、カンチレバーセンサ1の圧電抵抗値に変換するのが容易となる(図3参照)。
【0062】
ところで、本実施形態では、図1に示すように、上述のように構成されるセンサ素子6は、切替装置7を介して、一つの電圧計8及び一つの電圧源9に接続されている。つまり、本実施形態では、切替装置7を用いることで、複数の圧電抵抗型カンチレバーセンサ1に接続される電圧計8及び電圧源9を共用している。
また、本実施形態では、切替装置7と電圧計8との間に、カンチレバーセンサ1で得られた信号を増幅する増幅器20が設けられている。このように、本実施形態では、切替装置7と電圧計8との間に増幅器20を設けることで、複数の圧電抵抗型カンチレバーセンサ1に接続される増幅器20を共用している。
【0063】
ここで、切替装置7は、センサ素子6に含まれる第1ホイートストンブリッジ回路4のA点に接続されるA1端子、第2ホイートストンブリッジ回路4のA点に接続されるA2端子、第3ホイートストンブリッジ回路4のA点に接続されるA3端子、第4ホイートストンブリッジ回路4のA点に接続されるA4端子、第5ホイートストンブリッジ回路4のA点に接続されるA5端子、増幅器20(ひいては電圧計8)の一の端子20Aに接続されるA6端子とを備える。また、A1端子、A2端子、A3端子、A4端子及びA5端子のいずれかと、A6端子とを接続する第1スイッチ21を備える。そして、第1スイッチ21は、後述の制御演算部5からの指令に基づいて切り替えられるようになっている。なお、ここでは、5つのセンサを用いるため、A1端子〜A5端子の5つの端子を備えるものとしているが、使用するセンサの数に応じて端子の数が決められることになる。
【0064】
一方、増幅器20(ひいては電圧計8)の他の端子20Bは、センサ素子6に含まれる第1ホイートストンブリッジ回路4のB点、第2ホイートストンブリッジ回路4のB点、第3ホイートストンブリッジ回路4のB点、第4ホイートストンブリッジ回路4のB点、第5ホイートストンブリッジ回路4のB点のそれぞれに、直接接続されている。
また、切替装置7は、センサ素子5に含まれる第1ホイートストンブリッジ回路4のC点に接続されるC1端子、第2ホイートストンブリッジ回路4のC点に接続されるC2端子、第3ホイートストンブリッジ回路4のC点に接続されるC3端子、第4ホイートストンブリッジ回路4のC点に接続されるC4端子、第5ホイートストンブリッジ回路4のC点に接続されるC5端子、電圧源9の一の端子9Aに接続されるC6端子とを備える。また、C1端子、C2端子、C3端子、C4及びC5端子のいずれかと、C6端子とを接続する第2スイッチ22を備える。そして、第2スイッチ22は、後述の制御演算部5からの指令に基づいて切り替えられるようになっている。なお、ここでは、5つのセンサ1を用いるため、C1端子〜C5端子の5つの端子を備えるものとしているが、使用するセンサの数に応じて端子の数が決められることになる。
【0065】
一方、電圧源の他の端子9Bは、センサ素子6に含まれる第1ホイートストンブリッジ回路4のD点、第2ホイートストンブリッジ回路4のD点、第3ホイートストンブリッジ回路4のD点、第4ホイートストンブリッジ回路4のD点、第5ホイートストンブリッジ回路4のD点のそれぞれに、直接接続されている。
このように、切替装置7は、電圧計8と複数の圧電抵抗型カンチレバーセンサ1のいずれか一の圧電抵抗型カンチレバーセンサ1とを接続し、かつ、電圧源9と一の圧電抵抗型カンチレバーセンサ1とを接続するようになっている。
【0066】
電圧計8は、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1の圧電抵抗値を検出又は測定するためのものである。ここでは、電圧計8は、切替装置7及び増幅器20を介して、センサ素子6に含まれるホイートストンブリッジ回路4のA点及びB点に接続されている。つまり、センサ素子6に含まれるカンチレバーセンサ1の圧電抵抗体3は、ホイートストンブリッジ回路4、切替装置7及び増幅器20を介して、電圧計8に接続されている。そして、電圧計8によって検出又は測定された電圧値は、後述の制御演算部5へ送られるようになっている。
【0067】
電圧源9は、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1に電圧を印加するためのものである。ここでは、電圧源9は、切替装置7を介して、センサ素子6に含まれるホイートストンブリッジ回路4のC点及びD点に接続されている。つまり、センサ素子6に含まれるカンチレバーセンサ1の圧電抵抗体3は、ホイートストンブリッジ回路4及び切替装置7を介して、電圧源9に接続されている。
【0068】
制御演算部5は、電圧計8、電圧源9及び切替装置7を制御するとともに、電圧計8によって検出又は測定された電圧値に基づいて周辺環境の特定ガスを検出又は測定するようになっている。制御演算部5は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)などのコンピュータである。なお、コンピュータは、記憶装置23や表示装置24等も備える。
本実施形態では、制御演算部5は、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1の印加電圧をon/offが繰り返されるように制御するようになっている。また、制御演算部5は、複数の圧電抵抗型カンチレバーセンサ1の印加電圧をonにする期間がずれるように制御するようになっている。
【0069】
また、制御演算部5は、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1の印加電圧をonにしている期間に、センサ素子6に含まれるホイートストンブリッジ回路4のA−B間の電圧値を検出又は測定するようになっている。そして、制御演算部5は、検出又は測定されたホイートストンブリッジ回路4のA−B間の電圧値に基づいて、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1の圧電抵抗値を求めるようになっている。また、制御演算部5は、求められた圧電抵抗型カンチレバーセンサ1の圧電抵抗値に基づいて、周辺環境の特定ガスの濃度値を求めるようになっている。
【0070】
本実施形態では、制御演算部5は、複数の圧電抵抗型カンチレバーセンサ1を用い、複数の圧電抵抗型カンチレバーセンサ1の印加電圧をonにする期間がずれるように制御する。このため、複数の圧電抵抗型カンチレバーセンサ1のそれぞれに接続されるホイートストンブリッジ回路4のA−B間の電圧値は、時間的にずれて検出又は測定されることになる。このため、連続的に変化する特定ガスの濃度が、時間間隔をおいて連続的に検出又は測定されることになる。
【0071】
このように、制御演算部5は、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1の印加電圧をonにしている期間に検出又は測定された圧電抵抗型カンチレバーセンサ1の圧電抵抗値に基づいて周辺環境の特定ガスを検出又は測定するようになっている。
具体的には、制御演算部5からの指令に基づいて切替装置7のスイッチ21を切り替えることで、電圧計8に接続される圧電抵抗型カンチレバーセンサ1及びホイートストンブリッジ回路4を順番に、かつ、連続的に切り替え、第1〜第5のホイートストンブリッジ回路4のA−B間の電圧値を順番に、かつ、連続的に検出又は測定するようになっている。また、第1〜第5のホイートストンブリッジ回路4のA−B間の電圧値のそれぞれに基づいて、特定ガスの濃度を検出又は測定するようになっている。そして、それぞれの圧電抵抗型カンチレバーセンサ1及びホイートストンブリッジ回路4によって検出又は測定された特定ガスの濃度を統合して、連続的に変化する特定ガスの濃度の変化を、時間間隔をおいて連続的に検出又は測定するようになっている。
【0072】
このように、制御演算部5からの指令に基づいて切替装置7を制御することで、予め設定した順番及び時間間隔で、動作させるセンサ1を自動的に切り替えることができるようになっている。また、順番に検出又は測定された第1〜第5のホイートストンブリッジ回路4のA−B間の電圧値、これに基づいて求められた圧電抵抗型カンチレバーセンサ1の圧電抵抗値、これに基づいて求められた周辺環境の特定ガスの濃度値は、記憶装置23に記憶されるようになっている。さらに、求められた周辺環境の特定ガスの濃度値は、グラフ化され、濃度変化がリアルタイムで表示装置24に表示されるようになっている。
【0073】
次に、上述のように構成される環境測定装置による測定プロセス(環境測定方法)について、図11〜図13を参照しながら説明する。
まず、第1カンチレバーセンサ1による周辺環境の特定ガスの濃度値の検出又は測定を行なう。
最初に、制御演算部5からの指令に基づいて、第1カンチレバーセンサ1の印加電圧をonにする(ステップS10)。
【0074】
具体的には、制御演算部5からの指令に基づいて、切替装置7の第1スイッチ21を切り替えて、電圧計8と第1カンチレバーセンサ1とを接続するとともに、第2スイッチ22を切り替えて、電圧源9と第1カンチレバーセンサ1とを接続する。これにより、電圧源9から供給される電圧が第1ホイートストンブリッジ回路4のC−D間(図3参照)に印加される。例えばカンチレバーセンサ1の大きさが約100×約200μmの場合(図3参照)、センサ印加電圧は約4〜約6V程度とするのが好ましい。また、カンチレバーセンサ1の印加電圧をonにする期間、即ち、センサ電圧印加時間Δtは約200msec程度とすれば良い。なお、電圧源9から供給される電圧は、制御演算部5からの指令に基づいて、例えば約2V〜約6Vの範囲で制御できるようになっている。このようにして、第1カンチレバーセンサ1の印加電圧をonにする。
【0075】
なお、センサ印加電圧及びセンサ電圧印加時間Δtは、熱の影響がセンサ1に大きく影響しない範囲に設定することになる。熱の影響は、センサ1の大きさ、形状、材料等、さらには、測定場所(設置箇所)の環境等によっても変化する。このため、これらの点を考慮してセンサ印加電圧及びセンサ電圧印加時間Δtを設定することになる。
次に、制御演算部5からの指令に基づいて、第1カンチレバーセンサ1の印加電圧をonにしている間に周辺環境の特定ガスの濃度値を検出又は測定する(ステップS20〜S40)。
【0076】
ここでは、まず、第1カンチレバーセンサ1の印加電圧をonにしている間に、制御演算部5からの指令に基づいて、電圧計8によって、第1カンチレバーセンサ1に接続された第1ホイートストンブリッジ回路4のA−B間(図3参照)の電圧値を検出又は測定する(ステップS20)。そして、検出又は測定された第1ホイートストンブリッジ回路4のA−B間の電圧値を記憶装置23に記憶させる(ステップS30)。
【0077】
なお、周辺環境の特定ガスの濃度値の検出又は測定は、カンチレバーセンサ1の印加電圧をonにしている間、即ち、センサ電圧印加時間Δt内に行なえば良いが、切替装置7のスイッチングによる過渡的な影響を回避するためには、センサ電圧印加時間Δtの中間点で検出又は測定を行なうのが好ましい。
次に、制御演算部5は、第1ホイートストンブリッジ回路4のA−B間(図3参照)の電圧値を記憶装置23から読み出し、これに基づいて、周辺環境の特定ガスの濃度値を求める(ステップS40)。そして、求められた周辺環境の特定ガスの濃度値を記憶装置23に記憶させる。
【0078】
具体的には、特定ガスの濃度値がわかっている環境下で、実際に測定対象となる特定ガスの濃度値を測定し、その場合のホイートストンブリッジ回路4のA−B間(図3参照)の電圧値を測定することによって、ホイートストンブリッジ回路4のA−B間(図3参照)の電圧値と測定対象となる特定ガスの濃度値とを対応づけたテーブル(又はマップ;検量線)を作成しておき、このテーブルを参照することで、ホイートストンブリッジ回路4のA−B間(図3参照)の電圧値から測定対象となる特定ガスの濃度値を求める。
【0079】
次に、このようにして第1カンチレバーセンサ1によって検出又は測定された周辺環境の特定ガスの濃度値を、例えば図12及び図13に示すように、表示装置24の画面上に表示させる(ステップS50)。
なお、図12は、切替装置7によって各カンチレバーセンサ1に切り替えて、各カンチレバーセンサ1によって周辺環境の特定ガスの濃度値を検出又は測定した場合の測定結果を示している。図12では、上から順に、第1カンチレバーセンサ1による測定結果、第2カンチレバーセンサによる測定結果、第3カンチレバーセンサ1による測定結果、第4カンチレバーセンサ1による測定結果、第5カンチレバーセンサ1による測定結果を示している。図12中、各プロットの番号は検出又は測定の順番を表している。そして、この順番に測定値をプロットすることによって、図13に示すような測定結果を得ることができる。なお、図12中の各プロットの番号と図13中の各プロットの番号とは対応している。
【0080】
次に、第2カンチレバーセンサ1による周辺環境の特定ガスの濃度値の検出又は測定を行なう。
このため、制御演算部5は、切替装置7の第1スイッチ21及び第2スイッチ22を切り替えるのに用いるフラグiを「2」に設定する(ステップS60)。ここで、フラグiに設定される値は、使用するカンチレバーセンサ1の順番に対応させている。ここでは、最初、フラグiは「1」に設定されており、順にインクリメントされることで、第1〜第5のカンチレバーセンサが順番に用いられるようになっている。なお、フラグiに設定される値はセンサの数によって決められる。
【0081】
次に、制御演算部5からの指令に基づいて、第2カンチレバーセンサ1の印加電圧をonにする(ステップS70)。
具体的には、制御演算部5からの指令に基づいて、切替装置7の第1スイッチ21を切り替えて、電圧計8と第2カンチレバーセンサ1とを接続するとともに、第2スイッチ22を切り替えて、電圧源9と第2カンチレバーセンサ1とを接続する。これにより、電圧源9から供給される電圧が第2ホイートストンブリッジ回路4のC−D間に印加される。このようにして、第2カンチレバーセンサ1の印加電圧をonにする。
【0082】
なお、このようにして第2スイッチ21を切り替えると、電圧源9と第1カンチレバーセンサ1とは接続されていない状態となる。つまり、第1カンチレバーセンサ1の印加電圧はoffになる。このように、第2カンチレバーセンサ1の印加電圧をonにすると、これと同時に、第1カンチレバーセンサ1の印加電圧がoffになる(図12参照)。
なお、カンチレバーセンサ1の印加電圧をoffにする期間、即ち、センサ冷却期間Δtは、カンチレバーセンサ1を十分に冷却しうる冷却時間が得られるように設定すれば良い。例えば、複数のカンチレバーセンサ1を用い、各カンチレバーセンサ1の印加電圧、電圧印加時間、冷却期間をいずれも同一にし、onタイミングを互いにずらして、一定の測定間隔で、周辺環境の特定ガスの濃度値を検出又は測定する場合、冷却期間に応じてカンチレバーセンサ1の数を決めれば良い。この場合、最低限必要な冷却期間を確保するために必要なカンチレバーセンサ1の数は最低限必要なカンチレバーセンサ1の数である。最低限必要な冷却期間よりも長い期間を冷却期間として設定する場合には、それに応じて、最低限必要なカンチレバーセンサ1の数よりも多い数のカンチレバーセンサ1を用いることになる。つまり、カンチレバーセンサ1の数によって冷却期間を変えることができる。また、例えば、各カンチレバーセンサ1の電圧印加時間を同一にし、onタイミングを互いにずらし、一定の測定間隔で、周辺環境の特定ガスの濃度値を検出又は測定する場合、カンチレバーセンサ1の数によって冷却時間が変わってくる。このため、検出又は測定に用いるカンチレバーセンサ1の数を多くすることで、各カンチレバーセンサ1の冷却期間を長くすることができる。また、例えば、測定間隔をできるだけ短くし、カンチレバーセンサ1の数を多くすることで、より詳細なガス濃度変化を検出又は測定することが可能となる。ここでは、一例としてカンチレバーセンサ1の数を5つにしている。急激なガス濃度の変化(濃度変化プロファイル)を検出又は測定するためには、4つ以上のカンチレバーセンサを用いるのが好ましい。
【0083】
次に、制御演算部5からの指令に基づいて、第2カンチレバーセンサ1の印加電圧をonにしている間に周辺環境の特定ガスの濃度値を検出又は測定する(ステップS80〜S100)。
ここでは、まず、第2カンチレバーセンサ1の印加電圧をonにしている間に、制御演算部5からの指令に基づいて、電圧計8によって、第2カンチレバーセンサ1に接続された第2ホイートストンブリッジ回路4のA−B間(図3参照)の電圧値を検出又は測定する(ステップS80)。そして、検出又は測定された第2ホイートストンブリッジ回路4のA−B間の電圧値を記憶装置23に記憶させる(ステップS90)。
【0084】
次いで、制御演算部5は、第2ホイートストンブリッジ回路4のA−B間(図3参照)の電圧値を記憶装置23から読み出し、これに基づいて、周辺環境の特定ガスの濃度値を求める(ステップS100)。そして、求められた周辺環境の特定ガスの濃度値を記憶装置23に記憶させる。
次に、このようにして第2カンチレバーセンサ1によって検出又は測定された周辺環境の特定ガスの濃度値を、例えば図12及び図13に示すように、表示装置24の画面上に表示させる(ステップS110)。
【0085】
そして、制御演算部5は、検出又は測定を開始してからの経過時間tが、設定時間Tよりも短いか否かを判定する(ステップS120)。
この結果、経過時間tが設定時間Tよりも短いと判定した場合は、制御演算部5は、フラグiをインクリメントする(ステップS130)。
次に、制御演算部5は、フラグiがN+1であるか否かを判定する(ステップS140)。ここで、Nは、使用するカンチレバーセンサ1の数である。ここでは、使用するカンチレバーセンサ1の数は5個であるため、Nは「5」に設定されている。このため、制御演算部5は、フラグiが6であるか否かを判定する。
【0086】
そして、経過時間tが設定時間Tよりも短くないと判定するか、又は、フラグiがN+1(ここでは6)であると判定するまでは、ステップS70へ戻り、上述と同様の処理を繰り返す。つまり、上述の第2カンチレバーセンサ1による周辺環境の特定ガスの濃度値の検出又は測定プロセスと同様の処理を繰り返して、第3〜第5カンチレバーセンサ1による周辺環境の特定ガスの濃度値の検出又は測定を行なう。
【0087】
具体的には、まず、ステップS130でフラグiが「3」に設定され、ステップS140でフラグiがN+1(ここでは6)でないと判定されて、ステップS70へ戻る。そして、上述と同様の処理によって、第3カンチレバーセンサ1による周辺環境の特定ガスの濃度値の検出又は測定を行なう。そして、第3カンチレバーセンサ1によって検出又は測定された周辺環境の特定ガスの濃度値を、例えば図12及び図13に示すように、表示装置24の画面上に表示させる。
【0088】
次に、ステップS130でフラグiが「4」に設定され、ステップS140でフラグiがN+1(ここでは6)でないと判定されて、ステップS70へ戻る。そして、上述と同様の処理によって、第4カンチレバーセンサ1による周辺環境の特定ガスの濃度値の検出又は測定を行なう。そして、第4カンチレバーセンサ1によって検出又は測定された周辺環境の特定ガスの濃度値を、例えば図12及び図13に示すように、表示装置24の画面上に表示させる。
【0089】
次に、ステップS130でフラグiが「5」に設定され、ステップS140でフラグiがN+1(ここでは6)でないと判定されて、ステップS70へ戻る。そして、上述と同様の処理によって、第5カンチレバーセンサ1による周辺環境の特定ガスの濃度値の検出又は測定を行なう。そして、第5カンチレバーセンサ1によって検出又は測定された周辺環境の特定ガスの濃度値を、例えば図12及び図13に示すように、表示装置24の画面上に表示させる。
【0090】
このようにして第3〜第5カンチレバーセンサ1による周辺環境の特定ガスの濃度値の検出又は測定を行なった後、ステップS130でフラグiが「6」に設定され、ステップS140でフラグiがN+1(ここでは6)であると判定され、ステップS150へ進む。そして、ステップS150でフラグiを「1」に設定した後、ステップS20へ戻り、上述と同様の処理を繰り返す。つまり、上述の第1〜第5カンチレバーセンサ1による周辺環境の特定ガスの濃度値の検出又は測定プロセスと同様の処理を繰り返して、第1〜第5カンチレバーセンサ1による周辺環境の特定ガスの濃度値の検出又は測定を行なう。そして、第1〜第5カンチレバーセンサ1によって検出又は測定された周辺環境の特定ガスの濃度値を、例えば図13に示すように、表示装置24の画面上に表示させる。
【0091】
そして、上述の処理を繰り返している間に、ステップS120で、経過時間tが設定時間Tよりも短くないと判定した場合に、測定を終了する。
なお、ここでは、センサ素子6の一側から他側へ向けて5つのカンチレバーセンサ1を順番にonにし、検出又は測定を行なうようにしているが、これに限られるものではなく、5つのカンチレバーセンサ1をonにする順番、即ち、検出又は測定する順番は、任意に設定することができる。例えば、5つのカンチレバーセンサ1をランダムにonにし、検出又は測定を行なうようにしても良い。
【0092】
また、ここでは、上述のようにして、周辺環境の特定ガスの濃度を定量的に表示するようにしているが、これに限られるものではなく、例えば、検量線のようなものを用いることなく、時間の経過とともに検出又は測定された電圧値をそのまま表示することで、周辺環境の特定ガスの濃度変化を相対的に表示するようにしても良い。
したがって、本実施形態にかかる環境測定装置及び環境測定方法によれば、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1を用いる場合に、周辺環境の気体や液体の検出又は測定の精度を向上させることができるという利点がある。
【0093】
特に、本実施形態では、複数の圧電抵抗型カンチレバーセンサ1を備え、印加電圧のon/offのタイミングをずらすようにしているため、周辺環境の気体又は液体の濃度が急激に変化した場合であっても対応することができ、このような場合にも測定精度を向上させることができるという利点がある。
なお、上述の環境測定装置は、一体型のものとして構成しても良いし、一部を別体のものとして構成しても良い。例えばセンサ素子6を別体にしても良い。
[第2実施形態]
第2実施形態にかかる環境測定装置及び環境測定方法について、図14を参照しながら説明する。
【0094】
本実施形態にかかる環境測定装置は、上述の第1実施形態のものに対し、各カンチレバーセンサ1に接続されるホイートストンブリッジ回路4を共用化している点が異なる。
つまり、上述の第1実施形態では、複数のカンチレバーセンサ1のそれぞれにホイートストンブリッジ回路4を接続し、複数のホイートストンブリッジ回路4を一つの切替装置7に接続している。これに対し、本実施形態では、図14に示すように、複数のカンチレバーセンサ1を一つの切替装置7Aに接続し、切替装置7Aを一つのホイートストンブリッジ回路4に接続している。このように、複数のカンチレバーセンサ1と一つのホイートストンブリッジ回路4との間に切替装置7Aを設けることで、ホイートストンブリッジ回路4を共用化している。このため、切替装置7Aと増幅器20との間に、ホイートストンブリッジ回路4を含むブリッジ回路部4Xを備える。なお、図14では、上述の第1実施形態と同一のものには同一の符号を付している。
【0095】
このため、センサ素子6Aは、上述の第1実施形態のものにおいて、ホイートストンブリッジ回路4を含まないもの、即ち、複数のカンチレバーセンサ1のみを含むものとして構成される。
切替装置7Aは、センサ素子6Aに含まれる第1カンチレバーセンサ1の一の端子1Aに接続される第1端子7aと、第2カンチレバーセンサ1の一の端子1Aに接続される第2端子7bと、第3カンチレバーセンサ1の一の端子1Aに接続される第3端子7cと、第4カンチレバーセンサ1の一の端子1Aに接続される第4端子7dと、第5カンチレバーセンサ1の一の端子1Aに接続される第5端子7eと、ホイートストンブリッジ回路4のA点に接続される第6端子7fとを備える。また、第1端子7a、第2端子7b、第3端子7c、第4端子7d及び第5端子7eのいずれかと、第6端子7fとを接続するスイッチ25を備える。そして、スイッチ25は、制御演算部5からの指令に基づいて切り替えられるようになっている。なお、ここでは、5つのセンサ1を用いるため、第1端子7a〜第5端子7eの5つの端子を備えるものとしているが、使用するセンサの数に応じて端子の数が決められることになる。
【0096】
また、ホイートストンブリッジ回路4のA点は、増幅器20(ひいては電圧計8)の一の端子20Aに接続されており、ホイートストンブリッジ回路4のB点は、増幅器20(ひいては電圧計8)の他の端子20Bに接続されている。
また、ホイートストンブリッジ回路4のD点は、電圧源9の一の端子9Aに接続されており、ホイートストンブリッジ回路4のC点は、電圧源の他の端子9Bに接続されている。
【0097】
さらに、電圧源9の他の端子9B、及び、ホイートストンブリッジ回路4のC点は、センサ素子6Aに含まれる第1〜第5カンチレバーセンサ1の他の端子1Bのそれぞれに接続されている。
このように、センサ素子6Aに含まれる各カンチレバーセンサ1の圧電抵抗体3は、切替装置7A、ホイートストンブリッジ回路4及び増幅器20を介して、電圧計8に接続されている。また、センサ素子6Aに含まれる各カンチレバーセンサ1の圧電抵抗体3、及び、ホイートストンブリッジ回路4には、電圧源9が接続されている。そして、制御演算部5からの指令に基づいて、切替装置7Aのスイッチ25を切り替える制御を行なうことで、センサの印加電圧をon/offすることになる。
【0098】
なお、その他の詳細は、上述の第1実施形態の場合と同様であるため、ここでは説明を省略する。
したがって、本実施形態にかかる環境測定装置及び環境測定方法によれば、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1を用いる場合に、周辺環境の気体や液体の検出又は測定の精度を向上させることができるという利点がある。
【0099】
特に、本実施形態では、複数の圧電抵抗型カンチレバーセンサ1を備え、印加電圧のon/offのタイミングをずらすようにしているため、周辺環境の気体又は液体の濃度が急激に変化した場合であっても対応することができ、このような場合にも測定精度を向上させることができるという利点がある。
なお、上述の環境測定装置は、一体型のものとして構成しても良いし、一部を別体のものとして構成しても良い。例えばセンサ素子6Aを別体にしても良い。
[第3実施形態]
第3実施形態にかかる環境測定装置及び環境測定方法について、図15を参照しながら説明する。
【0100】
本実施形態にかかる環境測定装置は、上述の第1実施形態のものが増幅器20を共用化しているのに対し、センサ1毎に増幅器20を設けている点が異なる。
つまり、上述の第1実施形態では、切替装置7と電圧計8との間に増幅器20を設けることで、増幅器20を共用化している。これに対し、本実施形態では、図15に示すように、複数のカンチレバーセンサ1及びホイートストンブリッジ回路4のそれぞれに対して別個独立に増幅器20を設けている。この場合、複数の増幅器20を含む増幅部20Xを備えるものとなる。ここでは、5つのセンサ1を用いるため、5つの増幅器(第1〜第5増幅器)20を備えるものとなる。
【0101】
そして、センサ素子6に含まれる第1ホイートストンブリッジ回路4のA点は、第1増幅器20の一の入力端子20Aに接続され、第1ホイートストンブリッジ回路4のB点は、第1増幅器20の他の入力端子20Bに接続される。また、センサ素子6に含まれる第2ホイートストンブリッジ回路4のA点は、第2増幅器20の一の入力端子20Aに接続され、第2ホイートストンブリッジ回路4のB点は、第2増幅器20の他の入力端子20Bに接続される。また、センサ素子6に含まれる第3ホイートストンブリッジ回路4のA点は、第3増幅器20の一の入力端子20Aに接続され、第3ホイートストンブリッジ回路4のB点は、第3増幅器20の他の入力端子20Bに接続される。また、センサ素子6に含まれる第4ホイートストンブリッジ回路4のA点は、第4増幅器20の一の入力端子20Aに接続され、第4ホイートストンブリッジ回路4のB点は、第4増幅器20の他の入力端子20Bに接続される。また、センサ素子6に含まれる第5ホイートストンブリッジ回路4のA点は、第5増幅器20の一の入力端子20Aに接続され、第5ホイートストンブリッジ回路4のB点は、第5増幅器20の他の入力端子20Bに接続される。
【0102】
また、第1増幅器20の出力端子20Cは、切替装置7のA1端子に接続される。また、第2増幅器20の出力端子20Cは、切替装置7のA2端子に接続される。また、第3増幅器20の出力端子20Cは、切替装置7のA3端子に接続される。また、第4増幅器20の出力端子20Cは、切替装置7のA4端子に接続される。また、第5増幅器20の出力端子20Cは、切替装置7のA5端子に接続される。
【0103】
なお、その他の詳細は、上述の第1実施形態の場合と同様であるため、ここでは説明を省略する。
したがって、本実施形態にかかる環境測定装置及び環境測定方法によれば、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1を用いる場合に、周辺環境の気体や液体の検出又は測定の精度を向上させることができるという利点がある。
【0104】
特に、本実施形態では、複数の圧電抵抗型カンチレバーセンサ1を備え、印加電圧のon/offのタイミングをずらすようにしているため、周辺環境の気体又は液体の濃度が急激に変化した場合であっても対応することができ、このような場合にも測定精度を向上させることができるという利点がある。
なお、上述の環境測定装置は、一体型のものとして構成しても良いし、一部を別体のものとして構成しても良い。例えばセンサ素子6及び増幅部20Xを別体にしても良い。
[第4実施形態]
第4実施形態にかかる環境測定装置及び環境測定方法について、図16、図17を参照しながら説明する。
【0105】
本実施形態にかかる環境測定装置は、上述の第1実施形態のものに対し、切替装置7を設けずに、センサ1毎に増幅器20、電圧計8及び電圧源9を設けている点が異なる。
つまり、上述の第1実施形態では、切替装置7を設け、増幅器20、電圧計8及び電圧源9を共用化している。これに対し、本実施形態では、図16に示すように、複数のカンチレバーセンサ1及びホイートストンブリッジ回路4のそれぞれに対して、別個独立に、増幅器20、電圧計8及び電圧源9を設けている。この場合、複数の増幅器20、複数の電圧計8、及び、複数の電圧源9を備える。つまり、増幅器20、電圧計8及び電圧源9を備える複数のユニット26を備える。ここでは、5つのセンサ1を用いるため、5つの増幅器20(第1〜第5増幅器)、5つの電圧計8(第1〜第5電圧計)、及び、5つの電圧源9(第1〜第5電圧源;ここでは直流電圧源)を備える。つまり、5つのユニット26を備える。
【0106】
そして、センサ素子6に含まれる第1ホイートストンブリッジ回路4のA点は、第1増幅器20の一の入力端子20Aに接続され、第1ホイートストンブリッジ回路4のB点は、第1増幅器20の他の入力端子20Bに接続される。また、センサ素子6に含まれる第2ホイートストンブリッジ回路4のA点は、第2増幅器20の一の入力端子20Aに接続され、第2ホイートストンブリッジ回路4のB点は、第2増幅器20の他の入力端子20Bに接続される。また、センサ素子6に含まれる第3ホイートストンブリッジ回路4のA点は、第3増幅器20の一の入力端子20Aに接続され、第3ホイートストンブリッジ回路4のB点は、第3増幅器20の他の入力端子20Bに接続される。また、センサ素子6に含まれる第4ホイートストンブリッジ回路4のA点は、第4増幅器20の一の入力端子20Aに接続され、第4ホイートストンブリッジ回路4のB点は、第4増幅器20の他の入力端子20Bに接続される。また、センサ素子6に含まれる第5ホイートストンブリッジ回路4のA点は、第5増幅器20の一の入力端子20Aに接続され、第5ホイートストンブリッジ回路4のB点は、第5増幅器20の他の入力端子20Bに接続される。
【0107】
また、第1増幅器20の出力端子20Cは、第1電圧計8に接続される。また、第2増幅器20の出力端子20Cは、第2電圧計8に接続される。また、第3増幅器20の出力端子20Cは、第3電圧計8に接続される。また、第4増幅器20の出力端子20Cは、第4電圧計8に接続される。また、第5増幅器20の出力端子20Cは、第5電圧計8に接続される。
【0108】
また、センサ素子6に含まれる第1ホイートストンブリッジ回路4のC点は、第1電圧源9の一の端子9Aに接続され、第1ホイートストンブリッジ回路4のD点は、第1電圧源9の他の端子9Bに接続される。また、センサ素子6に含まれる第2ホイートストンブリッジ回路4のC点は、第2電圧源9の一の端子9Aに接続され、第2ホイートストンブリッジ回路4のD点は、第2電圧源9の他の端子9Bに接続される。また、センサ素子6に含まれる第3ホイートストンブリッジ回路4のC点は、第3電圧源9の一の端子9Aに接続され、第3ホイートストンブリッジ回路4のD点は、第3電圧源9の他の端子9Bに接続される。また、センサ素子6に含まれる第4ホイートストンブリッジ回路4のC点は、第4電圧源9の一の端子9Aに接続され、第4ホイートストンブリッジ回路4のD点は、第4電圧源9の他の端子9Bに接続される。また、センサ素子6に含まれる第5ホイートストンブリッジ回路4のC点は、第5電圧源9の一の端子9Aに接続され、第5ホイートストンブリッジ回路4のD点は、第5電圧源9の他の端子9Bに接続される。
【0109】
そして、制御演算部5は、各電圧計8及び各電圧源9を制御するとともに、各電圧計8によって検出又は測定された電圧値に基づいて周辺環境の特定ガスを検出又は測定するようになっている。なお、本実施形態では、上述の第1実施形態の切替装置7を備えていない。このため、上述の第1実施形態のように制御演算部5からの指令に基づいて切替装置7の第2スイッチ22を切り替える制御を行なうことで、センサの印加電圧をon/offするのに代えて、制御演算部5からの指令に基づいて各電圧源9をon/offする制御を行なうことで、センサの印加電圧をon/offすることになる。
【0110】
なお、その他の詳細は、上述の第1実施形態の場合と同様であるため、ここでは説明を省略する。
したがって、本実施形態にかかる環境測定装置及び環境測定方法によれば、圧電抵抗型カンチレバーセンサ1を用いる場合に、周辺環境の気体や液体の検出又は測定の精度を向上させることができるという利点がある。
【0111】
特に、本実施形態では、複数の圧電抵抗型カンチレバーセンサ1を備え、印加電圧のon/offのタイミングをずらすようにしているため、周辺環境の気体又は液体の濃度が急激に変化した場合であっても対応することができ、このような場合にも測定精度を向上させることができるという利点がある。
なお、上述の実施形態では、環境測定装置による測定プロセス(環境測定方法)において、上述の第1実施形態の場合と同様に、次の検出又は測定に用いるカンチレバーセンサ1をonにすると同時に、前の検出又は測定に用いていたカンチレバーセンサ1をoffにするようにしているが、これに限られるものではない。例えば、図17に示すように、ステップS70の後に、ステップS75を挿入して、次の検出又は測定に用いられるカンチレバーセンサ1をonにした後に、前の検出又は測定に用いていたカンチレバーセンサ1をoffにするようにしても良い。このように、前の検出又は測定に用いていたカンチレバーセンサ1のoffタイミングと次の検出又は測定に用いるカンチレバーセンサ1のonタイミングとは、同時でなく、ずらされていても良い。この場合、図18に示すように、各カンチレバーセンサ1の印加電圧をonにしている期間は重なり合うことになる。これにより、測定間隔をより短くすることができ、特定ガスの濃度変化をより精度良く測定することが可能となる。
【0112】
なお、上述の環境測定装置は、一体型のものとして構成しても良いし、一部を別体のものとして構成しても良い。例えばセンサ素子6を別体にしても良い。
[その他]
なお、本発明は、上述した実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【符号の説明】
【0113】
1 圧電抵抗型カンチレバーセンサ
1A 一の端子
1B 他の端子
2 カンチレバー
3 圧電抵抗体
4 ホイートストンブリッジ回路(ブリッジ回路)
4X ブリッジ回路部
5 制御演算部
6,6A センサ素子
7,7A 切替装置
7a〜7f 第1〜第6端子
8 電圧計
9 電圧源
9A 一の端子
9B 他の端子
10 センサユニット
11 配線
12 ブリッジ抵抗
13 Si基板
14 Si層
15 SiO
16 Si
17 電極
18 コンタクトホール
19 マスク
20 増幅器
20A 一の端子(入力端子)
20B 他の端子(入力端子)
20C 出力端子
21 第1スイッチ
22 第2スイッチ
23 記憶装置
24 表示装置
25 スイッチ
26 ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電抵抗型カンチレバーセンサと、
前記圧電抵抗型カンチレバーセンサの印加電圧をon/offが繰り返されるように制御し、前記圧電抵抗型カンチレバーセンサの印加電圧をonにしている期間に検出又は測定された前記圧電抵抗型カンチレバーセンサの圧電抵抗値に基づいて周辺環境の気体又は液体を検出又は測定する制御演算部とを備えることを特徴とする環境測定装置。
【請求項2】
前記圧電抵抗型カンチレバーセンサとして、複数の圧電抵抗型カンチレバーセンサを備え、
前記制御演算部は、前記複数の圧電抵抗型カンチレバーセンサの印加電圧をonにする期間がずれるように制御することを特徴とする、請求項1に記載の環境測定装置。
【請求項3】
前記複数の圧電抵抗型カンチレバーセンサのそれぞれに接続された複数のブリッジ回路と、
前記圧電抵抗型カンチレバーセンサの圧電抵抗値を検出するための電圧計と、
前記圧電抵抗型カンチレバーセンサに電圧を印加するための電圧源と、
前記電圧計と前記複数の圧電抵抗型カンチレバーセンサのいずれか一の圧電抵抗型カンチレバーセンサとを接続し、かつ、前記電圧源と前記一の圧電抵抗型カンチレバーセンサとを接続するための切替装置とを備え、
前記制御演算部は、前記電圧計、前記電圧源及び前記切替装置を制御することを特徴とする、請求項2に記載の環境測定装置。
【請求項4】
前記圧電抵抗型カンチレバーセンサの圧電抵抗値を検出するための電圧計と、
前記圧電抵抗型カンチレバーセンサに電圧を印加するための電圧源と、
前記電圧計と前記複数の圧電抵抗型カンチレバーセンサのいずれか一の圧電抵抗型カンチレバーセンサとを接続するための切替装置と、
前記電圧計と前記切替装置との間に接続されたブリッジ回路とを備え、
前記制御演算部は、前記電圧計、前記電圧源及び前記切替装置を制御することを特徴とする、請求項2に記載の環境測定装置。
【請求項5】
前記複数の圧電抵抗型カンチレバーセンサのそれぞれに接続された複数のブリッジ回路と、
前記複数のブリッジ回路のそれぞれに接続され、前記圧電抵抗型カンチレバーセンサの圧電抵抗値を検出するための複数の電圧計と、
前記複数のブリッジ回路のそれぞれに接続され、前記圧電抵抗型カンチレバーセンサに電圧を印加するための複数の電圧源とを備え、
前記制御演算部は、前記電圧計及び前記電圧源を制御することを特徴とする、請求項2に記載の環境測定装置。
【請求項6】
圧電抵抗型カンチレバーセンサの印加電圧をon/offが繰り返されるように制御し、
前記圧電抵抗型カンチレバーセンサの印加電圧をonにしている期間に検出又は測定された前記圧電抵抗型カンチレバーセンサの圧電抵抗値に基づいて周辺環境の気体又は液体を検出又は測定することを特徴とする環境測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−257185(P2011−257185A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130143(P2010−130143)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)