説明

環境測定装置

【課題】設置場所による測定精度の低下を抑制することができる環境測定装置を提供する。
【解決手段】環境における所定の物理量を検出する環境センサを含む基板60と、基板60の上面側に第1空間S1を形成するとともに基板60の下面側に第2空間S2を形成するように、基板60を内部に収容する筐体50と、を備え、筐体50は、外部と第1空間S1とを連通する通気孔11と、外部と第2空間S2とを連通する貫通孔31および通気溝32と、第1空間S1と第2空間S2とを連通する連通路24と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係るいくつかの態様は、環境における物理量を測定する環境測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の機器として、壁面に取り付けた状態におけるハウジングの上端部に温度センサを収納するセンサ収納部を備えるセンサ内蔵機器において、ハウジングの背面上部にフックに引っ掛けられるフック用凹部を形成し、この凹部の上端を連通孔によってセンサ収納部の下端に連通させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このセンサ内蔵機器では、壁面に沿って上昇する空気が凹部において分流し、その一部が連通孔を通ってセンサ収納部内に流入するため、温度センサは流入した空気の温度を検出することができる。
【0003】
また、特許文献1に記載された壁面固定型の環境測定装置以外に、可搬型や携帯型などの環境測定装置も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−23565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の環境測定装置では、センサ収納部が設置場所を変更し得る使用形態に対応して設計されていない、という問題があった。すなわち、例えば、特許文献1のセンサ内蔵機器のような壁面固定型の環境測定装置では、主に壁面に沿う気流が流入するように凹部を形成しているので、壁面だけではなく、例えば、オフィス、室内のデスク上、オフィス家具、天井、ダクト、屋外、または、人体に付着させるなどの多様な場所に設置する場合に、測定環境の気体を十分にセンサ収容部の内部に流入させることができず、測定精度が低下するおそれがあった。
【0006】
本実施形態のいくつかの態様は前述の問題に鑑みてなされたものであり、設置場所による測定精度の低下を抑制することができる環境測定装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る環境測定装置は、環境における所定の物理量を検出する環境センサを含む基板と、基板の一方の面側に第1の空間を形成するとともに基板の他方の面側に第2の空間を形成するように、基板を内部に収容する筐体と、を備え、筐体は、外部と第1の空間とを連通する第1の通気孔と、外部と第2の空間とを連通する第2の通気孔と、第1の空間と前記第2の空間とを連通する連通路と、を有する。
【0008】
かかる構成によれば、筐体が、外部と第1の空間とを連通する第1の通気孔と、外部と第2の空間とを連通する第2の通気孔と、第1の空間と第2の空間とを連通する連通路と、を有する。これにより、筐体の内部において、基板の一方の面側から基板の他方の面側へ、または、基板の他方の面側から基板の一方の面側への両方向に、気体を流通させることが可能となるので、従来の環境測定装置のように特定方向の気流だけではなく、あらゆる方向の気流を筐体の内部に取り込み(導き入れ)やすくなる。
【0009】
好ましくは、第1の通気孔と第2の通気孔とは、圧力損失が同一または略同一となるように、形成される。
【0010】
かかる構成によれば、第1の通気孔と第2の通気孔とは、圧力損失が同一または略同一となるように、形成される。これにより、筐体の入口および出口における圧力損失が同一または略同一となるから、筐体の内部において、気体の流れが妨げられず(遮られず)に流通しやすくなる。これにより、従来の環境測定装置と比較して、筐体の内部をさらに外部の測定環境に近づけることができ、設置場所による測定精度の低下をさらに抑制することができる。
【0011】
好ましくは、第1の通気孔は、所定の間隔で配置された複数の孔を含み、所定の間隔は、複数の孔の孔径に基づいて設定される。
【0012】
かかる構成によれば、複数の孔の所定の間隔が、複数の孔の孔径に基づいて設定される。ここで、複数の孔の孔径に対して、複数の孔の間隔が所定倍、例えば0倍より大きく2.5倍以下である場合に、圧力損失を低く範囲に保つ(維持する)ことができることが分かっている。よって、複数の孔の孔径に基づいて、複数の孔の所定の間隔を設定することにより、従来の環境測定装置と比較して、第1の通気孔の圧力損失を低下させることが可能となる。これにより、筐体の内部に気体を流入させ、または、筐体の内部から気体を流出させやすくなり、設置場所による測定精度の低下をさらに抑制することができる。
【0013】
好ましくは、筐体は、第1の通気孔を有する第1の部材と、連通路を有する第2の部材と、第2の通気孔を有する第3の部材と、を含む。
【0014】
かかる構成によれば、筐体が、第1の通気孔を有する第1の部材と、連通路を有する第2の部材と、第2の通気孔を有する第3の部材と、を含む。これにより、例えば、基板を収容した第2の部材の上に第1の部材を設置することで、第1の空間を形成することができ、第2の部材の下に第3の部材を設置することで、第2の空間を形成することができる。これにより、設置場所による測定精度の低下を抑制することのできる環境測定装置を、容易に構成(実現)することができる。
【0015】
好ましくは、筐体は、第1の通気孔と連通路とを有する一の部材と、第2の通気孔を有する他の部材と、を含む。
【0016】
かかる構成によれば、筐体が、第1の通気孔と連通路とを有する一の部材と、第2の通気孔を有する他の部材と、を含む。これにより、例えば、一の部材に、第1の空間を形成するように基板を収容した上で、一の部材の下に、他の部材を設置することで、第2の空間を形成することができる。これにより、設置場所による測定精度の低下を抑制することのできる環境測定装置を、容易に構成(実現)することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の環境測定装置によれば、筐体の内部において、基板の一方の面側から基板の他方の面側へ、または、基板の他方の面側から基板の一方の面側への両方向に、気体を流通させることが可能となるので、従来の環境測定装置のように特定方向の気流だけではなく、あらゆる方向の気流を筐体の内部に取り込み(導き入れ)やすくなる。これにより、従来の環境測定装置と比較して、筐体の内部を外部の測定環境に近づけることができ、設置場所による測定精度の低下を抑制することができる。また、本実施形態の環境測定装置は、固定電源を備える機器のみならず、移動電源またはバッテリー(二次電池)から電力が供給される機器、例えば、太陽発電、温度差発電、振動発電、バイオ発電、気流または風力発電、水力発電、波力発電、回転発電などの微弱エネルギーを用いて自立発電するエネルギーハーベスト(環境発電)機器、もしくは、携帯型燃料電池を備える機器、特に、携帯型または可搬型の有線または無線通信を行う機器に、好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態における環境測定装置の一例を説明する斜視図である。
【図2】図1に示した環境測定装置の分解斜視図である。
【図3】図1に示した環境測定装置の上面図である。
【図4】図3に示したII−II線矢視方向断面図である。
【図5】図3に示したIII−III線矢視方向断面図である。
【図6】図1に示した環境測定装置の他の例を説明する上面図である。
【図7】図6に示したV−V線矢視方向断面図である。
【図8】図6に示したVI−VI線矢視方向断面図である。
【図9】図6に示した環境測定装置の変形例を説明する上面図である。
【図10】図9に示したVII−VII線矢視方向断面図である。
【図11】図9に示したVIII−VIII線矢視方向断面図である。
【図12】図1に示した環境測定装置における気体の流れを説明する断面図である。
【図13】図1に示した環境測定装置における気体の流れを説明する断面図である。
【図14】通気孔の孔径と圧力損失との関係を示すグラフである。
【図15】流速と圧力損失との関係を示すグラフである。
【図16】通気孔の配置間隔と圧力損失との関係を示すグラフである。
【図17】所定の設定における流速と圧力損失との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。なお、以下の説明において、図面の上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」という。
【0020】
図1ないし図17は、本発明に係る環境測定装置の一実施形態を示すためのものである。本実施形態では、環境における所定の物理量を検出する環境センサの一例として、測定環境の雰囲気(大気)における温度および湿度のうちの少なくとも一方を検出する温湿度センサを用いて説明する。
【0021】
図1は本実施形態における環境測定装置100の一例を説明する斜視図であり、図2は図1に示した環境測定装置100の分解斜視図である。環境測定装置100は測定対象となる環境に配置され、雰囲気(大気)における温度または湿度を測定するためのものである。図1および図2に示すように、環境測定装置100は、円柱形または略円柱形の筐体(ケース)50を備え、筐体50は、例えば、第1部材10と第2部材20と第3部材30とを含んで構成される。
【0022】
第1部材10は、円板形状を有しており、第2部材20の上に設置される。第1部材10の上面には、複数の通気孔11と、4つのねじ孔12とが形成される。
【0023】
第2部材20は、上面から下面まで貫通する開口部21が形成され、円筒形状を有している。
第2部材20の上面には、4つのねじ孔22が形成される。
【0024】
第3部材30は、円板形状を有しており、第2部材20の下に設置される。また、第3部材30は、上面から下面まで貫通する貫通孔31が形成され、第3部材30の側面には、貫通孔31に通じる複数の通気溝32が形成される。なお、本実施形態における貫通孔31および通気溝32は、本発明における「第2の通気孔」の一例に相当する。
【0025】
本実施形態では、筐体50として3つの部材10、20、30を含む例を示したが、これに限定されない。例えば、筐体50は、第1部材10と第2部材20とを一体に形成した一の部材と、第3部材30(他の部材)との2つの部材を含むようにしてもよい。これにより、例えば、一の部材に、後述する第1空間S1を形成するように基板60を収容した上で、当該一の部材の下に、他の部材を設置することで、後述する第2空間S2を形成することができる。
【0026】
また、筐体50、およびこれを構成する部材の平面形状は、円形または略円形の場合に限定されず、他の形状、例えば、矩形、楕円形、または多角形であってもよい。
【0027】
図3は図1に示した環境測定装置100の上面図であり、図4は図3に示したII−II線矢視方向断面図であり、図5は図3に示したIII−III線矢視方向断面図である。なお、図3において、破線は第2部材20および基板60を示し、細破線は第3部材30を示す。図3に示すように、平面視において、各第1通気孔11は、例えば円形状を有しており、第1部材10の上面の中央部付近に所定の距離をおいて等間隔に配置される。図4および図5に示すように、第2部材20の内部には、前述した温湿度センサを含む基板60が収容される。より具体的には、基板60の下面が第3部材30の上面の上に設置され、支持されるとともに、第2部材20の内面の上部に形成された3つの係止部23によって基板60の上面が係止される。これにより、基板60が筐体50の内部に固定される。
【0028】
なお、基板60に、温湿度センサ(図示省略)の他に、例えば、インターフェース回路や電源供給部などを設けるようにしてもよい。
【0029】
図5に示すように、第1部材10を第2部材20の上に設置したときに、第1部材10の各ねじ孔12が第2部材20の各ねじ孔22に対応するように、配置される。ねじ孔12およびねじ孔22には、ねじ(図示省略)が螺合される。これにより、第1部材10を第2部材20に固定することができる。
【0030】
図5に示すように、第3部材30の下面(底面)に、4つの固定用孔33が形成され、例えば、磁石や接着部材などが設置される。これにより、環境測定装置100を所望場所に固定することが可能となる。これにより、位置、向き、角度、高さなどの設置条件によらずに容易に設置することができる。
【0031】
本実施形態では、第3部材30の下面(底面)に4つの固定用孔33を形成する例を示したが、これに限定されない。例えば、1つ、2つ、3つ、または5つ以上の固定用孔33を形成するようにしてもよい。
【0032】
図4および図5に示すように、第1部材10を第2部材20の上に設置したときに、第1部材10の下面と基板60の上面との間に第1空間S1が形成される。第1部材10の各通気孔11は、第1空間S1に通じており、環境測定装置100の外部と第1空間S1とを連通する。
【0033】
図4に示すように、第3部材30を第2部材20の下に設置したときに、貫通孔31と貫通孔31に延びて形成された各通気溝32とによって、第3部材30の上面と基板60の下面との間に第2空間S2が形成される。第3部材30の貫通孔31および各通気溝32は、第2空間S2に通じており、環境測定装置100の外部と第2空間S2とを連通する。
【0034】
図3ないし図5に示すように、第2部材20の内部には、収容した基板60の外周を取り囲むように連通路24が形成される。流路24は、3つの係止部23以外の部分において、基板60の上面側の第1空間S1と基板60の下面側の第2空間S2とを連通する。このように、筐体50が、通気孔11を有する第1部材10と、連通路24を有する第2部材20と、貫通孔31および通気溝32を有する第3部材30と、を含むことにより、例えば、基板60を収容した第2部材20の上に第1部材10を設置することで、第1空間S1を形成することができ、第2部材20の下に第3部材30を設置することで、第2空間S2を形成することができる。
【0035】
本実施形態では、通気孔11として、第1部材10の上面に円形の通気孔11を形成する例を示したが、これに限定されない。環境測定装置100の外部と第1空間S1とを連通するものであればよく、第1部材10の側面に設けるようにしてもよいし、円形以外の形状であってもよい。
【0036】
図6は図1に示した環境測定装置100の他の例を説明する上面図であり、図7は図6に示したV−V線矢視方向断面図であり、図8は図6に示したVI−VI線矢視方向断面図である。図6に示すように、平面視において、各通気孔11は、例えば長方形状または略長方形状を有するスリットであり、第1部材10の上面に上下対称に所定の距離をおいて等間隔に配置されるようにしてもよい。図7および図8に示すように、この場合であっても、図4および図5に示す場合と同様に、第1部材10を第2部材20の上に設置したときに、第1部材10の下面と基板60の上面との間に第1空間S1が形成される。また、第1部材10の各通気孔11は、第1空間S1に通じており、環境測定装置100の外部と第1空間S1とを連通する。
【0037】
図9は図6に示した環境測定装置100の変形例を説明する上面図であり、図10は図9に示したVII−VII線矢視方向断面図であり、図11は図9に示したVIII−VIII線矢視方向断面図である。図9に示すように、平面視において、各通気孔11は、例えば長方形状または略長方形状を有するスリットであり、第1部材10の上面の中心部に関して放射状に等角度(等間隔)に配置されるようにしてもよい。図10および図11に示すように、この場合であっても、図4および図5に示す場合と同様に、第1部材10を第2部材20の上に設置したときに、第1部材10の下面と基板60の上面との間に第1空間S1が形成される。また、第1部材10の各通気孔11は、第1空間S1に通じており、環境測定装置100の外部と第1空間S1とを連通する。
【0038】
図12および図13は、図1に示した環境測定装置100における気体の流れを説明する断面図である。なお、図12および図13は、図3に示したIV−IV線矢視方向断面図に相当する。図12に示すように、測定環境において、環境測定装置100の上方から下方に向かう方向に気体が流れている場合、図中に矢印で示すように、当該気体は、第1部材10の通気孔11から基板60の上面側、すなわち、第1空間S1に流入する。第1空間S1に流入した気体は、基板60の外周に配置された連通路24を通って基板60の下面側、すなわち、第2空間S2に流入する。第1空間S1に流入した気体は、第3部材30の貫通孔31および通気溝32の少なくとも一方から外部に流出する。
【0039】
一方、図13に示すように、測定環境において、環境測定装置100の下方から上方に向かう方向に気体が流れている場合、図中に矢印で示すように、当該気体は、第3部材30の貫通孔31および通気溝32の少なくとも一方から基板60の下面側、すなわち、第2空間S2に流入する。第2空間S2に流入した気体は、基板60の外周に配置された連通路24を通って基板60の上面側、すなわち、第1空間S1に流入する。第1空間S1に流入した気体は、第1部材10の通気孔11から外部に流出する。このように、筐体50が、外部と第1空間S1とを連通する通気孔11と、外部と第2空間S2とを連通する貫通孔31および通気溝32と、第1空間S1と第2空間S2とを連通する連通路24と、を有することにより、筐体50の内部において、図12に示すように、基板60の上面側から基板60の下面側へ、または、図13に示すように、基板60の下面側から基板60の上面側への両方向に、気体を流通させることが可能となるので、従来の環境測定装置のように特定方向の気流だけではなく、あらゆる方向の気流を筐体50の内部に取り込み(導き入れ)やすくなる。
【0040】
なお、基板60に搭載された温湿度センサに、筐体50の外部と同様の測定環境を与える(提供する)ためには、筐体50の外部の気体(外気)をそのままの状態で筐体50の内部に取り込む(導き入れる)ことが望ましい。この目的を達成する一つの手段(方法)として、本発明では、筐体50の入口と出口とにおける圧力損失に着目した。
【0041】
具体的には、通気孔11と貫通孔31および通気溝32との圧力損失は、同一または略同一であることが好ましい。これにより、筐体50の入口(図12における通気孔11、図13における貫通孔31および通気溝32)および出口(図12における貫通孔31および通気溝32、図13における通気孔11)における圧力損失が同一または略同一となるから、筐体50の内部において、気体の流れが妨げられず(遮られず)に流通しやすくなる。
【0042】
ここで、測定環境において自然対流が発生していると想定し、通気孔11、貫通孔31、および、通気溝32の各孔をそれぞれ1つの管路(管)とし、管内の流れが層流である場合を考える。この場合、管壁でのせん断力τと管の入口および出口の圧力差、すなわち圧力損失ΔPとのつりあいは、以下の式(1)で表される。
ΔPπr02=2πr0τL …(1)
但し、r0は管の半径、Lは管の長さを示す。
【0043】
また、管壁でのせん断力τは以下の式(2)で表される。
【数1】

但し、μは流体の粘性係数(動粘性係数)、uは管内の流速(流体の速度)、rは管の中心軸からの距離を示す。
【0044】
式(1)において、管の半径r0を管の中心軸からの距離rに代えても成り立つから、これを式(2)に代入して整理すると、以下の式(3)が得られる。
【数2】

【0045】
式(3)を積分すると、以下の式(4)が得られる。
【数3】

但し、cは積分定数を示す。
【0046】
ここで、境界条件は距離r=r0、流速u=0であるから、この条件を式(4)に代入して積分常数cを定めることにより、流速uは以下の式(5)で表される。
【数4】

【0047】
一方、管内の平均流速umは流体の体積流量Qを用いて表すことができ、流体の体積流量Qは流速uを用いて表すことができるから、平均流速umは以下の式(6)で表される。
【数5】

【0048】
従って、圧力損失ΔPは、管の孔径D(=2r0)、管の長さL、管内の平均流速umを用いて、以下の式(7)で表すことができる。
【数6】

【0049】
式(7)から明らかなように、管の孔径D、管の長さL、および、流体の種類、すなわち、流体の粘性係数(動粘性係数)μが同一である場合、管の内壁との摩擦で生じたエネルギー損失である圧力損失ΔPは、管内の平均流速umに比例する。よって、前述したように、筐体50の入口および出口における圧力損失が同一または略同一となる場合、筐体50の入口および出口における平均流速umを同一または略同一にすることができるので、筐体50の内部において、気体の流れが妨げられず(遮られず)に流通しやすくなる。
【0050】
一例として、筐体50の入口および出口における圧力損失が大きいと、筐体50の入口および出口における平均流速umが増加する。この場合、筐体50の内部に流入した流体は、基板60に搭載された温湿度センサに対して冷却効果を与えることになる。
このような冷却効果は、例えば、環境センサの感度やリニアリティに劣化(性能低下)などの悪影響を及ぼすおそれがある。よって、筐体50の入口および出口における圧力損失は、可能な限り小さく(低く)なるのが好ましい。
【0051】
図14は、通気孔11の孔径Dと圧力損失ΔPとの関係を示すグラフである。なお、図14では、一例として自然対流の流速が0.8[m/s]であり、L1は第1部材10の厚さ、すなわち、管の長さL=0.5[mm]の場合を、L2は管の長さL=1.0[mm]の場合を、L3は管の長さL=3.0[mm]の場合を、L4は管の長さL=5.0[mm]の場合を、L5は管の長さL=10.0[mm]の場合を、それぞれ示す。図14に示すように、通気孔11の孔径Dが所定範囲、例えば、2.0[mm]以上の範囲では、圧力損失ΔPを可能な限り低い範囲に保つ(維持する)ことができる。
【0052】
図15は、流速と圧力損失ΔPとの関係を示すグラフである。なお、図15では、通気孔11の孔径D=2.0[mm]とし、図14と同様に、L1は管の長さL=0.5[mm]の場合を、L2は管の長さL=1.0[mm]の場合を、L3は管の長さL=3.0[mm]の場合を、L4は管の長さL=5.0[mm]の場合を、L5は管の長さL=10.0[mm]の場合を、それぞれ示す。管の長さLが設計時において所定範囲、一例として1.0[mm]程度であれば、式(7)から圧力損失ΔPは0.02[kgf/m2]以下となる。よって、圧力損失ΔPを可能な限り小さくして、外気をほぼそのまま取り入れることが可能である。
【0053】
図16は、通気孔11の配置間隔と圧力損失ΔPとの関係を示すグラフである。なお、図16は、自然対流の流速を0.8[m/s]、第1部材10の板厚L=5.0[mm]とし、第1部材10の上面の所定範囲、例えば2[cm]角の範囲において、通気孔11の孔径Dや通気孔11の配置間隔(ピッチ)を変化させて算出した圧力損失ΔPのグラフである。また、L1は通気孔11の孔径D=0.5[mm]の場合を、L2は通気孔11の孔径D=1.0[mm]の場合を、L3は通気孔11の孔径D=1.5[mm]の場合を、L4は通気孔11の孔径D=2.0[mm]の場合を、L5は通気孔11の孔径D=2.5[mm]の場合を、L6は通気孔11の孔径D=3.0[mm]の場合を、それぞれ示す。図16に示すように、通気孔11の孔径Dに対して、通気孔11の配置間隔が所定倍、例えば0倍より大きく2.5倍以下である場合に、圧力損失ΔPを低い範囲に保つ(維持する)ことができる。よって、通気孔11の孔径Dに基づいて、通気孔11の配置間隔を設定することにより、通気孔11内の圧力損失を可能な限り小さく、想定範囲以下に低下させることが可能となる。
【0054】
図17は、所定の設定における流速と圧力損失ΔPとの関係を示すグラフである。なお、図17は、通気孔11の孔径D=2.0[mm]、通気孔11の配置間隔=4.0[mm]、すなわち、通気孔11の孔径Dに対して通気孔11の配置間隔を2倍とし、自然対流の流速や第1部材10の板厚Lを変化させて算出した圧力損失ΔPのグラフである。また、図17において、L1は第1部材10の厚さ、すなわち、管の長さL=0.5[mm]の場合を、L2は管の長さL=1.0[mm]の場合を、L3は管の長さL=3.0[mm]の場合を、L4は管の長さL=5.0[mm]の場合を、L5は管の長さL=7.0[mm]の場合を、L6は管の長さL=10.0[mm]の場合を、それぞれ示す。図17に示すように、通気孔11の孔径Dに対して通気孔11の配置間隔を2倍としたので、流速が所定範囲、例えば、0.2[m/s]以上0.8[m/s]以下の範囲では、圧力損失ΔPを低い範囲に保つ(維持する)ことができる。また、管の長さLが所定範囲、例えば、0[mm]より大きく1.0[mm]程度以下の範囲では、圧力損失ΔPをより小さく、一例として0.02[kgf/m2]以下にすることができる。
【0055】
本実施形態では、環境における所定の物理量を検出する環境センサとして、測定環境の雰囲気における温度や湿度を検出する温湿度センサについて説明したが、これに限定されない。所定の物理量として、例えば、温度、輻射温度、圧力、臭い、VOC(揮発性有機化合物)、オゾン、位置、方位、ガス、衝撃などの他の物理量を検出する環境センサを用いるようにしてもよい。
【0056】
このように、本実施形態における環境測定装置100によれば、筐体50が、外部と第1空間S1とを連通する通気孔11と、外部と第2空間S2とを連通する貫通孔31および通気溝32と、第1空間S1と第2空間S2とを連通する連通路24と、を有する。これにより、筐体50の内部において、図12に示すように、基板60の上面側から基板60の下面側へ、または、図13に示すように、基板60の下面側から基板60の上面側への両方向に、気体を流通させることが可能となるので、従来の環境測定装置のように特定方向の気流だけではなく、あらゆる方向の気流を筐体50の内部に取り込み(導き入れ)やすくなる。これにより、従来の環境測定装置と比較して、筐体の内部を外部の測定環境に近づけることができ、設置場所による測定精度の低下を抑制することができる。また、本実施形態の環境測定装置100は、固定電源を備える機器のみならず、移動電源またはバッテリー(二次電池)から電力が供給される機器、例えば、太陽発電、温度差発電、振動発電、バイオ発電、気流または風力発電、水力発電、波力発電、回転発電などの微弱エネルギーを用いて自立発電するエネルギーハーベスト(環境発電)機器、もしくは、携帯型燃料電池を備える機器、特に、携帯型または可搬型の有線または無線通信を行う機器に、好適に適用することができる。
【0057】
また、本実施形態における環境測定装置100によれば、通気孔11と貫通孔31および通気溝32とは、圧力損失が同一または略同一となるように、形成される。これにより、筐体50の入口および出口における圧力損失が同一または略同一なるから、筐体50の内部において、気体の流れが妨げられず(遮られず)に流通しやすくなる。これにより、従来の環境測定装置と比較して、筐体の内部をさらに外部の測定環境に近づけることができ、設置場所による測定精度の低下をさらに抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態における環境測定装置100によれば、通気孔11の配置間隔が、通気孔11の孔径Dに基づいて設定される。ここで、図16に示すように、通気孔11の孔径Dに対して、通気孔11の配置間隔が所定倍、例えば0倍より大きく2.5倍以下である場合に、圧力損失ΔPを低い範囲に保つ(維持する)ことができる。よって、通気孔11の孔径Dに基づいて、通気孔11の配置間隔を設定することにより、従来の環境測定装置と比較して、通気孔11の圧力損失を低下させることが可能となる。これにより、筐体50の内部に気体を流入させ、または、筐体50の内部から気体を流出させやすくなり、設置場所による測定精度の低下をさらに抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態における環境測定装置100によれば、筐体50が、通気孔11を有する第1部材10と、連通路24を有する第2部材20と、貫通孔31および通気溝32を有する第3部材30と、を含む。これにより、例えば、基板60を収容した第2部材20の上に第1部材10を設置することで、第1空間S1を形成することができ、第2部材20の下に第3部材30を設置することで、第2空間S2を形成することができる。これにより、設置場所による測定精度の低下を抑制することのできる環境測定装置100を、容易に構成(実現)することができる。
【0060】
また、本実施形態における環境測定装置100によれば、筐体50が、通気孔11と連通路24とを有する一の部材と、貫通孔31および通気溝32を有する他の部材と、を含む。これにより、例えば、一の部材に、第1空間S1を形成するように基板60を収容した上で、当該一の部材の下に、他の部材を設置することで、第2空間S2を形成することができる。これにより、設置場所による測定精度の低下を抑制することのできる環境測定装置を、容易に構成(実現)することができる。
【0061】
なお、前述した実施形態の構成は、組み合わせたり、あるいは一部の構成部分を入れ替えたりしたりしてもよい。また、本実施形態の構成は前述した実施形態のみに限定されるものではなく、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…第1部材
11…通気孔
20…第2部材
24…連通路
30…第3部材
31…貫通孔
32…通気溝
50…筐体(ケース)
60…基板
100…環境測定装置
S1…第1空間
S2…第2空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境における所定の物理量を検出する環境センサを含む基板と、
前記基板の一方の面側に第1の空間を形成するとともに前記基板の他方の面側に第2の空間を形成するように、前記基板を内部に収容する筐体と、を備え、
前記筐体は、
外部と前記第1の空間とを連通する第1の通気孔と、
外部と前記第2の空間とを連通する第2の通気孔と、
前記第1の空間と前記第2の空間とを連通する連通路と、を有する
ことを特徴とする環境測定装置。
【請求項2】
前記第1の通気孔と前記第2の通気孔とは、圧力損失が同一または略同一となるように、形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の環境測定装置。
【請求項3】
前記第1の通気孔は、所定の間隔で配置された複数の孔を含み、
前記所定の間隔は、前記複数の孔の孔径に基づいて設定される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の環境測定装置。
【請求項4】
前記筐体は、
前記第1の通気孔を有する第1の部材と、
前記連通路を有する第2の部材と、
前記第2の通気孔を有する第3の部材と、を含む
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の環境測定装置。
【請求項5】
前記筐体は、
前記第1の通気孔と前記連通路とを有する一の部材と、
前記第2の通気孔を有する他の部材と、を含む
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の環境測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−72864(P2013−72864A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214678(P2011−214678)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】