説明

環境発電デバイス

【課題】蓄電部に効率よく蓄電することが可能な環境発電デバイスを提供する。
【解決手段】環境発電デバイス1は、複数個の発電部24を有する圧電型振動発電装置2と、2個のダイオードD41,D42を用いて構成される第1の電力取り出し回路4と、電子式アナログスイッチS1〜S6とエネルギ蓄積素子54とを用いて構成される第2の電力取り出し回路5と、第1接続形態と第2接続形態とを択一的に切替可能な切替回路6と、蓄電部3を電源として第2の電力取り出し回路5および切替回路6を制御する制御部7を備える。切替回路6は、第1接続形態では、第1の電力取り出し回路4の入力端間に複数個の発電部24の直列回路を接続させ且つ第1の電力取り出し回路4の出力端間に蓄電部3を接続させ、第2接続形態では、第2の電力取り出し回路5の入力端間に複数個の発電部24の並列回路を接続させ且つ第2の電力取り出し回路5の出力端間に蓄電部3を接続させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境発電デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電体を利用して振動エネルギを電気エネルギに変換する発電装置(圧電型振動発電装置)は、環境発電(エナジーハーベスティング)などの分野で注目され、各所で研究開発されている(例えば、非特許文献1,2)。ここで、非特許文献1には、圧電体の材料として、PZT(Pb(Zr,Ti)O3)が記載され、非特許文献2には、圧電体の材料として、PZTおよび窒化アルミニウム(AlN)が記載されている。
【0003】
ところで、発電装置は、圧電体の形態(薄膜型、バルク型)により分類することができる。ここで、非特許文献1には、マイクロマシニング技術を利用して製造された薄膜型の発電装置について記載されている。また、非特許文献2には、バルク型の発電装置について記載されている。
【0004】
非特許文献1に開示された発電装置は、図9に示すように、シリコン基板300を用いて形成されたデバイス基板301を備えている。このデバイス基板301は、矩形枠状の支持部311と、支持部311の内側に配置され支持部311に揺動自在に支持されたカンチレバー部(ビーム)312と、カンチレバー部312の先端部に設けられた錘部313とを備えている。また、発電装置は、デバイス基板301におけるカンチレバー部312に設けられカンチレバー部312の振動に応じて交流電圧を発生する発電部320を備えている。
【0005】
発電部320は、下部電極322と、下部電極322におけるカンチレバー部312側とは反対側に形成された圧電膜321と、圧電膜321における下部電極322側とは反対側に形成された上部電極323とで構成されている。ここにおいて、発電部320は、下部電極322がPt膜により構成され、圧電膜321がAlN薄膜もしくはPZT薄膜により構成され、上部電極323がAl膜により構成されている。
【0006】
また、発電装置は、デバイス基板301の一表面側(図9の上面側)において支持部311が固着された上部カバー基板401と、デバイス基板301の他表面側(図9の下面側)において支持部311が固着された下部カバー基板501とを備えている。上部カバー基板401および下部カバー基板501は、それぞれガラス基板400,500を用いて形成されている。
【0007】
上部カバー基板401および下部カバー基板501と、デバイス基板301のカンチレバー部312と錘部313とからなる可動部との間には、当該可動部の変位空間426,526が形成されている。
【0008】
また、非特許文献2に記載された発電装置は、支持部と、支持部に揺動自在に支持されたカンチレバー部と、カンチレバー部における支持部側とは反対の先端部に設けられた錘部とを備えており、カンチレバー部が、2層の圧電体を張り合わせたバイモルフ圧電素子により構成されている。
【0009】
また、非特許文献2には、発電装置を用いたシステムの等価回路モデルとして図10に示す回路図が記載されている。ここで、発電装置の等価回路は、錘部の質量または慣性に相当する等価インダクタンスLmと、機械的なダンピングに相当する等価抵抗Rbと、機械的なスティフネスに相当する等価コンデンサCkと、外部振動を与えた場合に発生する等価応力σinと、トランスの等価巻数比nと、発電部により構成されるコンデンサCbとを用いて表されている。また、この等価回路モデルには、4個のダイオードD1,D2,D3,D4がブリッジ接続されてなり発電装置の出力電圧vを全波整流する全波整流回路と、全波整流回路の出力端間に接続された蓄電用のコンデンサCstとが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】R. van Schaijk,et al,「Piezoelectric AlN energy harvesters for wireless autonomoustransducer solutions」,IEEE SENSORS 2008 Conference,2008,p.45-48
【非特許文献2】S Roundy and P K Wright,「A piezoelectric vibration based generator for wireless electronics」,Smart Materials and Structures 13,2004,p1131-1142
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、非特許文献1に記載された発電装置のような薄膜型の発電装置では、非特許文献2に記載されたバルク型の発電装置に比べて、小型化を図ることができる一方で出力電圧が低下するので、出力電圧の高出力化が望まれる。また、非特許文献1に記載された発電装置の出力をコンデンサに蓄電する環境発電デバイスを構築する場合には、非特許文献2のように全波整流回路を発電デバイスの出力端間に接続した構成とすることが考えられる。
【0012】
しかしながら、この環境発電デバイスでは、発電装置の出力電圧vの正の半サイクルにおいて、2個のダイオードD1,D4で電圧損失(順方向電圧降下)が生じ、負の半サイクルにおいて、2個のダイオードD3,D2で電圧損失が生じる。また、この環境発電デバイスでは、発電装置の出力電圧vの正の半サイクルにおいて、2個のダイオードD1,D4の閾値電圧の合計値以上となる期間しか電力を取り出すことができない。同様に、この環境発電デバイスでは、発電装置の出力電圧vの負の半サイクルにおいて、2個のダイオードD3,D2の閾値電圧の合計値以上となる期間しか電力を取り出すことができないので、蓄電用のコンデンサCstに効率良く蓄電することが難しい。
【0013】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、蓄電部に効率よく蓄電することが可能な環境発電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の環境発電デバイスは、環境振動に応じて交流電圧を発生可能な複数個の発電部を有する圧電型振動発電装置と、蓄電部と、整流用の2個のダイオードを用いて構成され前記圧電型振動発電装置からの交流電圧を整流して前記蓄電部を充電する第1の電力取り出し回路と、電子式アナログスイッチとエネルギ蓄積素子とを用いて構成され前記圧電型振動発電装置からの交流電圧を入力として前記蓄電部を充電する第2の電力取り出し回路と、前記第1の電力取り出し回路を利用して前記蓄電部を充電する第1接続形態と前記第2の電力取り出し回路を利用して前記蓄電部を充電する第2接続形態とを択一的に切替可能な切替回路と、前記蓄電部を電源として前記第2の電力取り出し回路および前記切替回路を制御する制御部とを備え、前記切替回路は、前記第1接続形態では、前記第1の電力取り出し回路の入力端間に前記複数個の前記発電部の直列回路を接続させ且つ前記第1の電力取り出し回路の出力端間に前記蓄電部を接続させ、前記第2接続形態では、前記第2の電力取り出し回路の入力端間に前記複数個の前記発電部の並列回路を接続させ且つ前記第2の電力取り出し回路の出力端間に前記蓄電部を接続させることを特徴とする。
【0015】
この環境発電デバイスにおいて、前記制御部は、前記蓄電部の出力電圧が前記制御部および前記第2の電力取り出し回路それぞれの最低動作電圧よりも高い場合に、前記切替回路が前記第2接続形態となるように前記切替回路を制御することが好ましい。
【0016】
この環境発電デバイスにおいて、前記切替回路は、前記圧電型振動発電装置と前記第1の電力取り出し回路との間に設けられる第1のスイッチ要素と、前記第1の電力取り出し回路と前記蓄電部との間に設けられる第2のスイッチ要素と、前記圧電型振動発電装置と前記第2の電力取り出し回路との間に設けられる第3のスイッチ要素と、前記圧電型振動発電装置と前記蓄電部との間に設けられる第4のスイッチ要素とを備え、前記第1のスイッチ要素および前記第2のスイッチ要素の各々がノーマリオン型であり、前記第3のスイッチ要素および前記第4のスイッチ要素の各々がノーマリオフ型であることが好ましい。
【0017】
この環境発電デバイスにおいて、前記蓄電部は、2個のコンデンサが直列接続されてなり、前記第1の電力取り出し回路は、前記2個の前記ダイオードが直列接続されてなり、前記第1接続形態では、前記2個の前記ダイオード同士の接続点が前記圧電型振動発電装置の一方の出力端に接続され、且つ、前記2個の前記コンデンサ同士の接続点が前記圧電型振動発電装置の他方の出力端に接続され、前記圧電型振動発電装置で発生する交流電圧を倍電圧整流する両波倍電圧整流回路が構成されることが好ましい。
【0018】
この環境発電デバイスにおいて、前記圧電型振動発電装置は、支持部と、前記支持部に揺動自在に支持されてなり前記環境振動に応じて振動する可動部とを備え、前記可動部に前記複数個の前記発電部が設けられたものであり、前記可動部の変位を検出する変位検出センサが設けられ、前記制御部は、前記変位検出センサから出力される交流信号のゼロクロス点の付近で前記電子式アナログスイッチのオンオフを切り替えることが好ましい。
【0019】
この環境発電デバイスにおいて、前記変位検出センサは、静電容量型変位検出センサであることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の環境発電デバイスにおいては、蓄電部に効率よく蓄電することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態1の環境発電デバイスの回路図である。
【図2】(a)は実施形態1の環境発電デバイスにおける圧電型振動発電装置の概略平面図、(b)は(a)のA−A’概略断面図である。
【図3】実施形態1の環境発電デバイスの第1接続形態の動作説明図である。
【図4】実施形態1の環境発電デバイスの第2接続形態の動作説明図である。
【図5】実施形態1の環境発電デバイスの第2接続形態の動作説明図である。
【図6】実施形態1の環境発電デバイスの第2接続形態の動作説明図である。
【図7】実施形態1の環境発電デバイスの第2接続形態の動作説明図である。
【図8】実施形態2の環境発電デバイスの回路図である。
【図9】従来例の発電装置の概略断面図である。
【図10】他の従来例の発電装置を用いたシステムの等価回路モデル図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態1)
以下では、本実施形態の環境発電デバイスについて図1〜図7に基づいて説明する。
【0023】
環境発電デバイス1は、環境振動に応じて交流電圧を発生可能な複数個(ここでは、3個)の発電部24を有する圧電型振動発電装置2と、蓄電部3とを備えている。
【0024】
また、環境発電デバイス1は、整流用の2個のダイオードD41,D42を用いて構成され圧電型振動発電装置2からの交流電圧を整流して蓄電部3を充電する第1の電力取り出し回路4を備えている。また、環境発電デバイス1は、電子式アナログスイッチS1〜S6(以下、第1〜第6の電子式アナログスイッチS1〜S6とも称する)とエネルギ蓄積素子54とを用いて構成され圧電型振動発電装置2からの交流電圧を入力として蓄電部3を充電する第2の電力取り出し回路5を備えている。
【0025】
また、環境発電デバイス1は、第1の電力取り出し回路4を利用して蓄電部3を充電する第1接続形態と第2の電力取り出し回路5を利用して蓄電部3を充電する第2接続形態とを択一的に切替可能な切替回路6を備えている。
【0026】
また、環境発電デバイス1は、蓄電部3を電源として第2の電力取り出し回路5および切替回路6を制御する制御部7を備えている。
【0027】
そして、切替回路6は、第1接続形態では、第1の電力取り出し回路4の入力端間に複数個の発電部24の直列回路を接続させ且つ第1の電力取り出し回路4の出力端間に蓄電部3を接続させる。また、切替回路6は、第2接続形態では、第2の電力取り出し回路5の入力端間に複数個の発電部24の並列回路を接続させ且つ第2の電力取り出し回路5の出力端間に蓄電部3を接続させる。
【0028】
圧電型振動発電装置2は、図2に示すように、支持部21と、支持部21に揺動自在に支持されてなり環境振動に応じて振動する可動部22とを備え、可動部22に上述の複数個の発電部24が設けられたものであることが好ましい。
【0029】
また、環境発電デバイス1は、可動部22の変位を検出する変位検出センサ8が設けられ、制御部7が、変位検出センサ8から出力される交流信号のゼロクロス点の付近で電子式アナログスイッチS1〜S6のオンオフを切り替えることが好ましい。
【0030】
環境発電デバイス1の各構成要素については、以下、詳細に説明する。
【0031】
圧電型振動発電装置2は、支持部21、支持部21に揺動自在に支持されたカンチレバー部22a、およびカンチレバー部22aにおける支持部21側とは反対の先端部に設けられた錘部22bを有するデバイス基板20を備えている。ここで、圧電型振動発電装置2は、カンチレバー部22aと錘部22bとで、可動部22を構成しており、カンチレバー部22aに複数個の発電部24が設けられている。したがって、圧電型振動発電装置2は、カンチレバー部22aの振動に応じて交流電圧を発生する。
【0032】
デバイス基板20は、第1の基板20aを用いて形成されている。第1の基板20aとしては、一表面が(100)面である単結晶のシリコン基板を用いているが、これに限らず、多結晶のシリコン基板でもよい。デバイス基板20において、第1の基板20aと発電部24とは、第1の基板20aの上記一表面側に形成されたシリコン酸化膜からなる絶縁膜20bによって、電気的に絶縁されている。第1の基板20aとしては、シリコン基板に限らず、例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板、酸化マグネシウム(MgO)基板、金属基板、ガラス基板、ポリマー基板などを用いてもよい。第1の基板20aとして、MgO基板やガラス基板やポリマー基板などの絶縁性基板を用いる場合、絶縁膜20bを設けてもよいが、特に設けなくてもよい。
【0033】
デバイス基板20は、支持部21が、枠状(ここでは、矩形枠状)に形成され、カンチレバー部22aおよび錘部22bが、支持部21の内側に配置されている。ここで、デバイス基板20は、カンチレバー部22aと錘部22bとで構成される可動部22を囲む平面視U字状のスリット20dが設けられることによって、可動部22における支持部21との連結部位以外の部分が、支持部21と空間的に分離されている。なお、支持部21は、可動部22を揺動自在に支持できる形状であればよく、必ずしも枠状である必要はない。
【0034】
発電部24は、デバイス基板20の上記一表面側に形成されている。ここで、発電部24は、互いに対向する2つ1組の電極と、組をなす2つの電極間にある圧電体とを有する圧電変換素子により構成されている。発電部24は、組をなす2つの電極が、カンチレバー部22aの厚み方向の一面側において当該厚み方向に離間して配置されている。
【0035】
圧電型振動発電装置2は、可動部22の振動によって発電部24の圧電体が応力を受け、2つの電極のうちの一方の電極と他方の電極とに電荷の偏りが発生し、発電部24で交流電圧が発生する。要するに、圧電型振動発電装置2は、発電部24が圧電材料の圧電効果を利用して発電する。圧電型振動発電装置2の開放電圧は、環境振動に起因した圧電体の振動に応じた正弦波状の交流電圧となる。ここで、圧電型振動発電装置2は、当該圧電型振動発電装置2の共振周波数と一致する環境振動を利用して発電することを想定している。環境振動としては、例えば、稼動中のFA機器で発生する振動、車両の走行によって発生する振動、人の歩行によって発生する振動など、種々の環境振動(外部振動)がある。発電デバイス1で発生する交流電圧の周波数は、環境振動の周波数が発電デバイス1の共振周波数と一致する場合、発電デバイス1の共振周波数と同じになる。なお、外部振動としては、例えば、稼動中のFA機器で発生する振動、車両の走行によって発生する振動、人の歩行によって発生する振動など、種々の環境振動があるが、本実施形態では、外部振動を発生する外部振動源として、例えば、周波数が475Hz程度の振動を発生するFA機器を想定している。また、圧電型振動発電装置2は、複数個の発電部24の各々が、極性のあるコンデンサを構成する。
【0036】
圧電体の圧電材料としては、PZTを採用しているが、これに限らず、例えば、PZT−PMN(Pb(Mn,Nb)O3)やその他の不純物を添加したPZTでもよい。また、圧電材料は、AlN、ZnO、KNN(K0.5Na0.5NbO3)や、KN(KNbO3)、NN(NaNbO3)、KNNに不純物(例えば、Li,Nb,Ta,Sb,Cuなど)を添加したものなどでもよい。
【0037】
組をなす2つの電極のうち圧電体における可動部22側に位置する電極(以下、第1電極とも称する)の材料としては、例えば、Pt、Au、Al、Irなどを採用することができる。また、組をなす2つの電極のうち圧電体における可動部22側と反対側に位置する電極(以下、第2電極とも称する)の材料としては、例えば、Au、Mo、Al、Pt、Irなどを採用することができる。
【0038】
圧電型振動発電装置2は、薄膜型の発電装置であり、第1電極の厚みを500nm、圧電体の厚みを600nm、第2電極の厚みを100nmに設定してあるが、これらの数値は一例であって特に限定するものではない。なお、第1電極は、例えば、スパッタ法、CVD法、蒸着法などの薄膜形成技術と、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用したパターニング技術とで形成することができる。また、圧電体は、例えば、スパッタ法、CVD法、ゾルゲル法などの薄膜形成技術と、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用したパターニング技術とで形成することができる。また、第2電極は、例えば、スパッタ法、CVD法、蒸着法などの薄膜形成技術と、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用したパターニング技術とで形成することができる。また、第2電極としては、例えば、シート電極(電極シートとも呼ばれている)を用いてもよい。圧電体上にシート電極からなる第2電極を設ける方法としては、例えば、シート電極からなる第2電極を圧電体上に真空ラミネート法などによりラミネートする方法を採用すればよい。なお、シート電極としては、例えば、アルミニウム箔などの金属箔を用いてもよいし、ラミネート用シートに電極材料をスパッタ法などにより被着したものを用いてもよい。
【0039】
圧電型振動発電装置2は、デバイス基板20と第1電極との間に緩衝層を設けた構造でもよい。緩衝層の材料は、圧電体の圧電材料に応じて適宜選択すればよく、圧電体の圧電材料がPZTの場合には、例えば、SrRuO3、(Pb,La)TiO3、PbTiO3、MgO、LaNiO3などを採用することが好ましい。また、緩衝層は、例えば、Pt膜とSrRuO3膜との積層膜により構成してもよい。なお、緩衝層を設けることにより、圧電体の結晶性を向上させることが可能となる。
【0040】
圧電型振動発電装置2は、デバイス基板20の上記一表面側に、各発電部24の各々における第1電極および第2電極が各別に電気的に接続された複数(ここでは、6つ)のパッド25を備えている。要するに、圧電型振動発電装置2は、各電極と各パッド25とが1対1で対応しており、対応する電極とパッド25とが図示しない配線(金属配線)を介して電気的に接続されている。したがって、圧電型振動発電装置2単体では、各発電部24の各々が、他の発電部24と電気的に絶縁されている。これらの各パッド25は、デバイス基板20において、支持部21に対応する部位に形成されている。圧電型振動発電装置2の全ての発電部24は、切替回路6により、直列接続したり、並列接続したりすることが可能である。圧電型振動発電装置2は、全ての発電部24が直列接続されることにより、全ての発電部24を合わせた大きさの発電部を1つだけ備えている場合に比べて、出力電圧の高出力化を図れる。なお、切替回路6については、後述する。
【0041】
また、圧電源振動発電装置2は、上述の各パッド25とは別に、変位検出センサ8の2つのパッド27,29を備えている。なお、変位検出センサ8については、後述する。
【0042】
発電部24の構造は、上述の例に限らず、例えば、他の構造例として、組をなす2つの電極が、カンチレバー部22aの厚み方向の一面側で圧電体における錘部22b側の側面に形成された電極と、圧電体における支持部21側の側面に形成された電極とからなる構造でもよい。この場合、各電極の材料としては、例えば、Au、Pt、Ir、Al、Moなどを採用することができる。また。各電極は、例えば、圧電体の各側面に積層された第1導電膜と、この第1導電膜に積層された第2導電膜とで構成してもよい。この場合には、例えば、第2導電膜の材料として、Au、Pt、Ir、Al、Moなどを採用し、第1導電膜の材料として、Tiなどを採用することで、各電極と圧電体との密着性を向上させることが可能となる。なお、第1導電膜の材料は、圧電体および第2導電膜の材料に応じて適宜変更してもよく、Tiに限らず、例えば、Cr、TiN、TaNなどを採用することもできる。
【0043】
上述の他の構造例では、カンチレバー部22aの厚み方向における厚みに関して、圧電体の厚みを600nmとし、各電極の厚みを600nmに設定すればよいが、これらの数値は特に限定するものではない。また、上述の他の構造例では、デバイス基板20と圧電体との間に緩衝層を設けた構造でもよく、緩衝層を設けることにより、圧電体の結晶性を向上させることが可能となり、圧電体の圧電性能の向上を図ることが可能となる。緩衝層の材料は、圧電体の圧電材料に応じて適宜選択すればよく、圧電体の圧電材料がPZTの場合には、例えば、(Pb,La)TiO3、PbTiO3、MgOなどを採用することが好ましい。また、緩衝層は、例えば、Pt膜とSrRuO3膜との積層膜により構成してもよい。
【0044】
変位検出センサ8は、静電容量型変位検出センサである。この変位検出センサ8は、可動部22に設けられた可動電極26と、この可動電極26に対向する固定電極28とを備えている。固定電極28は、デバイス基板20に接合された第2の基板20fに設けられている。この第2の基板20fは、ガラス基板20gを用いて形成されており、デバイス基板20側に可動部22の揺動空間を確保するための第1凹部20iが形成されており、第1凹部20iの内底面に固定電極28が設けられている。なお、圧電型振動発電装置2は、デバイス基板20の他表面側に、可動部22の揺動空間を確保するための第2凹部が形成されたカバー基板を接合するようにしてもよい。また、環境発電デバイス1は、圧電型振動発電装置2にカバー基板を接合せずに、圧電型振動発電装置2を実装する実装基板(例えば、プリント配線板や、パッケージなど)に、可動部22の揺動空間を確保するための第2凹部や開口部(貫通孔)を設けてもよい。
【0045】
変位検出センサ8は、可動電極26に図示しない金属配線を介して電気的に接続されたパッド27と、ガラス基板20gの厚み方向に貫設された貫通孔配線20hを介して固定電極28に電気的に接続されたパッド29とを備えている。すなわち、第2の基板20fは、可動部22側に固定電極28が位置し、可動部22側とは反対側にパッド29が位置している。
【0046】
上述の説明から明らかなように、静電容量型変位検出センサからなる変位検出センサ8は、可動電極26と固定電極28とを一対の電極とする可変容量コンデンサを備えている。しかして、この変位検出センサ8は、可動部22の振動(揺動)により可動電極26と固定電極28との距離が変化することで可変容量コンデンサの容量値が変化する。よって、変位検出センサは、可動電極26の変位量に応じて、容量値が変化する。したがって、変位検出センサ8は、可動電極26と固定電極28との間に制御部7から直流バイアス電圧を印加しておけば、可動電極26と固定電極28との間には静電容量の変化に応じて微小な電圧変化が生じるから、制御部7において、この電圧変化に基づいて可動部22の変位を検出することができる。
【0047】
圧電型振動発電装置2の構造は、上述の例に限らず、例えば、デバイス基板20の厚み方向の両面側に第1カバー基板、第2カバー基板それぞれを接合した構造としてもよい。この場合には、例えば、第1カバー基板、第2カバー基板に可動部22の揺動空間を確保するための第1凹部、第2凹部それぞれを備えるようにし、第1凹部の内底面に固定電極28を備えた構造とすることが好ましい。これにより、圧電型振動発電装置2は、第1カバー基板、第2カバー基板に第1凹部、第2凹部を設けずに、可動部22の両面を、第1の基板20aの厚み方向の両面よりも当該厚み方向の中心側にずらした構造とする場合に比べて、可動部22における錘部22bの質量を大きくすることが可能となる。
【0048】
変位検出センサ8は、上述の構造に限らず、静電容量型変位検出センサであることが好ましい。これにより、環境発電デバイス1は、変位検出センサ8がピエゾ型変位検出センサである場合に比べて、変位検出センサ8で可動部22の変位を検出するために必要な電力を低減することが可能となる。
【0049】
制御部7は、上述のように、変位検出センサ8から出力される交流信号のゼロクロス点の付近で、第2の電力取り出し回路5の電子式アナログスイッチS1〜S6のオンオフを切り替えることが好ましい。ここで、制御部7は、電子式アナログスイッチS1〜S6をオンオフする制御信号を出力する。これにより、環境発電デバイス1では、第2接続形態において、圧電型振動発電装置2から効率よく発電電力の取り出しを行うことが可能となり、蓄電部3を効率よく蓄電することが可能となる。
【0050】
環境発電デバイス1は、蓄電部3の両端間に、機能素子10を接続すれば、蓄電部3を電源として機能素子10を機能させることが可能となる。
【0051】
機能素子10としては、例えば、センサ(例えば、温度センサ、加速度センサ、圧力センサ)や、固体発光素子(例えば、発光ダイオード、半導体レーザなど)や、無線通信素子や、MPU(Micro Processor Unit)などの演算素子などを採用することができる。なお、機能素子10の数および接続の構成は、環境発電デバイス1の使用用途に基づいて適宜に決定すればよい。
【0052】
蓄電部3は、2個のコンデンサC31,C32が直列接続されている。また、コンデンサC31とコンデンサC32とは、仕様の同じものを用いており、同じ特性を有している。なお、各コンデンサC31,C32の容量は、10μFに設定してあるが、この数値は一例であり、特に限定するものではない。また、各コンデンサC31,C32の各々は、表面実装型のコンデンサを用いているが、特に表面実装型に限定するものではない。なお、以下では、一方のコンデンサC31を第1のコンデンサC31と称し、他方のコンデンサC32を第2のコンデンサC32と称することもある。また、蓄電部3は、2個のコンデンサC31,C32に限らず、例えば、1個のコンデンサにより構成してもよい。
【0053】
第1の電力取り出し回路4は、2個のダイオードD41,D42の直列回路と、この直列回路とは電気的に絶縁された1本の配線43とを備えている。ダイオードD41とダイオードD42とは、仕様の同じものを用いており、同じ特性を有している。各ダイオードD41,D42としては、シリコンダイオードを用いており、順方向電圧降下が0.6〜0.7V程度となる。各ダイオードD41,D42の各々は、表面実装型のダイオードであるが、特に表面実装型に限定するものではない。配線43は、圧電型振動発電装置2とともにダイオードD41,D42などを実装する上述の実装基板の導体パターンの一部により構成することができる。
【0054】
第1の電力取り出し回路4は、2個のダイオードD41,D42同士の接続点および配線43の一端が、第1接続形態において圧電型振動発電装置2に電気的に接続され、第2接続形態において圧電型振動発電装置2から電気的に切り離される。また、第1の電力取り出し回路4は、一方のダイオードD41のカソード、他方のダイオードD42のアノードおよび配線43の他端が、第1接続形態において蓄電部3に電気的に接続され、第2接続形態において蓄電部3から電気的に切り離される。なお、以下では、一方のダイオードD41を第1のダイオードD41と称し、他方のダイオードD42を第2のダイオードD42と称することもある。
【0055】
第2の電力取り出し回路5は、一対の入力端と一対の出力端とを有している。この第2の電力取り出し回路5は、一方の入力端と他方の入力端との間に第1の電子式アナログスイッチS1とエネルギ蓄積素子54と第2の電子式アナログスイッチS2との直列回路を有している。エネルギ蓄積素子54は、インダクタである。
【0056】
また、第2の電力取り出し回路5は、第1の電子式アナログスイッチS1とエネルギ蓄積素子54との接続点と他方の入力端との間に設けられた第3の電子式アナログスイッチS3を備えている。
【0057】
また、第2の電力取り出し回路5は、エネルギ蓄積素子54と第2の電子式アナログスイッチS2との接続点と一方の入力端との間に設けられた第4の電子式アナログスイッチS4を備えている。
【0058】
また、第2の電力取り出し回路5は、第1の電子式アナログスイッチS1とエネルギ蓄積素子54との接続点と一方の出力端との間に設けられた第5の電子式アナログスイッチS5を備えている。
【0059】
さらに、第2の電力取り出し回路5は、エネルギ蓄積素子54と第2の電子式アナログスイッチS2との接続点と他方の出力端との間に設けられた第6の電子式アナログスイッチS6を備えている。
【0060】
第1〜第6の電子式アナログスイッチS1〜S6は、第2接続形態において、制御部7によってそれぞれオンオフ制御される。第1〜第6の電子式アナログスイッチS1〜S6の各々は、nチャネルMOSトランジスタにより構成することが好ましく、これにより、pチャネルMOSトランジスタにより構成する場合に比べて、オン抵抗を低減できるとともに、高速動作が可能となる。また、第1〜第6の電子式アナログスイッチS1〜S6の各々は、ノーマリオフ型であることが好ましい。
【0061】
切替回路6は、圧電型振動発電装置2と第1の電力取り出し回路4との間に設けられる第1のスイッチ要素Q1と、第1の電力取り出し回路4と蓄電部3との間に設けられる第2のスイッチ要素Q2と、圧電型振動発電装置2と第2の電力取り出し回路5との間に設けられる第3のスイッチ要素Q3と、圧電型振動発電装置2と蓄電部3との間に設けられる第4のスイッチ要素Q4とを備えている。
【0062】
切替回路6は、圧電型振動発電装置2の全ての発電部24の直列回路を第1の電力取り出し回路4に接続可能とするように、4個の第1のスイッチ要素Q1を備えている。すなわち、切替回路6は、直列接続する発電部24同士の異極のパッド25,25間に接続される2個の第1のスイッチ要素Q1と、全ての発電部24の直列回路の両端に位置する各パッド25,25と第1の電力取り出し回路4の各入力端との間に1個ずつ設けられる2個の第1のスイッチ要素Q1とを備えている。
【0063】
また、切替回路6は、圧電型振動発電装置2の全ての発電部24の並列回路を第2の電力取り出し回路5に接続可能とするように、6個の第3のスイッチ要素Q3を備えている。すなわち、切替回路6は、並列接続する全ての発電部24の異極のパッド25,25と第2の電力取り出し回路5の各入力端との間に1個ずつ設けられた6個の第3のスイッチ要素Q3を備えている。
【0064】
また、切替回路6は、第1の電力取り出し回路4と蓄電部3とを接続可能とするように、3個の第2のスイッチ要素Q2を備えている。すなわち、切替回路6は、第1の電力取り出し回路4における第1のダイオードD41のカソード、配線43の他端、および第2のダイオードD42のアノードと、第1のコンデンサC31の一端、第1のコンデンサC31の他端と第2のコンデンサC32の一端との接続点、および第2のコンデンサC32の他端との間に1個ずつ設けられた3個の第2のスイッチ要素Q2を備えている。
【0065】
また、切替回路6は、第2の電力取り出し回路5と蓄電部3とを接続可能とするように、2個の第4のスイッチ要素Q4を備えている。すなわち、切替回路6は、第2の電力取り出し回路5の各出力端と蓄電部3の両端との間に1個ずつ設けられた2個の第4のスイッチ要素Q4を備えている。
【0066】
切替回路6は、第1のスイッチ要素Q1および第2のスイッチ要素Q2の各々がノーマリオン型であり、第3のスイッチ要素Q3および第4のスイッチ要素Q4の各々がノーマリオフ型であることが好ましい。これにより、環境発電デバイス1は、蓄電部3から制御部7へ最低動作電圧以上の電圧を給電できずに制御部7が動作していない状態でも、第1接続形態となるから、圧電型振動発電装置2から蓄電部3に蓄電することが可能となる。つまり、環境発電デバイス1では、蓄電部3への蓄電が行われていない初期状態から、外部電源を用いることなく、圧電型振動発電装置2から蓄電部3に蓄電することが可能となる。第1のスイッチ要素Q1および第2のスイッチ要素Q2の各々は、ノーマリオン型のMOSトランジスタにより構成することが好ましいが、これに限らず、例えば、ノーマリオン型のリレーの接点(ブレーク接点)などにより構成してもよい。また、第3のスイッチ要素Q3および第4のスイッチ要素Q4の各々は、ノーマリオフ型のMOSトランジスタにより構成することが好ましいが、ノーマリオフ型のリレーの接点(メーク接点)などにより構成してもよい。なお、第1のスイッチ要素Q1、第2のスイッチ要素Q2、第3のスイッチ要素Q3および第4のスイッチ要素Q4それぞれの個数は特に限定するものではない。特に、第1のスイッチ要素Q1および第3のスイッチ要素Q3それぞれの個数については、圧電型振動発電装置2の発電部24の個数に基づいて適宜変更する必要がある。
【0067】
上述の切替回路6は、第1のスイッチ要素Q1および第3のスイッチ要素Q3により、第1の電力取り出し回路4および第2の電力取り出し回路5と圧電型振動発電装置2との間に設けられる第1切替部6aを構成している。また、切替回路6は、第2のスイッチ要素Q2および第4のスイッチ要素Q4により、第1の電力取り出し回路4および第2の電力取り出し回路5と蓄電部3との間に設けられる第2切替部6bを構成している。
【0068】
なお、環境発電デバイス1は、第1の電力取り出し回路4と、第2の電力取り出し回路5と、蓄電部3と、切替回路6と、制御部7とで、圧電型振動発電装置2で発生する電力を管理する電力管理回路11を構成している。
【0069】
環境発電デバイス1は、第1接続形態において、2個のダイオードD41,D42同士の接続点が圧電型振動発電装置2の一方の出力端に接続され、且つ、2個のコンデンサC31,C32同士の接続点が圧電型振動発電装置2の他方の出力端に接続される。したがって、環境発電デバイス1は、第1接続形態において、圧電型振動発電装置2で発生する交流電圧を倍電圧整流する両波倍電圧整流回路9を備えた構成となる(図3参照)。この両波倍電圧整流回路9では、2個のダイオードD41,D42の直列回路と2個のコンデンサC31,C32の直列回路とが並列接続される。要するに、両波倍電圧整流回路9は、2個ダイオードD41,D42と2個のコンデンサC31,C32とがブリッジ接続される。
【0070】
以下、環境発電デバイス1の第1接続形態での動作について図3に基づいて説明する。
【0071】
第1接続形態では、図3に示すように、圧電型振動発電装置2および蓄電部3と第1の電力取り出し回路4とが電気的に接続され、圧電型振動発電装置2および蓄電部3と第2の電力取り出し回路5とが電気的に切り離される(絶縁分離される)。
【0072】
まず、圧電型振動発電装置2の一方の出力端が他方の出力端に比べて高電位となる正の半サイクルの動作について説明する。
【0073】
環境発電デバイス1は、圧電型振動発電装置2の全ての発電部24の直列回路が接続される第1の電力取り出し回路4の一方の入力端が他方の入力端に比べて高電位となるので、圧電型振動発電装置2→ダイオードD41→コンデンサC31→配線43→圧電型振動発電装置2、の経路で電流が流れてコンデンサC31が充電される。
【0074】
次に、圧電型振動発電装置2の一方の出力端が他方の出力端に比べて低電位となる負の半サイクルの動作について説明する。
【0075】
環境発電デバイス1は、第1の電力取り出し回路4の一方の入力端が他方の入力端に比べて低電位となるので、圧電型振動発電装置2→配線43→コンデンサC32→ダイオードD42→圧電型振動発電装置2、の経路で電流が流れてコンデンサC32が充電される。
【0076】
要するに、両波倍電圧整流回路9では、圧電型振動発電装置2の出力電圧の電圧波形の半サイクルごとに各コンデンサC31,C32がそれぞれ充電される。したがって、蓄電部3の両端電圧(振動発電デバイス1の出力電圧)は、圧電型振動発電装置2の出力電圧のピーク値の略2倍になる。
【0077】
環境発電デバイス1は、第1接続形態において両波倍電圧整流回路9が構成されることにより、従来のような4個のダイオードD1,D2,D3,D4がブリッジ接続された全波整流回路を構成する場合に比べて、蓄電部3の前段での電圧損失(順方向電圧降下)を低減することが可能となり、小型化を図りながらも高出力化を図ることが可能となる。
【0078】
次に、環境発電デバイス1の第2接続形態での動作について図4〜図7に基づいて説明する。
【0079】
第2接続形態では、図4に示すように、圧電型振動発電装置2および蓄電部3と第2の電力取り出し回路5とが電気的に接続され、圧電型振動発電装置2および蓄電部3と第1の電力取り出し回路4とが電気的に切り離される(絶縁分離される)。ここで、第2の電力取り出し回路5の一対の入力端間には、圧電型振動発電装置2の全ての発電部24の並列回路が接続される。また、第2接続形態において、第2の電力取り出し回路5は、上述のように、第1〜第6の電子式アナログスイッチS1〜S6が制御部7によってオンオフされる。図7について、(a)は、圧電型振動発電装置2から第2の電力取り出し回路5へ流れる交流の電流i(図4参照)の波形であり、圧電型振動発電装置2から一方の入力端へ向って流れる向きを正としてある。ここで、電流iの波形は、正弦波状であり、変位検出センサ8からは、この電流iの波形に略同期する正弦波状の交流信号が出力される。また、図7において、(b)は、第1および第2の電子式アナログスイッチS1,S2のオンオフの状態、(c)は、第3および第4の電子式アナログスイッチS3,S4のオンオフの状態、(d)は、第5および第6の電子式アナログスイッチS5,S6のオンオフの状態である。
【0080】
まず、圧電型振動発電装置2の一方の出力端が他方の出力端に比べて高電位となる正の半サイクルの動作について説明する。
【0081】
環境発電デバイス1は、第2の電力取り出し回路5の一方の入力端が他方の入力端に比べて高電位となる。ここで、第2の電力取り出し回路5は、制御部7によって、第1および第2の電子式アナログスイッチS1,S2の各々がオン、且つ第3〜第6の電子式アナログスイッチS3〜S6がオフとなるように制御される(この状態での等価回路は、図5)。これにより、環境発電デバイス1では、インダクタからなるエネルギ蓄積素子54に電流iが流れ、エネルギ蓄積素子54にエネルギが蓄積される。
【0082】
次に、圧電型振動発電装置2の一方の出力端が他方の出力端に比べて低電位となる負の半サイクルの動作について説明する。
【0083】
制御部7は、変位検出センサ8からの交流信号のゼロクロス点を検出する機能を備えており、まず、変位検出センサ8からの交流信号のゼロクロス点に同期して第5および第6の電子式アナログスイッチS5,S6の各々がオン、且つ第1〜第4の電子式アナログスイッチS1〜S4がオフとなるように第2の電力取り出し回路を制御する。これにより、環境発電デバイス1では、エネルギ蓄積素子54に蓄積されていたエネルギが放出され蓄電部3への蓄電が行われる。
【0084】
その後、第2の電力取り出し回路5は、制御部7によって、第3および第4の電子式アナログスイッチS3,S4の各々がオン、且つ第1、第2、第5および第6の電子式アナログスイッチS1,S2,S5,S6がオフとなるように制御される(この状態での等価回路は、図6)。これにより、環境発電デバイス1では、インダクタからなるエネルギ蓄積素子54に電流iが流れ、エネルギ蓄積素子54にエネルギが蓄積される。
【0085】
次に、圧電型振動発電装置2の一方の出力端が他方の出力端に比べて高電位となる正の半サイクルになると、制御部7は、変位検出センサ8からの交流信号のゼロクロス点に同期して第5および第6の電子式アナログスイッチS5,S6の各々がオン、且つ第1〜第4の電子式アナログスイッチS1〜S4がオフとなるように第2の電力取り出し回路を制御する。これにより、環境発電デバイス1では、エネルギ蓄積素子54に蓄積されていたエネルギが放出され蓄電部3への蓄電が行われる。
【0086】
その後、第2の電力取り出し回路5は、上述のように、制御部7によって、第1および第2の電子式アナログスイッチS1,S2の各々がオン、且つ第3〜第6の電子式アナログスイッチS3〜S6がオフとなるように制御される(この状態での等価回路は、図5)。
【0087】
第2の電力取り出し回路5では、上述のエネルギ蓄積素子54へのエネルギの蓄積と、エネルギ蓄積素子54からのエネルギの放出とが、繰り返し行われる。
【0088】
以上説明した本実施形態の環境発電デバイス1は、複数個の発電部24を有する圧電型振動発電装置2と、2個のダイオードD41,D42を用いて構成される第1の電力取り出し回路4と、電子式アナログスイッチS1〜S6とエネルギ蓄積素子54とを用いて構成される第2の電力取り出し回路5とを備えている。また、環境発電デバイス1は、第1接続形態と第2接続形態とを択一的に切替可能な切替回路6と、蓄電部3を電源として第2の電力取り出し回路5および切替回路6を制御する制御部7を備えている。そして、切替回路6は、第1接続形態では、第1の電力取り出し回路4の入力端間に複数個の発電部24の直列回路を接続させ且つ第1の電力取り出し回路4の出力端間に蓄電部3を接続させ、第2接続形態では、第2の電力取り出し回路5の入力端間に複数個の発電部24の並列回路を接続させ且つ第2の電力取り出し回路5の出力端間に蓄電部3を接続させる。
【0089】
しかして、本実施形態の環境発電デバイス1では、制御部7によって切替回路6が制御されることにより、蓄電部3に効率よく蓄電することが可能となる。
【0090】
この環境発電デバイス1において、制御部7は、蓄電部3の出力電圧が制御部7および第2の電力取り出し回路5それぞれの最低動作電圧よりも高い場合に、切替回路6が第2接続形態となるように切替回路6を制御することが好ましい。これにより、環境発電デバイス1は、圧電型振動発電装置2の発電電力を効率よく取り出して蓄電部3を蓄電することが可能となる。なお、制御部7の最低動作電圧と第2の電力取り出し回路5の最低動作電圧とは異なった電圧値でもよいし、同じ電圧値でもよい。
【0091】
この環境発電デバイス1において、切替回路6は、上述の第1〜第4のスイッチ要素Q1〜Q4を備え、第1のスイッチ要素Q1および第2のスイッチ要素Q2の各々がノーマリオン型であり、第3のスイッチ要素Q3および第4のスイッチ要素Q4の各々がノーマリオフ型であることが好ましい。ここにおいて、第1のスイッチ要素Q1は、圧電型振動発電装置2と第1の電力取り出し回路4との間に設けられる。また、第2のスイッチ要素Q2は、第1の電力取り出し回路4と蓄電部3との間に設けられる。また、第3のスイッチ要素Q3は、圧電型振動発電装置2と第2の電力取り出し回路5との間に設けられる。また、第4のスイッチ要素Q4は、圧電型振動発電装置2と蓄電部3との間に設けられる。したがって、環境発電デバイス1は、蓄電部3の出力電圧が制御部7および第2の電力取り出し回路5それぞれの最低動作電圧よりも低い場合、圧電型振動発電装置2が第1の電力取り出し回路4に接続されるので、圧電型振動発電装置2の発電電力を取り出して蓄電部3を蓄電することが可能となる。要するに、環境発電デバイス1は、蓄電部3の出力電圧が0Vの場合や一時的に各最低動作電圧よりも低下した場合でも、圧電型振動発電装置2の発電電力を第1の電力取り出し回路4により取り出して蓄電部3を蓄電することが可能となる。
【0092】
また、環境発電デバイス1は、上述のように、第1接続形態において両波倍電圧整流回路9が構成されることが好ましい。これにより、環境発電デバイス1は、第1接続形態において、蓄電部3の電圧の高電圧化を図れる。なお、環境発電デバイス1は、第1接続形態において、両波倍電圧整流回路9以外の回路が構成される回路構成としてもよい。
【0093】
また、環境発電デバイス1は、上述のように、圧電型振動発電装置2が、支持部21と、支持部21に揺動自在に支持されてなり環境振動に応じて振動する可動部22とを備え、可動部22に複数個の発電部24が設けられたものであることが好ましい。これにより、環境発電デバイス1は、複数個の発電部24が1チップの圧電型振動発電装置2において同じ可能部に設けられているので、発電部24ごとの出力の振幅や位相がずれるのを抑制することが可能となる。したがって、環境発電デバイス1は、複数個の発電部24が互いに異なるチップに設けられている場合に比べて、圧電型振動発電装置2の小型化を図りながらも圧電型振動発電装置2の高出力化を図ることが可能となる。
【0094】
そして、環境発電デバイス1は、可動部22の変位を検出する変位検出センサ8が設けられ、制御部7が、変位検出センサ8から出力される交流信号のゼロクロス点の付近で、第2の電力取り出し回路5の電子式アナログスイッチS1〜S6のオンオフを切り替えることが好ましい。これにより、環境発電デバイス1では、制御部7が変位検出センサ8から出力される交流信号に基づいて、圧電型振動発電装置2で発生する交流電圧による交流電流のゼロクロス点を間接的に精度よく検知することが可能となり、第2接続形態において、圧電型振動発電装置2から効率よく発電電力の取り出しを行うことが可能となる。よって、環境発電デバイス1は、蓄電部3を効率よく蓄電することが可能となる。なお、制御部7は、変位検出センサ8から出力される交流信号に限らず、第2の電力取り出し回路5に流れる電流を検出するセンサ(例えば、カレントトランスなど)の出力に基づいて、第2の電力取り出し回路5の電子式アナログスイッチS1〜S6のオンオフを切り替えるようにしてもよい。
【0095】
(実施形態2)
以下では、本実施形態の環境発電デバイス1について、図8に基づいて説明する。
【0096】
本実施形態の環境発電デバイス1の基本構成は実施形態1と略同じであり、第2の電力取り出し回路5の回路構成が相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0097】
実施形態1の環境発電デバイス1における第2の電力取り出し回路5がインダクタからなるエネルギ蓄積素子54を備えていたのに対し、本実施形態の環境発電デバイス1における第2の電力取り出し回路5は、コンデンサからなるエネルギ蓄積素子55を備える。第2の電力取り出し回路5の動作は、実施形態1の場合と同様である。
【0098】
本実施形態の環境発電デバイス1は、実施形態1と同様、制御部7によって切替回路6が制御されることにより、蓄電部3に効率よく蓄電することが可能となる。
【0099】
なお、実施形態1や実施形態2それぞれで説明した第2の電力取り出し回路5の回路構成は、いずれも一例であり、特に限定するものではなく、他の回路構成を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 環境発電デバイス
2 圧電型振動発電装置
3 蓄電部
4 第1の電力取り出し回路
5 第2の電力取り出し回路
6 切替回路
7 制御部
8 変位検出センサ
9 両波倍電圧整流回路
21 支持部
22 可動部
24 発電部
54 エネルギ蓄積素子
55 エネルギ蓄積素子
C31,C32 コンデンサ
D41,D42 ダイオード
S1〜S6 電子式アナログスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境振動に応じて交流電圧を発生可能な複数個の発電部を有する圧電型振動発電装置と、蓄電部と、整流用の2個のダイオードを用いて構成され前記圧電型振動発電装置からの交流電圧を整流して前記蓄電部を充電する第1の電力取り出し回路と、電子式アナログスイッチとエネルギ蓄積素子とを用いて構成され前記圧電型振動発電装置からの交流電圧を入力として前記蓄電部を充電する第2の電力取り出し回路と、前記第1の電力取り出し回路を利用して前記蓄電部を充電する第1接続形態と前記第2の電力取り出し回路を利用して前記蓄電部を充電する第2接続形態とを択一的に切替可能な切替回路と、前記蓄電部を電源として前記第2の電力取り出し回路および前記切替回路を制御する制御部とを備え、前記切替回路は、前記第1接続形態では、前記第1の電力取り出し回路の入力端間に前記複数個の前記発電部の直列回路を接続させ且つ前記第1の電力取り出し回路の出力端間に前記蓄電部を接続させ、前記第2接続形態では、前記第2の電力取り出し回路の入力端間に前記複数個の前記発電部の並列回路を接続させ且つ前記第2の電力取り出し回路の出力端間に前記蓄電部を接続させることを特徴とする環境発電デバイス。
【請求項2】
前記制御部は、前記蓄電部の出力電圧が前記制御部および前記第2の電力取り出し回路それぞれの最低動作電圧よりも高い場合に、前記切替回路が前記第2接続形態となるように前記切替回路を制御することを特徴とする請求項1記載の環境発電デバイス。
【請求項3】
前記切替回路は、前記圧電型振動発電装置と前記第1の電力取り出し回路との間に設けられる第1のスイッチ要素と、前記第1の電力取り出し回路と前記蓄電部との間に設けられる第2のスイッチ要素と、前記圧電型振動発電装置と前記第2の電力取り出し回路との間に設けられる第3のスイッチ要素と、前記圧電型振動発電装置と前記蓄電部との間に設けられる第4のスイッチ要素とを備え、前記第1のスイッチ要素および前記第2のスイッチ要素の各々がノーマリオン型であり、前記第3のスイッチ要素および前記第4のスイッチ要素の各々がノーマリオフ型であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の環境発電デバイス。
【請求項4】
前記蓄電部は、2個のコンデンサが直列接続されてなり、前記第1の電力取り出し回路は、前記2個の前記ダイオードが直列接続されてなり、前記第1接続形態では、前記2個の前記ダイオード同士の接続点が前記圧電型振動発電装置の一方の出力端に接続され、且つ、前記2個の前記コンデンサ同士の接続点が前記圧電型振動発電装置の他方の出力端に接続され、前記圧電型振動発電装置で発生する交流電圧を倍電圧整流する両波倍電圧整流回路が構成されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の環境発電デバイス。
【請求項5】
前記圧電型振動発電装置は、支持部と、前記支持部に揺動自在に支持されてなり前記環境振動に応じて振動する可動部とを備え、前記可動部に前記複数個の前記発電部が設けられたものであり、前記可動部の変位を検出する変位検出センサが設けられ、前記制御部は、前記変位検出センサから出力される交流信号のゼロクロス点の付近で前記電子式アナログスイッチのオンオフを切り替えることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の環境発電デバイス。
【請求項6】
前記変位検出センサは、静電容量型変位検出センサであることを特徴とする請求項5記載の環境発電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−102639(P2013−102639A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245508(P2011−245508)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】