環境計測装置、および環境計測方法
【課題】有線による配線の複雑化をなくし、また、測定結果の出力のための無線による機器への影響をなくす環境計測装置を提供する。
【解決手段】
環境計測装置の、移動制御部が、室内環境を表す環境要素の値を計測する環境計測センサを積載して走行する走行部を駆動させて、予め定められた計測点に自装置を移動し、中央制御部が、移動制御部が計測点に自装置を移動させると、環境計測センサに環境要素の値を計測させる。
【解決手段】
環境計測装置の、移動制御部が、室内環境を表す環境要素の値を計測する環境計測センサを積載して走行する走行部を駆動させて、予め定められた計測点に自装置を移動し、中央制御部が、移動制御部が計測点に自装置を移動させると、環境計測センサに環境要素の値を計測させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定空間内での環境を計測する環境計測装置、および環境計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンピュータ装置などが集約的に設置されるサーバルーム、通信機械室などでは、サーバラックなどに設置された装置が発する熱量によって、室内温度分布にバラツキが発生し、空調が非効率となる。そこで、室内の温度を多点計測し、空調の送風角度や送風面積を調整して室内空気の撹拌をすることなどによって室内温度分布が均一になるようにして、効率的な空調を行い、空調エネルギーの削減を行うようにしている(空調制御システムとして、例えば、特許文献1参照)。
また、このような室内温度などの室内環境の計測に関しては、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(ビル衛生管理法、ビル管理法)関連省政令において定められた室内環境を表す環境要素についても計測を行うことが望ましい。このような環境要素の値は、一般的に、壁などに設置された温度計などによって計測される。あるいは、サーバルームにおいて壁やサーバラックなどから離れた空間中の室内環境を計測する際には、例えば、作業員が、温度などの室内環境を計測可能なハンディ端末装置を利用して計測している。
【特許文献1】特許第2563849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、壁などに計測装置を予め設置して行う室内環境の計測は、室内の複数個所に設置された温度計などの計測装置から、有線のケーブルを介して管理装置に計測結果を送信することによって行われる。このため、計測点が増えれば増えるほど、計測装置と管理装置とを接続する配線が複雑になる。また、環境を計測する室内には、その環境要素値の室内での分布を計測するために充分な数の計測装置を設置することが望ましいが、配線の複雑化、ケーブルを配線する場所の確保の限界などによって、設置可能な計測装置数やケーブルの配線施工には限りがある。このため、計測装置は限られた代表点のみに設置され、室内環境の分布の把握に充分な数の観測点での計測が行われていない場合がある。
ここで、有線による配線を単純化するために、これらの計測装置から、無線通信によって計測結果を管理装置に送信することも考えられるが、高い可用性や信頼性が求められるコンピュータ装置が設置される室内で無線通信を行うと、室内に設置された装置が誤動作を起こすなどの影響を与える可能性があるため、このような室内では無線通信を行わないことが望ましい。
また、室内の壁などに予め計測装置を設置して計測する方法では、計測点が壁面やサーバラックなどに隣接することとなり、壁やサーバラックなどの特性などが計測値に影響し、壁やサーバラックから離れた空間の環境とは誤差が生じることがある。すなわち、室内環境の計測に当たっては、できるだけこのような構造物から離れた、通路中央などで計測することが望ましい。
【0004】
また、作業員がハンディ端末装置を利用して室内環境を計測して回る方法では、人的コストがかかるだけでなく、計測点や計測結果の妥当性の判断などに作業員による個人差が生じ、計測結果の信頼性が低くなることが考えられる。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、有線による配線の複雑化をなくし、また、測定結果の出力を無線で行うことによる機器への影響を出さず、また、定められた複数の計測点において、室内環境を計測する環境計測装置、および環境計測方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、室内環境を表す環境要素の値を計測する環境計測センサと、環境計測センサを積載して走行する走行部と、走行部を駆動させて、予め定められた計測点に自装置を移動させる移動制御部と、移動制御部が計測点に自装置を移動させると、環境計測センサが計測する環境要素の値を取得する中央制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、上述の環境要素は、少なくとも浮遊粉塵量、一酸化炭素、二酸化炭素、温度、相対湿度、気流(風速)またはホルムアルデヒドのうちいずれかの要素の室内環境を表すことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上述の環境計測装置が、自装置が走行する室内における自装置の位置を示す情報を検出する位置センサをさらに備え、移動制御部は、位置計測センサが計測する位置に対応して自装置が走行するように走行部を駆動させ、予め定められた計測点に自装置を移動させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上述の位置センサが、予め床面に設けられたラインが示す色を検知し、移動制御部は、位置計測センサが検知する色に対応して自装置が走行するように走行部を駆動させ、位置計測センサが計測点を示す色を検知する位置に自装置を移動させることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上述の位置センサが、室内に設置された発光部が発する光を検知し、移動制御部は、位置計測センサが検知する光に対応して自装置が走行するように走行部を駆動させ、発光部と自装置との角度が予め定められた角度となる計測点に自装置を移動させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上述の位置センサが、レーザ光線を照射して検出物との距離を計測し、移動制御部は、位置計測センサが計測する距離に対応して自装置が走行するように走行部を駆動させ、予め定められた計測点に自装置を移動させることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上述の位置センサが、走行部の駆動部の回転数を計測し、移動制御部は、位置計測センサが計測する回転数と、予め記憶した計測点までの駆動回転数とが一致するまで走行部を駆動させ、計測点に自装置を移動させることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、環境計測装置の、移動制御部が、室内環境を表す環境要素の値を計測する環境計測センサを積載して走行する走行部を駆動させて、予め定められた計測点に自装置を移動させるステップと、中央制御部が、移動制御部が計測点に自装置を移動させると、環境計測センサに環境要素の値を計測させるステップと、を備えることを特徴とする環境計測方法である。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、移動制御部が、室内環境を表す環境要素の値を計測する環境計測センサを積載して走行する走行部を駆動させて、予め定められた計測点に自装置を移動させると、中央制御部が、環境計測センサに環境要素の値を計測させるようにしたので、予め温度計を設置することなく、また、一定空間内に複雑な配線を行うこともなく、また、無線通信を行うこともなく、定められた空間内の計測点の室内環境を計測することができる。
【0015】
また、本発明によれば、環境計測センサが計測する環境要素は、少なくとも浮遊粉塵量、一酸化炭素、二酸化炭素、温度、相対湿度、気流(風速)またはホルムアルデヒドのうちいずれかの要素の室内環境を表す環境要素の値を計測することとしたので、ビル管理法で定められた計測項目について、信頼性の高い計測を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態による環境計測装置10の構成を示す概略ブロック図である。
本実施形態による環境計測装置10は、定められた空間内を自走し、定められた計測点における室内環境を表す環境要素の値を計測して計測結果を記憶する装置であり、中央制御部11と、移動制御部12と、記憶部13と、走行部14と、位置センサ15と、環境計測センサ制御部18と、環境計測センサ16(環境計測センサ16−1、環境計測センサ16−2、環境計測センサ16−3)とを備えている。
【0017】
環境計測センサ16は、室内環境を表す環境要素の値を計測する。環境計測センサ16は、少なくとも浮遊粉塵量、一酸化炭素、二酸化炭素、温度、相対湿度、気流(風速)またはホルムアルデヒドのうちいずれかの要素の室内環境を表す環境要素の値を計測する。本実施形態では、環境計測センサ16は、温度を計測するセンサであり、例えば、サーミスタが適用できる。本実施形態では、環境計測装置10は、複数の環境計測センサ16を備えており、環境計測センサ16−1と、環境計測センサ16−2と、環境計測センサ16−3との環境計測センサ16を備えている。
【0018】
図2は、環境計測センサ16−1と、環境計測センサ16−2と、環境計測センサ16−3とが設置された環境計測装置10の外観を示す図である。環境計測装置10は、各機能部が格納された筐体の上部に、垂直に伸びるセンサ取り付けポール17を有する。センサ取り付けポール17は、本実施形態では2m(メートル)の長さがあり、センサ取り付けポール17には、予め定められた間隔で複数の環境計測センサ16が設置される。ここでは、センサ取り付けポール17上の、床上200cmの箇所に環境計測センサ16−1が、床上150cmの箇所に環境計測センサ16−2が、床上100cmの箇所に環境計測センサ16−3がそれぞれ設置されている。図2の(b)に示すように、環境計測装置10の下部には、自走するための車輪である走行部14が備えられ、走行前方には、位置センサ15が備えられる。
【0019】
図1に戻り、環境計測センサ制御部18は、後述する中央制御部11から計測命令を受信すると、環境計測センサ16から出力されるアナログ信号を取り込んでデジタルデータによる環境要素の値に変換し、変換された環境要素値を出力する。本実施形態では、環境計測センサ16から出力されるアナログ信号を温度情報に変換して出力する。また、環境計測センサ制御部18は、接続された複数の環境計測センサ16のそれぞれの識別情報と、それぞれの環境計測センサ16への配線との対応情報を予め記憶しておき、後述する中央制御部11から計測命令を受信すると、接続された全ての環境計測センサ16から出力されるアナログ信号を取り込んでデジタルデータの環境要素値を生成し、生成したそれぞれの環境要素値(温度情報)とそのアナログ信号を出力したそれぞれの環境計測センサ16の識別情報とを中央制御部11に送信する。
【0020】
位置センサ15は、環境計測装置10が走行する室内における自装置の位置を示す情報を検知する。本実施形態において、位置センサ15は、予め床面に設けられたラインが示す色を検知して、検知した色情報を出力するライントレースセンサである。位置センサ15は、床面に貼られたラインテープによるラインを光学的に読み取る光センサを有しており、光センサが読み取った色を示す色情報を出力する。位置センサ15は、少なくとも、赤、青、黄、緑との4色を検知する。位置センサ15は、動作中、検知した色を示す情報を、移動制御部12に出力する。
【0021】
走行部14は、環境計測装置10の下部に設置された車輪を有しており、移動制御部12から受信する移動命令に応じて車輪を駆動させて、環境計測装置10を移動させる。また、走行部14は、左右の車輪の回転速度を変えて走行方向を変えたり、左右の車輪の回転方向を逆にすることで旋回して進んだりすることができる。
【0022】
移動制御部12は、走行部14を駆動させて、予め定められた計測点に環境計測装置10を移動させる。本実施形態では、移動制御部12は、位置センサ15から出力される色情報と、環境計測装置10の走行速度と検出時間から算出される当該色のテープの長さとに基づいて、走行部14に、走行、停止、右折、左折、旋回などを示す移動命令を出力する。移動制御部12は、色情報と移動命令との対応情報を記憶しており、位置センサ15から出力される色情報に対応する移動命令を読み出して、読み出した移動命令を走行部14に出力する。また、移動制御部12は、位置センサ15が検知する色情報が、予め定められた計測点を示す場合には、計測点通知を中央制御部11に送信する。
【0023】
図3は、本実施形態において、移動制御部12が、位置センサ15から出力される色情報に対応して出力する移動命令の種別を示す図である。また、図4は、本実施形態による環境計測装置10で温度計測を行う室内を天井側から見た図である。図4に示されるように、室内には、複数のサーバラック21が設置されており、サーバラック21の間に、第1の通路22、第2の通路23、第3の通路24、との3通路が形成されており、ユーザは、これらの3通路の床面に、赤、青、黄、緑のテープラインを貼る。本実施形態では、図4に示される点P1を、環境計測装置10の走行のスタート地点とする。
【0024】
移動制御部12は、位置センサ15から受信する色情報が赤である場合には、走行を示す移動命令を走行部14に出力する。ラインテープの色は、黄が30cm(センチメートル)以上続いた場合には、停止して、温度測定処理を行うことを示す(図4の点P3)。緑が50cm以上続いた場合には、旋回(Uターン)を示す(図4の点P5)。黄色が5cm、緑が5cm続いた場合には、左折を示す(図4の点P2)。黄色が5cm、青が5cm続いた場合には、右折を示す(図4の点P6)。色情報が、青が5cm、赤が10cm、黄が30cm続いた場合には、その30cmの黄では、上述の停止と温度測定処理を行わず、走行することを示す(図4の点P4を、環境計測装置10が図の下側から上側に移動した場合)。
【0025】
中央制御部11は、移動制御部12から計測点通知を受信すると、環境計測センサ制御部18に計測命令を送信し、環境計測センサ制御部18から出力される環境要素値を、記憶部13に記憶させる。中央制御部11は、ひとつの計測点につき、予め定められた時間内(例えば、12秒)に、予め定められた間隔(例えば、2秒)毎に環境計測センサ制御部18から出力される環境要素値を受信し、受信した複数の環境要素値の平均値を環境要素値として記憶部13に記憶させる。ここで、中央制御部11は、複数回計測する環境要素値の値が、その複数回の計測時間内に定められた以上の変化率がある場合には、再計測を行うようにしても良い。例えば、12秒間計測するうちに、1度以上の変化があれば、再計測を行う。このようにすることで、安定した状態での室内環境を計測することができる。中央制御部11には、入力部、出力部、制御部、演算部、記憶部などを備えたPC(パーソナルコンピュータ)などのコンピュータが適用できる。中央制御部11は、環境計測センサ制御部18から受信する環境要素値に基づいて、表形式の計測結果表を含む環境要素値計測結果情報を生成する。図5は、中央制御部11が生成する、室内の水平断面における計測結果表の例を示す図である。
【0026】
図5において、(a)は、環境計測センサ16−1の計測結果表、(b)は、環境計測センサ16−2の計測結果表、(c)は、環境計測センサ16−3の計測結果表をそれぞれ示している。計測結果表には、計測対象の空間における平面上の空間の計測点の座標位置を表内のセルの位置に対応させて、空間内の計測点に対応する表内のセルに環境要素値(温度情報)が書き込まれる。例えば、図5のそれぞれの計測結果表には、図4に示した3通路が設けられた室内で、1通路につき7箇所の、計21箇所で温度計測を行った温度情報の結果が示されている。図5の計測結果表では、計測した通路毎に列を分けて、1通路内での計測点ごとに行を分けて、それぞれの計測点での計測結果をセル内に表示させている。中央制御部11は、環境計測センサ制御部18から温度情報を受信すると、予め定められた規則に基づいて、計測結果表のセルに温度値を対応させる。ここで、予め定められた規則とは、例えば、中央制御部11は、1列(各通路)に、計測点が何箇所存在するかを予め記憶しておき、温度値を計測結果表の左上から左下に向かって順番に入力し、予め定められた計測点数分入力したら、2列目の上から入力する。中央制御部11は、このような規則は、予め中央制御部11の記憶領域に記憶しておいても良いし、起動前に、ユーザから計測点数の入力を受け付けるようにしても良い。
【0027】
本実施形態では、これらの計測結果表は、表計算ソフトの機能により、計測結果が入力されたセルの背景色を計測結果の値に応じて変化させるように設定しても良い。例えば、温度が低ければ背景色を薄く、高ければ背景色を濃くするよう設定する。また、背景色は、温度が低ければ水色に、温度が高ければ赤色にするようにしても良い。例えば、環境計測装置10は、自身に表示部を備えることとし、このように記憶部13に記憶された温度計測結果情報を表計算ソフトによる表形式で表示させることで、ユーザは、温度の分布を視覚的に把握することができる。例えば、ユーザは、図5に示されるような表を見れば、全体として(a)から(c)にいくほど、すなわち床に近づくほど温度が低くなっていることや、一定空間内の温度のバラツキなどを、一見して把握することができる。また、環境計測装置10は、このような計測結果に基づいて、図6のような画像を生成し、空間内の(a)、(b)、(c)の水平断面の温度分布を、視覚的に把握することができるようにしても良い。
【0028】
図7は、中央制御部11が生成する垂直断面の計測結果表の例を示す。中央制御部11は、水平断面の計測結果表と同様に、空間内の計測点と対応させた垂直断面の計測結果表を生成する。このような垂直断面の計測結果表によれば、図8に示すような空間内の(a)、(b)、(c)の垂直断面の温度分布を、視覚的に把握することができる。このように、中央制御部11は、表計算ソフトなどを用いて、計測結果表を、空間内の垂直方向、水平方向などによって表にしたりグラフ化したりすることで、さまざまな形式で視覚的に温度情報を把握するようにすることができる。このような計測結果表は、表計算ソフトを用いて生成しても良いし、計測結果表や計測結果表に対応するグラフを描画するようなプログラムを用意し、生成しても良い。また、このような計測結果表を、ウェブ上に表示させるような情報を生成するようにしても良い。
記憶部13は、中央制御部11が生成する温度計測結果情報を記憶する。
【0029】
次に、本発明による環境計測装置10が、室内の温度計測処理を行う動作例を説明する。
図9は、本実施形態による環境計測装置10の動作例を示すフローチャートである。まず、ユーザは、環境計測装置10を用いて温度計測を行う室内に、図3に示されるような色情報と移動命令の対応に従って、図4のようにテープラインを貼る(ステップS1)。
【0030】
ユーザは、本実施形態による環境計測装置10を、ステップS1で貼ったライン上の、スタート地点(図4の点P1)に乗せる(ステップS2)。そして、中央制御部11は、ユーザからの起動命令の入力に従って動作を起動すると(ステップS3)、環境計測センサ制御部18との通信を確立する(ステップS4)。そして、位置センサ15が、床面のラインテープの色を検知する処理を開始すると、移動制御部12は、走行部14を制御する処理を開始する(ステップS5)。位置センサ15が、ラインテープの色を検知し、検知した色を示す色情報を移動制御部12に出力し、移動制御部12は、受信した色情報に対応する移動命令を出力する。例えば、移動制御部12は、赤を示す色情報を受信すると、走行部14に、走行を示す移動命令を出力する。走行部14が、車輪を駆動させて走行を開始し、環境計測装置10は、自走して計測点で停止し、温度を計測する計測処理を行う(ステップS6)。
【0031】
図4を参照して、環境計測装置10が、ラインテープが示す色に従って、温度計測を行いながら空間内の温度の計測処理を行うルートを説明する。環境計測装置10は、ラインテープが示す色に従って、点P1から点P2の方向に向かって走行する。そして、点P2で、位置センサ15が、黄と緑との色情報を移動制御部12に送信すると、移動制御部12が、左折と判断して、走行部14に左折する移動命令を出力する。走行部14は、環境計測装置10を、左折させて走行させる。
【0032】
そして、点P3で、位置センサ15が、黄を示す色情報を移動制御部12に送信すると、移動制御部12が、停止と温度計測とを行う計測点であると判定し、走行部14に、停止を示す移動命令を出力する。そして、走行部14は、環境計測装置10の走行を停止させる。また、移動制御部12は、中央制御部11に、計測点通知を送信する。中央制御部11は、計測点通知を受信すると、環境計測センサ制御部18に計測命令を送信する。環境計測センサ制御部18は、計測命令を受信すると、環境計測センサ16−1と、環境計測センサ16−2と、環境計測センサ16−3とがそれぞれ出力するアナログ信号から、環境要素値(温度情報)を生成する。中央制御部11は、環境計測センサ制御部18から受信した温度情報のうち、環境計測センサ16−1に対応する温度情報を、図5の(a)の計測結果表の1行目、1列目に入力し、環境計測センサ16−2に対応する温度情報を、図5の(b)の計測結果表の1行目、1列目に入力し、環境計測センサ16−3に対応する温度情報を、図5の(c)の計測結果表の1行目、1列目に入力する。
【0033】
環境計測装置10は、図4の第1の通路22の通路を点P3から点P5に向かって走行しながら、ラインテープの黄色の箇所で停止し、温度計測を行い、温度計測結果を記憶部13に記憶させる処理を繰り返す。環境計測装置10は、図4に示される第1の通路22の端部である点P5に到達すると、ラインテープが示す色に従って、旋回し、第1の通路22を、点P4の方向に向かって走行する。環境計測装置10は、点P4では、青と赤と黄との色に従って、その黄では温度計測を行わない。
【0034】
このように、環境計測装置10は、点P1からスタートして、ラインテープ上を第1の通路22に向かって走行し、第1の通路22の各点(黄)で温度計測を行い、第2の通路23の各点(黄)で温度計測を行い、第3の通路24の各点(黄)で温度計測を行って、点P1に戻ってくると、計測処理を終了する。このようにして、環境計測装置10は、各計測点で温度計測を行い、記憶部13に、図5や図7に示されるような複数の測定結果表である温度計測結果情報を記憶させる。
【0035】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、環境計測装置10は、予め床面に貼られたラインテープを辿って走行することとしたが、第2の実施形態における環境計測装置10は、図10に示すように、位置センサ15に赤外線を検出する赤外線センサ15−2を適用して、室内に設置された発光部20が発する光を検知し、移動制御部12は、赤外線センサ15−2が検知する光に対応して環境計測装置10が走行するように走行部14を駆動させ、発光部20と環境計測装置10との角度が予め定められた角度となる計測点に環境計測装置10を移動させ、環境要素の計測を行う。
【0036】
図10は、本実施形態における環境計測装置10によって環境要素値を計測する形態を示す図である。室内の壁面に、赤外線を照射する発光部20を予め設置する。発光部20は、床面に対して、ライトスポット30−1と、ライトスポット30−2とを照射する。環境計測装置10の赤外線センサ15−2は、ライトスポット30−1とライトスポット30−2とに照射された赤外線スポットを検知し、その検知角度に基づいて、移動制御部12が、走行部14を駆動させて環境計測装置10を移動させる。移動制御部12は、計測点となる赤外線の検知角度を予め記憶しておき、位置センサ15−2による赤外線の検知角度が予め定められた計測点の検知角度となる地点に環境計測装置10を移動させると、中央制御部11に、計測点通知を出力する。その他、中央制御部11が環境計測センサ制御部18と環境計測センサ16とを用いて環境要素の計測を行う等の構成・動作については、第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0037】
なお、このような、赤外線センサ15−2を適用し、赤外線を検知して環境計測装置10を動作させる際には、図11に示すように構成しても良い。すなわち、床面に発光部20(発光部20−1、発光部20−2、発光部20−3、発光部20−4)を設け、環境計測装置10は、赤外線センサ15−2によって発光部20から発光される赤外線を検知して移動するようにしても良い。ここで、床面に設置する発光部20は、サーバラック等の構造物の配置や計測する室内の広さ、計測点の分布などによって、任意の複数個所に設けて良い。また、図12に示すように、サーバラック21の上部に発光部20を設置して、発光部20から照射される赤外線を、赤外線センサ15−2によって検知するようにしても良い。
【0038】
また、図13に示すように、壁面に設けた発光部20から天井に赤外線を照射して天井面に赤外線スポット(ライトスポット30−1、ライトスポット30−2)を形成し、赤外線センサ15−2は、これを検知するようにしても良い。また、図14に示すように、サーバラック21の上部に発光部20を設置して天井面に赤外線を照射させるようにしても良い。また、図15に示すように、天井に段差がある場合には、壁の片面に発光部20−1を、反対面に発光部20−2を設けて、それぞれが天井に照射する赤外線を位置センサ15−2が検知するようにしても良い。また、図16に示すように、複数の発光部20(発光部20−1、発光部20−2)を天井面に設置して発光部20が発光する赤外線を赤外線センサ15−2が検知するようにしても良い。
【0039】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態の適用例を説明する。図17は、本実施形態による環境計測装置10が環境要素の計測を行う概念図である。本実施形態では、環境計測装置10が備える位置センサ15に、レーザ光線を照射して検出物との距離を計測する測域センサ15−3を適用してサーバラック21などの構造物を検出し、移動制御部12は、予め記憶された室内の構造物の配置情報と比較しながら、走行部14を駆動させて環境計測装置10を予め定められた計測点に移動させ、環境要素の計測を行う。
【0040】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態の適用例を説明する。図18は、本実施形態による環境計測装置10が環境要素の計測を行う概念図である。本実施形態では、環境計測装置10が備える位置センサ15に、走行部14の駆動部の回転数を検知する回転数計測部を適用し、移動制御部12は、回転数計測部が検知する走行部14の駆動回転数が、予め定められるN回転(Nは任意の数)になった場合に、その地点を計測点と判定し、中央制御部11に計測点通知を出力する。
本実施形態においては、移動制御部12は、予め車輪の回転数と移動命令とを対応させて記憶しておき、走行部14による環境計測装置10の走行開始後、定められた回数分、車輪を回転させて移動したら、対応する移動命令に従って、計測処理や左折、旋回などの動作を行うように走行部14の制御を行う。
【0041】
なお、本実施形態では、センサ取り付けポール17の長さを2mとし、3個の環境計測センサ16を設置することとしたが、ユーザは、温度計測の目的や、空間の空調設備やコンピュータ機器の設置位置などの環境によって、センサ取り付けポール17の長さや、設置する環境計測センサ16の数を変更して良い。
【0042】
また、本実施形態では、環境計測センサ16は温度を計測するための温度センサとしてサーミスタを適用するとしたが、温度センサは、計測した温度情報を出力することが可能な機器であれば、サーミスタでなくとも良い。例えば、白金の温度による電気抵抗の変化を検出することによって温度を測定する電気式温度計や、温度によって誘電率の変化する感温体を誘電体に用いたコンデンサの容量の変化を検出する電気式温度計などが適用可能である。
【0043】
また、本実施形態においては、環境計測センサ16は温度を計測する温度センサであるとしたが、環境計測センサ16には、浮遊粉塵量、一酸化炭素、二酸化炭素、温度、相対湿度、気流(風速)またはホルムアルデヒドのうちいずれかの要素の室内環境を表す環境要素を計測するセンサが適用できる。また、環境計測装置10は、実測した各環境要素値が、図19に示されるような、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(ビル衛生管理法、ビル管理法)関連省政令に規定された室内環境の環境要素の各値に適合するか否かを判定し、その判定結果を記憶部13に記憶させるようにしても良い。
【0044】
また、環境計測装置10は、温度を計測する空間内のCAD(Computer Aided Design)データを予め記憶しておき、CADデータに従って走行するルートを判定するようにしても良い。
また、環境計測装置10が走行するルートは、キーボードやマウスなどの入力装置を用いて、ユーザから、走行するルートと温度の計測点の入力を受け付けるようにしても良い。また、環境計測装置10は、走行する通路上に、予め定められた間隔で計測点を設けるようにしても良い。また、環境計測装置10は、温度を測定する空間内に設けられた基地局との接続部を設け、基地局まで移動して接続し、基地局と通信して、設定情報などを入力したり、計測した温度情報を出力したり、充電したりするようにしても良い。
【0045】
また、環境計測装置10には、障害物センサを設けて、走行中に、周囲に障害物を検知した場合には、走行を停止するようにしても良い。また、重力センサを設けて、例えば、15度以上の傾斜を感知すると停止するようにしても良い。
また、環境計測装置10の環境計測センサ16が計測を行った後、他の計測点まで移動して計測を繰り返す際、走行を停止して、中央制御部11が環境計測センサ制御部18を用いて温度の計測を行う際には、中央制御部11が環境計測センサ制御部18を用いて温度の計測を行うために必要な時間を予め記憶しておき、その時間の経過後に再走行を開始するようにしても良いし、中央制御部11が、計測が完了した際に移動制御部12に完了を通知し、移動制御部12は、計測完了の通知を受信したら走行を再開するようにしても良い。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について説明した。本実施形態による環境計測装置の各手段は、専用のハードウェア(例えば、ワイヤードロジック等)により実現されるようにしても良いし、メモリおよびCPU(中央処理装置)により構成され、各部の機能を実現するためのプログラムをメモリからロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。また、本発明における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより環境計測を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0047】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施形態による環境計測装置の構成例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による環境計測装置の外観例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態によるラインテープの色と移動命令の種別の対応を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による環境計測装置によって温度を計測する空間の例を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態による環境計測装置に生成される水平断面の計測結果表の例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態による環境計測装置に生成される水平断面を表す概念図である。
【図7】本発明の第1の実施形態による環境計測装置に生成される垂直断面の計測結果表の例を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施形態による環境計測装置に生成される垂直断面を表す概念図である。
【図9】本発明の第1の実施形態による環境計測装置の動作例を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第2の実施形態による環境計測装置の概念を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施形態による環境計測装置の概念を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施形態による環境計測装置の概念を示す図である。
【図13】本発明の第2の実施形態による環境計測装置の概念を示す図である。
【図14】本発明の第2の実施形態による環境計測装置の概念を示す図である。
【図15】本発明の第2の実施形態による環境計測装置の概念を示す図である。
【図16】本発明の第2の実施形態による環境計測装置の概念を示す図である。
【図17】本発明の第3の実施形態による環境計測装置の概念を示す図である。
【図18】本発明の第4の実施形態による環境計測装置の概念を示す図である。
【図19】ビル管理法により定められた計測項目とその値を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
10 環境計測装置
11 中央制御部
12 移動制御部
13 記憶部
14 走行部
15 位置センサ
15−2 赤外線センサ
15−3 測域センサ
16 環境計測センサ
17 センサ取り付けポール
18 環境計測センサ制御部
21 サーバラック
22 第1の通路
23 第2の通路
24 第3の通路
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定空間内での環境を計測する環境計測装置、および環境計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンピュータ装置などが集約的に設置されるサーバルーム、通信機械室などでは、サーバラックなどに設置された装置が発する熱量によって、室内温度分布にバラツキが発生し、空調が非効率となる。そこで、室内の温度を多点計測し、空調の送風角度や送風面積を調整して室内空気の撹拌をすることなどによって室内温度分布が均一になるようにして、効率的な空調を行い、空調エネルギーの削減を行うようにしている(空調制御システムとして、例えば、特許文献1参照)。
また、このような室内温度などの室内環境の計測に関しては、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(ビル衛生管理法、ビル管理法)関連省政令において定められた室内環境を表す環境要素についても計測を行うことが望ましい。このような環境要素の値は、一般的に、壁などに設置された温度計などによって計測される。あるいは、サーバルームにおいて壁やサーバラックなどから離れた空間中の室内環境を計測する際には、例えば、作業員が、温度などの室内環境を計測可能なハンディ端末装置を利用して計測している。
【特許文献1】特許第2563849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、壁などに計測装置を予め設置して行う室内環境の計測は、室内の複数個所に設置された温度計などの計測装置から、有線のケーブルを介して管理装置に計測結果を送信することによって行われる。このため、計測点が増えれば増えるほど、計測装置と管理装置とを接続する配線が複雑になる。また、環境を計測する室内には、その環境要素値の室内での分布を計測するために充分な数の計測装置を設置することが望ましいが、配線の複雑化、ケーブルを配線する場所の確保の限界などによって、設置可能な計測装置数やケーブルの配線施工には限りがある。このため、計測装置は限られた代表点のみに設置され、室内環境の分布の把握に充分な数の観測点での計測が行われていない場合がある。
ここで、有線による配線を単純化するために、これらの計測装置から、無線通信によって計測結果を管理装置に送信することも考えられるが、高い可用性や信頼性が求められるコンピュータ装置が設置される室内で無線通信を行うと、室内に設置された装置が誤動作を起こすなどの影響を与える可能性があるため、このような室内では無線通信を行わないことが望ましい。
また、室内の壁などに予め計測装置を設置して計測する方法では、計測点が壁面やサーバラックなどに隣接することとなり、壁やサーバラックなどの特性などが計測値に影響し、壁やサーバラックから離れた空間の環境とは誤差が生じることがある。すなわち、室内環境の計測に当たっては、できるだけこのような構造物から離れた、通路中央などで計測することが望ましい。
【0004】
また、作業員がハンディ端末装置を利用して室内環境を計測して回る方法では、人的コストがかかるだけでなく、計測点や計測結果の妥当性の判断などに作業員による個人差が生じ、計測結果の信頼性が低くなることが考えられる。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、有線による配線の複雑化をなくし、また、測定結果の出力を無線で行うことによる機器への影響を出さず、また、定められた複数の計測点において、室内環境を計測する環境計測装置、および環境計測方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、室内環境を表す環境要素の値を計測する環境計測センサと、環境計測センサを積載して走行する走行部と、走行部を駆動させて、予め定められた計測点に自装置を移動させる移動制御部と、移動制御部が計測点に自装置を移動させると、環境計測センサが計測する環境要素の値を取得する中央制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、上述の環境要素は、少なくとも浮遊粉塵量、一酸化炭素、二酸化炭素、温度、相対湿度、気流(風速)またはホルムアルデヒドのうちいずれかの要素の室内環境を表すことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上述の環境計測装置が、自装置が走行する室内における自装置の位置を示す情報を検出する位置センサをさらに備え、移動制御部は、位置計測センサが計測する位置に対応して自装置が走行するように走行部を駆動させ、予め定められた計測点に自装置を移動させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上述の位置センサが、予め床面に設けられたラインが示す色を検知し、移動制御部は、位置計測センサが検知する色に対応して自装置が走行するように走行部を駆動させ、位置計測センサが計測点を示す色を検知する位置に自装置を移動させることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上述の位置センサが、室内に設置された発光部が発する光を検知し、移動制御部は、位置計測センサが検知する光に対応して自装置が走行するように走行部を駆動させ、発光部と自装置との角度が予め定められた角度となる計測点に自装置を移動させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上述の位置センサが、レーザ光線を照射して検出物との距離を計測し、移動制御部は、位置計測センサが計測する距離に対応して自装置が走行するように走行部を駆動させ、予め定められた計測点に自装置を移動させることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上述の位置センサが、走行部の駆動部の回転数を計測し、移動制御部は、位置計測センサが計測する回転数と、予め記憶した計測点までの駆動回転数とが一致するまで走行部を駆動させ、計測点に自装置を移動させることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、環境計測装置の、移動制御部が、室内環境を表す環境要素の値を計測する環境計測センサを積載して走行する走行部を駆動させて、予め定められた計測点に自装置を移動させるステップと、中央制御部が、移動制御部が計測点に自装置を移動させると、環境計測センサに環境要素の値を計測させるステップと、を備えることを特徴とする環境計測方法である。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、移動制御部が、室内環境を表す環境要素の値を計測する環境計測センサを積載して走行する走行部を駆動させて、予め定められた計測点に自装置を移動させると、中央制御部が、環境計測センサに環境要素の値を計測させるようにしたので、予め温度計を設置することなく、また、一定空間内に複雑な配線を行うこともなく、また、無線通信を行うこともなく、定められた空間内の計測点の室内環境を計測することができる。
【0015】
また、本発明によれば、環境計測センサが計測する環境要素は、少なくとも浮遊粉塵量、一酸化炭素、二酸化炭素、温度、相対湿度、気流(風速)またはホルムアルデヒドのうちいずれかの要素の室内環境を表す環境要素の値を計測することとしたので、ビル管理法で定められた計測項目について、信頼性の高い計測を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態による環境計測装置10の構成を示す概略ブロック図である。
本実施形態による環境計測装置10は、定められた空間内を自走し、定められた計測点における室内環境を表す環境要素の値を計測して計測結果を記憶する装置であり、中央制御部11と、移動制御部12と、記憶部13と、走行部14と、位置センサ15と、環境計測センサ制御部18と、環境計測センサ16(環境計測センサ16−1、環境計測センサ16−2、環境計測センサ16−3)とを備えている。
【0017】
環境計測センサ16は、室内環境を表す環境要素の値を計測する。環境計測センサ16は、少なくとも浮遊粉塵量、一酸化炭素、二酸化炭素、温度、相対湿度、気流(風速)またはホルムアルデヒドのうちいずれかの要素の室内環境を表す環境要素の値を計測する。本実施形態では、環境計測センサ16は、温度を計測するセンサであり、例えば、サーミスタが適用できる。本実施形態では、環境計測装置10は、複数の環境計測センサ16を備えており、環境計測センサ16−1と、環境計測センサ16−2と、環境計測センサ16−3との環境計測センサ16を備えている。
【0018】
図2は、環境計測センサ16−1と、環境計測センサ16−2と、環境計測センサ16−3とが設置された環境計測装置10の外観を示す図である。環境計測装置10は、各機能部が格納された筐体の上部に、垂直に伸びるセンサ取り付けポール17を有する。センサ取り付けポール17は、本実施形態では2m(メートル)の長さがあり、センサ取り付けポール17には、予め定められた間隔で複数の環境計測センサ16が設置される。ここでは、センサ取り付けポール17上の、床上200cmの箇所に環境計測センサ16−1が、床上150cmの箇所に環境計測センサ16−2が、床上100cmの箇所に環境計測センサ16−3がそれぞれ設置されている。図2の(b)に示すように、環境計測装置10の下部には、自走するための車輪である走行部14が備えられ、走行前方には、位置センサ15が備えられる。
【0019】
図1に戻り、環境計測センサ制御部18は、後述する中央制御部11から計測命令を受信すると、環境計測センサ16から出力されるアナログ信号を取り込んでデジタルデータによる環境要素の値に変換し、変換された環境要素値を出力する。本実施形態では、環境計測センサ16から出力されるアナログ信号を温度情報に変換して出力する。また、環境計測センサ制御部18は、接続された複数の環境計測センサ16のそれぞれの識別情報と、それぞれの環境計測センサ16への配線との対応情報を予め記憶しておき、後述する中央制御部11から計測命令を受信すると、接続された全ての環境計測センサ16から出力されるアナログ信号を取り込んでデジタルデータの環境要素値を生成し、生成したそれぞれの環境要素値(温度情報)とそのアナログ信号を出力したそれぞれの環境計測センサ16の識別情報とを中央制御部11に送信する。
【0020】
位置センサ15は、環境計測装置10が走行する室内における自装置の位置を示す情報を検知する。本実施形態において、位置センサ15は、予め床面に設けられたラインが示す色を検知して、検知した色情報を出力するライントレースセンサである。位置センサ15は、床面に貼られたラインテープによるラインを光学的に読み取る光センサを有しており、光センサが読み取った色を示す色情報を出力する。位置センサ15は、少なくとも、赤、青、黄、緑との4色を検知する。位置センサ15は、動作中、検知した色を示す情報を、移動制御部12に出力する。
【0021】
走行部14は、環境計測装置10の下部に設置された車輪を有しており、移動制御部12から受信する移動命令に応じて車輪を駆動させて、環境計測装置10を移動させる。また、走行部14は、左右の車輪の回転速度を変えて走行方向を変えたり、左右の車輪の回転方向を逆にすることで旋回して進んだりすることができる。
【0022】
移動制御部12は、走行部14を駆動させて、予め定められた計測点に環境計測装置10を移動させる。本実施形態では、移動制御部12は、位置センサ15から出力される色情報と、環境計測装置10の走行速度と検出時間から算出される当該色のテープの長さとに基づいて、走行部14に、走行、停止、右折、左折、旋回などを示す移動命令を出力する。移動制御部12は、色情報と移動命令との対応情報を記憶しており、位置センサ15から出力される色情報に対応する移動命令を読み出して、読み出した移動命令を走行部14に出力する。また、移動制御部12は、位置センサ15が検知する色情報が、予め定められた計測点を示す場合には、計測点通知を中央制御部11に送信する。
【0023】
図3は、本実施形態において、移動制御部12が、位置センサ15から出力される色情報に対応して出力する移動命令の種別を示す図である。また、図4は、本実施形態による環境計測装置10で温度計測を行う室内を天井側から見た図である。図4に示されるように、室内には、複数のサーバラック21が設置されており、サーバラック21の間に、第1の通路22、第2の通路23、第3の通路24、との3通路が形成されており、ユーザは、これらの3通路の床面に、赤、青、黄、緑のテープラインを貼る。本実施形態では、図4に示される点P1を、環境計測装置10の走行のスタート地点とする。
【0024】
移動制御部12は、位置センサ15から受信する色情報が赤である場合には、走行を示す移動命令を走行部14に出力する。ラインテープの色は、黄が30cm(センチメートル)以上続いた場合には、停止して、温度測定処理を行うことを示す(図4の点P3)。緑が50cm以上続いた場合には、旋回(Uターン)を示す(図4の点P5)。黄色が5cm、緑が5cm続いた場合には、左折を示す(図4の点P2)。黄色が5cm、青が5cm続いた場合には、右折を示す(図4の点P6)。色情報が、青が5cm、赤が10cm、黄が30cm続いた場合には、その30cmの黄では、上述の停止と温度測定処理を行わず、走行することを示す(図4の点P4を、環境計測装置10が図の下側から上側に移動した場合)。
【0025】
中央制御部11は、移動制御部12から計測点通知を受信すると、環境計測センサ制御部18に計測命令を送信し、環境計測センサ制御部18から出力される環境要素値を、記憶部13に記憶させる。中央制御部11は、ひとつの計測点につき、予め定められた時間内(例えば、12秒)に、予め定められた間隔(例えば、2秒)毎に環境計測センサ制御部18から出力される環境要素値を受信し、受信した複数の環境要素値の平均値を環境要素値として記憶部13に記憶させる。ここで、中央制御部11は、複数回計測する環境要素値の値が、その複数回の計測時間内に定められた以上の変化率がある場合には、再計測を行うようにしても良い。例えば、12秒間計測するうちに、1度以上の変化があれば、再計測を行う。このようにすることで、安定した状態での室内環境を計測することができる。中央制御部11には、入力部、出力部、制御部、演算部、記憶部などを備えたPC(パーソナルコンピュータ)などのコンピュータが適用できる。中央制御部11は、環境計測センサ制御部18から受信する環境要素値に基づいて、表形式の計測結果表を含む環境要素値計測結果情報を生成する。図5は、中央制御部11が生成する、室内の水平断面における計測結果表の例を示す図である。
【0026】
図5において、(a)は、環境計測センサ16−1の計測結果表、(b)は、環境計測センサ16−2の計測結果表、(c)は、環境計測センサ16−3の計測結果表をそれぞれ示している。計測結果表には、計測対象の空間における平面上の空間の計測点の座標位置を表内のセルの位置に対応させて、空間内の計測点に対応する表内のセルに環境要素値(温度情報)が書き込まれる。例えば、図5のそれぞれの計測結果表には、図4に示した3通路が設けられた室内で、1通路につき7箇所の、計21箇所で温度計測を行った温度情報の結果が示されている。図5の計測結果表では、計測した通路毎に列を分けて、1通路内での計測点ごとに行を分けて、それぞれの計測点での計測結果をセル内に表示させている。中央制御部11は、環境計測センサ制御部18から温度情報を受信すると、予め定められた規則に基づいて、計測結果表のセルに温度値を対応させる。ここで、予め定められた規則とは、例えば、中央制御部11は、1列(各通路)に、計測点が何箇所存在するかを予め記憶しておき、温度値を計測結果表の左上から左下に向かって順番に入力し、予め定められた計測点数分入力したら、2列目の上から入力する。中央制御部11は、このような規則は、予め中央制御部11の記憶領域に記憶しておいても良いし、起動前に、ユーザから計測点数の入力を受け付けるようにしても良い。
【0027】
本実施形態では、これらの計測結果表は、表計算ソフトの機能により、計測結果が入力されたセルの背景色を計測結果の値に応じて変化させるように設定しても良い。例えば、温度が低ければ背景色を薄く、高ければ背景色を濃くするよう設定する。また、背景色は、温度が低ければ水色に、温度が高ければ赤色にするようにしても良い。例えば、環境計測装置10は、自身に表示部を備えることとし、このように記憶部13に記憶された温度計測結果情報を表計算ソフトによる表形式で表示させることで、ユーザは、温度の分布を視覚的に把握することができる。例えば、ユーザは、図5に示されるような表を見れば、全体として(a)から(c)にいくほど、すなわち床に近づくほど温度が低くなっていることや、一定空間内の温度のバラツキなどを、一見して把握することができる。また、環境計測装置10は、このような計測結果に基づいて、図6のような画像を生成し、空間内の(a)、(b)、(c)の水平断面の温度分布を、視覚的に把握することができるようにしても良い。
【0028】
図7は、中央制御部11が生成する垂直断面の計測結果表の例を示す。中央制御部11は、水平断面の計測結果表と同様に、空間内の計測点と対応させた垂直断面の計測結果表を生成する。このような垂直断面の計測結果表によれば、図8に示すような空間内の(a)、(b)、(c)の垂直断面の温度分布を、視覚的に把握することができる。このように、中央制御部11は、表計算ソフトなどを用いて、計測結果表を、空間内の垂直方向、水平方向などによって表にしたりグラフ化したりすることで、さまざまな形式で視覚的に温度情報を把握するようにすることができる。このような計測結果表は、表計算ソフトを用いて生成しても良いし、計測結果表や計測結果表に対応するグラフを描画するようなプログラムを用意し、生成しても良い。また、このような計測結果表を、ウェブ上に表示させるような情報を生成するようにしても良い。
記憶部13は、中央制御部11が生成する温度計測結果情報を記憶する。
【0029】
次に、本発明による環境計測装置10が、室内の温度計測処理を行う動作例を説明する。
図9は、本実施形態による環境計測装置10の動作例を示すフローチャートである。まず、ユーザは、環境計測装置10を用いて温度計測を行う室内に、図3に示されるような色情報と移動命令の対応に従って、図4のようにテープラインを貼る(ステップS1)。
【0030】
ユーザは、本実施形態による環境計測装置10を、ステップS1で貼ったライン上の、スタート地点(図4の点P1)に乗せる(ステップS2)。そして、中央制御部11は、ユーザからの起動命令の入力に従って動作を起動すると(ステップS3)、環境計測センサ制御部18との通信を確立する(ステップS4)。そして、位置センサ15が、床面のラインテープの色を検知する処理を開始すると、移動制御部12は、走行部14を制御する処理を開始する(ステップS5)。位置センサ15が、ラインテープの色を検知し、検知した色を示す色情報を移動制御部12に出力し、移動制御部12は、受信した色情報に対応する移動命令を出力する。例えば、移動制御部12は、赤を示す色情報を受信すると、走行部14に、走行を示す移動命令を出力する。走行部14が、車輪を駆動させて走行を開始し、環境計測装置10は、自走して計測点で停止し、温度を計測する計測処理を行う(ステップS6)。
【0031】
図4を参照して、環境計測装置10が、ラインテープが示す色に従って、温度計測を行いながら空間内の温度の計測処理を行うルートを説明する。環境計測装置10は、ラインテープが示す色に従って、点P1から点P2の方向に向かって走行する。そして、点P2で、位置センサ15が、黄と緑との色情報を移動制御部12に送信すると、移動制御部12が、左折と判断して、走行部14に左折する移動命令を出力する。走行部14は、環境計測装置10を、左折させて走行させる。
【0032】
そして、点P3で、位置センサ15が、黄を示す色情報を移動制御部12に送信すると、移動制御部12が、停止と温度計測とを行う計測点であると判定し、走行部14に、停止を示す移動命令を出力する。そして、走行部14は、環境計測装置10の走行を停止させる。また、移動制御部12は、中央制御部11に、計測点通知を送信する。中央制御部11は、計測点通知を受信すると、環境計測センサ制御部18に計測命令を送信する。環境計測センサ制御部18は、計測命令を受信すると、環境計測センサ16−1と、環境計測センサ16−2と、環境計測センサ16−3とがそれぞれ出力するアナログ信号から、環境要素値(温度情報)を生成する。中央制御部11は、環境計測センサ制御部18から受信した温度情報のうち、環境計測センサ16−1に対応する温度情報を、図5の(a)の計測結果表の1行目、1列目に入力し、環境計測センサ16−2に対応する温度情報を、図5の(b)の計測結果表の1行目、1列目に入力し、環境計測センサ16−3に対応する温度情報を、図5の(c)の計測結果表の1行目、1列目に入力する。
【0033】
環境計測装置10は、図4の第1の通路22の通路を点P3から点P5に向かって走行しながら、ラインテープの黄色の箇所で停止し、温度計測を行い、温度計測結果を記憶部13に記憶させる処理を繰り返す。環境計測装置10は、図4に示される第1の通路22の端部である点P5に到達すると、ラインテープが示す色に従って、旋回し、第1の通路22を、点P4の方向に向かって走行する。環境計測装置10は、点P4では、青と赤と黄との色に従って、その黄では温度計測を行わない。
【0034】
このように、環境計測装置10は、点P1からスタートして、ラインテープ上を第1の通路22に向かって走行し、第1の通路22の各点(黄)で温度計測を行い、第2の通路23の各点(黄)で温度計測を行い、第3の通路24の各点(黄)で温度計測を行って、点P1に戻ってくると、計測処理を終了する。このようにして、環境計測装置10は、各計測点で温度計測を行い、記憶部13に、図5や図7に示されるような複数の測定結果表である温度計測結果情報を記憶させる。
【0035】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、環境計測装置10は、予め床面に貼られたラインテープを辿って走行することとしたが、第2の実施形態における環境計測装置10は、図10に示すように、位置センサ15に赤外線を検出する赤外線センサ15−2を適用して、室内に設置された発光部20が発する光を検知し、移動制御部12は、赤外線センサ15−2が検知する光に対応して環境計測装置10が走行するように走行部14を駆動させ、発光部20と環境計測装置10との角度が予め定められた角度となる計測点に環境計測装置10を移動させ、環境要素の計測を行う。
【0036】
図10は、本実施形態における環境計測装置10によって環境要素値を計測する形態を示す図である。室内の壁面に、赤外線を照射する発光部20を予め設置する。発光部20は、床面に対して、ライトスポット30−1と、ライトスポット30−2とを照射する。環境計測装置10の赤外線センサ15−2は、ライトスポット30−1とライトスポット30−2とに照射された赤外線スポットを検知し、その検知角度に基づいて、移動制御部12が、走行部14を駆動させて環境計測装置10を移動させる。移動制御部12は、計測点となる赤外線の検知角度を予め記憶しておき、位置センサ15−2による赤外線の検知角度が予め定められた計測点の検知角度となる地点に環境計測装置10を移動させると、中央制御部11に、計測点通知を出力する。その他、中央制御部11が環境計測センサ制御部18と環境計測センサ16とを用いて環境要素の計測を行う等の構成・動作については、第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0037】
なお、このような、赤外線センサ15−2を適用し、赤外線を検知して環境計測装置10を動作させる際には、図11に示すように構成しても良い。すなわち、床面に発光部20(発光部20−1、発光部20−2、発光部20−3、発光部20−4)を設け、環境計測装置10は、赤外線センサ15−2によって発光部20から発光される赤外線を検知して移動するようにしても良い。ここで、床面に設置する発光部20は、サーバラック等の構造物の配置や計測する室内の広さ、計測点の分布などによって、任意の複数個所に設けて良い。また、図12に示すように、サーバラック21の上部に発光部20を設置して、発光部20から照射される赤外線を、赤外線センサ15−2によって検知するようにしても良い。
【0038】
また、図13に示すように、壁面に設けた発光部20から天井に赤外線を照射して天井面に赤外線スポット(ライトスポット30−1、ライトスポット30−2)を形成し、赤外線センサ15−2は、これを検知するようにしても良い。また、図14に示すように、サーバラック21の上部に発光部20を設置して天井面に赤外線を照射させるようにしても良い。また、図15に示すように、天井に段差がある場合には、壁の片面に発光部20−1を、反対面に発光部20−2を設けて、それぞれが天井に照射する赤外線を位置センサ15−2が検知するようにしても良い。また、図16に示すように、複数の発光部20(発光部20−1、発光部20−2)を天井面に設置して発光部20が発光する赤外線を赤外線センサ15−2が検知するようにしても良い。
【0039】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態の適用例を説明する。図17は、本実施形態による環境計測装置10が環境要素の計測を行う概念図である。本実施形態では、環境計測装置10が備える位置センサ15に、レーザ光線を照射して検出物との距離を計測する測域センサ15−3を適用してサーバラック21などの構造物を検出し、移動制御部12は、予め記憶された室内の構造物の配置情報と比較しながら、走行部14を駆動させて環境計測装置10を予め定められた計測点に移動させ、環境要素の計測を行う。
【0040】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態の適用例を説明する。図18は、本実施形態による環境計測装置10が環境要素の計測を行う概念図である。本実施形態では、環境計測装置10が備える位置センサ15に、走行部14の駆動部の回転数を検知する回転数計測部を適用し、移動制御部12は、回転数計測部が検知する走行部14の駆動回転数が、予め定められるN回転(Nは任意の数)になった場合に、その地点を計測点と判定し、中央制御部11に計測点通知を出力する。
本実施形態においては、移動制御部12は、予め車輪の回転数と移動命令とを対応させて記憶しておき、走行部14による環境計測装置10の走行開始後、定められた回数分、車輪を回転させて移動したら、対応する移動命令に従って、計測処理や左折、旋回などの動作を行うように走行部14の制御を行う。
【0041】
なお、本実施形態では、センサ取り付けポール17の長さを2mとし、3個の環境計測センサ16を設置することとしたが、ユーザは、温度計測の目的や、空間の空調設備やコンピュータ機器の設置位置などの環境によって、センサ取り付けポール17の長さや、設置する環境計測センサ16の数を変更して良い。
【0042】
また、本実施形態では、環境計測センサ16は温度を計測するための温度センサとしてサーミスタを適用するとしたが、温度センサは、計測した温度情報を出力することが可能な機器であれば、サーミスタでなくとも良い。例えば、白金の温度による電気抵抗の変化を検出することによって温度を測定する電気式温度計や、温度によって誘電率の変化する感温体を誘電体に用いたコンデンサの容量の変化を検出する電気式温度計などが適用可能である。
【0043】
また、本実施形態においては、環境計測センサ16は温度を計測する温度センサであるとしたが、環境計測センサ16には、浮遊粉塵量、一酸化炭素、二酸化炭素、温度、相対湿度、気流(風速)またはホルムアルデヒドのうちいずれかの要素の室内環境を表す環境要素を計測するセンサが適用できる。また、環境計測装置10は、実測した各環境要素値が、図19に示されるような、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(ビル衛生管理法、ビル管理法)関連省政令に規定された室内環境の環境要素の各値に適合するか否かを判定し、その判定結果を記憶部13に記憶させるようにしても良い。
【0044】
また、環境計測装置10は、温度を計測する空間内のCAD(Computer Aided Design)データを予め記憶しておき、CADデータに従って走行するルートを判定するようにしても良い。
また、環境計測装置10が走行するルートは、キーボードやマウスなどの入力装置を用いて、ユーザから、走行するルートと温度の計測点の入力を受け付けるようにしても良い。また、環境計測装置10は、走行する通路上に、予め定められた間隔で計測点を設けるようにしても良い。また、環境計測装置10は、温度を測定する空間内に設けられた基地局との接続部を設け、基地局まで移動して接続し、基地局と通信して、設定情報などを入力したり、計測した温度情報を出力したり、充電したりするようにしても良い。
【0045】
また、環境計測装置10には、障害物センサを設けて、走行中に、周囲に障害物を検知した場合には、走行を停止するようにしても良い。また、重力センサを設けて、例えば、15度以上の傾斜を感知すると停止するようにしても良い。
また、環境計測装置10の環境計測センサ16が計測を行った後、他の計測点まで移動して計測を繰り返す際、走行を停止して、中央制御部11が環境計測センサ制御部18を用いて温度の計測を行う際には、中央制御部11が環境計測センサ制御部18を用いて温度の計測を行うために必要な時間を予め記憶しておき、その時間の経過後に再走行を開始するようにしても良いし、中央制御部11が、計測が完了した際に移動制御部12に完了を通知し、移動制御部12は、計測完了の通知を受信したら走行を再開するようにしても良い。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について説明した。本実施形態による環境計測装置の各手段は、専用のハードウェア(例えば、ワイヤードロジック等)により実現されるようにしても良いし、メモリおよびCPU(中央処理装置)により構成され、各部の機能を実現するためのプログラムをメモリからロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。また、本発明における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより環境計測を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0047】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施形態による環境計測装置の構成例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による環境計測装置の外観例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態によるラインテープの色と移動命令の種別の対応を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による環境計測装置によって温度を計測する空間の例を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態による環境計測装置に生成される水平断面の計測結果表の例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態による環境計測装置に生成される水平断面を表す概念図である。
【図7】本発明の第1の実施形態による環境計測装置に生成される垂直断面の計測結果表の例を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施形態による環境計測装置に生成される垂直断面を表す概念図である。
【図9】本発明の第1の実施形態による環境計測装置の動作例を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第2の実施形態による環境計測装置の概念を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施形態による環境計測装置の概念を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施形態による環境計測装置の概念を示す図である。
【図13】本発明の第2の実施形態による環境計測装置の概念を示す図である。
【図14】本発明の第2の実施形態による環境計測装置の概念を示す図である。
【図15】本発明の第2の実施形態による環境計測装置の概念を示す図である。
【図16】本発明の第2の実施形態による環境計測装置の概念を示す図である。
【図17】本発明の第3の実施形態による環境計測装置の概念を示す図である。
【図18】本発明の第4の実施形態による環境計測装置の概念を示す図である。
【図19】ビル管理法により定められた計測項目とその値を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
10 環境計測装置
11 中央制御部
12 移動制御部
13 記憶部
14 走行部
15 位置センサ
15−2 赤外線センサ
15−3 測域センサ
16 環境計測センサ
17 センサ取り付けポール
18 環境計測センサ制御部
21 サーバラック
22 第1の通路
23 第2の通路
24 第3の通路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内環境を表す環境要素の値を計測する環境計測センサと、
前記環境計測センサを積載して走行する走行部と、
前記走行部を駆動させて、予め定められた計測点に自装置を移動させる移動制御部と、
前記移動制御部が前記計測点に自装置を移動させると、前記環境計測センサが計測する前記環境要素の値を取得する中央制御部と、
を備えることを特徴とする環境計測装置。
【請求項2】
前記環境要素は、少なくとも浮遊粉塵量、一酸化炭素、二酸化炭素、温度、相対湿度、気流またはホルムアルデヒドのうちいずれかの要素の室内環境を表すこと
を特徴とする請求項1に記載の環境計測装置。
【請求項3】
自装置が走行する室内における自装置の位置を示す情報を検出する位置センサをさらに備え、
前記移動制御部は、前記位置計測センサが計測する位置に対応して自装置が走行するように前記走行部を駆動させ、予め定められた計測点に自装置を移動させる
ことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の環境計測装置。
【請求項4】
前記位置センサは、予め床面に設けられたラインが示す色を検知し、
前記移動制御部は、前記位置計測センサが検知する色に対応して自装置が走行するように前記走行部を駆動させ、前記位置計測センサが前記計測点を示す色を検知する位置に自装置を移動させる
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の環境計測装置。
【請求項5】
前記位置センサは、前記室内に設置された発光部が発する光を検知し、
前記移動制御部は、前記位置計測センサが検知する光に対応して自装置が走行するように前記走行部を駆動させ、前記発光部と自装置との角度が予め定められた角度となる計測点に自装置を移動させる
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の環境計測装置。
【請求項6】
前記位置センサは、レーザ光線を照射して検出物との距離を計測し、
前記移動制御部は、前記位置計測センサが計測する前記距離に対応して自装置が走行するように前記走行部を駆動させ、予め定められた計測点に自装置を移動させる
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の環境計測装置。
【請求項7】
前記位置センサは、前記走行部の駆動部の回転数を計測し、
前記移動制御部は、前記位置計測センサが計測する前記回転数と、予め記憶した計測点までの駆動回転数とが一致するまで前記走行部を駆動させ、前記計測点に自装置を移動させる
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の環境計測装置。
【請求項8】
環境計測装置の、
移動制御部が、室内環境を表す環境要素の値を計測する環境計測センサを積載して走行する走行部を駆動させて、予め定められた計測点に自装置を移動させるステップと、
中央制御部が、前記移動制御部が前記計測点に自装置を移動させると、前記環境計測センサに前記環境要素の値を計測させるステップと、
を備えることを特徴とする環境計測方法。
【請求項1】
室内環境を表す環境要素の値を計測する環境計測センサと、
前記環境計測センサを積載して走行する走行部と、
前記走行部を駆動させて、予め定められた計測点に自装置を移動させる移動制御部と、
前記移動制御部が前記計測点に自装置を移動させると、前記環境計測センサが計測する前記環境要素の値を取得する中央制御部と、
を備えることを特徴とする環境計測装置。
【請求項2】
前記環境要素は、少なくとも浮遊粉塵量、一酸化炭素、二酸化炭素、温度、相対湿度、気流またはホルムアルデヒドのうちいずれかの要素の室内環境を表すこと
を特徴とする請求項1に記載の環境計測装置。
【請求項3】
自装置が走行する室内における自装置の位置を示す情報を検出する位置センサをさらに備え、
前記移動制御部は、前記位置計測センサが計測する位置に対応して自装置が走行するように前記走行部を駆動させ、予め定められた計測点に自装置を移動させる
ことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の環境計測装置。
【請求項4】
前記位置センサは、予め床面に設けられたラインが示す色を検知し、
前記移動制御部は、前記位置計測センサが検知する色に対応して自装置が走行するように前記走行部を駆動させ、前記位置計測センサが前記計測点を示す色を検知する位置に自装置を移動させる
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の環境計測装置。
【請求項5】
前記位置センサは、前記室内に設置された発光部が発する光を検知し、
前記移動制御部は、前記位置計測センサが検知する光に対応して自装置が走行するように前記走行部を駆動させ、前記発光部と自装置との角度が予め定められた角度となる計測点に自装置を移動させる
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の環境計測装置。
【請求項6】
前記位置センサは、レーザ光線を照射して検出物との距離を計測し、
前記移動制御部は、前記位置計測センサが計測する前記距離に対応して自装置が走行するように前記走行部を駆動させ、予め定められた計測点に自装置を移動させる
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の環境計測装置。
【請求項7】
前記位置センサは、前記走行部の駆動部の回転数を計測し、
前記移動制御部は、前記位置計測センサが計測する前記回転数と、予め記憶した計測点までの駆動回転数とが一致するまで前記走行部を駆動させ、前記計測点に自装置を移動させる
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の環境計測装置。
【請求項8】
環境計測装置の、
移動制御部が、室内環境を表す環境要素の値を計測する環境計測センサを積載して走行する走行部を駆動させて、予め定められた計測点に自装置を移動させるステップと、
中央制御部が、前記移動制御部が前記計測点に自装置を移動させると、前記環境計測センサに前記環境要素の値を計測させるステップと、
を備えることを特徴とする環境計測方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−222657(P2009−222657A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69624(P2008−69624)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]