説明

環境試験装置及び蓄冷器

【課題】蓄冷力の高い蓄冷器を提供する。
【解決手段】低温槽6の温度を予冷温度−75℃まで下げる。このとき、凝固点が−70℃である蓄冷器20のエタノール水溶液は凝固する。その後、テストエリア7内の空気及び低温槽6内の空気を低温さらし温度−65℃とする低温さらしの段階に移行する。この低温槽6の温度が予冷温度から低温さらし温度に変化する過程において、温度が−70℃より高くなると、エタノール水溶液は融解し始める。従って、エタノール水溶液は、熱容量分の蓄熱量に加えて融解熱が利用可能となるため、吸収する熱量が増大する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被試験物に対して加熱と冷却とを繰り返すことによって耐久性の試験を行なう環境試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品や電子機器等の温度変化に対する耐久性を評価するために、特許文献1に開示されているような環境試験装置が提供されている。特許文献1に開示されている環境試験装置は、試験環境を高温の雰囲気温度に調整された第1の試験環境と第1の試験環境よりも低温の雰囲気温度に調整された第2の試験環境とを含む複数の試験環境に切り替え可能となっている。
【特許文献1】特開2007−333559号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の環境試験装置の低温試験槽には、雰囲気温度を低温に調整するために、蒸発器及び低温試験槽の熱容量を増大させる蓄冷器が設けられている。このような蓄冷器は、通常、板状のアルミニウムがスペーサーを挟んで複数枚連結された構造となっており、空気との熱交換を行っている。しかしながら、このような蓄冷器は、蓄冷器を設けることによって環境試験装置が大型化されるにも関わらず、蓄冷能力が高くないという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、蓄冷力の高い蓄冷器を備えた環境試験装置及び蓄冷器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の環境試験装置は、空気を冷却する冷却機構及び蓄冷器を内部に備えた低温槽と、環境試験用の試験物を入れるためのテストエリアと、前記低温槽と前記テストエリアとを連通させている連通状態、及び、非連通にさせている非連通状態となるように開閉可能なダンパと、前記ダンパが前記連通状態のときに、前記テストエリア及び前記低温槽内の空気を循環させることが可能な送風機と、前記低温槽、前記送風機、及び、前記ダンパを制御する制御手段とを備えており、前記制御手段は、前記蓄冷器が、前記ダンパが前記連通状態のときに、前記テストエリア内及び前記低温槽内の空気が平衡温度である低温さらし温度となり、前記ダンパが前記非連通状態のときに、前記低温さらし温度よりも低い予冷温度となるように、前記ダンパ、前記低温槽、及び、前記送風機を制御し、前記蓄冷器が、チューブと、前記チューブ内に封入された蓄冷材とを備えており、前記蓄冷材が、前記低温さらし温度と前記予冷温度との間に凝固点を有することを特徴としている。
【0006】
上記の構成によると、前記蓄冷材が、前記低温さらし温度と前記予冷温度との間に凝固点を有するため、前記蓄冷器が前記予冷温度から前記低温さらし温度に変化することによって、前記蓄冷材は、前記蓄冷器が前記予冷温度であるときは凝固しているが、前記蓄冷器が前記低温さらし温度に変化する過程において融解し始める。従って、前記蓄冷材は、熱容量分の蓄熱量に加え融解熱が利用可能となり、吸収する熱量が増大する。よって、蓄冷力の高い蓄冷器を備えた環境試験装置が提供される。
【0007】
また本発明の環境試験装置は、空気の温度を上昇させるための加熱器を備えた高温槽をさらに備えており、前記低温槽は、空気の温度を上昇させるための加熱器をさらに備えていることが望ましい。これによると、高温槽及び低温槽によって、テストエリア内の温度を急激に変化させることが可能である。従って、より温度変化の激しい環境での試験を行うことができる。
【0008】
また、前記蓄冷材は、エタノール水溶液、メタノール水溶液、または、エチレングリコール水溶液であることが望ましい。これによると、エタノール水溶液、メタノール水溶液、または、エチレングリコール水溶液が、前記低温さらし温度と前記予冷温度との間に凝固点を有するため、前記蓄冷器が前記予冷温度から前記低温さらし温度に変化することによって、当該水溶液は、前記蓄冷器が前記予冷温度であるときは凝固しているが、前記蓄冷器が前記低温さらし温度に変化する過程において融解し始める。従って、当該水溶液は、熱容量分の蓄熱量に加え融解熱が利用可能となり、吸収する熱量が増大する。よって、蓄冷力の高い蓄冷器を備えた環境試験装置が提供される。
【0009】
また、前記蓄冷材は、水溶液中のアルコール濃度が70〜85wt%、または、エチレングリコール濃度が60〜75wt%であることが望ましい。
【0010】
また、前記蓄冷器は、前記チューブの周囲に設けられたフィンをさらに備えていることが望ましい。これによると、蓄冷器の外表面積が大きくなり、空気との熱交換性能を向上させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の好適な一実施の形態を、図1〜図6に基づいて以下に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態である環境試験装置1の全体的な構成を示す断面図であって、後述する高温槽ダンパ52が非連通状態、且つ、低温槽ダンパ62が非連通状態となっているときの図である。図2は、環境試験装置1において、高温槽ダンパ52が非連通状態、且つ、低温槽ダンパ62が連通状態となっているときの図である。図3は、環境試験装置1において、高温槽ダンパ52が連通状態、且つ、低温槽ダンパ62が非連通状態となっているときの図である。
【0013】
図1に示すように、環境試験装置1は、図1中右側に位置したサブエリア2と、図1中左側に位置すると共にサブエリア2に隣接するメインエリア3と、メインエリア3に設けられた孔を介してサブエリア2内からメインエリア3内まで延在するように配置された高温槽用送風機11及び低温槽用送風機12と、装置1の動作を制御するコントローラ50とを有する。高温槽用送風機11は、モータ11bと、モータ11bによって駆動されるファン11aと、モータ11b及びファン11aを接続する軸部11cとを含んでいる。また、低温槽用送風機12は、モータ12bと、モータ12bによって駆動されるファン12aと、モータ12b及びファン12aを接続する軸部12cとを含んでいる。
【0014】
サブエリア2の上方には、高温槽用送風機11のモータ11bが、下方には、低温槽用送風機12のモータ12bが配置されている。また、サブエリア2の最下部には、コントローラ50が配置されている。
【0015】
メインエリア3には、その枠となるように断熱壁4が設けられている。即ち、断熱壁4によってメインエリア3が画定されている。断熱壁4内では上から順に、内部を高温にするための高温槽5、環境試験用の試験物を入れるためのテストエリア7、及び、内部を低温にするための低温槽6が、上下方向に積み重ねられるように配置されている。高温槽5とテストエリア7との境界部分には断熱板8が設けられており、図1中左右方向に関して断熱板8と断熱壁4との間には断熱板8をその厚さ方向に貫通した長孔3aがそれぞれ形成されている。即ち、断熱板8は、図1中左右方向に関して断熱壁4から隔離されており、高温槽5とテストエリア7とが長孔3aを介して連通した状態となっている。また同様に、低温槽6とテストエリア7との境界部分には断熱板9が設けられており、図1中左右方向に関して断熱板9と断熱壁4との間には断熱板9をその厚さ方向に貫通した長孔3bがそれぞれ形成されている。即ち、断熱板9は、図1中左右方向に関して断熱壁4から隔離されており、低温槽6とテストエリア7とが長孔3bを介して連通した状態となっている。
【0016】
断熱壁4は、断熱板8が位置する高さにおいて、各長孔3a内に僅かに突出する突出部4aを有すると共に、断熱板9が位置する高さにおいて、各長孔3b内に僅かに突出する突出部4bを有する。
【0017】
さらに、断熱板8と突出部4aとの間の長孔3aをそれぞれ覆い隠すように高温槽ダンパ52がそれぞれ配置されている。高温槽ダンパ52は、長孔3aを閉塞及び開放するように開閉可能となっており、長孔3aを閉塞することによって高温槽5とテストエリア7とを断熱する役割を持つ。高温槽ダンパ52は、長孔3aを開放して高温槽5とテストエリア7とを連通させている連通状態(図3参照)、及び、長孔3aを閉塞して高温槽5とテストエリア7とを非連通にさせている非連通状態(図1及び図2参照)となることができる。また、断熱板9と突出部4bとの間の長孔3bをそれぞれ覆い隠すように低温槽ダンパ62がそれぞれ配置されている。低温槽ダンパ62も同様に、長孔3bを閉塞及び開放するように開閉可能となっており、長孔3bを閉塞することによって低温槽6とテストエリア7とを断熱する役割を持つ。低温槽ダンパ62は、長孔3bを開放して低温槽6とテストエリア7とを連通させている連通状態(図2参照)、及び、長孔3bを閉塞して低温槽6とテストエリア7とを非連通にさせている非連通状態(図1及び3参照)となることができる。
【0018】
また、テストエリア7内において、図1中左右方向両端付近には常温さらし用ダンパ72が設けられている。常温さらし用ダンパ72は、テストエリア7における紙面奥側の断熱壁4に設けられていると共にテストエリア7と環境試験装置1の外部とを連通させる図示しない吸気口及び排気口それぞれを閉塞及び開放するように開閉可能となっている。即ち、常温さらし用ダンパ72は、当該吸気口及び排気口を介してテストエリア7と環境試験装置1の外部とを連通させている連通状態、及び、非連通にさせている非連通状態となることができる。また、環境試験装置1の外部には図示しない常温さらし用送風機が備えられており、常温さらし用ダンパ72が連通状態のときに外気とテストエリア7内の空気とを混合させる役割を有する。
【0019】
高温槽5には、槽内の温度を上昇させるための加熱ヒータ51が2つ備えられている。さらに、高温槽5において、図1中右側の断熱壁4付近には、高温槽用送風機11のファン11aが配置されている。ファン11aは、図1中右側の断熱壁4に設けられた孔内に挿入された軸部11cを介して、サブエリア2内のモータ11bに連結されている。ファン11aは、図1及び図2のように高温槽ダンパ52が非連通状態のときに高温槽5内の空気を循環させる役割、及び、図3のように高温槽ダンパ52が連通状態のときに、高温槽5内の空気とテストエリア7内の空気とを混合する役割を有する。また、高温槽5における紙面奥側の断熱壁4には、換気用の吸気口53及び排気口54が配置されており、図示しないダンパの開閉によって高温槽5内の空気と外気とを入れ換え可能となっている。
【0020】
低温槽6には、蒸発器63と、蓄冷器20と、3つの加熱器61とが備えられている。蒸発器63は、外部に配置された図示しない冷凍機に接続されており、図示しない冷媒を蒸発させる際の気化熱を利用することによって、低温槽6の温度を下げることが可能である。後述する本実施形態では、低温槽ダンパ62が連通状態のときに、低温槽6の温度を、テストエリア7内で試験物がさらされる冷気の温度であって、テストエリア7内及び低温槽6内の空気が平衡温度である低温さらし温度にする。さらに、テストエリア7内の空気を短時間で低温さらし温度に変化させるために、低温槽ダンパ62が非連通状態のときに、低温さらし温度よりも低い予冷温度にする。また加熱器61は、槽内の温度を上昇させるためのものであって、これらの加熱器61によって低温槽6の温度が低温さらし温度または予冷温度未満にならないように調節可能である。蓄冷器20の詳細については後述する。
【0021】
また低温槽6において、図1中右側の断熱壁4付近に、低温槽用送風機12のファン12aが配置されている。ファン12aは、図1中右側の断熱壁4に設けられた孔内に挿入された軸部12cを介して、サブエリア2内のモータ12bに連結されている。ファン12aは、図1及び図3のように低温槽ダンパ62が非連通状態のときに低温槽6内の空気を循環させる役割、及び、図2のように低温槽ダンパ62が連通状態のときに、低温槽6内の空気とテストエリア7内の空気とを混合する役割を持つ。
【0022】
次に、図4を参照して蓄冷器20の詳細を説明する。蓄冷器20は、蛇行するように構成されていると共に内部が空洞となったエロフィンチューブ21と、チューブ21の周囲に螺旋状に巻き付けられたフィン22と、チューブ21内に封入されたエタノール水溶液とを有する。従って、エロフィンチューブ21は、外部がフィン加工されていると言える。フィン22には比熱の大きいアルミなどが用いられ、冷却された低温槽6内の空気によって蓄冷される。フィン22の構造は、空気との熱交換性能を向上させるために外表面積を大きくするためのものである。エタノール水溶液は、冷熱を蓄えるための蓄冷材として封入されている。従って、エタノール水溶液はフィン22と同様、冷却された低温槽6内の空気によって蓄冷される。
【0023】
上述したように蒸発器63によって低温槽6内の空気が低温さらし温度に冷却されると、蓄冷器20も低温さらし温度となる。また、低温槽6内の空気が予冷温度に冷却されると、蓄冷器20も予冷温度となる。なお、エタノール水溶液は、これらの低温さらし温度と予冷温度との間に凝固点を有するように調整されている。エタノール水溶液の濃度と凍結温度(凝固点)との関係を以下の表1に示す。
【表1】

また、図5は、エタノール水溶液の濃度と凍結温度(凝固点)との関係を示したグラフである。本実施形態におけるエタノール水溶液は、濃度が82wt%のものであって、その凝固点は−70℃である。
【0024】
よって、低温槽6内の空気を予冷温度に冷却した後に低温さらし温度にすると、蓄冷器20も予冷温度から低温さらし温度に変化し、エタノール水溶液は、蓄冷器20が予冷温度であるときは凝固しているが、蓄冷器20が低温さらし温度に変化する過程において融解し始める。従って、エタノール水溶液は、熱容量分の蓄熱量に加えて融解熱が利用可能となるため、吸収する熱量が増大する。
【0025】
なお、環境試験装置1はコントローラ50によって制御される。即ち、
高温槽ダンパ52、低温槽ダンパ62、常温さらし用ダンパ72、高温槽用送風機11、低温槽用送風機12、常温さらし用送風機、加熱ヒータ51、蓄冷器20、蒸発器63、及び、加熱器61は全てコントローラ50によって制御される。
【0026】
次に、図6を参照しつつ環境試験装置1の動作例について説明する。図6は、本実施形態に係る、時間経過に伴った高温槽5、テストエリア7、及び、低温槽6それぞれの温度変化を示したグラフである。本実施形態では、予冷温度を−75℃、低温さらし温度を−65℃とする。また、上述したように、エタノール水溶液の凝固点は−70℃とする。
【0027】
まず、テストエリア7の温度をほぼ常温にするため、図1に示すように高温槽ダンパ52を非連通状態とすると共に低温槽ダンパ62を非連通状態とし、常温さらし用ダンパ72を連通状態とする。そして、高温槽用送風機11、低温槽用送風機12、及び、図示しない常温さらし用送風機を起動させる。
【0028】
さらに、高温槽5内の加熱ヒータ51によって高温槽5の温度を上昇させると共に、低温槽6内の蒸発器63によって低温槽6の温度を予冷温度−75℃まで下げる。このとき、高温槽ダンパ52が非連通状態となっているため、高温槽5内の空気は図1の高温槽5内の矢印方向に循環する。また同様に、低温槽ダンパ62が非連通状態となっているため、低温槽6内の空気は図1の低温槽6内の矢印方向に循環する。また、常温さらし用ダンパ72が連通状態となっているため、外気とテストエリア7内の空気とが混合される。このように、テストエリア7の温度はほぼ常温となる。
【0029】
この低温槽6の温度が予冷温度に変化する過程において、温度が−70℃以下になると、凝固点が−70℃であるエタノール水溶液は凝固する。即ち、低温槽6の温度が予冷温度であるとき、エタノール水溶液は凝固している。
【0030】
高温槽5の温度が所定の温度になると共に低温槽6の温度が予冷温度になると、低温さらしの段階に移行する。即ち、図2に示すように、常温さらし用ダンパ72を非連通状態とすると共に、低温槽ダンパ62を連通状態とすることによって、テストエリア7内の空気及び低温槽6内の空気を平衡温度にする。上述のように本実施形態では、この平衡温度である低温さらし温度が−65℃となるように設定されている。
【0031】
より具体的には、常温さらし用ダンパ72を非連通状態とすると共に、低温槽ダンパ62を連通状態とすることによって、テストエリア7及び低温槽6に示された矢印方向に空気が循環し、テストエリア7内の空気と低温槽6内の空気とが混合される。それによって、常温であったテストエリア7の温度が急激に下がると共に予冷温度であった低温槽6の温度が上昇し、平衡温度である低温さらし温度となる。
【0032】
この低温槽6の温度が予冷温度から低温さらし温度に変化する過程において、温度が−70℃より高くなると、エタノール水溶液は融解し始める。従って、エタノール水溶液は、熱容量分の蓄熱量に加えて融解熱が利用可能となるため、吸収する熱量が増大する。一例として、蓄冷器の温度が予冷温度−75℃から低温さらし温度−65℃まで変化するとき、従来の蓄冷器が350kJの熱量を吸収するのに対して、本発明に係る蓄冷器20は1350kJの熱量を吸収することが分かっている。
【0033】
そして、テストエリア7内の空気と低温槽6内の空気とが低温さらし温度になると、低温さらし温度未満に下がらないように加熱器61によってコントロールし、所定時間低温さらし温度に保つ。
【0034】
その後、高温さらしの段階に移行する。即ち、図3に示すように、高温槽ダンパ52を連通状態とすると共に、低温槽ダンパ62を非連通状態とすることによって、テストエリア7の温度を上昇させる。より具体的には、高温槽ダンパ52を連通状態とすると共に、低温槽ダンパ62を非連通状態とすることによって、テストエリア7及び高温槽5に示された矢印方向に空気が循環し、テストエリア7内の空気と高温槽5内の空気とが混合される。それによって、低温さらし温度であったテストエリア7の温度が急激に上昇すると共に高温槽5の温度が下がり、テストエリア7内の空気及び高温槽5内の空気が平衡温度となる。
【0035】
このとき、蒸発器63によって、低温槽6の温度を再び予冷温度−75℃まで下げる。従って、エタノール水溶液は再び凝固する。
【0036】
その後、再び低温さらしの段階に移行する。このように、低温さらしの段階と高温さらしの段階とを繰り返すことによって、テストエリア7の温度を上昇及び下降させることができる。従って、テストエリア7内に被試験物を配置することで、耐久性の試験を行なうことが可能である。
【0037】
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
【0038】
エタノール水溶液が、低温さらし温度と予冷温度との間に凝固点を有するため、蓄冷器20が予冷温度から低温さらし温度に変化することによって、エタノール水溶液は、蓄冷器20が予冷温度であるときは凝固しているが、蓄冷器20が低温さらし温度に変化する過程において融解し始める。従って、エタノール水溶液は、熱容量分の蓄熱量に加え融解熱が利用可能となり、吸収する熱量が増大する。よって、蓄冷力の高い蓄冷器20を備えた環境試験装置1が提供される。
【0039】
次に図7を参照し、前記実施形態に変更を加えた変更形態について説明する。但し、上述の実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。図7は、本変更形態に係る環境試験装置101を示した図である。
【0040】
環境試験装置101は、環境試験を行うためのメインエリア103と、装置101の外部からメインエリア103内の低温槽6内まで延在するように配置された低温槽用送風機12と、装置101の動作を制御するコントローラ150とを有する。
【0041】
メインエリア103には、その枠となるように断熱壁104が設けられている。即ち、断熱壁104によってメインエリア103が画定されている。断熱壁104内において、図7中左側には、環境試験用の試験物を入れるためのテストエリア7が、右側には、内部を低温にするための低温槽6が配置されている。また、環境試験装置1と同様に、低温槽6とテストエリア7との境界部分には断熱板9が設けられており、図7中上下方向に関して断熱板9と断熱壁104との間には断熱板9をその厚さ方向に貫通した長孔3bがそれぞれ形成されている。即ち、断熱板9は、図7中上下方向に関して断熱壁104から隔離されており、低温槽6とテストエリア7とが長孔3bを介して連通した状態となっている。
【0042】
また、環境試験装置1と同様、断熱壁104は、断熱板9が位置する高さにおいて、各長孔3b内に僅かに突出する突出部4bを有しており、断熱板9と突出部4bとの間の長孔3bをそれぞれ覆い隠すように低温槽ダンパ62がそれぞれ配置されている。そして低温槽ダンパ62は、長孔3bを閉塞及び開放するように開閉可能となっており、長孔3bを開放して低温槽6とテストエリア7とを連通させている連通状態、及び、長孔3bを閉塞して低温槽6とテストエリア7とを非連通にさせている非連通状態となることができる。
【0043】
また、テストエリア7内の中央には、環境試験用の試験物を内部に収容可能な棚107が設けられている。試験物は、図示しない扉を介して、装置101の外部から棚107内に入れることができる。
【0044】
なお、環境試験装置101のテストエリア7内及び低温槽6内の他の要素も、環境試験装置1と同様のものである。
【0045】
このように、環境試験装置1のメインエリア3内には高温槽5、テストエリア7、及び、低温槽6が設けられているのに対し、環境試験装置101には、テストエリア7、及び、低温槽6が設けられている。この場合、コントローラ150は、低温槽ダンパ62を試験開始時に非連通状態から連通状態にすることによって、テストエリア7内の温度が常温から急激に低温試験温度となるように環境試験装置101を制御することが可能である。よって、テストエリアを常温から低温に温度変化させる時間を短縮して試験物の耐久性を評価することが可能である。
【0046】
次に図8及び図9を参照し、蓄冷器の変形例を簡単に説明する。但し、上述の実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0047】
上述の実施形態において、蓄冷器20はエロフィンチューブ21を有していたが、代わりにチューブ31を有していてもよい。チューブ31は、蛇行するように構成されていると共に内部が空洞となっており、全体的形状はチューブ21と同様である。図8は、チューブ31の部分断面図であって、チューブ21における図4の破線部分に相当する部分の水平方向に沿った断面図である。即ち、チューブ31は、内壁面が外壁面と共に同位相で蛇行している点でチューブ21と異なっている。
【0048】
また蓄冷器20は、エロフィンチューブ21の代わりにチューブ41を有していてもよい。チューブ41は、蛇行するように構成されていると共に内部が空洞となっており、全体的形状はチューブ21と同様である。図9(a)は、チューブ41の部分平面図であって、チューブ21における図4の破線部分に相当する部分を真上から見たものである。図9(b)は、図9(a)のVIIIB−VIIIB線に沿った断面図である。即ち、チューブ41は、その線に沿った断面が図9(b)のような星型となるように、その周面が凹凸を有する点でチューブ21と異なっている。
【0049】
これら2つの変形例によると、エタノール水溶液が凝固し膨張することによって生じやすいチューブの破裂を防止することができる。
【0050】
以上説明した実施形態、その変更形態及び蓄冷器の変形例は、本発明の実施形態の一例であり、本発明はこのような構成に限られない。
【0051】
例えば、本実施形態では低温さらし温度を−65℃、予冷温度を−75℃に設定したが、これらは適宜変更可能である。さらに、本実施形態ではエタノール水溶液の凝固点を−70℃としたが、エタノール水溶液の凝固点はこれに限られない。即ち、エタノール水溶液が、低温さらし温度と予冷温度との間に凝固点を有していればよい。
【0052】
さらに、本実施形態では、蓄冷材としてエタノール水溶液を用いたが、蓄冷材はこれに限られない。例えば、メタノール水溶液、または、エチレングリコール水溶液などであってもよい。蓄冷材がエチレングリコール水溶液である場合は、水溶液中のエチレングリコール濃度が60〜75wt%であることが望ましい。
【0053】
また、本実施形態における環境試験装置1は、低温さらしの段階と高温さらしの段階とを繰り返すように動作するが、低温さらしの段階と高温さらしの段階との間に、常温さらしと称される工程を一時的に行うように動作してもよい。即ち、低温さらしの段階の次に、低温槽ダンパ62を非連通状態とすると共に高温槽ダンパ52を非連通状態とし、常温さらし用ダンパ72を連通状態とすることによって、外気とテストエリア7内の空気とを混合させ、テストエリア7内の温度を上昇させる工程を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係る環境試験装置の断面図であって、高温槽ダンパが非連通状態、且つ、低温槽ダンパが非連通状態となっているときの図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る環境試験装置の断面図であって、高温槽ダンパが非連通状態、且つ、低温槽ダンパが連通状態となっているときの図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る環境試験装置の断面図であって、高温槽ダンパが連通状態、且つ、低温槽ダンパが非連通状態となっているときの図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る環境試験装置の蓄冷器の斜視図である。
【図5】エタノール水溶液と凍結温度(凝固点)との関係を示したグラフである。
【図6】本実施形態に係る、時間経過に伴った高温槽、テストエリア、及び、低温槽それぞれの温度変化を示したグラフである。
【図7】本発明の変更形態に係る環境試験装置の断面図である。
【図8】本発明の蓄冷器の変形例に係るチューブの部分断面図である。
【図9】本発明の蓄冷器の別の変形例に係るチューブの部分平面図、及び、当該部分平面図のVIIIB−VIIIB線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 環境試験装置
2 サブエリア
3 メインエリア
5 高温槽
6 低温槽
7 テストエリア
20 蓄冷器
52 高温槽ダンパ
62 低温槽ダンパ
72 常温さらし用ダンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を冷却する冷却機構及び蓄冷器を内部に備えた低温槽と、
環境試験用の試験物を入れるためのテストエリアと、
前記低温槽と前記テストエリアとを連通させている連通状態、及び、非連通にさせている非連通状態となるように開閉可能なダンパと、
前記ダンパが前記連通状態のときに、前記テストエリア及び前記低温槽内の空気を循環させることが可能な送風機と、
前記低温槽、前記送風機、及び、前記ダンパを制御する制御手段とを備えており、
前記制御手段は、前記蓄冷器が、前記ダンパが前記連通状態のときに、前記テストエリア内及び前記低温槽内の空気が平衡温度である低温さらし温度となり、前記ダンパが前記非連通状態のときに、前記低温さらし温度よりも低い予冷温度となるように、前記ダンパ、前記低温槽、及び、前記送風機を制御し、
前記蓄冷器は、チューブと、前記チューブ内に封入された蓄冷材とを備えており、
前記蓄冷材は、前記低温さらし温度と前記予冷温度との間に凝固点を有することを特徴とする環境試験装置。
【請求項2】
空気の温度を上昇させるための加熱器を備えた高温槽をさらに備えており、
前記低温槽は、空気の温度を上昇させるための加熱器をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の環境試験装置。
【請求項3】
前記蓄冷材は、エタノール水溶液、メタノール水溶液、または、エチレングリコール水溶液であることを特徴とする請求項1または2に記載の環境試験装置。
【請求項4】
前記蓄冷材は、水溶液中のアルコール濃度が70〜85wt%、または、エチレングリコール濃度が60〜75wt%であることを特徴とする請求項3に記載の環境試験装置。
【請求項5】
前記蓄冷器は、前記チューブの周囲に設けられたフィンをさらに備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の環境試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−85365(P2010−85365A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257476(P2008−257476)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】