説明

環境試験装置

【課題】電子機器等の試料に接続されている配線を取り外すことなく、試料を環境試験室内に設置することができる環境試験装置を提供する。
【解決手段】貫通孔26の周縁上で装置前後方向に分割されて互いに分離可能な固定部材31及び着脱部材41を有する開口部材25を備え、環境試験室Sを囲む側壁に固定部材31を固定する一方、着脱部材41を固定部材31に対して装置前後方向に着脱自在に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の耐環境性能を試験する環境試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば材料の試験に用いられる恒温恒湿槽のように、槽内の環境試験室における温度や湿度等を予め設定した状態に安定的に維持するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような恒温恒湿槽では、一般的に、断熱壁で囲まれた環境試験室内に温度センサや湿度センサ等を設け、これらの計測値に基づいて冷凍機、加湿機及び加温機を制御して、環境試験室内に調和空気を供給するようにしている。
【0003】
ここで、パーソナルコンピュータ、ディスプレイ、基板等の電子機器を試料として用いて、これらの耐環境性能を確認したいという要望がある。このような電子機器には、環境試験室内に設置した状態でその動作を確認するために電気配線が接続されているため、この電気配線を、断熱壁にあけられた貫通孔に挿通させることで恒温恒湿槽の外部に設置された検査装置と接続するようにしている。
【特許文献1】特開平7−140061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の恒温恒湿槽では、環境試験室内に試料としての電子機器を設置して外部の検査装置と接続するために、全ての配線を一旦取り外す必要があり手間がかかっていた。すなわち、電子機器と検査装置とを接続している全ての配線を取り外した後、電子機器を環境試験室内に設置して、貫通孔から配線を挿通させて環境試験室内で電子機器と配線とを再び接続し直す必要があり、作業工数がかかるとともに、配線の接続間違いを引き起こすおそれがあった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電子機器等の試料に接続されている配線を取り外すことなく、試料を環境試験室内に設置することができる環境試験装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するため、本発明は、配線を挿通させる貫通孔を有する開口部材を、貫通孔の周縁上で装置前後方向に分割するようにした。
【0007】
具体的に、本発明は、前面が開口したボックス状の環境試験室を有する環境試験装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、請求項1の発明は、前記環境試験室を囲む側壁のうち少なくとも1つには、厚さ方向に貫通して該環境試験室と装置外部とを挿通させる貫通孔を有する開口部材が、その前端面が該側壁の開口側端縁と略面一になるように設けられ、
前記開口部材は、前記貫通孔の周縁上で装置前後方向に分割されて互いに分離可能な固定部材及び着脱部材を有し、
前記固定部材は前記側壁に固定される一方、前記着脱部材は該固定部材に対して装置前後方向に着脱自在に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項1の発明では、貫通孔を有する開口部材を、貫通孔の周縁上で装置前後方向に分割して互いに分離可能な固定部材及び着脱部材で構成し、固定部材を側壁に固定する一方、着脱部材を固定部材に対して装置前後方向に着脱自在に取り付けるようにしたから、試料としての電子機器に接続されている配線を取り外さなくても、試料を環境試験室内に設置することができる。
【0010】
具体的に、従来の環境試験装置では、配線を挿通するための貫通孔が側壁にあけられており、配線が接続された試料を環境試験室内に設置しようとすると、既に接続されている全ての配線を一旦取り外した後、試料を環境試験室内に設置して、貫通孔から配線を挿通させて環境試験室内で試料と配線とを再び接続し直す必要があった。しかしながら、配線を取り外して再び接続し直すという無駄な作業が必要となるため、作業工数がかかるとともに、配線の接続間違いを引き起こすおそれがあった。
【0011】
これに対して、本発明では、着脱部材を固定部材から取り外しておけば、環境試験室の側壁の開口側に貫通孔まで連通した挿入口が形成されるため、装置外部の検査装置と配線で接続された試料を環境試験室内に設置して、試料に接続されている配線をこの挿入口を通して貫通孔付近に配置することができる。その後、着脱部材を再び固定部材に嵌め込んで取り付けるようにすれば、試料から配線を取り外すことなく、配線を貫通孔に挿通させることができる。これにより、配線の取り外し作業をなくして作業工数を低減できるとともに、配線の接続間違いを防止できる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1において、
前記固定部材は、前記貫通孔の周縁部分が形成された基端部と、該基端部における該貫通孔よりも両外側から前記環境試験室の開口側に向かってそれぞれ延び且つ開口側に向かうに従って間隔が大きくなるテーパー形状に形成された一対の延長部とを有し、
前記着脱部材は、前記一対の延長部に対応したテーパー形状に形成されて、該一対の延長部間に嵌合可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項2の発明では、固定部材の一対の延長部が開口側に向かうに従って間隔が大きくなるテーパー形状に形成され、着脱部材が一対の延長部に対応したテーパー形状に形成されているから、着脱部材を固定部材に取り付けたときに両部材の当接面に所定の押圧力が働くこととなり、両部材間に隙間が生じることを抑制できる。さらに、固定部材の挿入口を広く確保することができるから、着脱部材を固定部材に嵌め込みやすくなる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2において、
前記一対の延長部における前記着脱部材との当接面には、装置前後方向に延びるガイド突条又はガイド溝のうち一方が設けられ、
前記着脱部材における前記一対の延長部との当接面には、前記ガイド突条又はガイド溝のうち他方が設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項3の発明では、一対の延長部における着脱部材との当接面に、装置前後方向に延びるガイド突条又はガイド溝のうち一方を設け、着脱部材における一対の延長部との当接面に、ガイド突条又はガイド溝のうち他方を設けたから、着脱部材を固定部材の挿入口から嵌め込む際に、ガイド突条に沿って真っ直ぐに挿入することができる。また、ガイド突条にガイド溝を嵌め込むことで、着脱部材の厚さ方向への移動が規制されることとなり、着脱部材が固定部材から脱落することを防止できる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のうち何れか1項において、
前記着脱部材と前記固定部材との当接面には、該着脱部材又は該固定部材側にシール部材が設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項4の発明では、着脱部材と固定部材との当接面にシール部材を設けたから、着脱部材と固定部材との隙間が確実に塞がれて、環境試験室内の温湿度の変動を抑える上で有利となる。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のうち何れか1項において、
前記着脱部材を前記固定部材に係合する係合手段を備えたことを特徴とするものである。
【0019】
請求項5の発明では、着脱部材を固定部材に嵌め込んだ後、係合部材で確実に両部材を係合固定して、着脱部材が固定部材から脱落することを防止できる。
【0020】
請求項6の発明は、請求項1乃至5のうち何れか1項において、
前記開口部材における前記貫通孔の周縁上の分割位置は、該貫通孔の内周面における側面視で最も低い位置よりも高い位置に設定されていることを特徴とするものである。
【0021】
請求項6の発明では、開口部材における貫通孔の周縁上の分割位置を、貫通孔の内周面における側面視で最も低い位置よりも高い位置に設定したから、着脱部材を固定部材から取り外した状態で固定部材の貫通孔付近に配線を配置したときに、この貫通孔の下側周縁部分で配線がまとまって保持されることとなり、着脱部材を嵌め込んで固定部材の挿入口を塞ぐまでの間、配線を貫通孔付近に確実に位置付けておくことができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明に係る環境試験装置によれば、環境試験室を囲む側壁の開口側に設けられた着脱部材を固定部材から取り外して、その側壁の開口側に貫通孔まで連通した挿入口を形成するようにしたから、装置外部の検査装置と配線で接続された試料を環境試験室内に設置して、試料に接続されている配線をこの挿入口を通して貫通孔付近に配置することができる。その後、着脱部材を再び固定部材に嵌め込んで取り付けるようにすれば、試料から配線を取り外すことなく、配線を貫通孔に挿通させることができる。これにより、配線の取り外し作業をなくして作業工数を低減できるとともに、配線の接続間違いを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0024】
図1は本発明の実施形態に係る環境試験装置の構成を示す斜視図、図2は開閉扉を開いた状態を示す斜視図である。図1及び図2に示すように、この環境試験装置1は、環境試験室S内の温度や湿度(以下、まとめて温湿度と略称することもある)を予め設定した範囲内に安定的に維持するものである。本実施形態では、試料としてパーソナルコンピュータ、ディスプレイ、基板等のように、装置外部の図示しない検査装置と接続するための配線16が接続されている電子機器15が用いられ、その耐環境性能が試験される。
【0025】
前記環境試験装置1は、前面が開口したボックス状の環境試験室Sを有する装置本体10と、装置本体10における環境試験室Sの開口側に開閉自在に取り付けられた開閉扉2と、装置本体10における環境試験室Sの下部に配設されたコントローラ6とを備えている。
【0026】
前記環境試験室Sを囲む側壁は、内側面に断熱材が設けられた断熱壁であり、環境試験室S内の温度や湿度を所定値に維持できるようになっている。
【0027】
前記開閉扉2は、装置本体10の開口側の図2における左側側壁にヒンジ2a,2aを介して開閉自在に取り付けられており、環境試験室Sを開放又は閉塞するように構成されている。
【0028】
また、前記環境試験室S内には、棚板4が1枚配設されていて、この棚板4に試料としての電子機器15が載置されている。さらに、乾球温度センサ5及び湿球温度センサ5aが、格子状の空気吹出口3の前部に配設されている。
【0029】
また、前記電子機器15に接続されている配線16は、装置本体10の開口側の図2における右側側壁に設けられた開口部材25の貫通孔26を挿通して装置外部に配索され、図示しない検査装置に接続されている。なお、開口部材25の構成については後述する。
【0030】
図3は、環境試験装置の概略構成を示す側面断面図である。図3に示すように、環境試験室S内の背面側に位置する区画壁11の最上部には格子状の空気吹出口3が開口され、空気調和装置20によって温度及び湿度を調整した調和空気Airが送風ファン24によって環境試験室S内に供給されるようになっている。この調和空気Airは、環境試験室S内を流通した後、区画壁11の最下部の空気吸入口から空気調和装置20側に循環される。
【0031】
前記空気調和装置20は、加湿装置21、冷凍装置22、加温装置23、及び送風ファン24を備えている。この空気調和装置20は、コントローラ6により各要素の制御が行われる。
【0032】
前記コントローラ6は、環境試験室S内の温湿度が予め設定した状態になるように、乾球温度センサ5及び湿球温度センサ5aの計測値に応じて空気調和装置20を制御するものである。このコントローラ6では、使用者によって予め設定された設定温度及び設定湿度と、乾球温度センサ5及び湿球温度センサ5aで検出された実際の温度及び湿度との偏差が演算され、演算した偏差が小さくなるように温湿度を調整するための空気調和装置20への制御信号が出力される。
【0033】
そして、前記コントローラ6から出力された制御信号に応じて空気調和装置20が作動し、空気吹出口3を経て環境試験室S内に供給する調和空気の温度、湿度、流量等が適切に調整される。なお、温湿度の制御目標値は、図1では環境試験装置1の開閉扉2に配置されている操作盤7に入力することでモニタ8に表示されて設定できるようになっている。
【0034】
前記加湿装置21は、加熱ヒータ21aと、加湿用の水を貯留する受け皿21bとを備えている。この受け皿21bには、環境試験室Sの外部に設けられた図示しない給水タンクから水が供給されるようになっている。そして、加湿装置21は、コントローラ6から出力された制御信号に基づいて、受け皿21bに貯留された水を加熱ヒータ21aで蒸発させ、空気を設定湿度に加湿する動作を行う。
【0035】
前記冷凍装置22は、コントローラ6から出力された制御信号に基づいて、循環される空気を設定温度及び設定湿度に基づいて算出された露点温度に低下させる動作を行う。これにより、設定温度及び設定湿度における必要な水分量を確保するようにしている。
【0036】
前記加温装置23は、コントローラ6から出力された制御信号に基づいて、冷凍装置22で冷却された空気を設定温度に上昇させる動作を行う。
【0037】
前記送風ファン24は、加湿装置21、冷凍装置22、加温装置23で調和された調和空気を環境試験室S内に循環させるように動作する。このように、送風ファン24により環境試験室S内の空気を循環させ、必要に応じて加湿装置21、冷凍装置22、加温装置23をそれぞれ動作させ、乾球温度センサ5及び湿球温度センサ5aにより環境試験室S内の温湿度を検出してフィードバック制御することで、環境試験室S内を設定された温湿度に維持するようにしている。
【0038】
以下、本発明の特徴部分である、開口部材25の構成について説明する。図3に示すように、環境試験室Sを囲む右側側壁には、厚さ方向に貫通して環境試験室Sと装置外部とを挿通させる貫通孔26を有する開口部材25が設けられている。具体的に、この右側側壁における環境試験室Sの開口側には、側面視で略コ字状に切り欠かれた切欠部12が形成されており、この切欠部12に略矩形状の開口部材25が嵌め込まれている。また、開口部材25の前端面は、右側側壁の開口側端縁と略面一になっており、開閉扉2を閉塞したときに、開閉扉2が開口部材25に衝突することなく、スムーズに開閉することができる。
【0039】
なお、図示しないが、前記切欠部12の開口周縁には、その周縁に沿って補強リブがスポット溶接等で接合されており、切欠部12を形成したことによる側壁の強度不足を補うようにしている。
【0040】
図4は開口部材の構成を示す斜視図、図5は開口部材を固定部材と着脱部材とに分離した状態を示す斜視図である。なお、図4及び図5では、説明の簡略化のためにシール部材や係合部材の記載を省略している。これらシール部材及び係合部材については後述する。また、図4及び図5において矢印で示す前側とは環境試験室Sの開口側に向かう方向であり、後側とは背面側に向かう方向である。
【0041】
図4及び図5に示すように、開口部材25は、貫通孔26の周縁上で装置前後方向に分割されて互いに分離可能な固定部材31及び着脱部材41を有しており、この固定部材31が右側側壁の切欠部12に固定される一方、着脱部材41が固定部材31に対して前後方向に着脱自在に取り付けられている。なお、本実施形態では、開口部材25は、貫通孔26の略中心を通る垂直平面で前後方向に分割されている。
【0042】
前記固定部材31は、貫通孔26の周縁部分である湾曲凹部32が形成された基端部31aと、基端部31aにおける湾曲凹部32よりも両外側(図5では上下端部側)から前側に向かってそれぞれ延びる一対の延長部31b,31bとを備えている。この一対の延長部31b,31bは、前側に向かうに従ってその間隔が大きくなるテーパー形状に形成されている。
【0043】
このような構成とすれば、着脱部材41を固定部材31に取り付けたときに両部材31,41の当接面に設けられる後述するシール部材47に対して所定の押圧力が働くこととなり、両部材31,41間に隙間が生じることを抑制できる。具体的に、本実施形態では、そのテーパー角度を略8°に設定している。さらに、固定部材31の挿入口を広く確保することができるから、着脱部材41を固定部材31に嵌め込みやすくなる。
【0044】
また、前記基端部31aの湾曲凹部32に連続して当接面34が形成され、この当接面34に連続して一対の延長部31b,31bのテーパー面が形成されている。この当接面34は、着脱部材41を固定部材31に取り付ける際の後側への移動を規制する位置決めとして機能する。
【0045】
また、前記一対の延長部31b,31bにおける着脱部材41との当接面(テーパー面)の厚さ方向の略中央位置には、テーパー面に沿って前後方向に延びるガイド突条33,33がそれぞれ設けられている。また、一対の延長部31b,31bの左前側の面には、後述する中空のシール部材36を取り付けるシール溝35,35が上下方向に延びるように形成されている。
【0046】
前記着脱部材41は、その上下方向の両面が固定部材31の一対の延長部31b,31bに対応したテーパー形状に形成されて、一対の延長部31b,31b間に嵌合可能に構成されている。そして、着脱部材41における固定部材31の湾曲凹部32との対向面(図5では後側面)には、貫通孔26の周縁部分である湾曲凹部42が形成されている。そして、固定部材31の湾曲凹部32と着脱部材41の湾曲凹部42とを突き合わせることで、円形状の貫通孔26が構成されるようになっている。
【0047】
そして、前記着脱部材41における一対の延長部31b,31bとの当接面(テーパー面)の略中央位置には、固定部材31のガイド突条33,33に対応して前後方向に延びるガイド溝43,43が形成されている。また、ガイド溝43よりも左右両端部には、後述するベルト状のシール部材47を取り付けるシール溝44,44が前後方向に延びるように形成されている。さらに、着脱部材41の左前側の面には、シール溝44,44に連続して、後述する中空のシール部材48を取り付けるシール溝45が上下方向に延びるように形成されている。
【0048】
このように、前記固定部材31及び着脱部材41にガイド突条33及びガイド溝43を設けることで、着脱部材41を固定部材31の挿入口から嵌め込む際に、ガイド突条33に沿って真っ直ぐに挿入することができる。また、ガイド突条33にガイド溝43を嵌め込むことで、着脱部材41の厚さ方向への移動が規制されることとなり、着脱部材41が固定部材31から脱落することを防止できる。
【0049】
なお、本実施形態では、固定部材31側にガイド突条33を設け、着脱部材41側にガイド溝43を設けた構成について説明したが、この形態に限定するものではなく、固定部材31側にガイド溝43を設け、着脱部材41側にガイド突条33を設けた構成としてもよい。さらに、固定部材31における一対の延長部31b,31bの一方にガイド突条33を設け、他方にガイド溝43を設けた構成としてもよい。
【0050】
また、前記着脱部材41の手前側における厚さ方向の両面には取手溝46が形成されており、使用者が取手溝46を把持して着脱部材41の着脱作業を行いやすいようにしている。なお、この取手溝46は、厚さ方向の両面に形成する他、どちらか片面のみに形成しても構わない。
【0051】
このように、前記固定部材31及び着脱部材41を分離可能とすれば、固定部材31から着脱部材41を取り外したときに、環境試験室Sの側壁の開口側に固定部材31の湾曲凹部32まで連通した挿入口(一対の延長部31b,31bの隙間)が形成されることとなり、装置外部の検査装置(図示せず)と配線16で接続された電子機器15を環境試験室S内に設置して、電子機器15に接続されている配線16をこの挿入口を通して湾曲凹部32付近に配置することができる。その後、着脱部材41を再び固定部材31に嵌め込んで取り付けるようにすれば、電子機器15から配線16を取り外すことなく、配線16を貫通孔26に挿通させることができる。これにより、配線16の取り外し作業をなくして作業工数を低減できるとともに、配線16の接続間違いを防止できる。
【0052】
図6は開口部材の構成を示す側面図、図7は開口部材の構成を示す正面図、図8は着脱部材の構成を示す平面図、図9は開口部材を固定部材と着脱部材とに分離した状態を示す側面図である。ここで、図6〜図9は、上述した開口部材25にシール部材及び係合部材(係合手段)を取り付けた構成を示している。
【0053】
図6〜図9に示すように、前記開口部材25の固定部材31のシール溝35には、中空のシール部材36が取り付けられている。具体的に、このシール部材36の一端は、上側の延長部31bのシール溝35に嵌め込まれて接着されている。そして、他端は、環境試験室Sの開口側端縁に沿って延びて環境試験室Sを囲む側壁を一周して下側の延長部31bのシール溝35に嵌め込まれて接着されている。すなわち、このシール部材36は、開閉扉2を閉めたときに弾性変形して環境試験室Sの密閉性を高めるようになっている。また、シール部材36の両端部は、それぞれ延長部31b,31bのテーパー面に連続して延長部31b,31bのテーパー角度よりもさらに拡がるように斜めに切断された形状とされている。
【0054】
前記着脱部材41のシール溝44には、ベルト状のシール部材47が嵌め込まれて接着されている。具体的に、このシール部材47の後端は湾曲凹部42に連続する当接面側に折り曲げられて接着されている。これにより、着脱部材41を固定部材31に取り付ける際に固定部材31の当接面にシール部材47の後端が押圧されることとなり、着脱部材41と固定部材31との隙間が確実に塞がれて、環境試験室S内の温湿度の変動を抑える上で有利となる。
【0055】
なお、本実施形態では、着脱部材41における固定部材31との当接面にシール部材47を設けた構成について説明したが、この形態に限定するものではなく、固定部材31側にシール部材47を設けた構成としてもよい。
【0056】
一方、前記着脱部材41のシール溝45には、上下方向に延びる中空のシール部材48が嵌め込まれて接着されている。このシール部材48の上下両端部は、固定部材31のシール部材36の両端部の切断形状に対応して斜めに切断された形状とされている。また、シール部材48の外周面には、その長手方向に沿って延びるシールシート49が一体成形されている。このシールシート49の上下方向両端部は、シール部材48よりも上下方向両端に突出しており、このシールシート49の突出部分は、着脱部材41を固定部材31に取り付けた際に、固定部材31のシール部材36の両端部近傍の外周面を覆うようになっている。このような構成とすれば、開閉扉2を閉じたときに、固定部材31のシール部材36と着脱部材41のシール部材48との継ぎ目が完全に塞がれることとなり、環境試験室S内の密閉性を高める上で有利となる。
【0057】
図6及び図9に示すように、前記開口部材25には、着脱部材41を固定部材31に係合する係合部材27が設けられている。具体的に、この係合部材27は、固定部材31の厚さ方向の右側面に取り付けられたレバー部27aと、着脱部材41の厚さ方向の右側面に取り付けられた掛止部27bとを備えた、いわゆるパッチン錠で構成されている。
【0058】
そして、前記着脱部材41を固定部材31に嵌め込んだ状態で、係合部材27をロックすることにより、着脱部材41がシール部材47を押圧しながら若干後側に進むこととなり、着脱部材41と固定部材31との密着性が向上するとともに、着脱部材41が固定部材31から脱落することを防止できる。
【0059】
なお、本実施形態では、係合部材27としてパッチン錠を用いた形態について説明したが、この形態に限定するものではなく、例えば、ボールプランジャ等を用いて、着脱部材41を固定部材31側に押し込んでいくと自動的にロックがかかるような構成にしても構わない。
【0060】
次に、環境試験装置1に試料としての電子機器15を設置する手順について説明する。まず、図示しない検査装置と配線16で接続された電子機器15を用意しておき、環境試験装置1の開閉扉2を開く。そして、開口部材25の係合部材27のロックを解除して、着脱部材41を固定部材31から取り外す。
【0061】
次に、電子機器15を環境試験室S内の棚板4に載置するとともに、電子機器15に接続されている配線16を、固定部材31の一対の延長部31b,31b間の挿入口を通して湾曲凹部32付近に配置する。
【0062】
そして、着脱部材41を固定部材31の一対の延長部31b,31b間に挿通させてシール部材47を押圧させながら嵌め込んでいく。最後に、係合部材27をロックして着脱部材41を固定部材31に係合固定する。
【0063】
なお、環境試験室S内から電子機器15を取り除く手順については、上述した設置手順と反対の手順で行えばよいため、説明を省略する。
【0064】
なお、特に図示しないが、電子機器15に接続された配線16を貫通孔26に挿通させる際には、配線16の外周面に樹脂テープ等を巻き付けて径を太くした箇所を作っておき、この樹脂テープを貫通孔26に嵌合するようにすれば、貫通孔26と配線16との間の隙間を塞ぐことができるため、環境試験室S内の温湿度の変動を抑える上で有利となる。
【0065】
以上のように、本発明の実施形態に係る環境試験装置1によれば、環境試験室Sを囲む側壁の開口側に設けられた着脱部材41を固定部材31から取り外して、その側壁の開口側に貫通孔26まで連通した挿入口(一対の延長部31b,31bの隙間)を形成するようにしたから、装置外部の図示しない検査装置と配線16で接続された電子機器15を環境試験室S内に設置して、電子機器15に接続されている配線16をこの挿入口を通して貫通孔26付近に配置することができる。その後、着脱部材41を再び固定部材31に嵌め込んで取り付けるようにすれば、電子機器15から配線16を取り外すことなく、配線16を貫通孔26に挿通させることができる。これにより、配線16の取り外し作業をなくして作業工数を低減できるとともに、配線16の接続間違いを防止できる。
【0066】
なお、本実施形態では、環境試験室Sの右側側壁に開口部材25を設けた構成について説明したが、この形態に限定するものではなく、開閉扉2が取り付けられた側壁を除く何れの側壁(上側側壁や下側側壁)に開口部材25を取り付けた構成としてもよい。
【0067】
また、本実施形態では、開口部材25の固定部材31を側壁の切欠部12に嵌め込んで固定した形態について説明したが、例えば、固定部材31を別部材とするのではなく、固定部材31と同様の湾曲凹部32等を有する形状を側壁に直接切り欠く等して構成し、この切り欠き部分に対して着脱部材41を着脱するような構成としてもよい。
【0068】
<変形例>
なお、本発明の環境試験装置1に用いる開口部材25は、上述した構成のものに限定するものではなく、図10及び図11に示す変形例のような構成であっても構わない。前記実施形態との違いは、開口部材50における貫通孔26の周縁上の分割位置であるため、以下、実施形態と同じ部分については同じ符号を付し、相違点についてのみ説明する。また、説明の簡略化のため、シール部材及び係合部材の記載は省略している。
【0069】
図10及び図11に示すように、この開口部材50は、前記実施形態と同様、貫通孔26の周縁上で装置前後方向に分割されて互いに分離可能な固定部材31及び着脱部材41を有している。そして、その分割位置は、貫通孔26の内周面における側面視で最も低い位置よりも高い位置に設定されている。具体的に、図10及び図11に示す例では、固定部材31の湾曲凹部32の周縁端の位置が、貫通孔26の最も低い位置(すなわち、貫通孔26の中心を通る垂直平面と交差する位置)よりも高い位置となっている。
【0070】
このような構成とすれば、着脱部材41を固定部材31から取り外した状態で、電子機器15を環境試験室S内の棚板4に載置するとともに、電子機器15に接続されている配線16を固定部材31の挿入口を通して湾曲凹部32付近に配置したときに、この湾曲凹部32の下側周縁部分で配線16がまとまって保持されることとなり、着脱部材41を嵌め込んで固定部材31の挿入口を塞ぐまでの間、配線16を湾曲凹部32付近に確実に位置付けておくことができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上説明したように、本発明は、電子機器等の試料に接続されている配線を取り外すことなく、試料を環境試験室内に設置することができる環境試験装置を提供することができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施形態に係る環境試験装置の構成を示す斜視図である。
【図2】開閉扉を開いた状態を示す斜視図である。
【図3】環境試験装置の概略構成を示す側面断面図である。
【図4】開口部材の構成を示す斜視図である。
【図5】開口部材を固定部材と着脱部材とに分離した状態を示す斜視図である。
【図6】開口部材の構成を示す側面図である。
【図7】開口部材の構成を示す正面図である。
【図8】着脱部材の構成を示す平面図である。
【図9】開口部材を固定部材と着脱部材とに分離した状態を示す側面図である。
【図10】変形例に係る開口部材の構成を示す側面図である。
【図11】変形例に係る開口部材を固定部材と着脱部材とに分離した状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0073】
S 環境試験室
1 環境試験装置
25 開口部材
26 貫通孔
27 係合手段
31 固定部材
31a 基端部
31b 延長部
33 ガイド突条
41 着脱部材
43 ガイド溝
47 シール部材(シール部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面が開口したボックス状の環境試験室を有する環境試験装置であって、
前記環境試験室を囲む側壁のうち少なくとも1つには、厚さ方向に貫通して該環境試験室と装置外部とを挿通させる貫通孔を有する開口部材が、その前端面が該側壁の開口側端縁と略面一になるように設けられ、
前記開口部材は、前記貫通孔の周縁上で装置前後方向に分割されて互いに分離可能な固定部材及び着脱部材を有し、
前記固定部材は前記側壁に固定される一方、前記着脱部材は該固定部材に対して装置前後方向に着脱自在に取り付けられていることを特徴とする環境試験装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記固定部材は、前記貫通孔の周縁部分が形成された基端部と、該基端部における該貫通孔よりも両外側から前記環境試験室の開口側に向かってそれぞれ延び且つ開口側に向かうに従って間隔が大きくなるテーパー形状に形成された一対の延長部とを有し、
前記着脱部材は、前記一対の延長部に対応したテーパー形状に形成されて、該一対の延長部間に嵌合可能に構成されていることを特徴とする環境試験装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記一対の延長部における前記着脱部材との当接面には、装置前後方向に延びるガイド突条又はガイド溝のうち一方が設けられ、
前記着脱部材における前記一対の延長部との当接面には、前記ガイド突条又はガイド溝のうち他方が設けられていることを特徴とする環境試験装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうち何れか1項において、
前記着脱部材と前記固定部材との当接面には、該着脱部材又は該固定部材側にシール部材が設けられていることを特徴とする環境試験装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のうち何れか1項において、
前記着脱部材を前記固定部材に係合する係合手段を備えたことを特徴とする環境試験装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうち何れか1項において、
前記開口部材における前記貫通孔の周縁上の分割位置は、該貫通孔の内周面における側面視で最も低い位置よりも高い位置に設定されていることを特徴とする環境試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−168577(P2009−168577A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6104(P2008−6104)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000134730)ナガノサイエンス株式会社 (11)
【Fターム(参考)】