説明

環境試験装置

【課題】電磁波の発生源の発熱量を抑制しつつサンプルの全体に所定の周波数領域の電磁波を均一に照射することが可能な環境試験装置を提供する。
【解決手段】試験槽3内に保持された太陽電池モジュール2に疑似太陽光を照射して加速劣化させる加速劣化試験装置1は、暗室に形成された試験槽3の上面36であって、太陽電池モジュール2に対面する上面36に配設された遮光構造4と、遮光構造4の一部に形成され、疑似太陽光を通過させるための投光部5と、投光部5を経て疑似太陽光を照射する面状発光体6と、面状発光体6を上面36上のXY方向に移動させるXY移動機構7とを備える。投光部5は、面状発光体6の移動に伴って移動する。加速劣化試験では、面状発光体6が上面36上をXY方向に走査移動し、疑似太陽光が前記太陽電池モジュール2の全体に均一に照射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の環境下でサンプルに所定の周波数領域の電磁波を照射して加速劣化試験や画像撮影を行う環境試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境試験装置は試験室に設置された様々な試料に、様々な環境条件(温度、湿度、圧力、振動、光、その他)を与え、試料の耐久性や信頼性を分析するものであるが、試料の大型化、複雑化が進行するにつれて環境条件を整えるためのエネルギーが次第に増加していく傾向にある。
【0003】
例えば近年、クリーンエネルギー源として太陽電池の導入が進められているが、太陽電池モジュールが電源設備として社会的なインフラとなるためには、太陽電池モジュールが長寿命であることが必要である。そこで、太陽電池モジュールの耐久性能を評価するために、加速劣化試験が行われる。
【0004】
太陽電池モジュールの加速劣化試験装置は、人工的に試験槽内に屋外の暴露環境を再現し、太陽電池モジュールの劣化を促進して長期耐久性を調べるものである。再現される環境条件は、太陽光に代る人工光源による疑似太陽光照射、温度及び湿度の変化、そして、降雨に代る水噴射などがある。
【0005】
非特許文献1に開示された加速劣化試験装置は、大面積(例えば120cm×150cm)のモジュールを複数枚収容可能な試験槽、温湿度を制御する温湿度制御回路及び太陽電池モジュールの全体に疑似太陽光を照射する8灯の7.5kw水冷式キセノンランプ等を有する。加速劣化試験では、試験槽内に太陽電池モジュールが収容された状態で温湿度制御回路によって槽内が所定の温湿度に設定され、上記キセノンランプが槽外から太陽電池モジュールの全体に疑似太陽光を均一に照射し、劣化を促進する。
【0006】
また、特許文献1に開示された太陽電池モジュールの測定装置では、LED(Light Emission Diode)からなるライン状光源及び太陽電池モジュールを載置するステージが暗室内に配置され、空調部が暗室内の環境を保持する。測定時は、空調部によって暗室内を標準的な環境(例えば25℃)に保持し、ライン状光源を太陽電池モジュールに密着させて局所的に光を照射して太陽電池モジュールの電流−電圧特性を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「最近の太陽電池関連の試験機器」、スガテクニカルニュース、スガ試験機株式会社、2009年5月、第210号、p.3
【特許文献1】特開2004−247325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1に開示された加速劣化試験装置では、大型のランプを用いるが、ランプであるため供給されるエネルギーの大部分が熱に変換され、発光効率が低く、また、ランプが大型なため発熱量が大きかった。
【0009】
また、大量の熱を排熱する大型の排熱設備が必要であるため、加速劣化試験装置が大型化し、その設置場所が限られていた。
【0010】
また、上記加速劣化試験装置は、太陽電池モジュールの全体に均一に照射可能な大型ランプが高価なため製造コストが高く、また、大型のランプや排熱設備等を稼働するための消費電力が大きく、ランニングコストも高かった。
【0011】
特許文献1に開示された測定装置では、ライン毎の欠陥検出のため、太陽電池モジュールの全体に光照射して行う加速劣化試験装置には適用できなかった。
【0012】
また、試料内部の変化を観察する手段は、環境試験後に分析装置で試料の内部の構成材料の変化や劣化を調査する方法から、環境試験中に試料内部にどのような変化や劣化が進行していくかを調査する方法に変わりつつある。そこで、環境試験中にX線などによる試料内部の透過分析も望まれるが、大型の試料に対する放射線源の大きさや環境試験装置の構造上の問題で実現させることが非常に困難である。
【0013】
そこで、この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、電磁波の発生源の発熱量を抑制しつつサンプルの全体に所定の周波数領域の電磁波を均一に照射することが可能な環境試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の発明に係る環境試験装置は、内部環境を調整される試験槽内に保持されたサンプルに所定の周波数領域の電磁波を照射する環境試験装置であって、前記試験槽の一面であって前記サンプルに対面する一面に配設され、前記所定の周波数領域の電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽構造と、この電磁波遮蔽構造の一部に形成され、前記所定の周波数領域の電磁波を通過させるための投波部と、前記投波部を経て前記所定の周波数領域の電磁波を照射する電磁波発生体と、この電磁波発生体を前記一面上において移動させる移動機構と、を備え、前記電磁波遮蔽構造の前記投波部が前記電磁波発生体の移動に伴って移動するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
この環境試験装置では、電磁波発生源が電磁波遮蔽構造の一部である投波部に対応した電磁波発生体であるため、電磁波発生源を小型化でき、その発熱量を抑制できる。また、電磁波遮蔽構造の一部である投波部から電磁波を照射することにより、電磁波の拡散を抑え、サンプルの所定部分を狙って照射することができる。その結果、任意の場所に電磁波を照射させたり、この電磁波発生体を走査移動させてサンプルに順番に万遍なく同一の電磁波発生条件のもとに電磁波を照射することが可能となる。
【0016】
第2の発明に係る環境試験装置は、内部環境を調整される試験槽内に保持された太陽電池モジュールに疑似太陽光を照射して加速劣化させる太陽電池モジュールの加速劣化試験装置に係る環境試験装置であって、暗室に形成された前記試験槽の一面であって、前記太陽電池モジュールに対面する一面に配設された遮光構造と、この遮光構造の一部に形成され、前記疑似太陽光を通過させるための投光部と、前記投光部を経て疑似太陽光を照射する面状発光体と、この面状発光体を前記一面上のXY方向に移動させるXY移動機構と、を備え、前記遮光構造の前記投光部が前記面状発光体の移動に伴って移動するように構成されていることを特徴とする。ここで、「面状発光体」とは、多数のLEDを面状に配設したもの、又は、LED光源に接続された光ファイバーを多数束ねたもの、又は、面に形成されたLEDの一つ以上からなるものをいう。
【0017】
この環境試験装置では、光源が遮光構造の一部である投光部に対応した面状発光体であるため、光源を小型化でき、その発熱量を抑制できる。また、光源が面状発光体であるため、光源を太陽電池モジュールに接近させることができる。さらに、遮光構造の投光部から照射することにより、照射光の拡散を抑え、太陽電池モジュールの受光面の所定部分を狙って照射できる。その結果、任意の場所に照射させたり、この面状発光体を走査移動させて、太陽電池モジュールに順番に万遍なく同一の発光条件のもとに疑似太陽光を照射することが可能となる。
【0018】
第3の発明に係る環境試験装置は、第2の発明に係る環境試験装置において、X方向に対向する一対の伸縮自在な第1遮光膜の間に形成されたY方向隙間に、Y方向に対向する一対の伸縮自在な第2遮光膜を配設し、これら第1遮光膜と第2遮光膜に囲まれた前記投光部を形成し、前記第1遮光膜及び前記第2遮光膜は、前記XY移動機構に連結されて伸縮することを特徴とする。
【0019】
この環境試験装置では、遮光膜に囲まれた投光部を介して面状発光体を直接太陽電池モジュールに対面させることが可能となる。また、遮光膜が面状発光体を移動させるXY移動機構によって伸縮するため、投光部を移動させる別個の駆動装置が不要である。従って、製造コストを抑制できる。
【0020】
第4の発明に係る環境試験装置は、第2又は第3の発明に係る環境試験装置において、前記試験槽内にその受光面が上向きになるように横置きで保持されることを特徴とする。
【0021】
この環境試験装置では、太陽電池モジュールの保持が安定し、XY移動機構も重力負荷を受けずに安定させることが可能となる。そのため、面状発光体を安定した状態で太陽電池モジュールにより近づけて配置することが可能となる。
【0022】
第5の発明に係る環境試験装置は、第4の発明に係る環境試験装置において、横置きされた太陽電池モジュールの幅方向の両端を保持する搬送装置を備え、前記空調装置による空気流れは、前記太陽電池モジュール上面と前記遮光構造下面との間の空間を経て循環するように形成されていることを特徴とする。
【0023】
この環境試験装置では、太陽電池モジュールを面状発光体に接近させたまままで太陽電池モジュールをコンベア搬送できる。また、面状発光体に接近させた場合でも、太陽電池モジュール上の調和空気の流れを確保して、試験槽内を所定の環境に保持できる。
【0024】
第6の発明に係る環境試験装置は、第2乃至第5のいずれかの発明に係る環境試験装置において、前記XY移動機構を駆動し、前記太陽電池モジュールに対して前記面状発光体を走査させる動作を繰り返して、太陽電池モジュールの全体に疑似太陽光を照射する制御装置を備えることを特徴とする。
【0025】
この環境試験装置では、面状発光体の走査パターンを繰り返すことで、太陽電池モジュールに順番に万遍なく同一条件のもとに疑似太陽光を照射できる。
【0026】
第7の発明に係る環境試験装置は、第2乃至第6のいずれかの発明に係る環境試験装置において、前記面状発光体は、太陽光の波長領域に含まれる特定の波長領域の電磁波を個別に発生する複数の照射源から構成され、前記複数の照射源を個別に又は組合せて電磁波を照射させることを特徴とする。
【0027】
一般に、太陽電池の発電効率は照射される光の波長が短いほど高く、発電効率を高めるために、例えば、発電効率が高くなる波長が異なる複数の太陽電池セルを積層した多接合型太陽電池モジュールがある。このような太陽電池モジュールでは、太陽光の波長領域内の特定の波長領域の光を照射して環境試験を行うことも有効である。そこで、この環境試験装置では、特定の波長領域の光を照射する複数の照射源を個別に又は組合せて光を照射することにより、太陽電池モジュールを構成する太陽電池セルの波長特性に応じて環境試験を行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0029】
第1の発明では、電磁波発生源が電磁波遮蔽構造の一部である投波部に対応した電磁波発生体であるため、電磁波発生源を小型化でき、その発熱量を抑制できる。また、電磁波遮蔽構造の一部である投波部から電磁波を照射することにより、電磁波の拡散を抑え、サンプルの所定部分を狙って照射することができる。その結果、任意の場所に電磁波を照射させたり、この電磁波発生体を走査移動させてサンプルに順番に万遍なく同一の電磁波発生条件のもとに電磁波を照射することが可能となる。
【0030】
第2の発明では、光源が遮光構造の一部である投光部に対応した面状発光体であるため、光源を小型化でき、その発熱量を抑制できる。また、光源が面状発光体であるため、光源を太陽電池モジュールに接近させることができる。さらに、遮光構造の投光部から照射することにより、照射光の拡散を抑え、太陽電池モジュールの受光面の所定部分を狙って照射できる。その結果、この面状発光体を走査移動させて、任意の場所に照射させたり、太陽電池モジュールに順番に万遍なく同一条件のもとに疑似太陽光を照射することが可能となる。
【0031】
第3の発明では、遮光膜に囲まれた投光部を介して面状発光体を直接太陽電池モジュールに対面させることが可能となる。また、遮光膜が面状発光体を移動させるXY移動機構によって伸縮するため、投光部を移動させる別個の駆動装置が不要である。従って、製造コストを抑制できる。
【0032】
第4の発明では、太陽電池モジュールの保持が安定し、XY移動機構も重力負荷を受けずに安定させることが可能となる。そのため、面状発光体を安定した状態で太陽電池モジュールにより近づけて配置することが可能となる。
【0033】
第5の発明では、太陽電池モジュールを面状発光体に接近させたまままで太陽電池モジュールをコンベア搬送できる。また、面状発光体に接近させた場合でも、太陽電池モジュール上の調和空気の流れを確保して、試験槽内を所定の環境に保持できる。
【0034】
第6の発明では、面状発光体の走査パターンを繰り返すことで、太陽電池モジュールに順番に万遍なく同一条件のもとに疑似太陽光を照射できる。
【0035】
第7の発明では、特定の波長領域の光を照射する複数の照射源を個別に又は組合せて光を照射することにより、太陽電池モジュールを構成する太陽電池セルの波長特性に応じて環境試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】第1実施形態に係る太陽電池モジュールの加速劣化試験装置の上面視模式図である。
【図2】図1のA−A線矢視断面図である。
【図3】第1実施形態に係る太陽電池モジュールの加速劣化試験装置の制御装置のブロック図である。
【図4】第2実施形態に係る太陽電池モジュールの加速劣化試験装置の上面視模式図である(但し面状発光体及びXY移動機構を省略)。
【図5】図4のB−B線矢視断面図である。
【図6】第3実施形態に係る太陽電池モジュールの加速劣化試験装置の遮光構造を示す模式図である。
【図7】第4実施形態に係る太陽電池モジュールの加速劣化試験装置の遮光構造を示す模式図である。
【図8】第5実施形態に係る太陽電池モジュールの加速劣化試験装置の断面模式図である。
【図9】第6実施形態に係る環境試験装置の模式図である。
【図10】第6実施形態に係る環境試験装置の制御装置のブロック図である。
【図11】第7実施形態に係る環境試験装置の模式図である。
【図12】第8実施形態に係る環境試験装置の模式図である。
【図13】第9実施形態に係る環境試験装置の模式図である。
【図14】第10実施形態に係る環境試験装置の模式図である。
【図15】第11実施形態に係る環境試験装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面に基づいて、本発明に係る環境試験装置の実施形態について説明する。第1〜第5実施形態では、本発明に係る環境試験装置を太陽電池モジュールの加速劣化試験装置に適用した形態について説明する。第6〜第11実施形態では、本発明を所定環境下にある電子機器等のサンプルの内部をX線によって観察する環境試験装置に適用した形態について説明する。
【0038】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る加速劣化試験装置1の上面視図であり、図2は、図1のA−A線矢視断面図である。図3は、加速劣化試験装置1の制御装置のブロック図である。
【0039】
[加速劣化試験装置1について]
加速劣化試験装置1は、内部環境を調整する空調装置を備える試験槽内に保持された太陽電池モジュール2に、疑似太陽光を照射して加速劣化させる太陽電池モジュールの加速劣化試験装置である。加速劣化試験装置1は、試験槽3と、試験槽3の暗室38に形成された試験槽3の一面であって、太陽電池モジュール2(サンプル)に対面する一面に配設された遮光構造4(電磁波遮蔽構造)と、この遮光構造4の一部に形成され、疑似太陽光を通過させるための投光部5(投波部)と、投光部5を経て太陽電池モジュール2に疑似太陽光を照射する面状発光体6(電磁波発生体)と、面状発光体6を前記一面上のXY方向に移動させるXY移動機構7(移動機構)と、試験槽3内の環境を調節する空調装置8と、太陽電池モジュール2を搬送する搬送装置9と、加速劣化試験装置1の動作を制御する制御装置10と、を備える。なお、加速劣化試験装置1において、「X方向」とは、搬送装置9の搬送方向をいい、「Y方向」とは、当該搬送方向に直交する方向をいう。
【0040】
太陽電池モジュール2は、複数の太陽電池セルを電気的に接続したものである。太陽電池セルとして、多結晶シリコン型、アモルファスシリコン型、CIGS型及び色素増感型等の各種セルが用いられる。太陽電池モジュール2は、その受光面21が上向きになるように搬送装置9上に横置きに保持される。
【0041】
試験槽3は、筺体31と、太陽電池モジュール2が通過する入口32及び出口33と、入口32及び出口33を開閉するシャッター34,35と、を備える。筺体31は、略直方体の断熱材で構成され、X方向に横設される。また、太陽電池モジュール2と対面する上面36には、開口部37が形成される。さらに、筺体31の内壁には黒色のつや消し塗料が塗布され、後述する遮光構造4とともに暗室38を形成する。入口32及び出口33は、それぞれ筺体31のX方向に垂直な2つの側壁の上流側の側壁及び下流側の側壁に形成される。シャッター34,35は、断熱材で構成され、それぞれ入口32及び出口33に取り付けられ、上下に移動して入口32及び出口33を開閉する。
【0042】
遮光構造4は、暗室38が形成された試験槽3の上面36であって、太陽電池モジュール2と対面する上面36に取り付けられ、外部から暗室38内に入射する光を遮る。遮光構造4は、X方向に対向する一対の伸縮自在な第1遮光膜と、Y方向に対向する一対の伸縮自在な第2遮光膜と、を備える。そして、前記第1遮光膜の間に形成されたY方向隙間11に前記第2遮光膜が配設され、これら第1遮光膜と第2遮光膜に囲まれた部分に投光部5が形成される。
【0043】
すなわち、遮光構造4は、図2に示すように、X方向に対向する一対の伸縮自在な外側第1遮光膜41a,41bと、外側第1遮光膜41a,41bを巻き取る外側巻取りローラ42a,42bと、外側第1遮光膜41a,41bを外側巻取りローラ42a,42bにガイドする外側ガイドローラ43a,43bと、外側第1遮光膜41a,41bよりも内側に配設されX方向に対向する一対の伸縮自在な内側第1遮光膜44a,44bと、内側第1遮光膜44a,44bを巻き取る内側巻取りローラ45a,45bと、内側第1遮光膜44a,44bを内側巻取りローラ45a,45bにガイドする内側ガイドローラ46a,46bと、X方向に移動するX方向移動枠47と、Y方向に対向する一対の伸縮自在な外側第2遮光膜48a,48b(図1参照)と、Y方向に移動するY方向移動枠49と、を有する。
【0044】
外側第1遮光膜41a,41bは、遮光性を有する略長方形状のシート部材で構成され、それぞれ幅が開口部37の幅より大きく、長さが開口部37より長い。外側第1遮光膜41aは、出口33側に配置され、一端部が筺体31の出口33側上端部に固定され、他端部が外側巻取りローラ42aに巻き取られる。一方、外側第1遮光膜41bは、入口32側に配置され、一端部が筺体31の入口32側上端部に固定され、他端部が外側巻取りローラ42bに巻き取られる。外側巻取りローラ42a,42bは、外側第1遮光膜41a,41bの幅と略同一の長さを有する棒状部材であって、外側第1遮光膜41a,41bの水平部分よりも上方においてY方向に延在し、回転可能に支持され、外側第1遮光膜41a,41bの前記他端部を巻き取る。外側ガイドローラ43a,43bは、外側巻取りローラ42a,42bと同じ長さを有する棒状部材であって、外側第1遮光膜41a,41bの水平部分においてY方向に延在し、回転可能に支持され、外側第1遮光膜41a,41bを上方の外側巻取りローラ42a,42bにガイドする。
【0045】
内側第1遮光膜44a,44bは、外側第1遮光膜41a,41bと同様に遮光性を有する略長方形状のシート部材で構成され、その幅は開口部37の幅より小さく、その長さは開口部37より長い。内側第1遮光膜44a,44bは、図2に示すように、外側第1遮光膜41a,41bよりも開口部37の厚みだけ内側に配置される。開口部37の内壁には内側第1遮光膜44a,44bを固定するための枠が設けられる。内側第1遮光膜44aは、一端部が上記枠の出口33側部分に固定され、他端部が内側巻取りローラ45aに巻き取られる。一方、内側第1遮光膜44bは、一端部が上記枠の入口32側部分に固定され、他端部が内側巻取りローラ45bに巻き取られる。内側巻取りローラ45a,45bは、内側第1遮光膜44a,44bの幅と略同一の長さを有する棒状部材(すなわち、外側巻取りローラ42a,42bよりも短い棒状部材)であって、外側巻取りローラ42a,42bと略同じ高さ位置においてY方向に延在し、回転可能に支持され、内側第1遮光膜44a,44bの前記他端部を巻き取る。内側ガイドローラ46a,46bは、内側巻取りローラ45a,45bと略同じ長さを有する棒状部材であって、内側第1遮光膜44a,44bの水平部分においてY方向に延在し、回転可能に支持され、内側第1遮光膜44a,44bを上方の内側巻取りローラ45a,45bにガイドする。
【0046】
X方向移動枠47は、略長方形状の枠部材であって、外側第1遮光膜41a,41b及び内側第1遮光膜44a,44bの間に形成されたY方向隙間11に配置される。X方向移動枠47は、図2に示すように、X方向の枠の内部において外側巻取りローラ42a,42b、外側ガイドローラ43a,43b、内側巻取りローラ45a,45b及び内側ガイドローラ46a,46bを回転可能に支持する。従って、外側第1遮光膜41a,41b及び内側第1遮光膜44a,44bは、X方向移動枠47の移動に伴って伸縮する。また、上記X方向の枠の上端部は、後述するXY移動機構7のX方向スライダ71に挟まっているため、X方向移動枠47は、X方向スライダ71の移動に追随する。つまり、外側第1遮光膜41a,41b及び内側第1遮光膜44a,44bは、X方向移動枠47を介してXY移動機構7に連結して伸縮する。
【0047】
外側第2遮光膜48a,48b(図1参照)は、遮光性を有する略長方形状のシート部材で構成され、その幅はX方向移動枠47の開口の幅より大きく、その長さは当該開口より長い。外側第2遮光膜48aは、その一端部が当該開口の一端側上端部に固定され、他端部が外側巻取りローラ(図示せず)に巻き取られる。一方、外側第2遮光膜48bは、その一端部が当該開口の他端側上端部に固定され、他端部が外側巻取りローラ(図示せず)に巻き取られる。このように、外側第2遮光膜48a,48bも、開口部37においてX方向に伸縮する上記第1遮光膜と同様に、X方向移動枠47の開口においてY方向に伸縮する。また、図示しないが、外側第2遮光膜48a,48bの内側には、第1遮光膜と同様に、もう一層の遮光膜が伸縮自在に配置されており、2層構造となっている。従って、X方向に伸縮する第1遮光膜による2層構造及びY方向に伸縮する第2遮光膜による2層構造が断熱機能を有し、暗室38の上部において外気との熱交換が遮断されるため、暗室38内の温度維持が容易になる。
【0048】
Y方向移動枠49は、略正方形状の枠部材であって、外側第2遮光膜48a,48b等の間に形成されたY方向隙間に配置される。Y方向移動枠49は、Y方向の枠の内部に外側第2遮光膜48a,48b等を巻き取る巻取りローラやガイドローラが回転可能に支持される。従って、外側第2遮光膜48a,48b等は、Y方向移動枠49の移動に伴って伸縮する。また、上記Y方向の枠の上端部は、後述するXY移動機構7のY方向スライダ75に挟まっているため、Y方向移動枠49は、Y方向スライダ75の移動に追随する。つまり、外側第2遮光膜48a,48b等は、Y方向移動枠49を介してXY移動機構7に連結して伸縮する。なお、Y方向移動枠49の開口の内壁には、黒色のつや消し塗料が塗布される。
【0049】
投光部5は、遮光構造4の一部であるY方向移動枠49の内側の開口である。すなわち、投光部5は、第1遮光膜41a,41b、44a,44b及び第2遮光膜48a,48b等に囲まれた部分に形成される。そして、投光部5は、X方向移動枠47及びY方向移動枠49を介してXY移動機構7の移動に追随する。投光部5には、図2に示すように、面状発光体6が嵌合され、面状発光体6から発する疑似太陽光を通過させる。
【0050】
面状発光体6は、図1に示すように、太陽電池モジュール2の受光面21よりも小さい所定の面積を有し、投光部5の内側に嵌合するように配置され、発光部が下方を向き、太陽電池モジュール2の受光面21に疑似太陽光を照射する。ここで、「面状発光体」とは、多数のLEDを面状に配設したもの、又は、LED光源に接続された光ファイバーを多数束ねたもの、又は、面に形成されたLEDの一つ以上からなるものをいう。LEDは供給される電力を高効率で光に変換するため、面状発光体6は発光効率が高い。
【0051】
XY移動機構7は、面状発光体6を太陽電池モジュール2と対面する上面36上でXY移動させる機構である。XY移動機構7は、X方向に移動するX方向スライダ71と、X軸を回転中心とするX軸モータ72と、X方向スライダ71をガイドするガイド73と、回転運動を並進運動に変換するX方向変換部74と、Y方向に移動するY方向スライダ75と、Y軸を回転中心とするY軸モータ76と、回転運動を並進運動に変換するY方向変換部77と、を備える。
【0052】
X方向スライダ71は、略長方形状の枠部材であって、ガイド73に摺動可能に載置される。また、X方向スライダ71は、図2に示すように、X方向の1対の枠にX方向移動枠47が嵌合される。X軸モータ72は、X方向を回転中心とする回転運動を発生させる。ガイド73は、一対の棒状部材であって、試験槽3のY方向の外側においてX方向に互いに平行になるように配置される。ガイド73には、X方向スライダ71のY方向の枠が摺動可能に載置される。X方向変換部74は、X方向スライダ71のY方向の枠に取り付けられ、X軸モータ72による回転運動をX方向の並進運動に変換し、X方向スライダ71をX方向に摺動させる。X方向変換部74は、例えばボールネジ及びボールナット等から構成される。
【0053】
Y方向スライダ75は、略長方形状の枠部材であって、X方向スライダ71のX方向の1対の枠に摺動可能に載置される。また、Y方向スライダ75は、Y方向の1対の枠にY方向移動枠49が嵌合される。Y軸モータ76は、Y軸を回転中心とする回転運動を発生させる。Y方向変換部77は、Y方向スライダ75のX方向の枠に取り付けられ、Y軸モータ76による回転運動をY方向の並進運動に変換し、Y方向スライダ71をY方向に摺動させる。Y方向変換部77も例えばボールネジ及びボールナット等から構成される。
【0054】
空調装置8は、圧縮機、熱交換器及びファン等を備え、調和空気を生成して暗室38内に送り込み、暗室38内の温湿度を調節する。図2の破線矢印は、調和空気の流れを示す。
【0055】
搬送装置9は、太陽電池モジュール2の端を支持して搬送する2本の搬送コンベアで構成され、図1に示すように、太陽電池モジュール2の幅方向の両端を保持する。従って、暗室38内を循環する調和空気が太陽電池モジュール2の背面(受光面21の反対側の面)にも直接接触する。
【0056】
制御装置10は、図示しない電装品箱に格納され、例えばCPU(Central Processing Unit)及びROM(Read Only Memory)等を備える。ROMには加速劣化試験装置1の動作を制御するためのプログラムが記録されており、CPUが当該プログラムを実行することで、ソフトウェア上の各種制御部が実現される。制御装置10は、図3に示すように、面状発光体6の出力を制御する面状発光体制御部101と、XY移動機構7を制御して面状発光体6の位置を調節するXY移動制御部102と、空調装置8を制御して暗室38内の環境を調節する空調制御部103と、搬送装置9等を制御する搬送制御部104と、を備える。
【0057】
面状発光体制御部101は、加速劣化試験を実行するために、太陽電池モジュール2に照射する疑似太陽光の強度が屋外における太陽光の強度より高くなるように面状発光体6を制御する。
【0058】
XY移動制御部102は、XY移動機構7のモータ72,76の回転を制御してX方向スライダ71及びY方向スライダ75を摺動させ、太陽電池モジュール2に対して面状発光体6を走査させる動作を繰り返し、太陽電池モジュール2の全体に疑似太陽光を均一に照射させる。走査方法としては、例えば、X方向スライダ71を固定してY方向スライダ75をスライドさせ、続いてX方向スライダ71を面状発光体6のX方向長さ分だけ移動させて固定し、Y方向スライダ75を前回のスライド方向と逆向きにスライドさせる、という動作を繰り返し、太陽電池モジュール2に順番に万遍なく疑似太陽光を照射させる方法がある。また、例えば、Y方向スライダ75を固定してX方向スライダ71をスライドさせ、続いてY方向スライダ75を面状発光体6のY方向長さ分だけ移動させて固定し、X方向スライダ71を前回のスライド方向と逆向きにスライドさせる、という動作を繰り返し、太陽電池モジュール2に順番に万遍なく疑似太陽光を照射させる方法もある。また、面状発光体6の走査は、設定された回数又は所定の時間に達するまで繰り返し行われる。
【0059】
空調制御部103は、ユーザによって設定された温湿度と、暗室38内に設置された温湿度センサ(図示せず)の検知する温湿度と、に基づいて空調装置8に調和空気を生成させて暗室38内に送り込ませ、暗室38内の温湿度を設定された温湿度にする。
【0060】
搬送制御部104は、シャッター34,35及び搬送装置9を制御する。搬送制御部104は、入口32側のシャッター34を開いた状態で搬送装置9によって太陽電池モジュール2を暗室38内に搬入し、太陽電池モジュール2全体が入るとシャッター34を閉じる。加速劣化試験中は両シャッターを閉じて暗室38を密閉状態にし、加速劣化試験が終了すると、出口33側のシャッター35を開いて太陽電池モジュール2を暗室38から搬出する。
【0061】
[加速劣化試験装置1の動作について]
次に、加速劣化試験装置1の動作について説明する。
【0062】
まず、制御装置10は、空調装置8を制御して、暗室38内を設定された温湿度にする。次に、制御装置10は、搬送装置9で太陽電池モジュール2を暗室38内に搬入し、太陽電池モジュール2が所定位置に達すると搬送装置9を停止する。制御装置10は、面状発光体6を予め初期位置(例えば図1の符号12で示す位置)に配置しておき、太陽電池モジュール2が所定位置に配置されると、面状発光体6の走査移動を開始する。
【0063】
制御装置10は、面状発光体6を符号12で示す位置から図1において下方向に符号13で示す位置までスライドさせ、続いて面状発光体6を左方向にスライドさせた後に上方向にスライドさせる。制御装置10は、このスライド動作を繰り返し、符号14で示す位置に達すると、再び符号12の位置に戻す。
【0064】
制御装置10は、試験時間に達するまで上記動作を繰り返す。試験時間に達すると、制御装置10は、面状発光体6のスライドを停止する。そして、制御装置10は、搬送装置9を駆動して、太陽電池モジュール2を暗室38から搬出すると共に、別の太陽電池モジュールを暗室38内に搬入し、再び加速劣化試験を開始する。
【0065】
(第1実施形態に係る加速劣化試験装置の特徴)
第1実施形態に係る加速劣化試験装置1には、以下の特徴がある。本実施形態の加速劣化試験装置1では、光源が遮光構造4の一部である投光部5に対応した面状発光体6であるため、光源を小型化でき、その発熱量を抑制できる。また、光源が面状発光体6であるため、光源を太陽電池モジュール2に接近させることができる。さらに、遮光構造4の投光部5から照射することにより、照射光の拡散を抑え、太陽電池モジュール2の受光面21の所定部分を狙って照射できる。その結果、この面状発光体6を走査移動させて、太陽電池モジュール2に順番に万遍なく同一条件のもとに疑似太陽光を照射することが可能となる。
【0066】
また、本実施形態の加速劣化試験装置1では、遮光膜41a,41b、44a,44b、48a,48b等に囲まれた投光部5を介して面状発光体6を直接太陽電池モジュール2に対面させることが可能となる。また、遮光膜がXY移動機構7の移動に伴って伸縮するため、投光部5を移動させる別個の移動機構を設ける必要がない。
【0067】
また、本実施形態の加速劣化試験装置1では、太陽電池モジュール2は受光面21が上向きになるように横置きで保持されるため、太陽電池モジュール2の保持が安定し、XY移動機構7も重力負荷を受けずに安定させることが可能となる。そのため、面状発光体6を安定した状態で太陽電池モジュール2にさらに近付けて配置することが可能となる。
【0068】
また、本実施形態の加速劣化試験装置1では、太陽電池モジュール2を面状発光体6に接近させたままでコンベア搬送できる。また、面状発光体6を接近させた場合でも、太陽電池モジュール2上の調和空気の流れを確保して、所定の環境を保持できる。
【0069】
また、本実施形態の加速劣化試験装置1では、面状発光体6の走査を繰り返すことで、太陽電池モジュール2に順番に万遍なく同一条件のもとに疑似太陽光を照射することができる。
【0070】
(第2実施形態)
遮光構造は、第1実施形態の遮光構造4に限らず、以下に示す遮光構造でもよい。図4は、第2実施形態に係る加速劣化試験装置200の上面視模式図である(但し面状発光体6及びXY移動機構7を省略する)。図5は、図4のB−B線矢視断面図である。
【0071】
第2実施形態に係る加速劣化試験装置200の遮光構造240、投光部250及びフード260以外の構成は、第1実施形態に係る加速劣化試験装置1の遮光構造4及び投光部5以外の構成と同一である。
【0072】
遮光構造240は、Y方向を長手方向とするスリットが形成されたX方向遮光膜241と、X方向を長手方向とするスリットであって前記スリットの一部と重複するスリットが形成されたY方向遮光膜245と、両スリットの重複する部分で形成される投光部250と、前記投光部250の位置が面状発光体6の位置と一致するように前記X方向遮光膜241とY方向遮光膜245とを巻き取る又は巻き出す駆動機構と、を備える。駆動機構は、具体的には、前記X方向遮光膜241の両端を巻き取る又は巻き出すX方向巻取りローラ242と、前記X方向巻取りローラ242を回転させるX方向モータ243と、前記X方向遮光膜241を前記X方向巻取りローラ242にガイドするガイドローラ244と、前記Y方向遮光膜245の両端を巻き取る又は巻き出すY方向巻取りローラ246と、前記Y方向巻取りローラ246を回転させるY方向モータ247等を有する。
【0073】
X方向遮光膜241は、遮光性を有し、幅が開口部37の幅より大きく、長さが開口部37の長さ(X方向の長さ)より長いシート部材である。また、X方向遮光膜241は、X方向遮光膜241の幅方向を長手方向とする略長方形状のスリット248を備える。X方向遮光膜241は、開口部37を覆うように配置され、X方向の一方の端部がX方向巻取りローラ242に巻き取られ、他方の端部がもう一方のX方向巻取りローラ242に巻き出される。X方向巻取りローラ242は、シャッター34,35の上方においてY方向に伸びて回転可能に支持される。X方向巻取りローラ242は、X方向遮光膜241のX方向の端部を巻き取り、又は、巻き出す。X方向モータ243は、制御装置10の制御の下、2本のX方向巻取りローラ242を同一方向に回転させる。ガイドローラ244は、図5に示すように、X方向巻取りローラ242の上方においてY方向に伸びて回転可能に支持され、X方向遮光膜241を下方のX方向巻取りローラ242にガイドする。スリット248は、X方向巻取りローラ242が回転することによって、X方向(図4において左右方向)にスライドする。
【0074】
Y方向遮光膜245は、遮光性を有し、幅が開口部37の長さ(X方向の長さ)より大きく、長さが開口部37の幅より長いシート部材である。また、Y方向遮光膜245は、Y方向遮光膜245の幅方向を長手方向とする略長方形状のスリット249を備える。Y方向遮光膜245は、上面36とX方向遮光膜241との間に開口部37を覆うように配置され、Y方向の一方の端部がY方向巻取りローラ246に巻き取られ、他方の端部がもう一方のY方向巻取りローラ246に巻き出される。Y方向巻取りローラ246は、筺体31のY方向に配置された側壁においてX方向に伸びて回転可能に支持される。Y方向巻取りローラ246は、Y方向遮光膜245のY方向の端部を巻き取り、又は、巻き出す。Y方向モータ247は、制御装置10の制御の下、2本のY方向巻取りローラ246を同一方向に回転させる。また、2本のY方向巻取りローラの上方には、X方向と同様にガイドローラが回転可能に支持されており、Y方向遮光膜245を下方のX方向巻取りローラ246にガイドする。スリット249は、Y方向巻取りローラ246が回転することによって、Y方向(図4において上下方向)にスライドする。
【0075】
投光部250は、X方向にスライドするスリット248とY方向にスライドするスリット249とが重なる部分に形成される。そして、面状発光体6は、図5に示すように、投光部250に嵌合し、下方の太陽電池モジュール2に疑似太陽光を照射する。また、面状発光体6の周囲には、フード260が取り付けられる。このフード260により、疑似太陽光の拡散をより確実に抑制できる。
【0076】
制御装置10は、第1実施形態に係る制御に加えて遮光構造240の制御も実行する。制御装置10は、加速劣化試験において、投光部250が面状発光体6の移動に追随するようにX方向モータ243及びY方向モータ247を制御する。
【0077】
(第2実施形態に係る加速劣化試験装置の特徴)
第2実施形態に係る加速劣化試験装置200には、以下の特徴がある。第2実施形態に係る加速劣試験装置200では、光源が遮光構造240の一部である投光部250に対応した面状発光体6であるため、光源を小型化でき、その発熱量を抑制できる。また、光源が面状発光体6であるため、光源を太陽電池モジュール2に接近させることができる。さらに、遮光構造240の投光部250から照射することにより、照射光の拡散を抑え、太陽電池モジュール2の受光面21の所定部分を狙って照射できる。その結果、この面状発光体6を走査移動させて、太陽電池モジュール2に順番に万遍なく同一条件のもとに疑似太陽光を照射することが可能となる。さらに、光源が面状発光体であるため、光源を太陽電池モジュールに接近させることができる。
【0078】
また、加速劣化試験装置200では、X方向遮光膜241のスリット248及びY方向遮光膜245のスリット249で形成された投光部250を介して面状発光体6を直接太陽電池モジュール2に対面させることが可能となる。
【0079】
また、加速劣化試験装置200では、太陽電池モジュール2は受光面21が上向きになるように横置きで保持されるため、太陽電池モジュール2の保持が安定し、XY移動機構7も重力負荷を受けずに安定させることが可能となる。そのため、面状発光体6を安定した状態で太陽電池モジュール2により近付けて配置することが可能となる。
【0080】
(第3実施形態)
また、遮光構造は、以下に示す構造でもよい。図6は、第3実施形態に係る加速劣化試験装置の遮光構造を示す図であり、(a)は上面視図、(b)は(a)の矢視図である。
【0081】
本実施形態に係る遮光構造340は、X方向に対向する一対の伸縮自在な第1遮光膜の間に形成されたY方向隙間と、Y方向に対向する一対の伸縮自在な第2遮光膜と、第1遮光膜と第2遮光膜とに囲まれた部分に形成された投光部と、この投光部が面状発光体と一致するように前記第1遮光膜及び第2遮光膜を巻き取る又は巻き出す駆動装置と、を備える。
【0082】
第1実施形態に係る遮光構造4と同様に、X方向に対向する一対の第1遮光膜及びY方向に対向する一対の第2遮光膜で構成されるが、遮光膜を巻き取る独自の巻取り機構を備える点で遮光構造4と異なる。遮光構造340は、X方向に対向する一対の遮光膜を伸縮させる構造とY方向に対向する一対の遮光膜を伸縮させる構造とを備えるが、両構造は幅が異なる点以外は同一の構造である。そこで、X方向の遮光構造を例に説明する。なお、図6(b)では、Y方向の遮光構造を図示しない。
【0083】
遮光構造340は、X方向に対向する一対の遮光膜341a,341bと、この遮光膜341a,341bを巻き取る又は巻き出す駆動装置と、を備える。この駆動装置は、回転してタイミングベルト344をX方向に往復移動させる駆動プーリ342と、駆動プーリ342の回転に追随してタイミングベルト344をX方向に往復移動させる従動プーリ343と、X方向に往復移動するタイミングベルト344と、遮光膜341a,341bを巻き取る又は巻き出す巻取りローラ345a,345bと、ガイドローラ346a,346bと、巻取りローラ345a,345bを支持し且つタイミングベルト344の往復移動に追随するベース板347a,347bと、ベース板347a,347bを連結する連結部材348と、タイミングベルト344の途中部分をベース板347bに係止する補助ブラケット349と、を備える。
【0084】
遮光膜341a,341bは、第1実施形態の外側第1遮光膜41a,41bと略同一の遮光膜であり、一端部が上面36に固定され、他端部が巻取りローラ345a,345bに巻き取られる。そして、遮光膜341a,341b間にはY方向隙間が形成される。駆動プーリ342は、Y方向に延在する回転可能に支持された回転軸に取り付けられ、また、タイミングベルト344が巻き掛けられる。駆動プーリ342は、モータ駆動によって回転してタイミングベルト344をX方向に往復移動させる。従動プーリ343は、駆動プーリ342のX方向に対向する位置に配置され、駆動プーリ342の回転に追随してタイミングベルト344をX方向に往復移動させる。タイミングベルト344は、駆動プーリ342及び従動プーリ343に巻き掛けられ、両プーリの回転によってX方向に往復移動する。巻取りローラ345a,345bは、ベース板347a,347bの側板に支持され、軸部にゼンマイが入れられていて、固定された軸部に対して捩じって回転させることでそれぞれ巻取り方向のトルクを付与でき、遮光膜341a,341bを巻き取り、又は、巻き出す。ガイドローラ346a,346bは、ベース板347a,347bの側板に回転可能に支持され、遮光膜341a,341bを巻取りローラ345a,345bにガイドする。ベース板347a,347bは、Y方向に延在する板状部材であって側板で巻取りローラ345a,345b及びガイドローラ346a,346bを回転可能に支持する。また、ベース板347a,347bは、タイミングベルト344の往復移動に追随してX方向に往復移動する。連結部材348は、ベース板347a,347bを連結して遮光膜341a,341b間に形成されるY方向隙間の幅間隔を保持する。補助ブラケット349は、ベース板347bに固着される。タイミングベルト343の途中部分は、この補助ブラケット349に係止される。
【0085】
Y方向隙間のスライド動作について説明する。駆動プーリ342がモータ駆動で回転すると、タイミングベルト343が往復移動を開始し、タイミングベルト343の途中部分と係止する補助ブラケット349が移動し、補助ブラケット349が固着されたベース板347bと、ベース板347bと連結するベース板347aとが間隔を保ったままX方向に往復移動することで、Y方向隙間がX方向にスライドする。
【0086】
Y方向の遮光構造においても、X方向隙間がY方向にスライドする。従って、X方向隙間及びY方向隙間によって形成される投光部350がXY方向に移動する。
【0087】
制御装置10は、第1実施形態に係る制御に加えてXY方向の遮光構造が有するモータの回転も制御する。すなわち、制御装置10は、加速劣化試験において、投光部350が面状発光体6の移動に追随するようにXY方向の遮光構造340が有するモータの回転を制御する。
【0088】
(第3実施形態に係る加速劣化試験装置の特徴)
第3実施形態に係る加速劣化試験装置には、以下の特徴がある。本実施形態の加速劣化試験装置では、光源が遮光構造340の一部である投光部350に対応した面状発光体6であるため、光源を小型化でき、その発熱量を抑制できる。また、光源が面状発光体6であるため、光源を太陽電池モジュール2に接近させることができる。さらに、遮光構造340の投光部350から照射することにより、照射光の拡散を抑え、太陽電池モジュール2の受光面21の所定部分を狙って照射できる。その結果、この面状発光体6を走査移動させて、太陽電池モジュール2に順番に万遍なく疑似太陽光を照射することが可能となる。さらに、光源が面状発光体であるため、光源を太陽電池モジュールに接近させることができる。
【0089】
また、本実施形態の加速劣化試験装置では、X方向に対向する一対の遮光膜341a,341bで形成されたY方向隙間と、Y方向に対向する一対の遮光膜で形成されたX方向隙間と、によって形成された投光部350を介して面状発光体6を直接太陽電池モジュール2に対面させることが可能となる。
【0090】
また、本実施形態の加速劣化試験装置では、太陽電池モジュール2は受光面21が上向きになるように横置きで保持されるため、太陽電池モジュール2の保持が安定し、XY移動機構7も重力負荷を受けずに安定させることが可能となる。そのため、面状発光体6を安定した状態で太陽電池モジュール2にさらに近付けて配置することが可能となる。
【0091】
(第4実施形態)
また、遮光構造は、以下に示す構造でもよい。図7は、第4実施形態に係る加速劣化試験装置の遮光構造を示す図であり、(a)は上面視図、(b)は(a)のC−C線矢視断面図である。なお、本実施形態に係る加速劣化試験装置の遮光構造以外の構成は、第1実施形態に係る加速劣化試験装置1の遮光構造4以外の構成と同一である。
【0092】
本実施形態の遮光構造440は、平板状の液晶シャッターで構成され、開口部37と略同一形状であって開口部37の厚みよりも薄く、開口部37に嵌合される。この液晶シャッターは、印加される電圧が制御されて、光を透過する透過領域441と、光を遮る遮光領域442と、を形成する。
【0093】
透過領域441は面状発光体6と略同一形状を備え、面状発光体6の発する疑似太陽光を暗室38へと通過させる。即ち、透過領域441は投光部450の機能を果たす。一方、遮光領域442は、透過領域441以外の領域を占め、面状発光体6の発する疑似太陽光を遮る。
【0094】
制御装置10は、第1実施形態に係る遮光構造4の制御に代わって遮光構造440の制御を実行する。制御装置10は、加速劣化試験において、液晶シャッターに印加する電圧を制御して、面状発光体6の移動に追随するように投光部450を移動させる。
【0095】
(第4実施形態に係る加速劣化試験装置の特徴)
第4実施形態に係る加速劣化試験装置には、以下の特徴がある。本実施形態の加速劣化試験装置では、投光部450と遮光領域442とを液晶シャッターというシンプルな構成で実現できる。また、液晶シャッターに印加する電圧を制御するだけで投光部450を移動させることができる。従って、投光部を移動させる駆動装置が不要である。
【0096】
(第5実施形態)
太陽電池モジュール2と面状発光体6との距離を変更できる構造でもよい。図8は、第5実施形態に係る加速劣化試験装置500の断面図である。
【0097】
第5実施形態に係る加速劣化試験装置500は、第2実施形態に係る加速劣化試験装置200の構成に、調和空気の太陽電池モジュール2の上方における流路を形成するガラス510と、太陽電池モジュール2を昇降させる昇降機構520と、昇降機構520の太陽電池モジュール2に加える力を分散させる載置板530と、を追加した装置である。
【0098】
ガラス510は、開口部37と略同一形状を備えた平板状のガラスであり、開口部37に嵌め込まれる。ガラス510は、面状発光体6から照射される疑似太陽光の吸収を抑えるため、より薄いほうが好ましい。昇降機構520は、油圧又は電動で駆動するピストン装置であり、搬送装置9の2本のコンベア間の複数個所に設置される。載置板530は、太陽電池モジュール2よりも大きい面積を有する平板部材であって、太陽電池モジュール2の背面側に配置される。
【0099】
制御装置10は、第2実施形態に係る制御に加えて昇降機構520の制御も実行する。制御装置10は、加速劣化試験において、昇降機構520を駆動し、太陽電池モジュール2の所定の高さ位置まで持ち上げて維持する。
【0100】
(第5実施形態に係る加速劣化試験装置の特徴)
第5実施形態に係る加速劣化試験装置には、以下の特徴がある。本実施形態の加速劣化試験装置500では、面状発光体6を太陽電池モジュール2に近付けることができるため、疑似太陽光の拡散をより確実に抑制できると共に太陽電池モジュール2により強い疑似太陽光を照射できる。
【0101】
(第6実施形態)
本発明に係る環境試験装置は、電気・電子機器等の環境試験装置であってX線を照射してサンプルの内部の劣化状態を観察する環境試験装置にも適用できる。第6〜第11実施形態では、X線を用いてサンプルの内部を観察する環境試験装置の形態について図面を参照して説明する。
【0102】
第6実施形態の環境試験装置について図9を参照して説明する。図9は、本実施形態の環境試験装置600の模式図であって、(a)は(b)のE−E線矢視側面図であり、(b)は(a)のD−D線矢視上面図である。
【0103】
[環境試験装置600について]
本実施形態の環境試験装置600は、所定の環境に保持された試験槽内に設置されたサンプルにX線を照射し、サンプルを透過したX線を検知して透過X線画像を得る環境試験装置である。環境試験装置600は、内部環境を調整する空調装置680を備える試験槽620内に保持されたサンプル610に所定の周波数領域のX線を照射する環境試験装置であって、前記試験槽620の一面であって前記サンプル610に対面する一面に配設され、前記所定の周波数領域のX線を遮蔽するカバー633(X線照射部630の一部、X線遮蔽部)と、このカバー633(X線遮蔽部)の開口等で構成され前記所定の周波数領域のX線を通過させるための投波部650と、前記投波部650を経て前記所定の周波数領域のX線を照射するX線照射部630と、前記X線照射部630が照射するX線をファンビーム状に形成して前記サンプル610に照射するファンビーム形成部640と、前記X線照射部630を前記一面上において上下に移動させる移動装置670と、前記サンプル610を透過したX線を面状に配置された複数のX線検出器によって検知するX線検知部660と、このX線検知部660が検知したX線強度に基づいて前記サンプル610の透過X線画像を生成する制御装置690と、を備える。以下、各要素の詳細を説明する。
【0104】
サンプル610は、例えば電子・電気機器、成形品等の内部構造を備える製品である。
【0105】
試験槽620は、空調装置680によって所定の温湿度に調節された内部空間を備え、この内部空間にサンプル610を保持する。試験槽620は、試験槽本体621と、サンプル載置台622と、を備える。試験槽本体621は、X線遮蔽部623と、X線透過部624と、で構成される。X線遮蔽部623は、断熱材及びX線遮蔽材で構成され、内部の環境を保持すると共に、内部に入射したX線が外部に漏れるのを防止する。X線遮蔽材として、例えば鉛が用いられる。X線透過部624は、断熱材及びX線透過材で構成され、試験槽本体621の左右の側壁、すなわちX線照射部630が配置された側壁及びX線検知部660が配置された側壁に設けられる。X線透過部624は、X線遮蔽部623と共に試験槽本体621内の環境を保持しつつ、X線照射部630から照射されたX線を試験槽本体621内に透過させる。X線透過材として、例えばPEEK(PolyEtherEtherKetone,登録商標)樹脂等が用いられる。サンプル載置台622は、耐放射線性を備える材質で構成され、試験槽本体621内の略中央部に配置される。
【0106】
X線照射部630は、所定の波長領域のX線を発生させるX線源であって、正面視して試験槽620の左側に配置される。X線照射部630は、X線を発生するX線管球631と、X線管球631及びファンビーム形成部640を支持する支持部材632と、X線管球631等を格納し、外部にX線が漏れるのを防止するカバー633と、を備える。X線管球631は、電子銃、加速管及びターゲット等を備え、電子銃から発生した電子を加速管で加速し、高速の電子をターゲットに衝突させ、ターゲットから発生したX線を試験槽620内のサンプル610に向かって照射する。X線管球631は、支持部材632を介してカバー633に固定される。支持部材632は、図9(b)に示すように、カバー633に取り付けられ、X線管球631及びファンビーム形成部640を支持する。カバー633は、X線遮蔽材で構成された筺体であるが、ファンビーム形成部640の前方部分は、図9(b)に示すように、開口634が設けられる。また、カバー633は、移動装置670に取り付けられ、移動装置670によって昇降移動する。従って、X線を発生するX線管球631もカバー633の移動に伴って昇降移動する。
【0107】
ファンビーム形成部640は、X線遮蔽材で構成された略長方形状の板状部材であって、略中央部に幅方向を長手方向とするスリット641を備える。ファンビーム形成部640は、カバー633内に配置され、スリット641がX線管球631のX線発生部と対向するように支持部材632で支持される。また、ファンビーム形成部640は、X線管球631から発生したX線をスリット641に通過させることでX線をファンビーム状に形成し、サンプル610にライン状のX線を照射する。従って、サンプル610には、ライン状のX線が上下方向に順次照射される。
【0108】
投波部650は、X線照射部630のカバー633に設けられた開口634と、試験槽620のX線透過部624と、で構成され、ファンビーム形成部640でファンビーム状に形成されたX線を通過させ、試験槽620内に入射させる。カバー633の開口634はX線照射部630と一体となって昇降移動し、また、X線透過部624はX線照射部630の走査領域全体に渡って設けられているので、投波部650は、X線照射部630に追随して昇降移動する。
【0109】
X線検知部660は、正面視して試験槽620の右側に配置される。X線検知部660は、サンプル610を透過したファンビーム状のX線を検知するX線センサユニット661と、Xセンサユニット661を格納するボックス662と、を備える。X線センサユニット661は、複数のX線検出器が面状に配置される。上記のとおり、X線照射部630はX線を照射しながら上方又は下方へ移動するため、X線センサユニット661は、上方又は下方から順次ファンビーム状の透過X線を検知し、X線強度を示す信号を制御装置690に送信する。
【0110】
移動装置670は、油圧、空圧又は電動によってX線照射部630を上下の方向に移動させる装置である。移動装置670は、図9(b)に示すように、X線照射部630の奥側の側部に配置され、X線照射部630のカバー633が取り付けられており、このカバー633を移動させることでX線照射部630を昇降移動させる。サンプル610の透過X線画像を撮影する際には、X線管球631からX線が照射される状態で、制御装置690の制御の下、X線照射部630を一定の速度で上下の方向に移動させる。なお、X線照射部630を所望の高さ位置に保持することも可能である。そうすると、サンプル610の所望の位置の透過X線画像のみを得ることが可能となる。
【0111】
空調装置680は、試験槽620内の空気を吸い込む吸込口681と、吸い込んだ空気を加熱や冷却、加湿や除湿するための図示しない加熱器、冷却除湿器、加湿器と、空気を循環させる送風機、及び試験槽620に空気調和された空気を吹き出す吹出口682からなり、前記冷却除湿器に冷媒を供給するための冷凍機683が環境試験装置600の下部に配置されている。
【0112】
制御装置690は、図示しない電装品箱に格納され、例えばCPU及びROM等を備える。ROMには環境試験装置600の動作を制御するためのプログラムが記録されており、CPUが当該プログラムを実行することで、ソフトウェア上の各種制御部が実現される。制御装置690は、図10に示すように、X線照射部630を制御するX線照射制御部691と、移動装置670を制御する移動制御部692と、X線画像を生成する画像生成部693と、空調装置680を制御する空調制御部694と、を備える。
【0113】
X線照射制御部691は、X線照射部630の出力を制御するためのものである。具体的には、X線管球631の電子銃に印加する電圧及び加速管に印加する加速電圧等を制御して、発生させるX線の波長や線量等を調節する。
【0114】
移動制御部692は、移動装置670を制御してX線照射部630の位置を制御するためのものである。移動制御部692は、例えば移動装置670の油圧等を制御して、X線照射部630を昇降移動させる。
【0115】
画像処理制御部693は、X線検知部660から順次送信される信号を取得し、信号が示すX線強度に基づいてサンプル610の各部の透過X線画像を生成し、各部の透過X線画像を繋ぎ合わせてサンプル610全体の透過X線画像を生成する。
【0116】
空調制御部694は、試験槽620内の環境を調節するために空調装置680を制御するためのものである。空調制御部694は、ユーザが設定する温湿度と、試験槽620内に設置された温湿度センサ(図示せず)が検知する温湿度と、に基づいて空調装置680に調和空気を生成させて試験槽620内に送りこませ、試験槽620内の温湿度を調節する。
【0117】
[環境試験装置600の動作について]
次に、環境試験装置600の動作について説明する。
【0118】
まず、制御装置690は、空調装置680を制御して、試験槽620内を設定された温湿度に調節する。次に、制御装置690は、移動装置670を制御して、投波部650がX線検知部660のX線センサユニット661の上端と同じ高さになるようにX線照射部630を移動させる。
【0119】
続いて、制御装置690は、X線照射部630を制御して、設定された波長領域のX線の照射を開始し、X線照射部630を下方に移動させる。そして、制御装置690は、X線検知部660のX線センサユニット661から順次送信される信号に基づいてサンプル610の透過X線画像を生成する。なお、X線画像を取得する際に、X線照射部630を上方から下方へ移動させたが、これに限らず、下方から上方へ移動させてもよい。
【0120】
(第6実施形態に係る環境試験装置の特徴)
第6実施形態に係る環境試験装置600には、以下の特徴がある。本実施形態の環境試験装置600では、小型のX線管球631を走査してサンプル610全体の透過X線画像を得るため、X線発生源を小型化でき、X線発生源の発熱量を抑えることができる。また、サンプル610のX線被ばく量を抑制できる。
【0121】
また、本実施形態の環境試験装置600では、X線照射部630を所望の高さ位置に固定して撮像することで、所望の位置の局所的な透過X線画像を得ることができる。
【0122】
(第7実施形態)
第6実施形態では、X線を検知するX線センサユニット661が面状であった。また、X線照射部630を昇降移動させる移動装置670を設けていた。しかし、X線センサユニットの形状及びX線照射部の移動手段はこれに限定されない。図11は、第7実施形態に係る環境試験装置700の模式図であって、(a)は(b)のG−G線矢視側面図であり、(b)は(a)のF−F線矢視上面図である。
【0123】
第7実施形態に係る環境試験装置700の構成のうち空調装置680のみが第6実施形態に係る環境試験装置600の構成と一致し、他の構成は異なる。
【0124】
本実施形態の環境試験装置700は、内部環境を調整する空調装置680を備える試験槽720内に保持されたサンプル610に所定の周波数領域のX線を照射する環境試験装置であって、前記試験槽720の一面であって前記サンプル610に対面する一面に配設され、前記所定の周波数領域のX線を遮蔽する可動壁722(試験槽720の一部、X線遮蔽部)と、この可動壁722(X線遮蔽部)のスリット等で構成され前記所定の周波数領域のX線を通過させるための投波部750と、前記可動壁722に固定され、前記投波部750を経て前記所定の周波数領域のX線を照射するX線照射部730と、前記X線照射部730が照射するX線をファンビーム状に形成して前記サンプル610に照射するファンビーム形成部740と、前記サンプル610を透過したX線をライン状に配置された複数のX線検出器で検知するX線検知部760と、このX線検知部760と連結する前記可動壁722をスライド移動させることで前記X線照射部730及びX線検知部760を同期するように昇降移動させる移動機構770と、前記X線検知部760が昇降移動中に検知したX線強度に基づいて前記サンプル610の透過X線画像を生成する制御装置と、を備える。以下、各要素の詳細について説明する。
【0125】
試験槽720は、サンプル610と対向するX線照射部730側の側壁に開口を備える試験槽本体721と、前記開口を覆うように取り付けられた可動壁722と、サンプル610を保持するサンプル載置台723と、を備える。試験槽本体721は、X線遮蔽部724と、X線透過部725と、を備える。X線遮蔽部724は、断熱材及びX線遮蔽材で構成され、略筺体状であるが、上記の通りX線照射部730側の側壁に略長方形状の開口を備える。X線透過部725は、X線検知部760側の側壁の前記開口と対向する位置に設けられる。X線透過部725は、断熱材及びX線透過材で構成され、少なくともX線照射部730の走査領域の面積を備える。可動壁722は、断熱材及びX線遮蔽材で構成され、X線遮蔽部724の前記開口を覆っており、上下方向にスライド可能に配置される。可動壁722は、ファンビーム形成部740のスリット741に対応する位置にスリットを備える。
【0126】
X線照射部730は、X線管球731と、カバー732と、を備える。X線管球731は、X線発生部が可動壁722の前記スリットと同じ高さ位置になるように図示しない取付部材によってカバー732に固定される。カバー732は、X線遮蔽材で構成され、可動壁722に固定される。従って、X線照射部730は、可動壁722のスライド移動に伴って昇降移動する。
【0127】
ファンビーム形成部740は、X線遮蔽材で構成された略長方形状の板状部材であって、略中央部に幅方向を長手方向とするスリット741を備える。ファンビーム形成部740は、スリット741がX線管球731と対向するように可動壁722に固定される。従って、ファンビーム形成部740は、可動壁722及びX線照射部730と一体となって昇降移動する。また、ファンビーム形成部740は、X線照射部730から照射されたX線をスリット741に通過させることでファンビーム状に形成する。ファンビーム状に形成されたX線は、可動壁722の前記スリット及びX線遮蔽部724の前記開口を通過して、サンプル610に照射される。
【0128】
投波部750は、可動壁722の前記スリットと、X線遮蔽部724の前記開口と、で構成される。投波部750は、ファンビーム形成部740でファンビーム状に形成されたX線を可動壁722の前記スリット及びX線遮蔽部724の前記開口を介して通過させ、試験槽720内に入射させる。可動壁722の前記スリットはX線照射部730と一体となって昇降移動し、また、X線遮蔽部724の前記開口はX線照射部730の走査領域全体に渡って設けられているので、投波部750は、X線照射部730に追随して昇降移動する。
【0129】
X線検知部760は、正面視して試験槽720の右側であって、X線管球731と同じ高さ位置に配置される。X線検知部760は、複数のX線検出器がライン状に配置され、後述する移動機構770によってX線照射部730と同期して昇降移動する。
【0130】
移動機構770は、可動壁722をスライド移動させる駆動装置771と、可動壁722とX線検知部760とを連結する連結部材772と、連結部材772をX線検知部760に取り付けるための取付部材773と、を備える。駆動装置771は、油圧、空圧又は電動によって可動壁722をスライド移動させる装置であって、可動壁722の両端に設けられる。連結部材772は、一端が可動壁722と接続し、環境試験装置700の背面側を通って、他端が取付部材773を介してX線検知部760と接続する。従って、X線照射部730及びX線検知部760は、連結部材772を介して同期して昇降移動する。
【0131】
冷凍機683は、第6実施形態に係る空調装置680の一部である。
【0132】
本実施形態の制御装置は、第6実施形態に係る制御装置690の移動制御部692を、移動装置670に替えて移動機構770を制御するようにしたものである。本実施形態の制御装置は、移動機構770を制御して可動壁722を昇降移動させ、この昇降移動中にX線照射部730にX線を照射させると共にX線検知部760にX線を検知させてサンプル610の透過X線画像を生成する。
【0133】
(第7実施形態に係る環境試験装置の特徴)
第7実施形態に係る環境試験装置700には、以下の特徴がある。本実施形態の環境試験装置700では、X線検知部760が昇降移動してサンプル610全体の透過X線画像を得るので、X線検知部を小型化することができる。
【0134】
また、本実施形態の環境試験装置700では、X線照射部730を所定の高さ位置に固定して撮像することで、サンプル610の所望の位置の局所的なX線画像を得ることが可能となる。
【0135】
また、本実施形態の環境試験装置700では、可動壁722をスライドさせるだけでX線照射部730及びX線検出部760を同期して昇降移動させることができるので、制御が容易になる。さらに、投波部750側にX線透過部が無いためX線の減衰が小さくなり、測定精度が向上する。
【0136】
(第8実施形態)
X線照射部及びX線検知部がそれぞれ独立した移動機構で昇降移動してもよい。図12は、第8実施形態に係る環境試験装置800の模式図であって、(a)は(b)のI−I線矢視側面図であり、(b)は(a)のH−H線矢視上面図である。
【0137】
第8実施形態に係る環境試験装置800の試験槽820、X線検知部860及び移動機構870以外の構成は、第7実施形態に係る環境試験装置700の試験槽720、X線検知部760及び移動機構770以外の構成と同一である。
【0138】
すなわち、本実施形態に係る環境試験装置800は、内部環境を調整する空調装置680を備える試験槽820内に保持されたサンプル610に所定の周波数領域のX線を照射する環境試験装置であって、前記試験槽820の一面であって前記サンプル610に対面する一面に配設され、前記所定の周波数領域のX線を遮蔽する第1可動壁822(試験槽820の一部、X線遮蔽部)と、この第1可動壁822(X線遮蔽部)のスリット等で構成され前記所定の周波数領域のX線を通過させるための投波部750と、前記第1可動壁822に固定され、前記投波部750を経て前記所定の周波数領域のX線を照射するX線照射部730と、前記X線照射部730が照射するX線をファンビーム状に形成して前記サンプル610に照射するファンビーム形成部740と、前記サンプル610を透過したX線をライン状に配置された複数のX線検出器で検知するX線検知部860と、前記X線検知部860が取り付けられ且つ前記X線検知部860の前方にスリットを備える第2可動壁823と、前記第1可動壁822及び第2可動壁823をそれぞれスライド移動させる駆動装置871,872を制御してX線照射部730及びX線検知部860を同期するように昇降移動させる移動機構870と、前記X線検知部860が昇降移動中に検知したX線強度に基づいて前記サンプル610の透過X線画像を生成する制御装置と、を備える。以下、各要素の詳細について説明する。
【0139】
試験槽820は、正面視して左右の側壁に開口を有する試験槽本体821と、試験槽本体821の左側壁の開口を覆うスライド可能な第1可動壁822と、試験槽本体821の右側壁の開口を覆うスライド可能な第2可動壁823と、サンプル載置台824と、を備える。試験槽本体821は、X線遮蔽材及び断熱材から構成され、略筺体状であり、左側壁すなわちX線照射部730側の側壁及び右側壁すなわちX線検知部860側の側壁に略長方形状の開口が設けられている。第1可動壁822は、第7実施形態の可動壁722と略同一の構成であって、連結部材と接続しない点で可動壁722と異なる。第2可動壁823は、断熱材及びX線遮蔽材で構成され、試験槽本体821の右側の開口を覆うように配置される。第2可動壁823の外側の面にはX線検知部860が取り付けられ、第2可動壁823の両端には移動機構870の駆動装置872が取り付けられる。また、第2可動壁823のX線センサユニット861に対応する位置には、幅方向を長手方向とするスリットが設けられる。従って、ファンビーム形成部740でファンビーム状に形成されたX線は、第1可動壁822のスリット及び試験槽本体821の左側壁の開口を通過してサンプル610に照射され、サンプル610を透過したX線は、右側壁の開口及び第2可動壁823の前記スリットを通過してX線センサユニット861に検知される。
【0140】
X線検知部860は、第2可動壁823の前記スリットに対応する位置に取り付けられる。X線検知部860は、ライン状に配置された複数のX線検出器を備えるX線センサユニット861と、X線センサユニット861をカバーするカバー862と、を備える。X線センサユニット861は、複数のX線検出器が水平方向にライン状に配置された装置である。X線センサユニット861は、カバー862内に固定される。カバー862は、X線遮蔽材で構成され、第2可動壁823に固定される。また、カバー862のX線センサユニット861の前方部分は開口となっており、サンプル610を透過したX線は阻害されることなくX線センサユニット861に検知される。
【0141】
移動機構870は、第1可動壁822を昇降移動させる第1駆動装置871と、第2可動壁823を第1可動壁822と同期するように昇降移動させる第2駆動装置872と、を備える。両駆動装置は、油圧、空圧又は電動により、制御装置の制御の下、各可動壁を昇降移動させる。
【0142】
本実施形態の制御装置は、第6実施形態に係る制御装置690の移動制御部692を、移動装置670に替えて移動機構870を制御するようにしたものである。本実施形態の制御装置は、移動機構870を制御して可動壁822,823を昇降移動させ、この昇降移動中にX線照射部730にX線を照射させると共にX線検知部860にX線を検知させてサンプル610の透過X線画像を生成する。
【0143】
(第8実施形態に係る環境試験装置の特徴)
第8実施形態に係る環境試験装置800には、以下の特徴がある。本実施形態の環境試験装置800では、X線検知部860を第2可動壁823に固定し、第2可動壁823のスリットを通してX線を検知するので、検知側にX線を阻害するものがなく、より鮮明なX線画像を得ることが可能となる。
【0144】
(第9実施形態)
サンプルの一部をより高解像度で撮像する構成でもよい。図13は、第9実施形態に係る環境試験装置900の模式図であって、(a)は(b)のK−K線矢視側面図であり、(b)は(a)のJ−J線矢視上面視図である。
【0145】
第9実施形態に係る環境試験装置900は、第7実施形態に係る環境試験装置700のX線検知部760よりも高解像度のX線センサユニット910を追加した構成を備える。
【0146】
X線センサユニット910は、X線検知部760よりも高解像度のX線検出器であって、試験槽本体721内のサンプル載置台723とX線透過部725との間に配置される。そして、X線センサユニット910は、図13(a)に示すように、X線検知部760の検知領域の下部約半分の領域をカバーするように配置される。
【0147】
本実施形態の制御装置は、第7実施形態に係る制御装置の画像生成部693を、X線検知部760及びX線センサユニット910を制御するものとしたものである。本実施形態の制御装置は、X線検知部760から送信されたX線強度信号と、X線センサユニット910から送信されたX線強度信号と、に基づいてサンプル610の透過X線画像を生成する。
【0148】
(第9実施形態に係る環境試験装置の特徴)
第9実施形態に係る環境試験装置900には、以下の特徴がある。本実施形態の環境試験装置900では、高解像度のX線センサユニット910をサンプル610の背部に設置することで、部分的に解像度の異なる透過X線画像を得ることが可能となり、また、測定の柔軟性及び精度を向上させることが可能となる。
【0149】
(第10実施形態)
一方、X線遮蔽構造は、以下の構造であってもよい。図14は、第10実施形態に係る環境試験装置のファンビーム形成構造を説明するための図であって、(a)はX線照射部1030周辺の側面視図であり、(b)は(a)の矢印方向から視た図である。
【0150】
第10実施形態に係る環境試験装置のX線遮蔽構造は、ファンビーム形成構造1040であって、試験槽本体1021のX線通過領域1022を覆うように上下方向に対向する一対の伸縮自在なX線遮蔽膜1041a,1041bと、前記X線遮蔽膜1041a,1041bの間に形成された上下方向隙間1042と、を有し、前記上下方向隙間1042が投波部1050を形成し、前記X線遮蔽膜1041a,1041bは、X線照射部1030に連結されて伸縮する。
【0151】
試験槽本体1021は、試験槽本体1021のX線照射部1030側に設けられた開口からなるX線通過領域1022と、X線通過領域1022を覆う多層のX線透過膜1023a〜1023cと、を備える。X線通過領域1022は、サンプルに照射されるX線が通過する領域であって、試験槽本体1021に設けられた貫通穴で構成される。X線透過膜1023a〜1023cは、例えばPEEK(登録商標)樹脂等のX線透過材で構成されたシート部材である。X線透過膜1023a〜1023cは、図14(a)に示すように、3層構造であって、透過膜間に空気層が形成される。従って、X線透過膜1023a〜1023cは、X線を試験槽内に透過させ且つ断熱効果を発揮する。
【0152】
X線照射部1030は、X線管球1031と、カバー1032と、を備える。X線管球1031は、上記第6〜第7実施形態に係るX線管球と同一のものである。カバー1032も、上記第6〜第7実施形態に係るX線照射部のカバーと略同一のものであるが、ファンビーム形成構造1040の後述する上下移動枠1044が内部に固定される点で異なる。
【0153】
ファンビーム形成構造1040は、前記X線遮蔽膜1041a,1041bと、前記上下方向隙間1042と、前記X線遮蔽膜1041a,1041bを巻き取る一対の巻取ローラ1043a,1043bと、上下移動枠1044と、を備える。
【0154】
X線遮蔽膜1041a,1041bは、例えばタングステン等のX線遮蔽材で構成されたシート部材であり、それぞれの幅がX線通過領域1022の幅より大きく、その長さはX線通過領域1022の上下方向の長さより長い。X線遮蔽膜1041aは、上側に配置され、一端部が試験槽本体1021に固定され、他端部が巻取りローラ1043aに巻き取られる。一方、X線遮蔽膜1041bは、下側に配置され、一端部が試験槽本体1021に固定され、他端部が巻取りローラ1043bに巻き取られる。
【0155】
上下方向隙間1042は、上記の通り、一対のX線遮蔽膜1041a,1041bの間に形成された隙間であって、X線遮蔽膜1041a,1041bの伸縮に伴って、昇降移動する。
【0156】
巻取りローラ1043a,1043bは、X線遮蔽膜1041a,1041bの幅と略同一の長さを有する棒状部材であって、X線遮蔽膜1041a,1041bの水平部分よりも外側において奥行方向に延在し、上下移動枠1044に回転可能に支持され、X線遮蔽膜1041a,1041bの前記他端部を巻き取る。
【0157】
上下移動枠1044は、X線遮蔽材で構成された枠部材であって、この枠に巻取りローラ1043a,1043bが収容される。また、上下移動枠1044の両端は、X線照射部1030のボックス1032の両側壁に固定される。従って、X線照射部1030の昇降移動に伴って上下移動枠1044が移動してX線遮蔽膜1041a,1041bが伸縮することによって、上下方向隙間1042が昇降移動する。すなわち、投波部1050は、X線照射部1030に連結して昇降移動する。
【0158】
(第10実施形態に係る環境試験装置の特徴)
第10実施形態に係る環境試験装置には、以下の特徴がある。本実施形態の環境試験装置では、シート部材を使用するので、X線遮蔽を容易に行うことが可能となる。また、X線透過膜1023a〜1023cが多層構造なので、断熱効果を発揮し、試験槽1021内の環境を容易に維持できる。
【0159】
(第11実施形態)
上記実施形態では、サンプルを縦置きで保持する構成であったが、横置きで保持する構成であってもよい。図15は、第11実施形態に係る環境試験装置1100の模式図であって、(a)は(b)のM−M線矢視正面図であり、(b)は(a)のL−L線矢視側面図である。
【0160】
本実施形態の環境試験装置1100は、内部環境を調整する空調装置1180を備える試験槽1120内に横置きに保持されたサンプル610に所定の周波数領域のX線を照射して透過X線画像を得る環境試験装置であって、前記試験槽1120の一面であって前記サンプル610に対面する上面に配設され、前記所定の周波数領域のX線を遮蔽するカバー1133(X線照射部1130の一部、X線遮蔽部)と、このカバー1133(X線遮蔽部)の開口等で構成され前記所定の周波数領域のX線を通過させるための投波部1150と、前記投波部1150を経て前記所定の周波数領域のX線を照射するX線照射部1130と、前記X線照射部1130が照射するX線をファンビーム状に形成して前記投波部1150を介して前記サンプル610に照射するファンビーム形成部1140と、前記サンプル610を透過したX線をライン状に配置された複数のX線検出器で検知するX線検知部1160と、前記試験槽1120の下部にスライド可能に配置され、前記X線検知部1160が取り付けられた可動壁1123と、前記可動壁1123及びX線照射部1130を連結し、前記可動壁1123をスライド移動させることで前記X線照射部1130及びX線検知部1160を同期するように移動させる移動機構1170と、前記X線検知部1160がスライド移動中に検知したX線強度に基づいて前記サンプル610の透過X線画像を形成する制御装置と、を備える。
【0161】
試験槽1120は、試験槽本体1121と、サンプル610の出し入れ時に開閉する扉1122と、前記可動壁1123と、サンプル610を横置きに保持するサンプル載置台1124と、を備える。試験槽本体1121及び扉1122は、断熱材及びX線遮蔽材で構成され、空調装置1180によって調節された環境を保持する。試験槽本体1121の上下側壁には開口が設けられている。可動壁1123は、断熱材及びX線遮蔽材で構成され、試験槽本体1121の下側壁の前記開口を覆うように配置され、スライド可能に取り付けられる。可動壁1123には、ファンビーム形成部1140の後述するスリット1141と対向する位置にスリットが形成されており、サンプル610を透過したファンビーム状のX線がこのスリットを通過する。サンプル載置台1124は、X線透過材で構成され、サンプル610をX線照射部1130と対向するように保持する。
【0162】
X線照射部1130は、試験槽本体1121の上面に配置され、X線管球1131と、X線管球1131を支持する支持部材1132と、X線管球1131等を格納し、移動機構1170によってスライド移動するカバー1133と、を備える。X線管球1131は、X線発生部が下方に向くように配設され、支持部材1132によって支持される。支持部材1132は、平板状部材をその略中央部を略直角に屈曲させた部材であって、直立部分及び水平部分を備え、直立部分の端部がカバー1133に取り付けられ、水平部分のファンビーム形成部1140と対向する面にX線管球1131が保持される。カバー1133は、X線遮蔽材で構成された筺体であるが、ファンビーム形成部1140と対向する部分に開口が設けられている。また、カバー1133は、移動機構1170の後述する連結部材1172を介して可動壁1123と連結し、可動壁1123と同期してスライド移動する。従って、X線管球1131もカバー1133と一体となってスライド移動する。
【0163】
ファンビーム形成部1140は、X線遮蔽材で構成された略長方形状の部材であって、略中央部にスリット1141を備える。そして、ファンビーム形成部1140は、スリット1141がX線管球1131のX線発生部と対向するようにボックス1133に取り付けられる。X線管球1131から発生したX線はスリット1141を通過する際にファンビーム状となってサンプル610に照射される。
【0164】
投波部1150は、試験槽本体1121の上側壁に設けられた前記開口と、カバー1133の前記開口と、で構成される。ファンビーム状に形成されたX線は、カバー1133の前記開口及び試験槽本体1121の前記開口を通過してサンプル610に照射される。カバー1133の前記開口はX線管球1131と一体となって移動し、また、試験槽本体1121の前記開口はX線照射部1130の走査領域に渡って設けられているので、投波部1150もX線照射部1130に追随して移動する。
【0165】
X線検知部1160は、可動壁1123の前記スリットに対応する位置に設けられる。X線検知部1160は、複数のX線検出器がライン状に配置され、サンプル610を透過したファンビーム状のX線を検知する。
【0166】
移動機構1170は、可動壁1123をスライド移動させる駆動装置1171と、可動壁1123とX線照射部1130を連結する連結部材1172と、を備える。駆動装置1171は、油圧、空圧又は電動により可動壁1123をスライド移動させる装置であって、可動壁1123の両端に設けられる。連結部材1172は、可動壁1123とX線照射部1130のカバー1133とを連結し、可動壁1123及びX線照射部1130を同期してスライド移動できるようにするものである。
【0167】
空調装置1180は、熱交換器、除湿ユニット及びファン等を備え、試験槽1120内に配置され、サンプル610が配置された空間を所定の環境に保持する。
【0168】
本実施形態の制御装置は、第7実施形態に係る制御装置と基本的に同じである。すなわち、本実施形態の制御装置は、空調装置1180を制御して、試験槽1120内を設定された温湿度に調節する。次に、この制御装置は、X線照射部1130を制御して、設定された波長領域のX線の照射を開始し、続いて移動機構1170を制御して、X線照射部1130及びX線検知部1160を同期するようにスライド移動させる。
【0169】
そして、この制御装置は、X線検知部1160から順次送信される信号に基づいてサンプル610の透過X線画像を生成する。
【0170】
(第11実施形態に係る環境試験装置の特徴)
第11実施形態に係る環境試験装置1100には、以下の特徴がある。本実施形態の環境試験装置1100では、試験槽本体1121が可動壁1123の重量を支えるので、駆動装置1171は水平方向の駆動力だけで可動壁1123をスライドさせることが可能となる。従って、消費エネルギーも削減できる。
【0171】
また、環境試験装置1100では、サンプル610が横置きで保持されるので、サンプル610の保持が安定する。
【0172】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0173】
上記第1〜第5実施形態では、発光源をLEDからなる面状発光体として説明したが、発光源はこれに限定されず、例えば、単数のLEDからなる発光源であってもよいし、小型のランプであってもよい。
【0174】
また、上記第1〜第5実施形態では、試験内容が加速劣化試験だけであったが、これに限定されず、例えば、電流−電圧特性を測定してもよい。測定を行う場合には、面状発光体6を所定位置に固定して疑似太陽光を照射させて測定し、測定後に面状発光体6を隣接する位置に移動させて固定し、疑似太陽光を照射させて測定する、という動作を繰り返す。
【0175】
また、上記第1〜第5実施形態では、面状発光体6に例えば小型のCCD(Charge Coupled Device)カメラを取り付けて、面状発光体6が太陽電池モジュール2を走査する際に受光面21を撮像し、外観検査を実行してもよい。
【0176】
また、上記第5実施形態では、太陽電池モジュール2を面状発光体6に近付ける構成であったが、これに限定されず、面状発光体6を太陽電池モジュール2に近付ける構成であってもよい。このように構成することにより、太陽電池モジュール2に対する振動ストレスを低減することが可能となると共に、太陽電池モジュール2の昇降機構520が不要なためシンプルな構成で上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0177】
また、上記第1〜第5実施形態では、太陽電池モジュール2を横置きで保持したが、これに限定されず、縦置きで保持してもよい。
【0178】
また、上記第1〜第5実施形態では、面状発光体6をX方向又はY方向に直線的に走査移動させたが、これに限定されず、太陽電池モジュール2の全体を均一に照射できる走査方法あるいは、太陽電池モジュール2の特定の部位のみを選択的に照射できる方法でも良い。
【0179】
また、上記第1〜第5実施形態では、面状発光体6を1個だけ備えたが、これに限定されず、面状発光体を複数備えてもよい。
【0180】
また、上記第1〜第5実施形態では、面状発光体6の形状が略正方形であったが、これに限定されず、適宜変更してもよい。また、空調装置は試験槽の外部にあってもよい。
【0181】
また、上記実施形態では、可視光を発生させるLEDやX線源を用いたが、これに限らず、紫外線や赤外線など様々な波長の電磁波放射器を発光体とするか、若しくは、様々な電磁波を発生させる電磁波放射器を個別に又は組み合わせて使用してもよい。このような構成を備えることで、例えば、長波長の赤外光の照射から開始して、徐々に波長を短くしていき、最後に短波長の紫外光の照射をすることで、各波長領域における発電量の特性分布を確認することができる。また、太陽電池モジュール内の複数の太陽電池セルの特性を測定しやすい照射源を使用することが望ましいので、例えば、太陽電池セルの種類に応じた複数の照射パターンを予め設け、太陽電池セルの種類に応じて照射パターンを選択して照射してもよい。
【0182】
また、第6〜第10実施形態ではX線照射部を上下方向に動かしたが、左右(横)方向に動かすものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0183】
本発明を利用すれば、電磁波発生源の発熱量を抑制しつつサンプルの全体に所定の周波数領域の電磁波を均一に照射することができる環境試験装置を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0184】
1,200,500 加速劣化試験装置(環境試験装置)
2 太陽電池モジュール(サンプル)
3 試験槽
4,240,340,440 遮光構造(電磁波遮蔽構造)
5,250,350,450 投光部(投波部)
6 面状発光体(電磁波発生体)
7 XY移動機構(移動機構)
8 空調装置
9 搬送装置
10 制御装置
11 Y方向隙間
21 受光面
36 上面
37 暗室
41a,41b、44a,44b 第1遮光膜
48a,48b 第2遮光膜
102 XY移動制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部環境を調整される試験槽内に保持されたサンプルに所定の周波数領域の電磁波を照射する環境試験装置であって、
前記試験槽の一面であって前記サンプルに対面する一面に配設され、前記所定の周波数領域の電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽構造と、
この電磁波遮蔽構造の一部に形成され、前記所定の周波数領域の電磁波を通過させるための投波部と、
前記投波部を経て前記所定の周波数領域の電磁波を照射する電磁波発生体と、
この電磁波発生体を前記一面上において移動させる移動機構と、を備え、
前記電磁波遮蔽構造の前記投波部が前記電磁波発生体の移動に伴って移動するように構成されていることを特徴とする環境試験装置。
【請求項2】
内部環境を調整される試験槽内に保持された太陽電池モジュールに疑似太陽光を照射して加速劣化させる太陽電池モジュールの加速劣化試験装置に係る環境試験装置であって、
暗室に形成された前記試験槽の一面であって、前記太陽電池モジュールに対面する一面に配設された遮光構造と、
この遮光構造の一部に形成され、前記疑似太陽光を通過させるための投光部と、
前記投光部を経て疑似太陽光を照射する面状発光体と、
この面状発光体を前記一面上のXY方向に移動させるXY移動機構と、を備え、
前記遮光構造の前記投光部が前記面状発光体の移動に伴って移動するように構成されていることを特徴とする環境試験装置。
【請求項3】
X方向に対向する一対の伸縮自在な第1遮光膜の間に形成されたY方向隙間に、Y方向に対向する一対の伸縮自在な第2遮光膜を配設し、これら第1遮光膜と第2遮光膜に囲まれた前記投光部を形成し、前記第1遮光膜及び前記第2遮光膜は、前記XY移動機構に連結されて伸縮する
ことを特徴とする請求項2に記載の環境試験装置。
【請求項4】
前記太陽電池モジュールは、前記試験槽内にその受光面が上向きになるように横置きで保持される
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の環境試験装置。
【請求項5】
横置きされた太陽電池モジュールの幅方向の両端を保持する搬送装置を備え、
前記空調装置による空気流れは、前記太陽電池モジュール上面と前記遮光構造下面との間の空間を経て循環するように形成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の環境試験装置。
【請求項6】
前記XY移動機構を駆動し、前記太陽電池モジュールに対して前記面状発光体を走査させる動作を繰り返して、太陽電池モジュールの全体に疑似太陽光を照射する制御装置を備える
ことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の環境試験装置。
【請求項7】
前記面状発光体は、太陽光の波長領域に含まれる特定の波長領域の電磁波を個別に発生する複数の照射源から構成され、前記複数の照射源を個別に又は組合せて電磁波を照射させる
ことを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項記載の環境試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−258700(P2011−258700A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131146(P2010−131146)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】