環境試験装置
【課題】本発明は、ガスケット交換時の作業効率をさらに向上させることができる構成を備えた環境試験装置を提供することを目的とした。
【解決手段】環境試験装置は、試験室と開閉扉との間に、近接部材6と密閉部材7を配し、開閉扉を閉鎖させて、密閉部材7が開閉扉と密着して試験室内の気密性を確保するものである。密閉部材7は、開閉扉に実際に密着するシール部8と、近接部材6に装着される取付関連部9とを有する。密閉部材7は、2つの張出部13、14と、1つの張出部13に設けられた屈曲部18を有する。近接部材6は、額縁状の部材で、内縁に密閉部材7が取り付けられる内側凹部22を有する。密閉部材7は、2つの張出部13、14の間に、内側凹部22を配し、屈曲部18を内側凹部22と係合させて、保持姿勢の状態で固定される。
【解決手段】環境試験装置は、試験室と開閉扉との間に、近接部材6と密閉部材7を配し、開閉扉を閉鎖させて、密閉部材7が開閉扉と密着して試験室内の気密性を確保するものである。密閉部材7は、開閉扉に実際に密着するシール部8と、近接部材6に装着される取付関連部9とを有する。密閉部材7は、2つの張出部13、14と、1つの張出部13に設けられた屈曲部18を有する。近接部材6は、額縁状の部材で、内縁に密閉部材7が取り付けられる内側凹部22を有する。密閉部材7は、2つの張出部13、14の間に、内側凹部22を配し、屈曲部18を内側凹部22と係合させて、保持姿勢の状態で固定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の試験室内を目標とする温度及び湿度に調整可能な環境試験装置に関するものであり、特に、装置本体と当該装置本体に開閉自在に取り付けられた開閉体との間のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
製品や素材等の性能や耐久性を試験する装置として、環境試験装置がある。この種の環境試験装置は、試験対象の試料体が載置される試験室を備え、この試験室内の温度や湿度を所望の試験環境に調整するものである。
【0003】
ところで、環境試験の内容は、試料体によって様々であり、試料体を低温環境にさらす場合もあれば、高温環境にさらす場合もある。また、温度環境だけでなく、同時に、湿度環境を変化して試験を行う場合もある。そのため、環境試験中、試験室内と外部環境との間においては、温度及び湿度に著しい格差が生じる。すなわち、環境試験中、限られた空間である試験室内が外部環境の影響を受けた場合、折角調整した所望の試験環境が乱れ、試験の信頼性を大幅に低下させるおそれがある。そのため、環境試験装置は、試験室内の高い気密性を維持できる構成とされている。
【0004】
ここで、通常の環境試験装置は、試験室が設けられた装置本体に外部と連通した開口が設けられ、その開口を介して、試料体の出し入れが行われる。そして、環境試験装置は、装置本体に対して、開閉自在に取り付けられた開閉扉によって、その開口を閉鎖できる構成とされている。すなわち、環境試験装置において、試験室内の十分な気密性を確保するためには、装置本体と開閉扉との間のシール性が重要となる。
【0005】
そこで、従来から、装置本体と開閉扉との間に、長尺状に形成されたガスケットを、シーラントで接着して固定して、試験室内のシール性を確保するシール構造が採用されている。より具体的には、装置本体の開口縁部に沿ってガスケットを取り付けてシール構造を形成している。これにより、開閉扉を閉鎖した際に、ガスケットが開閉扉に密着して、装置本体と開閉扉との間がシールされるため、試験室内の高い気密性が確保される。
【0006】
ところが、ガスケットは、長期に渡って継続的に使用等された場合においては、経時的な品質の劣化や、耐久性の低下により、十分なシール性が維持できなくなる問題がある。
そのため、ガスケットの品質劣化や耐久性の低下が著しくなった場合、新たなガスケットに交換することで、前記問題の解消を図っている。しかしながら、シーラントで接着したガスケットを装置本体から取り除くことは困難であり、取り替え作業には手間と時間を要していた。
【0007】
そこで、特許文献1には、シーラント等で接着することなく、所定位置へのガスケットの固定を可能としたシール構造の技術が開示されている。具体的には、特許文献1のシール構造は、ガスケットを、装置本体に設けられた額縁の端部を挟むようにして取り付け、そしてそのガスケットが額縁から脱落しないように、ガスケットの脱落方向の移動を阻止する位置に内装板を配置した構成とされている。これにより、ガスケット交換時の作業効率は、シーラントを用いて接着させる場合に比べると、飛躍的に向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−288451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1では、ガスケットの脱落方向の移動を阻止する位置に内装板を配置しているため、ガスケットを取り付ける際に、ヘラ等の板状部材でガスケット自身を押し込まないと所定の位置に配置させることができず、ガスケット交換時の作業効率の観点から、さらなる改善が望まれていた。
【0010】
そこで、本発明では、従来技術の問題点に鑑み、ガスケット交換時の作業効率をさらに向上させることができる構成を備えた環境試験装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、所望の温度及び/又は湿度環境が形成される試験室と、試験室と外部とを連通した開口を、外部に対して開放及び閉鎖可能な開閉体とを有する環境試験装置において、試験室内の気密性の保持に寄与する密閉部材を有し、当該密閉部材は、開閉体を閉鎖した際に、試験室側と開閉体側とが近接した状態で向き合う近接部に設けられるものであり、密閉部材は、片状のシール部と、当該シール部の一方の端部に繋がり近接部への取り付けに関わる取付関連部とを有し、取付関連部は、前記シール部の一方の端部から延長した延長部と、当該延長部に対して交差し且つ同一方向に張り出した2以上の張出部とで形成され、1つの張出部は、当該張出部の張り出し方向に対して交差する方向に屈曲した屈曲部が設けられ、近接部は、被挟持部を有し、当該被挟持部は隣接する張出部同士の間に配され、少なくとも、屈曲部を有する張出部と当該張出部に隣接する別の張出部との間に配される被挟持部には、係合溝が形成されており、密閉部材は、隣接する張出部同士の間を、被挟持部に押し込んで当該被挟持部を嵌合状態にし、さらに屈曲部を係合溝に係合させることで保持姿勢をとることを特徴とする環境試験装置である。
【0012】
本発明の環境試験装置は、ガスケット交換時の作業効率を向上するべく、密閉部材(ガスケットに相当)と、近接部に特徴的構成が備えられている。具体的には、密閉部材は取付関連部を備え、その取付関連部は、2以上の張出部を有し、その1つには張出部の張り出し方向に対して交差する方向に屈曲した屈曲部が設けられ、近接部は被挟持部を備え、その被挟持部には、係合溝が設けられている。そして、密閉部材は、隣接する張出部同士の間を、被挟持部に押し込んで、その被挟持部を嵌合状態にし、さらに張り出し部の屈曲部を被挟持部の係合溝に係合させることで、当該密閉部材を保持姿勢にし、近接部に固定させている。すなわち、密閉部材は、保持姿勢をとることで、被挟持部を挟持した状態を維持しつつ、被挟持部に押し込む方向及びその方向と逆の抜き出し方向の移動が制限された状態となる。換言すると、密閉部材は、他の部材(先に説明した内装板等)によって移動制限がされなくとも、屈曲部の作用によって、被挟持部との嵌合状態が維持される。これにより、密閉部材を取り付ける近接部及びその周囲の構造が簡素化されるため、従来技術のように、ヘラなどを使用して密閉部材を所定の位置まで押し込むような作業が省略される。したがって、本発明によれば、単純に、手による取り付けだけで、密閉部材を所定の位置に固定できるため、手間なく簡単に取り付けを行うことができる。結果的に、密閉部材の交換時の作業効率が高い環境試験装置を提供することができる。
【0013】
ここで、一般的に、長尺状の密閉部材をほぼ方形を描くように取り付けた場合、方形を形成する角にあたる部分のシール部の立ち上がり(開閉体閉鎖時を基準に、密閉部材取付側から対向する試験室側あるいは開閉扉側に張り出す状態)が、他の箇所(直線部)よりも際立つという特徴がある。そのため、密閉部材の方形の角部は、他の箇所よりも、経時的な品質の劣化や耐久性の低下の影響を受け易い。そこで、そのような不具合を回避するために、例えば、一連した長尺物を用いるのではなく、角部で密閉部材を突き合わせる構成を採用することが考えられるが、この場合、角部におけるシール性を確保することができない。すなわち、密閉部材同士を角部で突き合わせた場合、開閉体を閉鎖した際のシール部は、開口の内外方向に変形するため、密閉部材同士を突き合わせた継ぎ目に隙間が形成されて、密閉部材全体の連続性が保てず、試験室内の気密性が期待できないという懸念があった。
このような事情に鑑みると、長尺状の密閉部材を用いる場合で、且つ、密閉部材を方形を描くように取り付ける場合においては、密閉部材を、当該方形の角部において突き合わせない方策をとることが、密閉部材におけるシール性の確保という観点からは好適であると言える。
【0014】
そこで、そのような問題を解決するべく、請求項2に記載の発明は、シール部は、密閉部材の保持姿勢を基準に、前記開口の外方向に曲がった曲線形状であり、張出部は、シール部の曲線内側に配されると共に、屈曲部を有する張出部は、シール部の基端側近傍に位置し、屈曲部は、シール部が位置する方向と反対方向に向かって屈曲していることを特徴とする請求項1に記載の環境試験装置とされている。
【0015】
かかる構成によれば、シール部は密閉部材の保持姿勢を基準に、試験室の内外を連通する開口の外方向に曲がった曲線形状であるため、通常、開閉体の閉鎖時には、シール部は、曲線の外側が開閉体側あるいは試験室側と当接する。そして、密閉部材は、シール部の曲線の内側方向に押さえつけられることで、曲線部分がほぼ平面状となり、開閉体が完全に閉鎖された際には面接触した状態となる。これにより、シール部材が多少変形したとしても、面接触するいずれかの部分が接触状態を保ち、シール性が維持されるため、変形によるシール性の低減を防止することができる。
【0016】
ここで、前記したように、密閉部材を方形状に取り付けた場合、角部におけるシール部の立ち上がり(シール部の基端側を基準に試験室の内外を連通する開口の内方向に変形)が際立つ。これは、角部においては、図11、12に示すように、密閉部材の折り曲げ時に、長尺方向左右に引っ張る引張り力が発生し、その引張り力がシール部を平らにしようと作用するためである。例えば、従来の密閉部材107は、図12、13に示すように、引張り力の作用により、シール部108全体がほぼ平らな形状となる。そして、このようなシール部の立ち上がりが際立った部分に、経時的変化(品質の劣化や耐久性の低下)がさらに加わると、密閉部材全体の形状がかなり歪になり、当初のシール部108の形状を維持することが困難となり、シール性を十分に確保することが困難となる。
【0017】
そこで、本発明では、シール部を平らにしようと作用する引張り力を屈曲部で抗する構成としている。すなわち、本発明は、シール部の基端側において、屈曲部を係合溝に係合させて、屈曲部が延長部側に引っ張られる作用を生じさせることで、シール部に対して先端側が曲線の内側方向に引きつけられるような力(シール部の基端側を基準として曲線の内側方向に回動する力)を作用させる構成である。そして、この曲線の先端が向く方向に回動するような力は、シール部を立ち上がらせる力の方向とは逆方向である。これにより、前記回動させる力が、シール部を立ち上がらせる力を打ち消しあるいは減じるため、シール部の変形を抑制することができる。そのため、本発明は、従来技術と比較すると、シール部の立ち上がりが格段に小さくなる。
したがって、本発明では、密閉部材のシール部が引張り力によって立ち上がり得る条件(例えば、方形状に取り付けられる場合における角部)があったとしても、その変形を、シール部基端近傍に配された屈曲部に作用する力によって抑制することができるため、従来のように、シール部が著しく立ち上がるような不具合が起こり得ない。結果的に、本発明によれば、経時的な品質の劣化や耐久性の低下が原因となって、シール性が加速度的に低減していくことを防止できる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、屈曲部は、延長部と対向する側に延長部に近接する方向に突出した突起を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の環境試験装置である。
【0019】
かかる構成によれば、屈曲部が延長部側に引っ張られる作用をより高めることができるため、それに伴って、シール部に作用する立ち上がりに抗する力が高まる。すなわち、本発明によれば、シール部の立ち上がりをより小さくすることが可能となる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、屈曲部を有する張出部は、先端に向かうほど断面積が小さくされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0021】
一般的に、部材における力のストレスは、外力の作用を支持する部分に集中する。すなわち、そのような外力の支持部分は、他の部分より強度を増強する必要がある。
そこで、本発明の環境試験装置は、シール部に対して、開口の内側に回転する力のモーメントが働いた場合の張出部の力のストレスは、基端側に集中するため、基端部側の強度を集中的に高めた構成とした。これにより、強度に無駄のない合理的な密閉部材を提供することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明は、被挟持部を嵌合状態にする1対の張出部のうちの一方は、屈曲部と対向する方向に突出した突起部を有し、被挟持部は、前記突起部が係合する突起用係合溝を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0023】
かかる構成によれば、屈曲部と突起部の双方によって、密閉部材の抜け防止作用を図ることができるため、抜け落ちる可能性をより低くすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の環境試験装置は、被係合部が嵌合される密閉部材の張出部に、屈曲部を設け、被係合部の係合溝と係合することで保持姿勢をとる構成としたため、単純に、手による取り付けだけで、密閉部材を所定の位置に固定できるため、手間なく簡単に取り付けを行うことができる。これにより、密閉部材の交換時における作業効率を確実に向上させることができる。また、屈曲部をシール部の基端近傍に位置する張出部に設けたため、シール部の過度な立ち上がりを抑制することができる。これにより、経時的な品質の劣化や耐久性の低下による、シール性の加速度的な低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る環境試験装置を示す斜視図である。
【図2】図1の環境試験装置の開閉扉を開放した状態を示す斜視図である。
【図3】図1の環境試験装置のシール構造を示すA−A断面図である。
【図4】近接部材を示す斜視図である。
【図5】図4の近接部材を示すD−D断面図である。
【図6】密閉部材の一部を示す斜視図である。
【図7】図6の密閉部材を示すF−F断面図である。
【図8】図2の環境試験装置を示すB−B方向断面図である。
【図9】開閉扉開放時の密閉部材と近接部材を示す説明図で、(a)は直線部の断面図で、(b)は角部の断面図(図11のG−G断面図)である。
【図10】開閉扉閉鎖時の密接部材と近接部材の関係を示す断面図である。
【図11】図2の環境試験装置のC部を概念的に示す拡大斜視図である。(矢印は密閉部材を折り曲げた際に発生する部材の引張り力)
【図12】従来の密閉部材を概念的に示す拡大斜視図であり、近接部材の角部に位置す部分の拡大図である。(矢印は密閉部材を折り曲げた際に発生する部材の引張り力)
【図13】図12の密接部材と近接部材の関係を示すH−H断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の実施形態に係る環境試験装置1について説明する。
本実施形態の環境試験装置1は、図1、2に示すように、試験室5を有した装置本体2と開閉扉3とを備え、試験室5内の気密性を確保するべく、両者の間に特徴的なシール構造が設けられた構成とされている。より具体的には、環境試験装置1のシール構造は、図3に示すように、開閉扉3側に装着された外側シール部45と、装置本体2側に装着された内側シール部46と、それらの間の断熱空間47によって形成されているが、本実施形態の特徴的構成は、装置本体2側の内側シール部46に適用されている。
また、本実施形態の環境試験装置1は、公知のそれと同様、温度及び湿度調整に寄与する機器(加湿ヒータ、冷凍回路、加熱装置、送風機等)を備えているが、特に本発明に関係しないため、以下においては、それらに関する説明を省略し、特徴的構成に注目して説明する。
【0027】
装置本体2は、外郭部材20によって外枠が形成され、その内部に試験室5が収容されている。より具体的には、装置本体2は、外郭部材20の内側に図示しない断熱部材が配されて断熱構造を形成しており、その断熱部材のさらに内側に試験室5を形成する内装壁15が配されている。すなわち、装置本体2は、前記した断熱構造によって、試験室5内に外部の温度変化の影響を与えない構成とされている。また、装置本体2は、正面側に、試験室5の内部と外部を連通した方形状の開口11が設けられており、この開口11に沿うように、本実施形態の特徴的構成たるシール構造を形成する近接部材6及び密閉部材7が設けられている。なお、開口11は、試験室5を形成する内装壁15によって囲まれた部分である。
【0028】
近接部材6は、樹脂製であり、図4に示すように、方形状の額縁部材である。そして、この近接部材6は、図2に示すように、装置本体2の正面に配されて、外郭部材20と内装壁15の間の隙間であって、図示しない断熱部材が位置する部分を塞ぐように固定されるものである。すなわち、近接部材6は、外縁が外郭部材20に沿う大きさに設定され、さらに内縁が内装壁15に沿う大きさに設定されている。
なお、内装壁15及び外郭部材20は、図8に示すように、装置本体2の正面側で折れ曲がった折曲部30、31を有し、近接部材6は、その折曲部30、31に対して、ビス等の締結手段を用いて固定されている。
【0029】
また、近接部材6は、図5に示すように、連続した段状の断面形状を有している。すなわち、近接部材6は、装置本体2に取り付けた状態を基準に、開口11側から外側に向けて、内側凹部22、中間凸部23、外側凹部24の順番で形成されている。そして、各凹部22、24及び凸部23はそれぞれ、近接部材6の外縁あるいは内縁に沿って(または装置本体2の開口11に沿って)、額縁状に形成されている。なお、内側凹部22及び外側凹部24は、装置本体2の背面側に凹んだ段部で、中間凸部23は、装置本体2の正面側に突出した段部である。
【0030】
また、内側凹部22の端部側(開口11の縁端側)には、図5に示すように、正面側平面25に屈曲部用係合溝16が設けられ、背面側平面26に突部用係合溝17が設けられている。係合溝16、17は、いずれも近接部材6の外縁あるいは内縁に沿って(または装置本体2の開口11に沿って)、額縁状に形成されている。そして、屈曲部用係合溝16が、突部用係合溝17よりも開口11寄りに配された位置関係とされている。
【0031】
密閉部材7は、所謂ガスケットであり、図6に示すように、可撓性を有した長尺状の部材である。具体的には、密閉部材7は、図2に示すように、装置本体2の開口11縁部を取り囲むことができる程度の長さを有している。そして、密閉部材7は、図7に示すように、密閉部材7の長尺方向に延伸した、開閉扉3に当接する片状のシール部8と、近接部材6への取り付けに関わる取付関連部9とを有し、それらによって断面形状がほぼ「F」字型に形成されている。
なお、以下においては、断面を基準に説明する。
【0032】
シール部8は、中心角θがほぼ60〜80度の円弧状に形成された曲線部分である。より具体的には、シール部8の円弧は、直径が15〜20mm、好ましくは16〜19mm、より好ましくは18mmの円の円弧であり、曲線方向一方の端部が後述する取付関連部9側に繋がった固定端部で、曲線方向他方の端部は自由端部とされている。
【0033】
また、シール部8は、密閉部材7の長尺方向に延伸した、リブ37及び分岐片36を有する。
リブ37は、自由端部の強度を増強するもので、シール部8の自由端部に位置し、曲線の内側表面38から外部に向けて突出した部分である。
分岐片36は、試験室5内の圧力変化(特に正負の変化)によるめくれを防止するもので、シール部8の周方向のほぼ中央に位置し、外側表面35から外部向けて突出した部分である。換言すれば、分岐片36は、突出方向が、シール部8の曲線方向と交差する方向である。より具体的には、分岐片36の突出方向は、シール部8の自由端部が向かう方向に対して、角度M=90度超〜180度未満の範囲で回転させた方向である。
【0034】
取付関連部9は、シール部8の固定端部から直線状に延長した延長部12と、その延長部12に対して交差し、且つ、同一方向に張り出した2つの張出部13、14とを有する部分である。換言すると、取付関連部9は、2つの張出部13、14を1対として、両者の間に切り欠き状の挿通部21を設けた部分である。より具体的には、取付関連部9は、2つの張出部13、14が共に、シール部8の曲線が向かう側、つまり自由端部が向かう側に位置すると共に、1つの張出部(以下、シール側張出部ともいう)13が延長部12の一方の端部、つまりシール部8の固定端部(基端)近傍に位置し、別の1つの張出部(以下、基部張出部ともいう)14が延長部12の他方の端部に位置する構成である。なお、本実施形態では、各張出部13、14は、延長部12からほぼ直交する方向に張り出している。
【0035】
シール側張出部13は、延長部12側端部(基端部)側から張り出し方向先端に向けて、徐々に断面積が減縮されている。すなわち、シール側張出部13は、支持側の剛性を先端側の剛性より高めた構成である。
基部張出部14は、断面積が張り出し方向にほぼ一様にされており、密閉部材7の長尺方向に延伸した係合突起40及び基部側突条部41を有する。
係合突起40は、基部張出部14の先端側で、基部張出部14のシール側張出部13と対向する面に形成されている。すなわち、係合突起40は、シール側張出部13が存在する面に対して、ほぼ直交する方向に突出している。換言すれば、係合突起40は、シール部8が位置する方向に向かって突出した突起である。
基部側突条部41は、基部張出部14の先端側で、係合突起40が配された面と反対側の面に形成されている。すなわち、基部側突条部41は、シール側張出部13が存在する側と反対方向、且つ、ほぼ直交する方向に突出している。換言すれば、基部側突条部41は、シール部8が位置する方向と反対方向に向かって突出した凸部である。
【0036】
さらに、取付関連部9は、シール側張出部13の張り出し方向に交差する屈曲部18を有する。屈曲部18は、シール側張出部13の先端側に位置し、張り出し方向に対して若干シール側張出部13の基端部側に傾斜した方向、且つ、基部張出部14に近接する方向に屈曲した部分である。換言すれば、屈曲部18は、シール側張出部13の先端から、シール部8の位置する方向と離反する方向、且つ、延長部12に近接する方向に折れ曲がった部分である。
また、屈曲部18は、密閉部材7の長尺方向に延伸した屈曲部側突条部27を有する。屈曲部側突条部27は、屈曲部18における延長部12と対向する面の表面から外部に向けて突出した凸部である。
【0037】
開閉扉3は、断熱構造を備えた公知の扉である。
【0038】
次に、環境試験装置1における近接部材6と密閉部材7の位置関係について説明する。
本実施形態の環境試験装置1では、図2に示すように、装置本体2の正面に近接部材6が配され、その近接部材6に密閉部材7が取り付けられている。具体的には、近接部材6は、装置本体2の正面側であって、開口11に干渉しないように、外郭部材20と内装壁15の間に位置する折曲部30にビス等で固定されている。このとき、図8に示すように、近接部材6と装置本体2との間には、隙間32が形成されている。具体的には、隙間32は、内側凹部22における背面側平面26と、折曲部30との間に形成されている。さらに、近接部材6は、屈曲部用係合溝16が正面側に向けて開口すると共に、突部用係合溝17が背面側に向けて開口している。
【0039】
一方、密閉部材7は、2つの張出部13、14が、近接部材6の内側凹部22の端部側(被挟持部)を挟むような配置である。換言すれば、1対の張出部13、14によって形成された挿通部21に内側凹部22の端部を挿通した配置である。すなわち、基部張出部14は、近接部材6の背面側平面26と装置本体2の折曲部30とで形成された隙間32に配され、シール側張出部13は、内側凹部22の正面側平面25に沿うように配されている。詳細には、密閉部材7は、図9(a)に示すように、基部張出部14の係合突起40が突部用係合溝17に嵌り込み、シール側張出部13の先端に位置する屈曲部18が、屈曲部用係合溝16に嵌り込んでいる。より詳細には、基部張出部14は、隙間32に挿着された状態で、係合突起40が突部用係合溝17に嵌り込むと共に、基部側突条部41によって内側凹部22側に押圧されており、シール側張出部13は、内側凹部22を挟んで、基部張出部14と対向する位置に配された状態で、屈曲部18がシール側張出部13に対してほぼ直交する姿勢で屈曲部用係合溝16に嵌り込むと共に、屈曲部側突条部27が開口11の内方向(図9の左方向)を押圧している。
【0040】
次に、密閉部材7の取り付け時の各部位の作用について説明する。
本実施形態では、基本的に、密閉部材7は、装置本体2に固定した近接部材6の端部に嵌め込んで取り付けられる。すなわち、装置本体2の開口11側から密閉部材7の張出部13、14の間を、近接部材6の内側凹部22の端部に配し、その後、押し込むことで、内側凹部22が張出部13、14の間に圧入される。このとき、基部張出部14は、折曲部30と内側凹部22との間に形成された隙間32を推進し、係合突起40が突部用係合溝17に嵌り込んだ時点で、位置が固定される。また、シール側張出部13は、屈曲部18の先端が押し込み方向と交差する方向に変形しつつ、近接部材6の正面側平面25に沿って推進し、屈曲部18が屈曲部用係合溝16に嵌り込んだ時点で、位置が固定される。これにより、密閉部材7は、近接部材6に装着された状態となる(保持姿勢)。
そして、保持姿勢の密閉部材7に対して、開閉扉3が閉鎖されると、図10に示すように、開閉扉3の内壁と、シール部8の正面側平面35が面接触しつつ、シール用突条部36が点接触する。
【0041】
次に、保持姿勢の密閉部材7における特徴的作用について説明する。
先にも説明したように、環境試験装置においては、密閉部材のシール部の立ち上がりが発生すると、試験室内の気密性を低下させる問題があった。特に、長尺状の密閉部材を折り曲げる箇所(角部)においては、取り付け当初から他の部分よりも、シール部の立ち上がりが際立つ。そして、このようなシール部の立ち上がりが際立った部分に、経時的変化(品質の劣化や耐久性の低下)がさらに加わると、密閉部材全体の形状がかなり歪になり、密閉部材7と開閉扉3との前記したような接触状態が維持できず、シール性を十分に確保することが不可能となってしまう。
【0042】
そこで、本実施形態では、シール部8の立ち上がりに対向する力を、予め屈曲部18に作用させる構成としている。
ここで、密閉部材7の取り付け前後における、屈曲部18の姿勢に注目する。
屈曲部18は、近接部材6への取り付け前において、図7に示すように、先端が若干延長部12側に向いた姿勢をとっている。一方、近接部材6への取り付けの後の屈曲部18の先端は、図9(a)に示すように、シール側張出部13に対して、ほぼ直交した姿勢である。すなわち、屈曲部18は、近接部材6の取り付け後、当初の位置から延長部12側から若干離反する方向に移動させれらた位置に配されることとなる。
【0043】
これにより、屈曲部18には、当初の位置(近接部材6への取り付け前の位置)に戻ろうとする力が生じる。しかしながら、屈曲部18は、屈曲部用係合溝16に係合しているため、屈曲部18自体は当初の位置に戻ることはできない。そのため、その力は、シール側張出部13を介してシール部8の基端側を、屈曲部18側に引きつけるように作用する。すなわち、屈曲部18を、シール部8の基端近傍に配し、屈曲部用係合溝16に係合させることで、屈曲部18に力を作用させ、その力を、シール部8の曲線を維持することができる力、つまりシール部8の立ち上がりを抑制する力に変換することができるため、従来に比べて、シール部8の立ち上がり(図9(a)に示すシール部8の基端部から先端までの最短(垂直)長さはαである。)を小さくすることができる。
さらに、本実施形態では、屈曲部18の延長部12側の面に、屈曲部側突条部27を有するため、屈曲部18に作用する姿勢を戻そうとする力をより強くすることができる。そのため、本実施形態では、シール部8に作用する力も高まり、結果的に、シール部8の立ち上がりをより小さなものとすることができる。
【0044】
特に、この作用によって、開口11の角部のシール部8の立ち上がりの減少が顕著となる。すなわち、図9(b)、11に示すように、屈曲部18の作用により、密閉部材7を曲げることで生じる引張り力が減少されるため、図9(a)に示すその他の箇所(直線部)と比較しても、立ち上がりの程度を小さくできる。具体的には、このときのシール部8の基端部から先端までの最短(垂直)長さはβであり、従来のものより短い。そして、これは、図12、13に示す従来の密閉部材107と比較しても明らかである。
【0045】
以上のように、上記実施形態では、密閉部材7を近接部材6に押し込んで取り付けた際に、互いに係合する構成としたため、一定以上の押し込み方向と逆の力(抜き出し方向の力)が働かない限り、保持姿勢が維持される。そのため、本実施形態では、従来技術のように、抜き出し方向に密接部材の脱落防止機能兼保持姿勢維持機能を備えたその他の部材を配する必要がなく、密閉部材取り付けの際に道具を利用する必要もない。したがって、本実施形態では、密閉部材7を、作業者が手で容易に取り付けることができるため、密閉部材を交換する際の作業効率を向上させることができる。
【0046】
また、上記実施形態では、シール部8の基端近傍に若干延長部12側に傾斜した屈曲部18を設け、その屈曲部18を近接部材6の屈曲部用係合溝16に係合させる構成としたため、シール部8に立ち上がりに対向する力を予め作用させることができる。そのため、密閉部材7を折り曲げて取り付けるような箇所においても、他の箇所に比べて、シール部8の立ち上がりが際立つことがない。
【0047】
上記実施形態では、屈曲部18に屈曲部側突条部27を設けた構成を示したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、屈曲部側突条部27を設けない構成であっても構わない。
また、上記実施形態では、屈曲部18を延長部12側に若干傾斜させた構成を示したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、屈曲部18をシール側張出部13に対してほぼ直交にし、屈曲部側突条部27だけで屈曲部18の姿勢が変更される構成であっても構わない。要するに、屈曲部18を屈曲部用係合溝16に配した際に、屈曲部18に上記実施形態に示した力と同様の力が作用する構成であれば構わない。
【0048】
上記実施形態では、屈曲部18に、密閉部材7の長尺方向に一連して形成された屈曲部側突条部27を設けた構成を示したが、本発明はこれに限定されず、屈曲部側突条部27の替わりに、凸部を一定の間隔で並べた構成であっても構わない。
【0049】
上記実施形態では、装置本体2側にあたる内側シール部46に密閉部材7や近接部材6を取り付けた構成を示したが、本発明はこれに限定されず、装置本体2側の内側シール部46に替えて、あるいは、加えて、開閉扉3側の外側シール部45に、前記同様の構造の近接部材を設け、その近接部材に密閉部材を取り付けた構成であっても構わない。
また、装置本体2側に設けた内側シール部46に替えて、開閉扉3側に上記実施形態と同様の構造の近接部材6及び密閉部材7を設けて、開閉扉3側に内側シール部として機能を持たせた構成であっても構わない。
【符号の説明】
【0050】
1 環境試験装置
2 装置本体
3 開閉扉(開閉体)
5 試験室
6 近接部材(近接部)
7 密閉部材
8 シール部
9 取付関連部
11 開口
12 延長部
13 シール側張出部(張出部)
14 基部張出部(張出部)
16 屈曲部用係合溝(係合溝)
17 突部用係合溝
18 屈曲部
27 屈曲部側突条部(突起)
40 係合突起(突起部)
41 基部側突条部
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の試験室内を目標とする温度及び湿度に調整可能な環境試験装置に関するものであり、特に、装置本体と当該装置本体に開閉自在に取り付けられた開閉体との間のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
製品や素材等の性能や耐久性を試験する装置として、環境試験装置がある。この種の環境試験装置は、試験対象の試料体が載置される試験室を備え、この試験室内の温度や湿度を所望の試験環境に調整するものである。
【0003】
ところで、環境試験の内容は、試料体によって様々であり、試料体を低温環境にさらす場合もあれば、高温環境にさらす場合もある。また、温度環境だけでなく、同時に、湿度環境を変化して試験を行う場合もある。そのため、環境試験中、試験室内と外部環境との間においては、温度及び湿度に著しい格差が生じる。すなわち、環境試験中、限られた空間である試験室内が外部環境の影響を受けた場合、折角調整した所望の試験環境が乱れ、試験の信頼性を大幅に低下させるおそれがある。そのため、環境試験装置は、試験室内の高い気密性を維持できる構成とされている。
【0004】
ここで、通常の環境試験装置は、試験室が設けられた装置本体に外部と連通した開口が設けられ、その開口を介して、試料体の出し入れが行われる。そして、環境試験装置は、装置本体に対して、開閉自在に取り付けられた開閉扉によって、その開口を閉鎖できる構成とされている。すなわち、環境試験装置において、試験室内の十分な気密性を確保するためには、装置本体と開閉扉との間のシール性が重要となる。
【0005】
そこで、従来から、装置本体と開閉扉との間に、長尺状に形成されたガスケットを、シーラントで接着して固定して、試験室内のシール性を確保するシール構造が採用されている。より具体的には、装置本体の開口縁部に沿ってガスケットを取り付けてシール構造を形成している。これにより、開閉扉を閉鎖した際に、ガスケットが開閉扉に密着して、装置本体と開閉扉との間がシールされるため、試験室内の高い気密性が確保される。
【0006】
ところが、ガスケットは、長期に渡って継続的に使用等された場合においては、経時的な品質の劣化や、耐久性の低下により、十分なシール性が維持できなくなる問題がある。
そのため、ガスケットの品質劣化や耐久性の低下が著しくなった場合、新たなガスケットに交換することで、前記問題の解消を図っている。しかしながら、シーラントで接着したガスケットを装置本体から取り除くことは困難であり、取り替え作業には手間と時間を要していた。
【0007】
そこで、特許文献1には、シーラント等で接着することなく、所定位置へのガスケットの固定を可能としたシール構造の技術が開示されている。具体的には、特許文献1のシール構造は、ガスケットを、装置本体に設けられた額縁の端部を挟むようにして取り付け、そしてそのガスケットが額縁から脱落しないように、ガスケットの脱落方向の移動を阻止する位置に内装板を配置した構成とされている。これにより、ガスケット交換時の作業効率は、シーラントを用いて接着させる場合に比べると、飛躍的に向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−288451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1では、ガスケットの脱落方向の移動を阻止する位置に内装板を配置しているため、ガスケットを取り付ける際に、ヘラ等の板状部材でガスケット自身を押し込まないと所定の位置に配置させることができず、ガスケット交換時の作業効率の観点から、さらなる改善が望まれていた。
【0010】
そこで、本発明では、従来技術の問題点に鑑み、ガスケット交換時の作業効率をさらに向上させることができる構成を備えた環境試験装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、所望の温度及び/又は湿度環境が形成される試験室と、試験室と外部とを連通した開口を、外部に対して開放及び閉鎖可能な開閉体とを有する環境試験装置において、試験室内の気密性の保持に寄与する密閉部材を有し、当該密閉部材は、開閉体を閉鎖した際に、試験室側と開閉体側とが近接した状態で向き合う近接部に設けられるものであり、密閉部材は、片状のシール部と、当該シール部の一方の端部に繋がり近接部への取り付けに関わる取付関連部とを有し、取付関連部は、前記シール部の一方の端部から延長した延長部と、当該延長部に対して交差し且つ同一方向に張り出した2以上の張出部とで形成され、1つの張出部は、当該張出部の張り出し方向に対して交差する方向に屈曲した屈曲部が設けられ、近接部は、被挟持部を有し、当該被挟持部は隣接する張出部同士の間に配され、少なくとも、屈曲部を有する張出部と当該張出部に隣接する別の張出部との間に配される被挟持部には、係合溝が形成されており、密閉部材は、隣接する張出部同士の間を、被挟持部に押し込んで当該被挟持部を嵌合状態にし、さらに屈曲部を係合溝に係合させることで保持姿勢をとることを特徴とする環境試験装置である。
【0012】
本発明の環境試験装置は、ガスケット交換時の作業効率を向上するべく、密閉部材(ガスケットに相当)と、近接部に特徴的構成が備えられている。具体的には、密閉部材は取付関連部を備え、その取付関連部は、2以上の張出部を有し、その1つには張出部の張り出し方向に対して交差する方向に屈曲した屈曲部が設けられ、近接部は被挟持部を備え、その被挟持部には、係合溝が設けられている。そして、密閉部材は、隣接する張出部同士の間を、被挟持部に押し込んで、その被挟持部を嵌合状態にし、さらに張り出し部の屈曲部を被挟持部の係合溝に係合させることで、当該密閉部材を保持姿勢にし、近接部に固定させている。すなわち、密閉部材は、保持姿勢をとることで、被挟持部を挟持した状態を維持しつつ、被挟持部に押し込む方向及びその方向と逆の抜き出し方向の移動が制限された状態となる。換言すると、密閉部材は、他の部材(先に説明した内装板等)によって移動制限がされなくとも、屈曲部の作用によって、被挟持部との嵌合状態が維持される。これにより、密閉部材を取り付ける近接部及びその周囲の構造が簡素化されるため、従来技術のように、ヘラなどを使用して密閉部材を所定の位置まで押し込むような作業が省略される。したがって、本発明によれば、単純に、手による取り付けだけで、密閉部材を所定の位置に固定できるため、手間なく簡単に取り付けを行うことができる。結果的に、密閉部材の交換時の作業効率が高い環境試験装置を提供することができる。
【0013】
ここで、一般的に、長尺状の密閉部材をほぼ方形を描くように取り付けた場合、方形を形成する角にあたる部分のシール部の立ち上がり(開閉体閉鎖時を基準に、密閉部材取付側から対向する試験室側あるいは開閉扉側に張り出す状態)が、他の箇所(直線部)よりも際立つという特徴がある。そのため、密閉部材の方形の角部は、他の箇所よりも、経時的な品質の劣化や耐久性の低下の影響を受け易い。そこで、そのような不具合を回避するために、例えば、一連した長尺物を用いるのではなく、角部で密閉部材を突き合わせる構成を採用することが考えられるが、この場合、角部におけるシール性を確保することができない。すなわち、密閉部材同士を角部で突き合わせた場合、開閉体を閉鎖した際のシール部は、開口の内外方向に変形するため、密閉部材同士を突き合わせた継ぎ目に隙間が形成されて、密閉部材全体の連続性が保てず、試験室内の気密性が期待できないという懸念があった。
このような事情に鑑みると、長尺状の密閉部材を用いる場合で、且つ、密閉部材を方形を描くように取り付ける場合においては、密閉部材を、当該方形の角部において突き合わせない方策をとることが、密閉部材におけるシール性の確保という観点からは好適であると言える。
【0014】
そこで、そのような問題を解決するべく、請求項2に記載の発明は、シール部は、密閉部材の保持姿勢を基準に、前記開口の外方向に曲がった曲線形状であり、張出部は、シール部の曲線内側に配されると共に、屈曲部を有する張出部は、シール部の基端側近傍に位置し、屈曲部は、シール部が位置する方向と反対方向に向かって屈曲していることを特徴とする請求項1に記載の環境試験装置とされている。
【0015】
かかる構成によれば、シール部は密閉部材の保持姿勢を基準に、試験室の内外を連通する開口の外方向に曲がった曲線形状であるため、通常、開閉体の閉鎖時には、シール部は、曲線の外側が開閉体側あるいは試験室側と当接する。そして、密閉部材は、シール部の曲線の内側方向に押さえつけられることで、曲線部分がほぼ平面状となり、開閉体が完全に閉鎖された際には面接触した状態となる。これにより、シール部材が多少変形したとしても、面接触するいずれかの部分が接触状態を保ち、シール性が維持されるため、変形によるシール性の低減を防止することができる。
【0016】
ここで、前記したように、密閉部材を方形状に取り付けた場合、角部におけるシール部の立ち上がり(シール部の基端側を基準に試験室の内外を連通する開口の内方向に変形)が際立つ。これは、角部においては、図11、12に示すように、密閉部材の折り曲げ時に、長尺方向左右に引っ張る引張り力が発生し、その引張り力がシール部を平らにしようと作用するためである。例えば、従来の密閉部材107は、図12、13に示すように、引張り力の作用により、シール部108全体がほぼ平らな形状となる。そして、このようなシール部の立ち上がりが際立った部分に、経時的変化(品質の劣化や耐久性の低下)がさらに加わると、密閉部材全体の形状がかなり歪になり、当初のシール部108の形状を維持することが困難となり、シール性を十分に確保することが困難となる。
【0017】
そこで、本発明では、シール部を平らにしようと作用する引張り力を屈曲部で抗する構成としている。すなわち、本発明は、シール部の基端側において、屈曲部を係合溝に係合させて、屈曲部が延長部側に引っ張られる作用を生じさせることで、シール部に対して先端側が曲線の内側方向に引きつけられるような力(シール部の基端側を基準として曲線の内側方向に回動する力)を作用させる構成である。そして、この曲線の先端が向く方向に回動するような力は、シール部を立ち上がらせる力の方向とは逆方向である。これにより、前記回動させる力が、シール部を立ち上がらせる力を打ち消しあるいは減じるため、シール部の変形を抑制することができる。そのため、本発明は、従来技術と比較すると、シール部の立ち上がりが格段に小さくなる。
したがって、本発明では、密閉部材のシール部が引張り力によって立ち上がり得る条件(例えば、方形状に取り付けられる場合における角部)があったとしても、その変形を、シール部基端近傍に配された屈曲部に作用する力によって抑制することができるため、従来のように、シール部が著しく立ち上がるような不具合が起こり得ない。結果的に、本発明によれば、経時的な品質の劣化や耐久性の低下が原因となって、シール性が加速度的に低減していくことを防止できる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、屈曲部は、延長部と対向する側に延長部に近接する方向に突出した突起を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の環境試験装置である。
【0019】
かかる構成によれば、屈曲部が延長部側に引っ張られる作用をより高めることができるため、それに伴って、シール部に作用する立ち上がりに抗する力が高まる。すなわち、本発明によれば、シール部の立ち上がりをより小さくすることが可能となる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、屈曲部を有する張出部は、先端に向かうほど断面積が小さくされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0021】
一般的に、部材における力のストレスは、外力の作用を支持する部分に集中する。すなわち、そのような外力の支持部分は、他の部分より強度を増強する必要がある。
そこで、本発明の環境試験装置は、シール部に対して、開口の内側に回転する力のモーメントが働いた場合の張出部の力のストレスは、基端側に集中するため、基端部側の強度を集中的に高めた構成とした。これにより、強度に無駄のない合理的な密閉部材を提供することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明は、被挟持部を嵌合状態にする1対の張出部のうちの一方は、屈曲部と対向する方向に突出した突起部を有し、被挟持部は、前記突起部が係合する突起用係合溝を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0023】
かかる構成によれば、屈曲部と突起部の双方によって、密閉部材の抜け防止作用を図ることができるため、抜け落ちる可能性をより低くすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の環境試験装置は、被係合部が嵌合される密閉部材の張出部に、屈曲部を設け、被係合部の係合溝と係合することで保持姿勢をとる構成としたため、単純に、手による取り付けだけで、密閉部材を所定の位置に固定できるため、手間なく簡単に取り付けを行うことができる。これにより、密閉部材の交換時における作業効率を確実に向上させることができる。また、屈曲部をシール部の基端近傍に位置する張出部に設けたため、シール部の過度な立ち上がりを抑制することができる。これにより、経時的な品質の劣化や耐久性の低下による、シール性の加速度的な低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る環境試験装置を示す斜視図である。
【図2】図1の環境試験装置の開閉扉を開放した状態を示す斜視図である。
【図3】図1の環境試験装置のシール構造を示すA−A断面図である。
【図4】近接部材を示す斜視図である。
【図5】図4の近接部材を示すD−D断面図である。
【図6】密閉部材の一部を示す斜視図である。
【図7】図6の密閉部材を示すF−F断面図である。
【図8】図2の環境試験装置を示すB−B方向断面図である。
【図9】開閉扉開放時の密閉部材と近接部材を示す説明図で、(a)は直線部の断面図で、(b)は角部の断面図(図11のG−G断面図)である。
【図10】開閉扉閉鎖時の密接部材と近接部材の関係を示す断面図である。
【図11】図2の環境試験装置のC部を概念的に示す拡大斜視図である。(矢印は密閉部材を折り曲げた際に発生する部材の引張り力)
【図12】従来の密閉部材を概念的に示す拡大斜視図であり、近接部材の角部に位置す部分の拡大図である。(矢印は密閉部材を折り曲げた際に発生する部材の引張り力)
【図13】図12の密接部材と近接部材の関係を示すH−H断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の実施形態に係る環境試験装置1について説明する。
本実施形態の環境試験装置1は、図1、2に示すように、試験室5を有した装置本体2と開閉扉3とを備え、試験室5内の気密性を確保するべく、両者の間に特徴的なシール構造が設けられた構成とされている。より具体的には、環境試験装置1のシール構造は、図3に示すように、開閉扉3側に装着された外側シール部45と、装置本体2側に装着された内側シール部46と、それらの間の断熱空間47によって形成されているが、本実施形態の特徴的構成は、装置本体2側の内側シール部46に適用されている。
また、本実施形態の環境試験装置1は、公知のそれと同様、温度及び湿度調整に寄与する機器(加湿ヒータ、冷凍回路、加熱装置、送風機等)を備えているが、特に本発明に関係しないため、以下においては、それらに関する説明を省略し、特徴的構成に注目して説明する。
【0027】
装置本体2は、外郭部材20によって外枠が形成され、その内部に試験室5が収容されている。より具体的には、装置本体2は、外郭部材20の内側に図示しない断熱部材が配されて断熱構造を形成しており、その断熱部材のさらに内側に試験室5を形成する内装壁15が配されている。すなわち、装置本体2は、前記した断熱構造によって、試験室5内に外部の温度変化の影響を与えない構成とされている。また、装置本体2は、正面側に、試験室5の内部と外部を連通した方形状の開口11が設けられており、この開口11に沿うように、本実施形態の特徴的構成たるシール構造を形成する近接部材6及び密閉部材7が設けられている。なお、開口11は、試験室5を形成する内装壁15によって囲まれた部分である。
【0028】
近接部材6は、樹脂製であり、図4に示すように、方形状の額縁部材である。そして、この近接部材6は、図2に示すように、装置本体2の正面に配されて、外郭部材20と内装壁15の間の隙間であって、図示しない断熱部材が位置する部分を塞ぐように固定されるものである。すなわち、近接部材6は、外縁が外郭部材20に沿う大きさに設定され、さらに内縁が内装壁15に沿う大きさに設定されている。
なお、内装壁15及び外郭部材20は、図8に示すように、装置本体2の正面側で折れ曲がった折曲部30、31を有し、近接部材6は、その折曲部30、31に対して、ビス等の締結手段を用いて固定されている。
【0029】
また、近接部材6は、図5に示すように、連続した段状の断面形状を有している。すなわち、近接部材6は、装置本体2に取り付けた状態を基準に、開口11側から外側に向けて、内側凹部22、中間凸部23、外側凹部24の順番で形成されている。そして、各凹部22、24及び凸部23はそれぞれ、近接部材6の外縁あるいは内縁に沿って(または装置本体2の開口11に沿って)、額縁状に形成されている。なお、内側凹部22及び外側凹部24は、装置本体2の背面側に凹んだ段部で、中間凸部23は、装置本体2の正面側に突出した段部である。
【0030】
また、内側凹部22の端部側(開口11の縁端側)には、図5に示すように、正面側平面25に屈曲部用係合溝16が設けられ、背面側平面26に突部用係合溝17が設けられている。係合溝16、17は、いずれも近接部材6の外縁あるいは内縁に沿って(または装置本体2の開口11に沿って)、額縁状に形成されている。そして、屈曲部用係合溝16が、突部用係合溝17よりも開口11寄りに配された位置関係とされている。
【0031】
密閉部材7は、所謂ガスケットであり、図6に示すように、可撓性を有した長尺状の部材である。具体的には、密閉部材7は、図2に示すように、装置本体2の開口11縁部を取り囲むことができる程度の長さを有している。そして、密閉部材7は、図7に示すように、密閉部材7の長尺方向に延伸した、開閉扉3に当接する片状のシール部8と、近接部材6への取り付けに関わる取付関連部9とを有し、それらによって断面形状がほぼ「F」字型に形成されている。
なお、以下においては、断面を基準に説明する。
【0032】
シール部8は、中心角θがほぼ60〜80度の円弧状に形成された曲線部分である。より具体的には、シール部8の円弧は、直径が15〜20mm、好ましくは16〜19mm、より好ましくは18mmの円の円弧であり、曲線方向一方の端部が後述する取付関連部9側に繋がった固定端部で、曲線方向他方の端部は自由端部とされている。
【0033】
また、シール部8は、密閉部材7の長尺方向に延伸した、リブ37及び分岐片36を有する。
リブ37は、自由端部の強度を増強するもので、シール部8の自由端部に位置し、曲線の内側表面38から外部に向けて突出した部分である。
分岐片36は、試験室5内の圧力変化(特に正負の変化)によるめくれを防止するもので、シール部8の周方向のほぼ中央に位置し、外側表面35から外部向けて突出した部分である。換言すれば、分岐片36は、突出方向が、シール部8の曲線方向と交差する方向である。より具体的には、分岐片36の突出方向は、シール部8の自由端部が向かう方向に対して、角度M=90度超〜180度未満の範囲で回転させた方向である。
【0034】
取付関連部9は、シール部8の固定端部から直線状に延長した延長部12と、その延長部12に対して交差し、且つ、同一方向に張り出した2つの張出部13、14とを有する部分である。換言すると、取付関連部9は、2つの張出部13、14を1対として、両者の間に切り欠き状の挿通部21を設けた部分である。より具体的には、取付関連部9は、2つの張出部13、14が共に、シール部8の曲線が向かう側、つまり自由端部が向かう側に位置すると共に、1つの張出部(以下、シール側張出部ともいう)13が延長部12の一方の端部、つまりシール部8の固定端部(基端)近傍に位置し、別の1つの張出部(以下、基部張出部ともいう)14が延長部12の他方の端部に位置する構成である。なお、本実施形態では、各張出部13、14は、延長部12からほぼ直交する方向に張り出している。
【0035】
シール側張出部13は、延長部12側端部(基端部)側から張り出し方向先端に向けて、徐々に断面積が減縮されている。すなわち、シール側張出部13は、支持側の剛性を先端側の剛性より高めた構成である。
基部張出部14は、断面積が張り出し方向にほぼ一様にされており、密閉部材7の長尺方向に延伸した係合突起40及び基部側突条部41を有する。
係合突起40は、基部張出部14の先端側で、基部張出部14のシール側張出部13と対向する面に形成されている。すなわち、係合突起40は、シール側張出部13が存在する面に対して、ほぼ直交する方向に突出している。換言すれば、係合突起40は、シール部8が位置する方向に向かって突出した突起である。
基部側突条部41は、基部張出部14の先端側で、係合突起40が配された面と反対側の面に形成されている。すなわち、基部側突条部41は、シール側張出部13が存在する側と反対方向、且つ、ほぼ直交する方向に突出している。換言すれば、基部側突条部41は、シール部8が位置する方向と反対方向に向かって突出した凸部である。
【0036】
さらに、取付関連部9は、シール側張出部13の張り出し方向に交差する屈曲部18を有する。屈曲部18は、シール側張出部13の先端側に位置し、張り出し方向に対して若干シール側張出部13の基端部側に傾斜した方向、且つ、基部張出部14に近接する方向に屈曲した部分である。換言すれば、屈曲部18は、シール側張出部13の先端から、シール部8の位置する方向と離反する方向、且つ、延長部12に近接する方向に折れ曲がった部分である。
また、屈曲部18は、密閉部材7の長尺方向に延伸した屈曲部側突条部27を有する。屈曲部側突条部27は、屈曲部18における延長部12と対向する面の表面から外部に向けて突出した凸部である。
【0037】
開閉扉3は、断熱構造を備えた公知の扉である。
【0038】
次に、環境試験装置1における近接部材6と密閉部材7の位置関係について説明する。
本実施形態の環境試験装置1では、図2に示すように、装置本体2の正面に近接部材6が配され、その近接部材6に密閉部材7が取り付けられている。具体的には、近接部材6は、装置本体2の正面側であって、開口11に干渉しないように、外郭部材20と内装壁15の間に位置する折曲部30にビス等で固定されている。このとき、図8に示すように、近接部材6と装置本体2との間には、隙間32が形成されている。具体的には、隙間32は、内側凹部22における背面側平面26と、折曲部30との間に形成されている。さらに、近接部材6は、屈曲部用係合溝16が正面側に向けて開口すると共に、突部用係合溝17が背面側に向けて開口している。
【0039】
一方、密閉部材7は、2つの張出部13、14が、近接部材6の内側凹部22の端部側(被挟持部)を挟むような配置である。換言すれば、1対の張出部13、14によって形成された挿通部21に内側凹部22の端部を挿通した配置である。すなわち、基部張出部14は、近接部材6の背面側平面26と装置本体2の折曲部30とで形成された隙間32に配され、シール側張出部13は、内側凹部22の正面側平面25に沿うように配されている。詳細には、密閉部材7は、図9(a)に示すように、基部張出部14の係合突起40が突部用係合溝17に嵌り込み、シール側張出部13の先端に位置する屈曲部18が、屈曲部用係合溝16に嵌り込んでいる。より詳細には、基部張出部14は、隙間32に挿着された状態で、係合突起40が突部用係合溝17に嵌り込むと共に、基部側突条部41によって内側凹部22側に押圧されており、シール側張出部13は、内側凹部22を挟んで、基部張出部14と対向する位置に配された状態で、屈曲部18がシール側張出部13に対してほぼ直交する姿勢で屈曲部用係合溝16に嵌り込むと共に、屈曲部側突条部27が開口11の内方向(図9の左方向)を押圧している。
【0040】
次に、密閉部材7の取り付け時の各部位の作用について説明する。
本実施形態では、基本的に、密閉部材7は、装置本体2に固定した近接部材6の端部に嵌め込んで取り付けられる。すなわち、装置本体2の開口11側から密閉部材7の張出部13、14の間を、近接部材6の内側凹部22の端部に配し、その後、押し込むことで、内側凹部22が張出部13、14の間に圧入される。このとき、基部張出部14は、折曲部30と内側凹部22との間に形成された隙間32を推進し、係合突起40が突部用係合溝17に嵌り込んだ時点で、位置が固定される。また、シール側張出部13は、屈曲部18の先端が押し込み方向と交差する方向に変形しつつ、近接部材6の正面側平面25に沿って推進し、屈曲部18が屈曲部用係合溝16に嵌り込んだ時点で、位置が固定される。これにより、密閉部材7は、近接部材6に装着された状態となる(保持姿勢)。
そして、保持姿勢の密閉部材7に対して、開閉扉3が閉鎖されると、図10に示すように、開閉扉3の内壁と、シール部8の正面側平面35が面接触しつつ、シール用突条部36が点接触する。
【0041】
次に、保持姿勢の密閉部材7における特徴的作用について説明する。
先にも説明したように、環境試験装置においては、密閉部材のシール部の立ち上がりが発生すると、試験室内の気密性を低下させる問題があった。特に、長尺状の密閉部材を折り曲げる箇所(角部)においては、取り付け当初から他の部分よりも、シール部の立ち上がりが際立つ。そして、このようなシール部の立ち上がりが際立った部分に、経時的変化(品質の劣化や耐久性の低下)がさらに加わると、密閉部材全体の形状がかなり歪になり、密閉部材7と開閉扉3との前記したような接触状態が維持できず、シール性を十分に確保することが不可能となってしまう。
【0042】
そこで、本実施形態では、シール部8の立ち上がりに対向する力を、予め屈曲部18に作用させる構成としている。
ここで、密閉部材7の取り付け前後における、屈曲部18の姿勢に注目する。
屈曲部18は、近接部材6への取り付け前において、図7に示すように、先端が若干延長部12側に向いた姿勢をとっている。一方、近接部材6への取り付けの後の屈曲部18の先端は、図9(a)に示すように、シール側張出部13に対して、ほぼ直交した姿勢である。すなわち、屈曲部18は、近接部材6の取り付け後、当初の位置から延長部12側から若干離反する方向に移動させれらた位置に配されることとなる。
【0043】
これにより、屈曲部18には、当初の位置(近接部材6への取り付け前の位置)に戻ろうとする力が生じる。しかしながら、屈曲部18は、屈曲部用係合溝16に係合しているため、屈曲部18自体は当初の位置に戻ることはできない。そのため、その力は、シール側張出部13を介してシール部8の基端側を、屈曲部18側に引きつけるように作用する。すなわち、屈曲部18を、シール部8の基端近傍に配し、屈曲部用係合溝16に係合させることで、屈曲部18に力を作用させ、その力を、シール部8の曲線を維持することができる力、つまりシール部8の立ち上がりを抑制する力に変換することができるため、従来に比べて、シール部8の立ち上がり(図9(a)に示すシール部8の基端部から先端までの最短(垂直)長さはαである。)を小さくすることができる。
さらに、本実施形態では、屈曲部18の延長部12側の面に、屈曲部側突条部27を有するため、屈曲部18に作用する姿勢を戻そうとする力をより強くすることができる。そのため、本実施形態では、シール部8に作用する力も高まり、結果的に、シール部8の立ち上がりをより小さなものとすることができる。
【0044】
特に、この作用によって、開口11の角部のシール部8の立ち上がりの減少が顕著となる。すなわち、図9(b)、11に示すように、屈曲部18の作用により、密閉部材7を曲げることで生じる引張り力が減少されるため、図9(a)に示すその他の箇所(直線部)と比較しても、立ち上がりの程度を小さくできる。具体的には、このときのシール部8の基端部から先端までの最短(垂直)長さはβであり、従来のものより短い。そして、これは、図12、13に示す従来の密閉部材107と比較しても明らかである。
【0045】
以上のように、上記実施形態では、密閉部材7を近接部材6に押し込んで取り付けた際に、互いに係合する構成としたため、一定以上の押し込み方向と逆の力(抜き出し方向の力)が働かない限り、保持姿勢が維持される。そのため、本実施形態では、従来技術のように、抜き出し方向に密接部材の脱落防止機能兼保持姿勢維持機能を備えたその他の部材を配する必要がなく、密閉部材取り付けの際に道具を利用する必要もない。したがって、本実施形態では、密閉部材7を、作業者が手で容易に取り付けることができるため、密閉部材を交換する際の作業効率を向上させることができる。
【0046】
また、上記実施形態では、シール部8の基端近傍に若干延長部12側に傾斜した屈曲部18を設け、その屈曲部18を近接部材6の屈曲部用係合溝16に係合させる構成としたため、シール部8に立ち上がりに対向する力を予め作用させることができる。そのため、密閉部材7を折り曲げて取り付けるような箇所においても、他の箇所に比べて、シール部8の立ち上がりが際立つことがない。
【0047】
上記実施形態では、屈曲部18に屈曲部側突条部27を設けた構成を示したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、屈曲部側突条部27を設けない構成であっても構わない。
また、上記実施形態では、屈曲部18を延長部12側に若干傾斜させた構成を示したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、屈曲部18をシール側張出部13に対してほぼ直交にし、屈曲部側突条部27だけで屈曲部18の姿勢が変更される構成であっても構わない。要するに、屈曲部18を屈曲部用係合溝16に配した際に、屈曲部18に上記実施形態に示した力と同様の力が作用する構成であれば構わない。
【0048】
上記実施形態では、屈曲部18に、密閉部材7の長尺方向に一連して形成された屈曲部側突条部27を設けた構成を示したが、本発明はこれに限定されず、屈曲部側突条部27の替わりに、凸部を一定の間隔で並べた構成であっても構わない。
【0049】
上記実施形態では、装置本体2側にあたる内側シール部46に密閉部材7や近接部材6を取り付けた構成を示したが、本発明はこれに限定されず、装置本体2側の内側シール部46に替えて、あるいは、加えて、開閉扉3側の外側シール部45に、前記同様の構造の近接部材を設け、その近接部材に密閉部材を取り付けた構成であっても構わない。
また、装置本体2側に設けた内側シール部46に替えて、開閉扉3側に上記実施形態と同様の構造の近接部材6及び密閉部材7を設けて、開閉扉3側に内側シール部として機能を持たせた構成であっても構わない。
【符号の説明】
【0050】
1 環境試験装置
2 装置本体
3 開閉扉(開閉体)
5 試験室
6 近接部材(近接部)
7 密閉部材
8 シール部
9 取付関連部
11 開口
12 延長部
13 シール側張出部(張出部)
14 基部張出部(張出部)
16 屈曲部用係合溝(係合溝)
17 突部用係合溝
18 屈曲部
27 屈曲部側突条部(突起)
40 係合突起(突起部)
41 基部側突条部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の温度及び/又は湿度環境が形成される試験室と、試験室と外部とを連通した開口を、外部に対して開放及び閉鎖可能な開閉体とを有する環境試験装置において、
試験室内の気密性の保持に寄与する密閉部材を有し、当該密閉部材は、開閉体を閉鎖した際に、試験室側と開閉体側とが近接した状態で向き合う近接部に設けられるものであり、
密閉部材は、片状のシール部と、当該シール部の一方の端部に繋がり近接部への取り付けに関わる取付関連部とを有し、
取付関連部は、前記シール部の一方の端部から延長した延長部と、当該延長部に対して交差し且つ同一方向に張り出した2以上の張出部とで形成され、1つの張出部は、当該張出部の張り出し方向に対して交差する方向に屈曲した屈曲部が設けられ、
近接部は、被挟持部を有し、当該被挟持部は隣接する張出部同士の間に配され、少なくとも、屈曲部を有する張出部と当該張出部に隣接する別の張出部との間に配される被挟持部には、係合溝が形成されており、
密閉部材は、隣接する張出部同士の間を、被挟持部に押し込んで当該被挟持部を嵌合状態にし、さらに屈曲部を係合溝に係合させることで保持姿勢をとることを特徴とする環境試験装置。
【請求項2】
シール部は、密閉部材の保持姿勢を基準に、前記開口の外方向に曲がった曲線形状であり、
張出部は、シール部の曲線内側に配されると共に、屈曲部を有する張出部は、シール部の基端側近傍に位置し、
屈曲部は、シール部が位置する方向と反対方向に向かって屈曲していることを特徴とする請求項1に記載の環境試験装置。
【請求項3】
屈曲部は、延長部と対向する側に延長部に近接する方向に突出した突起を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の環境試験装置。
【請求項4】
屈曲部を有する張出部は、先端に向かうほど断面積が小さくされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の環境試験装置。
【請求項5】
被挟持部を嵌合状態にする1対の張出部のうちの一方は、屈曲部と対向する方向に突出した突起部を有し、
被挟持部は、前記突起部が係合する突起用係合溝を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の環境試験装置。
【請求項1】
所望の温度及び/又は湿度環境が形成される試験室と、試験室と外部とを連通した開口を、外部に対して開放及び閉鎖可能な開閉体とを有する環境試験装置において、
試験室内の気密性の保持に寄与する密閉部材を有し、当該密閉部材は、開閉体を閉鎖した際に、試験室側と開閉体側とが近接した状態で向き合う近接部に設けられるものであり、
密閉部材は、片状のシール部と、当該シール部の一方の端部に繋がり近接部への取り付けに関わる取付関連部とを有し、
取付関連部は、前記シール部の一方の端部から延長した延長部と、当該延長部に対して交差し且つ同一方向に張り出した2以上の張出部とで形成され、1つの張出部は、当該張出部の張り出し方向に対して交差する方向に屈曲した屈曲部が設けられ、
近接部は、被挟持部を有し、当該被挟持部は隣接する張出部同士の間に配され、少なくとも、屈曲部を有する張出部と当該張出部に隣接する別の張出部との間に配される被挟持部には、係合溝が形成されており、
密閉部材は、隣接する張出部同士の間を、被挟持部に押し込んで当該被挟持部を嵌合状態にし、さらに屈曲部を係合溝に係合させることで保持姿勢をとることを特徴とする環境試験装置。
【請求項2】
シール部は、密閉部材の保持姿勢を基準に、前記開口の外方向に曲がった曲線形状であり、
張出部は、シール部の曲線内側に配されると共に、屈曲部を有する張出部は、シール部の基端側近傍に位置し、
屈曲部は、シール部が位置する方向と反対方向に向かって屈曲していることを特徴とする請求項1に記載の環境試験装置。
【請求項3】
屈曲部は、延長部と対向する側に延長部に近接する方向に突出した突起を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の環境試験装置。
【請求項4】
屈曲部を有する張出部は、先端に向かうほど断面積が小さくされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の環境試験装置。
【請求項5】
被挟持部を嵌合状態にする1対の張出部のうちの一方は、屈曲部と対向する方向に突出した突起部を有し、
被挟持部は、前記突起部が係合する突起用係合溝を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の環境試験装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−72648(P2013−72648A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209548(P2011−209548)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】
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