説明

環境試験装置

【課題】左右両側の側面から信号線等を引き出すことができる環境試験装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 連通筒60があり、連通筒60は、その一端が試験室3の右側面壁53に設けられた開口56の開口端に固定され、内側筐体45の右側面壁53と、内側筐体45の外周側を取り巻く断熱層2を貫通し、さらに試験室内蔵筐体(外側筐体)40の側面を貫通して、隣接する電装品内蔵用筐体43側に突出している。そしてさらに電装品配置部26の空間部32と、電装側側壁部61を貫通している。そのため試験室3内と、環境試験装置1の外部とは連通筒60を介して直接的に連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被試験物を所定の環境にさらすことのできる環境試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製品や部品等の性能や耐久性を調べる方策として、環境試験が知られている。環境試験は、環境試験装置と称される設備を使用して実施される。環境試験装置は、例えば高温環境や、低温環境、高湿度環境等を人工的に作り出すものである。
環境試験装置は、例えば図18の様な環境調整システムを備えている。図18に示す環境試験装置100は、試験室3、冷却機5、加熱ヒータ6、加湿装置7及び送風機8を備えている。試験室3は、断熱材2によって覆われた空間である。そして試験室3と連通する空気流路10があり、当該空気流路10に前記した冷却機5の蒸発器11と、加熱ヒータ6、加湿装置7及び送風機8が設けられている。また、空気流路10の出口側に、温度センサー12と湿度センサー13が設けられている。環境試験装置100では、前記した空気流路10内の部材と、温度センサー12及び湿度センサー13によって空気調和装置15が構成されている。
【0003】
環境試験装置100は、空気調和装置15によって、試験室3内に所望の温度・湿度環境を作る。
【0004】
環境試験は、前記した試験室3に被試験物16を置き、被試験物16を過酷な環境にさらしてその変化を観察する。
環境試験では、試験中における被試験物16の変化の進行具合を観察するため、被試験物16にセンサー17が取り付けられる場合がある。例えば外形の変化を観察するためのストレインゲージが取り付けられたり、抵抗変化を測定するための電極が取り付けられる場合がある。あるいは被試験物16の表面温度を測定するために温度センサーが取り付けられることもある。さらには、被試験物16に通電するための電線が取り付けられる場合もある。
【0005】
一方、試験室3内の環境は過酷であり、且つ狭いから、テスターや、記録計、パソコンといった測定機器は試験室3の外に置かなければならない。そのため、試験室3の内外を信号線18や電力線で結ぶ必要がある。
そこで、環境試験装置100では、試験室3に内外を連通する孔101が設けられ、その孔101を介して信号線18が挿通される。
【0006】
従来技術の環境試験装置100では、図15、図16の様に、環境試験装置100の一方の側面102だけに孔101が設けられている。即ち環境試験装置100の正面には、試験室3から被試験物16を出し入れするために扉部材20が設けられているが、扉部材20に向かって、左側の側面102に試験室3に内外を連通する孔101がある。孔101の位置は、試験室3に向かって左右の側面のいずれか一方に限られ、左右双方の側面に孔101が設けられた環境試験装置は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−271551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以下、環境試験装置100の片側の側面だけに連通孔101が設けられている理由を説明する。
実際の環境試験装置100の外観形状は、図15、図16の様であり、全体として直方体形状をしている。
環境試験装置100の筐体構造を見ると、後記する様に大きく5つの領域に区画されている。即ち環境試験装置100の内部には、図示しない仕切りや壁があり、図3乃至図7の様に、試験室配置部22、台座部23、操作機器設置部25、電装品配置部26、配管配置部27に分かれている。
ここで試験室配置部22は、図17の様な独立した外側筐体103を有し、その中に試験室3を構成する内側筐体105が配されたものである。
また外側筐体103と内側筐体105との間には、断熱材(断熱層)2が内蔵されている。
【0009】
電装品配置部26は、試験室配置部22の側面に隣接した領域であり、各図においては、試験室配置部22に向かって右側側面に設けられている。
電装品配置部26内には空間があり、この空間に電源回路や制御回路、リレー等が配置されている。即ちトランスやダイオード、コンデンサー等の電源回路や基板、CPUやトランジスタ、IC等を搭載した基板、その他の電装品が電装品配置部26内に設置されている。
【0010】
前記した様に、環境試験装置100は、試験室3の内外に信号線18や電力線を挿通させる必要がある。ここで試験室3の周囲を見ると、試験室3に向かって左側の側面102は、断熱材2で形成された断熱層2と、外側筐体103の側壁部があるだけであり、孔や開口を設けても弊害は少ない。
【0011】
これに対して試験室3に向かって右側の側面104には、電装品配置部26があり、電源回路や制御回路、リレー等の電装品が配置されている。
そのため試験室3の電装品配置部26側に孔を設けると、試験室3内の冷気や熱気、湿潤した空気等が漏れ、電装品配置部26に入ってしまう。そのため電装品が故障したり誤動作を起こしてしまう。
特に環境試験装置100は、低温環境を作る機能を持つものが多いが、低温の空気が電装品配置部26に漏れると、電装品配置部26内で外気と衝突し、電装品配置部26内で結露を生じてしまう。そのため電装品が濡れ、致命的な故障が起きる。
そのため従来技術においては、環境試験装置100の一方の側面だけに試験室3と連通する孔101が設けられ、他方の側面には孔は設けられていない。
【0012】
しかしながら、従来技術の環境試験装置100は、信号線18等を引き出す孔101が、環境試験装置100の片側だけにしか設けられていないので、使い勝手が悪い。
例をあげると次の通りである。
試験室3から引き出される信号線18は、被試験物16からデータを取るものであるから、パソコンに接続される場合が多い。また現在市販されているパソコンは、多機能化されており、複数の環境試験装置100から得られるデータを入力し、処理することができる。一方、パソコンを設置するには、所定の設置場所が必要であるが、建屋の床面積には制約があり、多数のパソコンを設置する場所を確保することができない場合も多い。
そのため使用者には、図19の様なレイアウトで、環境試験装置100a,100bとパソコン106を設置して使用したいという要望が強い。
即ち2台の環境試験装置100a,100bを距離を離して設置し、両者の間にパソコン106を置く。
【0013】
しかしながら、従来技術の環境試験装置100a,100bには、信号線18等を引き出す孔が、装置の片側だけにしか設けられていないので、図面左側の環境試験装置100aの孔とパソコン106との距離が遠く、信号線18を長く引き回さなければならない。そのため配線の引回しが面倒である。また信号線18が長いと、途中でノイズを拾うことがある。さらにサーミスタ等のセンサーには、信号線18の長さが限定されているものがあり、実質的にパソコン106に信号線18が接続できなくなってしまう場合も想定される。
【0014】
そこで本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、左右両側の側面から信号線等を引き出すことができる環境試験装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、内部に試験室があり正面側に試験室を開閉する扉部材が設けられた試験室配置部を有し、扉部材に向かって試験室配置部の左側側面又は右側側面に電装品配置部があり、前記試験室配置部は試験室の内壁の一部又は全部を構成する内側筐体と、前記内側筐体の一部又は全部を覆う断熱層と、断熱層の外側から試験室を覆う外側筐体を有し、電装品配置部は、内部に電装品が配される空間部を有する電装品内蔵用筐体を有し、電装品内蔵用筐体の前記空間部を閉塞するとともに装置全体の側面を構成する電装側側壁部を有する環境試験装置において、内側筐体と断熱層と電装品配置部の空間部と電装側側壁部とを貫通し、前記試験室と環境試験装置の外部とを連通する連通筒部を有することを特徴とする環境試験装置である。
【0016】
また同様の課題を解決するための請求項2に記載の発明は、内部に試験室があり正面側に試験室を開閉する扉部材が設けられた環境試験装置であって、環境試験装置の外郭を形成する外郭部材を有し、外郭部材の中は少なくとも試験室配置部と試験室配置部の側面側に配された電装品配置部に区分けされており、前記試験室配置部には試験室の内壁の一部又は全部を構成する内側筐体と、前記内側筐体の一部又は全部を覆う断熱層が配され、前記電装品配置部には内部に電装品が配される空間部が有り、前記外郭部材の一部であって電装品配置部の前記空間部を閉塞するとともに環境試験装置全体の側面を構成する電装側側壁部を有する環境試験装置において、内側筐体と断熱層と電装品配置部の空間部と電装側側壁部とを貫通し、前記試験室と環境試験装置の外部とを連通する連通筒部を有することを特徴とする環境試験装置である。
【0017】
請求項1,2に記載した発明は、いずれも試験室の側面側に電装品配置部があり、この点は従来技術の環境試験装置100と共通する。また電装品配置部には空間部があり、この空間部に電装品が内蔵されている点でも、従来技術の環境試験装置100と変わらない。即ち請求項1,2に記載の環境試験装置のレイアウトは、従来技術の環境試験装置100と概ね同一である。
請求項1,2に記載の環境試験装置は、共に「内側筐体と断熱層と電装品配置部の空間部と電装側側壁部とを貫通し、前記試験室と環境試験装置の外部とを連通する連通筒部」を備えている。
そのため請求項1,2に記載した環境試験装置によると、連通筒部に信号線等を挿通することにより、電装品配置部が設けられた側の側面から、信号線等を引き出すことができる。そのため環境試験装置の電装品配置部側に測定機器等があっても、試験室内のセンサー等と測定機器等を容易に接続することができる。
また電装品配置部内と、信号線等が挿通する部位は、連通筒部によって遮蔽されているので、試験室内の冷気や熱気等が、電装品配置部内に漏れることはない。即ち本発明では、試験室の内部と、環境試験装置の外部とが、連通筒部を経由して直接連通するのであって、試験室と電装品配置部との間は連通しない。そのため電装品配置部が高温環境や低温環境、高湿度環境にさらされることはなく、電装品を傷めることはない。
【0018】
また請求項3に記載の発明は、連通筒部の下に受け皿部材が設けられ、受け皿部材にはドレン配管が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の環境試験装置である。
【0019】
連通筒部は試験室と連通しているから、試験室内が低温環境であった場合には、連通筒内も温度が低下する場合がある。そのため連通筒部の外周面の温度が低下し、連通筒部の外周面に結露が発生する懸念がある。
そこで請求項3に記載の発明では、結露が発生した場合に備えて連通筒部の下に受け皿部材を設け、結露が電装品配置部内に落ちることを防止した。
即ち請求項3に記載の環境試験装置では、連通筒部に発生した結露を受け皿部材で受けることができるので、電装品配置部内の機器を濡らすことがない。
加えて受け皿部材にはドレン配管が設けられているので、受け皿部材で受けられたドレンを適切な場所に排水することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、電装品配置部の内面側であって前記空間部を隔てて電装側側壁部の内面に面した位置に電装側奥壁部があり、連通筒部を支持する支持部材が、前記電装側奥壁部から片持ち状に張り出していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の環境試験装置である。
【0021】
電装側奥壁部は、試験室を断熱材を介して覆う壁面でもよく、試験室を覆う部材とは別の部材であってもよい。
本発明の環境試験装置では、支持部材によって連通筒部が支持されている。そのため連通筒部がぐらつかず、安定する。
また支持部材は、電装側奥壁部側から片持ち状に張り出されているので、環境試験装置の外壁たる電装側側壁部と支持部材とが分離可能である。また同様の理由から連通筒部と電装側側壁部とも分離可能となるから、点検等の際に電装側側壁部を容易に外すことができる。
【0022】
請求項5に記載の発明は、支持部材は連通筒部の天側、地側、両側面の4方向の内、少なくとも二方向に部材を有する枠状又は箱状であることを特徴とする請求項4に記載の環境試験装置である。
【0023】
本発明で採用する支持部材は、枠状又は箱状であるから剛性が高い。
【0024】
請求項6に記載の発明は、電装側側壁には連通筒部の端部よりも大きな開口があり、支持部材には連通筒部の電装側側壁部近傍に封鎖用壁があり、前記封鎖用壁は前記空間側から前記開口を封鎖することを特徴とする請求項4又は5に記載の環境試験装置である。
【0025】
本発明の環境試験装置では、電装側側壁に開口があるので、電装側側壁の開口に連通筒部の端部をのぞませたり、電装側側壁の開口から連通筒部の端部を突出させることができる。
また前記した開口は、連通筒部の端部よりも大きいので、点検のために電装側側壁を取り外し、再度電装側側壁を装着する際に、連通筒部の端部を開口の位置に合わせたり、電装側側壁の開口から連通筒部の端部を突出させることが容易である。
さらに支持部材には連通筒部の電装側側壁部近傍に封鎖用壁があり、封鎖用壁は空間側から開口を封鎖するので、外部から電装品配置部の中が見えることはない。
【発明の効果】
【0026】
本発明の環境試験装置は、装置の左右両側からでも試験室から信号線等を引き出すことができるので使い勝手がよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態の環境試験装置を右斜方向から観察した斜視図である。
【図2】図1に示す環境試験装置を正面扉部材を開いて右斜方向から観察した斜視図である。
【図3】図1の環境試験装置の試験室配置部の領域を示す斜視図である。
【図4】図1の環境試験装置の台座部の領域を示す斜視図である。
【図5】図1の環境試験装置の操作機器設置部の領域を示す斜視図である。
【図6】図1の環境試験装置の電装品配置部の領域を示す斜視図である。
【図7】図1の環境試験装置の配管配置部の領域を示す斜視図である。
【図8】図1の環境試験装置を構成する筐体の配置関係を示す斜視図である。
【図9】図1の環境試験装置の外側筐体の一部を破断して表示した斜視図である。
【図10】本発明の実施形態の環境試験装置の電装側側壁部を取り外して電装品配置部の空間部中を観察した斜視図である。
【図11】本発明の実施形態の環境試験装置の電装品配置部の一部破断斜視図である。
【図12】本発明の実施形態の環境試験装置の電装品配置部であって、連通筒部近傍の斜視図である。
【図13】本発明の実施形態の環境試験装置の連通筒部近傍の分解斜視図である。
【図14】本発明の実施形態の環境試験装置の連通筒部近傍の断面図である。
【図15】従来技術の環境試験装置を右斜方向から観察した斜視図である。
【図16】従来技術の環境試験装置を左斜方向から観察した斜視図である。
【図17】従来技術の環境試験装置の外側筐体の斜視図である。
【図18】本発明及び従来技術の環境試験装置の構成図である。
【図19】2台の環境試験装置を設置する場合のレイアウトを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。なお従来技術の環境試験装置100と同一の部材については重複した説明を省略する。
本発明の実施形態の環境試験装置1の空気調和装置15は、従来技術の環境試験装置100と同一である。
即ち環境試験装置1は図18の様に、試験室3、冷却機5、加熱ヒータ6、加湿装置7及び送風機8を備えている。試験室3は、断熱材(断熱層)2によって覆われた空間である。そして試験室3と連通する空気流路10があり、当該空気流路10に前記した冷却機5の蒸発器11と、加熱ヒータ6、加湿装置7及び送風機8が設けられている。
また、空気流路10の出口側に、温度センサー12と湿度センサー13が設けられている。環境試験装置1では、前記した空気流路10内の部材と、温度センサー12及び湿度センサー13によって空気調和装置15が構成されている。
【0029】
環境試験装置1の外観形状は、図1、図2の様であり、全体として直方体形状をしている。即ち環境試験装置1は、ステンレススチール等で作られた外郭部材30を持つ。外郭部材30の内部は、図示しない仕切り壁があり、大きく5つの領域に分かれている。即ち環境試験装置1の内部は、実質的に5区画に仕切られており、図3乃至図7の様に、試験室配置部22、台座部23、操作機器設置部25、電装品配置部26及び配管配置部27に分かれている。
【0030】
各区画の配置レイアウトは、図3乃至図7の通りであり、試験室配置部22の下に台座部23がある。試験室配置部22及び台座部23を一塊と考え、その向かって右側面に操作機器設置部25と電装品配置部26がある。操作機器設置部25と電装品配置部26は、前後(手前・奥)に並んだ位置にあり、操作機器設置部25は正面側(手前)、電装品配置部26は奥側に位置している。配管配置部27は、全体の裏面側にある。
【0031】
各区画の機能を簡単に説明すると次の通りである。
試験室配置部22は、試験室3を内蔵し、かつその正面側に扉部材20が設けられたものである。即ち試験室配置部22の正面には扉部材20が設けられている。また試験室3の周囲には断熱材2で構成された断熱層がある。試験室配置部22の具体的構造については後述する。
【0032】
台座部23は、試験室3を所定の高さに保持する機能を持つものである。また本実施形態では、前記した冷却機5の圧縮機(図示せず)等や湿度センサー13に給水するための給水タンク(図示せず)が内蔵されている。
【0033】
操作機器設置部25は、操作盤33や表示画面35が取り付けられる部位であり、これらの操作部や表示部は、正面側に露出している。
【0034】
電装品配置部26は、内部に空間部32があり、この空間部32に電源回路や制御回路、リレー等の電装品が配置されている。電装品配置部26の具体的構造についても後述する。
【0035】
配管配置部27には、給水配管や冷凍配管等が配されている(図示せず)。
【0036】
環境試験装置1の外郭部材30は、図8の様に概ね4個の筐体が接合されたものであると言える。
即ち環境試験装置1の外郭部材30は、試験室内蔵筐体(外側筐体)40、下部筐体41、電装品内蔵用筐体43及び裏側筐体44によって構成されている。
【0037】
試験室内蔵筐体(外側筐体)40は、試験室配置部22の全部の部分を構成するものである。
試験室内蔵筐体(外側筐体)40の内部には、図9の様に試験室3を構成する内側筐体45が内蔵されている。
また試験室内蔵筐体(外側筐体)40と内側筐体45との間には、前記した断熱層(断熱材2)がある。従って試験室配置部22には、試験室3の内壁を構成する内側筐体45があり、内側筐体45の扉部材20側を除く面を覆う断熱層(断熱材2)と、断熱層の外側から試験室3を覆う試験室内蔵筐体(外側筐体)40がある。
【0038】
内側筐体45は、扉部材20側の面が開口し、他の5面に内壁がある。即ち図9の様に、内側筐体45には、天面壁49と、底面壁50と、奥面壁51と、左側面壁52、右側面壁53がある。
そして左側面壁52と、右側面壁53に開口55,56が設けられている。
左側面壁52に設けられた開口55は、従来技術と同様に、試験室内蔵筐体(外側筐体)40の左側面に連通する。なお図では、開口55に蓋59が装着された状態が図示されている。
【0039】
一方、右側面壁53に設けられた開口56には、連通筒60の端部が取り付けられている。
ここで、連通筒60は、ネオプレンゴムやエポキシ樹脂等の耐熱性と、耐低温性を有し、且つ吸水性の低い樹脂で作られたものであり、断面形状が円形の筒である。
連通筒60の長さは、試験室3から電装品配置部26を経由して環境試験装置1の側面に至る長さを持つ。連通筒60の長さは、概ね30cmから70cm程度である。連通筒60の内径は、20mmから150mm程度であり、通常は、40mmから100mm程度である。
【0040】
連通筒60の一端は、試験室3の右側面壁53に設けられた開口56の開口端に留め具74(図14)で固定されている。そして連通筒60は、図8,9,14の様に内側筐体45の右側面壁53と、内側筐体45の外周側を取り巻く断熱層(断熱材2)を貫通し、さらに試験室内蔵筐体(外側筐体)40の側面壁62を貫通して、隣接する電装品内蔵用筐体43側に突出し、電装品内蔵用筐体43側に入り込んでいる。
なお本実施形態では、試験室内蔵筐体(外側筐体)40の側面壁62は、電装品配置部26の内面側であって空間部32を隔てて電装側側壁部61の内面に面した位置にあり、電装側奥壁部として機能している。
【0041】
電装品内蔵用筐体43は、操作機器設置部25の全部と、電装品配置部26の全部と、配管配置部27の一部を構成するものである。電装品内蔵用筐体43は、環境試験装置1の外郭の一部(外郭部材30の一部)を構成するものである。特に電装品内蔵用筐体43の側面板は、環境試験装置1の右側面壁(外郭部材30の右側面壁)を構成する電装側側壁部61である。また本実施形態では、図10、図12の様に、電装側側壁部61に四角形の開口65が設けられている。電装側側壁部61は、点検のために取り外しができる様になっている。
【0042】
電装品配置部26は、前記した試験室内蔵筐体(外側筐体)40の右側の側面壁(電装側奥壁部)62の外面と、電装側側壁部61と、操作機器設置部25の内壁及び配管配置部27の内壁によって囲まれた直方体の領域であり、内部に空間部32がある。
そして当該空間部32に、基板やトランス等の電装品38,39が内蔵されている。本実施形態では、電装品38,39は、配管配置部27側及び下部側に寄った位置に配置されており、操作機器設置部25に近い側であって、上部側の位置には電装品は無い。即ち電装側側壁部61の奥側及び下部側に電装品38,39が集められており、正面側の上部には電装品38,39はない。
言い換えると、連通筒60の周辺には電装品38,39はない。
【0043】
また本実施形態に特有の構成として、電装品配置部26に支持部材70が設けられている。支持部材70は、前記した連通筒60を支持するものであり、電装品配置部26の内側の側壁側に設けられている。即ち電装側側壁部61に対向する壁面から突出している。より具体的に説明すると、本実施形態では、支持部材70は、試験室内蔵筐体(外側筐体)40の右側の側面壁62の外側面から、片持ち状に突出している。
【0044】
支持部材70は、図12、図13に示すように、受け皿部材71と、上部覆い部材72が組み合わされたものである。
順次説明すると、受け皿部材71は、外観形状が板状であり、上面に底の浅い窪み部73がある。そして窪み部73の底部には孔75が設けられ、当該孔75は、下面側に連通している。また孔75の下面側は、ノズル状に突出した突出部76(図14)となっている。
【0045】
上部覆い部材72は、略「L」字状をした部材であり、天面部77と、天面部77から垂直に折り曲げられた閉鎖用壁形成部(封鎖用壁)78がある。
閉鎖用壁形成部78は、前記した電装側側壁部61に設けられた四角形の開口65よりも面積が大きい。
また閉鎖用壁形成部78には、円形の開口80が設けられている。この開口80の開口径は、連通筒60の外径と略等しい。
【0046】
支持部材70は、上部覆い部材72の、閉鎖用壁形成部78の端面が、受け皿部材71の端部近傍の上面にネジ(図示せず)等で接合されたものであり、天面(天面部77)と、底面(受け皿部材71)と、これを繋ぐ一つの垂直壁(閉鎖用壁形成部78)で構成された略「コ」の字状の枠体である。
そして支持部材70は、閉鎖用壁形成部78に設けられた開口80に、連通筒60の自由端近傍が挿通された状態で、試験室内蔵筐体(外側筐体)40の右側の側面壁62にネジ64等で取り付けられている。即ち支持部材70は、試験室内蔵筐体(外側筐体)40の側面壁(電装側奥壁部)62から片持ち状に張り出している。
【0047】
また突出部76(図14)には、ドレン排出用のホース81が接続されてドレン配管がなされている。
【0048】
また連通筒60の自由端近傍には止め輪部材85が装着されている。止め輪部材85は連通筒60の端部を保護すると共に連通筒60の自由端側を支持部材70に固定するための部材である。
止め輪部材85は、リング状部86とフランジ部87によって構成されている。リング状部86は筒状であって、その内径は連通筒60の外径と略等しい。フランジ部87には図示しないネジ挿通孔が設けられている。
【0049】
連通筒60の自由端近傍は、止め輪部材85のリング状部86に挿入されている。そしてフランジ部87が閉鎖用壁形成部78の外面側に図示しないネジによって固定されている。
【0050】
前記した様に、連通筒60の一方の端部は、内側筐体45に固定されている。また、連通筒60の他方の端部は、止め輪部材85を介して支持部材70の閉鎖用壁形成部78に支持されている。そのため連通筒60は、内側筐体45から垂直に突出し、姿勢はぐらつくことなく安定している。
【0051】
そして連通筒60の他端側の位置に電装側側壁部61に設けられた四角形の開口65があり、連通筒60の他端側は、電装側側壁部61の開口65から突出する。また、支持部材70は、受け皿部材71の先端部だけが開口65から外に向かって突出し、閉鎖用壁形成部78は電装品配置部26に残って、電装側側壁部61の開口65を内側から塞ぐ。
そのため、支持部材70を装着した状態では、電装側側壁部61の開口65は閉鎖用壁形成部(封鎖用壁)78によって塞がれ、外から電装側側壁部61の内部を見ることはできない。
【0052】
連通筒60は、前記した様にその一端が、右側面壁53に設けられた開口56の開口端に固定され、図8,9,14の様に内側筐体45の右側面壁53と、内側筐体45の外周側を取り巻く断熱層(断熱材2)を貫通し、さらに試験室内蔵筐体(外側筐体)40の側面壁62を貫通して、隣接する電装品内蔵用筐体43側に突出している。そしてさらに電装品配置部26の空間部32と、電装側側壁部61を貫通している。そのため試験室3内と、環境試験装置1の外部とは連通筒60を介して直接的に連通する。
【0053】
連通筒60の先端には、蓋83が装着可能であり、連通筒60に信号線等を挿通しない場合には、連通筒60を蓋83で塞いでおくことができる。
また連通筒60の試験室3側にも図示しない蓋を装着することができる。
【0054】
本実施形態の環境試験装置1では、前記した連通筒60に信号線18等を挿通することができ、環境試験装置1の左右両側から信号線18等を引き出すことができる。
また使用時には、試験室3内の環境を乱すことが無いように、連通筒60に詰め物をしておくことが望ましい。例えば、連通筒60に信号線18を挿通すると共に、グラスウール等の断熱性を有し、且つ変形容易なものを詰め、連通筒60の内壁と信号線18との間の隙間を埋める。
【0055】
また試験室3を低温環境にして試験を行う場合には、連通筒60の周囲に結露する場合があるが、当該結露水は、落下して受け皿部材71に溜まり、ドレン排出用のホース81を経由して外部に排出される。そのため電装側側壁部61内の機器を濡らすことはない。
【0056】
本実施形態では、連通筒60として断面形状が円形のものを採用したが、多角形のものであってもよい。
また本実施形態では、樹脂性の連通筒60を採用したが、セラミック製のものであってもよい。連通筒60が例えば金属であって、十分な剛性を有する場合には、支持部材70は必ずしも必要ではない。
【0057】
また連通筒60の周囲に結露が発生することを防ぐために、連通筒60の回りを断熱材で取り巻いてもよい。
また本実施形態では、支持部材70は、3面だけを備えた枠体であったが、4面以上を備えた筐体であってもよい。
本実施形態では、支持部材70を試験室内蔵筐体(外側筐体)40の右側面壁53の外側面に取り付けたが、電装品内蔵用筐体43に試験室3と平行な壁面を設け、この壁面に支持部材70を取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 環境試験装置
2 断熱材(断熱層)
3 試験室
20 扉部材
22 試験室配置部
26 電装品配置部
30 外郭部材
32 空間部
40 試験室内蔵筐体(外側筐体)
43 電装品内蔵用筐体
45 内側筐体
60 連通筒
61 電装側側壁部
62 側面壁(電装側奥壁部)
65 開口
70 支持部材
71 受け皿部材
75 孔
78 閉鎖用壁形成部(封鎖用壁
81 ホース(ドレン配管)
85 止め輪部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に試験室があり正面側に試験室を開閉する扉部材が設けられた試験室配置部を有し、扉部材に向かって試験室配置部の左側側面又は右側側面に電装品配置部があり、前記試験室配置部は試験室の内壁の一部又は全部を構成する内側筐体と、前記内側筐体の一部又は全部を覆う断熱層と、断熱層の外側から試験室を覆う外側筐体を有し、電装品配置部は、内部に電装品が配される空間部を有する電装品内蔵用筐体を有し、電装品内蔵用筐体の前記空間部を閉塞するとともに装置全体の側面を構成する電装側側壁部を有する環境試験装置において、内側筐体と断熱層と電装品配置部の空間部と電装側側壁部とを貫通し、前記試験室と環境試験装置の外部とを連通する連通筒部を有することを特徴とする環境試験装置。
【請求項2】
内部に試験室があり正面側に試験室を開閉する扉部材が設けられた環境試験装置であって、環境試験装置の外郭を形成する外郭部材を有し、外郭部材の中は少なくとも試験室配置部と試験室配置部の側面側に配された電装品配置部に区分けされており、前記試験室配置部には試験室の内壁の一部又は全部を構成する内側筐体と、前記内側筐体の一部又は全部を覆う断熱層が配され、前記電装品配置部には内部に電装品が配される空間部が有り、前記外郭部材の一部であって電装品配置部の前記空間部を閉塞するとともに環境試験装置全体の側面を構成する電装側側壁部を有する環境試験装置において、内側筐体と断熱層と電装品配置部の空間部と電装側側壁部とを貫通し、前記試験室と環境試験装置の外部とを連通する連通筒部を有することを特徴とする環境試験装置。
【請求項3】
連通筒部の下に受け皿部材が設けられ、受け皿部材にはドレン配管が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の環境試験装置。
【請求項4】
電装品配置部の内面側であって前記空間部を隔てて電装側側壁部の内面に面した位置に電装側奥壁部があり、連通筒部を支持する支持部材が、前記電装側奥壁部から片持ち状に張り出していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の環境試験装置。
【請求項5】
支持部材は連通筒部の天側、地側、両側面の4方向の内、少なくとも二方向に部材を有する枠状又は箱状であることを特徴とする請求項4に記載の環境試験装置。
【請求項6】
電装側側壁には連通筒部の端部よりも大きな開口があり、支持部材には連通筒部の電装側側壁部近傍に封鎖用壁があり、前記封鎖用壁は前記空間側から前記開口を封鎖することを特徴とする請求項4又は5に記載の環境試験装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2013−72680(P2013−72680A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210403(P2011−210403)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】